説明

麻酔化合物を有する注入セット

典型的なインスリン注入セットは、使用者の不快感および注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑えるために、挿入およびセットが置かれる位置に、麻酔薬が含浸され、麻酔薬で被覆され、あるいは、麻酔薬を含み、および投与する、ハブ、ハブ用接着剤、流体ライン用管セット、接続器、カテーテル、および挿入針を含む1以上のセット・エレメントを提供する。システムおよび方法は、ステップ(22)において、少なくとも2つの溶媒、麻酔薬と潤滑剤を混合し、ステップ(24)において、混合された化合物を注入セット、パッチ型ポンプまたはそのエレメントの少なくとも1つの表面への被覆として提供し、次に、ステップ(26)において、被覆後、溶媒を実質的に取り除き、注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメント上に麻酔薬層および潤滑剤層の少なくとも1つを与えるステップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、注入セット(infusion sets)の使用に関連する合併症(complications)の危険を最小限に抑える一方、使用者の快適度を維持するために、麻酔剤を含浸させ得る、麻酔剤で被覆され得る、または麻酔剤を投与するように構成され得る1以上のセット・エレメント(set elements)を含む注入セットのコンポーネント(components)およびエレメント(elements)に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病のような病気を患う多くの人々は、毎日のインスリン注射のような何らかの形の注射療法または注入療法を使用し、彼等の血糖値の厳密な管理を維持する。現在、インスリン治療の例においては、毎日のインスリン療法の2つの基本モードがある。第1のモードは、注射器およびインスリン・ペン(insulin pens)を含んでいる。これらの装置は使用するのに簡単であり、費用に関して比較的安い。しかし、これらの装置は、通常1日当たり3回から4回の各注射時に針刺しを欠かすことができない。第2のモードは、薬物注入ポンプ療法を含んでおり、これは、約3年間持続するインスリン・ポンプの購入を強いる。ポンプの当初コストは、かなりのものであるが、使用者の観点からすれば、ポンプを使用した圧倒的大多数の患者は、生きている限りポンプを使用し続けることを好む。これは、インスリン・ポンプが、注射器およびインスリン・ペンよりも複雑であるけれども、インスリンの連続注入、正確な投薬およびプログラム可能な送出計画という利点を提供する。これは、結果として、より厳密な血糖管理および改善された健康感をもたらす。つい最近、パッチ型ポンプ(patch pumps)が開発され、使用者にインスリン・ポンプの利点を提供しているが、別個の注入セットおよび管の接続器の必要性はない。
【0003】
集中的な治療法への関心が高まるにつれ、使用者は、通常、彼等の病気の管理の改善のために、インスリン・ポンプおよびパッチ型ポンプに目を向ける。したがって、ポンプに関連するより良い治療法への関心が上昇傾向にある。このような例および類似の例において、このような高まる関心に十分に応えるために必要とされるものは、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑え、使用者の快適度を維持する特徴および要素を含む、最新のおよび将来のインスリン注入セットの進歩し、改善され、また新規なコンポーネントおよびエレメントである。
【0004】
インスリン注入ポンプを使用するセットのような現在の注入セットは、通常、局所的部位の痛みおよび感染の恐れにより、72時間しか使用されない。そのような恐れを最小限に抑えるために、抗菌薬および/または抗炎症薬が使用され得る。例えば、特許文献1には、注入セットの使用に伴う合併症を減ずるために、抗菌薬および抗炎症薬の使用が記載されている。しかしながら、これらの対策だけでは、注入セットの使用中における患者の不快感を完全に取り除くことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0299409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を維持するために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、1以上のセット・エレメントをさらに提供する、最新のまた将来のインスリン注入セットおよびパッチ型ポンプの、進歩し、改善され、また、新規なコンポーネントおよびエレメントの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、実質的に上述のおよびその他の懸案事項に取り組むことにあり、注入セットおよびパッチ型ポンプの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を維持するために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る1以上のセット・エレメントをさらに提供する、最新のまた将来のインスリン注入セットおよびパッチ型ポンプの、進歩し、改善され、また、新規なコンポーネントおよびエレメントを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、注入セットおよびパッチ型ポンプの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を維持するために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的なハブ、針および/またはカテーテルを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、注入セットおよびパッチ型ポンプの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を維持するために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、ハブとともに使用するための典型的な接着剤(an exemplary adhesive)を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、セットの予想耐用年数の全期間、または短期間のような所望の時間の間、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、そのようなエレメントを提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的なポリマー・カテーテル材料を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆される、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的な注入セット用管材を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的なカニューレおよび/またはカテーテル用潤滑剤(lubricant material)を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的なハブ接着剤を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的なポリマー被覆材料(an exemplary polymer coating material)を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的な金属、セラミック、または複合材料マトリックスのカニューレを提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、典型的な1以上のエレメントであって、麻酔薬が、(ベンゾカインのような)アミノエステル、(リドカインおよび/またはプリロカインのような)アミノアミドまたはその他の麻酔化合物(other anesthetic compounds)のいずれか1つまたはそれ以上であるエレメントを提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、および、抗菌薬および/または抗炎症薬と組み合わせて使用され得る、1以上のエレメントを提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、および、抗菌薬および/または抗炎症薬と組み合わせて使用され得る、1以上のエレメントであって、抗菌剤、抗炎症剤および麻酔剤が、注入セットの湿った部分(wetted portions)に適用され、または、各物品を形成するバルク・ポリマー材料(the bulk polymer materials)内に含まれるエレメントを提供することにある。
【0020】
これらの目的およびその他の目的は、実質的に、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を増大させるために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、ハブ、ハブ用接着剤、流体ライン用管セット、接続器、カテーテルおよび挿入針を含む1以上のセット・エレメントをさらに提供する注入セットを提供することにより達成される。今日存在するような注入セットのこれらのエレメントに加えて、管、容器、可撓性容器、カニューレなどのような、パッチ型ポンプに存在するさらに別の機能的部品および/またはコンポーネントもまた、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を増大させるために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る。
【0021】
これらの目的およびその他の目的は、また、実質的に、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を増大させるために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る注入セットおよび/または1以上のセット・エレメントを製造し、使用する方法であって、1以上のエレメントに、ポリジアルキルシロキサン潤滑配合物(the polydialkylsiloxane lubricant formulation)内の麻酔剤のような麻酔剤が提供され、または該麻酔剤が製造され得る方法を提供することにより達成される。ポリジアルキルシロキサンは、脂肪族炭化水素、塩化メチレンまたはその他の塩素系溶剤のような有機溶剤中に溶解後、適用され得る。麻酔剤は、溶媒/ポリジアルキルシロキサン混合物中への溶解により配合物内に含まれ得る。次に、注入セット・エレメントには、潤滑剤/麻酔剤/溶媒混合物が、浸漬(dipping)、噴霧、インクジェット印刷、または同様の方法で被覆され得る。溶剤の蒸発後、ポリジアルキルシロキサン/麻酔剤の混合物の層がエレメントまたは装置の表面に残る。麻酔剤は、また、上述した適用方法のいずれかを介して、次にエレメントまたは装置の表面に適用される水性または生体内分解性ポリマー配合物と混合後、適用され得る。さらに、麻酔剤は、上述したコンポーネントのいずれかを形成するのに使用されるポリマー内に配合され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る1以上の典型的なエレメントを含み得る注入セットの斜視図である。
【図2】麻酔剤を含浸し、麻酔剤を被覆し、または、麻酔剤を適用または投与するように構成している典型的な製造ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態のいろいろな目的、利点および新規な特徴は、添付された図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からより簡単に理解されるであろう。
【0024】
図面全体にわたって、同じ参照数字は、同じ部品、コンポーネントおよび構造に言及しているものと理解されるだろう。
【0025】
以下に記載される本発明の装置の実施形態は、最新のおよび将来のインスリン注入セットの多くの進歩し、改善され、且つ新規なコンポーネントおよびエレメントを例示している。これらは、製造の簡単さをさらに提供し、インスリンおよび非インスリン両方の応用への改良を使用する。これらの実施形態の個々の特徴が使用者の要求に応えるべく多数の方法を用いて組み合わされるけれども、代表的な実施形態は、独立した記載で示されている。
【0026】
当業者により理解されるように、本明細書に開示されている注入装置の実施例を実行する多くの方法、改良および配置が存在する。図面および以下の説明に示される実施形態に言及がなされるけれども、本明細書に開示される実施形態は、開示される発明により包含される種々の別の設計および実施形態を網羅しているわけではない。
【0027】
以下に説明される本発明の装置の実施形態は、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を増大させるために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る、1以上のセット・エレメントを含む多くのインスリン注入セットの特徴およびエレメントを例示している。典型的なエレメントの集積が、以下に詳細に説明される本発明の実施形態を紹介するのに役立つ図1の実施例により示される。図1は、以下の特徴を含む典型的な注入セット10を例示している。図1に示されるように、典型的な注入セット10は、ハブ12、可撓性カテーテル14、流体ライン用管セット16、およびポンプ接続器18を備えている。補足的な注入セット・エレメントは、明確にするために、省略されている。以下の説明において、典型的な注入セット10とともに使用するために提供され得るセット・エレメントの多くの典型的実施形態が詳細に説明される。上述したように、1以上のセット・エレメントは、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る。さて、多くの典型的エレメントは、個別に詳細に説明されるだろう。
【0028】
上述したように、インスリン注入ポンプとともに使用される注入セットのような現存の注入セットは、通常、局所的部位の痛みおよび感染の恐れにより、わずか72時間しか使用されない。そのような恐れを最小限に抑えるために、抗菌薬および/または抗炎症薬が使用され得る。しかしながら、これらの処置だけでは、注入セットの使用の間、患者の不快感を完全には取り除けない。
【0029】
従来の注入セットの構造、設計および用具に関連するそのような問題点を解決するために、本発明は、インスリンまたはその他の薬剤を使用者の皮下組織へ送出または注入するための注入セットのエレメントを備えている。そこでは、1以上のセット・エレメントが麻酔薬を含浸させ、麻酔薬で被覆され、あるいは麻酔薬を適用または投与するように構成され得る。注入セット10は、通常、固定して取り付けられているカテーテル14および管セット16を含んでいるハブ12を備えている。管セット16は、ハブ12を注入ポンプまたはその他のインスリン供給源(不図示)に接続器18を介して接続している。そうすることで、管セット16は、注入ポンプの貯槽とハブ12との間の流体連通を提供している。
【0030】
ハブ12は、ハブの下面に配置されている接着剤を用いて、患者の皮膚表面(不図示)に固定され得る。図1に示されるように、カテーテル14は、本発明の実施形態がこれに限定されるものではないけれども、ハブ12の下面から略直角に突出していることが好ましい。例えば、角度をなしている注入セットは知られており、本発明の実施に際して使用され得る。以下により詳細に説明されるように、注入セットは、注入部位で麻酔薬を解放し、使用者の快適さを改善する、使い捨てできる薬剤注入セットとして構成され得る。麻酔薬は、針から解放され、または、カテーテル表面、カテーテル材料あるいは別のものから解放されるばかりでなく、注入セットを使用者の皮膚に取り付けるのに使用される接着剤から解放されてもよい。
【0031】
本発明の第1の典型的実施形態において、ポリマーまたは同様の材料のような、カテーテル14の材料は、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させ、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込み、麻酔薬またはその他の材料で被覆され、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含み、適用し、または投与するように構成されてもよい。本発明の第1の典型的実施形態は、流体ライン用管セット16を含むように拡大され得る。これもまた、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させたり、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込んだり、麻酔薬またはその他の材料で被覆されたり、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含み、適用し、または投与するように構成され得る。管セットの場合には、麻酔薬またはその他の材料を管セットの内側に制限するように、さらに設計構造が提供されてもよい。
【0032】
本発明の第1の典型的実施形態は、カニューレおよび/またはカテーテル14の潤滑剤を含むように拡大され得る。該潤滑剤は、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させ、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込み、麻酔薬またはその他の材料で被覆され、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含み、適用し、または投与するように構成されてもよい。典型的な潤滑剤は、ポリジアルキルシロキサンと関連する化合物との溶媒適用混合物を含み得る。それは、カテーテル14および/または挿入用針あるいは挿入装置(不図示)の外側に適用される。
【0033】
本発明の第1の典型的実施形態は、ハブ12の接着剤を含むように拡大され得る。これは、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させ、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込み、麻酔薬またはその他の材料で被覆され、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含み、適用し、または投与するように構成され得る。当業者に知られているように、使用者の皮膚表面上に注入セットを置くことは、通常、該注入セットの耐用期間の間、挿入部位に注入セットを固定するための接着剤を不可欠なものとして含む。そうすることで、接着剤は、通常、挿入部位において、またはその近くで、皮膚表面に接触し、したがって、要求どおりに麻酔薬またはその他の材料を含み、適用しまたは投与する媒体を提供する。
【0034】
本発明の第1の典型的実施形態は、カテーテル14および/または挿入装置または針(不図示)にポリマーを被覆する材料を含むように拡大され得る。これは、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させ、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込み、麻酔薬またはその他の材料で被覆され、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含むように構成され、次に、ある期間にわたって溶融し、麻酔薬またはその他の材料を適用し、または投与し得る。麻酔薬またはその他の材料は、カテーテル14および/または挿入装置または針(不図示)の少なくとも一部に配置されている、ヒドロゲルのような、そのような生体適合性ポリマー被覆で埋め込まれ得る。そうすることで、被覆は、ある期間にわたって溶融するように構成され、注入セットの耐用年数にわたってまたはそれより短い期間、麻酔薬またはその他の材料の有効成分を解放し得る。
【0035】
本発明の第1の典型的実施形態は、可撓性カテーテル14と同じ機能を果たす剛性カニューレ(不図示)を含むように拡大され得る。剛性カニューレは、適切な金属、セラミックまたは複合材料マトリックス・カニューレ(composite matrix cannula)からなる。これは、麻酔薬またはその他の材料をそこに含浸させたり、あるいは、麻酔薬またはその他の材料をそこに埋め込んだり、麻酔薬またはその他の材料で被覆されたり、あるいは、麻酔薬またはその他の材料を含み、適用し、または投与するように構成される一方、カテーテル14と同じ機能を果たし得る。
【0036】
本発明の典型的な実施形態それぞれにおいて、注入セットおよびセット・エレメントにより含浸され、または埋め込まれ、そして解放され得る麻酔薬は、1以上の(ベンゾカインのような)アミノエステル、(リドカインおよび/またはプリロカインのような)アミノアミドまたはその他の麻酔化合物(other anesthetic compounds)であり得る。さらに、上述した本発明の典型的実施形態のそれぞれは、抗菌薬および/または抗炎症薬と組み合わせて使用され得る。そのような抗菌剤、抗炎症剤および麻酔剤は、注入セットの管16および接続器18のような注入セットの濡れた部分(wetted portions)に適用され、または各物品又はセット・エレメントを形成するバルク・ポリマー材料(bulk polymer materials)内に含まれ得る。
【0037】
本発明の典型的実施形態それぞれにおいて、麻酔薬が装置から解放される速度は、麻酔薬がセットの少なくとも全ての予想耐用年数の間、または、使用者がセットを使いこなせるようになる短い期間のようなより短い期間の間、あるいは、これらの中間時間の間、所望の利益を提供するように構成され得る。
【0038】
上述したように、インスリン注入セットは、ハブ、ハブの接着剤、流体ライン用管セット、接続器、カテーテルおよび挿入用針を含んでいる1以上のセット・エレメントを含み得る。該セット・エレメントは、注入セットの使用に伴う合併症の恐れを最小限に抑える一方、使用者の快適度を増大させるために、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬を埋め込み、麻酔薬で被覆され、または麻酔薬を投与するように構成され得る。注入セットを使用し、麻酔薬を直接注入部位に送出することにより、また、選択的に、1以上の抗菌薬、抗炎症薬および抗生物質製剤と組み合わせて使用することにより、使用者又は患者の不快感は、注入セットの使用中に減少させられる。注入セットの耐用年数が、また増大する。
【0039】
上述した1以上の注入セット・エレメントの選択および利用のために、埋め込まれた薬品の選択配置は、皮膚と接触する接着パッチの使用によるような、関心領域のより近くへの薬品送出を可能にするように選ばれ得る。管またはカニューレの内壁から解放される薬品は、組織内で灌流する可能性が高いので、カニューレの潤滑剤は、皮下組織および皮膚を貫通する入口に接触している。
【0040】
図2は、麻酔薬を含浸させ、麻酔薬を被覆し、あるいは麻酔薬を適用または投与するようにエレメントを構成する典型的な製造ステップ20を示すフローチャートである。典型的な被覆プロセスは、溶媒/潤滑剤/麻酔薬の配合物を、噴霧するステップ、浸漬するステップまたは適用するステップおよび溶媒が装置から蒸発することを可能とするステップからなる最小限のステップ数を介して達成され得る。例えば、第1のステップ22で、高分子溶媒または同様の材料のような材料が麻酔薬化合物または同様の材料と混合される。上述したように、ステップ22の材料は、注入セットのエレメントの構造物内で使用され得る。あるいは、該材料は、次のステップ24で被覆として適用され得る。次に、完成製品がステップ26の溶媒除去および/または乾燥後に達成され得る。示される典型的なステップのいずれかは、製造を容易にするために組み合わされ得る。
【0041】
例えば、注入セットの1以上のエレメントには、ポリジアルキルシロキサン潤滑配合物内の麻酔薬のような麻酔薬が提供され、または製造される。1つの実施例において、ポリジアルキルシロキサンは、ステップ22において、脂肪族炭化水素、塩化メチレン、またはその他の塩素系溶媒のような有機溶媒内で溶解後、適用され得る。麻酔薬は、溶媒/ポリジアルキルシロキサン混合物内での溶解により配合物内に含まれ得る。次に、エレメントは、ステップ24において、浸漬、噴霧、インクジェット印刷、または同様の方法により、潤滑剤/麻酔薬/溶媒の混合物で被覆され得る。ステップ26の溶媒の蒸発後、ポリジアルキルシロキサン/麻酔薬の混合物がエレメントまたは装置の表面に残る。麻酔薬は、また、上述した適用方法のいずれかを介して、エレメントまたは装置の表面に次に適用される水性ポリマー配合物または生体内分解性ポリマー配合物と混合の後、適用され得る。さらに、麻酔薬は、上述したコンポーネントのいずれかを形成するのに使用されるポリマー内に配合され得る。
【0042】
本発明のほんのわずかの典型的な実施形態が上に詳細に説明されてきたけれども、当業者は、本発明の新規な教示および利点からかなり外れることなく、多くの変更が典型的な実施形態において可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような全ての変更は、添付のクレームに記載の本発明およびその均等物の範囲内に含まれるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブおよびカテーテルを備え、
前記ハブまたはカテーテルのうちの少なくとも1つの表面には、カテーテル挿入部位において解放される麻酔薬が設けられていることを特徴とする麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項2】
前記麻酔薬は、徐々にカテーテル挿入部位において解放されるように構成されている、ヒドロゲルのような生体適合性ポリマー被覆で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項3】
前記麻酔薬は、カテーテル挿入部位において解放されるように、前記ハブの外面に配置されている皮膚接触接着剤層として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項4】
前記麻酔薬は、前記挿入部位内のカテーテル終結部位において解放されるように、前記ハブまたはカテーテルの内面に配置される層として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項5】
前記麻酔薬は、カテーテル挿入部位および前記挿入部位内のカテーテル終結部位の両方において解放されるように、前記ハブまたはカテーテルの構成材料として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項6】
前記麻酔薬は、ポリジアルキルシロキサン潤滑化合物内の麻酔薬を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項7】
前記麻酔薬は、アミノエステル、アミノアミド、およびその他の麻酔化合物のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項8】
前記ハブまたはカテーテルのうちの前記少なくとも1つの表面には、前記麻酔薬とともに、潤滑材料、抗菌性材料、および抗炎症性材料のうちの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項9】
前記注入セットは、潤滑材料、抗菌性材料、抗炎症性材料、および麻酔薬のうちの少なくとも1つが設けられている少なくとも1つの表面を有する流体用管セットをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の麻酔薬を適用または投与するように構成されている注入セット。
【請求項10】
溶媒、麻酔薬および潤滑剤のうちの少なくとも2つを混合するステップ、
前記混合物を、被覆物として、注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントの少なくとも1つの表面に適用するステップ、および
被覆後、前記溶媒を実質的に取り除き、前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメント上に麻酔薬の層および潤滑材の層のうちの少なくとも1つを設けるステップ、
を備えていることを特徴とする注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項11】
混合する前記ステップは、
ポリマー溶媒、
アミノエステル、アミノアミド、およびその他の麻酔化合物のうちの少なくとも1つを備えている麻酔化合物、
潤滑材料、
抗菌性材料、および
抗炎症性材料、
のうちの少なくとも2つを混合するステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項12】
混合物を適用する前記ステップは、
前記混合物が前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントの表面上に噴霧される噴霧ステップ、
前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントが前記混合物内に浸漬される浸漬ステップ、および
前記混合物が前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントの表面上にインクジェット印刷されるインクジェット印刷ステップ、
のうちの少なくとも1つのステップを備えることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項13】
前記溶媒を取り除く前記ステップは、
前記溶媒が前記被覆された注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントから蒸発することを可能とする蒸発ステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項14】
前記麻酔薬層および前記潤滑剤層のうちの少なくとも1つは、前記麻酔薬を注入部位において解放するように構成される、前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントの皮膚接触接着剤として提供されることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項15】
前記麻酔薬層および前記潤滑剤層のうちの少なくとも1つは、前記麻酔薬を注入部位と前記注入部位内のカテーテル終結部位との間のいずれかの点において解放するように構成される、前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントのカテーテルの外部被覆として提供されることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項16】
前記麻酔薬層および前記潤滑剤層の少なくとも1つは、前記麻酔薬を前記挿入部位内のカテーテル終結部位において解放する、前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントの内部被覆として提供されることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項17】
前記注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメント上の前記麻酔薬層および前記潤滑剤層のうちの少なくとも1つは、ある期間にわたって前記麻酔薬を解放するように構成される、ヒドロゲルのような生体適合性ポリマー被覆で提供されることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項18】
前記麻酔薬層および潤滑剤層は、ポリジアルキルシロキサン潤滑化合物内の麻酔薬を含んでいることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項19】
混合するステップは、
前記ポリジアルキルシロキサンを脂肪族炭化水素、塩化メチレン、およびその他の塩素系溶媒のうちの少なくとも1つを含んでいる有機溶媒と混合するステップ、および
前記麻酔薬を前記ポリジアルキルシロキサン混合物内で溶解するステップ、
を備えていることを特徴とする請求項18に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項20】
混合するステップは、前記麻酔薬を水性ポリマー配合物および生体内分解性ポリマー配合物のうちの少なくとも1つと混合するステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の注入セット、パッチ型ポンプ、またはそのエレメントを構成する方法。
【請求項21】
麻酔薬を有する、注入セット、またはパッチ型ポンプのハブ、カテーテル、またはカニューレのうちの少なくとも1つを提供するステップ、および
注入セットまたはパッチ型ポンプを患者の皮膚に取り付け、前記カテーテルまたはカニューレの挿入部位において麻酔薬を解放するステップ、
を備えていることを特徴とする注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項22】
前記麻酔薬は、前記挿入部位において徐々に解放されるように構成される、ヒドロゲルのような生体適合性ポリマー被覆で提供されることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項23】
前記麻酔薬は、前記挿入部位において解放されるように、前記ハブの外面上に配置される皮膚接触接着剤層として提供されることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項24】
前記麻酔薬は、前記挿入部位内の終結部位において解放されるように、前記ハブ、カテーテルまたはカニューレの内面上に配置される層として提供されることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項25】
前記麻酔薬は、前記挿入部位および前記挿入部位内の終結部位の両方において解放されるように、前記ハブ、カテーテル、カニューレの構成材料として提供されることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項26】
前記麻酔薬は、ポリジアルキルシロキサン潤滑化合物内の麻酔薬を含んでいることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項27】
前記麻酔薬は、アミノエステル、アミノアミド、およびその他の麻酔化合物のうちの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。
【請求項28】
前記ハブ、カテーテル、またはカニューレのうちの前記少なくとも1つの表面には、潤滑材料、抗菌性材料、および抗炎症性材料のうちの少なくとも1つが前記麻酔薬とともに提供されることを特徴とする請求項21に記載の注入部位において麻酔薬を適用または投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−516200(P2012−516200A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547966(P2011−547966)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/000190
【国際公開番号】WO2011/056182
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】