説明

黄斑変性の治療用組成物

黄斑変性の治療、予防および/または処置方法を開示する。特定の実施形態は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを単独で又は第2の活性物質および/または手術と組合せて投与することを含む。本発明の方法における使用に適した医薬組成物、一単位投与形およびキットも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年10月31日付け出願の米国仮特許出願第60/422,899号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、免疫調節性化合物を単独で又は公知療法と組合せて投与することを含む、黄斑変性(MD)および関連症候群の治療、予防および処置方法に関する。本発明はまた、医薬組成物および投与計画に関する。特に、本発明は、黄斑変性に対する外科的介入および/または他の標準的な療法と組合された免疫調節性化合物の使用を含む。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
2.1 黄斑変性の病理生物学
黄斑変性(MD)は、黄斑を損傷することにより中心視を破壊する眼疾患である。黄斑は、眼球の内部の大部分を裏打ちする薄い神経細胞層である網膜の一部である。網膜内の神経細胞は光を検出し、眼が見たものに関するシグナルを脳に送る。黄斑は眼球の背部の網膜の中心付近に存在し、その前方に存在するものに焦点を合わせるために動物が用いる明瞭でくっきりとした中心視をもたらす。網膜の残りの部分は側方(周辺)視をもたらす。
【0004】
MDには、萎縮(「乾燥(dry)」)型および滲出(「湿性(wet)」)型の2つの形態が存在する(Riordan-Eva, P., Eye, in Current Medical Diagnosis and Treatment, 41 ed. 210-211 (2002))。患者の90%は乾燥型を有し、一方、10%のみが湿性型を有する。しかし、湿性型を有する患者は彼らの視力の90%までを失いうる(DuBosar, R., J of Ophthalmic Nursing and Technology, IS: 60-64 (1998))。
【0005】
黄斑変性は、ドルーゼンを伴う眼内の網膜色素上皮(RPE)の脈絡膜血管新生(CNVM)および/または地図状萎縮の出現を招く(Bird, A.C., Surv. Qphthamol. 39:367-74 (1995))。ドルーゼンは、視神経網膜(neuroretina)の外方に位置する、眼底内の円形の白ないし黄色の斑点である。MDの更なる症状には、RPE剥離(PED)および黄斑下円板状瘢痕組織が含まれる(Algvere, RV., Acta Ophthalmologica Scandinavica 80:136-143 (2002))。
【0006】
脈絡膜血管新生は、多種多様な網膜疾患に関連した問題であるが、最も一般的には、MDに関連している。CNVMは、脈絡膜(網膜直下の、血管に富む組織層)から生じ網膜層を経て成長する異常な血管により特徴づけられる。これらの新たな血管は非常に脆く、壊れやすく、網膜の層内の、血液および流体の蓄積を招く。血管からの漏出が生じるにつれて、それは、壊れやすい網膜組織を損なって、視力低下を招く。症状の重症度はCNVMのサイズおよび黄斑へのその接近性に左右される。患者の症状は、視野のぼやけ又は歪みのような非常に軽度なもの、あるいは中心盲点のような、より重度のものでありうる。
【0007】
ドルーゼンおよび恐らくは色素異常を有するがCNVMも地図上萎縮も有さない患者は、一般には、加齢性黄斑症(ARM)と診断される(同誌)。ARMおよびMDの組織病理学的特徴は、RPE細胞の基部におけるブルッフ膜の内側部分に沈着する微細顆粒物質の連続層である(Sarks, J. P.ら, Eye 2 (Pt. 5): 552-77 (1988))。これらの基底部沈着は連続的なRPEの食作用からの老廃物または光受容体外節物質として蓄積すると考えられている。該基底部沈着はブルッフ膜の肥厚および透過性減少を引き起こす。水透過性の減少は栄養素の交換を損ない、水を捕捉し、軟性ドルーゼンおよびPEDの発生を促進し、最終的にはRPE細胞の萎縮を招くと仮定されている(同誌)。しかし、ARMおよびMDの病原論の現在の全体的な理解は不十分である(Cour, M.ら, Drugs Aging 19: 101-133 (2002))。
【0008】
MDは、最も急速に増加しつつある人口構成集団である高齢者において最も頻繁に生じるため、MDは、経済的および社会的に重大な問題になるはずである。黄斑変性は、先進国の60歳を越える個体における視力低下の最も一般的な原因である。黄斑変性は170万人の米国人の中心視を喪失させており、更に1100万人がそのリスクを有する(DuBosar, R., J of Ophthalmic Nursing and Technology, 18: 60-64 (1998))。現在、公知治療方法は存在しない(Rhoodhooft, J., Bull. Soc. belge Ophtalmol. 276: 83-92 (2000))。したがって、MDに対する有効な治療方法が緊急に必要とされている。
【0009】
2.2 加齢性黄斑変性の治療
つい最近まで、レーザー光凝固術が、MDに対して通常用いられる唯一の治療方法であったが、それは限られた成果をもたらすに過ぎない。レーザー光凝固術は、網膜の小領域を及び網膜下の異常な血管を焼灼するために、強力な光線を使用するレーザー手術の一形態である。該焼灼は瘢痕組織を形成し、血管を塞いで、網膜下へのその漏出を防ぐ。レーザー光凝固術は、湿性MDを有する患者にのみ有効である。さらに、レーザー光凝固術は、それらの患者の約13%に対してのみ実施可能な選択肢である(Joffe, L.ら, International Ophthalmology Clinics 36 (2): 99-116 (1996))。レーザー光凝固術は湿性MDを治癒しないが、時には中心視の更なる喪失を遅らせたり予防する。しかし、治療を行わなければ、湿性MDによる視力低下は、患者が残存中心視を有さなくなるまで進行しうる。
【0010】
レーザー手術の最も重大な欠点は、レーザーが、光に反応する黄斑内の神経細胞のいくつかを損傷して、多少の視力低下を引き起こすことである。時には、手術により生じる視力低下は、治療しない場合に生じる視力低下と同等か又はそれにより著しい。しかし、患者によっては、レーザー手術は最初は悪化を招くが、時間経過と共に生じる、より重度の視力低下を予防する。
【0011】
最近では、湿性MDを治療するためにベルテポルフィン(verteporfin)が使用されている(Cour, M.ら, Drugs Aging 19: 101-133 (2002))。ベルテポルフィンは、注射により投与される血管閉塞性光反応性色素である。該色素は、視力低下を引き起こす血管に移動し、ついで、酸素の存在下で非焼灼性光線を眼内に照射することにより活性化される。ベルテポルフィンは、主としてリポタンパク質により、血漿中で輸送される。活性化されたベルテポルフィンは、高反応性の短寿命の一重項酸素および反応性酸素ラジカルを生成して、血管新生内皮に対する局所性損傷をもたらす。これは血管閉塞を引き起こす。損傷された内皮はリポオキシゲナーゼ(ロイコトリエン)およびシクロオキシゲナーゼ(エイコサノイド、例えばトロンボキサン)経路を介して凝血促進性および血管作用性因子を放出して、血小板凝集、フィブリン凝塊形成および血管収縮を引き起こすことが公知である。ベルテポルフィンは、脈絡膜新生血管を含む新生血管において或る程度優先的に蓄積するらしい。しかし、動物モデルは、ベルテポルフィンが網膜においても蓄積することを示している。したがって、ベルテポルフィンの投与は、網膜色素上皮および網膜の外顆粒層を含む網膜構造体を付随的に損傷しうるであろう。
【0012】
MDを治療するための、現在研究されているもう1つの方法は、薬理学的抗血管新生療法である(Cour, M.ら, Drugs Aging 19: 101-133 (2002))。しかし、抗血管新生剤インターフェロンαでの最初の臨床試験は、それがMDの治療に無効であり、副作用を高率で引き起こすことを示した(Arch. Ophthalmol. 115: 865-72 (1997))。
【0013】
トリアムシノロンの硝子体内注射は、サルにおけるレーザー誘発性CNVMの成長を抑制するが、無作為化治験におけるMD患者の1年間にわたる重度の視力低下を予防しないと報告されている(Gillies, M. C.ら, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 42:S522 (2001))。多数の他の抗血管新生薬がMD患者における使用のための開発の種々の段階にあり、それらには、アンジオスタチック(angiostatic)ステロイド(例えば、アネコルターブ(anecortave)アセタート、アルコン(Alcon))および血管表皮増殖因子(VEGF)抗体またはそのフラグメントが含まれる(Guyer, D. R.ら, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 42:S522 (2001))。1つのそのようなVEGF抗体として、rhuFabが挙げられる。MDの治療のための更なる新規薬物には、EYE101(Eyetech Pharmaceuticals)、LY333531(Eli Lilly)、MiravantおよびRETISERTインプラント(Bausch & Lomb)(これは3年間にわたってステロイドを眼内に放出する)が含まれる。
【0014】
MDおよび関連黄斑変性疾患の治療のための新規で有望な方法が研究されてはいるが、利用可能な有効な治療方法は尚も存在しない。したがって、依然として、MDに対する有効な治療方法が当技術分野において必要とされている。
【0015】
2.3 免疫調節性化合物
LPSにより刺激されたPBMCによるTNFαの産生を強力に抑制する能力に関して選択された化合物群が研究されている(L. G. Corralら, Ann. Rheum. Dis. 58: (Suppl I) 1107-1113 (1999))。IMiDs(商標)(Celgene Corporation)または免疫調節薬と称されるこれらの化合物は、TNFαの強力な抑制だけではなく、LPS誘導性単球IL1βおよびIL12産生の顕著な抑制をも示す。LPS誘導性IL6も、部分的ではあるが、免疫調節性化合物により抑制される。これらの化合物はLPS誘導性IL10の強力な刺激物質である(同誌)。
【発明の開示】
【0016】
3.発明の概要
本発明は、MDの治療および予防方法であって、それを要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる方法を包含する。本発明は、MDの処置方法(例えば、寛解の時間を延長するための方法)であって、それを要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる方法も包含する。
【0017】
本発明のもう1つの実施形態は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグと、MDを治療または予防するのに有用な他の治療剤、例えばステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物もしくは抗血管新生化合物またはそれらの組合せ(これらに限定されるものではない)との併用を含む。
【0018】
本発明の更にもう1つの実施形態は、MDの治療、予防または処置方法であって、それを要する患者に、有効量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、通常の療法、例えば外科的介入(例えば、レーザー光凝固術および光線力学治療)(これらに限定されるものではない)と組合せて投与することを含んでなる方法を含む。
【0019】
本発明は更に、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを含んでなる、MDの治療、予防および/または処置における使用に適した医薬組成物、一単位投与形(single unit dosage forms)およびキットを含む。
【0020】
4.発明の詳細な説明
本発明の第1の実施形態は、MDの治療および予防方法であって、それを要する患者(例えば哺乳動物、例えばヒト)に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる方法を含む。本発明は更に、萎縮型(乾燥)MD、滲出型(湿性)MD、加齢性黄斑症(ARM)、脈絡膜血管新生(CNVM)、網膜色素上皮剥離(PED)および網膜色素上皮(RPE)の萎縮を含む(これらに限定されるものではない)特定の型のMDおよび関連症候群の治療または予防に関する。
【0021】
いくつかの黄斑変性疾患は、ある年齢群において、より多く見られるが、本明細書中で用いる「黄斑変性」または「MD」なる語は、患者の年齢には無関係に全ての形態の黄斑変性疾患を含む。これらには、ベスト病または卵黄状黄斑変性(約7歳未満の患者において最も多く見られる);シュタルガルト病、若年性黄斑ジストロフィ、黄色斑眼底(約5〜約20歳の患者において最も多く見られる);ベール病、ソルスビー(Sorsby's)病、ドイン病または蜂巣状(honeycomb)ジストロフィ(約30〜約50歳の患者において最も多く見られる);および加齢性黄斑変性(約60歳以上の患者において最も多く見られる)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
MDの原因には、遺伝的なもの、物理的外傷、糖尿病のような疾患、栄養失調、および細菌感染(例えば、特に、らい病およびENL)のような感染が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態は、MDの処置を要する患者に、予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる、MDの処置方法を含む。
【0024】
本発明のもう1つの実施形態は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグと場合によっては担体とを含んでなる医薬組成物を含む。
【0025】
本発明はまた、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグと、場合によっては担体とを含んでなる一単位投与形を含む。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を含んでなるキットを含む。本発明は更に、一単位投与形を含んでなるキットを含む。本発明に含まれるキットは更に、追加的な活性物質を含みうる。特定のキットは、MDの検出または診断に有用なアムスラー格子を含む。
【0027】
理論により限定されるものではないが、MDの症状の治療に使用しうる或る免疫調節性化合物および他の医薬は、MDの治療または処置において相補的または相乗的に作用しうると考えられている。したがって、本発明の1つの実施形態は、MDの治療、予防および/または処置方法であって、それを要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグと、治療的または予防的に有効な量の第2の活性物質とを投与することを含んでなる方法を含む。
【0028】
第2の活性物質には、例えば、MDの治療または予防に使用される通常の治療剤、例えばステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物および抗血管新生化合物、ならびに例えばPhysician's Desk Reference 2003に記載されている他の治療剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。第2の活性物質の具体例には、ベルテポルフィン(verteporfin)、プルリチン(purlytin)、アンジオスタチック(angiostatic)ステロイド、rhuFab、インターフェロン2α、インテグリン、抗酸化剤およびペントキシフィリン(pentoxifylline)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明はまた、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグと第2の活性物質とを含んでなる医薬組成物、一単位投与形およびキットを含む。例えば、キットは、本発明の化合物と、ステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物もしくは抗血管新生化合物またはそれらの組合せ又はMDの症状を軽減もしくは緩和しうる他の薬物とを含有しうる。
【0030】
個々の免疫調節性化合物は、MDの治療に使用する治療剤の投与に関連した副作用を軽減または排除して、患者への大量の該治療剤の投与を可能にし、および/または患者のコンプライアンスを促しうると考えられる。したがって、本発明のもう1つの実施形態は、MDに罹患した患者における第2の活性物質の投与に関連した副作用の反転、軽減または回避方法であって、それを要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを投与することを含んでなる方法を含む。
【0031】
本明細書に記載のとおり、MDの症状は、外科的介入、例えば光またはレーザー療法、放射線療法、網膜色素上皮移植および中心窩転位(foveal translocation)(これらに限定されるものではない)により治療されうる。理論により限定されるものではないが、そのような通常の療法と免疫調節性化合物との併用は非常に有効でありうると考えられる。したがって、本発明は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、外科的介入または他の通常の非薬物療法の前、途中または後に患者に投与することを含んでなる、MDの治療、予防および/または処置方法を含む。
【0032】
4.1 免疫調節性化合物
本発明において使用する化合物には、ラセミ体、立体的に富化された又は立体的に純粋である免疫調節性化合物およびそのプロドラッグが含まれる。本発明において使用する好ましい化合物は、約1000g/mol未満の分子量を有する小さな有機分子であり、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖または他の高分子ではない。
【0033】
本明細書中で用いる「立体的に純粋」なる語は、特に示さない限り、化合物の立体異性体の1つを含みその化合物の他の立体異性体を実質的に含有しない組成を意味する。例えば、1個のキラル中心を有する化合物の立体的に純粋な組成は該化合物の反対のエナンチオマーを実質的に含有しない。2個のキラル中心を有する化合物の立体的に純粋な組成は該化合物の他のジアステレオマーを実質的に含有しない。典型的な立体的に純粋な化合物は、約80重量%以上の該化合物の立体異性体の1つ及び約20重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、より好ましくは、約90重量%以上の該化合物の立体異性体の1つ及び約10重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、より一層好ましくは、約95重量%以上の該化合物の立体異性体の1つ及び約5重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、最も好ましくは、約97重量%以上の該化合物の立体異性体の1つ及び約3重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含む。
【0034】
本明細書中で用いる「立体的に富化された」なる語は、特に示さない限り、化合物の立体異性体の1つを約60重量%以上、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは、化合物の立体異性体の1つを約80重量%以上含む組成を意味する。本明細書中で用いる「エナンチオ的に純粋」なる語は、1個のキラル中心を有する化合物の立体的に純粋な組成を意味する。同様に、「エナンチオ的に富化された」なる語は、1個のキラル中心を有する化合物の立体的に富化された組成を意味する。
【0035】
本明細書中で用いる「エナンチオ的に純粋」なる語は、特に示さない限り、1個のキラル中心を有する化合物の立体的に純粋な組成を意味する。同様に、「エナンチオ的に富化された」なる語は、1個のキラル中心を有する化合物の立体的に富化された組成を意味する。
【0036】
本明細書中で用いる「免疫調節性化合物」または「IMiDs(商標)」(Celgene Corporation, NJ)なる語は、特に示さない限り、TNFα、LPS誘導性単球ILβおよびIL12を顕著に抑制しIL6産生を部分的に抑制する小さな有機分子を含む。具体的な免疫調節性化合物は、後記で説明する。
【0037】
TNFαは、急性炎症中にマクロファージおよび単球により産生される炎症性サイトカインである。TNFαは細胞内での多種多様なシグナリング事象をもたらす。理論により限定されるものではないが、特定の免疫調節性化合物によりもたらされる生物学的効果として、TNFαの合成の減少が挙げられる。特定の免疫調節性化合物はTNFα mRNAの分解を増強しうる。
【0038】
理論により限定されるものではないが、本発明において使用する免疫調節性化合物はまた、T細胞の強力な共刺激物質であり、細胞増殖を用量依存的に劇的に増強しうる。また、免疫調節性化合物は、CD8+ T細胞サブセットに対しては、CD4+ T細胞サブセットに対してよりも大きな共刺激効果を有しうる。免疫刺激性化合物は、好ましくは、抗炎症特性を有し、T細胞を効率的に共刺激する。
【0039】
免疫調節性化合物の具体例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:例えば米国特許第5,929,117号に開示されているような置換スチレンのシアノおよびカルボキシ誘導体;例えば米国特許第5,874,448号および第5,955,476号に記載されているような1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3イル)イソインドリンおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン;米国特許第5,798,368号に記載のテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン;1-オキソおよび1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン(例えば、サリドマイドおよびEM-12の4-メチル誘導体)、例えば米国特許第5,635,517号および第6,403,613号に開示されているもの(これらに限定されるものではない);米国特許第6,380,239号に記載の、インドリン環の4位または5位において置換された1-オキソおよび1,3-ジオキソイソインドリン(例えば、4-(4-アミノ-1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)-4-カルバモイルブタン酸);米国特許第6,458,810号に記載の、2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルにより2位において置換されたイソインドリン-1-オンおよびイソインドリン-1,3-ジオン(例えば、2-(2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシ-5-フルオロピペリジン-5-イル)-4-アミノイソインドリン-1-オン);米国特許第5,698,579号および第5,877,200号に開示されている非ポリペプチド環状アミドのクラス;サリドマイドの類似体および誘導体、例えば、サリドマイドの加水分解産物、代謝産物、誘導体および前駆体、例えば、D'Amatoの米国特許第5,593,990号、第5,629,327号および第6,071,948号に記載されているもの、ならびにアミノサリドマイドの類似体、加水分解産物、代謝産物、誘導体および前駆体、ならびに置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドール、例えば、米国特許第6,281,230号および第6,316,471号に記載されているもの;ならびにイソインドール-イミド化合物、例えば、2001年10月5日付け出願の米国特許出願第09/972,487号、2001年12月21日付け出願の米国特許出願第10/032,286号および国際出願番号PCT/US01/50401(国際公開番号WO 02/059106)に記載されているもの。本明細書中に示す特許および特許出願のそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。免疫調節性化合物には、サリドマイドは含まれない。
【0040】
他の具体的な免疫調節性化合物には、本明細書に組み入れる米国特許第5,635,517号に記載されているとおりベンゾ環においてアミノにより置換された1-オキソ-および1,3 ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は構造I:
【化1】

【0041】
(式中、XおよびYのうちの一方はC=Oであり、XおよびYのうちのもう一方はC=OまたはCH2であり、R2は水素または低級アルキル、特にメチルである)を有する。具体的な免疫調節性化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-7-アミノイソインドリン;
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;
および1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン。
【0042】
他の具体的な免疫調節性化合物は、例えば米国特許第6,281,230号、第6,316,471号、6,335,349号および第6,476,052号ならびに国際特許出願番号PCT/US97/13375(国際公開番号WO 98/03502)(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているような置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミドおよび置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドールのクラスに属する。このクラスの代表的化合物は式:
【化2】

【0043】
(式中、R1は水素またはメチルである)の化合物である。別の実施形態においては、本発明は、これらの化合物のエナンチオ的に純粋な形態(例えば、光学的に純粋な(R)または(S)エナンチオマー)の使用を包含する。
【0044】
さらに他の具体的な免疫調節性化合物は、米国特許出願第10/032,286号および第09/972,487号ならびに国際出願番号PCT/US01/50401(国際公開番号WO 02/059106)(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているイソインドール-イミドのクラスに属する。代表的化合物は式II:
【化3】

【0045】
の化合物ならびにその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体および立体異性体混合物であり、ここで、
XおよびYのうちの一方はC=Oであり、もう一方はCH2またはC=Oである;
R1はH、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5である;
R2はH、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニルまたは(C2-C8)アルキニルである;
R3およびR3'は、独立して、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5である;
R4は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキルまたは(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールである;
R5は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリールまたは(C2-C5)ヘテロアリールである;
R6のそれぞれは、独立して、H、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリールまたは(C0-C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、または複数のR6基が一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成しうる;
nは0または1である;および
*はキラル炭素中心を表す。
【0046】
式IIの特定の化合物においては、nが0である場合、R1は(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(S)NHR3または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5である;
R2はHまたは(C1-C8)アルキルである;および
R3は(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C5-C8)アルキル-N(R6)2;(C0-C8)アルキル-NH-C(O)OR5;(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5である;その他の基は前記と同意義を有する。
【0047】
式IIの他の特定の化合物においては、R2はHまたは(C1-C4)アルキルである。
【0048】
式IIの他の特定の化合物においては、R1は(C1-C8)アルキルまたはベンジルである。
【0049】
式IIの他の特定の化合物においては、R1はH、(C1-C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、CH2CH2OCH3または
【化4】

【0050】
である。
【0051】
式IIの化合物のもう1つの実施形態においては、R1
【化5】

【0052】
[式中、QはOまたはSであり、R7のそれぞれは、独立して、H、(C1-C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、CH2CH2OCH3である]である。
【0053】
式IIの他の特定の化合物においては、R1はC(O)R3である。
【0054】
式IIの他の特定の化合物においては、R3は(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C1-C8)アルキル、アリールまたは(C0-C4)アルキル-OR5である。
【0055】
式IIの他の特定の化合物においては、ヘテロアリールはピリジル、フリルまたはチエニルである。
【0056】
式IIの他の特定の化合物においては、R1はC(O)OR4である。
【0057】
式IIの他の特定の化合物においては、C(O)NHC(O)のHは(C1-C4)アルキル、アリールまたはベンジルにより置換されうる。
【0058】
さらに他の特定の免疫調節性化合物は、米国特許出願第09/781,179号、国際公開番号WO 98/54170および米国特許第6,395,754号(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているイソインドール-イミドのクラスに属する。代表的な化合物は式III:
【化6】

【0059】
の化合物ならびにその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体および立体異性体混合物であり、ここで、
XおよびYのうちの一方はC=Oであり、もう一方はCH2またはC=Oである;
RはHまたはCH2OCOR'である;
(i)R1、R2、R3またはR4のそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素数1〜4のアルキル、または炭素数1〜4のアルコキシであり、あるいは(ii)R1、R2、R3またはR4のうちの1つはニトロまたは-NHR5であり、R1、R2、R3またはR4のうちの残りのものは水素である;
R5は水素または炭素数1〜8のアルキルである;
R6は水素、炭素数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロである;
R'はR7-CHR10-N(R8R9)である;
R7はm-フェニレンまたはp-フェニレンまたは-(CnH2n)-(ここで、nは0〜4の値を有する)である;
R8およびR9のそれぞれは、互いに独立して、水素、または炭素数1〜8のアルキルであるか、あるいはR8とR9とが一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンまたは-CH2CH2[X]X1CH2CH2-(ここで、[X]X1は-O-、S-または-NH-である)である;
R10は水素、炭素数8のアルキルまたはフェニルである;および
*はキラル炭素中心を表す。
【0060】
最も好ましい免疫調節性化合物は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンおよび3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである。該化合物は標準的な合成方法により得ることができる(例えば、米国特許第5,635,517号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(ACTIMID(商標))は以下の化学構造を有する。
【化7】

【0061】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(REVIMID(商標))は以下の化学構造を有する。
【化8】

【0062】
本発明の化合物は商業的に購入されうるか、または本明細書に開示されている特許または特許公開に記載されている方法により製造されうる。さらに、光学的に純粋な化合物は、公知の分割剤またはキラルカラムおよび他の標準的な合成有機化学技術を用いて不斉合成または分割されうる。
【0063】
本明細書中で用いる「医薬上許容される塩」なる語は、特に示さない限り、この用語が指している化合物の無毒性の酸および塩基付加塩を含む。許容される無毒性の酸付加塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボル酸(embolic acid)、エナント酸などを含む当技術分野で公知の有機および無機の酸または塩基から誘導されるものが含まれる。
【0064】
実質的に酸性である化合物は、種々の医薬上許容される塩基と塩を形成しうる。そのような酸性化合物の医薬上許容される塩基付加塩を製造するために使用しうる塩基は、無毒性塩基付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるカチオンを含有する塩(例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない)を形成するものである。適当な有機塩基には、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リシンおよびプロカインが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本明細書中で用いる「プロドラッグ」なる語は、特に示さない限り、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化または反応を受けて化合物を与える、該化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの具体例には、生物加水分解性(biohydrolyzable)アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバマート、生物加水分解性カルボナート、生物加水分解性ウレイドおよび生物加水分解性ホスファート類似体のような生物加水分解性部分を含む免疫調節性化合物の誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。プロドラッグの他の具体例には、-NO、-NO2、-ONOまたは-ON02部分を含む免疫調節性化合物の誘導体が含まれる。プロドラッグは、典型的には、よく知られた方法、例えばBurger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178,949-982(Manfred E. Wolff編, 5th ed. 1995)およびDesign of Prodrugs(H. Bundgaard編, Elselvier, New York 1985)に記載の方法を用いて製造することが可能である。
【0066】
本明細書中で用いる「生物加水分解性アミド」、「生物加水分解性エステル」、「生物加水分解性カルバマート」、「生物加水分解性カルボナート」、「生物加水分解性ウレイド」および「生物加水分解性ホスファート」なる語は、特に示さない限り、化合物のそれぞれアミド、エステル、カルバマート、カルボナート、ウレイドまたはホスファートであって、1)該化合物の生物活性を妨げないが、in vivoにおける有利な特性(取り込み、作用持続時間または作用発現)をその化合物に付与しうるもの、または2)生物学的に不活性であるが、生物学的に活性な化合物にin vivoで変換されるものを意味する。生物加水分解性エステルの具体例には、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(例えば、アセトキシルメチル、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシメチル、ピバロイルオキシメチルおよびピバロイルオキシエチルエステル)、ラクトニルエステル(例えば、フタリジルおよびチオフタリジルエステル)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチル、エトキシカルボニルオキシエチルおよびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステルおよびアシルアミノアルキルエステル(例えば、アセトアミドメチルエステル)が含まれるが、これらに限定されるものではない。生物加水分解性アミドの具体例には、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミドおよびアルキルアミドアルキルカルボニルアミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。生物加水分解性カルバマートの具体例には、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、ヘテロ環式およびヘテロ芳香族アミンならびにポリエーテルアミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
示されている構造とその構造に与えられている名称とが矛盾する場合には、示されている構造が優先されることに注目すべきである。また、構造または構造の一部の立体化学が例えば太線または破線で示されていない場合には、該構造または該構造の一部は、その全ての立体異性体を含むと解釈されるべきである。
【0068】
4.2 第2の活性物質
本発明の方法および組成物においては、免疫調節性化合物と共に第2の活性物質を使用することが可能である。好ましい実施形態においては、第2の活性物質は黄斑損傷状態を抑制または軽減して、抗血管新生または抗炎症効果をもたらしたり、患者を楽にしうる。
【0069】
第2の活性物質の具体例には、ステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物、抗血管新生化合物、およびMDの症状を抑制または軽減することが知られている他の治療剤、ならびにそれらの医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物、プロドラッグおよび薬理学的に活性な代謝産物が含まれるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、第2の活性物質は、ベルテポルフィン(verteporfin)、プルリチン(purlytin)、アンジオスタチック(angiostatic)ステロイド、rhuFab、インターフェロン2αまたはペントキシフィリン(pentoxifylline)である。
【0070】
光増感剤の具体例には、ベルテポルフィン(verteporfin)、スズ エチオプルプリン(tin etiopurpurin)およびモテキサフィン(motexafin)ルテチウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。ベルテポルフィンは、湿性型MDを治療するために使用されうる(Cour, M.ら, Drugs Aging 19:101-133 (2002))。ベルテポルフィンは、注射により投与されうる血管閉塞性光反応性色素である。
【0071】
キサンチン誘導体の具体例には、ペントキシフィリン(pentoxifylline)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0072】
抗VEGF抗体の具体例には、rhuFabが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0073】
ステロイドの具体例には、9-フルオロ-11,21-ジヒドロキシ-16,17-1-メチルエチリジンビス(オキシ)プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0074】
プロスタグランジンF2a誘導体の具体例には、ラタノプロスト(米国特許第6,225,348号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
抗生物質の具体例には、テトラサイクリンおよびその誘導体、リファマイシンおよびその誘導体、マクロライドおよびメトロニダゾール(米国特許第6,218,369号および第6,015,803号(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
フィトエストロゲンの具体例には、ゲニステイン、6'-O-Malゲニスチン、6'-O-Acゲニスチン、ダイジン、6'-O-Malダイジン、6'-O-Acダイジン、グリシテイン(glycitein)、グリシチン(glycitin)、6'-O-Malグリシチン、ビオカニンA、ホルムオノネチンおよびそれらの混合物(米国特許第6,001,368号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
抗炎症剤の具体例には、トリアムシノロンアセトニドおよびデキサメタゾン(米国特許第5,770,589号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
抗血管新生化合物の具体例には、サリドマイドおよび選択的サイトカイン抑制薬(SelCIDs(商標), Celgene Corp. , N.J.)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
インターフェロンの具体例には、インターフェロン2αが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0080】
もう1つの実施形態においては、第2の活性物質はグルタチオン(米国特許第5,632,984号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)である。
【0081】
成長ホルモンの具体例には、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)およびトランスフォーミング増殖因子b(TGF-b)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
神経栄養因子の具体例には、脳由来神経栄養因子(BDNF)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0083】
血管新生調節剤の具体例には、プラスミノーゲン活性化因子2型(PAI-2)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0084】
MDの治療に使用しうる更なる薬物には、EYE101(Eyetech Pharmaceuticals)、LY333531(Eli Lilly)、MiravantおよびRETISERTインプラント(Bausch & Lomb)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
4.3 治療および予防方法
本発明は、種々の型のMDの予防、治療および/または処置方法を含む。本明細書中で用いる「MDの予防」、「MDの治療」および「MDの処置」なる語は、特に示さない限り、MDに関連した1以上の症状の重症度の抑制または軽減を含むが、これらに限定されるものではない。MDおよび関連症候群に関連した症状には、ドルーゼン(眼底内の円形の白ないし黄色の斑点)、黄斑下円板状瘢痕組織、脈絡膜血管新生、網膜色素上皮剥離、網膜色素上皮の萎縮、脈絡膜(網膜直下の、血管に富む組織層)から生じる異常な血管、視野のぼやけ又は歪み、中心盲点、色素異常、ブルッフ膜の内側部分に沈着する微細顆粒物質の連続層、ならびにブルッフ膜の肥厚および透過性減少が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本明細書中で用いる「MDの治療」なる語は、特に示さない限り、MDの症状の発現後に本発明の化合物または他の追加的な活性物質を投与することを意味し、一方、「予防」は、特にMDのリスクを有する患者に、症状の発現前に投与することを意味する。MDのリスクを有する患者の具体例には、60歳以上の高齢者、ならびに例えば糖尿病およびらい病(例えば、ENL)(これらに限定されるものではない)のような疾患に罹患している患者が含まれるが、これらに限定されるものではない。MDの家族歴を有する患者も、予防計画のための好ましい候補である。本明細書中で用いる「MDの処置」なる語は、特に示さない限り、MDを罹患したことのある患者におけるMDの再発を予防すること、および/またはMDを罹患したことのある患者の寛解状態の維持時間を延長することを含む。
【0087】
本発明は、湿性型MD、乾燥型MD、加齢性黄斑症(ARM)、脈絡膜血管新生(CNVM)、網膜色素上皮剥離(PED)、および網膜色素上皮(RPE)の萎縮を含む(これらに限定されるものではない)疾患の種々の病期および特定の型を有する患者におけるMDおよび関連症候群の治療、予防および処置方法を含む。それは更に、MDに対して既に治療されており標準的な薬物および薬物以外によるMDの治療に不応性である患者、ならびにMDに対して治療されていない患者の治療方法を含む。MDを有する患者は雑多な臨床的徴候および種々の臨床的結果を示すため、患者に行う治療は、該患者の予後に応じて様々となりうる。熟練した臨床家であれば、過度な実験を行うことなく、個々の患者を治療するために有効に使用しうる具体的な第2の物質および治療を容易に決定しうるであろう。
【0088】
本発明に含まれる方法は、1以上の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、MDに罹患した又は罹患した可能性のある患者に投与することを含む。
【0089】
本発明の1つの実施形態においては、免疫調節性化合物を約0.10〜約150mg/日の量で1日量として又は分割された1日量として経口投与する。特定の実施形態においては、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(Actimid(商標))を約0.1〜約1mg/日の量で又は1日おきに約0.1〜約5mgの量で投与する。好ましい実施形態においては、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(Revimid(商標))を約1〜約25mg/日の量で又は1日おきに約10〜約50mgの量で投与する。治療は、約2〜約20週間、約4〜約16週間、約8〜約20週間にわたり、所望の治療効果が達成されるまで、あるいは所望の効果を維持するために慢性的に継続する。
【0090】
4.3.1 第2の活性物質との併用療法
本発明の特定の方法は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、第2の活性物質または活性成分と共に投与することを含む。免疫調節性化合物の具体例は本明細書中に開示されており(例えば、第4.1節を参照されたい)、第2の活性物質の具体例も本明細書中に開示されている(例えば、第4.2節を参照されたい)。
【0091】
免疫調節性化合物および所望により使用しうる第2の活性物質の患者への投与は、同じ又は異なる投与経路により同時または連続的に行うことが可能である。個々の活性物質に関して用いる個々の投与経路の適合性は、該活性物質自体(例えば、それが、血流に進入する前に分解されずに、経口投与されうるかどうか)および治療する疾患に左右されるであろう。免疫調節性化合物の好ましい投与経路は経口または眼内である。本発明の第2の活性物質の好ましい投与経路は当業者に公知である。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-597(56th ed., 2002)を参照されたい。
【0092】
1つの実施形態においては、第2の活性物質を経口的、静脈内、筋肉内、皮下、粘膜、局所または経皮的に1日1回または2回、約0.1mg〜約2,500mg、約1mg〜約2,000mg、約10mg〜約1,500mg、約50mg〜約1,000mg、約100mg〜約750mg、または約250mg〜約500mgの量で投与する。
【0093】
他の実施形態においては、第2の活性物質を毎週、毎月、隔月または毎年投与する。該活性物質の具体的な量は、使用する具体的な物質、治療または予防するMDの型、MDの重症度および病期、ならびに患者に併用投与する免疫調節性化合物および所望により使用しうる任意の他の物質の量に左右されうる。特定の実施形態においては、第2の活性物質はステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物もしくは抗血管新生化合物またはそれらの組合せである。
【0094】
4.3.2 外科的介入との併用
本発明は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、外科的介入と組合せて(例えば、外科的介入の前、途中または後に)投与することを含んでなる、MDの治療、予防および/または処置方法を含む。外科的介入の具体例には、光またはレーザー療法、放射線療法、網膜色素上皮移植および中心窩転位が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
免疫調節性化合物と外科的介入との併用は、患者によっては予想外に有効となりうる特有の治療計画である。理論により限定されるものではないが、免疫調節性化合物は、外科的介入と共に投与されると相加または相乗効果をもたらしうると考えられる。
【0096】
特定の実施形態においては、本発明は、MDの治療、予防および/または処置方法であって、それを要する患者に、有効量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを、光またはレーザー療法と組合せて投与することを含んでなる方法を含む。光またはレーザー療法の具体例には、レーザー光凝固術および光線力学治療が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
免疫調節性化合物は、外科的介入と同時に又は連続的に投与することが可能である。1つの実施形態においては、光またはレーザー療法の前に免疫調節剤を投与する。もう1つの実施形態においては、光またはレーザー療法の後に免疫調節性化合物を投与する。1つの実施形態においては、光またはレーザー療法の途中に免疫調節性化合物を投与する。該化合物は、レーザー手術の少なくとも4週間前、2週間前、1週間前もしくは直前に、または該手術の時もしくは後に約12〜16週の合計治療期間にわたり投与することが可能である。
【0098】
4.3.3 周期療法
ある実施形態においては、本発明の予防剤または治療剤を周期的に患者に投与する。周期療法は、或る期間にわたる第1の物質の投与およびそれに続く或る期間にわたる該物質および/または第2の物質の投与、ならびにこの連続投与の反復を含む。周期療法は、該療法の1以上に対する耐性の発生を減少させ、該療法の1つの副作用を回避もしくは軽減し、および/または該治療の効力を改善しうる。
【0099】
特定の実施形態においては、予防剤または治療剤を約6ヶ月の周期で毎日約1回または2回投与する。1周期は治療剤または予防剤の投与および少なくとも1〜3週間の非投与期間を含みうる。投与周期数は約1〜約12周期、約2〜約10周期、または約2〜約8周期でありうる。
【0100】
4.4 医薬組成物および一単位投与形
医薬組成物は個々の一単位投与形(一単位剤形)の製造において使用することが可能である。本発明の医薬組成物および剤形は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを含む。本発明の医薬組成物および剤形は更に、1以上の賦形剤を含みうる。
【0101】
本発明の医薬組成物および剤形はまた、1以上の追加的な活性物質を含みうる。したがって、本発明の医薬組成物および剤形は、本明細書に開示されている活性物質(例えば、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグ、および第2の活性物質)を含む。所望により使用しうる追加的な活性物質の具体例は本明細書に開示されている(例えば、第4.2節を参照されたい)。
【0102】
本発明の一単位投与形は患者への経口的、粘膜(例えば、鼻腔内、舌下、膣内、頬側または直腸内)または非経口的(例えば、皮下、静脈内、丸塊注射、筋肉内または動脈内)、局所(例えば、点眼)、眼内、経皮投与に適している。剤形の具体例には、錠剤;カプレット;カプセル、例えば軟弾性ゼラチンカプセル;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;分散剤;坐剤;散剤;エアゾール剤(例えば、鼻噴霧剤または吸入剤);点眼剤;ゲル剤;患者への経口または粘膜投与に適した液体剤形、例えば懸濁剤(例えば、水性または非水性液体懸濁剤、水中油型乳剤または油中水型液体乳剤)、液剤(水剤)およびエリキシル剤;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を得るために還元されうる無菌固体(例えば、結晶性または非晶性固体)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明の剤形の組成、形状およびタイプは、典型的には、それらの用途に応じて様々となろう。例えば、疾患の急性的治療において使用する剤形は、同じ疾患の慢性的治療において使用する剤形より大量の1以上の該活性物質を含有しうる。同様に、非経口剤形は、同じ疾患を治療するために使用する経口剤形より少量の1以上の該活性物質を含有しうる。本発明に含まれる具体的な剤形がそれらの相互で異なるこれら及び他の様態は、当業者に明らかである。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0104】
典型的な医薬組成物および剤形は1以上の賦形剤を含む。適当な賦形剤は薬学分野の当業者に良く知られており、適当な賦形剤の非限定的な具体例は本明細書に記載されている。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形内への配合に適しているかどうかは、当技術分野において良く知られている種々の要因、例えば、該剤形が患者に投与される様態(これに限定されるものではない)に左右される。例えば、錠剤のような経口剤形は、非経口剤形における使用に適さない賦形剤を含有しうる。特定の賦形剤の適合性は該剤形中の具体的な活性物質によっても左右される。例えば、いくつかの活性物質の分解はラクトースのような幾つかの賦形剤により又は水に対する曝露の際に促進されうる。第一級または第二級アミンを含む活性物質は、そのような分解促進を特に受けやすい。したがって、本発明は、ラクトースその他の単糖または二糖を含有するとしても非常に僅かしか含有しない医薬組成物および剤形を含む。本明細書中で用いる「ラクトース非含有」なる語は、存在しうるラクトースの量が、活性物質の分解速度を実質的に増加させるのに不十分であることを意味する。
【0105】
本発明のラクトース非含有組成物は、当技術分野において良く知られており例えばU.S. Pharmacopeia (USP) 25-NF20 (2002)に列挙されている賦形剤を含みうる。一般に、ラクトース非含有組成物は、活性物質、結合剤/充填剤および滑沢剤を、製薬上適合し許容される量で含む。好ましいラクトース非含有剤形は、活性物質、微晶質セルロース、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0106】
本発明は更に、活性物質を含んでなる無水医薬組成物および剤形を包含する。なぜなら、水は幾つかの化合物の分解を促進しうるからである。例えば、貯蔵寿命または製剤の経時安定性のような特性を判定するために長期貯蔵を模擬するための手段として、水(例えば、5%)の添加は薬学分野において広く許容されている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照されたい。実際、水および熱は幾つかの化合物の分解を促進する。したがって、製剤に対する水の影響は非常に重要となりうる。なぜなら、製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、出荷および使用中には、一般に、水分および/または湿気との接触があるからである。
【0107】
本発明の無水医薬組成物および剤形は、無水または低湿気含有物質および低水分または低湿気条件を用いて製造することが可能である。製造、包装および/または貯蔵中に水分および/または湿気とのかなりの接触が予想される場合には、第一級または第二級アミンを含む少なくとも1つの活性物質とラクトースとを含む医薬組成物および剤形は、好ましくは、無水である。
【0108】
無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように製造し貯蔵すべきである。したがって、無水組成物は、好ましくは、水に対する曝露を防ぐことが知られている物質を使用して包装して、それらが、適当な処方キットに含まれうるようにする。適当な包装の具体例には、密閉ホイル、プラスチック、単位投与容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装およびストリップ包装が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明は更に、活性物質が分解する速度を減少させる1以上の化合物を含む医薬組成物および剤形を包含する。そのような化合物は、本明細書中では「安定剤」と称され、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、pHバッファーまたは塩バッファーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0110】
賦形剤の量およびタイプと同様に、剤形中の活性物質の量および具体的なタイプは、例えばその投与経路(これに限定されるものではない)のような要因に応じて様々となりうる。しかし、本発明の典型的な剤形は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを約0.10〜約150mgの量で含む。典型的な剤形は、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを約0.1、1、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150または200mgの量で含む。特定の実施形態においては、好ましい剤形は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(Actimid(商標))を約1、2.5、5、10、25または50mgの量で含む。特定の実施形態においては、好ましい剤形は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(Revimid(商標))を約1、2.5、5、10、25または50mgの量で含む。典型的な剤形は第2の活性物質を約1〜約2,500mg、約1mg〜約2,000mg、約10mg〜約1,500mg、約50mg〜約1,000mg、約100mg〜約750mg、または約250mg〜約500mgの量で含む。もちろん、第2の活性物質の具体的な量は、使用する具体的な物質、治療または処置するMDの型、ならびに患者に共投与する免疫調節性化合物および所望により使用しうる追加的な活性物質の量に左右されるであろう。
【0111】
4.4.1 経口剤形
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、錠剤(例えば、咀嚼可能な錠剤)、カプレット、カプセル剤および液剤(例えば、香味付けされたシロップ剤)(これらに限定されるものではない)のような分離した剤形として提供されうる。そのような剤形は所定量の活性物質を含有し、当業者に良く知られた薬学的方法により製造されうる。全般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照されたい。
【0112】
典型的な経口剤形は、通常の医薬調剤技術により、それらの活性物質を少なくとも1つの賦形剤との密接な混合物として一緒にすることにより製造される。賦形剤は、投与に望ましい製剤形態に応じて、多種多様な形態をとりうる。例えば、経口液体またはエアゾール剤形における使用に適した賦形剤には、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤および着色剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。固形経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤およびカプレット)における使用に適した賦形剤の具体例には、デンプン、糖、微晶質セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
錠剤およびカプセル剤は、それらの投与が容易であるため、最も有利な経口投与単位形に相当し、この場合、固体賦形剤が使用される。所望により、標準的な水性または非水性技術により錠剤をコーティングすることが可能である。そのような剤形は、任意の製薬方法により製造することが可能である。一般には、医薬組成物および剤形は、活性物質を液体担体、微細固体担体またはそれらの両方と均一かつ密接に混合し、ついで、必要に応じて、該産物を所望の外観に成形することにより製造する。
【0114】
例えば、錠剤は、圧縮またはすりこみにより製造することが可能である。圧縮錠剤は、場合によっては賦形剤と混合された散剤または顆粒剤のような易流動性形態の活性物質を適当な装置内で圧縮することにより製造することが可能である。すりこみ錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を、適当な装置内で、すりこみに付すことにより製造することが可能である。
【0115】
本発明の経口剤形において使用しうる賦形剤の具体例には、結合剤、充填剤、崩壊剤および滑沢剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。医薬組成物および剤形における使用に適した結合剤には、コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ガム、例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギナート、粉末化トラガカント、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、微晶質セルロースおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
微晶質セルロースの適当な形態には、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能である)として販売されている物質またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的な結合剤としては、微晶質セルロースと、AVICEL RC-581として販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物が挙げられる。適当な無水または低湿気の賦形剤または添加剤には、AVICEL-PH-103(商標)およびStarch 1500 LMが含まれる。
【0117】
本明細書に開示されている医薬組成物および剤形における使用に適した充填剤の具体例には、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微晶質セルロース、粉末化セルロース、デキストラート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプンおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物における結合剤または充填剤は、典型的には、該医薬組成物または剤形に対して約50〜99重量%で存在する。
【0118】
水性環境にさらされると崩壊する錠剤を得るためには、本発明の組成物においては崩壊剤を使用する。崩壊剤の含有量が多すぎる錠剤は、貯蔵中に崩壊する可能性があり、一方、崩壊剤の含有量が少なすぎる錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない可能性がある。したがって、本発明の固形経口剤形を形成するためには、活性物質の放出を不利に改変するほどには多すぎない且つ少なすぎない崩壊剤の十分な量を使用すべきである。崩壊剤の使用量は製剤のタイプに応じて様々となり、当業者に容易に認識されうる。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは、約1〜約5重量%の崩壊剤を含む。
【0119】
本発明の医薬組成物および剤形において使用しうる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガムおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
本発明の医薬組成物および剤形において使用しうる滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。追加的な滑沢剤には、例えばシロイド(syloid)シリカゲル(Baltimore, MDのW. R. Grace Co.により製造されているAEROSIL200)、合成シリカの凝固エアゾール(Plano, TXのDegussa Co.により販売されている)、CAB-O-SIL(Boston, MAのCabot Co.により販売されている発熱原性二酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が含まれる。滑沢剤を使用する場合には、それは、典型的には、それを配合する医薬組成物または剤形に対して約1重量%未満の量で使用する。
【0121】
本発明の好ましい固形経口剤形は、免疫調節性化合物、無水ラクトース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド無水シリカおよびゼラチンを含む。
【0122】
4.4.2 徐放剤形
本発明の活性物質は、当業者に周知の放出制御方法又は送達デバイスにより投与することが可能である。具体例には、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、ならびに第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号および第5,733,566号(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような剤形は、種々の比率の所望の放出プロフィールを得るための例えばヒドロプロピルメチルセルロース、他の高分子マトリックス、ゲル、透析膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアまたはそれらの混合体を使用して1以上の活性物質の徐放または放出制御を達成するために使用することが可能である。本発明の活性物質に関して使用するためには、当業者に公知の適当な放出制御製剤(本明細書に記載のものを含む)を容易に選択することが可能である。したがって、本発明は、放出制御に適合化された錠剤、カプセル剤、ゲルカップ(gelcap)およびカプレット(これらに限定されるものではない)のような経口投与に適した一単位投与形を含む。
【0123】
すべての放出制御医薬品は、それらの非制御対応物により達成されるものよりも薬物療法を優れたものにするという共通の目標を有する。理想的には、最適に設計された放出制御製剤の、医学的治療における使用は、最短時間内に病態を治癒させる又は抑制するために最少量の薬物を使用することにより特徴づけられる。放出制御製剤の利点には、薬物の活性の増大、投与頻度の減少および患者のコンプライアンスの促進が含まれる。また、放出制御製剤は、作用発現時間または他の特性(例えば、血中薬物レベル)に影響を及ぼすために使用することが可能であり、したがって、副作用(例えば、有害な副作用)の出現に影響を及ぼしうる。
【0124】
所望の治療効果を即座にもたらす薬物(活性物質)量を最初に放出し、このレベルの治療または予防効果を長期にわたり維持するために残りの量の薬物を徐々に連続的に放出するよう、ほとんどの放出制御製剤は設計される。この一定レベルの薬物を体内に維持するためには、代謝され体内から排泄される薬物の量を補充する速度で薬物が剤形から放出されなければならない。活性物質の放出制御は、pH、温度、酵素、水または他の生理的条件もしくは化合物を含む(これらに限定されるものではない)種々の条件により刺激されうる。
【0125】
4.4.3 非経口剤形
非経口剤形は、硝子体内、皮下、静脈内(丸塊注射を含む)、筋肉内および動脈内経路を含む(これらに限定されるものではない)種々の経路により患者に投与することが可能である。それらの投与は、典型的には、混入物に対する患者の自然防御を迂回するため、非経口剤形は、好ましくは、無菌であるか、あるいは患者への投与の前に滅菌されうる。非経口剤形の具体例には、そのまま注射される溶液、医薬上許容される注射用ビヒクルにそのまま溶解または懸濁される乾燥製品、そのまま注射される懸濁剤、および乳剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
本発明の非経口剤形を得るために使用しうる適当なビヒクルは当業者に良く知られている。具体例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:注射用水USP;水性ビヒクル、例えば食塩注射剤、リンゲル注射剤、デキストロース注射剤、デキストロースおよび食塩注射剤ならびに乳酸添加リンゲル注射剤(これらに限定されるものではない);水混和性ビヒクル、例えばエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール(これらに限定されるものではない);ならびに非水性ビヒクル、例えばトウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジル(これらに限定されるものではない)。
【0127】
また、本明細書に開示されている活性物質の1以上の溶解度を増加させる化合物を本発明の非経口剤形に配合することも可能である。例えば、免疫調節性化合物およびその誘導体の溶解度を増加させるために、シクロデキストリンおよびその誘導体を使用することが可能である。例えば、参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,134,127号を参照されたい。
【0128】
4.4.4 局所用および粘膜用剤形
本発明の局所用および粘膜用剤形には、点眼剤、噴霧剤、エアゾール剤、液剤、乳剤、懸濁剤または当業者に公知の他の形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990); ならびにIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織の治療に適した剤形は口内洗剤または経口ゲル剤として製剤化されうる。
【0129】
本発明に含まれる局所用および粘膜用剤形を得るために使用しうる適当な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)および他の物質は薬学分野の当業者に良く知られており、当該医薬組成物または剤形が適用される個々の組織に左右される。このことに留意すると、典型的な賦形剤には、無毒性であり医薬上許容される、液剤、乳剤またはゲル剤を形成させるための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。所望により、医薬組成物および剤形に保湿剤または湿潤剤を加えることも可能である。そのような追加的な成分の具体例は当技術分野において良く知られている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)を参照されたい。
【0130】
また、1以上の活性成分の送達性を改善するために、医薬組成物または剤形のpHを調節することが可能である。同様に、送達性を改善するために、溶媒担体の極性、そのイオン強度または張度を調節することが可能である。送達性が改善されるよう1以上の活性物質の親水性または親油性を有利に改変するために、ステアラートのような化合物を医薬組成物または剤形に加えることも可能である。この場合、ステアラートは、該製剤の脂質ビヒクルとして、乳化成分または界面活性剤として、および送達促進または透過促進成分として働きうる。得られる組成物の特性を更に調節するために、該活性物質の種々の塩、水和物または溶媒和物を使用することが可能である。
【0131】
4.4.5 キット
典型的には、本発明の活性物質は、好ましくは、同時には又は同じ投与経路では患者に投与されない。したがって、本発明は、医学的実施者により使用される場合に患者への適量の活性物質の投与を簡便にしうるキットを含む。
【0132】
本発明の典型的なキットは、免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグもしくは包接化合物の剤形を含む。本発明に含まれるキットは更に、1以上の追加的な活性物質またはそれらの組合せを含みうる。そのような追加的な活性物質の具体例は本明細書に開示されている(例えば、第4.2節を参照されたい)。
【0133】
本発明のキットは更に、活性物質を投与するために使用するデバイスを含みうる。そのようなデバイスの具体例には、シリンジ、点滴バッグ、パッチおよび吸入器が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明のキットは更に、MDの検出または診断に有用なアムスラー格子を含みうる。
【0134】
本発明のキットは更に、1以上の活性物質を投与するために使用しうる製薬上許容されるビヒクルを含みうる。例えば、非経口投与するには還元しなければならない固体形態で活性物質が提供される場合には、該キットは、非経口投与に適した粒子非含有無菌溶液を形成するために該活性物質を溶解しうる適当なビヒクルの密閉容器を含みうる。製薬上許容されるビヒクルの具体例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:注射用水USP;水性ビヒクル、例えば食塩注射剤、リンゲル注射剤、デキストロース注射剤、デキストロースおよび食塩注射剤ならびに乳酸添加リンゲル注射剤(これらに限定されるものではない);水混和性ビヒクル、例えばエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール(これらに限定されるものではない);ならびに非水性ビヒクル、例えばトウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジル(これらに限定されるものではない)。
【実施例】
【0135】
5.実施例
以下の実施例は本発明を更に詳しく説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0136】
5.1 in vitro薬理学的研究
免疫調節性化合物により得られる生物学的効果の1つはTNFαの合成の低下である。免疫調節性化合物はTNFα mRNAの分解を増強する。TNFαは黄斑変性において病的役割を果たしている可能性がある。
【0137】
特定の実施形態においては、ヒトPBMCおよびヒト全血のLPS刺激の後のTNFαの産生の、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンまたはサリドマイドによる抑制を、in vitroで調べた。PBMCおよびヒト全血のLPS刺激の後のTNFαの産生の抑制に関する4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンのIC50は、それぞれ〜24nM(6.55ng/mL)および〜25nM(6.83ng/mL)であった。PBMCおよびヒト全血のLPS刺激の後のTNFαの産生の抑制に関する3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのIC50は、それぞれ〜100nM(25.9ng/mL)および〜480nM(103.6ng/mL)であった。これとは対照的に、サリドマイドは、PBMCのLPS刺激の後のTNFαの産生の抑制に関して〜194μM(50.1μg/mL)のIC50を示した。3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンと4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンとの薬理学的活性プロフィールは類似しているが、サリドマイドより50〜2,000倍強力であることを、in vitro研究は示唆している。
【0138】
また、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたは4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ-(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、T細胞受容体(TCR)活性化による初期誘導後のT細胞増殖の刺激において、サリドマイドより約50〜100倍強力であることが示されている。それらの化合物は、PBMC(IL2)またはT細胞(IFNγ)のTCR活性化の後のIL2およびIFNγの産生の増強においても、サリドマイドより約50〜100倍強力である。さらに、それらの化合物は、PBMCによる炎症性サイトカインTNFα、IL1βおよびIL6のLPS刺激産生の用量依存的抑制を示し、一方、それらは、抗炎症性サイトカインIL10の産生を増強した。
【0139】
5.2 MD患者における臨床研究
免疫調節性化合物を約0.1〜約25mg/日の量で黄斑変性の患者に投与する。特定の実施形態においては、2群に分けられた40名の黄斑変性患者で臨床研究を行う。第1群には、ベルテポルフィン(verteporfin)での光線力学治療により漏出脈絡膜血管(この疾患に特徴的なもの)を閉じるための通常の治療(Ophthalmol 1999 (117):1329-1345)を行う。第2群には、20日間にわたり佐剤(アジュバント)としての10mg/日の量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンとベルテポルフィンとを使用する同じ通常の治療を行う。
【0140】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン投与群においては、該光線力学治療の効果を不定期に持続させるのに十分な程度に血管新生カスケードが妨げられる。しかし、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンが投与されなかった第1群においては、治療の数週間後、切除血管の進行的な再潅流が生じる。ついで、該光線力学治療の反復を要する進行的な視力低下が生じる。
【0141】
もう1つの好ましい実施形態においては、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを約1〜約25mg/日以上の量、一般にはその1日量の約1.5〜2.5倍の量で、1日おきに投与する。該アジュバント療法は、MDを治療または予防するために用いられる他のタイプの通常の療法(レーザー光凝固術などの外科的介入が含まれるが、これらに限定されるものではない)に適用可能である。
【0142】
本明細書に記載の本発明の実施形態は本発明の範囲の単なる例示に過ぎない。本明細書中には多数の参考文献が引用されているが、それらの全内容を参照により本明細書に組み入れることとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄斑変性の治療、予防または処置方法であって、そのような治療、予防または処置を要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
治療的または予防的に有効な量の第2の活性物質を投与することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の活性物質がステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物または抗血管新生化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第2の活性物質がサリドマイド、ベルテポルフィン(verteporfin)、プルリチン(purlytin)、アンジオスタチック(angiostatic)ステロイド、rhuFab、インターフェロン2αもしくはペントキシフィリン(pentoxifylline)またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
抗血管新生化合物がサリドマイドである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
黄斑変性が、湿性黄斑変性、乾燥黄斑変性、加齢性黄斑変性、加齢性黄斑症、脈絡膜血管新生、網膜色素上皮剥離、網膜色素上皮の萎縮、ベスト病、卵黄状黄斑変性(vitelliform)、シュタルガルト病、若年性黄斑ジストロフィ、黄色斑眼底、ベール病、ソルスビー(Sorsby's)病、ドイン病、蜂巣状(honeycomb)ジストロフィまたは黄斑損傷状態である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
免疫調節性化合物が立体的に純粋である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
黄斑変性の治療、予防または処置方法であって、そのような治療、予防または処置を要する患者に、治療的または予防的に有効な量の4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンまたはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与することを含んでなる方法。
【請求項9】
4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンがエナンチオ的に純粋である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
黄斑変性の治療、予防または処置方法であって、そのような治療、予防または処置を要する患者に、治療的または予防的に有効な量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンまたはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与することを含んでなる方法。
【請求項11】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンがエナンチオ的に純粋である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
免疫調節性化合物が式(I):
【化1】

(式中、XおよびYのうちの一方はC=Oであり、XおよびYのうちのもう一方はC=OまたはCH2であり、R2は水素または低級アルキルである)で表される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
免疫調節性化合物がエナンチオ的に純粋である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
免疫調節性化合物が式(II):
【化2】

[式中、
XおよびYのうちの一方はC=Oであり、もう一方はCH2またはC=Oである;
R1はH、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'または(C1-C8)アルキル-O(CO)R5である;
R2はH、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニルまたは(C2-C8)アルキニルである;
R3およびR3'は、独立して、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5またはC(O)OR5である;
R4は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(CO-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキルまたは(CO-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールである;
R5は(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリールまたは(C2-C5)ヘテロアリールである;
R6のそれぞれは、独立して、H、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリールまたは(C0-C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、または複数のR6基が一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成している;
nは0または1である;および
*はキラル炭素中心を表す。]
で表される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
免疫調節性化合物がエナンチオ的に純粋である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
免疫調節性化合物が、置換スチレンのシアノまたはカルボキシル誘導体、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3イル)イソインドリン、1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリンまたはテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
免疫調節性化合物がエナンチオ的に純粋である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
黄斑変性の治療、予防または処置方法であって、そのような治療、予防または処置を要する患者に、治療的または予防的に有効な量の免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を、該患者における黄斑変性の症状を軽減または予防するための外科的介入の前、途中または後に投与することを含んでなる方法。
【請求項19】
外科的介入が光療法、レーザー療法、放射線療法、網膜色素上皮移植または中心窩転位である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
免疫調節性化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体と、黄斑変性の症状を軽減または予防しうる第2の活性物質とを含んでなる医薬組成物。
【請求項21】
第2の活性物質がステロイド、光増感剤、インテグリン、抗酸化剤、インターフェロン、キサンチン誘導体、成長ホルモン、神経栄養因子、血管新生調節剤、抗VEGF抗体、プロスタグランジン、抗生物質、フィトエストロゲン、抗炎症化合物または抗血管新生化合物である、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
第2の活性物質がサリドマイド、ベルテポルフィン(verteporfin)、プルリチン(purlytin)、アンジオスタチック(angiostatic)ステロイド、rhuFab、インターフェロン2αもしくはペントキシフィリン(pentoxifylline)またはその医薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体である、請求項20記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−508950(P2006−508950A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550329(P2004−550329)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034661
【国際公開番号】WO2004/041190
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】