説明

黄斑変性症を処置するための組成物及び方法

【課題】網膜中におけるリポフスチン色素の形成を遅らせ、そして網膜中におけるリポフスチン色素の蓄積により特徴付けられる疾患の効果を処置又は改善する方法の提供。
【解決手段】置換C20−レチノイド及び医薬として許容される担体を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の資金提供
本発明は、アメリカ国立衛生研究所の国立眼病研究所によって与えられた、(National Eye Institute of the National Institutes of Health)助成金EY T32013933の下、政府の支援でなされた。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年9月12日に提出された米国仮出願番号第60/993,379号の利益を主張し、そしてそれは本明細書全体中に引用されるように、参照により援用される。
【0003】
発明の技術分野
本発明は特に、視力への副作用無しで又は軽減されて、眼科疾患、例えば黄斑変性症を処置又は改善するために、リポフスチン形成/蓄積を遅らせる化合物、組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、網膜の網膜色素上皮(「RPE」)細胞における加齢色素又はリポフスチンの蓄積を遅らせるか、又は制限することによって、眼科疾患、例えば黄斑変性症を処置又は改善するために使用され得る化合物及び組成物に関する。本発明はまた、かかる処置を必要とする哺乳動物へ、有効量の、本明細書に開示された化合物及び/又は組成物を投与することによって、哺乳動物における眼科疾患、例えば黄斑変性症を処置又は改善する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
黄斑は、網膜中心の眼球後部に位置する。この感光性多層組織における数百万の細胞が衰弱するとき、読み、書き、運転、及び色を見るなどの役割を果たす能力に加えて、中心視が失われる。この「黄斑変性症」は、主に高齢者に影響を与え、そして75〜79歳の人口群において有病率は約3%であり、80歳以上の人口群において有病率は約12%である(1)。より若い人口群において、黄斑変性症は、遺伝性疾患、例えばスタルガルト病、卵黄状黄斑(Vitelliform)若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、及びマラッティア・レベンティネース(Malattia Leventinese)(Doyne Honeycomb、又はDominant Radial Drusen)を患う個体において見られる。スタルガルト病は小児の10,000人に約1人に影響を与える、遺伝性の若年性黄斑変性症における、最も一般的な形態である。
【0005】
遺伝性又は乾燥(非血管新生性)加齢性黄斑変性症に対して利用可能な治療法は、現在存在しない。ビタミン補填剤、例えば抗酸化剤、及び飲食物の変更、例えば低脂肪食への変更は、幾つかの臨床試験において疾患の進行を遅らせることが示された。しかし、大部分の患者に関して、診断の後に中心視の進行性喪失が続く(2〜4)。
【0006】
上に列挙された黄斑変性は、網膜色素上皮(RPE)細胞層における、蛍光性沈着であるリポフスチンの蓄積によって全て特徴付けられる(5〜11)。RPEリポフスチオンから開始して特徴づけられた化合物である、A2E(N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン)及びATR−ダイマー(全トランス・レチナールダイマー)のみが、視覚色素の発色団である、11−シス−レチナールの異性体である、全トランスレチナールの反応から得られる(12、13)。これらの毒性レチナールダイマーは、RPE細胞死を引き起こすことが示され、そしてそれは光受容細胞変性及び失明をもたらすことが示された(2、14−22)。RPE65拮抗薬を使用して視覚サイクルを遅らせること(23−25)、或いは例えばビタミンAの食事摂取の制限(26)、又は血清レチノール結合タンパク質の阻害(27)によって、ビタミンA(レチノール)のRPEへの送達を遅らせることにより、動物モデルにおけるRPEリポフスチン形成が遅れるか、又は消失されることが示された。反対に、例えば(劣性スタルガルト病に関与する)abcr-/-の変異と共に生じる、外側部における全トランスレチナール量の増加により、リポフスチン色素の速やかな蓄積がもたらされる(8)。
【0007】
上記の証拠は、RPE細胞におけるリポフスチン、並びに/又はA2E及びATR−ダイマーが、失明へと続く細胞機能の低下に寄与するレベルに達し得、そしてビタミンAが、眼球のリポフスチン形成において重要な役割を果たすという結論をもたらす(28)。
【0008】
幾つかのビタミンA類縁体は、視覚サイクルを遅らせることによって、マウスモデルにおいてリポフスチン形成を制限することが示された。ABCR-/-マウスモデルは、RPEリポフスチン形成を制限する方法を試験するために使用された。光受容体特異的アデノシン三リン酸(ATP)結合性カセットトランスポーターをコードする、(ABCA4としても知られる)ABCR遺伝子を欠損しているマウスは、眼内における(レチナールの形態である)ビタミンAを適切に輸送(shuttle)する能力を欠いている。ABCR-/-マウスは、ヒト劣性スタルガルト病の動物モデルとして開発された(8)。劣性スタルガルト病を患うヒトの場合と同様に、ABCR-/-マウスは、図1に示されるように、それらの眼のRPE細胞中に多くのリポフスチン沈着を蓄積し、そして最終的に暗順応遅延を生じる。このマウスモデルにおいて観察されるリポフスチンの蓄積及び失明はまた、加齢性黄斑変性症(AMD)及び他の黄斑変性症に関与することが示される。
【0009】
視覚サイクルを遅らせるために、視覚サイクル酵素を標的とした。かかる手法において、小分子が視覚サイクル酵素に対する拮抗薬として提案された。この方法論において、(多くの場合ビタミンA誘導体である)当該薬剤は、視覚サイクルタンパク質と結合し、そしてそれは視覚サイクルにおける当該タンパク質の関与を阻害し、そして視覚サイクルを遅らせる。視覚サイクルを遅らせる別の手法は、血液から眼へのビタミンAの送達を遅らせることを含む。
【0010】
視覚サイクルを遅らせることにより、リポフスチン形成を阻害する薬剤の候補は、暗順応の遅延(視覚サイクル損傷の副次効果)を引き起こすそれらの能力によって、及びA2E及び視覚サイクルの他の副産物、例えばATR−ダイマーの濃度により測定される、眼におけるリポフスチンの加齢関連性蓄積を遅らせるそれらの能力によって評価された。かかる薬剤候補の例、及び視覚サイクルを遅らせるそれらの対応する作用機序が以下に要約される:
【0011】
13−シス−レチノイン酸(アキュテイン(Acutane)又はイソトレチノイン(isotretinoin))は、視覚サイクルに関与する、11−シス−レチノール脱水素酵素及びRPE65を阻害することが示されている(19、24)。投与されたとき、13−シス−レチノイン酸は、暗順応遅延を引き起こすことが示された。3か月齢のABCRノックアウトマウス(n=3)が、13−シス−レチノイン酸を40mg/kg/日で1か月投与されたとき、当該マウスは、対照のABCRノックアウトマウス(n=3)と比較して、約40〜50%のA2E形成減少を示した(24)。さらに、2か月齢のABCRノックアウトマウスが、13−シス−レチノイン酸を20mg/kg/日で2か月投与されたとき、当該マウスはまた、電子顕微鏡法により判断されるように、RPE細胞層におけるリポフスチン形成の減少を示した。
【0012】
(12E,16E)−13,17,21−トリメチルドコサ−12,16,20−トリエン−11−オン(TDT)は、RPE65を阻害することが示されている(23)。TDTがマウスに投与されるとき、暗順応遅延が観測される。2か月齢のABCRノックアウトマウス(n=2)が、TDTを50mg/kgで2週間に1回、2か月投与されたとき、それらは、対照のABCRノックアウトマウス(n=2)と比較して、約50〜85%のA2E形成減少を示した(23)。
【0013】
(2E,6E)−N−ヘキサデシル−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエンアミン(TDH)はまた、RPE65を阻害することが示され、そしてマウスに投与されたとき、暗順応遅延を引き起こす(23)。2か月齢のABCRノックアウトマウス(n=2)が、TDHを50mg/kgで2週間に1回、2か月投与されたとき、それらは、対照のABCRノックアウトマウス(n=2)と比較して、約50%のA2E形成減少を示した(23)。
【0014】
全トランスレチニルアミン(Ret−NH2)は、RPE65を阻害することが示され、そしてマウスに投与されたとき、深刻な暗順応遅延をもたらす。1か月齢のABCA4ノックアウトマウスが、Ret−NH2を40mg/kgで2週間に1回、2か月投与されたとき、それらは、対照のABCA4ノックアウトマウスと比較して、約50%のA2E形成減少を示した(25)。
【0015】
N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド(フェンレチニド(Fenretinide))は、血清レチノール結合タンパク質へ結合されるビタミンAレベルの減少による、眼内へのレチノールの流入を示す。したがって、フェンレチニドを用いた処置は、眼内のビタミンAレベルを低下させ、暗順応遅延をもたらす。2か月齢のABCA4ノックアウトマウス(n=3)が、フェンレチニドを20mg/kg/日で1か月投与されたとき、それらは、対照のABCA4ノックアウトマウス(n=3)と比較して、約40〜50%のA2E形成減少を示した(27)。
【0016】
したがって、リポフスチン形成を制限するための近年提案された治療手法は、視覚サイクルを遅らせることに基づく(1、10、11、12)。しかし、例えば黄斑変性症を防止するために、リポフスチン形成を遅らせるための手段として、視覚サイクルを遅らせることに対する不利益が存在する。これらの4つの不利益を以下に詳述する。
【0017】
視覚サイクルを遅らせることに対する一つの直接的な不利益は、それが薄暗い明り又は夜間における暗順応の遅延、及び視覚低下をもたらすことである。低い暗視能力(暗順応の機能障害)は、既に若年性黄斑症(ARM)の機能的マーカーであり、そして転倒及び自動車衝突の発生と関連付けられた(29、30)。視覚サイクルをさらに遅らせることは、すでに低い暗視能力を患う患者の暗視能力をより悪化させると予測される。
【0018】
第二に、リポフスチン形成を十分に遅らせるために、長期間視覚サイクルを遅らせなければならない。しかし、視覚サイクルの長期間の遅延は、光受容細胞死及び失明をもたらす(31、32)。実際、視覚サイクルの損傷は、種々の網膜疾患、例えばスタルガルト病、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、白点状眼底(Fundus Aibipunctatus)、加齢性黄斑変性症及び先天性停止性夜盲の原因である。
【0019】
第三に、上の方法論は、眼中におけるビタミンA処理に関与するタンパク質を阻害するために、大抵ビタミンA類縁体を使用する。しかし、ビタミンA類縁体の多様な構造、薬理特性、受容体親和性、及び生物活性は、毒性であることが示された。実際、多くのビタミンA類縁体は、実験動物モデル、細胞モデル、疫学データ、及び臨床試験において、種々の生物学的機能、例えば骨成長、再生、細胞分裂、細胞分化、及び免疫系の調節を阻害するか、又は遅延させることが示された(33〜37)。したがって、眼中におけるビタミンA処理を阻害することはまた、幾つかのこれらの基本的身体機能を遅らせることが予想され、そしてそれは著しい副作用をもたらし得る。
【0020】
例えば、特定の癌及び/又は乾癬に現在使用されるビタミンA類縁体、例えば、ベキサロテン(Bexarotene)(ターグレチン(Targretin))、エトレチナート(Etretinate)((テギソン)Tegison)、アシトレチン(Acitretin)(ソリアタン(Soriatane))、フェンレチニド(Fenretinide)(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド又は4−HPR)及び13−シス−レチノイン酸(アキュテイン又はイソトレチノイン)は副作用を有し、そしてそれは、例えば、鼻の乾燥、鼻血、唇の荒れ、口内炎、のどの乾きの増大、舌痛、歯肉の出血、口の乾燥、ヘルペス、ドライアイ又はチカチカと痛む眼、乾皮症、皮膚剥離又は鱗屑性皮膚、脱毛、容易に生じる痣、筋肉痛、吐き気、胸焼け、咳又は手若しくは足の腫脹、視覚の問題、胸痛、胸苦しさ、脈拍異常、目まい、嘔吐、深刻な頭痛、及び眼/皮膚の黄変(黄疸)を含む(38〜40)。
【0021】
第四に、動物モデルにおいて、リポフスチン形成を制限するための候補薬剤は、比較的多い用量でのみ効果的であることが示された。例えば、マウスモデルにおける研究は、通常約11〜40mg/kg/日の投与を使用する。しかし、現段階におけるビタミンA類縁体は、副作用を最小化するために、臨床において通常1〜3mg/kg/日の投与で使用される。より高用量の投与計画は、副作用の増大をもたらすだろう。
【0022】
例えば、フェンレチニド(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド又は4−HPR)は、癌を処置するために現在使用されており、そして、臨床試験がAMDに対して進行中である。この薬剤を200mg/日の用量で5年間用いて処置を行った1432人の患者中において報告された最も一般的な副作用は:暗順応の減少、累積発現率(16%)及び皮膚疾患(16%)であった。より少ない一般的効果は、胃腸症状(8%)及び眼表面疾患(8%)であった(41)。リポフスチン形成を遅らせるための薬剤の有効性の評価において、この比較的低用量での暗順応における遅延は、16%の患者でのみ観察された。別の試験において、患者が、一日2回(bid)、6週間サイクルで、より多量の経口投与量である600又は900mg/m2で投与されたとき、フェンレチニドと恐らく関連付けられる軽度から中等度の副作用が、45人中43人の患者(95%)において報告された。これらの副作用は:倦怠感、頭痛、皮膚の変化(乾燥肌、掻痒症及び発疹)並びに消化管の症状(腹痛、筋痙攣、下痢、口内炎及び口腔乾燥症)を含む。恐らくフェンレチニド処置と関連付けられると報告されたグレード2の毒性は、発作及び精神錯乱を含んだ(42)。
【0023】
1サイクルあたり、600mg/m2、一日2回でフェンレチニドを用いる処置を受けた未分化星状細胞腫を患う患者は、頭痛、吐き気及び嘔吐を示し、そして脳幹神経節領域において小さな頭蓋内出血を有することが分かった。当該患者は、欠陥を有することなく回復し、そしてさらなる事象なしで処置を継続された。同様に600mg/m2、一日2回の投与量で処置が行われ、そして深部静脈血栓症のためにワルファリン(warfarin)を用いて経口抗凝血を受けた別の患者は、制御不能の鼻出血の進行後に死亡した(国際標準比>6.0)。900mg/m2、一日2回の投与量で処置された4人の患者の中で、一人はグレード3の嘔吐、グレード2の発語障害、及びグレード1の記憶障害を有し、そしてそれは残存症状なしで改善した(42)。
【0024】
ニキビの処置のための、13−シス−レチノイン酸(アキュテイン又はイソトレチノイン)の典型的な投与量は、連続して14日間、小児で0.5〜1mg/kg/日、そして成人で2.0mg/kg/日であって、その後14日間休薬を行う。この28日間のコースは、通常さらに5回繰り返される(40)。これらの投与量は、A2E形成を阻害するためにマウスにおいて使用されたものよりも約10〜80倍少ない(24)。癌を処置するために使用される、より多量の投与量の13−シス−レチノイン酸に対して、30%超の使用者において生じた副作用は、頭痛、熱、乾皮症、粘膜の乾燥(口、鼻)、骨痛、吐き気及び嘔吐、発疹、口内炎、そう痒、発汗、並びに視力の変化を含む(43、44)。
【0025】
13−シス−レチノイン酸使用者の10〜29%において起こる副作用は、背部痛、筋肉及び関節痛、アレルギー反応、腹痛、食欲不振、目まい、眠気、不眠症、不安神経症、無感覚、並びに手及び足の刺痛、衰弱、鬱病、脱毛(薄化)、ドライアイ、光に対する感受性(眼の問題を参照)、処置が停止された後において持続し得る暗視の減少、足及び足首の浮腫、並びに少ない血球数を含む(44)。さらに、白血球及び赤血球並びに血小板が一時的に減少し得ることが観測され、そしてそれは、患者を感染、貧血及び/又は出血リスクが増大された状態にする。副作用はまた、異常血液試験:トリグリセリド、コレステロール及び/又は血糖レベルの増大を含む。
【0026】
上記不利益は、眼科疾患、例えば黄斑変性の臨床的処置のために単剤で適用する、視覚サイクルの遅延化を困難な方法とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の概要
したがって、眼科疾患、例えば黄斑変性症のための、上で概説した一つ以上の副作用を有しない又は制限する処置を提供することが有益であろう。特に、視覚サイクルを遅らせることなく、又は最小限に遅らせて、網膜のRPE細胞中におけるリポフスチンの蓄積又は加齢色素の蓄積を阻害又は停止するための化合物、組成物及び方法を提供することが有益であろう。
【0028】
この関連で、本発明の一つの実施形態は、網膜中におけるリポフスチン色素の形成を遅らせる方法である。本方法は、それを必要とする患者へ、置換C20−レチノイドを、網膜中におけるリポフスチン色素の蓄積を減少させるために十分な量で投与するステップを含む。
【0029】
本発明の別の実施形態は、網膜中におけるリポフスチン色素の蓄積により特徴付けられる疾患の効果を処置又は改善する方法である。本方法は、それを必要とする患者へ、置換C20−レチノイドを、網膜中におけるリポフスチン色素の蓄積を減少させるために十分な量で投与するステップを含む。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、A2Eの形成を遅らせる方法である。本方法は、A2E形成を阻害するために十分な条件下、患者中の全トランスレチナール(ATR)基質をC20−D3−レチノイド基質に置き換えるステップを含む。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、置換C20−レチノイド及び医薬として許容される担体を含む、網膜中におけるリポフスチン色素の形成を遅らせるための組成物である。
【0032】
本発明のさらなる実施形態は、医薬として許容される担体、及び式I:
【0033】
【化1】

【0034】
[式中、
1は、オキソ、又Hであり;
2は、H、又は存在せず;
3は、ヒドロキシ、若しくはオキソ、又はCHR7であり、ここでR7は、カロテノイドを形成し、そして
4、R5、及びR6は、1H、2H、3H、ハロゲン及びC1-8アルキルから成る群から独立して選択される]
で表される化合物を含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、5.5〜6か月齢のABCR-/-マウスにおける、眼杯(6つのそれらマイナス網膜)から抽出されたリポフスチン色素のHPLC及びUV−visプロファイルを示す。ピーク2、3、及び4で表されるリポフスチン色素、例えばA2E及びATR−ダイマーが特徴付けされ、そしてそれらは全トランスレチナール由来である。他のリポフスチン色素、例えばピーク1及び5も、全トランスレチナール由来であるが、それらは完全に特徴付けされなかった。上記色素はヒトにおいても見られ、そして黄斑変性症に寄与することが示された。
【図2】図2は、全トランスレチナール及び生物学的アミンからの、A2E及びATR−ダイマーの生合成を示す反応スキームである。
【図3】図3Aは、A2E形成のための、C20−D3−全トランスレチナール及び全トランスレチナールとエタノールアミンとの反応混合物のHPLCプロファイルを示す。図3Bは、図3Aの拡大図である。A2E形成は、約15分時に開始するピークの出現を測定することによって、時間経過に渡って観測された。両方のHPLCの形跡は、反応中、約30時間測定された。拡大図中で見られるように、全トランスレチナールに関して、反応時間約14.5分での未同定の化合物と共に、かなりの量のA2Eが形成した。一方で、C20−D3−全トランスレチナールに関して、A2E形成はずっとより遅く、そして14.5分におけるピークはほとんど存在しない。図3Cは、上記反応に関する、時間経過に渡ってのA2E形成のプロットある。C20−D3−全トランスレチナールは、A2Eを、全トランスレチナールよりも約7倍遅く形成する。
【図4】図4は、ATR−ダイマーの形成に関する、C20−D3−全トランスレチナール(A)及び全トランスレチナール(B)とプロリンとの反応混合物のHPLCプロファイルを示す。ATR−ダイマー形成は、約8分において開始するピークの出現を測定することによって、時間と共に観測された。両方のHPLCの形跡は、反応中において約1時間測定された。全トランスレチナールに関して、かなりの量のATR−ダイマーが形成された。一方で、C20−D3−全トランスレチナールに関しては、ATR−ダイマー形成がよりずっと遅かった。図4Cは、上記反応に関する、時間経過に渡るATR−ダイマー形成のプロットである。C20−D3−全トランスレチナールは、全トランスレチナールよりも約14倍遅くA2Eを形成する。
【図5】図5は、レチノールアセテート(トレースA(図5A))又はC20−D3−全トランスレチノールアセテート(トレースB(図5B))のいずれかの食餌で飼育された、5.5〜6か月齢のABCR-/-マウスにおける、眼杯(6つのそれらマイナス網膜)から抽出されたリポスフチン色素のHPLCプロファイルを示す。レチノールアセテートで飼育されたマウスは、HPLCピークで示されるように、リポフスチン色素のかなりの蓄積を示す。一方で、C20−D3−全トランスレチノールアセテートの食餌で飼育されたマウスにおいて、リポフスチン色素は検出できなかった。図5Cは、レチノールアセテート又はC20−D3−全トランスレチノールアセテートのいずれかの食餌で飼育された上記マウスにおける、全レチノール及びレチノールエステル、又はD3−レチノール及びD3−レチノールエステルのそれぞれの濃度を示す。両群は、異なる濃度のリポフスチン色素を有するにもかかわらず、眼中においてほぼ同量のレチノールを有した。
【図6】図6は、レチノールアセテート(図6A及び6B)又はC20−D3−全トランスレチノールアセテート(図6C及び図6D)のいずれかの食餌で飼育された、5.5〜6か月齢のABCR-/-マウスの、RPE層の電子顕微鏡写真を示す。リポフスチンとメラニン体の区別における不確実性のため、レチノールアセテートの食餌を与えられたマウスと、C20−D3−全トランスレチノールアセテートの食餌を与えられたマウスとの間で、RPE中で見られる全ての暗い高電子密度物体間において比較がなされた。高電子密度のリポフスチン及びメラニン体に加えて、RPEファゴソーム、ミトコンドリア、及び脂肪滴も存在するが、それらは超微細構造的に区別された。C20−D3−全トランスレチノールアセテートで飼育されたマウスは、レチノールアセテートの食餌で飼育されたマウスと比較して、かなりより少ない高電子密度体(すなわちリポフスチン体)を有する。
【図7】図7Aは、レチナール、C20−D3−レチナール、レチナール・プラス・フェンレチニド、又はレチナール・プラス・TDHのいずれか一つで処置/飼育されたラット(一つの群につき3匹の雌)における、445nmにおけるHPLCピークにより測定されるA2Eの総計を示す。レチナールで処理された動物は、最も多量のA2E−リポフスチンを有した(100%と標準化した)。一方で、C20−D3−レチナール、又はレチナール・プラス・フェンレチニド、又はレチナール・プラス・RPE65拮抗薬であるTDHで処理された動物は、より少ないA2E−リポフスチンを示した。図7Bは、全4つの群の動物が、ほぼ同量の眼レチノールを有したことを示す。図7Cは、眼の全トランスレチナールレベルが、C20−D3−レチナール群において増大したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明において、視覚サイクルを遅らせること、又は視覚サイクルを阻害する小分子(すなわち、視覚サイクル拮抗薬)によるのではなく、リポフスチン形成を遅らせる方法が提供される。したがって、多くの不利益、例えば暗順応の遅延、視覚損傷及び失明へとつながり得る視覚色素の未形成、薬剤の高用量、及び先の方法による本質的な副作用が回避される。
【0037】
より具体的には、本発明において、ビタミンA由来リポフスチン色素、例えばA2E及びATR−ダイマーを形成する、ビタミンAの固有の反応性を阻害するために、ビタミンAにおける原子を選択的に置換し、一方で、同時に、視覚サイクルにおける動員(視覚サイクルタンパク質との結合)が最小限に阻害されるように、ビタミンAの化学構造を保存するための方法が提供される。ビタミンA構造へのかかる変化が、正常なビタミンA代謝又は機能を阻害しないために、本発明の有用性の一つは、多くの潜在的副作用が避けられることである。さらに、(以下でより詳細に開示された)本発明の化合物が、タンパク質結合に関して、天然レチノイドと競合しないため、(例えば、それらが天然レチノイドの働きを実行し得るため、)より少ない用量が、例えば視覚サイクル拮抗薬を使用する以前までの処置と比較して、例えば黄斑変性の処置のために必要とされる。
【0038】
本発明において、全トランスレチノイドのC20−水素が、フッ素原子(F3)で置換されるとき、C20−F3−全トランスレチナールの消失、対応するフッ素化A2Eの不在をHPLCにより観測することによって測定されるように、A2Eの形成が除外される。図2において示されるように、A2E及びATR−ダイマーは、インビボにおいて、全トランスレチナールの2つの分子に関与する、一連の多段階反応により形成されると考えられる。第一ステップにおいて、全トランスレチナールは、生物学的アミンと縮合して、イミンを形成する。このイミンにおいて、その後、C20炭素における水素原子に関わる[1,5]水素シフトが進行すると考えられる(ステップ2)。1,2−又は1,4−付加のいずれかによる、別のレチナール分子と引き続き反応させ(ステップ3)、その後環化することにより、A2E又はATR−ダイマー前駆体をそれぞれ産生する。A2Eは、空気中における自発的酸化の後に引き続き形成され、そしてATR−ダイマーは脱離の後に形成される(ステップ4)。
【0039】
レチナールにおける特定のC−H結合の、C−F結合への置換(すなわち、C20−F1-3−レチナール)は、全トランスレチナールの反応性を阻害し、したがって、インビトロにおけるA2Eの形成を遅らせるか又は除外する。C20における水素原子をフッ素へと置換することにより、[1,5]水素シフトステップが阻害される。したがって、C20−F1-3−レチナールは、A2E及びATR−ダイマー生合成をかなり遅らせると期待される。
【0040】
全トランスレチナールがその毒性ダイマーを形成する反応速度における小さな変化は、生存期間中におけるRPEリポフスチン形成の大きな減少へと変換されると期待される。本発明の方法は、毒性色素の形成を遅らせ、そして、11−シス−レチナールの再生成が、C20水素結合の切断を伴わないために、視覚サイクル・キネティクスを遅らせない(または有意に遅らせない)だろう。したがって、(体内においてC20−F1-3−レチナールへと変換され得る)C20−F1-3−レチノイドを用いた処置は、スタルガルト病又は、リポフスチン形成及び/又は黄斑変性と関連する他の疾患若しくは症状を患うヒトにおける、リポフスチン形成を遅らせるときに特に有用であるだろう。
【0041】
本発明のC20−D1-3−レチノイドはまた、視覚における副作用(又は有意な副作用)なしに、黄斑変性を処置又は改善するための治療として有用であるだろう。C20水素が重水素によって置換されるとき、A2E形成は、約7倍遅くなり(図3)、そしてATR−ダイマー形成は約15倍遅くなる(図4)。この速度論的同位体効果は、インビボにおけるA2E及びATR−ダイマー形成を遅らせるだろう。重水素化ビタミンは、ヒトにおいて広く使用され、そして毒性を示さない(45、46)。したがって、C20−D1-3−レチノイドを使用する処理は、視覚における副作用なしに、黄斑変性症を処置又は改善するための有効かつ無毒性の治療であるはずである。
【0042】
先の観点から、本発明の一つの実施形態は、網膜におけるリポフスチン色素の形成を遅らせる方法である。本方法は、置換C20−レチノイドを、網膜中のリポフスチン色素の蓄積を減少させるために十分な量で、それを必要とする患者へ投与するステップを含む。好ましくは、置換C20−レチノイドは、C20−D1-3−レチノイド及びC20−F1-3−レチノイドからなる群から選択される。好ましくは、リポフスチン色素は、A2E、全トランスレチノイド(ATR)ダイマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、置換C20−レチノイドは、医薬組成物又は栄養補助組成物の一部として患者へ投与される。好ましくは、置換C20−レチノイドは、単位剤形(unit dosage form)として投与される。
【0044】
本発明において、患者は哺乳動物であり得、好ましくはヒトであり得る。本実施形態において、置換C20−レチノイドは、本明細書において開示された化合物又は本明細書において開示された化合物の組み合わせであり、好ましくは、下に定義された式Ic〜Ie及び式IIを含む、式Iの化合物である。
【0045】
本実施形態において、網膜中のリポフスチン色素の蓄積を減少させるために十分な量は、患者によって、及び使用される特定の置換C20−レチノイドによって変化するだろう。具体的には、かかる量は、例えば、0.5〜50、1〜25、及び3〜10mg/日を含む、約0.05〜約300mg/日であるだろう。
【0046】
本発明の別の実施形態は、眼科疾患、例えば網膜中におけるリポフスチン色素の蓄積により特徴付けられる疾患の効果を処置又は改善する方法である。本方法は、置換C20−レチノイドを、網膜中のリポフスチン色素の蓄積を減少させるために十分な量で、それを必要とする患者へ投与するステップを含む。好ましくは、置換C20−レチノイドは、C20−D1-3−レチノイド及びC20−F1-3−レチノイドからなる群から選択される。好ましくは、リポフスチン色素は、A2E、ATR−ダイマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
好ましくは、置換C20−レチノイドは、医薬組成物又は栄養補助組成物の一部として患者へ投与される。好ましくは、置換C20−レチノイドは、単位剤形として投与される。
【0048】
本実施形態において、疾患は、スタルガルト病、卵黄状黄斑若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、加齢性黄斑変性症、及びマラッティア・レベンティネースからなる群から選択され得る。好ましくは、当該疾患は黄斑変性症である。
【0049】
本実施形態において、投与ステップは、レチノイド(単数若しくは複数)、又はビタミンAを含む患者の食事成分を、置換C20−レチノイドを含む成分に置き換えることを含む。「患者の食事成分を置き換えること」は、ビタミンA又はその前駆体(非限定だが、カロテノイドを含む)を含む食事の一部を、置換C20−レチノイドを含む成分と置き換えることを意味する。好ましくは、例えば、患者の食事中において、約5〜75%、10〜50%、又は20〜30%を含む、約1〜約95%のレチノイド(単数又は複数)が、置換C20−レチノイドに置き換えられる。当該置き換えは、さもなければ消費されたであろうレチノイド又はビタミンA含有食品を消費する代わりに、例えば置換C20−レチノイドを含む食品を投与することを通じて、又は医薬品又は栄養補助食品を含む本発明の組成物を用いた処置を通じて行われ得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態は、網膜におけるリポフスチン色素の形成を遅らせるための組成物であって、当該組成物は、置換C20−レチノイド及び医薬として許容される担体を含む。好ましくは、置換C20−レチノイドは、C20−D1-3−レチノイド及びC20−F1-3−レチノイドからなる群から選択される。好ましくは、リポフスチン色素は、A2E、ATR−ダイマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、当該組成物は、単位剤形として投与される。好ましくは、当該組成物は、ビタミン補助剤又は医薬製剤である。
【0051】
本発明のさらなる実施形態は、A2E、ATRダイマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリポフスチン色素の形成を遅らせる方法である。本方法は、A2E、ATRダイマー、若しくは両方、又はA2E誘導体及び/若しくはATR−ダイマー誘導体の形成を遅らせるために十分な条件下で、全トランスレチナール(ATR)基質をC20−D3−レチノイド基質に置き換えることを含む。本発明において使用されるように、「A2E、ATRダイマー、若しくは両方の形成を遅らせるために十分な条件」は、当技術分野において周知であるか、又は所望であれば実験的に決定され得る。本実施形態における置き換えステップは、以下により詳細に記載される。
【0052】
本発明のさらなる実施形態は、A2Eの形成を遅らせる方法である。本方法は、A2Eの形成を遅らせるために十分な条件下で、全トランスレチナール(ATR)基質をC20−D3−レチノイド基質に置き換えるステップを含む。先の二つの実施形態における置き換えステップは、上で開示された方法を含む既知の方法を使用して達成され得る。例えば、置き換えは、患者の眼中において行われ得、例えば基質は、点眼薬、軟膏、又は注射を通じて眼中へ直接投与され得る。代わりに、基質は、例えば丸剤若しくはカプセルの摂取を通じて、又はパッチを通じて若しくは注射による吸収を通じて全身的に投与され得る。
【0053】
本発明において、「置換C20−レチノイド」は、以下に定義されたような、全レチノール、レチノールアセテート、レチノールエステル、及びレチノイン酸、並びにそれらの薬学的塩、及びそれらの代謝物を含む。本発明の目的のために、レチノイドに関する式Iaにおいて記載された番号図が使用されるものとする:
【0054】
【化2】

【0055】
したがって、レチノール、レチノールアセテート、レチノールパルミテート、レチノイン酸、及びベータ−カロテンは、以下の構造:
【0056】
【化3】

【0057】
[式中、
1及びR2は、両方ともHであり、そしてR3はOHであり(レチノール);又は
1及びR2は、両方ともHであり、そしてR3はOCOCH3であり(レチノールアセテート);又は
1及びR2は、両方ともHであり、そしてR3は、OCORであり(レチノールエステル、例えばレチノールパルミテート)、又は
1は=Oであり、R2は存在せず、そしてR3はOHであり(レチノイン酸)、又は
1はHであり、R3は存在せず、そしてR2は=CH−R7であって、ここでR7は、カロテノイドを形成する]
を有する。本実施形態において、R7は、当該化合物の残りと一緒になって、例えばベータ−カロテン、又は別のプロビタミンAカロテノイド、例えば以下の式Ib’で示される重水素化されたベータ−カロテンを形成する。
【0058】
【化4】

【0059】
本発明の組成物において使用され得る置換C20−レチノイド化合物の例は、以下(化合物Ic〜Ie):
【0060】
【化5】

【0061】
[式中、R1、R2及びR3は、式Ibにおいて定義された通りである]
を含む。
【0062】
本発明の置換C20−レチノイド化合物を合成するための方法及び反応スキームが、以下に記載される:
【0063】
【化6】

【0064】
別の実施形態において、本発明は、医薬として許容される担体、及び式Iの化合物:
【0065】
【化7】

【0066】
[式中、
1は、オキソ又はHであり;
2は、H又は存在せず;
3は、ヒドロキシ若しくはオキソ、又は=CH−R7であり、ここでR7は、カロテノイドを形成し;そして
4、R5、及びR6は、2H(D)、3H(T)、ハロゲン及びC1-8アルキルからなる群から独立して選択される]
を含む組成物である。好ましくは、当該ハロゲンは、フッ素(F)である。
【0067】
本実施形態において、R4、R5、及びR6はまた、水素、或いはリポフスチン形成を遅らせる置換基、A2E若しくはATR−ダイマー形成の少なくとも1つの形成を遅らせる置換基、又はC20位において置換されないレチノイド、例えばC20−H3レチノイドと比較して、C20位における水素の引き抜き若しくは転移を遅らせる置換基から独立して選択され得る。本発明は、先に記載したR4、R5、及びR6における置換基の任意の組み合わせをさらに意図する。
【0068】
好ましくは、本発明の組成物において、当該化合物は、式II:
【0069】
【化8】

【0070】
[式中、
1は、オキソ又はHであり;
2は、H又は存在せず;そして
3は、ヒドロキシ若しくはオキソ、又は=CH−R7であり、ここでR7は、カロテノイドを形成する]
で表される構造を有する。
【0071】
本発明において、組成物は、補助剤をさらに含み得る。本発明の代表的な非限定の補助剤の例は、視覚サイクル拮抗薬、眼中へのレチノイドの流入を阻害する分子、又はそれらの組み合わせである。
【0072】
本発明の、非限定の視覚サイクル拮抗薬の例は、TDH、TDT、13−シス−レチノイン酸、ret−NH2、及びそれらの組み合わせを含む。本発明の非限定の視覚サイクル拮抗薬の例は、フェンレチニドである。本発明の範囲内における他の視覚サイクル拮抗薬は、2005年8月8日に出願された、R.Rando,米国特許出願番号11/199,594において開示されたものを含み、そして当該出願は、本明細書全体において記載されているかのごとく、参照により援用される。
【0073】
本発明において、一つ以上の添加剤が組成物中に含まれ得る。本発明の組成物中に含まれ得る非限定の添加剤の例は、亜鉛、ビタミンE、ビタミンD、及びそれらの組み合わせを含む。
【0074】
亜鉛、ビタミンE、及びビタミンD添加剤は、例えば、式I、式Ic〜e、及び式IIを含む本発明の置換C20−レチノイド化合物のバイオアベイラビリティを向上させるために有効である量で、本発明の組成物中に存在し得る。したがって、本発明において、亜鉛は、約3〜約80mg、好ましくは約3〜約10mg、又は約10〜約80mgで組成物中に存在し得る。ビタミンEは、約3〜約3,000mg、好ましくは約3〜約15mg、又は約15〜約3,000mgで組成物中に存在し得る。ビタミンDは、約0.005〜約0.1mg、好ましくは約0.005〜約0.015mg、又は約0.015〜約0.1mgで組成物中に存在し得る。
【0075】
本発明の組成物はまた、眼の抗酸化剤、無機物、負に帯電したリン脂質、カロテノイド、及びそれらの組み合わせを含む、一つ以上の追加の添加剤を含み得る。抗酸化剤の使用は、黄斑変性症及び黄斑ジストロフィーを患う患者に有益であることが示された。例えば、Arch.Ophthalmol.,119:1417−36(2001);Sparrow,et al.,J.Biol.Chem.,278:18207−13(2003)を参照。式Ic〜e、及び式IIを含む、式Iの化合物と組み合わされて、本発明の組成物中で使用され得る好適な抗酸化剤の例は、ビタミンC、ビタミンE、ベータ−カロテン及び他のカロテノイド、コエンザイムQ、OT−551(Othera Pharmaceuticals Inc.)、(テンポル(Tempol)としても知られる)4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ブチル化ヒドロキシトルエン、レスベラトロル(resveratrol)、トロロクス(trolox)類縁体(PNU−83836−E)、ビルベリー抽出物、及びそれらの組み合わせを含む。
【0076】
特定の無機物の使用が、黄斑変性症及び黄斑ジストロフィーを患う患者に有益であることが示された。例えばArch.Ophthalmol.,119:1417−36(2001)を参照。したがって、本発明は、かかる無機物の一つ以上の任意の含有を意図する。本発明の組成物において使用され得る好適な無機物の例は、銅含有無機物、例えば酸化銅(例示のためにのみ);亜鉛含有無機物、例えば酸化亜鉛(例示のためのみ);及びセレン含有化合物、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0077】
特定の、負に帯電したリン脂質の使用はまた、黄斑変性症及び黄斑ジストロフィーを患う患者に有益であることが示された。例えば、Shaban&Richter,Biol.Chem.,383:537−45(2002);Shaban,et al.,Exp.Eye Res.,75:99−108(2002)を参照。本発明の組成物中において場合により使用され得る、好適な負に帯電したリン脂質の例は、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジルグリセロール、及びそれらの組み合わせを含む。正に荷電した、及び/又は中性のリン脂質はまた、本発明の組成物と組み合わされて使用されるとき、黄斑変性及び黄斑ジストロフィーを患う患者に対して利益を提供し得る。
【0078】
特定のカロテノイドは、光受容細胞において必要な光保護の維持と相関している。カロテノイドは、植物、藻類、細菌、及び特定の動物、例えば鳥及び甲殻類において見られるテルペノイド群の、天然に存在する、黄色〜赤色の色素である。カロテノイドは、分子の大分類であり、600個超の天然に存在するカロテノイドが同定されている。カロテノイドは、炭化水素(カロテン)及びそれらの酸化されたアルコール誘導体(キサントフィル(xanthophyll))を含む。それらは、アクチニオエリトロール(actinioerythrol)、アスタキサンチン(astaxanthin)、カンタキサンチン(canthaxanthin)、カプサンチン(capsanthin)、カプソルビン(capsorubin)、ベータ−8’−アポ−カロテナール(アポ−カロテナール)、ベータ−12’−アポ−カロテナール、アルファ−カロテン、ベータ−カロテン、「カロテン」(アルファ−及びベータ−カロテンの混合物)、ガンマ−カロテン、ベータ−クリプトキサンチン(cyrptoxanthin)、ルテイン(lutein)、リコペン(lycopene)、ビオレリトリン(violerythrin)、ゼアキサンチン(zeaxanthin)及びそれらのヒドロキシル−又はカルボキシル−含有メンバーのエステルを含む。多くのカロテノイドは、天然においてシス及びトランス異性体として存在するが、合成化合物は、高い頻度でラセミ体混合物である。
【0079】
ヒトにおいて、網膜は、主に2つのカロテノイド:ゼアキサンチン及びルテインを選択的に蓄積する。これら2つのカロテノイドは強力な抗酸化剤であるため、そして青い光を吸収するため、網膜の保護を支援すると考えられる。本発明の組成物における任意の使用に好適であるカロテノイドの例は、ルテイン及びゼアキサンチン、並びに任意の上記カロテノイド及びそれらの組み合わせを含む。
【0080】
上で開示されたものに加え、効果的な剤形、投与形式、及び投与量は、実験的に決定され得、そしてかかる決定をすることは、当分野における技術の範囲内である。投与経路、排出率、処置の持続時間、投与される任意の他の薬剤の特性、年齢、大きさ、及び哺乳動物の種、例えばヒト患者、並びに医学及び獣医学の分野において周知の要因によって、投与量が変化するだろうことが、当業者に理解される。一般的に、本発明の化合物の好適な投与量は、所望の効果を与えるために有効である最低用量の化合物量であろう。例えば本発明の化合物は、患者へ、約0.1〜約90mg/日で送達するために十分なレベルで組成物中に存在する。化合物の効果的な投与量は、一日を通じて好適な間隔を空けて別々に投与される2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上のサブドーズ(sub−dose)で投与され得る。
【0081】
本発明の化合物は、任意の所望の及び有効な方法で:経口摂取のための医薬組成物として、又は眼への局所投与のための軟膏若しくは点眼液として、或いは非経口若しくは任意の方法における他の投与で、例えば腹腔内投与、皮下投与、局所投与、皮内投与、吸入、肺内投与、直腸投与、膣内投与、舌下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔投与、又はリンパ管内投与で投与され得る。さらに、本発明の化合物は、他の処置と併用して投与され得る。本発明の化合物又は組成物はまた、所望であればカプセルに封入されるか、又は胃及び他の分泌物から保護され得る。
【0082】
本発明の化合物は、単体で投与され得るが、当該化合物を医薬製剤(組成物)として、又はビタミン補填剤若しくは栄養補助食品として投与されることが好ましい。本発明の医薬として許容される組成物は、一つ以上の医薬として許容される担体及び、場合により一つ以上の他の化合物、薬剤成分及び/若しくは材料と混合した活性成分として、一つ以上の化合物を含む。選択された投与経路に関わらず、本発明の化合物は、当業者にとって既知の従来の方法によって、医薬として許容される剤形へと製剤化される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.)を参照。
【0083】
医薬として許容される担体は、当技術分野において周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.)、及びThe National Formulary(American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.)を参照)、そして糖(例えば、ラクトース、ショ糖、マンニトール、及びソルビトール)、デンプン、セルロース調製物、リン酸カルシウム(例えば、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、及びリン酸水素カルシウム)、クエン酸ナトリウム、水、水溶液(例えば、生理食塩水、塩化ナトリウム注射、リンゲル液注射、デキストロース注射、デキストロース及び塩化ナトリウム注射、乳酸リンゲル液注射)、アルコール(例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、及びベンジルアルコール)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール)、有機エスエル(例えば、オレイン酸エチル、及びトリグリセリド)、生分解性ポリマー(ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(アンヒドリド))、弾性マトリックス(elastomeric matrice)、リポソーム、マイクロスフィア、油(例えば、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、キャスター、ゴマ、綿実、及びラッカセイ)、ココアバター、ワックス(例えば坐剤ワックス)、パラフィン、シリコーン、タルク、シリシレート(silicylate)等を含む。本発明の医薬組成物中において使用される、各々の医薬として許容される担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そして対象に対して有害ではないという意味において、「許容され」るものでなければならない。選択された剤形及び意図された投与経路に好適である担体は、当技術分野において周知であり、そして選択された剤形に関して許容される担体、及び投与方法は、当分野における通常の技術を使用して決定され得る。
【0084】
本発明の医薬組成物、又はビタミン補填剤、又は栄養補助食品は、場合より、かかる医薬組成物、又はビタミン補填剤、又は栄養補助食品において一般的に使用されるさらなる成分、及び/又は材料を含む。これらの成分及び材料は当技術分野において周知であり、そして(1)賦形剤又は増量剤、例えばデンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール及びケイ酸;(2)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドンン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖及びアカシア;(3)保湿剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、架橋されたカルボキシメチルセルロースナトリウム及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤(solution retarding agent)例えばパラフィン;(6)吸着加速剤(absorption accelerator)、例えば四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、及びラウリル硫酸ナトリウム;(10)懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、及びトラガカント;(11)緩衝剤;(12)賦形剤、例えばラクトース、乳糖、ポリエチレングリコール,動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、ココアバター、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、サリチル酸塩、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド散剤;(13)不活性希釈剤、例えば水、又は他の溶媒;(14)保存剤;(15)界面活性剤;(16)分散剤;(17)制御放出又は吸収遅延剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、生分解性ポリマー、リポソーム、マイクロスフィア、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、及びワックス;(18)乳白剤;(19)助剤;(20)湿潤剤;(21)乳化剤及び懸濁剤;(22)、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、キャスター油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及び脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステル;(23)噴霧剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素、及び揮発性無置換炭化水素、例えばブタン及びプロパン;(24)抗酸化剤;(25)当該製剤を、対象とする受容者の血液と等張化する薬剤、例えば糖、及び塩化ナトリウム;(26)増粘剤;(27)コーティング材、例えばレシチン;及び(28)甘味剤、香味剤、着色剤、香料及び保存剤を含む。各々のかかる成分及び材料は、製剤の他の成分と適合性があり、そして対象に対して有害ではないという意味において、「許容され」るものでなければならない。
【0085】
経口投与に好適である医薬組成物、又はビタミン補填剤、又は栄養補助食品は、カプセル、カシェット、丸薬、錠剤、散剤、顆粒、水若しくは非水性液体の溶液又は懸濁液、水中油型若しくは油中水型エマルション、エリキシル剤若しくはシロップ、トローチ、大丸薬、舐剤、又はペースト剤の形態であり得る。これらの製剤は、当技術分野において既知の方法によって、例えば、従来のパン−コーティング、混合、顆粒化、又は凍結乾燥工程によって製造され得る。
【0086】
経口投与のための固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、散剤、顆粒など)は、活性成分を、一つ以上の医薬として許容される担体と、及び場合により一つ以上の賦形剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸着加速剤、湿潤剤、吸収剤、滑剤、及び/又は着色剤と混合することにより製造され得る。類似タイプの固体組成物は、好適な賦形剤を使用する軟質及び重質充填ゼラチンカプセル(soft and hard−filled gelatin capsule)中の充填剤として使用され得る。錠剤は、圧縮又は成形により、場合により一つ以上の補助成分と共に製造され得る。圧縮された錠剤は、好適な結合剤、滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤、界面活性剤又は分散剤を使用して調製され得る。成形された錠剤は、好適な機械中における成形によって製造され得る。錠剤及び他の固体剤形、例えば糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒は、場合により分割され、又はコーティング及びシェル(shell)、例えば腸溶コーティング、及び医薬製剤の分野において周知である他のコーティングを用いて調製され得る。それらはまた、それらの中における活性成分の遅延又は制御放出を提供するように製剤化され得る。それらは、細菌補定フィルター(bacteria−retaining filter)を通じた濾過により無菌化され得る。これらの組成物はまた、場合により乳白剤を含み得、そしてそれらが活性成分を消化管の特定の部分のみに又は優先的に、場合により遅延された方法で放出するような組成物であり得る。活性成分はまた、マイクロカプセル化された形態であり得る。
【0087】
経口投与用の液体剤形は、医薬として許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含む。液体剤形は、当技術分野において一般的に使用される好適な不活性希釈剤を含み得る。不活性希釈剤に加えて、経口用組成物はまた、助剤、例えば湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料及び保存剤を含み得る。懸濁液は、懸濁化剤を含み得る。
【0088】
直腸投与又は膣内投与のための医薬組成物は、座薬として提供され得、そしてそれは、室温で固体だが体温で液体であり、したがって直腸腔又は膣腔中で溶解し、そして活性成分を放出することとなる、一つ以上の好適な非刺激性担体と共に、一つ以上の活性成分(単数又は複数)を混合することによって調製され得る。膣内投与に好適である医薬組成物はまた、当技術分野において好適であることが既知である、医薬として許容される担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー製剤を含む。
【0089】
局所投与又は経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、ドロップ、及び吸入剤を含む。活性化合物は、滅菌条件下において、好適な医薬として許容される担体と混合され得る。軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、賦形剤を含み得る。散剤及びスプレーは、賦形剤及び推進剤を含み得る。
【0090】
非経口投与に好適な医薬組成物は、好適な抗酸化剤、バッファー、製剤を対象となる受容者の血液と等張化する溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含み得る、一つ以上の医薬として許容される無菌の等張性水溶液若しくは非水溶液、分散剤、懸濁剤、エマルション、又は使用直前に無菌の注射溶液若しくは分散剤へと戻され得る無菌散剤と組み合わされて、一つ以上の化合物を含む。適切な流動性が、例えばコーティング材料の使用により、分散剤の場合においては必要とされる粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。これらの組成物はまた、好適な助剤、例えば湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含み得る。等張化剤を含むことがまた、好ましい。さらに、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤の封入によりもたらされ得る。
【0091】
幾つかの場合において、薬剤(例えば医薬製剤、又はビタミン補填剤、又は栄養補助食品)の効果を延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からのその吸収を遅らせることが好ましい。これは、水溶性の結晶質又は非晶質の液体懸濁液の使用により達成され得る。
【0092】
薬剤の吸収率は、同様に、結晶の大きさ及び結晶の形態に依存し得る、その溶解率に依存する。代わりに、非経口投与された薬剤の遅延された吸収は、油ビヒクル中において薬剤を溶解又は懸濁することによって達成され得る。注射可能な持続性薬剤形態は、生分解性ポリマー中においてマイクロカプセル化マトリックス(microencapsule matrice)を形成することによって製造され得る。活性成分とポリマーとの比率に依存して、及び使用される特定のポリマーの性質に依存して、活性成分放出速度は制御され得る。持続性薬剤の注射可能な製剤はまた、薬剤を生体組織に適合可能なリポソーム又はマイクロエマルション中に封入することによって製造される。注射可能材料は、例えば、細菌保定フィルターを通じた濾過によって無菌化され得る。
【0093】
製剤は、単位用量又は複数回用量封入容器、例えばアンプル及びバイアル中で存在し得、そして無菌の液体担体、例えば注射用水を使用の直前に添加することのみが必要とされる、凍結乾燥状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液が、上記のタイプの無菌の散剤、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0094】
以下の実施例は、本発明の方法をさらに説明するために提供される。これらの実施例は一例にすぎず、そしていかなる場合であっても本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例】
【0095】
実施例1
全トランスレチナールのC20水素の、重水素での置換は、インビトロにおいてA2Eの形成を遅らせる。
20−D3−レチナールを、文献の手順(47)に従って製造し、そして全トランスレチナールと比較した、インビトロにおけるA2Eを形成する能力をHPLCにより測定した。
【0096】
図3Aは、全トランスレチナール又はC20−D3−レチナールのいずれか(16mg)、エタノールアミン(0.5当量)、及び酢酸(1.2当量)を含む2つの反応混合物に関する、全てのA2Eの形成を表示する。全トランスレチナール及びC20−D3−レチナールの反応混合物に関する、具体的なHPLCの形跡を図3Bに示す。曲線下面積は、A2Eの量に相当する:面積が大きいほど、A2Eはより多くなる。2つの反応混合物におけるA2Eの濃度を、約8時間ごとに50時間測定した。各々の時点における濃度をプロットし、そしてデータポイントを各々の反応混合物に関して直線に適合させた。2つの反応に関する2つの直線の傾きの比較により、A2E形成が、C20−D3−レチナールと比較して、全トランスレチナールに関して7倍速く生じたことが明らかとなった。50時間後における反応混合物の質量分析によって測定されるように、水素と重水素との交換は、標識化されたレチナールとの反応の間においては観測されず、そしてそれは、3か所重水素化されたレチナール、3か所重水素化されたレチナールヒドロキシルアミンSchiff塩基、及び4か所重水素化されたA2Eの存在を明確に示した。
【0097】
実施例2
全トランスレチナールのC20水素の、重水素での置換は、インビトロにおいてATR−ダイマーの形成を遅らせる。
20−D3−レチナールを実施例1に記載されたとおりに製造し、そして全トランスレチナールと比較された、ATR−ダイマーを形成するそのインビトロでの能力をHPLCによって測定した。全トランスレチナール又はC20−D3−全トランスレチナール(10mg)、及びプロリン(2当量)をエタノール中で混合し、そして当該反応をHPLCで追い、そしてその結果を図4Aに示す。同じ時点における全トランスレチナール及びC20−D3−全トランスレチナールの反応混合物について、具体的なHPLCの形跡を図4Bに示す。2つの反応混合物におけるATR−ダイマーの濃度を、約15分ごとに3時間測定した。各々の時点における濃度をプロットし、そしてデータポイントを個々の反応混合物に関して直線に適合させた。図4Cに示されるように、2つの直線の傾きの比較は、C20−D3−全トランスレチナールが、未標識のレチナールよりも、ATR−ダイマーを15倍遅く形成したことを示した。
【0098】
実施例3
全トランスレチナールのC20水素の、重水素での置換は、CD−1(ICR)マウスにおけるA2E−リポフスチン形成を遅らせる。
20−D3−全トランスレチナールを、全トランスレチナールと比較して、眼中においてA2Eを形成するその能力を測定するためにマウスに投与した。9匹の8週齢のCD−1(ICR)マウス(Charles River,Wilmington,MA)を、5匹からなる2つの群に分け、そして1.5mgの全トランスレチナール又はC20−D3−全トランスレチナールのいずれかを生理食塩水中10%Tween−20の溶液で、腹腔内注射(IP)にて、1週間に2回、6週間投与した。6週間の終わりに、個々のマウスへ全体で60,000I.U.(18mg)又はマウスの体内における本来の量の約28倍量のビタミンAを与えた。C20−D3−全トランスレチナールを用いた大量の投与は、正常ビタミンAの貯蔵をC20−D3−類縁体へと速やかに置き換える。そして、注射されたレチナールは、速やかに眼(桿体外節)中に蓄積し、そしてそこで十分に高い濃度でそれは反応してリポフスチン色素を形成するだろう。これは、ABCR-/-マウス及びスタルガルト病を患う患者における全トランスレチナールの蓄積と類似している。
【0099】
6週間の終了時、眼を切開し、網膜及び眼杯を4つ又は5つの群中に貯蔵し、そして50μLのエタノールを用いてホモジネートした。ホモジネートを13,000rpmで5分間遠心分離し、そして40μLの上清を取り除き、そしてHPLCによりA2E−リポフスチンを分析した。レチノール及びレチノールエステルを325nmで分析し、そしてA2E−リポフスチンを445nmで測定した。C20−D3−全トランスレチナールを投与したマウス(n=5)は、全トランスレチナール(n=4)を投与したマウスと比較して68%、A2E−リポフスチンが少なかった。両群のマウスは、ほぼ同濃度のレチノール及びレチノールエステルを有した。
【0100】
実施例4
全トランスレチナールのC20水素の、重水素での置換は、ABCR-/-マウスにおけるA2E形成を減少させる。
20−D3−全トランスレチノールアセテートを、文献の手順(47)に従って製造し、そして全トランスレチノールアセテートの場合と比較して、リポフスチンをもたらすその能力を測定するために、ABCR-/-マウスへ投与した(48、49)。標準的なげっ歯類用の食餌で飼育された、8匹の2か月齢のABCR-/-マウスに、20,000I.U./kgのC20−D3−全トランスレチノールアセテート又は全トランスレチノールアセテートのいずれかを含有する食餌をその後3か月間与えた。本食餌において、各々のマウスは、毎日推奨される量のビタミンA、又は同量のC20−D3−ビタミンA剤をほぼ摂取し、そしてそれは約1mg/kg/日未満であった。
【0101】
5か月間の終了時、眼を切開し、眼杯を6つの群に貯蔵し、80μLのエタノールを用いてホモジネートした。ホモジネートを13,000rpmで5分間遠心分離し、そして30μLの上清を取り除き、そしてHPLCによりA2E−リポフスチンを分析した。A2E−リポフスチンを445nmで測定した。C20−D3−全トランスレチノールアセテートを含有する食餌を3か月間与えたマウスは、全トランスレチノールアセテートの食餌を与えたマウスと比較して44〜58%、A2E−リポフスチンが少なかった。このA2E減少のパーセンテージは、視覚サイクル拮抗薬TDH、TDT、Ret−NH2、13−シス−レチノイン酸及びフェンレチニドを用いたABCR-/-マウスにおける類似の試験において観測されたものと同じ桁である。しかし本実施例において、A2Eの減少は、11〜40倍少ない用量のC20−D3−全トランスレチノールアセテートを用いて達成される。
【0102】
実施例5
20−D3−全トランスレチノールアセテートの食餌のみで飼育されたABCR-/-マウスは、検出できない量の抽出可能なリポフスチン色素を示し、そしてリポフスチン沈着の減少を示す。
実施例4のように、4匹のABCR-/-マウスの2つの群が、C20−D3−全トランスレチノールアセテート、又は全トランスレチノールアセテートのいずれかを含有する食餌で飼育された。しかし、本実施例において、当該マウスは、同一の食餌を与えた母親の子孫であり、したがって、それらの各々のビタミンA類縁体のみ用いて飼育された。5.5〜6か月齢において、マウスを屠殺し、そして眼杯を、実施例4に記載されたとおりにリポフスチン色素に関して分析した。当該結果を図5に示す。両方のマウスは、同量の眼のレチノール及びレチノールエステルを含んだが(図5C)、リポフスチン色素は、C20−D3−全トランスレチノールアセテートの食餌で飼育されたマウスにおいて検出できず(図5B)、しかし、全トランスレチノールアセテートの食餌で飼育されたマウスにおいては検出できた(図5A)。
【0103】
通常の食餌を与えた上記マウスの眼中におけるリポフスチン顆粒の量対、C20−D3−全トランスレチノールアセテートを含む食餌を与えた上記マウスの眼中におけるリポフスチン顆粒の量を測定するために、マウスの両群からの眼杯(個々の群から2つ)を、電子顕微鏡法で評価した。図6に示されるように、C20−D3−全トランスレチノールアセテートの食餌を与えたマウスは、全トランスレチノールアセテートの食餌を与えたマウスと比較して、より低い電子密度のリポフスチン沈着を有した。
【0104】
実施例6
野生型のラットにおけるフェンレチニド及び/又はTDHと同様に、C20−D3−全トランスレチナールは、A2E−リポフスチン形成を遅らせる。
45〜50日齢、雌のCD IGSラット(Charles River,Wilmington,MA)を、3匹ずつ、4つのグループに分けた。生理食塩水中10%Tween−10を用いたIP注射で、)3mg、1週間に2回又は3回、8週間(全体で20、3mgの注射)で、これらの3つの群に全トランスレチナールを投与し、そして1つの群にC20−D3−全トランスレチナールを与えた。したがって、8週間の終了時において、当該動物は、それらの本来の貯蔵量のほぼ20倍のビタミンAを、レチナール又はC20−D3−全トランスレチナールとして摂取した。C20−D3−全トランスレチナールの大量の投与は、速やかに正常ビタミンの貯蔵をC20−D3−類縁体へと速やかに置換する。全トランスレチナールを投与された3つの群のうち、一つの群は、フェンレチニド(50)及び別のTDH(23)を、ほぼ1.5mg/日/動物の用量で摂取した。(いずれも、1g/LのNu−rice(RIBUS,Inc,St.Louis,MO)で乳化された飲料水を用いて供給された)。
【0105】
実施例3及び図7において記載されたように、8週間の終了時において、RPE、A2E−リポフスチンを4つの群の各々においてHPLCにより評価した。A2E−リポフスチン色素は、全トランスレチナールを摂取した動物(対照群)において最も多かった。C20−D3−全トランスレチナールを摂取した動物は、全トランスレチナールを摂取した動物よりもA2E−リポフスチンが35%少なかった。同様に、フェンレチニド又はTDHを摂取した動物は、全トランスレチナールのみを投与された動物と比較して、A2E−リポフスチンが49%及び31%少なかった。
【0106】
引用文献
上で引用された以下の文献は、本明細書において完全に記載されたかのように参照により援用される:
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【0107】
本発明の範囲は、明細書、実施例、及び本明細書において示唆された使用によって限定されるものではなく、そして改変は、本発明の趣旨から離れることなくなされ得る。したがって本発明は、本発明の改良及び改変を、それらが添付された特許請求の範囲及びそれらの均等の範囲内であることを条件として含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜中におけるリポフスチン又はリポフスチン色素の形成を遅らせるための、及び/又は阻害するための組成物であって、置換C20−レチノイドを含み、ここで前記置換レチノイドは1H、2H及び3Hから成る群から独立して選択される3つの基をC20位に有し、ただし前記基は同時に1Hではなく、前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、前記組成物。
【請求項2】
前記置換C20−レチノイドが、C20−D1−3−レチノイドであり、ただし前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記置換C20−レチノイドが、C20−D3−レチノイド又はC20−T3−レチノイドであり、ただし前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記リポフスチン色素が、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン、全トランスレチナール−ダイマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記置換C20−レチノイドが、医薬組成物又は栄養補助組成物の一部として投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
単位剤として投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
医薬製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
眼へと直接投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
黄斑変性症、スタルガルト病、卵黄状黄斑(Vitelliform)若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、加齢性黄斑変性症、地図状萎縮、錐体桿体ジストロフィー、網膜色素変性及びマラッティア・レベンティネース(Malattia Leventinese)からなる群から選択される疾患を処置又は改善するための組成物であって、置換C20−レチノイドを含み、ここで前記置換レチノイドは1H、2H及び3Hから成る群から独立して選択される3つの基をC20位に有し、ただし前記基は同時に1Hではなく、前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、前記組成物。
【請求項10】
前記置換C20−レチノイドが、C20−D1−3−レチノイドであり、ただし前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記置換C20−レチノイドが、C20−D3−レチノイド又はC20−T3−レチノイドであり、ただし前記置換C20−レチノイドはレチノイン酸ではない、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記置換C20−レチノイドが、医薬組成物又は栄養補助組成物の一部として投与される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が単位剤として投与される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
医薬製剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記疾患が加齢性黄斑変性症又は地図状萎縮である、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記疾患がスタルガルト病である、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記疾患が、卵黄状黄斑(Vitelliform)若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、錐体桿体ジストロフィー、網膜色素変性及びマラッティア・レベンティネース(Malattia Leventinese)からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
眼へと直接投与される、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
黄斑変性症、スタルガルト病、卵黄状黄斑(Vitelliform)若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、加齢性黄斑変性症、地図状萎縮、錐体桿体ジストロフィー、網膜色素変性及びマラッティア・レベンティネース(Malattia Leventinese)からなる群から選択される疾患を処置又は改善するための組成物であって、医薬として許容される担体、及び式I:
【化1】

[式中、
1は、オキソ、又はHであり;
2は、H、又は存在せず;
3は、ヒドロキシ、若しくはオキソ、又は=CHR7であり、ここでR7は、カロテノイドを形成し;そして
4、R5、及びR6は、1H、2H及び3Hからなる群から独立して選択され;
ただしR4、R5、及びR6は同時に1Hではなく、そしてR、R、及びRはカルボキシル基を形成しない]
で表される化合物又はその医薬として許容される塩を含む、前記組成物。
【請求項20】
前記疾患が加齢性黄斑変性症又は地図状萎縮である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記疾患がスタルガルト病である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記疾患が、卵黄状黄斑(Vitelliform)若しくはベスト病(VMD)、ソースビー眼底変性症、錐体桿体ジストロフィー、網膜色素変性及びマラッティア・レベンティネース(Malattia Leventinese)からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
4、R5、及びR6が同時にHであるか、又はHであるかのいずれかである、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
(12E,16E)−13,17,21−トリメチルドコサ−12,16,20−トリエン−11−オン、(2E,6E)−N−ヘキサデシル−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエンアミン、13−シス−レチノイン酸、全トランスレチニルアミン、フェンレチニド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される補助剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記補助剤がフェンレチニドである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
亜鉛、ビタミンE、ビタミンD、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記亜鉛が、前記組成物中に3〜80mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記亜鉛が、前記組成物中に3〜10mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記亜鉛が、前記組成物中に10〜80mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記ビタミンEが、前記組成物中に3〜3,000mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記ビタミンEが、前記組成物中に3〜15mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項32】
前記ビタミンEが、前記組成物中に15〜3,000mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
前記ビタミンDが、前記組成物中に0.005〜0.1mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項34】
前記ビタミンDが、前記組成物中に0.005〜0.015mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項35】
前記ビタミンDが、前記組成物中に0.015〜0.1mg存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項36】
前記化合物が、患者へ、平均で0.1〜90mg/日で送達するために十分なレベルで、前記組成物中に存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項37】
眼の抗酸化剤、無機物、負に帯電したリン脂質、カロテノイド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一つ以上の添加剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項38】
眼の前記抗酸化剤が、ビタミンC、ビタミンE、ベータ−カロテン、コエンザイムQ、OT−551、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ブチル化ヒドロキシトルエン、レスベラトロル(resveratrol)、(2R)−[[4−(2,6−ジ−1−ピロリジニル−4−ピリミジニル)−1−ピペラジニル]メチル]−3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−6−オール2塩酸塩(U−83836−E)、ビルベリー抽出物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記無機物が、酸化銅、酸化亜鉛;セレン含有化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
前記負に帯電したリン脂質が、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジルグリセロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記カロテノイドが、ゼアキサンチン、ルテイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
網膜中におけるリポフスチン又はリポフスチン色素の形成を遅らせるための、及び/又は阻害するための組成物であって、医薬として許容される担体、及び式I:
【化2】

[式中、
1は、オキソ、又はHであり;
2は、H、又は存在せず;
3は、ヒドロキシ、若しくはオキソ、又は=CHR7であり、ここでR7は、カロテノイドを形成し;そして
4、R5、及びR6は、1H、2H及び3Hからなる群から独立して選択され;
ただしR4、R5、及びR6は同時に1Hではなく、そしてR、R、及びRはカルボキシル基を形成しない]
で表される化合物又はその医薬として許容される塩を含む、前記組成物。
【請求項43】
4、R5、及びR6が同時にHであるか、又はHであるかのいずれかである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
(12E,16E)−13,17,21−トリメチルドコサ−12,16,20−トリエン−11−オン、(2E,6E)−N−ヘキサデシル−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエンアミン、13−シス−レチノイン酸、全トランスレチニルアミン、フェンレチニド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される補助剤をさらに含む、請求項42に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−49711(P2013−49711A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−260971(P2012−260971)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2010−524874(P2010−524874)の分割
【原出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507013925)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (5)
【Fターム(参考)】