説明

黄色系無機顔料及びその製造方法

【課題】新規な黄色系無機顔料を提供する。
【解決手段】プラセオジムと、モリブデン、チタン、ジルコニウム及びこれらの混合より選択された遷移金属であって、基本的にはモリブデンの酸化物を含み、任意でアルカリ土類金属(A)を含む黄色系無機顔料を提供し、この黄色系無機顔料は、一般式APrMoTm6+&(Tmはチタン又はジルコニウム、xは0又は1を表す)で示される。炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、モリブデン酸アンモニウム、及び酸化プラセオジム等の高純度化合物を化学量論比で加重し、ボール粉砕し、900〜1200℃の範囲で空気中で3〜12時間焼成する。十分に細かくした焼成粉末は顔料の特徴付けに使用した。調製した顔料の相純度と光学的特性を調べた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属、プラセオジム金属及び遷移金属の酸化物を含む黄色系無機顔料に関する。更に詳しくは、本発明は、一般式APrMoTm6+&(Tmはチタン又はジルコニウム、xは0又は1を表す)を有する黄色系無機顔料に関し、式中、Aは任意であるとともに1以上のアルカリ土類金属(Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを表す)より選択されるものである。本発明はまた、一般式APrMoTm6+&(Tmはチタン又はジルコニウム、xは0又は1を表す)を有する黄色系無機顔料の製造方法に関し、式中、Aは任意であるとともに1以上のアルカリ土類金属(Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを表す)より選択されるものである。黄色系無機顔料は、例えば、塗料、ワニス、プラスチック、セラミック等の様々な用途の基材の着色に適している。
【背景技術】
【0002】
無機顔料は、塗料、インク、プラスチック、ゴム、セラミック、エナメル及びガラス等の多様な用途に広く使用されている。残念ながら、上記用途に採用される最近の着色剤の大部分は、臨界値を超えた場合に環境や人体に悪影響を及ぼす有害金属(例えば、クロム(Cr)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、鉛(Pb)等)を含んでいる(H.M.スミス(Smith)著「高性能顔料(High Performances Pigments)」,Wiley-VCH,Weinheim,2002を参照)(非特許文献1)。従って、工業規模で使用し、その他にこの技術の最近の特徴を示す上記不都合や欠点を避ける、毒性のある無機顔料に代わる環境に優しい着色剤を探す必要性がある。
【0003】
黄色は、セラミック顔料の分野において特に重要な色であり、黄色の消費量は他の着色顔料の消費量を上回っている。三つの重要な黄色顔料系があり、それは、スズバナジアイエロー(tin vanadia yellows)(DCMA 11−22−4を参照)、プラセオジムジルコン(praseodymium zircon)(DCMA 14−43−4)、ジルコンバナジアイエロー(zircon vanadia yellow)(DCMA 1−01−4を参照)である。アンチモン酸鉛(Pb2Sb2O7)、クロム酸鉛(PbCrO4)、硫化カドミウム(CdS)のような一般に使用される他の黄色系セラミック顔料は、現在、それらの毒性により市場から排除されている(J.A. Badenes, M. Llusar, M.A. Tena, J. Calbo, G. Monros, J. Eur. Ceram. Soc. 2002, 22, 1981-1990を参照)(非特許文献2)。
【0004】
釉薬用の顔料としてのプラセオジムドープ珪酸ジルコニウム結晶体の使用が、1961年7月に付与された米国特許第2,992,123号において、C.A. Seabrightにより開示されている(特許文献1)。その後、セラミック用途のためのプラセオジムドープジルコンに関する多数の特許が出され、現在世界中で製造されている。0.2から2マイクロメートルサイズの範囲のプラセオジムドープ珪酸ジルコニウム粒子を体積で少なくとも約50パーセント含む安定色素粒子が、1994年5月31日に付与された米国特許第5,316,570号に開示されており、プラスチックや塗料に使用することができる(特許文献2)。
【0005】
1994年1月4日に付与された米国特許第5,275,649号は、熱安定性であるためセラミックに適用できるプラセオジムジルコン(ZrSiO4:Pr)による環境への悪影響が小さい無機黄色系顔料の製造方法を開示している(特許文献3)。しかしながら、この顔料は高温焼成(〜1300℃)が必要である。
【0006】
多量の酸化ジルコニウム、並びに酸化物の形でセリウム、プラセオジム及び/又はテルビウム値の添加量を含む、塗料、ワニス、セラミック等の様々な基材の着色に適した無毒性の橙黄色の色素成分が、1996年10月1日に付与された米国特許第5,560,772号に報告されている(特許文献4)。焼成が一般に、大気中で少なくとも1550℃の加熱により行われる。
【0007】
一般式LnTaONで示され、式中、Lnは希土類元素であり、黄色−橙色から赤褐色を呈するとともに高度な明るさがある、ペロブスカイトを備えたオキソニトリドは、アンモニアの還元性雰囲気においてTa(V)化合物やLn化合物を含む粉末混合物のアニール化により、鉱化剤の存在下で、一連のアルカリ金属やアルカリ土類ハロゲン化合物から生成される(1997年12月2日に付与された米国特許第5,693,102号、M. Jansen and H.P. Letschert, Nature 2000, 404, 980-982を参照)(特許文献5、非特許文献3)。しかしながら、これらペロブスカイトの製造において、有毒で可燃性のアンモニアガスの流れの中で長時間(20〜60時間)出発物質を加熱する必要がある。
【0008】
2002年7月16日に付与された米国特許第6,419,735号は、サマリウム三二硫化物顔料(Samarium sesquisulphide pigment)の製造方法を開示している(特許文献6)。その工程は、サマリウム、三価の希土類金属、及びアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を、硫化水素と二硫化炭素のガス状混合物とともに反応させる工程を含む。この発明の混合物は、強い黄色を示す。
【0009】
1995年8月9日に付与された米国特許第5,336,312号は、化学式Bix−1で示される黄色系着色剤に関する工程を開示しており、式中、Aは、ビスマス(Bi)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、又はこれらの二つ以上の混合からなる群より選択され、Dは、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、セリウム(Ce)、又はこれら二つ以上の混合からなる群より選択され、xは、少なくとも1である数、yは、ビスマス、A及びDの原子価を満たすために必要とされる酸素の数である(特許文献7)。この着色剤は、有機組成物、プラスチック、ゴム、並びに、セラミックやエナメル、塗料や印刷用インクのような塗料組成物等の無機組成物を含む着色組成物の提供に有用である。Prabhakar RaoとReddy(染料と顔料(Dyes and Pigments), 2004, 63, 169-174を参照)は、一般式(Bi1−x(REを有するビスマスと希土類酸化物を基にした黄色−橙色着色剤を報告しており、式中、REはイットリウム(Y)又はセリウム(Ce)であり、REがイットリウムの場合、xは0.2又は0.5であり、REがセリウムの場合、xは0.3又は0.5である(非特許文献4)。
【0010】
一般式CeM(MoOで示され、式中、Mがアルカリ金属、好ましくはナトリウムを表す、セリウムとアルカリ金属のモリブデン酸複塩を含む黄色系無機顔料が欧州特許(1993年5月19日に付与されたEP0542343号を参照)に開示されている(特許文献8)。
【0011】
日本の特開2003−160742号公報には、一般式ACeLn1−xMoで示される黄色系セリウム顔料の製造が開示されており、式中、xは0〜1、組成中のAはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)からなる群より選択される少なくとも1種であり、Lnはイットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)からなる群より選択される少なくとも1種である(特許文献9)。
【0012】
硫化カドミウム(CdS)、クロム酸鉛(PbCrO4)、アンチモン酸鉛(Pb2Sb2O7)の代わりとなる有毒金属を含まない新規の黄色系顔料であるセリウムチオシリケート(cerium thiosilicates)が報告されている(G. Gauthier, S. Jobic, M. Evain, H.-J. Koo, M.-H Whangbo, C. Fouassier, and R. Brec, Chem. Mater. 2003, 15, 828-837)(非特許文献5)。しかしながら、その合成過程には依然いくつかの問題がある。加熱条件をセリウムチオシリケートを合成するために正確に管理しなければならず、また、この方法はあまりにも時間がかかる(最短で13日間)。
【0013】
酸化セリウムと他の遷移金属酸化物を基とする代わりとなる黄色系顔料がいくつか報告されているけれども、それらの色特性は工業用には適さない(T. Masui, H. Tategaki, N. Imanaka, J. Mater. Sci. 2004, 39, 4909-4911; Imanakaら, Chem. Lett. 2005, 34, 1322-1323; T. Masui, S. Furukawa, and N. Imanaka, Chem. Lett. 2006, 35, 1032-1033)(非特許文献6〜8)。
【特許文献1】米国特許第2,992,123号明細書
【特許文献2】米国特許第5,316,570号明細書
【特許文献3】米国特許第5,275,649号明細書
【特許文献4】米国特許第5,560,772号明細書
【特許文献5】米国特許第5,693,102号明細書
【特許文献6】米国特許第6,419,735号明細書
【特許文献7】米国特許第5,336,312号明細書
【特許文献8】欧州特許第EP0542343号明細書
【特許文献9】特開2003−160742号公報
【非特許文献1】"High Performances Pigments" ed. by H.M. Smith, Wiley-VCH,Weinheim,2002
【非特許文献2】J.A. Badenes, M. Llusar, M.A. Tena, J. Calbo, G. Monros, J. Eur. Ceram. Soc. 2002, 22, 1981-1990
【非特許文献3】M. Jansen and H.P. Letschert, Nature 2000, 404, 980-982
【非特許文献4】Dyes and Pigments, 2004, 63, 169-174
【非特許文献5】G. Gauthier, S. Jobic, M. Evain, H.-J. Koo, M.-H Whangbo, C. Fouassier, and R. Brec, Chem. Mater. 2003, 15, 828-837
【非特許文献6】T. Masui, H. Tategaki, N. Imanaka, J. Mater. Sci. 2004, 39, 4909-4911
【非特許文献7】Imanaka et al, Chem. Lett. 2005, 34, 1322-1323
【非特許文献8】T. Masui, S. Furukawa, and N. Imanaka, Chem. Lett. 2006, 35, 1032-1033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の主たる目的は、アルカリ土類金属、プラセオジム金属、及び遷移金属(チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、又はこれら遷移金属の混合)の酸化物を含み、一般式APrMoTm6+&(Mはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)、xは0又は1を表す)で示され、Aはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)である新規な黄色系無機顔料を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、色彩対象や色彩塗料を形成するために使用でき、塗料、プラスチック、ガラス、セラミック等に適用できる新規な黄色系無機顔料を提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、無毒性のアルカリ土類金属酸化物、プラセオジム金属酸化物、遷移金属酸化物の黄色系顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、プラセオジムと、モリブデンと、チタン、ジルコニウム及びこれらの混合から選択される他の遷移金属の酸化物を含み、任意でアルカリ土類金属(A)を含む黄色系無機顔料を提供し、得られた黄色系無機顔料は、一般式APrMoTm6+&(Tmはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)、xは0又は1を表す)で示される。
【0018】
本発明の実施例において、使用されるアルカリ土類金属(A)は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びこれらの混合からなる群より選択される。
【0019】
更に他の実施例において、黄色系無機顔料は、プラセオジムと、モリブデンと、少なくとも一つのアルカリ土類金属の酸化物を含み、一般式APrMoOで示され、式中、Aはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を表す。
【0020】
更に他の実施例において、一般式PrMoOで示される黄色系無機顔料が、L(明度)=80.3、a(赤緑軸)=−6.5、b(黄青軸)=64.6である色度座標を有する。
【0021】
更に他の実施例において、化学式PrMoTiOで示される黄色系無機顔料が、L=88.4、a=−13.7、b=43.1である色度座標を有する。
【0022】
更に他の実施例において、化学式PrMoZrOで示される黄色系無機顔料が、L=74.7、a=−3.7、b=54.6である色度座標を有する。
【0023】
更に他の実施例において、化学式APrMoOで示される黄色系無機顔料が、CIE1976カラースケールにより、以下の色度座標:
MgPrMoO,L=81.1、a=−9.1、b=53.5
CaPrMoO,L=78.7、a=−5.6、b=52.8
SrPrMoO,L=79.5、a=−5.8、b=50.3
BaPrMoO,L=77.1、a=−6.1、b=49.3
を有する。
【0024】
本発明は更に、一般式APrMoTm6+&で示され、式中、Tmはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)、xは0又は1を表し、Aは任意であるとともにマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びこれらの混合から選択される、黄色系無機顔料の製造方法を提供する。この方法は、各構成金属酸化物を化学量論比で混合して、次いで大気中で900〜1100℃の範囲の温度で6〜9時間焼成し、目的生成物を得るものである。
【0025】
更に別の実施例において、使用されるアルカリ土類金属の固体酸化物が、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)からなる群より選択される。
【0026】
更に別の実施例において、使用される遷移金属の固体酸化物が、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H20)からなる群より選択される。
【0027】
更に別の実施例において、使用されるプラセオジムの固体酸化物は、酸化プラセオジム(Pr6O11)である。
【0028】
更に別の実施例において、得られた黄色系無機顔料は、以下の化学式:
1)PrMoO
2)PrMoTiO
3)PrMoZrO
4)MgPrMoO
5)CaPrMoO
6)SrPrMoO
7)BaPrMoO
によって示される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の主たる利点は、無毒性のアルカリ土類金属酸化物、プラセオジム金属酸化物、及び遷移金属酸化物の黄色系顔料を提供することである。
他の利点は、工業に適用できるより良い着色特性を備えた無毒性金属の黄色系顔料を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の目的は、化学式PrMoTm6+&(Tmはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)、xは0又は1を表す)及びAPrMoO(Aはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)を表す)を有する無毒性の黄色系顔料を提供することであり、この黄色系顔料は塗料やプラスチック、ガラス、セラミックに適用できるものである。炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)、及び酸化プラセオジム(Pr6O11)のような高純度化合物を、化学量論比で加重し、ボール粉砕し、900〜1200℃の範囲で大気中で3〜12時間焼成する。十分に細かくした焼成粉末を顔料の特徴付けに使用した。調製した顔料の相純度と光学的特性を調べた。
【0031】
下記の実施例は本発明を例示するものであり、従って、本発明の範囲を限定するものと理解すべきではない。
【実施例】
【0032】
実施例1:PrMoO黄色系顔料の調製
この実施例は、PrMoO顔料の調製に関する。酸化プラセオジム(Pr6O11)(純度99.9%)とモリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)(純度99.9%)を、化学量論比で、メノウ乳鉢内で乳棒を使い十分に混合した。混合物を空気中で9時間、1050℃で焼成した。得られた粉末を、Philips X'pert Pro回析測定装置を使用して、ニッケルフィルターしたCuKα1線を用いてX線粉末解析法(XRD)により測定した。図1に示した化合物のXRDパターンは、粉末X線回析ファイル:PDF番号24−913と十分一致している。JEOL社製の走査電子顕微鏡JSM−5600LV SEMを使って形態素解析を行った。顔料の粒径は1〜2μmの範囲であった。粉体の光反射率を、硫酸バリウムを使用して紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2450)で測定し、参考として図2に示した。CIE−LAB1976カラースケールにより検出された色度座標は、L=80.3、a=−6.5、b=64.6であった。a(赤緑軸)とb(黄青軸)の値は色調を示している。Lの値は無彩色のグレイスケールに相当する色の明暗を表している。
【0033】
実施例2:PrMoTmO黄色系顔料(Tmはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)を表す)の調製
この実施例は、PrMoTmO(Tmはチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)を表す)の合成について説明する。二酸化チタン(TiO2)(純度99.9%)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)(純度99.9%)、酸化プラセオジム(Pr6O11)(純度99.9%)、及びモリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)(純度99.9%)を、化学量論比で、メノウ乳鉢内で乳棒を使い十分に混合した。混合物を空気中で9時間、1100℃で焼成した。得られた粉末を、Philips X'pert Pro回析測定装置を使用して、ニッケルフィルターしたCuKα1線を用いて、X線粉末解析法(XRD)により測定した。図3に示した化合物のXRDパターンは、粉末X線回析ファイル:PDF番号49−0601と十分一致している。JEOL社製の走査電子顕微鏡JSM−5600LV SEMを使って形態素解析を行った。顔料粉体の粒径は1〜5μmの範囲であった。粉体の光反射率を、硫酸バリウムを使用して紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2450)で測定し、参考として図4に示した。CIE−LAB1976カラースケールにより検出された色度座標は、以下の通りであった。:
PrMoTiO、L=88.4、a=−13.7、b=43.1
PrMoZrO、L=74.7、a=−3.7、b=54.6
【0034】
実施例3:APrMoO黄色系顔料(Aはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)を表す)の調製
この実施例は、APrMoO(Aはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)を表す)の合成に関する。炭酸マグネシウム(MgCO3)(純度99.9%)、炭酸カルシウム(CaCO3)(純度99.9%)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)(純度99.9%)、炭酸バリウム(BaCO3)(純度99.9%)、酸化プラセオジム(Pr6O11)(純度99.9%)、及びモリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)(純度99.9%)を、化学量論比で、メノウ乳鉢内で乳棒を使い十分に混合した。混合物を空気中で6時間、950℃で焼成した。得られた粉末を、Philips X'pert Pro回析測定装置を使用して、ニッケルフィルターしたCuKα1線を用いてX線粉末解析法(XRD)により測定した。化合物のXRDパターンを図5に示した。XRDパターンはフェルグソン石関連相に示された。JEOL社製の走査電子顕微鏡JSM−5600LV SEMを使って形態素解析を行った。顔料粉体の粒径は1〜5μmの範囲であった。粉体の光反射率を、硫酸バリウムを使用して紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2450)で測定し、参考として図6に示した。CIE−LAB1976カラースケールにより検出された色度座標は、以下の通りであった。:
MgPrMoO、L=81.1、a=−9.1、b=53.5
CaPrMoO、L=78.7、a=−5.6、b=52.8
SrPrMoO、L=79.5、a=−5.8、b=50.3
BaPrMoO、L=77.1、a=−6.1、b=49.3
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】PrMoOの粉末X線解析パターンである。
【図2】PrMoOの拡散反射スペクトルである。
【図3】PrTmMoO(Tmはチタン又はジルコニウムを表す)の粉末X線解析パターンである。
【図4】PrTmMoO(Tmはチタン又はジルコニウムを表す)の拡散反射スペクトルである。
【図5】APrMoO顔料(Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムを表す)の粉末X線解析パターンである。
【図6】APrMoO顔料(Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムを表す)の反射スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセオジムと、モリブデンと、チタン、ジルコニウム及びこれらの混合から選択される他の遷移金属の酸化物を含み、任意でアルカリ土類金属(A)を含む黄色系無機顔料であって、一般式APrMoTm6+&(Tmはチタン又はジルコニウム、xは0又は1を表す)で示されることを特徴とする黄色系無機顔料。
【請求項2】
使用されるアルカリ土類金属(A)が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの混合からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項3】
プラセオジムと、モリブデンと、少なくとも一つのアルカリ土類金属の酸化物を含み、一般式APrMoOで示され、式中、Aはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを表すことを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項4】
一般式PrMoOで示され、L(明度)=80.3、a(赤緑軸)=−6.5、b(黄青軸)=64.6である色度座標を有することを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項5】
化学式PrMoTiOで示され、L=88.4、a=−13.7、b=43.1である色度座標を有することを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項6】
化学式PrMoZrOで示され、L=74.7、a=−3.7、b=54.6である色度座標を有することを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項7】
化学式APrMoOで示され、CIE1976カラースケールにより、以下の色度座標:
MgPrMoO,L=81.1、a=−9.1、b=53.5
CaPrMoO,L=78.7、a=−5.6、b=52.8
SrPrMoO,L=79.5、a=−5.8、b=50.3
BaPrMoO,L=77.1、a=−6.1、b=49.3
を有することを特徴とする請求項1に記載の黄色系顔料。
【請求項8】
一般式APrMoTm6+&で示され、式中、Tmはチタン又はジルコニウム、xは0又は1を表し、Aは任意であるとともにマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの混合から選択される、黄色系無機顔料の製造方法であって、固体の各構成金属酸化物を化学量論比で混合して、次いで大気中で900〜1100℃の範囲の温度で6〜9時間焼成し、目的生成物を得ることを特徴とする黄色系無機顔料の製造方法。
【請求項9】
使用されるアルカリ土類金属の固体酸化物が、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
使用される遷移金属の固体酸化物が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、モリブデン酸アンモニウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
使用されるプラセオジムの固体酸化物が、酸化プラセオジムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
得られた黄色系無機顔料は、以下の化学式:
1)PrMoO
2)PrMoTiO
3)PrMoZrO
4)MgPrMoO
5)CaPrMoO
6)SrPrMoO
7)BaPrMoO
によって示されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一般式PrMoOで示される得られた黄色系顔料は、L(明度)=80.3、a(赤緑軸)=−6.5、b(黄青軸)=64.6である色度座標を有することを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化学式PrMoTiOで示される得られた黄色系顔料は、L=88.4、a=−13.7、b=43.1である色度座標を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
化学式PrMoZrOで示される黄色系顔料は、L=74.7、a=−3.7、b=54.6である色度座標を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
一般式APrMoOで示される黄色系顔料は、CIE1976カラースケールにより、以下の色度座標:
MgPrMoO,L=81.1、a=−9.1、b=53.5
CaPrMoO,L=78.7、a=−5.6、b=52.8
SrPrMoO,L=79.5、a=−5.8、b=50.3
BaPrMoO,L=77.1、a=−6.1、b=49.3
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−266581(P2008−266581A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−41921(P2008−41921)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】