説明

黒色ジスアゾ色素、該ジスアゾ色素の調製および使用方法

【課題】ニュートラルな色合い、優れた耐光性、優れた耐水性を有するとともに、ブリーディングが生じず、オゾンによる劣化に対する耐性に優れ、光またはオゾンによる劣化後でも中性的な色合いを保つことができる新規な水溶性の高い黒色色素の提供。
【解決手段】一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。


AおよびBは、特定のベンゼン誘導体、特定のナフタレン誘導体で示される基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な黒色ジスアゾ色素、該ジスアゾ色素の塩、染色および印刷作業における該ジスアゾ色素の調製および使用方法に関する。また、本発明は、該色素を含む液体色素調製物、特に、インクジェット印刷用および筆記具用の水性記録液体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷プロセスには、実質的に以下の2種類がある。
【0003】
連続流型のインクジェット印刷システムにおいては、記録液体は、ノズルを通過するときの圧力で連続流中に排出される。前記連続流は、前記ノズルから所定の距離だけ離れた位置において個々の液滴に分けられる。記録用紙上の特定の位置を印刷する必要がある場合、前記個々の液滴は、記録用紙上に向けられるか、さもなければ回収容器に向けられる。この操作は、例えば、デジタルデータ信号に応じて不要な液滴を帯電し、帯電された液滴を前記回収容器に向けるために、帯電された液滴を該液滴の軌道を調節する静電場を通過させることによって実行される。非帯電の液滴が前記回収容器に到達する場合には、逆の手順を用いることもできる。
【0004】
非連続プロセス、あるいはいわゆる「ドロップオンデマンド」システムにおいては、
記録用紙上の特定の位置を印刷する必要がある場合にだけ、デジタルデータ信号に応じて液滴が生成される。
【0005】
経済的な理由のために、最新のインクジェットプリンタの速度は、着実に向上される必要がある。デジタル画像は、デジタルカメラで取り込まれ、あるいはハロゲン化銀を用いたカメラフィルムを走査して生成される。このような最新のプリンタを用いると、ハロゲン化銀物質上にある旧来の複写物とほぼ区別不能な品質レベルで、デジタル画像を印刷することができる。このように生成された画像は、悪条件下でも優れた保存安定性を有する必要がある。これは、適切な記録用紙と、(それぞれ色素が含まれた)記録液体を精密に調整するシステムを使用することによってのみ実現できる。
【0006】
これらのプリンタに適した記録用紙は、記録液体を極めて迅速に、特に、フォトリアリスティックな画像の印刷中に、吸収する必要がある。この目的に特に適した記録用紙は、ナノ多孔性の無機化合物、つまり、好ましくは酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素などの酸化物、あるいは酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムなどの酸化物/水酸化物から構成される。これらの記録用紙は、「ナノ多孔性」記録用紙として公知である。
【0007】
ナノ多孔性記録用紙は、ナノ多孔性の毛管力の作用のために、記録液体を極めて迅速に(マイクロ秒の範囲で)吸収する。高分子系の記録用紙は、前記高分子の膨張のために、よりゆっくりと(ミリ秒の範囲で)記録液体を吸収する。
【0008】
市販されている記録液体とナノ多孔性記録用紙の組み合わせのほとんどは、必要とされる要求の全てを満足していない。今日使用されている黒色色素は、要求される特性の全て、例えば、極めて高い光沢(彩度)、好適な色合い、良好な耐光性、オゾンによる劣化に対する良好な耐性、優れた拡散堅牢度を有する訳ではない。前記黒色色素は、記録用紙に浸透する必要があり、記録用紙の表面に色素の集合体(「ブロンジング」(bronzing))が確認されるべきではないので、該黒色色素は、主として水性の記録液体に優れた溶解性を有する必要がある。
【0009】
式(I)で示されるシー・アイ・ダイレクトブラック168(C.I.Direct Black 168)は広範に使用され、市販されている黒色色素である。
【0010】
【化1】

【0011】
シー・アイ・ダイレクトブラック168を含むインクジェット印刷用の記録液体は、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。しかしながら、染色紙用に、あるいはインクジェット印刷用の記録液体中に使用される場合、シー・アイ・ダイレクトブラック168は、十分に溶解しないので、記録画像の耐水性は不十分になり、ナノ多孔性媒体上にブロンジングと非中間色的(non−neutral)な色合いが現れるようになる。これにより、色素が堆積するようになるので、プリントヘッドのノズルが目詰まりする。ダイレクトブラック168は、ニュートラルな色合いを有する黒色を得るために、パシファイド(pacified)シー・アイ・リアクティブブラック31(C.I.Reactive Black 31)と混ぜて使用される必要がある。
【0012】
式(II)で示されるシー・アイ・リアクティブブラック5も広範に使用され、市販されている黒色色素である。
【0013】
【化2】

【0014】
シー・アイ・リアクティブブラック5を含むインクジェット印刷用の記録液体は、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7に記載されている。もっとも、記録画像中での黒の色合いは、黒色というよりもむしろ青みがかっている。
【0015】
式(III)で示されるシー・アイ・アシッドブラック1(C.I.Acid Black 1)も広範に使用され、市販されている黒色色素である。
【0016】
【化3】

【0017】
シー・アイ・アシッドブラック1を含むインクジェット印刷用の記録液体は、特許文献8および特許文献9に記載されている。
【0018】
しかしながら、この色素は、普通紙およびインクジェット印刷用の高分子系の記録用紙上において、極めて耐光性に乏しい。多孔質体上での耐光性は、幾分良好であるが、今日の市場の要求からは、なおかけ離れている。また、この色素は青みがかった色合いであり、インクジェット印刷用の記録液体中において、単独で黒色色素として使用することができない。
【0019】
式(IV)で示される黒色色素は、インクジェット印刷用の黒色記録液体における耐光性成分として特に適しているとして、特許文献10に記載されている。しかしながら、オゾンによる劣化に対する耐性は不十分である。
【0020】
【化4】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第93/24330号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0885940号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0121219号明細書
【特許文献4】米国特許第4257770号明細書
【特許文献5】米国特許第5358558号明細書
【特許文献6】米国特許第5935309号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0174800号明細書
【特許文献8】米国特許第4365998号明細書
【特許文献9】米国特許第4371582号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0050926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記の実情に鑑みて、ニュートラルな色合い、優れた耐光性、優れた耐水性を有するとともに、ブリーディングが生じず、オゾンによる劣化に対する耐性に優れ、光またはオゾンによる劣化後でもニュートラルな色合いを保つことができる新規な水溶性の高い黒色色素を早急に提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明では、一般式(V)で示される新規な黒色ジスアゾ色素について言及する。
【0024】
【化5】

ここで、Mは、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、アンモニウムカチオンまたは4個の同一の置換基を有する脂肪族アンモニウムカチオンを示しており、該置換基は1〜4個の炭素原子を有する。Aは、式(VI)で示される基である。
【0025】
【化6】

ここで、R1は、水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、R2は、水素原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシ基またはニトロ基を示し、R3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個のハロゲン原子で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するエステル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、非置換あるいは置換された複素環基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基(sulphoester group)または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、R4は、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示している。
【0026】
あるいは、式(VII)で示される基である。
【0027】
【化7】

ここで、R11は水素原子またはスルホン酸基を示し、R12は水素原子またはスルホン酸基を示し、R13は水素原子またはスルホン酸基を示し、R14は水素原子、ヒドロキシ基またはスルホン酸基を示し、R15は水素原子またはスルホン酸基を示し、R16は水素原子またはスルホン酸基を示し、R17はスルホン酸基を示している。
【0028】
Bは式(VIII)で示される基である。
【0029】
【化8】

ここで、R6は水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、R7は水素原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシ基またはニトロ基を示し、R8は水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個のハロゲン原子で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するエステル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、非置換または置換された複素環基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミノ基を示し、R9は水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基であり、R10は水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示している。
【0030】
あるいは、式(IX)で示される基である。
【0031】
【化9】

ここで、R18はスルホン酸基を示し、R19は水素原子またはスルホン酸基を示し、R20は水素原子またはスルホン酸基を示し、R21は水素原子、ヒドロキシ基またはスルホン酸基を示し、R22は水素原子またはスルホン酸基を示し、R23は水素原子またはスルホン酸基を示し、R24は水素原子またはスルホン酸基を示している。また、Bはスルホン酸基を1個以上、あるいはカルボン酸基を2個以上有する。
【0032】
一般式(V)で示される好ましいジスアゾ色素では、M、R17およびR18は先に定義した通りであり、R1は水素原子、ハロゲン原子またはスルホン酸基を示し、R2は水素原子またはカルボン酸基を示し、R3は水素原子、ニトロ基またはスルホン酸基を示し、R4は水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基、カルボン酸基、ニトロ基、アミノ基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、R5は水素原子、二トリル基またはスルホン酸基を示し、R6は水素原子、ニトロ基またはスルホン酸基を示し、R7は水素原子またはカルボン酸基を示し、R8は水素原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、R9は水素原子、スルホン酸基、カルボン酸基または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R10は水素原子またはスルホン酸基を示し、R11は水素原子を示し、R12は水素原子を示し、R13は水素原子を示し、R14はスルホン酸基を示し、R15は水素原子を示し、R16は水素原子を示し、R19は水素原子を示し、R20は水素原子を示し、R21はスルホン酸基を示し、R22は水素原子を示し、R23は水素原子を示し、R24は水素原子を示している。
【0033】
一般式(V)で示されるより好ましいジスアゾ色素では、M、R2、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23およびR24は先に定義した通りであり、R1は水素原子またはスルホン酸基を示し、R3は水素原子またはスルホン酸基を示し、R4は水素原子、スルホン酸基またはカルボン酸基を示し、R5は水素原子またはスルホン酸基を示し、R6は水素原子またはスルホン酸基を示し、R7は水素原子を示し、R8は水素原子またはニトロ基を示し、R9は水素原子、スルホン酸基または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R10は水素原子を示している。
【0034】
一般式(V)で示される好ましいジスアゾ色素では、R17はR16に対してメタ位にあり、R18はR19に対してメタ位にある。
【0035】
一般式(V)で示される特に好ましいジスアゾ色素では、スルホ基はγ位にある。
【0036】
また、本発明は、一般式(V)で示される純粋な黒色色素に関するだけではなく、これらの色素の混合物に関する。
【0037】
また、本発明は、本発明に係る一般式(V)で示される色素の調製方法に関し、ステップ1において、一般式(XII)で示されるアミン、あるいは、一般式(XIII)で示されるアミンを、−5℃〜15℃の温度において、水性の無機酸媒体中でジアゾ化し、pH値が酸性から弱酸性域において、式(XIV)で示される化合物と結合させる。
【0038】
【化10】

ここで、R1、R2、R3、R4およびR5は先に定義した通りである。
【0039】
【化11】

ここで、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は先に定義した通りである。
【0040】
【化12】

【0041】
ステップ2において、一般式(XV)で示されるアミンまたは一般式(XVI)で示されるアミンを、−5〜15℃の温度において、無機酸媒体中でジアゾ化し、pH値が弱塩基性から塩基性域において、ステップ1の反応生成物と結合させる。
【0042】
【化13】

ここで、R6、R7、R8、R9およびR10は先に定義した通りである。
【0043】
【化14】

ここで、R18、R19、R20、R21、R22、R23およびR24は先に定義した通りである。
【0044】
pH値が酸性から弱酸性域とは、pH値を1〜4の間に調整したことを意味する。
【0045】
pH値が弱塩基性から塩基性域とは、pH値を8〜10の間に調整したことを意味する。
【0046】
式(XIV)で示される化合物であって、スルホ基がγ位にある化合物は、K酸(4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸)としても知られている。
【0047】
式(XIV)で示される化合物であって、スルホ基がβ位にある化合物は、H酸(4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸)としても知られている。
【0048】
一般式(XII)または(XV)で示される以下のアミンが市販されている。
【0049】
【化15】

【化15−1】

【0050】
一般式(XIII)または(XVI)で示される以下のアミンが市販されている。
【0051】
【化16】

【0052】
本発明に係る以下の色素は、ナトリウム塩の形で調製された。
【0053】
【化17a】

【0054】
【化17b】

【0055】
【化17c】

【0056】
【化17d】

【0057】
【化17e】

【0058】
【化17f】

【0059】
本発明は、一般式(V)で示される純粋な黒色色素に関するだけではなく、これらの色素の混合物にも関する。
【0060】
本発明に係る一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素は、耐水性と耐光性を備える染色材料を得るために、セルロース含有材料、紙、綿、ビスコース、皮革および羊毛を染色するために用いられる。
【0061】
直接染料を用いた染色、特に、サイズ紙または無サイズ紙のバルクまたは表面処理について、繊維工業および製紙工業において公知の方法の全てを使用できる。前記色素は、長時間浸漬させた溶剤から抽出して、綿、ビスコースおよびリネンの織糸および反物を染色する分野、あるいは連続プロセス中に染色する分野において使用することもできる。
【0062】
また、本発明は、一般式(V)で示される1個以上の黒色ジスアゾ色素を含む液体色素調製物に関する。このような液体色素調製物は、特に紙の染色に使用されると好適である。このような安定で、液体で、好ましくは水性であって、濃縮された色素調製物は、当該技術分野において公知の方法、好ましくは好適な溶媒中に溶解する方法を用いて得ることができる。色素の合成そのものを行っている間に、中間で色素を分離せずに、例えば反応溶液のダイアフィルトレーション(diafiltration)による脱塩ステップ後に、このような安定で、水性であって、濃縮された調製物を調製できることは、特に有利である。
【0063】
また、本発明によって請求されるのは、記録用紙に文字と画像を記録するプロセスと、本発明に係る黒色ジスアゾ色素または黒色ジスアゾ色素の混合物を使用して、天然または合成繊維材料、ナノ多孔性材料、皮革およびアルミニウムを染色し捺染するプロセスである。
【0064】
前記黒色ジスアゾ色素または一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素は、インクジェット印刷用および筆記具用の黒色記録液体の調製物に用いるのに、優れた色素である。
【0065】
インクジェット印刷用または筆記具用の黒色記録液体において、例えば、シー・アイ・ダイレクトイエロー86、シー・アイ・ダイレクトイエロー98、シー・アイ・ダイレクトイエロー132、シー・アイ・ダイレクトイエロー142、シー・アイ・ダイレクトイエロー173、シー・アイ・アシッドイエロー23、シー・アイ・リアクティブイエロー3、シー・アイ・リアクティブイエロー3、シー・アイ・イエロー85の加水分解された誘導体、シー・アイ・イエロー85、シー・アイ・イエロー95の加水分解された誘導体、あるいはシー・アイ・イエロー95の加水分解された誘導体のような黄色色素が、印刷記録液体においてニュートラルな黒色の色合いを得るために、本発明に係る一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素に添加され得る。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、請求した化合物の範囲を多少なりとも限定せずに、以下の実施例によってさらに詳細に示される。
【実施例】
【0067】
(実施例1a)
式(XVII)で示される中間体であるモノアゾ化合物を以下の方法で調製した。
【0068】
【化18】

【0069】
10gのアニリン−2,5−ジスルホン酸(一般式(XII)で示される化合物)を、100gの水と5.87gの塩酸(37%)に溶解した。次に、8gの水に溶解した1.97gの亜硝酸ナトリウムを、5℃の温度において1:1.2のモル比で添加し、ジアゾ化液を得た。過剰の亜硝酸ナトリウムを、0.49gのスルファミン酸を用いて除去し、pH値1.5において、ジアゾ化液を、水酸化ナトリウムを添加してこのpH値を維持している間に、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸、一般式(XIV)で示される化合物)のモノナトリウム塩と結合させた。この反応は、0℃から5℃の間の温度で1時間撹拌した後、室温まで昇温して行った。塩酸を添加して、pH値を0.5まで低下させた。次に、このpH値において、混合物を室温でさらに2時間撹拌した。最後に、8℃の温度まで冷却した後に反応混合物を濾過し、エタノール/水混合液(2:1)で洗浄した後乾燥した。式(XVII)で示されるモノアゾ色素を収率70%で得た。
【0070】
(実施例1b)
実施例1aのアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−4−スルホン酸(一般式(XII)で示される化合物)を用い、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いて、式(XVIII)で示される中間体であるモノアゾ化合物を同様な方法で調製した。
【0071】
【化19】

【0072】
(実施例2)
実施例1aで記載したのと同様に調製したアニリン−2,5−ジスルホン酸のジアゾ化液を、8.5と9.0の間のpH値において、式(XVII)で示されるモノアゾ化合物と結合させた。色素(2)は、酢酸ナトリウムとエタノールとの複合添加による塩析効果の影響を受けた。沈殿した色素(2)を濾取し、エタノール/水混合液(2:1)で洗浄し、逆浸透により透析し、水を蒸発させて除去して色素(2)を乾燥させた。色素(2)を収率77%で得た。
【0073】
(実施例3)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。色素(3)を収率78%で得た。
【0074】
(実施例4)
実施例2の式(XVII)で示されるモノアゾ化合物に代えて、式(XVIII)で示されるモノアゾ化合物を用いた。
【0075】
(実施例5)
実施例4のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0076】
(実施例6)
N−メチルピロリドン中において、2−アミノベンゾニトリルと4当量のスルファミン酸とを、110℃の温度で4時間反応させて、2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸を調製した。実施例3のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸を用いた。
【0077】
(実施例7)
実施例6の2−アミノベンゾニトリル−3,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0078】
(実施例8)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用いた。
【0079】
(実施例9)
実施例2のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸を用いた。
【0080】
(実施例10)
実施例9のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸を用いた。
【0081】
(実施例11)
実施例10の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸(一般式(XV)で示される化合物)を用いた。
【0082】
(実施例12)
実施例11の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、2,5−ジクロロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0083】
(実施例13)
実施例12の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−3,5−ジカルボン酸を用いた。
【0084】
(実施例14)
実施例7の2−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸に代えて、アニリン−2,4,6−トリスルホン酸を用いた。
【0085】
(実施例15)
実施例14の4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いた。
【0086】
(実施例16)
実施例3の4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(K酸)に代えて、4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)を用いた。
【0087】
(実施例17)
実施例3の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−アミノ−4−メチル−5−ニトロベンゼン−1−スルホン酸を用いた。
【0088】
(実施例18)
実施例7の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−アミノ−4−メチル−5−ニトロベンゼン−1−スルホン酸を用いた。
【0089】
(実施例19)
実施例3のアニリン−2,5−ジスルホン酸に代えて、5−アセトアミド−2−アミノベンゼンスルホン酸を用いた。
【0090】
(実施例20)
実施例15の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、アニリン−3,5−ジカルボン酸を用いた。
【0091】
(実施例21)
実施例16のアニリン−2,4,6−トリスルホン酸に代えて、4−ニトロアニリン−2−スルホン酸を用い、アニリン−3,5−ジカルボン酸に代えて、アニリン−2,4,6−トリスルホン酸を用いた。
【0092】
(実施例22)
実施例3の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0093】
(実施例23)
9と11の間のpH値を示す水酸化ナトリウム水溶液中で、色素(19)を60℃の温度で1時間加熱して、色素(22)を得た。
【0094】
(実施例24)
実施例7の4−ニトロアニリン−2−スルホン酸に代えて、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸を用いた。
【0095】
(記録液体の調製例)
本発明は、記録液体に関する限り、本発明に係るジスアゾ色素(2)〜(24)と現在の技術水準を示す色素を用いて、以下の例で説明される。各色素について、水と一緒に、必要量の色素(0.5gから1.0g)、エチレングリコール(0.6g)、プロピレン−1,2−グルコール(0.3g)、1−メチル−2−ピロリドン(0.3g)、Olin(登録商標)10G(アメリカ合衆国のノルウォークにあるArch Chemicals Incから入手可能)(0.03g)の水性溶液(50%)、Surfinol(登録商標)465(アメリカ合衆国のアレンタウンにあるAir Products and Chemicals Incから入手可能)(0.03g)および殺生物剤であるMergal(登録商標)K 10N(ドイツ連邦共和国のシールズにあるRiedel−de−Haoenから入手可能)(0.01g)の溶液を、撹拌条件下において、50℃の温度で約1時間加熱し、100gの記録液体を調製した。得られた溶液を20℃の温度まで冷却し、pHの値を7.5に調整し、該溶液を、0.5μmの孔径のMillipore(登録商標)フィルターを通過させた。色素の量は、印刷画像の光学密度が全ての色素で同じになるように調整された。
【0096】
(記録液体の適用例)
おおよその密度が約1.2である色付きの矩形状のパッチを、インクジェットプリンタであるCanon PIXMA iP4000を用いて以下のインクジェット印刷用の記録用紙上に印刷した。
a:HP Printing Paper HP 1122(非コート紙)、
b:HP Premium Plus(ポリマー系の記録用紙)、および
c:ILFORD Premium Plus Glossy Paper(ナノ多孔性の記録用紙)
これらの色付きのパッチは、耐光性、色素の彩度およびオゾンによる劣化に対する耐性を判定するために用いられた。
【0097】
(試験方法)
1.色の彩度
色付きの矩形状の斑点の色座標Lを、分光光度計Spectrolino(登録商標)(スイス連邦共和国のレーゲンズドルフにあるGretag Macbethから入手可能)を用いて(イルミナントD65(illuminant D65)における)反射中に測定した。彩度Cは、以下の数式に従って、測定された色座標から決定される。
【0098】
【数1】

黒色色素のC値は低い。
【0099】
2.耐光性
照度が10および20メガルクス時に達するまで、6500Wのキセノンランプを備えるWeather−Ometer(登録商標)Ci35A(アメリカ合衆国のシカゴにあるAtlas Material Testing Technologyから入手可能)を用いて、温度20℃および相対湿度50%の条件において、印刷されたサンプルを照射した。濃度損失は、デンシトメータSpectrolino(登録商標)を用いて測定した。初期濃度の濃度損失の百分率によって、印刷された記録用紙上での色素の耐光性が示される。
【0100】
耐光性は、以下のように類別される。
A:色素の濃度損失が20%未満
B:色素の濃度損失が20〜30%
C:色素の濃度損失が30〜40%
D:色素の濃度損失が40%より大きい
【0101】
3.オゾンによる劣化に対する安定性
色付きの矩形状のパッチの光学的密度は、Spectrolino(登録商標)デンシトメータで測定された。その後、印刷されたサンプルは、温度30℃、相対湿度が50%の空気、オゾン濃度1ppm、オゾンを含む空気の循環速度13mm/sの条件において、オゾンチャンバであるmodel903(イギリス連合王国にあるSatra/Hampdenから入手可能)中に所定時間(例えば48時間)保管された。保管後、該サンプルを再測定した。これら2個の測定値の濃度の違いは、初期濃度の百分率として表され、オゾンに曝されたことに起因する色素損失の量を示している。
【0102】
オゾンによる劣化に対する安定性は、以下のように類別される。
A:色素の濃度損失が20%未満
B:色素の濃度損失が20〜30%
C:色素の濃度損失が30〜40%
D:色素の濃度損失が40%より大きい
【0103】
(結果)
水溶液中での最大吸収波長λmax、記録用紙c上での色座標、記録用紙c上でのオゾンによる劣化に対する安定性が、表1に示されている。
【0104】
【表1】

【0105】
表1の結果から直ぐに分かるのは、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、本発明に係る色素(2)、(3)、(8)、(9)、(11)、(12)、(13)、(14)、(17)、(18)、(21)および(23)のオゾンによる劣化に対する安定性がかなり良好だということである。
【0106】
記録用紙上での光により劣化に対する安定性a、bおよびcを表2に示した。
【0107】
【表2】

【0108】
表2の結果から直ぐに分かるのは、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、本発明に係る色素(2)、(3)、(4)、(5)、(8)、(9)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(18)および(22)の光による劣化に対する安定性がかなり良好だということである。
【0109】
オゾンと光の両方による劣化に対する安定性については、色素(2)、(3)、(9)、(13)、(14)および(18)が、現在の技術水準で形成した黒色色素(I)、(II)、(III)および(IV)に比べて、かなり良好な安
定性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。
【化1】

ここで、Mは、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、アンモニウムカチオンまたは4個の同一の置換基を有する脂肪族アンモニウムカチオンを示しており、該置換基は1〜4個の炭素原子を有し、Aは、式(VI)で示される基であり、
【化2】

R1は、水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、
R2は、水素原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシ基またはニトロ基を示し、
R3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個のハロゲン原子で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するエステル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、非置換または置換型の複素環基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
R4は、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
R5は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
あるいは、Aは、式(VII)で示される基であり、
【化3】

R11は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R12は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R13は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R14は、水素原子、ヒドロキシル基またはスルホン酸基を示し、
R15は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R16は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R17は、スルホン酸基を示し、
Bは、式(VIII)で示される基であり、
【化4】

R6は、水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、
R7は、水素原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基またはニトロ基を示し、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜3個のハロゲン原子で置換された1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するエステル基、非置換または置換型の複素環基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
R9は、水素原子、ハロゲン原子、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、スルホンアミド基、スルホニル基、1〜4個の炭素原子を有するスルホン酸エステル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
R10は、水素原子、ハロゲン原子、ニトリル基、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
あるいは、Bは、式(IX)で示される基であり、
【化5】

R18は、スルホン酸基を示し、
R19は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R20は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R21は、水素原子、ヒドロキシル基またはスルホン酸基を示し、
R22は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R23は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R24は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
Bは、1個以上のスルホン酸基または2個以上のカルボン酸基を有する。
【請求項2】
M、R17およびR18は、請求項1で定義した通りであり、
R1は、水素原子、ハロゲン原子またはスルホン酸基を示し、
R2は、水素原子またはカルボン酸基を示し、
R3は、水素原子、ニトロ基またはスルホン酸基を示し、
R4は、水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基、カルボン酸基、ニトロ基、アミノ基または1〜4個の炭素原子を有するアルキルアミド基を示し、
R5は、水素原子、ニトリル基またはスルホン酸基を示し、
R6は、水素原子、ニトロ基またはスルホン酸基を示し、
R7は、水素原子またはカルボン酸基を示し、
R8は、水素原子、スルホン酸基またはニトロ基を示し、
R9は、水素原子、スルホン酸基、カルボン酸基または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し、
R10は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R11は、水素原子を示し、
R12は、水素原子を示し、
R13は、水素原子を示し、
R14は、スルホン酸基を示し、
R15は、水素原子を示し、
R16は、水素原子を示し、
R19は、水素原子を示し、
R20は、水素原子を示し、
R21は、スルホン酸基を示し、
R22は、水素原子を示し、
R23は、水素原子を示し、
R24は、水素原子を示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。
【請求項3】
M、R17およびR18は、請求項1で定義した通りであり、
R2、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R19、R20、R21、R22、R23およびR24は、請求項2で定義した通りであり、
R1は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R3は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R4は、水素原子、スルホン酸基またはカルボン酸基を示し、
R5は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R6は、水素原子またはスルホン酸基を示し、
R7は、水素原子を示し、
R8は、水素原子またはニトロ基を示し、
R9は、水素原子、スルホン酸基または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示し、
R10は、水素原子を示す、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。
【請求項4】
R17がR16に対してメタ位にあり、R18がR19に対してメタ位にある、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。
【請求項5】
スルホ基がγ位に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素。
【請求項6】
ステップ1において、
一般式(XII)で示されるアミン、
【化6】

(ここで、R1、R2、R3、R4およびR5は請求項1で定義した通りである。)
あるいは、一般式(XIII)で示されるアミンを、
【化7】

(ここで、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は請求項1で定義した通りである。)
水系無機酸媒体中において、−5℃から15℃の温度でジアゾ化し、pH値を1から4の間に調整した酸性から弱酸性域において、式(XIV)で示される化合物と結合させ、
【化8】

ステップ2において、
一般式(XV)で示されるアミン、
【化9】

(ここで、R6、R7、R8、R9およびR10は請求項1で定義した通りである。)
あるいは、一般式(XVI)で示されるアミンを、
【化10】

(ここで、R18、R19、R20、R21、R22、R23およびR24は請求項1で定義した通りである。)
無機酸媒体中において、−5℃から15℃の温度でジアゾ化し、pH値を8から10の間に調整した弱塩基性から塩基性域において、ステップ1で得られた反応生成物と結合させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の一般式(V)で示される黒色ジスアゾ色素の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の少なくともいずれか1項に記載された黒色ジスアゾ色素または黒色ジスアゾ色素の混合物を用いて、文字情報および画像を記録用紙上に記録し、天然または合成繊維物質、ナノ多孔性物質、皮革およびアルミニウムを染色および印刷する方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の少なくともいずれか1項に記載された1種以上の黒色ジスアゾ色素または黒色ジスアゾ色素の混合物を含む液体色素調製物。
【請求項9】
請求項1乃至5の少なくともいずれか1項に記載された1種以上の黒色ジスアゾ色素または黒色ジスアゾ色素の混合物を含むインクジェット印刷または筆記具用の記録液体。
【請求項10】
請求項1乃至5の少なくともいずれか1項に記載された1種以上の黒色ジスアゾ色素または黒色ジスアゾ色素の混合物に加えて1種以上の他の色素を含むインクジェット印刷または筆記具用の記録液体。
【請求項11】
付加的な色素または色素群が黄色色素である、
ことを特徴とする請求項10に記載のインクジェット印刷および筆記具用の記録液体。
【請求項12】
前記黄色色素または黄色色素群が、シー・アイ・ダイレクトイエロー86、シー・アイ・ダイレクトイエロー98、シー・アイ・ダイレクトイエロー132、シー・アイ・ダイレクトイエロー142、シー・アイ・ダイレクトイエロー173、シー・アイ・アシッドイエロー23、シー・アイ・リアクティブイエロー3、シー・アイ・リアクティブイエロー3の加水分解された誘導体、シー・アイ・イエロー85、シー・アイ・イエロー85の加水分解された誘導体、シー・アイ・イエロー95またはシー・アイ・イエロー95の加水分解された誘導体からなる群から選ばれる、
ことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット印刷および筆記具用の記録液体。

【公開番号】特開2012−87301(P2012−87301A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227801(P2011−227801)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(599085415)イルフォード イメージング スウィツアランド ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】