説明

黒色バス電極用の導電性組成物およびプラズマディスプレイパネルの前面パネル

導電性粉末、ガラス粉末、有機バインダー、有機溶媒、および黒色顔料を含む導電性組成物からプラズマディスプレイパネルの黒色バス電極を形成する。ただし、導電性粉末は、白金粒子または金粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)用の電極組成物、より特定的には、黒色バス電極に組み込まれる導電性成分の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPでは、コントラストを改良するために前面パネルのバス電極に黒色成分が組み込まれる。単層タイプおよび二層タイプのバス電極が当技術分野で知られている。単層タイプでは、黒色成分が銀のような導電性成分と共に組み込まれる。二層タイプでは、銀のような導電性成分を含有する白色電極が、黒色成分を含有する黒色電極(黒色バス電極)と積重される。
【0003】
酸化ルテニウム、ルテニウム化合物(たとえば日本特許第3779297号公報)、Co34(日本特許第3854753号公報)、Cr−Cu−Co(米国特許出願公開第2006/0216529号明細書)、ランタン化合物(日本特許第3548146号公報)、およびCuO−Cr23−Mn23(日本特許第3479463号公報)は、黒色成分として知られている。
【0004】
高い黒色度を有する黒色成分は、PDPのコントラストを改良するのに好適である。黒色性は、通常、PDPのL値として評価される。他方、黒色性だけでなく低接触抵抗もまた、重要と考えられる要素である。黒色成分は銀や銅のような導電性金属よりも高い抵抗を有するので、コントラストを改良するためにより低い接触抵抗およびより高い黒色性という互いに相反する因子を組み合わせる方法を見いだすことが長い間必要とされてきた。
【0005】
酸化ルテニウムおよびルテニウム化合物は、黒色成分として高い黒色度を有するうえに導電性もあるので、PDPにおいて高い黒色性および低い接触抵抗を得るために使用するのに有利であった。しかしながら、PDPの価格の競争力をより高めるために、それほど高価でない材料の開発が必要とされる。
【0006】
高導電性の安価な金属、たとえば銅、ニッケル、またはパラジウムを黒色バス電極に添加しかつ高価な黒色成分を最小限に抑えることは、材料費を削減する1つの方法である。しかしながら、銅は、特性的に酸化しやすいので、還元性雰囲気で焼結しなければならない。また、ニッケルは、比較的低い導電性を有する。パラジウムは、焼結プロセス時のレドックス反応の結果として、とくに還元時に酸素を放出するので、バス電極特性のかなりの損失を引き起こす。
【0007】
Agは高導電性の安価な望ましい材料であるが、Ag原子が焼結プロセス時にガラス中に拡散し、形成される黒色ストライプが黄変するという問題を生じる(日本特許第3779297号公報を参照されたい)。この黄変に起因して、前面パネル側に形成される黒色バス電極にAgを添加すると、PDPのコントラストの損失を生じる。
【0008】
特開2006−86123号公報には、PDP電極で使用される導電性粉末に関する技術が開示されている。この場合、銅、ニッケル、アルミニウム、タングステン、またはモリブデンで被覆された銀または金を含む粉末が、PDP電極またはグリーンシートで導電性粉末として使用される。
【0009】
特開2002−299832号公報にはまた、共沈により調製されたPd含有Agを用いてガラス基板上に電極を形成する技術が開示されている。この結果として、ガラス基板と電極との間のより良好な接着、低い抵抗、およびより良好な耐マイグレーション性が得られるとの主張がなされている。特開2002−299832号公報は、Ag粉末とPd粉末との混合物またはAg−Pd合金の代わりにAgおよびPdの共沈粉末を用いることにより特徴付けられる(段落0011)。PDP電極は、電極適用物として開示された。表現は明示的でないが、特開2002−299832号公報に記載の電極は、ガラス基板上に形成され、結果として、ガラスとの接着が要求されるという事実(たとえば段落0014)、さらにはペースト組成物(段落0059および0062)、電極、隔壁、および蛍光材料が表面上に形成された基板が、前面パネルで密封されるという事実(段落0075)に照らして、PDPの背面パネル上に形成されるアドレス電極が意図されていると結論付けられうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PDP特性を改良しかつ以上に述べた望ましくない結果のいくつかを回避するために、高い黒色度および低い接触抵抗を有する黒色バス電極を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、より高い黒色性を有し、より低い接触抵抗を有し、かつAgに起因するパネルのより少ない黄変を有する黒色バス電極の形成を可能にすべく少量の貴金属を黒色電極に添加することに関する。
【0012】
特定的には、本発明は、導電性粉末、ガラス粉末、有機バインダー、有機溶媒、および黒色顔料を含み、導電性粉末が白金粒子または金粒子である、プラズマディスプレイの黒色バス電極用の導電性組成物である。
【0013】
本発明はまた、バス電極が表面上に形成された、プラズマディスプレイパネルの前面パネルである。ただし、バス電極は、黒色電極と白色電極とを含む白黒二層構造を有し、かつ黒色電極は、導電性粒子として白金または金を含む。
【0014】
本発明に係る導電性組成物は、高い黒色度と低い接触抵抗とを有する黒色バス電極を形成するために使用される。規定の貴金属は、組成物の全量を基準にして0.01〜1.0重量%のような少量で添加された時でさえも低い接触抵抗をもたらすことが明らかであった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ACプラズマディスプレイパネル装置を模式的に示す斜視拡大図である。
【図2】透明電極を有するガラス基板上に二層バス電極を作製するための一連のプロセスを示している。各図は、(A)黒色バス電極を形成するためのペーストを適用する段階、(B)白色電極を形成するためのペーストを適用する段階、(C)所与のパターンに光を照射する段階、(D)現像段階、および(E)焼結段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、バス電極が白色電極と黒色電極とを含む二層タイプである場合の黒色電極に使用される組成物を提供する。本出願では、二層タイプの黒色電極を黒色バス電極として記述する。
【0017】
本発明の第1の実施形態は、導電性粉末、ガラス粉末、有機バインダー、有機溶媒、および黒色顔料を含み、導電性粉末が白金粒子又は金粒子である、プラズマディスプレイ黒色バス電極用の導電性組成物に関する。
【0018】
最初に、本発明に係る導電性組成物の成分を順に説明する。本発明に係る導電性組成物は、通常、ペーストの形態である。
【0019】
(A)導電性粉末
導電性粉末は、黒色バス電極中の垂直方向(電極が積重される方向)の導電のために添加される。貴金属は、導電性粉末として使用される。特定的には、貴金属は、白金(Pt)または金(Au)である。白金と金との混合物を使用することが可能であり、そのような実施形態は、本発明の範囲内にある。白金および金は、ペースト中に少量添加した場合でさえも、PDP前面パネルの黒色電極中で導電性金属として効率的に機能することが判明した。他の貴金属粒子は、焼結時の酸化および他の有害な問題があるので、金および白金と比べて劣っている。
【0020】
以下の実験の部に論述されるように、上述の金属は、少量添加された時でさえも低い接触抵抗を示す。従来の組成物の接触抵抗は、焼結により増大する傾向がある。本発明は、反対の傾向を示す。
【0021】
本発明に係る導電性粉末は、金属粒子に適した従来の方法により製造可能である。市販の粉末を使用することが可能である。
【0022】
導電性粉末の構成は、とくに限定されるものではなく、球状粒子またはフレーク(ロッド、コーン、またはプレート)の形態をとりうる。
【0023】
導電性粉末の平均粒子直径(PSD D50)は、好ましくは0.1〜5μmである。粒子の粒子直径が小さすぎると、より大きい接触抵抗を生じる傾向があるので、添加する導電性粉末の量を増大させることが必要になる。粒子直径が大きすぎると、より高い経費がかかりかつ電極が形成される表面における粒子の実質的な突出に起因して損傷の危険を生じる傾向がある。この場合、平均粒子直径(PSD D50)とは、粒子サイズ分布を作成したときの粒子の数の積算値の50%に対応する粒子直径を意味する。粒子サイズ分布は、Microtrac製のX100のような市販の測定装置を用いて作成可能である。
【0024】
導電性を確保するために、導電性粉末の平均粒子直径(PSD D50)は、好ましくは、形成される黒色バス電極の焼結膜の厚さの0.8〜2.0倍、より好ましくは1.0〜1.8倍、さらにより好ましくは1.0〜1.6倍である。黒色バス電極では、電流は、PDP構造に起因して、白色電極および黒色電極が積重される方向に流れる。バス電極をITO電極上に形成した場合、電流は、ITO電極→黒色バス電極→白色電極の方向に流れる。したがって、導電性粉末は、好ましくは、その方向に導電性を確保することが可能である。導電性粉末の平均粒子直径が、形成される黒色バス電極の焼結膜の厚さの1倍超である場合、導電性粉末のほとんどは、白色電極とITO電極のような透明電極との両方に接触した状態になるであろう。この場合、接触抵抗は低いであろう。平均粒子サイズの上限は、接触抵抗の観点から制限されるものではないが、大きい粒子は、製造プロセス時の粒子のウォッシュオフのようないくつかの問題を引き起こす可能性がある。
【0025】
PDP製造プロセスでは、電極形成後、誘電体を形成するTOGを焼結するプロセスが必要とされるが、予想外の効果として、TOG焼結プロセス後、接触抵抗を低減することが可能である。
【0026】
PDPの作製時、黒色ストライプを作製するためのペーストおよび黒色バス電極を作製するためのペーストは、特開2004−063247号公報に開示されるように、同一であってもよいこともあり、そのようなプロセスを採用する場合、本発明はとくに有用である。Agを黒色ストライプに組み込んだ場合、Agの拡散により生じる黄変がとくに問題になる可能性があるが、本発明に係る導電性粉末を使用すれば、Agの拡散に起因するそのような黄変は防止される。
【0027】
より良好な黒色性を確保しかつ材料費を削減するという観点から、貴金属の含有率は、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、さらにより好ましくは0.25重量%未満である。透明電極と白色電極との間の導電性の観点から、貴金属の下限は、好ましくは0.01重量%超、より好ましくは0.05重量%超、さらにより好ましくは0.1重量%超である。黒色バス電極では、水平方向の導電を考慮に入れる必要がないので、導電性粉末の含有率をきわめて低くすることが可能である。導電性粉末の量は、貴金属に関連する経費を抑えるという観点から、より少ないことが好ましい。そのほかに、貴金属含有率を増大させるとL値がいくらか増大する可能性があるので、より良好な黒色性(すなわち、より低いL値)を得るために、より低レベルの貴金属が好ましい。しかしながら、本発明の効果を発揮するのに十分な導電性粉末を添加しなければならない。
【0028】
(B)ガラス粉末(ガラスフリット)
本発明では、ガラス粉末は、黒色バス電極中の導電性粉末成分または黒色顔料成分の焼結を促進するためにバインダーとして使用される。本発明で使用されるガラス粉末は、とくに限定されるものではない。通常、基板との接着を確保するのに十分な程度に低い軟化点を有する粉末が使用される。
【0029】
ガラス粉末の軟化点は、通常は325℃〜700℃の、好ましくは350℃〜650℃、より好ましくは375℃〜600℃でなければならない。325℃未満の温度で融解が起こると、有機物質は、包囲された状態になりやすいであろう。そして、それに続く有機物質の分解により、ペースト中にブリスターの発生が起こるであろう。一方、軟化点が700℃を超えると、ペーストの接着性が弱くなるであろう。また、PDPガラス基板に損傷を与える可能性がある。
【0030】
ガラス粉末のタイプとしては、ビスマス系ガラス粉末、ホウ酸系ガラス粉末、リン系ガラス粉末、Zn−B系ガラス粉末、および鉛系ガラス粉末が挙げられる。鉛系粉末の使用により環境にかかりうる負荷を考慮して、無鉛ガラス粉末の使用が好ましい。
【0031】
ガラス粉末は、当技術分野で周知の方法により調製可能である。たとえば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などのような原料を混合および融解し、生成物を急冷によりカレットの形態にし、続いて、機械的微粉砕(湿式ミリングまたは乾式ミリング)を行うことにより、ガラス成分を調製することが可能である。その後、所要により、分級を行って所望の粒子サイズを得る。
【0032】
ガラス粉末の比表面積は、10m2/g以下であることが好ましい。ガラス粉末の少なくとも90重量%は、0.4〜10μmの粒子直径を有することが好ましい。
【0033】
ガラス粉末含有率は、組成物の全量を基準にして10重量%〜50重量%であることが好ましい。ガラス粉末の割合がこの範囲内にあれば、隣接するPDP成分との結合が確保されて、十分に強い黒色バス電極の形成が確保されるであろう
【0034】
(C)有機バインダー
有機バインダーは、導電性粉末、ガラス粉末、および黒色顔料のような成分を組成物中に分散させるために使用される。有機バインダーは燃焼除去される。
【0035】
感光性組成物を作製するために本発明に係る組成物を使用する場合、有機バインダーを選択することを考慮に入れて、水性系で現像することが好ましい。高解像度を有するものを選択することが好ましい。
【0036】
有用な有機バインダーの例としては、(1)C1〜C10アルキルアクリレート、C1〜C10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはそれらの組合せを含有する非酸性コモノマーと、(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有成分を含有する酸性コモノマーと、から調製されるコポリマーまたはインターポリマーが挙げられる。酸性コモノマーが電極ペースト中に存在する場合、酸性官能基は、0.8%炭酸ナトリウム水溶液のような水性塩基中での現像を可能にするであろう。酸性コモノマー含有率は、ポリマー重量を基準にして15重量%〜30重量%であることが好ましい。
【0037】
酸性コモノマーの量が少なくなると、適用された電極ペーストを、水性塩基により、現像することが困難になる可能性があり、一方、酸性コモノマーが多すぎると、現像条件下でのペーストの安定性が低下して、画像が形成される領域で部分的に現像が行われるにすぎない可能性がある。
【0038】
好適な酸性コモノマーとしては、(1)エチレン性不飽和モノカルボン酸、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、またはクロトン酸、(2)エチレン性不飽和ジカルボン酸、たとえば、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、およびマレイン酸、(3)(1)および(2)のヘミエステル、ならびに(4)(1)および(2)の無水物が挙げられる。2種類以上の酸性コモノマーを併用することが可能である。低酸素雰囲気中における可燃性を配慮して、メタクリルポリマーはアクリルポリマーよりも望ましい。
【0039】
非酸性コモノマーが以上に述べたアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである場合、非酸性コモノマーは、ポリマー重量を基準にして70重量%〜75重量%であることが好ましい。非酸性コモノマーがスチレンまたは置換スチレンである場合、非酸性コモノマーは、ポリマー重量を基準にして約50重量%を占めることが好ましく、残りの50重量%は、酸無水物、たとえば無水マレイン酸のヘミエステルであることが好ましい。α−メチルスチレンは、好ましい置換スチレンである。
【0040】
ポリマー分野で周知の技術を用いて、有機バインダーを作製することが可能である。たとえば、比較的低い沸点(75〜150℃)を有する有機溶媒中で酸性コモノマーを1種以上の共重合性非酸性コモノマーと混合して10〜60%のモノマー混合物を得ることが可能である。次に、得られたモノマーに重合触媒を添加することにより重合を行う。得られた混合物を溶媒の還流温度に加熱する。ポリマー反応が実質的に終了した時、得られたポリマー溶液を室温に冷却してサンプルを回収する。
【0041】
有機バインダーの分子量は、とくに限定されるものではないが、好ましくは50,000未満、より好ましくは25,000未満、さらにより好ましくは15,000未満である。
【0042】
本発明に係る導電性組成物をスクリーン印刷により適用する場合、有機バインダーのTg(ガラス転移温度)は、90℃超であることが好ましい。その温度未満のTgを有するバインダーは、一般的には、スクリーン印刷後に90℃以下の通常の温度で電極ペーストを乾燥させた時に高粘着性ペーストを生じる。スクリーン印刷以外の手段により適用される材料では、より低いガラス転移温度を使用することが可能である。
【0043】
有機バインダー含有率は、組成物の全量を基準にして5〜25重量%であることが好ましい。
【0044】
(D)有機溶媒
有機溶媒を使用する主目的は、組成物中に含まれる固形分のディスパージョンを容易に基板に適用できるようにすることである。したがって、有機溶媒は、まず第1に、好適な安定性を保持しつつ固形分の分散を可能にするものであることが好ましい。第2に、有機溶媒のレオロジー性は、有利な適用性をディスパージョンに付与することが好ましい。
【0045】
有機溶媒は、単一成分または有機溶媒混合物でありうる。選択される有機溶媒は、ポリマーおよび他の有機成分を完全に溶解可能なものであることが好ましい。選択される有機溶媒は、組成物中の他の成分に対して不活性であることが好ましい。有機溶媒は、十分に高い揮発性を有することが好ましく、かつ大気中で比較的低い温度で適用された場合でさえもディスパージョンから蒸発除去可能であることが好ましい。溶媒は、スクリーン上のペーストが印刷プロセス時に常温で急速に乾燥するほど揮発性でないことが好ましい。
【0046】
常圧における有機溶媒の沸点は、300℃以下、好ましくは250℃以下であることが好ましい。
【0047】
有機溶媒の特定例としては、脂肪族アルコールおよびそうしたアルコールのエステル、たとえば、アセテートエステルまたはプロピオネートエステル、テルペン、たとえば、テルペンチン、α−もしくはβ−テルピネオール、またはそれらの混合物、エチレングリコールまたはエチレングリコールエステル、たとえば、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールまたはカルビトールエステル、たとえば、ブチルカルビトールアセテートおよびカルビトールアセテート、ならびにTexanol(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)が挙げられる。
【0048】
有機溶媒含有率は、組成物の全量を基準にして10〜40重量%であることが好ましい。
【0049】
(E)黒色顔料
黒色顔料は、黒色バス電極の黒色性を確保するために使用される。
【0050】
本発明に係る電極ペーストの黒色顔料は、とくに限定されるものではない。例としては、Co34、クロム−銅−コバルト酸化物、クロム−銅−マンガン酸化物、クロム−鉄−コバルト酸化物、酸化ルテニウム、ルテニウムパイロクロア、酸化ランタン(たとえば、La1-xSrxCoO3)、マンガンコバルト酸化物、および酸化バナジウム(たとえば、V23、V24、V25)が挙げられる。環境にかかる負荷、材料費、黒色度、および黒色バス電極の電気特性を配慮して、Co34(四酸化三コバルト)が好ましい。2つ以上のタイプを使用することが可能である。
【0051】
黒色顔料含有率は、組成物の全量を基準にして6〜20重量%、好ましくは9〜16重量%であることが好ましい。
【0052】
本発明に係る導電性組成物は、以上の成分のほかに以下の任意成分を含有しうる。マイクロ電極を形成する場合、パターンは、感光性組成物を用いて形成することが好ましい。
【0053】
(F)光重合開始剤
望ましい光開始剤は、熱的に不活性であるが、185℃以下の温度で化学線を照射した時にフリーラジカルを生成するであろう。例としては、共役炭素環式系中に2つの分子内環を有する化合物が挙げられる。望ましい光開始剤のより具体的な例としては、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオンが挙げられる。
【0054】
使用可能な他の化合物としては、米国特許第2,850,445号明細書、同第2,875,047号明細書、同第3,074,974号明細書、同第3,097,097号明細書、同第3,145,104号明細書、同第3,427,161号明細書、同第3,479,185号明細書、同第3,549,367号明細書、および同第4,162,162号明細書に記載のものが挙げられる。
【0055】
光開始剤含有率は、組成物の全量を基準にして0.02〜16重量%であることが好ましい。
【0056】
(G)光重合性モノマー
光重合性モノマーは、とくに限定されるものではない。例としては、少なくとも1つの重合性エチレン基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0057】
そのような化合物は、フリーラジカルの存在によりポリマー形成を開始して鎖延長および付加重合を引き起こすことが可能である。モノマー化合物は、非ガス状である。すなわち、100℃超の沸点を有し、有機バインダーを可塑性にする効果を有する。
【0058】
単独でまたは他のモノマーとの組合せで使用可能な望ましいモノマーとしては、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、米国特許第3,380,381号明細書に記載の化合物、米国特許第5,032,490号明細書に開示される化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−1,2−ジ−(p−ヒドロキシエチル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノールAジ−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノールAジ−[2−(メタ)アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ジアリルフマレート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、モノヒドロキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。この場合、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を示す略語である。以上のモノマーは、ポリオキシエチル化やエチル化のような修飾を行うことが可能である。
【0059】
光重合性モノマーの含有率は、2〜20重量%であることが好ましい。
【0060】
(H)追加成分
ペーストはまた、分散剤、安定剤、可塑剤、剥離剤、脱泡剤、および湿潤剤のような周知の追加成分を含みうる。
【0061】
本発明に係る第2の実施形態は、バス電極が表面上に形成された、プラズマディスプレイパネルの前面パネルに関する。ただし、バス電極は、黒色電極と白色電極とを含む白黒二層構造を有し、かつ黒色電極は、導電性成分として銀−パラジウム合金を含む。本発明に係るPDPは、好ましくは、ACプラズマディスプレイパネル(AC PDP)である。
【0062】
一例としてAC PDP製造プロセスを用いて図を参照しながら本発明の第2の実施形態をより詳細に説明する。黒色バス電極用の組成物は、導電性粒子、ガラス粉末などに関しては、以上に述べたものと同一であるので、以下でさらに詳述することはない。
【0063】
図1は、二層構造を有するバス電極を備えたAC PDP装置の構造を示している。図1に示されるように、AC PDPの前面パネルは、次の構造要素、すなわち、ガラス基板5、ガラス基板5上に形成された透明電極1、透明電極1上に形成された黒色バス電極10、および黒色バス電極10上に形成された白色電極7を有する。誘電体被覆層(透明オーバーグレーズ層)(TOG)8およびMgO被覆層11は、一般的には、白色電極7上に形成される。本発明に係る導電性組成物は、黒色バス電極10を作製するために使用される。
【0064】
AC PDPの背面パネルは、次の構造要素、すなわち、誘電体基板6、電離ガスで充填された放電空間3、透明電極1に平行な第2の電極(アドレス電極)2、および放電空間を分割する隔壁4を有する。透明電極1および第2の電極2は、放電空間3の両側で互いに向き合う。
【0065】
黒色バス電極10および白色電極7は、次のように形成される。最初に、光を照射することにより特定のパターンを形成する。光が照射された部分で重合反応が進行し、現像液に対する溶解性が変化するであろう。パターンは、塩基性水溶液中で現像され、次に、有機部分は、高温で焼結することにより除去され、一方、無機物質は、焼結される。黒色バス電極10および白色電極7は、同一の画像または非常に異なる画像を用いてパターン化される。最後に、焼結された高導電性の黒色バス電極10および白色電極7を含む電極アセンブリーが得られる。電極アセンブリーは、透明電極1の表面上で黒色の外観を示し、前面ガラス基板上に配置された時、外光の反射は抑制される。図1には示されているが、本発明に係るプラズマディスプレイ装置を形成する場合、以下に記載の透明電極1は必要というわけではない。
【0066】
PDPの前面パネル上にバス電極を作製する方法を以下で詳細に説明する。
【0067】
図2に示されるように、本発明に係るバス電極の第1の実施形態を形成する方法は、一連のプロセス(図2A〜2E)を含む。
【0068】
透明電極1は、当業者に公知の従来の方法に従ってSnO2またはITOを用いてガラス基板5上に形成される。透明電極は、通常、SnO2またはITOで形成される。それは、イオンスパッタリング技術、イオンプレーティング技術、化学気相堆積技術、または電着技術により形成可能である。そのような透明電極構造および形成方法は、AC PDP技術分野で周知である。
【0069】
次に、本発明に係る黒色バス電極用の導電性組成物を用いて電極ペースト層10を適用し、次に、黒色電極ペースト層10を窒素中または空気中で乾燥させる(図2A)。
【0070】
次に、白色電極を形成するための感光性厚膜導体ペースト7を黒色電極ペースト層10上に適用する。次に、白色電極ペースト層7を窒素中または空気中で乾燥させる(図2B)。
【0071】
本発明で使用される白色電極ペーストは、周知のまたは市販の感光性厚膜導体ペーストでありうる。本発明で使用するための望ましいペーストは、銀粒子、ガラス粉末、光開始剤、モノマー、有機バインダー、および有機溶媒を含有しうる。銀粒子構成は、好ましくは0.3〜10μmの粒子直径を有するランダムフレークまたは薄いフレークでありうる。ガラス粉末成分、光開始剤成分、モノマー成分、有機バインダー成分、および有機溶媒成分は、黒色バス電極用の組成物中で使用されるものと同一の材料でありうる。しかしながら、成分の量は、著しく異なるであろう。とくに、導電性銀粒子のブレンド量は、白色電極ペーストのほうが多く、たとえば、ペーストの全重量を基準にして約50〜90重量%であろう。
【0072】
現像後に適切な電極パターンの形成が確保される条件下で黒色電極ペースト層10および白色電極ペースト層7に光が照射される。光の照射時、通常、黒色バス電極および白色電極のパターンに対応する構成を有するターゲット13またはフォトツールを介して材料にUV線が照射される(図2C)。
【0073】
光が照射された黒色電極ペースト層10および白色電極ペースト層7の部分(10a、7a)は、0.4重量%炭酸ナトリウム水溶液または他のアルカリ性水溶液のような塩基性水溶液中で現像される。このプロセスでは、光が照射されていない層10および7の部分(10b、7b)は除去される。光が照射された部分10aおよび7aは残存する(図2D)。次に、現像後のパターンが形成される。
【0074】
形成された材料は、450〜650℃の温度で焼結される(図2E)。この段階で、ガラス粉末は、融解して基板に堅固に結合された状態になる。焼結温度は、基板材料に従って選択される。本発明では、黒色バス電極の導電性成分として貴金属含有合金が使用され、焼結は約600℃で実施可能である。以上で述べたように、その理由は、PDP黒色バス電極中で垂直方向の導電を確保することである。高温で焼結すると、より大きいAg拡散を生じる傾向があるので、より低い温度で焼結することが好ましい。
【0075】
図2の方法により作製された前面パネルガラス基板アセンブリーは、AC PDPで使用可能である。図1に戻って、たとえば、透明電極1、黒色バス電極10、および白色電極7を前面パネルガラス基板5上に形成した後、前面ガラス基板アセンブリーは、誘電体層8および次にMgO層11で被覆される。次に、前面パネルガラス基板5は、背面パネルガラス基板6と組み合わされる。
【0076】
本発明に係る導電性組成物はまた、PDPの黒色ストライプを形成するために使用することも可能である。同一の組成物を用いて黒色ストライプおよび黒色バス電極を形成する試みは、製造プロセスを単純化するために提案されており(たとえば、日本特許出願公開の特開2004−063247号公報)、本発明に係る導電性組成物は、そのようなプロセスで利用可能である。
【実施例】
【0077】
実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例は、単に例示を目的としたものであり、本発明を限定しようとするものではない。
【0078】
(A)貴金属添加の効果に関する試験
1.有機成分の調製
有機溶媒としてのTexanol(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)および有機バインダーとしての6,000〜7,000の分子量を有するアクリルポリマーバインダーを混合し、混合物を攪拌しながら100℃に加熱した。有機バインダーがすべて溶解するまで、混合物を加熱および撹拌した。得られた溶液を75℃に冷却した。EDAB(エチル4−ジメチルアミノベンゾエート)、DETX(ジエチルチオキサントン)、およびChiba Specialty Chemicals製のIrgacure907を光開始剤として添加し、TAOBN(1,4,4−トリメチル−2,3−ジアザビシクロ[3.2.2]−ノン−2−エン−N,N−ジオキシド)を安定剤として添加した。固形分がすべて溶解するまで、混合物を75℃で攪拌した。溶液を40ミクロンフィルターに通して濾過し、冷却した。
【0079】
2.黒色電極ペーストの調製
ペーストを調製すべく、黄色光下、混合タンク内で、2.58重量%のTMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)よりなる光硬化性モノマーと、BASF製の5.72重量%のLaromer(登録商標)LR8967(ポリエチルアクリレートオリゴマー)と、安定剤としての0.17重量%のブチル化ヒドロキシトルエンおよび0.42重量%のマロン酸と、を37.5重量%の上述の有機成分と混合した。次に、黒色顔料としての12.67重量%の酸化コバルト(Co34)、導電性粒子、およびガラス粉末を有機成分混合物に添加した。導電性粉末として以下の材料を表1に示されるように使用した。
【0080】
1)0.9μmのd50を有するPt粒子(Pt粉末H7000−25[Ferro corporation])
2)1.4μmのd50を有するAu粒子(Internal粉末−球状単分散Au粉末)
3)1.9μmのd50を有するAg(Ag粉末7000−5[Ferro corporation])
異なる実施例および比較例の間でガラス粉末および導電性粒子の量を変化させた。実施例および比較例で使用した量を表1に示す。
【0081】
無機材料の粒子が有機材料で湿潤されるまで、全ペーストを混合した。三本ロールミルを用いて混合物を分散した。得られたペーストを30μmフィルターに通して濾過した。この時点で、Texanol(有機成分)を用いてペーストの粘度を印刷に理想的な粘度に調整した。
【0082】
3.白色電極ペーストの調製
ペーストを調製すべく、黄色光下、混合タンク内で、TMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)よりなる光硬化性モノマーと、さらには他の有機成分としての0.12重量%のブチル化ヒドロキシトルエン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、BHT)、0.11重量%のマロン酸、およびBYK製の0.12重量%のBYK085と、を24.19重量%の上述の有機成分と混合した。ガラスフリットおよび70重量%のAg粉末球状導電性粒子を無機材料として有機成分の混合物に添加した。無機材料の粒子が有機材料で湿潤されるまで、全ペーストを混合した。三本ロールミルを用いて混合物を分散した。得られたペーストを30μmフィルターに通して濾過した。この時点で、上述のTexanol溶媒を用いてペーストの粘度を印刷に理想的な粘度に調整した。
【0083】
4.電極の作製
ペーストの調製時および部品の製造時に塵埃による汚染により欠陥を生じる可能性があるので、塵埃汚染を回避するための対策を講じた。
【0084】
4−1:黒色バス電極の形成
200〜400メッシュスクリーンを用いてスクリーン印刷により黒色電極ペーストをガラス基板に適用した。所望の膜厚を確保するのに好適なスクリーンおよび黒色電極ペーストの粘度を選択した。透明電極(薄膜ITO)が形成されたガラス基板上にペーストを適用した。次に、4.5〜5.0μmの乾燥膜厚を有する黒色バス電極を形成すべく、熱風循環式炉内でペーストを100℃で20分間乾燥させた。
【0085】
4−2:白色電極の形成
黒色電極を被覆すべく、400メッシュスクリーンを用いてスクリーン印刷により白色電極ペーストを適用した。これを再び100℃で20分間乾燥させた。乾燥させた二層構造の厚さは、12.5〜15μmであった。
【0086】
4−3:UV線パターン照射
平行UV線源を用いてフォトツールを介して二層構造に光を照射した(照度:18〜20mW/cm2;照射量:200mj/cm2)。
【0087】
4−4:現像
照射サンプルをコンベヤー上に配置し、次に、現像液として0.4重量%炭酸ナトリウム水溶液が充填されたスプレー現像装置内に配置した。現像液を30℃の温度に保持し、10〜20psiでスプレーした。サンプルを12秒間現像した。エアジェットで過剰の水をブロー除去することにより、現像サンプルを乾燥させた。
【0088】
4−5:焼結
1.5時間プロファイルを用いて空気中でベルト炉内で焼結することにより、590℃のピーク温度に到達させた(第1の焼結)。
【0089】
4−6:TOG被覆
次に、150ステンレス鋼メッシュスクリーンを用いてTOGペーストをスクリーン印刷した。これを再び100℃で20分間乾燥させた。2.0時間プロファイルを用いて空気中でベルト炉内で580℃のピーク温度で焼結(第2の焼結)を行った。
【0090】
5.評価
5−1:L値
焼結後、ガラス基板の背面パネルから見たときの黒色度を決定した。黒色度を決定するために、日本電色社製の装置を用いて色(L*,a*,b*)を決定した。この時点で校正のために標準白色板を使用した。L*は明るさを表し、a*は赤色および緑色を表し、そしてb*は黄色および青色を表す。100のL*は純白色を表し、0は純黒色を表す。a*の数値が高くなるほど、色は赤色が強くなる。b*の数値が高くなるほど、色は黄色が強くなる。
【0091】
5−2:接触抵抗(Ω)
Advantest製のR6871Eを用いて四端子法により隣接電極パターン間の抵抗を決定した。ここで測定したのは、黒色バス電極の重要な要素である接触抵抗であった。言いかえれば、黒色バス電極では、この値は、電極が積重される方向(これは電流が流れる方向である)の抵抗である。
【0092】
5−3:データ解析
表1に示されるように、本発明に係る規定の貴金属を導電性成分として用いて非常に良好な接触抵抗を達成することが可能であった。本発明に係るペーストは、黒色バス電極に必要とされる垂直方向の優れた導電性を提供し、少量添加したときに満足すべき導電をもたらした。たとえば、実施例1では、比較例1と比べてかなり少量の導電性粉末を添加したが、Pt粒子を使用した場合、接触抵抗(第1の焼結)は10.7Ωであり、一方、Agを使用した場合、接触抵抗(第1の焼結)は101Ωであった。
【0093】
さらに、予想外の結果は、TOG焼結プロセス後の挙動であった。第1の焼結時の接触抵抗と第2の焼結時の接触抵抗との比較から、Agを使用した場合、TOG焼結プロセス後の接触抵抗の劣化が明らかにされた。一方、本発明に係る貴金属を使用した場合、実施例1〜6で実証されるように、傾向は正反対であった。言いかえれば、最初に優れた数値を有していた接触抵抗は、TOG焼結プロセス後でさえも低下した。
【0094】
したがって、L値の数値は、本発明に係る製品では十分に満足すべきものであることは明らかであった。
【0095】
金属含有率と黒色性(L値)との関連性に関して、貴金属含有率の増大によりL値がいくらか増大した。
【0096】
表1には示されていないが、導電性粒子としてAgを使用したところ、とくに黒色ストライプ中でのAgの拡散の結果として顕著な黄変を生じた。これは、黒色ストライプ部分にITO電極が不在であることが原因であった。なぜなら、ITO電極の存在によりAg拡散をある程度抑制しうるからである。このことを考慮に入れると、製造プロセスを単純化するために同一の組成物を用いて黒色ストライプおよび黒色バス電極を形成する場合、本発明はきわめて有意義なものになるはずである。
【0097】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、ガラス粉末、有機バインダー、有機溶媒、および黒色顔料を含み、前記導電性粉末が白金粒子または金粒子である、プラズマディスプレイの黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性粉末の含有率が前記組成物の全重量を基準にして0.01〜1.0重量%である、請求項1に記載の黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項3】
前記導電性粉末の平均粒子直径(PSD D50)が0.1〜5μmである、請求項1に記載の黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項4】
前記黒色顔料としてCo34(四酸化三コバルト)を含む、請求項1に記載の黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項5】
前記組成物の全量を基準にして、前記導電性粉末の含有率が0.01〜1.0重量%であり、前記ガラス粉末の含有率が10〜50重量%であり、かつ前記黒色顔料の含有率が6〜20重量%である、請求項1に記載の黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項6】
光重合開始剤とモノマーとをさらに含む、請求項1に記載の黒色バス電極用の導電性組成物。
【請求項7】
バス電極が表面上に形成された、プラズマディスプレイパネルの前面パネルであって、前記バス電極が、黒色電極と白色電極とを含む白黒二層構造を有し、かつ前記黒色電極が、導電性粒子として白金または金を含む、上記前面パネル。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図2(C)】
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【図2(D)】
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【図2(E)】
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【公表番号】特表2011−503806(P2011−503806A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533237(P2010−533237)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/082604
【国際公開番号】WO2009/061898
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】