説明

黒色塗料組成物

【課題】煩雑な易接着処理を施さなくても、耐候性、耐湿熱性および光の遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れた塗膜を形成する黒色塗料組成物および該黒色塗料組成物が用いられた積層体を提供すること。
【解決手段】紫外線安定性単量体および炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含有する単量体混合物を重合させてなるアクリル系重合体と黒色顔料とを含有することを特徴とする黒色塗料組成物、および該黒色塗料組成物を樹脂フイルムに塗工してなる積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色塗料組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、太陽電池バックシートなどに好適に使用することができる黒色塗料組成物および該黒色塗料組成物が用いられた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基材は、一般に、太陽光線などに含まれている紫外線の照射を受けたとき、その樹脂の主鎖が断裂するため、樹脂基材の機械的強度が低下するようになる。そこで、樹脂基材を紫外線から保護するために、樹脂基材の表面に易接着処理が施された処理面にアクリル系重合体層を形成させた紫外線吸収性複合フイルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この紫外線吸収性複合フイルムは、紫外線吸収性、樹脂基材との密着性および耐候性に優れている半面、煩雑な易接着処理を必要とする。
【特許文献1】特開平11−348199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、煩雑な易接着処理を施さなくても、耐候性、耐湿熱性および光遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れた塗膜を形成する黒色塗料組成物および該黒色塗料組成物が用いられた積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(1)紫外線安定性単量体および炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含有する単量体混合物を重合させてなるアクリル系重合体と黒色顔料とを含有することを特徴とする黒色塗料組成物、ならびに
(2)前記黒色塗料組成物を樹脂フイルムに塗工してなる積層体
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の黒色塗料組成物は、煩雑な易接着処理を施さなくても、耐候性、耐湿熱性および光遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れた塗膜を形成するという優れた効果を奏する。本発明の積層体は、前記黒色塗料組成物を塗工することによって形成された塗膜を有し、該塗膜は、耐候性、耐湿熱性および光遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および樹脂フイルムに対する密着性にも優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の黒色塗料組成物は、前記したように、紫外線安定性単量体および炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体〔以下、単に「(メタ)アクリレート系単量体」という〕を含有する単量体混合物を重合させてなるアクリル系重合体と黒色顔料とを含有することを特徴とする。
【0007】
なお、本明細書にいう「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」および/または「メタクリ」を意味する。
【0008】
本発明の黒色塗料組成物は、特定のアクリル系重合体および黒色顔料が用いられていることから、煩雑な易接着処理を施さなくても、樹脂基材に塗工することによって光を遮蔽する塗膜を容易に形成することができるので、樹脂基材の光による劣化を防止することができる。また、本発明の黒色塗料組成物は、耐候性、耐湿熱性および光遮蔽性に優れ、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れた塗膜を形成することができる。
【0009】
紫外線安定性単量体としては、分子中に重合性二重結合と紫外線安定性基とを有する化合物が挙げられる。好適な紫外線安定性単量体としては、例えば、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は水素原子またはシアノ基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、R4は水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、Zは酸素原子またはイミノ基を示す)
で表される単量体が挙げられる。
【0012】
式(I)で表される単量体において、R4で表される炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0013】
式(I)で表される単量体の具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明に用いられる単量体混合物には、紫外線安定性単量体とともに(メタ)アクリレート系単量体が用いられる。(メタ)アクリレート系単量体が有する炭化水素基の炭素数は、耐候性、塗膜強度および基材に対する密着性を高める観点から、4〜25、好ましくは4〜18である。
【0015】
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜25の脂環式炭化水素基;ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜25の多環式炭化水素基;ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テルペン系(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(メタ)アクリレート系単量体のなかでは、式(II):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R5は水素原子またはメチル基、Yは炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基、炭素数4〜25の脂環式炭化水素基または炭素数4〜25の多環式炭化水素基を示す)
で表される(メタ)アクリレート系単量体は、耐候性、塗膜強度および基材に対する密着性を高める観点から、好ましい。
【0019】
式(II)において、Yは、炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基、炭素数4〜25の脂環式炭化水素基または炭素数4〜25の多環式炭化水素基を示す。炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基としては、例えば、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、2−エチルへキシル基、イソノニル基、イソデシル基などの分岐鎖を有するアルキル基が挙げられる。炭素数4〜25の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基などが挙げられる。炭素数4〜25の多環式炭化水素基としては、ボルニル基、イソボルニル基などが挙げられる。
【0020】
前記Yの炭素数は、疎水性を高める観点から、多いことが好ましい。Yは、疎水性を高める観点から、炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基および炭素数4〜25の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数4〜18の分岐鎖を有するアルキル基および炭素数4〜18の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0021】
(メタ)アクリレート系単量体のなかでは、耐候性、塗膜強度および基材に対する密着性を高める観点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびtert−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
紫外線安定性単量体と(メタ)アクリレート系単量体との質量比〔紫外線安定性単量体/(メタ)アクリレート系単量体〕は、塗膜強度を高め、耐候性に優れ、基材に対する密着性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0.01/1以上、より好ましくは0.02/1以上であり、形成される塗膜の耐水性を高め、黄変を防止する観点から、好ましくは2/1以下、より好ましくは1.5/1以下である。
【0023】
単量体混合物は、紫外線安定性単量体および(メタ)アクリレート系単量体を含有するが、さらに水酸基含有単量体を含有していることが好ましい。
【0024】
水酸基含有単量体を用いた場合には、基材に対する密着性および顔料の分散性をより向上させることができる。水酸基含有単量体としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのε−カプロラクトン付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのε−カプロラクトン付加物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのε−カプロラクトン付加物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン2モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン3モル付加物などの炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0026】
単量体混合物における水酸基含有単量体の含有量は、基材に対する密着性を向上させるとともに耐候性を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、形成される塗膜の耐水性および耐候性を高める観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0027】
また、単量体混合物は、紫外線吸収性を付与する観点から、紫外線吸収性単量体を含有していてもよい。好適な紫外線吸収性単量体としては、例えば、特開2008−56859号公報に記載の紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。紫外線吸収性単量体のなかでは、前記公報に記載の式(2)〜(5)で表される単量体が好ましい。
【0028】
紫外線吸収性単量体の具体例としては、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾールなどの前記公報に記載の式(2)で表される単量体;
【0029】
2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどの前記公報に記載の式(3)で表される単量体;
【0030】
2−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどの前記公報に記載の式(4)で表される単量体;
【0031】
2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルアミノメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどの前記公報に記載の式(5)で表される単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
単量体混合物における紫外線吸収性単量体の含有量は、紫外線吸収性を十分に付与する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、基材に対する密着性を高める観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0033】
また、本発明においては、単量体混合物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の単量体を適量で含有していてもよい。他の単量体としては、例えば、前記(メタ)アクリレート系単量体以外の(メタ)アクリレート、ビニルエステル系単量体、ケイ素原子含有単量体、ハロゲン原子含有単量体、窒素原子含有単量体、多官能単量体、ビニルエーテル系単量体、エポキシ基含有単量体、酸性基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0034】
前記(メタ)アクリレート系単量体以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ケイ素原子含有単量体としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記ハロゲン原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、へプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記窒素原子含有単量体としては、例えば、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルオキシ−N,N,N−トリエチルアンモニウムエチル硫酸などの第4級アンモニウム塩基含有単量体;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル−N,N−ジエチルアミンなどの第3級アミノ基含有単量体をはじめ、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記酸性基含有単量体としては、例えば、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
アクリル系重合体は、前記単量体混合物を重合させることにより、容易に調製することができる。
【0044】
単量体混合物を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる重合方法によって限定されるものではない。これらの重合方法のなかでは、得られる反応混合物をそのまま使用することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0045】
以下に、単量体混合物を溶液重合法させることによってアクリル系重合体を調製する場合の一実施態様について説明するが、本発明は、その実施態様のみに限定されるものではない。
【0046】
単量体混合物を溶液重合させる際に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。溶媒の量は、単量体混合物の濃度、目的とするアクリル系重合体の分子量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。重合開始剤の量は、単量体混合物100質量部あたり、通常、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0048】
なお、重合の際には、得られるアクリル系重合体の分子量を調整するために、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を用いてもよい。
【0049】
単量体混合物を重合させる際の重合温度は、通常、好ましくは40〜200℃、より好ましくは40〜140℃である。
【0050】
単量体混合物の重合時間は、重合温度、単量体混合物の組成、重合開始剤の種類およびその量などによって異なるので一概には決定することができないため、それらに応じて適宜決定することが好ましい。
【0051】
アクリル系重合体の重量平均分子量は、基材に対する密着性を向上させる観点から、好ましくは50000以上、より好ましくは60000以上であり、形成される塗膜の外観および保存安定性を高める観点から、好ましくは500000以下、より好ましくは400000以下である。
【0052】
なお、本発明においては、例えば、水酸基含有単量体を含有する単量体混合物を重合させることにより、アクリル系重合体が水酸基を有する場合、水酸基を有するアクリル系重合体と硬化剤とを併用することが好ましい。硬化剤を用いた場合には、水酸基を有するアクリル系重合体と硬化剤との反応により、本発明の黒色塗料組成物の硬化性をより一層向上させることができるという利点がある。
【0053】
硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、メラミン樹脂などが挙げられる。これらのなかでは、耐候性の観点から、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0054】
多官能イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート基を2個以上有する脂環族ポリイソシアネート、それらの混合物、それらを変性させることによって得られる変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらのなかでは、耐候性を高める観点から、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが好ましい。
【0055】
多官能イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、それらの混合物、それらの変性体などが挙げられる。前記変性体としては、ポリオールとの反応生成物であるプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体などが挙げられる。
【0056】
硬化剤として多官能イソシアネート化合物を用いる場合、アクリル系重合体と多官能イソシアネート化合物との割合は、多官能イソシアネート化合物のNCO基/アクリル系重合体のOH基(水酸基)(NCO基/OH基:当量比)は、本発明の黒色塗料組成物の保存安定性を高めるとともに、塗膜の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは0.8/1〜1.2/1、より好ましくは0.9/1〜1.15/1、さらに好ましくは0.95/1〜1.1/1である。
【0057】
本発明の黒色塗料組成物には、着色剤として、黒色顔料が用いられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄(四三酸化鉄)、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラック、コバルトブラック、シアニンブラック、アニリンブラックなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの黒色顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、カーボンブラックは、光遮蔽性の観点から、好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、黒色顔料は、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の顔料や染料などの着色剤と併用してもよい。
【0058】
黒色顔料の粒子径は、塗膜の厚さにもよるが、平滑な塗膜を形成する観点から、通常、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、黒色顔料の粒子径は、分散性を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
【0059】
黒色顔料の量は、アクリル系重合体の樹脂固形分100質量部あたり、光による樹脂基材の劣化を防止する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、形成される塗膜の脆化を防止する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0060】
なお、本発明の黒色塗料組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記アクリル系重合体以外の樹脂として、例えば、飽和ポリエステル樹脂などが含まれていてもよい。また、本発明の黒色塗料組成物には、必要により、添加剤や有機溶媒が含まれていてもよい。
【0061】
添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;立体障害ピペリジン化合物などの添加型紫外線安定剤;レベリング剤;酸化防止剤;タルクなどの充填剤;防錆剤;防黴剤;分散安定化剤;可塑剤;蛍光性増白剤;界面活性剤、リチウム系や有機ホウ素系の帯電防止剤;リン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物、ハロゲン系化合物などの難燃剤;増粘剤;消泡剤;コロイダルシリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;アクリル系樹脂微粒子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。添加剤の量は、その添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないため、本発明の目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0062】
有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。溶媒量は、本発明の黒色塗料組成物の用途などによって異なるので一概には決定することができないため、本発明の黒色塗料組成物の用途などに応じて、本目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0063】
本発明の黒色塗料組成物は、各種基材に適用することができる。基材を構成する材質としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、セロファン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ABS樹脂、ノリル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、ガラス、スレート、モルタルなどの無機系材料、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの金属およびそれらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0064】
本発明の黒色塗料組成物は、これらの基材のなかでも、樹脂基材に好適に使用することができる。なかでも、ポリエステルなどの樹脂からなる基材に対し、優れた基材に対する密着性を発現する。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの樹脂からなる基材は、それぞれ単層で構成されていてもよく、複数層が積層された積層構造を有するものであってもよい。
【0065】
樹脂基材の代表例として、樹脂フイルムなどが挙げられる。好適な樹脂フイルムとしては、例えば、ポリエステルフイルムなどが挙げられる。樹脂フイルムのなかでは、本発明の黒色塗料組成物との密着性を向上させる観点から、数平均分子量が18000〜40000であるポリエステルフイルムがより好ましい。ポリエステルフイルムは、例えば、東レ(株)製、商品名:ルミラー(登録商標)X10などとして商業的に容易に入手することができる。
【0066】
樹脂フイルムの厚さは、その用途などによって異なるので一概には決定することができないので、その用途に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、樹脂フイルムを太陽電池バックシートなどに使用する場合には、樹脂フイルムの厚さは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは20〜150μmである。なお、樹脂フイルムの表面には、水蒸気遮断性を付与するために、例えば、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を蒸着させて金属酸化物の蒸着層が形成されていてもよい。
【0067】
本発明の黒色塗料組成物を樹脂フイルムなどの基材に塗工する方法としては、例えば、スプレーコーティング法、刷毛塗り法、カーテンフローコート法、グラビアコート法、ロールコート法、スピンコート法、バーコート法、静電塗装法などをはじめ、基材を本発明の黒色塗料組成物中に浸漬する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
本発明の黒色塗料組成物を樹脂フイルムなどの基材に塗工した後、本発明の黒色塗料組成物を硬化させるために加熱を行なう。加熱温度および加熱時間は、本発明の黒色塗料組成物の組成や樹脂フイルムなどの基材の耐熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜130℃である。また、加熱時間は、通常、好ましくは20秒間〜3分間、より好ましくは30秒間〜2分間である。本発明の黒色塗料組成物を硬化させた後は、例えば、30〜60℃程度の温度で0.5〜4日間程度、形成された塗膜を養生させることが好ましい。
【0069】
本発明の黒色塗料組成物を樹脂フイルムなどの基材の表面に塗工し、乾燥させた後の塗膜の厚さは、光遮蔽性を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、樹脂フイルムなどの基材との密着性を高める観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0070】
以上のようにして、本発明の黒色塗料組成物をポリエステルフイルムなどの樹脂フイルムに塗工することにより、本発明の積層体を製造することができる。
【0071】
本発明の積層体は、前記黒色塗料組成物を塗工することによって形成された塗膜を有し、該塗膜は、耐候性、耐湿熱性および光遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および樹脂フイルムに対する密着性にも優れている。したがって、本発明の積層体は、例えば、太陽電池バックシートなどに好適に使用することができる。
【0072】
なお、本発明の積層体は、接着剤を介して他の基材と積層し、1層またはそれ以上の積層体として用いることができる。他の基材としては、例えば、アクリル樹脂板などの樹脂板、着色フイルム、ガスバリア性を有する樹脂フイルム、水蒸気遮断性樹脂フイルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0073】
接着剤としては、特別なものでなくてよく、一般に商業的に容易に入手することができるものであればよい。接着剤として、例えば、信越ポリマー(株)製の商品名:ポリマーエース、東レ・ダウコーニング(株)製のホットメルト接着剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0074】
本発明の黒色塗料組成物は、例えば、シリコーン系接着剤などの接着剤との接着性にも優れ、湿熱試験後でも接着性がほとんど低下しないという優れた性質を有する。したがって、本発明の黒色塗料組成物は、例えば、各種記録材料、ICカード、ICタグなどをはじめ、薬品や食品などの包装材、太陽電池用バックシート、マーキングフィルム、感光性樹脂板、粘着シート、色素増感型太陽電池、偏光板保護用樹脂フイルム、反射防止用樹脂フイルム、光拡散フイルムなどの光学樹脂フイルム、ガラス飛散防止樹脂フイルム、化粧シート、窓用樹脂フイルムなどの建築材料用樹脂フイルム、表示材料、電飾看板などの屋内外のオーバーレイ用樹脂フイルム、シュリンクフィルムなどに使用することができる。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
製造例1
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500mL容のフラスコ内に、紫外線安定性単量体として、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン1部、シクロヘキシルメタクリレート79部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびメチルメタクリレート10部からなる単量体混合物、および溶媒として酢酸エチル120部を仕込み、窒素ガスを流入して撹拌しながら還流温度まで昇温した。
【0077】
一方、滴下槽に、溶媒として酢酸エチル10部と重合開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)0.2部との混合物を仕込み、2時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後も還流反応を続け、滴下開始から6時間後に冷却し、不揮発分含量が40質量%の溶液となるよう酢酸エチルで希釈し、重量平均分子量が167000であるアクリル系重合体(表1に記載の重合体番号:1)を得た。
【0078】
なお、各製造例において、アクリル系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定装置〔東ソー(株)製、品番:HLC8120〕およびカラム〔東ソー(株)製、品番:TSK−GEL GMHXL−L〕を用い、ポリスチレン換算の分子量として求めた。
【0079】
製造例2〜9
製造例1において、単量体混合物の組成および重合開始剤の量を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、アクリル系重合体を調製した。なお、表1に示す各略号は、以下のことを意味する。
〔紫外線安定性単量体〕
・HALS1:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
・HALS2:4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
〔(メタ)アクリレート系単量体〕
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
・t−BMA:tert−ブチルメタクリレート
・2EHA:2−エチルへキシルアクリレート
・BA:ブチルアクリレート
〔水酸基含有単量体〕
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
〔紫外線吸収性単量体〕
・UVA:2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
〔その他の単量体〕
・MMA:メチルメタクリレート
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1
製造例1で得られたアクリル系重合体100部(固形分量)に、黒色顔料としてカーボンブラック2部〔三菱化学(株)製、品番:MA100〕(不揮発分中のカーボンブラック濃度:40質量%)を添加し、ペイントシェーカーで1時間分散させて分散液を得た。
【0082】
得られた分散液に、架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート(ビューレット変性ポリイソシアネート)〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュール(登録商標)N3200〕5部〔分散液中のアクリル系重合体の水酸基/脂肪族系ポリイソシアネートのイソシアネート基(当量比):1/1〕を添加した。その後、メチルエチルケトンで不揮発分量が20質量%となるまで希釈し、黒色塗料組成物を得た。
【0083】
次に、得られた黒色塗料組成物をバーコーターで乾燥後の膜厚が5μmとなるように基材フイルムとして厚さが125μmのポリエステルフイルム〔ポリエチレンテレフタレートフイルム、東レ(株)製、商品名:ルミラー(登録商標)X10S〕に塗布し、120℃で1分間、次いで40℃で2日間乾燥させることにより、基材フイルム上に塗膜が形成された塗工フイルムを作製した。
【0084】
実施例2〜9および比較例1
実施例1において、黒色塗料組成物の組成を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗工フイルムを作製した。
【0085】
なお、表2に記載の各成分の量は、いずれも固形分量である。黒色顔料および硬化剤の詳細は以下のとおりである。
・黒色顔料:カーボンブラック〔三菱化学(株)製、商品名:MA100〕
・硬化剤:脂肪族ポリイソシアネート(ビューレット変性ポリイソシアネート)〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュール(登録商標)N3200〕
【0086】
次に、各実施例および比較例で得られた塗工フイルムに対し、以下の方法で耐候性試験または耐湿熱性試験を行なった。
【0087】
〔耐候性試験〕
紫外線劣化促進試験機〔岩崎電気(株)製、商品名:アイスーパーUVテスター UV−W131〕を用い、60℃で相対湿度50%の大気中で、塗工フイルムの塗膜面側から100mW/cm2の紫外線を表2に示す所定時間照射した。
【0088】
〔耐湿熱性試験〕
恒温恒湿器〔エスペック(株)製、商品名:PL−2KH〕を用い、85℃で相対湿度85%の大気中に塗工フイルムを表2に示すように250時間または500時間放置した。
【0089】
次に、耐候性試験または耐湿熱性試験を行った後の塗工フイルムおよびこれらの試験を行わなかったときの塗工フイルムについて、以下の物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0090】
(A)密着性
JIS K 5600の5.6(2004年度版)の記載に準じて、密着性を調べた。より具体的には、25℃の大気中で、1mm間隔のカッターガイドを用い、カッターナイフで塗工フイルムに形成されている塗膜の表面から該塗膜を貫通し、基材フイルム(ポリエステルフイルム)に達する1mm角の碁盤目状の切り傷を100個付けた後、セロハン粘着テープ〔ニチバン(株)製、品番:CT405AP−18、幅:18mm〕を碁盤目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムで上からこすって完全にテープを付着させた後、貼り付けたテープを折り返し、基材に対して水平方向に一気に引き剥がし、基材フイルム表面に残存している塗膜の碁盤目の数を記録した。密着性は、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、基材フイルム表面に残存している塗膜の碁盤目の数が多いほど、基材フイルムに対する密着性に優れている。
【0091】
(評価基準)
4:残存している塗膜の碁盤目の数が98個以上
3:残存している塗膜の碁盤目の数が95〜97個
2:残存している塗膜の碁盤目の数が85〜96個
1:残存している塗膜の碁盤目の数が84個以下
【0092】
(B)引張強度
温度可変式引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:島津オートグラフAGS−100D〕を用い、幅が10mmとなるように塗工フイルムを切断することによって得られた試験片を23℃の大気中で、チャック間距離40mm、引張速度200mm/minの条件で引張り、破断するまでの引張強度を測定した。引張強度の保持率は、式:
〔引張強度の保持率(%)〕=[〔照射後の引張強度〕−〔照射前の引張強度〕]×100
に基づいて求めた。引張強度は、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0093】
(評価基準)
3:引張強度の保持率が90%以上
2:引張強度の保持率が70%以上90%未満
1:引張強度の保持率が70%未満
【0094】
(C)光遮蔽性
紫外可視近赤外分光光度計〔(株)島津製作所製、品番:UV−3600〕を用いて波長400〜800nmの光線を塗工フイルムに照射し、分光透過スペクトルを測定し、光遮蔽性を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、光線の透過率が低いほど、遮蔽性に優れている。
【0095】
(評価基準)
3:光線の透過率が1%以下
2:光線の透過率が1%を超え2%以下
1:光線の透過率が2%を超える
【0096】
(D)接着性
塗工フイルムの塗膜面にシリコーン系接着剤〔信越化学ポリマー(株)製、ポリマーエース〕を塗布して接着層を形成し、その上からアクリル樹脂板〔日本テストパネル(株)製〕を積層させた後、1.3kPaの減圧下で150℃の雰囲気中で10分間加熱し、塗工フイルムがシリコーン系接着剤を介してアクリル樹脂板と積層一体化された積層体を得た。
【0097】
得られた積層体を恒温恒湿器〔エスペック(株)製、商品名:PL−2KH〕に入れ、85℃で相対湿度85%の大気中で積層体を500時間放置した後の外観を目視にて観察し、塗工フイルムと接着層との間で浮きや剥離などの異状の有無を評価した。
【0098】
(評価基準)
2:異状なし
1:浮き、剥離などの異状が見られる
【0099】
【表2】

【0100】
表2に示された結果から、以下のことがわかる。
各実施例で得られた黒色塗料組成物は、いずれも、紫外線安定性単量体が使用されていない比較例1で得られた黒色塗料組成物と対比して、密着性、引張強度、光遮蔽性および接着性に優れていることがわかる。
【0101】
実施例1〜9の結果から、紫外線安定性単量体/(メタ)アクリレート系単量体(質量比)が0.03/1〜0.08/1であり、かつ黒色顔料(カーボンブラック)の量がアクリル系重合体100質量部(固形分量)あたり、1.5〜2.5である場合には(実施例3〜5)、そうでない場合と対比して、密着性、引張強度、光遮蔽性および接着性が総合的に優れていることがわかる。また、硬化剤が用いられている場合には(実施例1〜8)、硬化剤が用いられていない場合(実施例9)と対比して、耐候性がより一層優れることがわかる。
【0102】
以上のことから、本発明の黒色塗料組成物は、煩雑な易接着処理を施さなくても、耐候性、耐湿熱性および光の遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れた塗膜を形成するという優れた効果を奏することがわかる。また、本発明の積層体は、前記黒色塗料組成物を塗工することによって形成された塗膜を有し、該塗膜は、耐候性、耐湿熱性および光の遮蔽性に優れるとともに、塗膜強度および基材に対する密着性にも優れるという優れた効果を奏することもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の黒色塗料組成物は、例えば、太陽電池バックシートなどをはじめ、内容物や基材を紫外線から保護するためのコーティング剤、薬品や食品などの包装材料、ガラス瓶などに紫外線吸収層を形成するためのコーティング剤などとして利用することができる。本発明の黒色塗料組成物は、染料などの着色剤の退色防止用コーティング剤、フッ素樹脂フイルムなどの樹脂製基材同士を貼り合わせるための粘着剤や接着剤、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂のハードコート層用のプライマーとして使用することができる。さらに、本発明の黒色塗料組成物は、耐候性記録液、繊維処理剤、絶縁素子や表示素子などの絶縁用コーティング剤として使用することができる。
【0104】
本発明の積層体は、例えば、可逆性感熱用記録材料、昇華転写用記録材料、溶融転写用記録材料、インクジェット用記録材料、感熱用記録材料、ICカード、ICタグなどをはじめ、薬品や食品などの包装材、太陽電池用バックシート、マーキングフィルム、感光性樹脂板、粘着シート、色素増感型太陽電池、高分子固体電解質、紫外線吸収絶縁膜、偏光板保護用樹脂フイルム、反射防止用樹脂フイルム、光拡散フイルムなどの光学樹脂フイルム、ガラス飛散防止樹脂フイルム、化粧シート、窓用樹脂フイルムなどの建築材料用樹脂フイルム、表示材料、電飾看板などの屋内外のオーバーレイ用樹脂フイルム、シュリンクフィルムなどとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線安定性単量体および炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含有する単量体混合物を重合させてなるアクリル系重合体と黒色顔料とを含有することを特徴とする黒色塗料組成物。
【請求項2】
炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体が、式(II):
【化1】

(式中、R5は水素原子またはメチル基、Yは炭素数4〜25の分岐鎖を有するアルキル基、炭素数4〜25の脂環式炭化水素基または炭素数4〜25の多環式炭化水素基を示す)
で表される(メタ)アクリレート系単量体である請求項1に記載の黒色塗料組成物。
【請求項3】
アクリル系重合体における紫外線安定性単量体と炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体との質量比〔紫外線安定性単量体/炭素数4〜25の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系単量体〕が0.01/1〜2/1である請求項1または2に記載の黒色塗料組成物。
【請求項4】
さらに、単量体組成物が水酸基含有単量体を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の黒色塗料組成物。
【請求項5】
水酸基含有単量体が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはそのε−カプロラクトン付加物である請求項4に記載の黒色塗料組成物。
【請求項6】
黒色顔料が、カーボンブラックである請求項1〜5のいずれかに記載の黒色塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の黒色塗料組成物を樹脂フイルムに塗工してなる積層体。
【請求項8】
樹脂フイルムが、ポリエステルフイルムである請求項7に記載の積層体。

【公開番号】特開2010−138300(P2010−138300A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316407(P2008−316407)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】