説明

黒色塗料

【課題】 高温下、高照度下での使用でも分解などが生じない黒色塗料を提供する。
【解決手段】 ポリイミド樹脂をベース樹脂とする黒色塗料。とくに、ポリイミド樹脂をベース樹脂とし、シランカップリング剤を窒素化合物とし、N−メチルピロリドンを溶剤として混合することにより生成する黒色塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色塗料に関する。例えば、本発明は、液晶パネルなどの像形成手段により形成された画像を投影レンズなどでスクリーン上に投影するプロジェクタ装置などの投影装置、照明装置などの光学機器に塗布される黒色塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器、とくにプロジェクタをはじめとする、装置内が高温となる光学機器では、他の光学機器と同様に、反射を抑える黒色塗料が塗布されている。この黒色塗料は、長く高温下に置かれることや、光源から発せられた高照度の光の照射により、塗料自体の樹脂が分解され、光学系内に付着して、所望の光学性能が得られなくなるなどの不具合が生じている。
【0003】
一方、従来から、特許文献1に示すように、プロジェクタ装置等のように高温になる光学機器に内蔵される光量調整装置における羽根部材の熱による変形を抑える光遮断用耐熱シート材が知られている。すなわち、特許文献1の行番号0023、0024では、一般的な接着剤であるフェノール樹脂や、二液硬化型ポリエステル樹脂塗料を硬化剤とし、イソシアネート化合物を用い、光遮光添加剤として黒色顔料のカーボンブラックを用いることが開示されている。
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に示されているような光遮断用耐熱シート材では、フェノール樹脂や、二液硬化型ポリエステル樹脂塗料、イソシアネート化合物を用い、光遮光添加剤として黒色顔料のカーボンブラックを用いなければならず、接着剤としての中間物質を用い、さらに、プロジェクタ等の光学機器の高温環境下で接着剤が劣化してしまい、剥がれてしまう問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−3839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような問題点は、塗料樹脂自体の耐熱性や耐光性が弱いことに起因していることに着目して、本発明は、これらを改良して、新たな黒色塗料を提供することを目的としている。とくに、本発明は、高温下、高照度下での使用でも、分解などが生じない黒色塗料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0008】
(1) ポリイミド樹脂をベース樹脂とすることを特徴とする黒色塗料。
【0009】
(2) ポリイミド樹脂をベース樹脂とし、シランカップリング剤を窒素化合物とし、N−メチルピロリドンを溶剤として混合することにより生成することを特徴とする黒色塗料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0011】
(1) ポリイミド樹脂をベース樹脂とし、シランカップリング剤を窒素化合物とし、N−メチルピロリドンを溶剤として混合することにより生成された黒色塗料は、プロジェクタ装置などの投影装置、照明装置などの光学機器に塗布することにより、高温下、高照度下での使用でも分解などが生じない。
【0012】
(2) 実際の条件に近い条件の照度の光を照射しても、分解生成物が発生しない。
【0013】
(3) 光学系への白濁が発生しない。
【0014】
(4) 塗料としての密着性(接着性)が十分である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
種々の実験の結果に基づいて、以下のとおりベース樹脂その他を選定した。
【0016】
ベース樹脂
すでに市販されている種々の耐熱塗料や新たに選定した樹脂により作成した塗料サンプルによる実験に基いて、ポリイミド樹脂を良好なものとして選定した。
【0017】
顔料の選定
種々の黒色塗料の作製や実験結果から、三菱カーボン製のMA600を良好なものとして選定した。
【0018】
添加剤の選定
接着性能を向上させるため、シランもしくはチタンカップリング剤を混合し、とくに、その顕著な効果を勘案して、添加剤を選定した。
【0019】
シンナーの選定
シンナーは樹脂との相溶性がもっとも良好であるN−メチルピロリドンを選定した。
【0020】
さらに、このような選定について詳細に説明する。
【0021】
ベース樹脂は、耐熱性(高温下での分解生成物の発生の有無により確認した)の観点から、光学機器の用途では、シリコーン樹脂は光学系内に白濁が生じるが、ポリイミド樹脂をベースにした塗料は光学系内に白濁が発生しない。仮に光学系内に白濁が少し生じたとしても、光学系に影響を与える程度のものではない。
【0022】
顔料として用いたカーボンブラックは、実験を行ったグレードでは、いずれのグレードでも、問題は発生しなかったが、耐光性(とくに耐短波長領域の耐光性)の観点から、三菱カーボン製MA600は、もっとも優れたグレードであり、とくに、粒子径(20nm)、着色力、PVC黒度の諸点を含めて良好であると判断した。
【0023】
添加剤としては、金属部品との接着性能を考慮し、シランカップリング剤とチタンカップリング剤それぞれ2種にて実験をしたが、これらの間に接着性に大きな差は生じていない。入手性などを考慮し、チッソ製のS510を選定した。
【0024】
シンナーに関しては、ポリイミド樹脂への溶解性が十分であるN−メチルピロリドンを選定した。
【0025】
多数の種々の実験と考察をふまえ、良好な塗料の原材料を選定した。
【表1】

【0026】
表1において、C.Bはカーボンブラックを示す。(I)〜(III)はその種類を示す。
【表2】

【0027】
表2において、5%を超えた添加量で同条件にて作製すると、表面にポツが生じ、その結果、外観不良となる。
【表3】

【0028】
表3において、シランカップリング剤は新規開発塗料+カーボンブラックAにて作製した塗料に混合して評価した。
【表4】

【0029】
表4において、実験結果から、組み合わせによる不良な点は見当たらなかったが、カーボンブラック独自の機能や入手性を考慮して、カーボンブラックBが優れていると判断した。そして、次のようにカーボンブラックBで実験用の塗料の構成を決定した。
【0030】
塗料の良好な構成
ベース樹脂:ポリイミド樹脂
顔料:カーボンブラックB(三菱カーボン製MA600)
シランカップリング剤:C(チッソ製S510)
シンナー:N−メチルピロリドン(一般試薬特級グレード)
実験による効果の確認
以上により、ポリイミド樹脂をベース樹脂とし、シランカップリング剤を窒素化合物とし、N−メチルピロリドンを溶剤として混合することにより生成された黒色塗料をプロジェクタ装置などの投影装置、照明装置などの光学機器に塗布することにより、高温下、高照度下での使用でも分解などが生じないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂をベース樹脂とすることを特徴とする黒色塗料。
【請求項2】
ポリイミド樹脂をベース樹脂とし、シランカップリング剤を窒素化合物とし、N−メチルピロリドンを溶剤として混合することにより生成することを特徴とする黒色塗料。

【公開番号】特開2013−75987(P2013−75987A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216770(P2011−216770)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】