説明

黒色感光性樹脂組成物、ブラックマトリクスの製造方法、カラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタ

【課題】 390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)での露光法によるブラックマトリクスの形成において、十分な感度、解像度及び密着性が得られる黒色感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤、及び、(E)黒色顔料を含有し、上記(C)光重合開始剤が、(C1)2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、及び、(C2)2−メルカプトベンゾオキサゾールを含み、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光してブラックマトリクスを形成するために用いられる、黒色感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色感光性樹脂組成物、ブラックマトリクスの形成方法、カラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示デバイス、センサー及び色分解デバイス等にカラーフィルタが使用されている。これらカラーフィルタは、コントラスト向上、色純度の低下を防ぐ目的で各色画素の境界をブラックマトリクスで遮光している。
【0003】
通常、ブラックマトリクスは、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属膜を蒸着、スパッタリング等の真空成膜によりガラス基板上に成膜し、次いで、フォトリソグラフィー技術によりマトリクス状に金属膜のパターンを施すことで形成される。具体的には、上記金属膜上に感光性レジストを塗布し、フォトマスクを介して紫外線を照射した後、未露光部を除去してレジストパターンを形成し、エッチング処理により金属膜にパターンを施し、レジストを剥離することによりブラックマトリクスを形成している。
【0004】
しかしながら、金属膜を用いると、ブラックマトリクスの形成に長時間を要するため生産コストが高くなりやすい。また、カラーフィルタを廃棄処理する際、そのカラーフィルタがクロムからなるブラックマトリクスを備えると、その処分方法が大きな問題となる。
【0005】
そこで、感光性樹脂に黒色顔料を加えた黒色感光性樹脂組成物を用いたブラックマトリクスの形成が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、レジストパターンの形成方法として、マスクパターンを用いることなくレジストパターンを直接描画する、いわゆる直接描画露光法が注目されている。この直接描画露光法によれば、高い生産性且つ高い解像度でのレジストパターンの形成が可能と考えられている。そして、近年、波長405nmのレーザ光を発振し、長寿命で高出力な窒化ガリウム系青色レーザ光源が光源として実用的に利用可能になってきており、直接描画露光法においてこのような短波長のレーザ光を利用することで、従来は製造が困難であった高密度のレジストパターンの形成が可能になることが期待される。このような直接描画露光法としては、Texas Instruments社が提唱したDLP(Digital Light Processing)システムを応用した方法がBall Semiconductor社から提案されており、既に、この方法を適用した露光装置の実用化が始まっている。
【0007】
更に、上記のような青色レーザ等のレーザを活性光線として用いた直接描画露光法によるレジストパターン形成を意図した感光性樹脂組成物が、これまでにもいくつか提案されている(例えば、特許文献2〜4参照。)
【特許文献1】特開平6−1938号公報
【特許文献2】特開2005−215142号公報
【特許文献3】国際公開第2005/029188号パンフレット
【特許文献4】特表2008−509967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているような黒色感光性樹脂組成物を390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)で露光した場合、感度及び解像度が十分でなかった。また、特許文献2〜4には、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)で露光した場合、優れた感度及び解像度が得られる光重合開始剤及び/又は増感剤について記載されているが、黒色顔料を含む黒色感光性樹脂組成物にこれらの光重合開始剤及び/又は増感剤を適用しても、十分な感度、解像度及び密着性が得られないことが本発明者らの検討で明らかとなった。
【0009】
そこで、本発明は、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)での露光法によるブラックマトリクスの形成において、十分な感度、解像度及び密着性が得られる黒色感光性樹脂組成物、並びにこれを用いたブラックマトリクスの形成方法、カラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤、及び、(E)黒色顔料を含有し、上記(C)光重合開始剤が、(C1)2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、及び、(C2)2−メルカプトベンゾオキサゾールを含み、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光してブラックマトリクスを形成するために用いられる、黒色感光性樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、上記特定の成分を組み合わせて構成されていることにより、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)に露光してブラックマトリクスのパターン形成を行う場合において、十分な感度、解像度及び密着性を得ることができる。上記(C1)成分のような特定の置換基を有するイミダゾール誘導体と、上記(C2)成分のようなオキサゾール誘導体とを含む光重合開始剤を用いることによって、上述のような感度、解像度及び密着性の向上効果が得られたものと本発明者らは考えている。また、本発明の黒色感光性樹脂組成物は、光重合開始剤としての(C1)及び(C2)成分と、増感剤としての(D)成分とを組み合わせて使用することにより、感度、解像度が更に相乗的に高められるとともに、基板に対する密着性も高められる。
【0012】
本発明の黒色感光性樹脂組成物において、上記(E)黒色顔料はチタンブラックを含むことが好ましい。このような黒色感光性樹脂組成物から形成されるブラックマトリクスは、光学濃度及び電気抵抗をより一層高くすることができ、遮光性に優れるものとなる。
【0013】
本発明の黒色感光性樹脂組成物において、上記(A)バインダーポリマーは、下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。これにより、本発明の黒色感光性樹脂組成物は、解像度及び密着性がより向上する。
【化1】



[式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Rは下記式(i)、(ii)又は(iii)で表されるジシクロ環又はトリシクロ環を有する1価の基を示し、Xは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、Yは単結合又は2価の有機基を示す。]
【化2】



【0014】
ここで、上記アクリル樹脂は、上記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位、並びに、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂であることが好ましい。これにより、本発明の黒色感光性樹脂組成物は、解像度及び密着性がより一層向上する。
【化3】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは単結合又は2価の有機基を示し、Zはヒドロキシル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、hは0〜5の整数を示す。hが2以上の場合、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0015】
また、上記一般式(III)において、上記Yは、下記一般式(vi)で表される2価の基であることが好ましい。これにより、本発明の黒色感光性樹脂組成物は、解像度がより一層向上する。
【化4】



[式中、m及びnはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。]
【0016】
本発明はまた、基板上に上記本発明の黒色感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、上記感光層の所定部分を390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光する露光工程と、露光した上記感光層を現像してブラックマトリクスを形成する現像工程と、を備えるブラックマトリクスの形成方法を提供する。
【0017】
かかるブラックマトリクスの形成方法によれば、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)に露光して露光工程を行う場合において、解像度及び密着性が十分に高いブラックマトリクスを形成することができる。
【0018】
本発明はまた、上記本発明のブラックマトリクスの形成方法によりブラックマトリクスを形成する工程を備える、カラーフィルタの製造方法及び上記製造方法で得られるカラーフィルタを提供する。
【0019】
上記カラーフィルタの製造方法によれば、従来よりもカラーフィルタの作製工程を簡略化することができる。さらに、このようなカラーフィルタは、上記黒色感光性樹脂組成物を用いて形成されたブラックマトリクスを備えるため、ブラックマトリクスの遮光性が十分に高く、カラーフィルタのコントラストを十分に向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光(特に波長405nmの青色レーザー)での露光法によるブラックマトリクスの形成において、十分な感度、解像度及び密着性が得られる黒色感光性樹脂組成物、並びにこれを用いたブラックマトリクスの形成方法、カラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0022】
(黒色感光性樹脂組成物)
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光してブラックマトリクスを形成するために用いられるものであって、(A)バインダーポリマー(場合により「(A)成分」という)、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(場合により「(B)成分」という)、(C)光重合開始剤(場合により「(C)成分」という)、(D)増感剤(場合により「(D)成分」という)、及び、(E)黒色顔料(場合により「(E)成分」という)を含有し、上記(C)光重合開始剤が、(C1)2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(場合により「(C1)成分」という)、及び、(C2)2−メルカプトベンゾオキサゾール(場合により「(C2)成分」という)を含むものである。以下、各成分について説明する。
【0023】
(A)バインダーポリマーは、黒色感光性樹脂組成物の解像度をより十分に向上させる観点から、上記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0024】
一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0025】
一般式(II)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは上記式(i)、(ii)又は(iii)で表されるジシクロ環又はトリシクロ環を有する1価の基を示す。また、Xは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、炭素数1〜5のアルキレン基又は炭素数1〜5のオキシアルキレン基を示すことが好ましい。
【0026】
一般式(III)において、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。また、Yは単結合又は2価の有機基を示し、炭素数1〜10のオキシアルキレン基であることが好ましく、炭素数が2以上の場合、主鎖炭素原子間に酸素原子及び/又はウレタン結合を有してもよく、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。解像度をより一層向上させる観点から、Yが上記一般式(vi)で表される2価の基であることがより好ましい。式(vi)中、m及びnはそれぞれ独立に1〜20の整数を示し、1〜5の整数を示すことが好ましい。
【0027】
上記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成法は特に限定されないが、例えば、下記に示す方法A、B又はCにより得ることができる。
【0028】
(方法A)
一般式(I)で表される繰り返し単位を形成するための(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーa」という)、一般式(II)で表される繰り返し単位を形成するための(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーb」という)及び一般式(III)で表される繰り返し単位を形成するためのジ(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーc」という)を共重合する。
【0029】
(方法B)
上記モノマーa、上記モノマーb及び下記一般式(V)で表されるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーd」という)を共重合し、ポリマー主骨格を構築する。次いで、モノマーdと同モル数の下記一般式(VI)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーe」という)とポリマー主骨格のヒドロキシル基とを反応させ、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を形成する。
【0030】
【化5】



ここで、Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数1〜8の直鎖アルキレン基又は脂環式アルキレン基を示す。
【0031】
【化6】



ここで、Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数1〜8の直鎖アルキレン基又は脂環式アルキレン基を示す。
【0032】
(方法C)
上記モノマーa、上記モノマーb及び下記一般式(VII)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーf」という)を共重合し、ポリマー主骨格を構築する。次いで、モノマーfと同モル数の(メタ)アクリル酸とポリマー主骨格のエポキシ基と反応させ、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を形成する。
【0033】
【化7】



ここで、Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数1〜8の直鎖アルキレン基又は脂環式アルキレン基を示す。
【0034】
しかしながら、これら方法A、B及びCのうち、方法B又はCによって上述のアクリル樹脂を合成することが好ましい。これにより、重合反応の制御が一層容易となり、得られるポリマーのゲル化をより有効に制御することができる。
【0035】
モノマーaとしては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。モノマーaの含有割合は、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成に用いられるモノマー総量を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。モノマーaの含有割合が5質量%未満では、アルカリ現像性が低下し、精細な画素パターンを得られ難くなる。モノマーaの含有割合が50質量%を超えると、黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなり取り扱い難くなると共に、アルカリ現像時にブラックマトリクスが剥離しやすくなる。
【0036】
モノマーbとしては、例えば、上記式(i)、(ii)又は(iii)で表されるジシクロ環又はトリシクロ環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このモノマーは、ジシクロ環又はトリシクロ環の一方のみを有してもよく、両方を有していてもよい。具体的には、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。特に、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート等のトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、又はトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂が有効である。これらのモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
モノマーbの含有割合は、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成に用いられるモノマー総量を基準として、3〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。モノマーbの含有割合が3質量%未満では、バインダーポリマーの透明性が低下し、光感度が低下する傾向がある。モノマーbの含有割合が70質量%を超えると、黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなり取り扱い難くなる。
【0038】
モノマーcとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0039】
方法Bで用いられるモノマーdとしては、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル化合物であれば特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。また、モノマーeとしては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物であれば、特に限定されず、例えば、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0040】
方法Cで用いられるモノマーfとしては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル化合物であれば特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。モノマーc、モノマーd及び/又はモノマーfの含有割合は、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成に用いられるモノマー総量を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。5質量%未満では、パターン形成時間が遅くなり、本発明の効果を奏し難くなり、50質量%を超えると、黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなり、さらに、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の溶解性が低下する傾向にある。
【0041】
密着性を向上させる観点から、(A)バインダーポリマーは、上記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位並びに上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0042】
一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成法は特に限定されないが、上記一般式(IV)で表される繰り返し単位を形成するための(メタ)アクリル化合物(以下、「モノマーg」という)を更に共重合することにより得られる。合成方法は、上記方法A、B及びCに準じて行なうことができる。
【0043】
モノマーgとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−ω−トリルオキシポリオキシエチレン、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル=アクリラート、2−tert−ブチル−6−〔1−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル=アクリラートが挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。モノマー(g)の含有割合は、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の合成に用いられるモノマー成分総量を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。モノマーgの含有割合が5質量%未満では、形成するブラックマトリクスの解像度が低くなる傾向がある。モノマーgの含有割合が50質量%を超えると、形成するブラックマトリクスの密着性が低下する傾向がある。
【0044】
また、上記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂は、必要に応じて、上述したモノマーa、b、c、d、f又はgに加えて、その他の(メタ)アクリル化合物をモノマー成分として共重合してもよい。その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
さらに、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂は、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸に加えて、その他のカルボキシル基を有する重合性化合物をモノマー成分として共重合してもよい。このような重合性化合物としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸又はα−クロロアクリル酸が挙げられる。
【0046】
なお、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂は、それぞれの繰り返し単位のランダム共重合体、ブロック共重合体又は交互共重合体のいずれであってもよい。
【0047】
一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の重量平均分子量は、3000〜200000が好ましく、3000〜100000がより好ましく、5000〜50000が更に好ましい。重量平均分子量が3000未満では、耐アルカリ性が低下する傾向があり、重量平均分子量が200000を超えると、黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなるため、特に黒色感光性樹脂組成物をスピンコートする際の塗布性が低下する傾向がある。
【0048】
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)分析により下記条件に従って測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。
(GPC条件)
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)
検出器:L−3300RI((株)日立製作所製、商品名)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
【0049】
また、(A)バインダーポリマーは上記アクリル樹脂に加えて、他のアクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等の1種以上の樹脂を含むことができる。
【0050】
一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の含有割合が5質量%未満では現像時に形成されたブラックマトリクスが剥離しやすくなる傾向がある。一方、一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂の含有割合が50質量%を超えると黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなるため、特に、黒色感光性樹脂組成物をスピンコートする際の塗布性が低下する傾向がある。
【0051】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(以下、「ECH」と表記する)変性ブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下、「EO」と表記する)変性ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ECH変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下、「PO」と表記する)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0053】
また、現像後の解像度を向上できる観点から、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物に対する(A)バインダーポリマーの質量比(以下、「ポリマー/モノマー比」ということもある。)は、0.5〜2.5であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましい。
【0054】
(C)光重合開始剤としては、(C1)成分として2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾールを、(C2)成分として2−メルカプトベンゾオキサゾールをそれぞれ用いる。
【0055】
また、黒色感光性樹脂組成物は、本発明の種々の特性を損ねない程度に、上記(C1)及び(C2)成分以外の光重合開始剤を(C)成分として含有しても良い。上記(C1)及び(C2)成分以外の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−12−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン−1、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[O−(エトキシカルボニル)オキシム]等が挙げられる。
【0056】
(C1)成分の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、3〜8質量%であることがより好ましい。(C1)成分の含有割合が1質量%未満では、黒色感光性樹脂組成物の光感度が低くなる傾向があり、10質量%を越えると黒色感光性樹脂組成物からなる感光層の密着性が低下する傾向がある。
【0057】
(C2)成分の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、0.4〜1.6質量%であることが好ましく、0.6〜1.4質量%であることがより好ましい。(C2)成分の含有割合が0.4質量%未満では、黒色感光性樹脂組成物の光感度が低くなる傾向があり、1.6質量%を越えると黒色感光性樹脂組成物からなる感光層の密着性が低下する傾向がある。
【0058】
(D)増感剤としては、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンなどが挙げられる。これらの(D)増感剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
(D)成分の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、0.4〜1.6質量%であることが好ましく、0.6〜1.4質量%であることがより好ましい。(D)成分の含有割合が0.4質量%未満では、黒色感光性樹脂組成物の光感度が低くなる傾向があり、1.6質量%を越えると黒色感光性樹脂組成物からなる感光層の密着性が低下する傾向がある。
【0060】
(E)黒色顔料としては,無機顔料及び有機顔料のいずれでもよく、1種を単独で又は2種以上の顔料を混合したものを用いてもよい。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンカーボン、チタンブラック、二酸価マンガン、銅クロムマンガン酸化物を挙げることができる。着色力を向上する観点から、カーボンブラック又はチタンブラックが好ましい。さらに、光学濃度及び電気抵抗値を大きくできる観点から、チタンブラックがより好ましい。また、表面を樹脂等で被覆したカーボンブラック又はチタンブラックを使用することもできる。
【0061】
(E)黒色顔料の含有割合は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料の総量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。黒色顔料の含有割合が20質量%未満では光学濃度が低くなる傾向にあり、80質量%を超えると光感度が低下する傾向にある。
【0062】
(E)黒色顔料の種類及び含有割合は、ブラックマトリクスの光学濃度が2〜5になるように調整されることが好ましい。さらに、遮光性の観点から、光学濃度が3〜5になるように調整されることがより好ましい。ブラックマトリクスの光学濃度が2未満では遮光性が低下する傾向にあり、5を超えると黒色感光性樹脂組成物の現像性及び密着性が低下し、現像時に形成したブラックマトリクスが剥離しやすくなる傾向がある。ここで、光学濃度は、例えば、デンシトメータ「PDA−65」(コニカ社製、商品名)で測定することができる。
【0063】
黒色感光性樹脂組成物の取り扱い性及び黒色顔料の分散性の観点から、黒色感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤を含有することにより、黒色感光性樹脂組成物は、ブラックマトリクス形成用感光液として使用することができる。このような感光液は取り扱い性に優れ、ブラックマトリクスを形成するために好適に用いることができる。
【0064】
有機溶剤としては、例えば、ケトン化合物、アルキレングリコールエーテル化合物、アルコール化合物、芳香族化合物などが挙げられる。具体的には、ケトン化合物として、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。アルキレングリコールエーテル化合物として、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。アルコール化合物として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール等が挙げられる。芳香族化合物として、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。その他として、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
有機溶剤は、本発明に係る黒色感光性樹脂組成物中の全固形分が5〜50質量%になるように用いられることが好ましい。全固形分が50質量%を超えると粘度が高くなり、塗布性が悪くなる傾向がある。全固形分が5質量%未満では粘度が低くなり、塗布性が悪くなる傾向がある。
【0066】
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、暗反応を抑制するための熱重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等)、基板との密着性を向上させるためのチタネートカップリング剤(ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を有したシランカップリング剤やイソプロピルトリメタクリロイルチタネート、ジイソプロピルイソステアロイル−4−アミノベンゾイルチタネート等)、膜の平滑性を向上させるための界面活性剤(フッ素系、シリコン系、炭化水素系等)、紫外線吸収剤又は酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0067】
黒色感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤及び(E)黒色顔料を有機溶剤中で混合/分散する分散工程により調製することができる。
【0068】
分散方法としては、超音波分散機、3本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ホモジナイザー、ニーダー等の分散/混練装置を用いる公知の方法が挙げられる。
【0069】
分散工程において、まず、(A)バインダーポリマー、(E)黒色顔料及び有機溶剤を上述の装置を用いて混合/分散し、(E)黒色顔料を(A)バインダーポリマー溶液中に均一に分散させることが好ましい。
【0070】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤及び(D)増感剤は、(A)バインダーポリマーと一緒に(E)黒色顔料分散時に添加してもよく、(E)黒色顔料が分散した後に添加してもよい。
【0071】
(A)バインダーポリマーは、その全量を(E)黒色顔料と共に混合してもよく、その一部を(E)黒色顔料と共に混合し、残りを(E)黒色顔料が分散した後に添加してもよい。ただし、(E)黒色顔料分散時の(A)バインダーポリマーの添加量は、(E)黒色顔料100質量部に対し、20質量部以上であることが好ましい。(A)バインダーポリマーの添加量が20質量部未満では、(E)黒色顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
【0072】
同様に、有機溶剤も(E)黒色顔料分散時にその全量を添加してもよく、有機溶剤の一部を(E)黒色顔料分散時に添加し、残りを(E)黒色顔料が分散した後に添加してもよい。ただし、(E)黒色顔料分散時に添加する有機溶剤の添加割合は、分散時の(E)黒色顔料及び(A)バインダーポリマーの総量100質量部に対して、少なくとも100質量部であることが好ましい。この有機溶剤の添加割合が100質量部未満では分散時の粘度が高くなるため、特にボールミル、サンドミル、ビーズミルで分散する場合、(E)黒色顔料を分散し難くなる。
【0073】
上記(E)黒色顔料の分散時に、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ポリスルホン型高分子活性剤等のアニオン系顔料分散剤;ポリオキシエチレン・ポリプロピレンブロックポリマー等の顔料分散剤;アントラキノン系、ペリレン系、フタロシアニン系、キナクリドン系等の有機顔料にカルボキシル基、スルホ基、スルホン酸塩基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、ヒドロキシル基等の官能基を有する有機顔料の誘導体を添加することができる。これにより、(E)黒色顔料の分散性及び分散安定性が向上する。分散剤の添加割合は、(E)黒色顔料100質量部に対して50質量部以下で用いることが好ましい。
【0074】
(ブラックマトリクスの形成方法)
本発明のブラックマトリクスの形成方法は、上述した黒色感光性樹脂組成物からなる感光層に、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する活性光線を照射した後、感光層の一部を除去してブラックマトリクスを得るものである。
【0075】
より具体的に説明すると、このブラックマトリクスの形成方法は、黒色感光性樹脂組成物からなる感光層を基板上に積層する感光層形成工程と、積層された感光層の所定部分に390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する活性光線を照射する露光工程と、活性光線を照射した感光層を現像してブラックマトリクスを形成する現像工程と、を備える方法である。
【0076】
感光層形成工程では、黒色感光性樹脂組成物を直接基板上に塗布又は印刷することによって感光層を形成する。あるいは、黒色感光性樹脂組成物を一旦、別の支持体上に塗布又は印刷して感光層を形成した後、その感光層を基板上に転写して、基板上に感光層を積層する。
【0077】
黒色感光性樹脂組成物が流動性を有する場合、黒色感光性樹脂組成物をそのまま感光層を形成するために用いることができる。しかしながら、取り扱い性の観点から、黒色感光性樹脂組成物に有機溶剤を添加して低粘度化させて感光液として用いることが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物が有機溶媒を含有する場合であっても、有機溶剤を更に添加して、所定の粘度に調整してから使用することも可能である。添加する有機溶剤としては、上述した有機溶剤と同様のものを用いることができる。
【0078】
黒色感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ホエラーコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコーティング法、エアナイフコーティング法が挙げられる。また、黒色感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の除去は、例えば、加熱により行うことができる。その場合の加熱温度は50〜130℃であると好ましく、加熱時間は1〜30分間であると好ましい。
【0079】
また、塗布によって感光層を形成する他に、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法により感光層を形成することもできる。
【0080】
支持体上に感光層を形成した後の基板上への感光層の積層方法としては、基板上に感光層面を重ねて感光層を加熱しながら基板に圧着することにより積層する方法が挙げられる。また、密着性及び追従性を向上させる観点から、減圧下で積層することが好ましい。なお、支持体は、基板に感光層を転写してから剥離することが好ましい。
【0081】
感光層の厚さは、用途によって適宜設定することができ、例えば、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。感光層の厚さが0.1μm未満であると、所望の厚さに塗布し難くなる傾向にあり、一方、10μmを超えるとブラックマトリクスの密着性及び解像度が低下する傾向がある。
【0082】
支持体としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエステルフィルムを用いることができる。
【0083】
基板は、用途により適宜選択され、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス板;ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製シート、フィルム又は板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属板;その他セラミック板;光電変換素子を有する半導体基板が挙げられる。
【0084】
露光工程では、基材上の感光層の所定部分に390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する活性光線を照射し、照射部分を硬化させて露光部を形成する。この際、感光層上に支持体が存在する場合、支持体が透明なら、そのまま、活性光線を照射することができ、支持体が活性光線に対して遮光性を示すなら、支持体を除去した後に、活性光線を感光層に照射する。一方、感光層を基板上に直接形成した場合には、そのまま、活性光線を照射することができる。また、感光層表面にポリビニルアルコール等の酸素遮断膜を0.5〜30μmの厚みで形成した後、その上から活性光線を照射することもできる。
【0085】
露光工程において感光層を露光する方法としては、レーザー直接描画露光法及びDLP露光法等の直接描画露光法により感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる方法が挙げられる。
【0086】
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピーク(最大発光強度)を有する光(特に波長405nmの単色光)に露光してレジストパターンを形成するために用いられるものである。
【0087】
390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光としては、390nm以上440nm未満のレーザ光を発振する半導体レーザを光源とする光が挙げられ、このような半導体レーザとしては、窒化ガリウム系の青色レーザを好適に用いることができる。特に、直接描画露光法でレジストパターンを形成することが容易である点で、半導体レーザを光源として用いることが好ましい。また、日立ビアメカニクス社製、「DE−1AH」(商品名)等のデジタルダイレクト露光機を用いてもよい。
【0088】
また、半導体レーザーの代替評価として、高圧水銀灯等の水銀灯を光源とする光のうち波長365nm以下の光を99.5%以上カットした活性光線(例えばh線)を、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光として用いることができる。波長365nm以下の光をカットするためのフィルタとしては、シグマ光機社製シャープカットフィルタ「SCF−100S−39L」(製品名)、朝日分光社製分光フィルタ「HG0405」(製品名)などが挙げられる。このように波長365nm以下の光をカットした活性光線を用いる場合、この活性光線を感光層の所定部分に照射する方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化する方法が挙げられる。
【0089】
現像工程においては、現像液を直接感光層に吹き付けるか、あるいは現像液に感光層を浸漬することによって、感光層の未露光部を除去する。現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液及び有機溶剤を用いることができる。これらのうち、アルカリ性水溶液が安全かつ安定であり、操作性が良好であることから特に好ましい。
【0090】
アルカリ性水溶液の現像液における塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩が挙げられる。また、アルカリ性水溶液の現像液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることがより好ましい。さらに、アルカリ性水溶液のpHは、9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を添加してもよい。
【0091】
水系現像液としては、水又はアルカリ水溶液と1種以上の有機溶剤とからなるものが挙げられる。ここで、アルカリ水溶液の塩基としては、上記の塩基以外に、例えば、ホウ砂やメタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリンが挙げられる。有機溶剤としては、例えば、三アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0092】
水系現像液は、有機溶剤の濃度を2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。さらに、水系現像液のpHは、ブラックマトリクスの現像が十分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、具体的には、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量添加してもよい。
【0093】
有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
【0094】
こうして、画像に対応した所望のパターンを有するブラックマトリクスを基板上に形成することができる。現像後、形成したブラックマトリクスをより強固に硬化させるため、後加熱(ポストベーク)を行うことが好ましい。この場合、加熱温度は60〜280℃が好ましく、加熱時間は1〜60分間が好ましい。
【0095】
(カラーフィルタの製造方法及びカラーフィルタ)
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述のブラックマトリクスの形成方法によりブラックマトリクスを形成する工程を備える。このカラーフィルタの製造方法において、ブラックマトリクスを形成する工程を上記工程とする以外は、公知と同様の方法によって、カラーフィルタを製造すればよい。こうして、本発明に係るカラーフィルタが得られる。このようなカラーフィルタは、ブラックマトリクスの遮光性が高いため、コントラストを十分に向上できる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0097】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
[実施例1〜5及び比較例1〜7]
(1)バインダーポリマーの合成
(合成例)
1Lの四つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート240gを入れ、窒素をバブリングしながら液温を120℃に保ち、溶液aとした。次いで、1Lビーカーにジシクロペンタニルアクリレート170g、ベンジルメタクリレート20g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30g及びメタクリル酸40gを入れ、窒素をバブリングしながら溶解させ、溶解後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2gを加え、溶液bとした。次に、溶液bを120℃に保たれている溶液aへ2時間かけて滴下し、滴下終了後、120℃で2時間反応を行った。
【0099】
上記120℃での反応中、反応溶液へ2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gに溶解した溶液を数回に分けて添加した。次いで、140℃まで反応溶液の液温を上昇させ、140℃で1時間保持した後、自然冷却した。その後、ジブチルスズジラウリレート0.1g、2−イソシアネートエチルメタクリレート30g及びメチルハイドロキノン0.6gを反応溶液に加えた。更に、75℃で2時間撹拌し、乳酸メチル120gで希釈して樹脂Aの溶液(固形分35質量%)を得た。
【0100】
(2)黒色感光性樹脂組成物の調製
下記表1に示す各成分を同表に示す量(g)で配合し、ホモジナイザー(PRIMIX社製、商品名「ROBOMICS」)で1時間撹拌混合して、実施例及び比較例の黒色感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0101】
【表1】



【0102】
なお、表1中のバインダーポリマー以外の各成分は、市販のものが入手可能である。各成分の詳細は以下の通りである。
市販の光重合性化合物((B)成分)としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、製品名「DPHA」)。
市販の光重合開始剤((C)成分)としては、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(Hampford社製、製品名「B−CIM」)((C1)成分)、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体(黒金化成社製、サンプル名「MMF−HABI」)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(チバ・ジャパン社製、製品名「IRGACURE oxe−02」)。
他の市販の光重合開始剤((C)成分)としては、2−メルカプトベンゾオキサゾール(東京化成社製)((C2)成分)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成社製)、2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成社製)、N−フェニルグリシン(東京化成社製)。
市販の増感剤((D)成分)としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ALBEMARLE社製、製品名「FIRSTCURE DEAB」、最大吸収波長365nm)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、製品名「KAYACURE DETX−S」、最大吸収波長385nm)、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン(日本化学工業社製、製品名「NF−EO」、最大吸収波長386nm)。
市販の黒色顔料((E)成分)としては、チタンブラック顔料分散液(ジェムコ社製、製品名「BT−1HCA」、固形分40質量%)。
市販の添加剤としては、シリコン系添加剤(ビックケミー社製、製品名「BYK−301」)。
【0103】
(3)ブラックマトリクスの形成
実施例及び比較例で得られた黒色感光性樹脂組成物をそれぞれガラス基板(日本板硝子社製、商品名「フロート板硝子」)上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥を行い、膜厚1.25μmの感光層を形成した。上記感光層に、波長365nm以下の光をカットするフィルタ(シグマ光機社製、製品名「SCF−100S−39L」、及び所定パターンを有するフォトマスクを介し、超高圧水銀灯により露光量200mJ/cmの露光を行った。次いで、5%濃度の水系現像液(横浜油脂工業社製、商品名「セミクリーンDL−A4」)で現像後、230℃で30分間熱硬化し、膜厚1.0μmの所定パターンを有するブラックマトリクスを形成した。
【0104】
(4)ブラックマトリクスの評価
上記ブラックマトリクスの解像度、現像性、密着性及び感度を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0105】
<解像度>
解像度評価用ネガとしてライン幅が10μm、スペース幅が90μmとなるパターンを有する石英ネガマスクを用い、上記の「(3)ブラックマトリクスの形成」と同様の操作を行い、ブラックマトリクスを形成した。露光後の現像によって形成されたブラックマトリクスにおいて、最小現像時間から10秒間現像後、未露光部がきれいに除去された部分におけるライン幅を測定し、これを解像度の指標とした。解像度の評価は数値が10に近いほど良好な値である。なお、比較例1〜7の黒色感光性樹脂組成物を用いた場合、最小現像時間から10秒以内でパターン剥離となり、パターン形成不可であった。
【0106】
<現像性>
上記の「(3)ブラックマトリクスの形成」において、感光層を超高圧水銀灯により露光量200mJ/cmで露光した後、上記水系現像液を0.1274MPa(1.3kgf/cm)の圧力でスプレー噴霧し、ライン幅10μmのブラックマトリクスのパターンが形成される時間(秒)(最小現像時間)を測定した。この時間が短いほど現像性に優れる。
【0107】
<密着性>
上記の「(3)ブラックマトリクスの形成」において、感光層を超高圧水銀灯により露光量200mJ/cmで露光した後、上記水系現像液を0.1274MPa(1.3kgf/cm)の圧力でスプレー噴霧し、形成したライン幅10μmのブラックマトリクスのパターンが剥離し流れだす時間(秒)(最小現像時間からパターンが剥離するまでの時間)を測定した。この時間が長いほど密着性に優れる。なお、比較例1〜3及び7では、パターン形状が現れるのとほぼ同時に、パターンごと感光層全体が剥離した。
【0108】
<感度>
上記の「(3)ブラックマトリクスの形成」において、感光層を超高圧水銀灯により露光量200mJ/cmで露光した後、上記水系現像液を0.1274MPa(1.3kgf/cm)の圧力でスプレー噴霧し、最小現像時間から10秒経過後に、10μmのブラックマトリックスパターンが形成されたものを「A」、パターンが剥離し流れてしまったものを「B」とした。
【0109】
【表2】



【0110】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜5で得られた黒色感光性樹脂組成物を用いることで、従来パターン形成ができなかった、365nm以下の短波長の光を含まない光反応でも、ブラックマトリクスを形成できることが確認された。
【0111】
また、実施例1〜3の結果から、(D)増感剤として405nm付近の波長に吸収をほとんど持たない化合物(例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン)を用いても、(C)光重合開始剤として、(C1)2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾールと、(C2)2−メルカプトベンゾオキサゾールとを組み合わせて用いることにより、390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有し、且つ365nm以下の短波長の光を含まない光を用いた光反応でも、ブラックマトリクスを形成できることが確認された。
【0112】
逆に、比較例7の結果から、(D)増感剤として405nm付近の波長に吸収を持つ化合物である1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンを用いても、(C2)成分として2−メルカプトベンゾオキサゾールを含有しないと、十分な感度が得られないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)増感剤、及び、(E)黒色顔料を含有し、
前記(C)光重合開始剤が、(C1)2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、及び、(C2)2−メルカプトベンゾオキサゾールを含み、
390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光してブラックマトリクスを形成するために用いられる、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)黒色顔料がチタンブラックを含む、請求項1に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)バインダーポリマーが、下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂を含む、請求項1又は2に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【化1】



[式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Rは下記式(i)、(ii)又は(iii)で表されるジシクロ環又はトリシクロ環を有する1価の基を示し、Xは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、Yは単結合又は2価の有機基を示す。]
【化2】



【請求項4】
前記アクリル樹脂は、前記一般式(I)、(II)及び(III)で表される繰り返し単位、並びに、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有するアクリル樹脂である、請求項3に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【化3】



[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは単結合又は2価の有機基を示し、Zはヒドロキシル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、hは0〜5の整数を示す。hが2以上の場合、複数のZは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記Yが、下記一般式(vi)で表される2価の基である、請求項3又は4に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【化4】



[式中、m及びnはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。]
【請求項6】
基板上に請求項1〜5のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する感光層形成工程と、
前記感光層の所定部分を390nm以上440nm未満の波長範囲内にピークを有する光に露光する露光工程と、
露光した前記感光層を現像してブラックマトリクスを形成する現像工程と、
を備えるブラックマトリクスの形成方法。
【請求項7】
請求項6記載のブラックマトリクスの形成方法によりブラックマトリクスを形成する工程を備える、カラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載のカラーフィルタの製造方法により得られるカラーフィルタ。

【公開番号】特開2010−122381(P2010−122381A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294687(P2008−294687)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】