説明

黒色溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき

【課題】 溶融亜鉛めっきより、耐食性および耐摩耗性に優れ、黒色化処理でより黒く明暗のムラがない表面処理の方法を得ること、その方法で表面処理した物を生産すること。
【解決手段】 最初に、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをする。めっきは鋼材を、溶融亜鉛−アルミニウム合金に浸漬してめっきする1浴法か、溶融亜鉛めっき後、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをする2浴法でする。次に黒色化処理をする。黒色化処理は、要求の明度が高い薄い黒色の場合はりん酸亜鉛処理をする。要求の明度が低い濃い黒色の場合は、りん酸亜鉛処理に追加して黒染め処理をして狙いの黒さ(明度)にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛合金めっきおよびその表面処理に属す。
【背景技術】
【0002】
道路の側溝のふたに使われるグレーチング、道路標識や照明の支柱、ガードレール、水管橋などの土木建築に使われる鉄鋼材料は、耐候性、耐食性などのために溶融亜鉛めっきが賞用されている。しかし、溶融亜鉛めっきには次のような新しい要望が生じている。
要望の例として、道路の側溝のグレーチングについては次のようなことがある。融雪剤で腐食されるので耐食性を上げて欲しい。人や車に踏まれるので耐摩耗性に優れているのが望ましい。新設した時は金属光沢で時間が経つと白っぽい灰色になるが、町の景観に合わない。特に、カラーコンクリートの道路には暗い灰色や黒色がよいが、黒色化処理をしても結晶のムラが明暗の模様になり品質が悪いと思われてしまう。
このようなことから、これらの要望に応じられる方法や物が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶融亜鉛めっきより、耐食性および耐摩耗性に優れ、黒色化処理でより黒く明暗のムラがない表面処理の方法を得ること、その方法で表面処理した物を生産すること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
最初に、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをする。めっきは鉄鋼材料を、溶融亜鉛−アルミニウム合金に浸漬してめっきする1浴法か、溶融亜鉛めっき後、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをする2浴法でする。次に黒色化処理をする。黒色化処理は、要求の明度が高い薄い黒色の場合はりん酸亜鉛処理をする。要求の明度が低い濃い黒色の場合は、りん酸亜鉛処理に追加して黒染め処理をして狙いの黒さ(明度)にする。
【発明の効果】
【0005】
上述の溶融亜鉛めっきの課題を解決できる。即ち、溶融亜鉛めっきではなく溶融亜鉛−アルミニウム合金を採用したことにより、塩害に優れ、めっきの硬度が高く耐摩耗性がよく、酸化皮膜が濃い灰色になり、黒色化処理が容易で明度が低くムラがないなど、溶融亜鉛めっきの課題が全面的に解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきの方法は、1浴法と2浴法がある。1浴法は下に述べる2浴法の1浴を省いた方法である。2浴法は工程が増えるがめっきのつきが良い。以下、2浴法について説明する。
めっきする鉄鋼材料は、脱脂、錆除去のため酸洗をしてフラックス処理をする。この物を溶融亜鉛めっきし(以下、1浴という)、次に溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをする(以下、2浴という)。1浴は高純度亜鉛浴で、2浴は高純度亜鉛に5%(4〜6%の範囲)のアルミニウムと1%(0.8〜1.3%の範囲)のマグネシウムを加えた合金浴である。
【0007】
2浴法の1浴の溶融亜鉛めっきは、次のような働きをする。溶融亜鉛は素地の鉄に対し濡れ性がよく、鉄−亜鉛合金層を形成しめっきのつきを良くする。この合金層の上についた表面の亜鉛層は、2浴で溶融して2浴の合金と混じり合金成分のアルミニウムおよびマグネシウムの拡散を助ける。その結果2浴後のめっき層は、表層が亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金、表層と鉄素地の間は、鉄−亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金になる。
この合金めっき層が上述の発明の効果を生み出すのであるが、特に溶融亜鉛めっきより灰色が濃くなること、結晶が細かく結晶模様が目立たないこと、黒色化処理で黒色が濃くなり明暗のムラが目立たないことなどが商品価値を高めるのに役立つ。
【0008】
黒色化処理は、顧客の要求明度により処理法が次のように別れる。
要求明度が高い薄い黒色の場合(明度が約2.5以上)はりん酸亜鉛処理をする。めっき品の温度がりん酸亜鉛薬液の温度近くまで冷えたならば薬液に浸漬する。化成皮膜が形成され要求明度になったならば湯洗をして終わる。
要求明度が低く、りん酸亜鉛処理では黒さが不足する場合(明度が約3.5以下)は、追加して黒染め処理をする。要求明度になったならば湯洗をして終わる。
黒色化処理は、明度が温度と浸漬時間で変わるので、見本と比較して狙いの明度にする。
【0009】
上述は基本的な工程で、条件によって工程の省略や追加が必要になる。
めっきする物に油脂が着いていない場合は脱脂工程が、錆がないか錆が除去されている場合は酸洗工程が省略できる。
めっき後りん酸亜鉛処理の前に、運搬、貯蔵などで表面に油脂が着いたり酸化皮膜が生じたりした場合は、油脂や酸化皮膜の除去工程が必要になる。また、必要に応じてりん酸亜鉛処理の反応を容易にする薬剤処理を追加する。
めっき後冷却して室温になっている物をりん酸亜鉛処理液に浸漬すると液温が下がるので、液温を保つための加熱が必要になる。
【実施例】
【0010】
グレーチング、交通標識の支柱などを、めっきは2浴法で、黒色化は明度3.5を狙い(明度の範囲は4〜2.5)りん酸亜鉛処理で生産した。ロット内の明度の範囲は3.6〜2.7(最大と最少の差0.9)、1個の中の明度の差は0.8で、明度のばらつきは狭く、明度のムラが目立たなかった。
黒染め処理を追加する必要がある明度は、グレーチングの生産では2.5以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0011】
土木建築関係や配管関係で溶融亜鉛めっきが使われている物は、必要に応じて本発明の物に変わっていく。また、塗装していた物も必要に応じ本発明の物に変わっていく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初に溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをし、次にりん酸亜鉛処理をし、更に必要あれば黒染め処理をすることを特徴とする表面処理法。
【請求項2】
最初に溶融亜鉛めっきをし、続いて溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきをし、次にりん酸亜鉛処理をし、更に必要あれば黒染め処理をすることを特徴とする表面処理法。
【請求項3】
請求項1または請求項2で表面処理をしたことを特徴とする溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき品。

【公開番号】特開2012−197501(P2012−197501A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84899(P2011−84899)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】