説明

黒色磁性酸化鉄粒子粉末

【課題】 本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、黒色であることから、塗料用、樹脂用、印刷インキ等の黒色着色顔料として好適であり、また、高電圧領域で抵抗が高く、吸湿性が低く、さらに分散性に優れていることにより磁性トナー用の黒色磁性粒子として用いた場合には、高温高湿環境下における画像濃度が高いトナーを構成できる。
【解決手段】 黒色磁性酸化鉄粒子の平均粒子径が0.05μm〜2.0μmであり印加電圧100Vの電気抵抗値が1×10Ω・cm以上である黒色磁性酸化鉄粒子粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、黒色であることから、塗料用、樹脂用、印刷インキ等の黒色着色顔料として用いることができ、また、電気特性、吸湿性、分散性に優れていることにより磁性トナー用の黒色磁性粒子として用いた場合には、高温高湿環境下における画像濃度が高いトナーを構成できる。
【背景技術】
【0002】
マグネタイト粒子粉末は、代表的な黒色顔料であり、塗料用、印刷インク用、化粧品用、ゴム・樹脂組成物等の着色剤として古くから汎用されている。
【0003】
特に、マグネタイト粒子粉末は樹脂中にマグネタイト粒子粉末等の黒色磁性酸化鉄粒子粉末を混合分散させた複合体粒子を現像材として用いる一成分系磁性トナーに多用されている。
【0004】
近時、レーザービームプリンターやデジタル複写機の高速化や高画質化に加えて、多彩な環境での使用を可能にした装置の開発に伴って、現像剤である磁性トナーの特性の向上、特に高温高湿環境下における画像濃度の維持性が良いトナーが強く要求されている。
【0005】
そこで、黒色磁性酸化鉄粒子粉末についても前記磁性トナーに対する要求を満足させるために、更に一層の特性改善が強く望まれている。
【0006】
即ち、環境安定性、特に、高温高湿環境下における画像濃度の維持性に優れたトナーを得る為には、黒色磁性酸化鉄粒子粉末が十分な抵抗値を有すなどの電気的特性がより優れており、しかも、吸湿性が低く環境安定性に優れており、さらに分散性に優れていることが要求されている。
【0007】
この理由は、トナー画像の形成過程において、トナー粒子が感光体上の潜像に飛ばされる際にはトナー粒子に静電引力と磁気拘束力の合力である鏡像力が働き、この強さを微妙に制御することによって画像濃度を制御していることに起因する。
即ち、トナー粒子の抵抗値が高いと帯電性能が向上し、感光体上へ飛びやすく画像濃度が高くなる。
【0008】
このトナー粒子の帯電性能を制御するためには、通常、帯電制御剤の使用が上げられるが、他の手段のひとつとして、トナー粒子表面に露出した顔料成分である磁性酸化鉄粒子の電気抵抗値を制御する方法がある。即ち、トナー粒子表面に露出した磁性酸化鉄粒子の電気抵抗値が高いと、トナー粒子として帯電しやすく、逆にその磁性酸化鉄粒子の電気抵抗値が低いと、トナーホッパー中での攪拌により帯電したトナー粒子表面の静電気がトナー粒子表面に露出した磁性酸化鉄粒子を通して逃げる挙動をすることで結果としてトナー粒子の帯電量は低くなる。
【0009】
これらの現象は現像装置がさらされる環境雰囲気、特に、高温高湿環境下において著しくなる。即ち、一般的に高温高湿環境下においてはトナーの帯電性能は低くなりやすいために結果として画像濃度が低くなりやすい。
【0010】
従って、黒色磁性酸化鉄粒子粉末の電気特性および吸湿性を制御することは、トナー粒子の顔料として黒色磁性酸化鉄粒子粉末を用いる場合、高画像濃度の画像を得る為には非常に重要な意味をもつ。
【0011】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の抵抗値は、マグネタイトが一般的には半導体の電気特性をもつことから黒色磁性酸化鉄粒子表面に湿式または乾式で高抵抗成分(高抵抗酸化物・水酸化物・誘電性有機物・疎水性有機物等)を被覆または付着させることで高い抵抗値を有する粉末が得られることが一般的に知られている。
【0012】
従来、黒色磁性酸化鉄粒子中に鉄以外の異種元素を含有させることおよび黒色磁性酸化鉄粒子表面を無機物または有機物で被覆することによって諸特性を向上させる試みがなされている。
【0013】
例えば、特許文献1(特開2002−72545号公報)には、アルミニウムと鉄の複合酸化鉄が粒子表面に存在する酸化鉄粉末が開示されており、また、特許文献2(特開2005−289673号公報)には、1種または2種以上の鉄以外の元素の化合物を含む被覆層を有するマグネタイト粒子において乾式のメカノケミカル処理を行ったマグネタイト粒子が開示されている。
また、特許文献3(特開2007−314412号公報)には、粒子表面がアルカリ土類金属のうち少なくとも1種類とAl元素との化合物からなる表面層によって被覆されている黒色磁性酸化鉄が開示されている。
また、特許文献4(特開平7−110598号公報)には、粒子表面にシリカとアルミナの共沈物が付着しているマグネタイト粒子粉末が開示されている。
【0014】
【特許文献1】特開2002−72545号公報
【特許文献2】特開2005−289673号公報
【特許文献3】特開2007−314412号公報
【特許文献4】特開平7−110598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
高電圧領域で抵抗が高く、吸湿性が低く、さらに分散性に優れた黒色磁性酸化鉄粒子粉末は現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0016】
即ち、前出特許文献1乃至2記載の従来技術は、粉体の電気抵抗値に着目した技術である。しかしながら、実際にトナーが使用される印刷機内部でトナー粒子に印加される電場は、装置によっても異なるが、一般的に高い電場であり、高電場での電気抵抗は、後述する比較例に示すように、未だ十分とは言い難いものである。
【0017】
特許文献3記載の従来技術は、高電圧領域での抵抗に着目した技術であるが、後述する比較例に示すように、未だ十分とは言い難いものである。
【0018】
特許文献4記載のマグネタイト粒子粉末は、流動性が優れるとともに、吸油量が小さく、しかも、帯電安定性に優れたマグネタイト粒子粉末を得ることを目的としており、高電圧領域で電気抵抗が高いとは言い難いものである。
【0019】
画像濃度および画像濃度維持性は、単にトナーに使用される顔料の電気抵抗値が高いことだけでなく、高電圧での電気抵抗値が重要である。即ち、低電圧で抵抗値が高い顔料を得たとしても、実際に使用される電場において抵抗値が低いと、トナー表面の静電気がトナー表面に露出している顔料をリークサイトとして逃げることになりトナーの帯電量が低くなることから画像濃度の著しい低下を導く結果となる。
【0020】
従って、前出特許文献1〜4に開示されている黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、現在最も必要とされている高電圧領域での電気抵抗値を高くするという観点では、要求を満たすに至っていない。
【0021】
そこで、本発明は、高温高湿環境下における画像濃度が高く、その画像濃度維持性が向上しているトナーを構成できる黒色磁性酸化鉄顔料を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、前記技術的課題を鑑み検討を行った結果、高電圧での電気抵抗値が高い黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得ることができ、本発明に至った。
【0023】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0024】
即ち、本発明は、黒色磁性酸化鉄粒子の平均粒子径が0.05μm〜2.0μmであり印加電圧100Vの電気抵抗値が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明1)。
【0025】
また、本発明は、黒色磁性酸化鉄粒子の粒子表面に、Al、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の元素からなる化合物が被覆されており、前記元素の存在量が0.3〜4.5重量%である本発明1記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明2)。
【0026】
また、本発明は、水分吸着量Ma0.9が15mg/g以下である本発明1又は2記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明3)。
【発明の効果】
【0027】
本発明の黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、殊に、トナー用の顔料として用いた場合、高い画像濃度が得られ、高電圧での電気抵抗値が高く、特に高温高湿環境下で高い画像濃度を得る用途として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0029】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は、特に限定されるものではなく、六面体、八面体、多面体状、粒状、球状などである。
【0030】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末を構成する黒色磁性酸化鉄粒子は、核粒子と核粒子の粒子表面に存在する表面層とからなる。表面層とは、粒子の中心部分から表面へ向けて、Feを含有する部分を除く部分をさす。核粒子とは、この表面層部分を除いた粒子内部をさす。
【0031】
本発明における黒色磁性酸化鉄粒子の表面層には、Al、Mg、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の元素からなる化合物が粒子表面に均一な層を形成している。
【0032】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末において、黒色磁性酸化鉄粒子の表面層に存在するAl、Mg、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の元素の含有量は黒色磁性酸化鉄粒子全体に対して0.3重量%以上4.5重量%以下である。前記元素の含有量が0.3重量%未満の場合には、電気抵抗値が低いものとなる。4.5重量%を超える場合には、吸湿性が高くなり好ましくない。好ましくは0.5〜4.0重量%、より好ましくは0.6〜3.5重量%、更により好ましくは0.7〜3.0重量%である。
【0033】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の100V直流電圧印加時の電気抵抗値は1.0×10Ω・cm以上である。100V直流電圧印加時の電気抵抗値が1.0×10Ω・cm未満の場合、高電場における電気抵抗は不十分である。100V直流電圧印加時の好ましい電気抵抗値は3.0×10〜1.0×1017Ω・cmであり、より好ましくは3.0×10〜1.0×1015Ω・cmである。
【0034】
なお、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の10V直流電圧印加時の電気抵抗値は1.0×10〜1.0×1017Ω・cmが好ましく、より好ましくは3.0×10〜1.0×1015Ω・cmである。
【0035】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の印加電圧10Vのときの電気抵抗値と印加電圧100Vのときの電気抵抗値との比(印加電圧100Vのときの電気抵抗値/印加電圧10Vのときの電気抵抗値)が、0.5〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.95である。
【0036】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径は0.05〜2.0μmである。平均粒子径が0.05μmより小さい粒子である場合には、トナー粒子に用いる場合にトナー粒子中に顔料を分散することが困難であり好ましくない。平均粒子径が2.0μmより大きい粒子の場合、トナー粒子中の磁性体粒子の個数が少なくなることから、着色力が低くなり好ましくない。好ましい平均粒子径は0.07〜0.50μmであり、より好ましい平均粒子径は0.09〜0.40μmである。
【0037】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の水分吸着量Ma0.9は15mg/g以下が好ましい。15mg/gより大きい場合は吸湿性が高く環境安定性が悪くなる。より好ましい水分吸着量Ma0.9は3.0〜12.0mg/gである。
【0038】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末のBET比表面積は、3.0〜20m/gであることが好ましい。
【0039】
次に、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造法について述べる。
【0040】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、常法に従って、マグネタイトの核粒子を製造し、次いで、前記核粒子を含有するスラリーを70〜95℃の温度範囲に保持し、Al元素の場合にはスラリーのpHを8.0〜9.0の範囲に制御してアルミニウム塩を核粒子に対して0.015重量%/分以下でアルミニウム塩を添加した後、30分以上熟成し、次いで、pH調整した後、常法に従って、水洗、乾燥することによって、得ることができる。Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Si元素は核粒子を含有するスラリーのpHを、Mg元素の場合は9.5〜10.5、Mn元素の場合は8.0〜9.0、Zn元素の場合は8.0〜9.0、Ni元素の場合は7.5〜8.5、Cu元素の場合は6.5〜7.5、Ti元素の場合は8.0〜9.0、Si元素の場合は6.5〜7.5の範囲に制御して金属塩を核粒子に対して0.015重量%/分以下で各金属塩を添加した後、30分以上熟成し、次いで、pH調整した後、常法に従って、水洗、乾燥することによって、得ることができる。
【0041】
前述のように、本発明の黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得るための核粒子には黒色磁性顔料として要求される磁気特性・分散性などの観点から様々な形状・粒子径のものが選択可能でありその生成方法も多様に存在するが、本発明の目的をより効果的に達成するためには、後述する表面処理をより均一に行う観点から、核粒子スラリー中には、表面処理の阻害因子となりやすい物質、例えば、未反応の水酸化鉄微粒子等の混入がないことが好ましい。
【0042】
上記のごとく核粒子を含むスラリーを得るための手段には様々な方法が挙げられるが、例えば、Fe2+水溶液の酸化反応中のpHを所定の値に制御することで、八面体・多面体・六面体・球状・凹凸形状のものを得ることができる。また、酸化反応中の粒子の成長条件を制御することで所望の粒子径の核粒子を得ることができる。また核粒子の表面平滑性は、酸化反応終盤での成長条件を制御したり、一般に知られているようにシリカ成分やアルミ成分やカルシウム成分などの成分や亜鉛・マンガンなどのスピネルフェライト結晶構造を形成しやすい成分を添加することでも制御できる。
【0043】
Fe2+水溶液としては、例えば硫酸第一鉄や塩化第一鉄などの一般的な鉄化合物を用いることができる。また水酸化鉄を得るためもしくはpH調整剤としてのアルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液を用いることができる。各々の原料は、経済性や反応効率などを考慮して選択すればよい。
【0044】
Al表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0が好ましく、より好ましいpHは8.2〜8.8である。スラリーのpHが8.0未満の場合には、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いものとなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。スラリーのpHが9.0を超える場合にも、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いもととなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。Mg表面処理時のスラリーのpHは9.5〜10.5、Mn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Zn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Ni表面処理時のpHは7.5〜8.5、Cu表面処理時のpHは6.5〜7.5、Ti表面処理時のpHは8.0〜9.0、Si表面処理時のpHは6.5〜7.5が好ましい。上記pHの範囲外の場合は電気抵抗値の低いものとなり、また吸湿性が高くなり好ましくない。
【0045】
Al、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Si成分を表面処理するスラリーの温度範囲は70〜95℃が好ましい。スラリーの温度が70℃未満の場合には、BET比表面積値の高いものとなり、吸湿性の観点からも好ましくない。条件値は特に限定はないが、水系のスラリーであるため、生産性やコストを考慮すると95℃程度が上限となる。
【0046】
核粒子を含有するスラリーへの金属化合物の添加速度は、核粒子に対して金属元素0.015重量%/分以下で添加することが好ましい。より好ましくは核粒子に対して金属元素0.01重量%/分以下で添加することが好ましい。金属元素を0.015重量%/分より多い添加速度とすると金属化合物が核粒子表面に被覆されず単独で析出し、電気抵抗値の低いものとなり、またBET比表面積値の大きなものとなり吸湿性の高いものとなる。下限は特に限定はないが生産性を考慮すると0.002重量%/分が下限となる。
【0047】
金属化合物添加後には30分以上熟成を行うことが金属化合物を核粒子表面に均一に処理するため好ましい。上限は特に限定はないが生産性を考慮すると240分程度が上限となる。また、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
【0048】
熟成後は、スラリーのpHを4.0〜10.0の範囲に制御することが好ましい。より好ましいスラリーのpHは6.0〜8.0の範囲に制御することが好ましい。pHが4.0未満の場合、金属化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。pHが10.0を超える場合にも金属化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。制御に際しては、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
【0049】
反応後は、常法に従って、水洗、乾燥を行えばよい。
【0050】
<作用>
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の核粒子の外側(表面層)にAl化合物を均一に被覆することにより高電圧印加時の電気抵抗を高くすることができる。事実、本発明者らが過去に出願したマグネタイト粒子合成後にAl成分とアルカリ土類金属成分を添加して表面処理して得られる粒子粉末(特開2007−314412号公報)や、表面に複合酸化鉄層を有する粒子粉末(特開2005−289673号公報、特開2002−72545号公報)では、100Vのような高電圧印加時の電気抵抗が不十分であった。本発明者らは核粒子表面にAl成分を、隙間無く、均一に、膜状の水酸化物相もしくは含水酸化物相としての絶縁層を形成できたためであると推定している。
【実施例】
【0051】
本発明の代表的な実施例は次の通りである。
【0052】
<測定方法>
黒色磁性酸化鉄粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0053】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は、透過型電子顕微鏡と「走査型電子顕微鏡S−4800 」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した写真から判断した。
【0054】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の水分吸着量Ma0.9は「高精度蒸気吸着量測定装置BELSORP−aqua3」(日本ベル(株))を用いて、25℃、相対圧0.9の吸着時の吸着水分量の値で示した。
【0055】
BET比表面積値は、「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス株式会社製)を用いてBET法により求めた。
【0056】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末中に含まれるAl量および金属元素量は「蛍光X線分析装置RIX−2100」(理学電気工業株式会社製)にて測定し、黒色磁性酸化鉄粒子粉末に対して元素換算で求めた値である。
【0057】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の電気抵抗値は、測定対象の試料粉末2.0gを秤量し測定容器に入れ14MPaの圧力を加えた状態で、100Vまたは10Vの定電圧を印加し「HIGH RESISTANCE METER 4339B」(ヒューレット・パッカード(株)製)で測定し、そのときの抵抗値と試料の電極面積および厚みより体積固有抵抗値を求めた。
【0058】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末のつぶ値はJIS K 5101に準じて、試料0.5gにひまし油0.5mlを加えフーバーマーラーで50回転する操作を2回繰り返した後、グラインドゲージにて粒の大きさを測定する。
【0059】
実施例1
<酸化鉄粒子の生成方法>
球状で平均粒子径が0.24μmのFe酸化鉄核粒子Aを90g/l含むスラリー100Lを温度90℃において水酸化ナトリウム溶液を添加しpH8.5に調整した後、1.9mol/lの硫酸アルミニウム水溶液3Lと水酸化ナトリウム水溶液を同時にpH8.5±0.2に調整しながら190分かけて添加した。次いで、60分間熟成させた後、希硫酸を添加してpH7.0に調整した後、濾過、水洗、乾燥してAlで表面処理された酸化鉄粒子を得た。
【0060】
得られた前記酸化鉄粒子は、BET比表面積は7.4m/g、Al量は1.68%、印加電圧100Vでの電気抵抗値は7.1×10Ω・cm、飽和磁化は83.8Am/kg、吸着水分量Ma0.9は7.2mg/gであった。
【0061】
実施例5
硫酸アルミニウム水溶液と硫酸マグネシウム水溶液を混合し添加した以外は、前記実施例1と同様にして黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0062】
比較例1
<酸化鉄粒子の生成方法>
球状で平均粒子径が0.24μmのFe酸化鉄核粒子Aを90g/l含むスラリー100lを、温度90℃において水酸化ナトリウム溶液を添加しpH11に調整した後、1.9mol/lの硫酸アルミニウム水溶液3.5lを添加し攪拌した後に、1.1mol/lの硫酸マグネシウム溶液0.3lを添加し20分混合した後、一旦、pHを9.0に調整して5分混合し、希硫酸を添加してpHを7.0に調整し、濾過、水洗、乾燥してAlとMgで表面処理された黒色磁性酸化鉄粒子を得た。
【0063】
比較例7
球状で平均粒子径が0.24μmのFe酸化鉄核粒子Aを70g/l含むスラリー80Lを温度80℃において0.5mol/lの硫酸アルミニウム水溶液6.9Lと1.5mol/lの硫酸第一鉄水溶液4.6lと水酸化ナトリウム溶液を添加しpH9.0に調整した後、毎分80lの空気を通気し、酸化反応を終了させ、濾過、水洗、乾燥を行い粒子表面に複合酸化鉄層を形成した黒色磁性酸化鉄粒子を得た。
【0064】
比較例8
粒子形状が六面体で平均粒子径が0.23μmのFe酸化鉄核粒子Cを70g/l含むスラリー100Lを80℃において0.5mol/lの硫酸アルミニウム水溶液4.1lを添加しpHを8に調整し3時間攪拌混合後、濾過、水洗、乾燥を行った。このAlで表面処理された黒色磁性酸化鉄粒子粉末2kgをシンプソン・ミックスマーラー「サンドミルMPUV−2」((株)松本鋳造鉄工所製)に投入し、線加重160kg/cmで30分処理した。処理終了後に粉末の温度を測定すると105℃であった。
【0065】
実施例2〜4、6、7、比較例2〜6
黒色磁性粒子粉末の製造条件を種々変化させた以外は、前記実施例1と同様にして黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0066】
酸化鉄核粒子の諸特性を表1に、酸化鉄粒子の製造条件を表2に示す。得られた黒色磁性酸化鉄粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
表3に示すとおり、比較例1、3、5および6の黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、印加電圧100Vでの電気抵抗値は低いため測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によって得られる高電圧領域で高い電気抵抗値をもち、吸湿性が低く、分散性に優れた黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、種々の分野において使用される顔料として好適であり、この材料をトナーに使用する場合には、高温高湿環境下で高い画像濃度が得られるため特に好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色磁性酸化鉄粒子の平均粒子径が0.05μm〜2.0μmであり印加電圧100Vの電気抵抗値が1×10Ω・cm以上であることを特徴とする黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項2】
黒色磁性酸化鉄粒子の粒子表面に、Al、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の元素からなる化合物が被覆されており、前記元素の存在量が0.3〜4.5重量%である請求項1記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項3】
水分吸着量Ma0.9が15mg/g以下である請求項1又は2記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。


【公開番号】特開2010−24445(P2010−24445A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143475(P2009−143475)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】