説明

黒色箔状粘着剤および黒色粘着シート

【課題】意匠性、光学特性および粘着力に優れ、かつ薄膜化が可能であり、しかも低コストで製造することのできる黒色箔状粘着剤および黒色粘着シートを提供する。
【解決手段】基材13と、粘着剤層11と、剥離シート12とを備えた黒色粘着シート1Aであって、粘着剤層11が、粘着成分と、黒色顔料と、スチレン−マレイン酸樹脂とを含有し、黒色箔状粘着剤中における黒色顔料の含有量が、2〜6質量%である黒色箔状粘着剤からなる黒色粘着シート1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色箔状粘着剤およびこれを備えた黒色粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シートに意匠性や機能性のための隠蔽性を付与すべく、黒色の外観を有する粘着シートが求められる場合がある。
【0003】
粘着シートに黒色外観を付与する手段として、粘着シートの構成部分のうち基材を黒色にする手段と、粘着剤層を黒色にする手段とがある。
【0004】
粘着シートに黒色外観を付与するための前者の手段として、粘着シートが片面粘着シートである場合には、黒色の基材を用いたり、表面に黒色印刷が施された基材を用いたりする手段が提案されている。また、粘着シートが、芯材と、芯材を挟み込むように配置される二つの粘着剤層とからなる両面粘着シートである場合には、芯材の少なくとも表面を黒色とする手段が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
粘着シートに黒色外観を付与するための後者の手段としては、顔料としてカーボンブラックを含有する黒色粘着剤層をプラスチックフィルムの片面または両面に設けた粘着シートが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−60435号公報
【特許文献2】特許3879899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術はそれぞれ次のような問題を有する。
まず、黒色基材を備える片面粘着シートは、この黒色基材を得るために、基材に特殊な埋め込みや印刷を行うことが必要とされる。それゆえ、片面粘着シート全体の生産コストが上昇してしまう。
【0008】
特許文献1に開示される両面粘着シートは、粘着剤層/黒色芯材/粘着剤層の3層構成であるため、粘着剤層のみからなる通常の両面粘着シートに比べて肉厚化してしまう。それゆえ、薄膜の黒色両面粘着シートを設計することは困難である。また、特許文献1に開示される両面粘着シートを得るためには、芯材の両面に粘着剤を塗工する必要がある。このため、粘着剤層のみからなる通常の両面粘着シートに比べて製造工程(塗工回数)が増える。しかも、黒色の芯材を用意する必要があり、その生産コストは、上記の片面粘着シートにおける黒色基材と同様に高い。このため、特許文献1に開示される両面粘着シートは、粘着剤層のみからなる通常の両面粘着シートに比べて格段に生産コストが高くなる。
【0009】
特許文献2に開示される粘着シートは、粘着剤層に含有される顔料(具体的にはカーボンブラック)の分散性が低いため、顔料の不均一分散に起因する面状態の不良(外観不良、粘着不良)が生じてしまう。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、意匠性、光学特性および粘着力に優れ、かつ薄膜化が可能であり、しかも低コストで製造することのできる黒色箔状粘着剤および黒色粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、粘着成分と、黒色顔料と、スチレン−マレイン酸樹脂とを含有する黒色箔状粘着剤であって、前記黒色箔状粘着剤中における前記黒色顔料の含有量が、2〜6質量%であることを特徴とする黒色箔状粘着剤を提供する(発明1)。
【0012】
上記発明(発明1)に係る黒色箔状粘着剤においては、スチレン−マレイン酸樹脂を含有することによって、黒色顔料の凝集が生じ難くなり、黒色顔料を均一に分散させることができる。また、箔状の粘着剤自体が黒色であるため、従来のような芯材を必要としない。それゆえ、当該黒色箔状粘着剤は、黒色外観、光学特性および粘着力に優れ、かつ薄膜化(例えば1μm程度)が可能であり、しかも低コストで製造することができる。
【0013】
上記発明(発明1)に係る黒色箔状粘着剤は、ポリエチレン板に対する粘着力が、2N/25mm以上であることが好ましい(発明2)。
【0014】
上記発明(発明1,2)においては、前記スチレン−マレイン酸樹脂の含有量が、前記黒色顔料1質量部に対して2.5〜10質量部であることが好ましい(発明3)。
【0015】
上記発明(発明1〜3)において、前記粘着成分は、架橋剤によって架橋されていることが好ましい(発明4)。
【0016】
上記発明(発明1〜4)においては、前記黒色箔状粘着剤の厚みが1〜5μmであり、前記厚み(単位:μm)と前記黒色顔料の含有量(単位:質量%)との積xwが、5μm・質量%以上であり、全光線透過率が70%以下であるか(発明5)、前記黒色箔状粘着剤の厚みが10〜35μmであり、前記厚み(単位:μm)と前記黒色顔料の含有量(単位:質量%)との積xwが、35μm・質量%以上であり、全光線透過率が15%以下である(発明6)ことが好ましい。
【0017】
上記発明(発明1〜6)においては、前記黒色顔料の平均粒径が、1〜20μmであることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明1〜7)においては、前記黒色顔料が、カーボンブラックであることが好ましい(発明8)。
【0019】
第2に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた黒色粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記黒色箔状粘着剤(発明1〜8)からなることを特徴とする黒色粘着シートを提供する(発明9)。なお、本発明における「シート」には、テープの概念も含まれるものとする。
【0020】
第3に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた黒色粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記黒色箔状粘着剤(発明1〜8)からなることを特徴とする黒色粘着シートを提供する(発明10)。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る黒色箔状粘着剤は、スチレン−マレイン酸樹脂によって黒色顔料の凝集が生じ難いため、黒色顔料を均一に分散させることができ、また、芯材を必要としない。それゆえ、本発明に係る黒色箔状粘着剤および黒色粘着シートは、黒色外観、光学特性および粘着力に優れ、かつ薄膜化(例えば1μm程度の黒色箔状粘着剤)が可能であり、しかも低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】黒色顔料としてカーボンブラックを用いた場合における全光線透過率と厚み−含有量積xwとの関係を示すグラフである。
【図2】黒色顔料としてカーボンブラックを異なる含有量で用いた場合における厚み−含有量積xwと粘着剤厚みとの関係を示すグラフである。
【図3】黒色顔料としてカーボンブラックを異なる含有量で用いた場合における厚み−含有量積xwと粘着剤厚みとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る黒色粘着シートの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る黒色粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔黒色箔状粘着剤〕
1.黒色箔状粘着剤の組成
本発明の一実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、粘着成分、黒色顔料およびスチレン−マレイン酸樹脂を含有する。以下、これらの成分および必要に応じて含有し得るその他の成分について個別に説明する。
【0024】
(1)粘着成分
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤が含有する粘着成分の種類は、特に限定されず、黒色箔状粘着剤の用途に合わせて適宜選択することができる。粘着成分の種類としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の粘着成分が挙げられ、中でもアクリル系の粘着成分が好ましい。また、粘着成分は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよいが、黒色顔料の分散性の観点から、溶剤型のものが好ましい。さらに、粘着成分は、架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0025】
アクリル系の粘着成分としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むものが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、(シクロ)アルキルとは、アルキルとしての直鎖または分岐アルキルと、シクロアルキルとの両方を含めた概念を意味し、重合体は、共重合体も含めた概念を意味する。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルを構成モノマーとする重合体であることが好ましく、所望により、反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)、反応触媒性官能基を有するモノマー(反応触媒性基含有モノマー)、ならびに反応性官能基および反応触媒性官能基を有しない他のモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0027】
(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)などが挙げられる。本実施形態における粘着成分が架橋剤によって架橋されたものである場合、これら反応性官能基含有モノマーを用いることで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、架橋剤との反応性に優れたものとなる。したがって、架橋剤による架橋後の粘着成分においては、当該反応性官能基含有モノマーの反応性官能基は、架橋剤との反応に消費されて残存量が少なくなり、得られる黒色箔状粘着剤の耐久性が低下することが抑制される。
【0029】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
反応触媒性基含有モノマーとしては、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)、および分子内にアクリルアミド基を有するモノマー(アクリルアミド基含有モノマー)が挙げられる。反応触媒性官能基は、水酸基含有モノマーの水酸基と、水酸基と反応し得る架橋剤との反応の触媒として作用する。
【0032】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル等の1級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等の2級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、1級アミノ基または2級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、活性水素基を有するので、それ自体で反応性官能基含有モノマーとしても作用する。
【0033】
アクリルアミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
反応性官能基および反応触媒性官能基を有しない他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重合形態については特に制限はなく、単独重合体であってもよいし、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量で10,000〜5,000,000であることが好ましく、100,000〜3,000,000であることが特に好ましく、30,000〜2,000,000であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、被着体との密着性や、接着耐久性が十分となるとともに、黒色顔料の分散性も確保することができる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
粘着成分が架橋剤によって架橋されたものである場合、得られる粘着剤の保持力が向上し、もって箔状粘着剤としての形状が良好に維持される。架橋剤としては、粘着成分を架橋することができるものであれば特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。中でも多官能のイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0039】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0040】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0041】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどが挙げられる。
【0042】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0043】
以上の架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その使用量は、架橋点を有する粘着成分100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0044】
(2)黒色顔料
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、黒色顔料を含有する。黒色顔料の種類は、粘着剤に黒色の外観を付与できる限り特に限定されないが、価格および環境負荷の低さの観点からカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0045】
カーボンブラックは、粒径により有機溶剤中、および粘着剤中での分散性が異なる。粒径が小さい方が分散性は高くなるため、隠蔽性(黒色度)の改善には好ましい。しかし、一方でカーボンブラックの粒径が小さすぎると、粒子が凝集し、径の大きな凝集体を形成しやすくなる。このような凝集体が形成されると、カーボンブラックの分散性は著しく低下し、得られる黒色箔状粘着剤の面状態が悪化することとなる。カーボンブラック以外の黒色顔料についても、特に表面処理を施していない限り同様の傾向を示す場合が多い。以上のことから、黒色顔料の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましく、特に5〜15μmであることが好ましい。
【0046】
ここで、本明細書における「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定して得られる値であるものとする。
【0047】
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤(全成分)中における黒色顔料の含有量は、2〜6質量%であり、好ましくは2.2〜5質量%であり、特に好ましくは2.4〜5質量%である。黒色顔料の含有量が2質量%以上であることで、良好な黒色外観および隠蔽性を有する黒色箔状粘着剤を得ることができる。また、本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、後述するように分散剤として作用するスチレン−マレイン酸樹脂を含有するため、黒色顔料の含有率が2質量%以上であっても、黒色箔状粘着剤中の黒色顔料は均一に分散した状態が維持される。一方、黒色顔料の含有量が6質量%以下であれば、黒色箔状粘着剤は、粘着性を発揮し得る量の粘着成分を含有することができ、また、後述するスチレン−マレイン酸樹脂を多量に含有せずとも、黒色顔料が黒色箔状粘着剤中に均一に分散しやすい。
【0048】
なお、黒色顔料がカーボンブラックである場合には、その表面に対して特段の処理(例えば親溶剤化処理)がなされていなくてもよい。本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は後述するようにスチレン−マレイン酸樹脂を含有するため、黒色顔料が一般的な(無処理の)カーボンブラックであっても、粘着剤中に均一に分散させることができる。
【0049】
(3)スチレン−マレイン酸樹脂
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、スチレン−マレイン酸樹脂を含有する。スチレン−マレイン酸樹脂とは、スチレンと無水マレイン酸との共重合体であり、SMA(Styrene/Maleic Anhydride)樹脂とも称される。スチレン−マレイン酸樹脂は、スチレン樹脂の耐熱性を高めたものとして一般的に位置付けられるところ、本実施形態ではカーボンブラックなどの黒色顔料の分散性を高める成分として使用される。すなわち、本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、スチレン−マレイン酸樹脂を含有することで、黒色顔料の凝集が生じ難くなり、黒色顔料の含有量が多くても、当該黒色顔料を均一に分散させることができる。これにより、本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、面状態が良好となり、意匠性、光学特性および粘着力に優れたものとなる。
【0050】
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤中のスチレン−マレイン酸樹脂の含有量は、黒色顔料1質量部に対して、2.5〜10質量部であることが好ましく、特に2.5〜5質量部であることが好ましい。スチレン−マレイン酸樹脂の含有量が、黒色顔料1質量部に対して2.5質量部以上であると、黒色顔料の分散性を安定的に高めることができる。また、スチレン−マレイン酸樹脂の含有量が、黒色顔料1質量部に対して2.5〜10質量部であれば、黒色箔状粘着剤中の粘着成分による粘着性を阻害しにくい。さらに、スチレン−マレイン酸樹脂の含有量が、粘着成分100質量部に対して10質量部以下であれば、黒色箔状粘着剤中の粘着成分による粘着性を阻害するおそれがなく好ましい。
【0051】
(4)その他の成分
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、上記の3成分に加えて、他の成分を含有してもよい。そのような成分としては、粘着付与剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤が例示される。
【0052】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂等の天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系等の石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は、黒色箔状粘着剤の粘着性を高めるのみならず、スチレン−マレイン酸樹脂による黒色顔料の分散性向上作用を促進するため、本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、粘着付与剤を含有することが好ましい。
【0053】
2.黒色箔状粘着剤の形態および物性
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤の厚みは、黒色箔状粘着剤の使用目的等に応じて適宜設定することができるが、通常は1〜100μmであることが好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、黒色顔料の含有率が2質量%以上であることから、その厚みを1μm程度の薄膜としても良好な黒色外観を達成することができる。
【0054】
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤の粘着力は、ポリエチレン板に対する粘着力が、2N/25mm以上であることが好ましく、4N/25mm以上であることが好ましい。なお、ここでいう粘着力は、JIS Z0237:2000に準じた貼付24時間後の180°引き剥がし粘着力をいう。黒色箔状粘着剤の粘着力が上記の範囲内にあることで、所望の被着体(ポリエチレンからなるものに限定されない)に、剥がれを生じることなく貼着することができる。
【0055】
黒色箔状粘着剤の黒色(隠蔽率)の程度は、JIS K7105:1981に規定される全光線透過率により評価することができる。黒色箔状粘着剤が達成すべき全光線透過率は、その黒色箔状粘着剤の用途によって異なる。例えば、単なる意匠性付与を目的とする着色のために用いる場合には、全光線透過率は70%以下であることが好ましく、特に65%以下であることが好ましい。また、可視光を透過する層の下地として用いたり、光漏れ防止用途として用いたりする場合には、全光線透過率は10%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましい。
【0056】
黒色箔状粘着剤の全光線透過率を特定の範囲に設定するためには、黒色箔状粘着剤の厚み(単位:μm)と黒色箔状粘着剤中における黒色顔料の含有量(単位:質量%)との積(以下「厚み−含有量積」という。)xw(単位:μm・質量%)を、求める全光線透過率の範囲に合わせて調整すればよい。以下、厚み−含有量積xwについて、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0057】
図1は、黒色顔料としてカーボンブラックを用いた場合における全光線透過率と厚み−含有量積xwとの関係を示すグラフである。図1に示されるように、厚み−含有量積xwが増加すると全光線透過率は低下する。このグラフから判断すると、黒色箔状粘着剤の全光線透過率を70%以下に設定したい場合には、厚み−含有量積xwを5μm・質量%以上に調整することが好ましい。また、黒色箔状粘着剤の全光線透過率を10%以下に設定したい場合には、厚み−含有量積xwを35μm・質量%以上に調整することが好ましい。
【0058】
全光線透過率を70%以下とすべく、厚み−含有量積xwを5μm・質量%以上とする場合には、黒色箔状粘着剤の厚みを1〜5μmとすることが好ましく、1〜4μmとすることが特に好ましい。黒色箔状粘着剤の厚みをこのような範囲とすることで、黒色箔状粘着剤に極めて薄いことが求められる用途においても、好適に用いることができる。本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、黒色顔料の含有量が高くても当該黒色顔料の分散性は良好に保たれるため、このように黒色箔状粘着剤の厚みを小さくしても、厚み−含有量積xwの値が5μm・質量%以上となるように黒色顔料の含有量を高めることが容易である。
【0059】
図2は、黒色顔料としてカーボンブラックを異なる含有量で用いた場合における厚み−含有量積xwと粘着剤厚みとの関係を示すグラフである。図2に示されるように、黒色顔料としてのカーボンブラックの含有量を変化させる(具体的には、1質量%、2質量%、2.76質量%、3.65質量%、および4.65質量%)と、厚み−含有量積xwと粘着剤厚みとの関係は変動し、黒色顔料の含有量が低くなるにつれて、ある特定の厚み−含有量積xw(図2では5μm・質量%)を実現するために必要とされる粘着剤の厚みは増加する。具体的には、黒色顔料の含有量が2質量%のときは、箔状粘着剤の厚みが少なくとも2.5μm以上であれば厚み−含有量積xwが5μm・質量%以上となる。黒色顔料の含有量をより増加させれば、箔状粘着剤がより薄くても厚み−含有量積xwを5μm・質量%以上とすることが可能である。一方、黒色顔料の含有量が1質量%では、厚み−含有量積xwを5μm・質量%以上とするためには、箔状粘着剤の厚みを5μm以上としなければならない。
【0060】
全光線透過率を10%以下とすべく、厚み−含有量積xwを35μm・質量%以上とする場合には、黒色箔状粘着剤の厚みを10〜35μmとすることが好ましく、10〜30μm以下とすることが特に好ましい。黒色箔状粘着剤の厚みをこのような範囲とすることで、塗工後の乾燥時に蒸発させるべき溶剤または分散媒の量を少なくすることができ、もって生産性が向上し、また、黒色箔状粘着剤の端部からの粘着剤のはみ出しが起こり難い。本実施形態に係る黒色箔状粘着剤は、黒色顔料の含有量が高くても当該黒色顔料の分散性は良好に保たれるため、厚みを30μm程度以下としても、厚み−含有量積xwの値を35μm・質量%以上に維持して全光線透過率を10%以下とすることが容易である。
【0061】
図3は、図2と同様に、黒色顔料としてカーボンブラックを異なる含有量(具体的には、1質量%、2質量%、2.76質量%、3.65質量%、および4.65質量%)で用いた場合における厚み−含有量積xwと粘着剤厚みとの関係を示すグラフである。黒色顔料の含有量が2質量%のときは、箔状粘着剤の厚みが少なくとも17.5μm以上であれば、厚み−含有量積xwが35μm・質量%以上となる。黒色顔料の含有量をより増加させれば、黒色箔状粘着剤がより薄くても厚み−含有量積xwを35μm・質量%以上とすることが可能である。一方、黒色顔料の含有量が1質量%では、厚み−含有量積xwを35μm・質量%以上とするためには、黒色箔状粘着剤の厚みを35μm以上とする必要がある。
【0062】
3.黒色箔状粘着剤の製造方法
本実施形態に係る黒色箔状粘着剤の製造方法は特に限定されず、常法によって製造することができる。製造方法の一例を挙げれば、まず、前述の粘着成分(所望により架橋剤を含む)、黒色顔料、スチレン−マレイン酸樹脂、および必要に応じ配合される粘着付与剤等のその他の成分と、所望により溶剤とを混合して、粘着性組成物の塗布液を調製する。なお、黒色顔料とスチレン−マレイン酸樹脂とは、黒色顔料の分散性の観点から、あらかじめ混合しておくことが好ましい。
【0063】
上記溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0064】
このようにして調製された粘着性組成物の塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。なお、粘着剤溶液を得るに際して、溶剤の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物の塗布液がコーティング可能な粘度等であれば、溶剤を添加しなくてもよいが、本実施形態の黒色箔状粘着剤の、スチレン−マレイン酸樹脂を含有することによる黒色顔料の分散均一性向上の効果は、黒色箔状粘着剤が溶剤を含む粘着性組成物を塗布してなるものである場合に、より効果的に発揮される。粘着性組成物が溶剤を含まない場合、粘着性組成物がそのまま粘着性組成物の塗布液と同様に取り扱われる。
【0065】
上記のようにして調製した粘着性組成物の塗布液を、基材や剥離シート等、所望の対象物に所望の厚みで塗布し、乾燥させ、黒色箔状粘着剤を得る。上記塗布液を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等の従来公知の方法を利用することができる。
【0066】
ここで、粘着成分としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体を架橋する場合は、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行う場合、加熱温度は、60〜150℃であることが好ましく、特に80〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の塗布液の溶剤を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0067】
以上説明した黒色箔状粘着剤は、スチレン−マレイン酸樹脂を含有することで、黒色顔料が均一に分散したものとなっており、これにより、面状態が良好で、意匠性(黒色外観)、光学特性および粘着力に優れる。特に、黒色顔料は含有量が多くても均一に分散しているため、当該黒色箔状粘着剤は、優れた意匠性および光学特性を有しつつ、薄膜化することが可能である。
【0068】
〔黒色粘着シート〕
図4および図5は、本発明の一実施形態に係る黒色粘着シートの断面図である。図4に示すように、第1の実施形態に係る黒色粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0069】
また、図5に示すように、第2の実施形態に係る黒色粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0070】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した黒色箔状粘着剤からなり、粘着剤層11の厚みは、黒色箔状粘着剤の厚みにて説明した通りである。
【0071】
基材13としては、特に制限はなく、通常の粘着シート用の基材として用いられるものは全て使用でき、透明、半透明および不透明のいずれであってもよく、色も限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルムなどのプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。また、これらのプラスチックフィルムは、フィルム単体である必要はなく、表面にコーティングされたものであってもよいし、粘着テープなどのフィルムの積層体であってもよい。基材13が、粘着剤層11に接する面側から基材、粘着剤層、剥離シートの順で積層された積層物であるとき、粘着シート1Aは両面テープとなる。
【0072】
基材13として、さらに表面に凹凸を有する透明基材を用いることもできる。このような透明基材の裏面(凹凸が形成されていない面)側に、黒色箔状粘着剤からなる粘着剤層11を設けることにより、表面にマット調の黒色の印刷をしたのと同じようなテクスチャーの粘着シートが得られ、かつ印刷に拠るよりも低コストで生産することができる。
【0073】
基材13の厚さは、その種類や粘着シート1Aの使用目的によっても異なるが、通常1〜500μmであり、好ましくは3〜300μmであり、より好ましくは5〜150μmである。
【0074】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の樹脂をラミネートしたラミネート紙、またはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられ、これらの剥離面(粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離剤が挙げられる。
【0075】
上記剥離シート12a,12bの一方(例えば剥離シート12a)は、軽剥離タイプの剥離シートであり、他方(例えば剥離シート12b)は、重剥離タイプの剥離シートであることが好ましい。このように剥離シート12a,12bに剥離力差を設けるには、剥離剤の種類を変えたり、一方を剥離処理し、他方を剥離処理しない等の方法によって達成することができる。
【0076】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常10〜150μm程度である。
【0077】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、前述した粘着性組成物の塗布液を塗布し、乾燥させて黒色箔状粘着剤からなる粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。
【0078】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、前述した粘着性組成物の塗布液塗布し、乾燥させて黒色箔状粘着剤からなる粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。
【0079】
本実施形態に係る黒色粘着シート1A,1Bの粘着剤層11は、前述した黒色箔状粘着剤からなるため、黒色顔料が均一に分散しており、面状態が良好で、意匠性、光学特性および粘着力に優れる。特に、黒色顔料は含有量が多くても均一に分散しているため、黒色粘着シート1A,1Bは、優れた意匠性および光学特性を有しつつ、薄膜化することが可能である。かかる黒色粘着シート1A,1Bは、装飾シート、遮光シートなど多種多様な用途に好適に用いることができる。
【0080】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0081】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0083】
〔実施例1〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする粘着剤(綜研化学社製,SKダインSG−50MT,固形分40質量%)100質量部と、カーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体(東洋インキ製造社製,マルチラックA−903ブラック,固形分55質量%(カーボンブラック14質量%+スチレン−マレイン酸樹脂41質量%),カーボンブラックの平均粒径:7μm)12.3質量部と、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造社製,BHS8515,固形分37.5質量%)1質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン35質量部とを混合して、粘着性組成物の塗布液を調製した。
【0084】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET381031H,厚み38μm)の剥離処理面に、上記粘着性組成物の塗布液を乾燥後の膜厚が15μmになるようにナイフコーターにて塗布し、90℃で1分間乾燥させ、黒色箔状粘着剤からなる粘着剤層(厚み:15μm)を形成した。この黒色箔状粘着剤中におけるカーボンブラックの含有量は、3.65質量%であった。上記粘着剤層の表面に、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:6μm)を貼合し、これを黒色粘着シートとした。
【0085】
〔実施例2〕
黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外は、実施例1と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0086】
〔実施例3〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする粘着剤(サイデン化学社製,サイビノールLT−102,固形分49.5質量%)80.8重量部と、カーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体(東洋インキ製造社製,マルチラックA−903ブラック)16.4質量部と、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造社製,BHS8515,固形分37.5質量%)1質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン55質量部とを混合した粘着性組成物の塗布液を使用し、黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外、実施例1と同様にして黒色粘着シートを作製した。この黒色箔状粘着剤中におけるカーボンブラックの含有量は、4.65質量%であった。
【0087】
〔実施例4〕
黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外は、実施例3と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0088】
〔実施例5〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする粘着剤(綜研化学社製,SKダイン1502C,固形分40質量%)100質量部と、カーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体(東洋インキ製造社製,マルチラックA−903ブラック)8.2質量部と、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造社製,BHS8515,固形分37.5質量%)1質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン35質量部とを混合した粘着性組成物の塗布液を使用し、黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外、実施例1と同様にして黒色粘着シートを作製した。この黒色箔状粘着剤中におけるカーボンブラックの含有量は、2.56質量%であった。
【0089】
〔実施例6〕
黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外は、実施例5と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0090】
〔実施例7〕
基材として、PETフィルムの替わりに、表面に凹凸を有するフィラー練りこみPETフィルム(ユニチカ社製,PTH−12,厚み:12μm)を使用した以外、実施例5と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0091】
〔実施例8〕
基材として、PETフィルムの替わりに、白色PETフィルム(帝人デュポン製社,テフレックス,厚み:13μm)を使用した以外、実施例5と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0092】
〔比較例1〕
カーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体の替わりに、カーボンブラックのセルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂分散体(東洋インキ社製,CAB−LX−905ブラック)を使用した以外、実施例1と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0093】
〔比較例2〕
カーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体の替わりに、カーボンブラックのアクリル樹脂分散体(山陽色素社製,Colortex Black702)を使用した以外、実施例1と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0094】
〔比較例3〜6〕
黒色箔状粘着剤中におけるカーボンブラックの含有量が表1に示される数値になるようにカーボンブラックのスチレン−マレイン酸樹脂分散体(東洋インキ製造社製,マルチラックA−903ブラック)の配合量を調整するとともに、黒色箔状粘着剤の厚みが表1に示される数値になるように調整した以外、実施例5と同様にして黒色粘着シートを作製した。
【0095】
〔試験例1〕(粘着剤層の面状態の評価)
実施例または比較例で得られた黒色粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層(黒色箔状粘着剤)の表面を目視で観察して、次の評価基準で粘着剤層の面状態の評価を行った。結果を表2に示す。
○:凝集物が認められない。
×:凝集物が認められる
【0096】
〔試験例2〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例の黒色粘着シートの製造において、基材としてのPETフィルムを貼合する替わりに、剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET381031H,厚み38μm)の剥離処理面を貼合し、単層の粘着剤層が2枚の剥離シートに挟持されてなる基材レス粘着シートを得た。得られた基材レス粘着シートについて、JIS K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製,NDH−5000)を用いて、全光線透過率を測定した。この測定は3回行い、平均値を測定値とした。なお、試験例1において凝集物が認められた比較例1,2については、測定を行わなかった。結果を表2に示す。
【0097】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例または比較例で得られた黒色粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層(黒色箔状粘着剤)を、23℃、50%RHの環境下で、被着体としてのポリエチレン板に2kgゴムローラーを用いて貼付し、同環境下に24時間放置した。その後、万能型引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUTM−4−100)を用いて、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで基材付きの粘着剤層をポリエチレンフィルムから剥離し、その剥離力を測定した。この測定は3回行い、平均値を測定値とした。なお、試験例1において凝集物が認められた比較例1,2については、測定を行わなかった。結果を表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
表2から明らかなように、実施例で得られた黒色粘着シートは、黒色顔料の凝集がなく、良好な面状態(黒色外観)および優れた粘着力を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の黒色箔状粘着剤および黒色粘着シートは、装飾シート、遮光シートなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着成分と、黒色顔料と、スチレン−マレイン酸樹脂とを含有する黒色箔状粘着剤であって、
前記黒色箔状粘着剤中における前記黒色顔料の含有量が、2〜6質量%である
ことを特徴とする黒色箔状粘着剤。
【請求項2】
前記黒色箔状粘着剤のポリエチレン板に対する粘着力が、2N/25mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項3】
前記スチレン−マレイン酸樹脂の含有量が、前記黒色顔料1質量部に対して2.5〜10質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項4】
前記粘着成分は、架橋剤によって架橋されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項5】
前記黒色箔状粘着剤の厚みが1〜5μmであり、
前記厚み(単位:μm)と前記黒色顔料の含有量(単位:質量%)との積xwが、5μm・質量%以上であり、
全光線透過率が70%以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項6】
前記黒色箔状粘着剤の厚みが10〜35μmであり、
前記厚み(単位:μm)と前記黒色顔料の含有量(単位:質量%)との積xwが、35μm・質量%以上であり、
全光線透過率が15%以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項7】
前記黒色顔料の平均粒径が、1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項8】
前記黒色顔料が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤。
【請求項9】
基材と、粘着剤層とを備えた黒色粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤からなる
ことを特徴とする黒色粘着シート。
【請求項10】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた黒色粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の黒色箔状粘着剤からなる
ことを特徴とする黒色粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32430(P2013−32430A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168637(P2011−168637)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】