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黒色系酸窒化チタン
説明

黒色系酸窒化チタン

【課題】優れた黒色度を有し、微細であり、しかも、凝集粒子が少ない酸窒化チタンを提供する。
【解決手段】酸窒化チタンの組成を、組成式:TiNxOy・nSiO(組成式中、Tiはチタン原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Siはケイ素原子を表し、xはチタン原子に対する窒素原子の比を、yはチタン原子に対する酸素原子の比を表し、x、yはそれぞれ0より大きく2未満の実数を取り得る。nはTiNxOyに対するSiOのモル比を表し、nは0.05≦n≦0.15の範囲の実数を取り得る。)とし、しかも、Nで表される窒素原子を10〜20重量%の範囲を含み、かつ、X線回折計を用いて測定した結晶子径が7nm以上17nm未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色系酸窒化チタンに関する。
【背景技術】
【0002】
酸窒化チタンはチタン−酸素−窒素を主成分とし一般にTiNxOyで表され、チタンブラックとも称される化合物であり、黒色系の色彩、導電性を有することから、黒色顔料として樹脂、塗料、インキ、化粧料等に配合して、あるいは、導電性付与剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体等に配合して用いられている。このような酸窒化チタンとして、例えば、特許文献1には二酸化チタン粉末をアンモニアガス流通下550〜950℃の温度で加熱して、酸素4〜30重量%、窒素5〜20重量%(O/N重量比6〜0.2)を含有し、L値が14〜8の黒色酸窒化チタン顔料粉末を開示している。
一方、黒色顔料として用いられるチタン化合物としては、チタン−窒素を主成分とし一般にTiNで表される窒化チタンも知られており、例えば、特許文献2には700〜1500℃の温度で四塩化チタンガスとアンモニアガスを反応してTiN粉末を製造し、次いで、窒素−酸素混合ガスを流して表層部を酸窒化チタンに酸化して、主としてTiNからなり、酸素1〜4重量%、窒素20〜30重量%を含む窒化チタン系黒色粉末を開示している。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−65069号公報
【特許文献2】特開昭64−37408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸窒化チタンあるいは窒化チタンを黒色顔料として用いるには、黒色度、着色力、隠蔽性(遮光性)、耐光性、耐久性、分散性などの顔料特性について種々の用途に応じた改良が求められている。黒色度に間して、前記特許文献1にはL値が8〜14の黒色度を示す酸窒化チタンを記載しており、市販のチタンブラックでも8〜9程度のものであり、また、前記特許文献2にはL値が10程度の窒化チタンを記載しているが、それよりも黒色度の高いものが望まれている。また、前記の特許文献2ではTiN粉末の表層部を部分的に酸化して酸窒化チタンを形成しているものの、それでも空気中での酸化が徐々に進むため、顔料特性が安定していないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、二酸化チタン等にアンモニアガス等を反応させて製造した酸窒化チタンにおいて、含有する窒素量を10〜20重量%とするとともに、酸窒化チタン粒子を構成する結晶子の大きさを7nm以上17nm未満の範囲と小さくすることによってそのサイズ効果により、黒色度の高い酸窒化チタンとなることなどを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、組成式:TiNxOy・nSiO(組成式中、Tiはチタン原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Siはケイ素原子を表し、xはチタン原子に対する窒素原子の比を、yはチタン原子に対する酸素原子の比を表し、x、yはそれぞれ0より大きく2未満の実数を取り得る。nはTiNxOyに対するSiOのモル比を表し、nは0.05≦n≦0.15の範囲の実数を取り得る。)で表され、しかも、Nで表される窒素原子を10〜20重量%の範囲含み、かつ、X線回折計を用いて測定した結晶子径が7nm以上17nm未満であることを特徴とする黒色系酸窒化チタンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸窒化チタンは優れた黒色度を有することから、黒色顔料として樹脂、塗料、インキ等に配合して種々の用途に用いられる。また、本発明の酸窒化チタンは微細なものであり、しかも、凝集粒子が少ないものであることからその配合量を調整すると黒色でありながら透明性をも備えたものとすることができ、可視光の透過量を減少させる部材として、例えばガラス、レンズ、フィルム等に配合して用いることもできる。また、本発明の酸窒化チタンは導電性を有することから、導電性付与剤としても利用拡大が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)酸窒化チタンの組成
本発明の酸窒化チタンはTiNxOyで表される酸窒化チタンとSiOで表される酸化ケイ素を含んでおり、組成式:TiNxOy・nSiOで表される。組成式中、Tiはチタン原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Siはケイ素原子を表し、xはチタン原子に対する窒素原子の比を、yはチタン原子に対する酸素原子の比を表し、nはTiNxOyに対するSiOのモル比を表す。x、yはそれぞれ0より大きく2未満の実数を取り得るが、所望のものとするにはxとyの比y/xが0.65以上あるのが好ましく、0.70以上あるのがより好ましい。酸化ケイ素は酸窒化チタンと混合物を形成していても酸窒化チタンの粒子表面に付着していてもよく、あるいは酸窒化チタンと複合物を形成していても酸窒化チタンの粒子内部に固溶していてもよい。酸化ケイ素は酸窒化チタン製造の際の焼結防止作用、窒化促進作用や酸窒化チタンを樹脂、溶媒に分散する際の分散効果、塗料中での分散安定性が期待され、無水酸化ケイ素であっても、水分を吸着した酸化ケイ素であっても、含水酸化ケイ素の状態であってもよく、酸窒化チタンを高温度で製造する際に用いると無水酸化ケイ素となり易い。酸化ケイ素はSiOの状態で存在すると考えているが、酸窒化チタン製造の際にアンモニアガス、アミンガス等で高温焼成すると、酸化ケイ素の一部が窒化されて酸窒化物あるいは窒化物を生成する場合が起こるかもしれないが、本発明ではケイ素の酸窒化物、あるいはケイ素の窒化物が存在していてもよい。含有する酸化ケイ素のモル比nは0.05≦n≦0.15の範囲の実数を取り得るが、0.075≦n≦0.14の範囲が好ましく、0.10≦n≦0.13の範囲がより好ましい。
チタン原子、ケイ素原子はICP発光分光分析法により分析し、窒素原子は炭素・水素・窒素分析装置により分析し、それらの値からx、nを算出する。酸素原子は不活性ガス搬送融解赤外線吸収法を用いて分析し、ケイ素原子が存在する場合は、ケイ素原子が酸素原子と結合し酸化ケイ素SiOになっているものと想定し、酸素原子の分析値からケイ素原子と結合してSiOとなる酸素原子分を差し引いた値をTiNxOy中の酸素原子の値とし、その値からyを算出する。
【0009】
(2)酸窒化チタンの窒素含有量、酸素含有量
TiNxOy・nSiOにはNで表される窒素含有量が10〜20重量%の範囲であることが重要であり、11〜19重量%の範囲がより好ましく、12〜18重量%の範囲が更に好ましい。窒素含有量が10重量%より少なくても、あるいは20重量%より多くても黒色度が低くなるため好ましくない。
一方、TiNxOy中のOで表される酸素含有量は、3〜25重量%程度の範囲で含まれていると経時的に酸化が進み難く安定しているので好ましく、5〜20重量%程度の範囲がより好ましく、10〜20重量%程度の範囲が更に好ましく、15〜20重量%程度の範囲が更に好ましい。
【0010】
(3)酸窒化チタンのX線回折
酸窒化チタンのX線回折(Cuα線使用)では、2θとして40〜45°の間にメイン(第一)ピークが、35〜40°の間に第二ピークが観察でき、窒素含有量を多くすると第一ピークの角度は徐々に小さい側にシフトし、例えば、窒素含有量が15重量%程度であれば2θが43.1°程度、20重量%程度であれば43.0°程度になり、本発明の酸窒化チタンは43.0°〜43.5°の範囲にメイン(第一)ピークが確認されるが、窒化チタンのピーク位置(42.6°)とは異なることから、本発明の酸窒化チタンは窒化チタン、あるいはその表面を部分的に酸化したものとは異なる。また、酸窒化チタンは二酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンやTiO、Ti、Tiなどの低次酸化チタン等のチタン酸化物をアンモニアガス、アミンガス等で加熱焼成して得られるため、出発原料として用いたチタン酸化物が残存する場合は二酸化チタン等に由来するX線回折ピークが確認できるが、本発明では不純物となる二酸化チタン等を存在させない程度まで還元するのが好ましい。一方、酸化ケイ素のX線回折ピークはそれが相当量存在する場合でも確認できない。
酸窒化チタンのX線回折メイン(第一)ピークの半価幅より式1のScherrerの式を用いて、酸窒化チタン粒子を構成する結晶子の大きさを求めることができる。市販のチタンブラックでは結晶子径が26nmであるが、本発明の酸窒化チタンはこの結晶子径が7nm以上17nm未満の範囲であることが重要であり、その範囲であるとサイズ効果により窒化度を高くしても比較的高い黒色度を有しているので好ましく、8〜16.5nmの範囲がより好ましく、9〜16nmの範囲が更に好ましく、10〜16nmの範囲が最も好ましい。
式1:D=0.9λ/(β1/2×cosθ)
(式1中、Dは算出される結晶子径(Å)、λはX線波長であり、Cuα線波長の1.54Åを用いる。β1/2はメイン(第一)ピークの半価幅(ラジアン)を、θは反射角を示す。)
【0011】
(4)酸窒化チタンの黒色度
酸窒化チタンは黒色系の色彩を有しており、純粋な黒色のほかに青味がかった黒色、紫がかった黒色、赤味がかった黒色、茶色味がかった黒色など黒色のほかに別の色彩を呈していてもよい。酸窒化チタンの明度、色相は、試料1.5gをガラス製の丸セル(日本電色製、部品No.1483)に入れ、セルの底から色差計(日本電色製Color Meter ZE2000)を用いてLab表色系により求める。黒色度はLab表色系の明度指数L値で表され、L値が小さいほど黒色度が強いことを示し、本発明の酸窒化チタンにおいては例えばL値が2〜14程度の黒色度を有することができ、好ましくは3〜8程度とすることができる。
また、L値と同様にして求められるLab表色系のa値、b値は色相彩度を表す指数であり、a値が正側に大きくなるほど赤味が強く負側に大きくなるほど緑味が強いことを示し、b値が正側に大きくなるほど黄味が強く負側に大きくなるほど青味が強いことを示す。本発明の酸窒化チタンにおいては例えばa値が−3〜2程度、b値が−5〜−1程度の色相を有することができる。
【0012】
(5)酸窒化チタンの可視光吸収率
酸窒化チタンは黒色系の色彩を有するため可視光の波長全域にわたって吸収が大きいが、黒色顔料として用いる場合は特にその吸収がより大きいものが好ましい。可視光の吸収率は(100−反射率)(%)から簡易的に求めることができ、その可視光の反射率は、紫外可視分光光度計(日本分光製V−570)を用いて酸窒化チタン粉末0.3gを円筒セル(直径16mm、日本分光製PSH−001型)に詰めて可視光の反射スペクトルを測定して求めることができる(比較試料として硫酸バリウム粉末を使用)。本発明の酸窒化チタンは窒化度が高く、しかも結晶子径が小さいことからそのサイズ効果により、可視光の反射率が小さくなり、例えば650nmの波長の反射率では、12%以下程度であるのが好ましく、11%以下程度がより好ましく、550nmの波長の反射率では、11%以下程度であるのが好ましく、450nmの波長の反射率では、12%以下程度であるのが好ましい。
【0013】
(6)酸窒化チタンの粒子径
TiNxOy・nSiOの粒子は、電子顕微鏡で観察してその粒子径が0.005〜0.25μm程度の範囲であると優れた顔料特性を有するため好ましく、0.005〜0.15μm程度の範囲がより好ましく、0.005〜0.05μm程度の範囲が更に好ましく、0.01〜0.03μm程度の範囲が最も好ましい。酸化ケイ素を含む場合、電子顕微鏡ではその存在を確認することはできないが、酸化ケイ素は酸窒化チタン粒子の表面に付着していると推定しており、その粒子径は測定しない。
【0014】
(7)酸窒化チタンの比表面積
酸窒化チタンの比表面積はBET法により測定して、30〜200m/g程度の範囲であると黒色度が高くなるため好ましく、樹脂バインダーへの分散性も加味すると50〜150m/g程度の範囲にするのがより好ましく、50〜100m/g程度の範囲が更に好ましく、60〜90m/g程度の範囲にするのが最も好ましい。
また、BET法により測定した比表面積値から下記式2を用いて、酸窒化チタン粒子を球形状と仮定した粒子径を算出することができ、比表面積が50〜150m/gの範囲では8〜24nm程度となる。
式2:d=6×10/(SSA×ρ)
(式2中、dは算出される粒子径(nm)、SSAは比表面積値(m/g)を示し、ρは窒化チタンの密度(g/cm)であり、ここでは4.9を用いる。6は球形状係数である。)
また、BET法により測定した比表面積値から算出した粒子径を前記のX線回折計を用いて測定した結晶子径で除した割合は、本発明では小さな値となるのが特徴である。通常は酸窒化チタン粒子がある程度凝集しているため、X線回折計で測定した結晶子径に対する比表面積値から算出した粒子径の比は2〜6程度になるが、本発明では好ましくは0.9〜1.5程度の範囲、より好ましくは1.0〜1.4程度の範囲となり、凝集粒子がほとんど存在していないと言える。
【0015】
本発明の酸窒化チタンは、窒素含有還元剤の存在下でチタン酸化物を装填した装置の温度を600〜1200℃程度の範囲の温度に昇温し加熱焼成することで製造でき、チタン酸化物の粒子表面に酸化ケイ素を被覆することにより製造できる。加熱焼成温度は800〜1100℃程度の範囲が好ましく、850〜1050℃程度がより好ましい。加熱焼成温度が前記範囲より低いと窒化が進み難く所望の酸窒化チタンが得られ難いので好ましくなく、前記範囲より高いと焼結が進み微細な粒子が得られ難いので好ましくない。加熱焼成時間はチタン酸化物や窒素含有還元剤の量によって異なるため適宜設定することになるが、操業上1〜20時間程度が適当であり、3〜10時間程度が好ましい。また、加熱焼成を行った後冷却し、その後更に加熱焼成を繰り返し行ってもよい。加熱焼成装置は、流動層装置、ロータリーキルン、トンネルキルン等の公知のものを用いることができ、特に、ロータリーキルンが好ましい。窒素含有還元剤としては、例えば、アンモニアや、メチルアミン、ジメチルアミン等のアルキルアミン、ヒドラジン及び硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン系化合物等を用いることができ、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。中でもアンモニア及びアルキルアミンは、ガス状にしてチタン酸化物と接触させることができ、均一に反応させ易いので好ましい。さらに、これらの窒素含有還元剤に窒素、水素、炭化水素を微量添加すると窒化を促進することができ、好ましい。特に、炭化水素は、チタン酸化物中の酸素と反応し、二酸化炭素となり、窒化反応を抑制する水の生成が抑制できるため好ましい。
【0016】
本発明で言うチタン酸化物は、通常のルチル型(R型)、アナターゼ型(A型)等の二酸化チタンのほかに、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンやTiO、Ti、Tiなどの低次酸化チタンを包含する化合物である。二酸化チタンは、例えば、含水酸化チタン(又は水酸化チタン)を空気又は酸素含有ガスの雰囲気下あるいは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で800〜1000℃程度の温度で加熱焼成することで得られる。また、含水酸化チタンは、例えば、イルミナイト鉱、チタンスラグ等のチタン含有鉱石を必要に応じて粉砕し、硫酸で溶解させながらチタン成分と硫酸とを反応させて、硫酸チタニル(TiOSO4)を生成させ、静置分級、濾過した後、硫酸チタニルを加熱加水分解することで得られる。窒素含有還元剤の存在下でチタン酸化物を加熱焼成する窒化反応において水が存在すると窒化が進み難くなるので、水和酸化チタン、含水酸化チタン、水酸化チタンより二酸化チタンを使用する方が好ましく、ルチル型よりアナターゼ型の二酸化チタンの方が窒化され易いためより好ましい。本発明では、チタン酸化物のX線回折メイン(第一)ピークの半価幅より式1のScherrerの式を用いて算出したチタン酸化物の結晶子径では5〜50nm程度の範囲が好ましく、10〜40nm程度の範囲がより好ましく、10〜30nm程度の範囲が更に好ましく、10〜20nm程度の範囲が最も好ましい。また、電子顕微鏡で観察してその粒子径が0.005〜0.25μm程度の範囲が好ましく、0.005〜0.15μm程度の範囲がより好ましく、0.005〜0.1μm程度の範囲が更に好ましく、0.005〜0.05μm程度の範囲が最も好ましい。また、BET法で測定したチタン酸化物の比表面積では20〜200m/g程度の範囲が好ましく、30〜150m/g程度の範囲がより好ましく、40〜100m/g程度の範囲が更に好ましく、50〜90m/g程度の範囲が最も好ましい。
【0017】
本発明においては、チタン酸化物の粒子表面に酸化ケイ素を被覆した後、加熱焼成すると、前記の範囲の高温度でも粒子が焼結し難く、更に反応過程でルチル型の二酸化チタンが生成し難いため窒化が進み易く、微細な酸窒化チタンが更に得られ易くなるので好ましい。酸化ケイ素は多孔質酸化ケイ素として被覆しても、緻密酸化ケイ素として被覆してもよいが、緻密酸化ケイ素として被覆すると、焼結抑制の効果が得られ易く好ましい。酸化ケイ素の被覆量は、加熱焼成して得られるTiNxOyに対するモル比nで表して0.05≦n≦0.15の範囲となる量であればよく、0.075≦n≦0.15の範囲が好ましく、0.01≦n≦0.14の範囲がより好ましい。酸化ケイ素の被覆量が前記範囲より少ないと所望の焼結抑制効果が得られ難く、多いと窒化が進み難いため、好ましくない。
【0018】
緻密酸化ケイ素の被覆方法は、特開昭53−33228号公報、特開平7−8971号公報等に記載されているような公知の方法を用いることができる。特開昭53−33228号公報に記載の方法は、チタン酸化物のスラリーを80〜100℃の範囲の温度に維持しながら、好ましくはスラリーのpHを9〜10.5の範囲に調整し、ケイ酸ナトリウムを急速に添加した後、9〜10.5の範囲のpHで中和し、その後、80〜100℃の範囲の温度を50〜60分間保持するものである。特開平7−8971号公報に記載の方法は、チタン酸化物のスラリーのpHを9.5〜11の範囲に調整した後、60℃以上、好ましくは70℃以上、更に好ましくは90℃以上の温度下で、ケイ酸塩を30〜120分間かけて徐々に添加した後、中和し、その後、スラリー温度を維持しながら60〜120分間保持するものである。ケイ酸塩には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を用いることができ、中和剤には、硫酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸等の有機酸等の酸性化合物を用いることができる。酸化ケイ素を被覆した後は、好ましくは脱水、洗浄し、加熱焼成工程に供する。
【0019】
酸窒化チタンを製造した後は、必要に応じて公知の方法により、乾式粉砕を行ってもよく、あるいはスラリー化した後、湿式粉砕、脱水、乾燥し、乾式粉砕してもよい。湿式粉砕には縦型サンドミル、横型サンドミル等が、乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター等が、乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、解砕機等の摩砕粉砕機、ジェットミル、スネイルミル等の気流粉砕機や、噴霧乾燥機等の機器を用いることができる。
【0020】
本発明の酸窒化チタンの粒子表面には、樹脂バインダーとの親和性を向上させたり、生産性を改良する等の目的で、無機化合物、有機化合物から選ばれる少なくとも1種が被覆されていてもよい。無機化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、アンチモン化合物等が挙げられ、これらを1種被覆することも、2種以上の被覆を積層したり、2種以上の無機化合物を混合して被覆する等して、組合せて用いることもできる。これらの無機化合物が酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種であれば、更に好ましい。また、有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、(1)多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリプロパノールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。(2)アルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。(3)有機ケイ素化合物としては、(a)ポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、両末端アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、両末端エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等)、(b)オルガノシラン類(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシランなどのアルキルシラン類、フェニルトリエトキシシランなどのフェニルシラン類、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのフルオロシラン類等の非反応性シラン類、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等)が挙げられる。(4)高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸等が、それらの金属塩としてはマグネシウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。(5)有機金属化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネートなどのチタニウム系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレートなどのジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらは1種被覆することも、2種以上を組合せて被覆することもできる。被覆量は適宜設定できるが、酸窒化チタンに対し0.01〜30重量%程度の範囲であるのが好ましく、0.05〜10重量%程度の範囲がより好ましく、0.1〜5重量%程度の範囲が更に好ましい。酸窒化チタンの表面に無機化合物や有機化合物を被覆する場合は、酸窒化チタンの乾式粉砕の際、スラリー化した際あるいは湿式粉砕した際に公知の方法を用いて行うことができる。
【0021】
本発明の黒色系酸窒化チタンは黒色顔料としてあるいは導電性付与剤として、塗料、インキやフィルム等のプラスチック成形物などの樹脂に配合すると、その優れた黒色性能あるいは導電性能を利用した樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物には、本発明の黒色系酸窒化チタンを任意の量、好ましくは20重量%以上を配合し、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、さらに各種の添加剤を配合してもよい。塗料やインキとする場合であれば、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合する。塗膜形成材料としては例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネートなどの無機系成分を用いることができ、インキ膜形成材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酢ビ樹脂、塩素化プロピレン樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを用いることができ特に制限はないが、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。また、プラスチックス成形物であれば、プラスチックス、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の黒色系酸窒化チタンとともに練り込み、フィルム状などの任意の形状に成形する。プラスチックスとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0023】
実施例1
1.二酸化チタンへの酸化ケイ素の被覆
含水二酸化チタンをTiO換算で300gを水1リットルに懸濁させスラリーとし、水酸化ナトリウム水溶液で該スラリーのpHを10に調整し、次いでスラリー温度を70℃に加温した後、ケイ酸ナトリウム水溶液を2時間滴下した。引き続き、スラリー温度を90℃に加温した後、希硫酸を2時間滴下して、pHを5に中和し、更に、30分保持した。その後、脱水、洗浄して、さらに空気中で850℃で5時間焼成して、緻密な酸化ケイ素(SiOとして9重量%)を被覆した二酸化チタンを得た。得られた二酸化チタンはアナタ−ゼ型であった。
なお、得られた緻密な酸化ケイ素を被覆した二酸化チタンの粒子径は0.020μmであり、結晶子径は19nmであり、比表面積は79.7m/gであった。
2.二酸化チタンの還元焼成
次に、この酸化ケイ素を被覆した二酸化チタンを内径7.5cmの石英管に装入し、アンモニアガスを10リットル/分の流速で通気しながら、石英管を900℃の温度で3時間加熱した。次いで、得られた生成物を同雰囲気下で100℃まで冷却し、更に大気中で常温まで放冷して本発明の酸窒化チタン(試料A)を得た。
【0024】
実施例2
実施例1において、900℃の還元焼成温度を980℃とすること以外は実施例1と同様にして本発明の酸窒化チタン(試料B)を得た。
【0025】
比較例1
酸化ケイ素を被覆していない二酸化チタンを内径7.5cmの石英管に装入し、アンモニアガスを10リットル/分の流速で通気しながら、石英管を980℃で3時間加熱した。次いで、得られた生成物を同雰囲気下で100℃まで冷却し、更に大気中で常温まで放冷して本発明の酸窒化チタン(試料C)を得た。
なお、酸化ケイ素を被覆しない二酸化チタンの粒子径は0.15〜0.40μmであり、結晶子径は56nmであり、比表面積は4.4m/gであり、実施例1で用いた含水二酸化チタンを空気中850℃で5時間焼成して得た。
【0026】
比較例2
市販のチタンブラック(三菱マテリアル製、13M−C)を比較試料Dとした。
【0027】
実施例及び比較例で得た試料A〜Dの組成、特性を表1に示す。本発明の酸窒化チタンは結晶子径が小さいため、L値が小さく黒色度が高く、可視光反射率が低いことがわかる。また、結晶子径に対する比表面積から算出した粒子径の比が小さく、凝集粒子が少ないことがわかる。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の酸窒化チタンは優れた黒色度を有することから、黒色顔料として樹脂、塗料、インキ等に配合して種々の用途に用いられる。また、本発明の酸窒化チタンは微細なものであり、しかも、凝集粒子が少ないものであることからその配合量を調整すると黒色でありながら透明性をも備えたものとすることができ、可視光の透過量を減少させる部材として、例えばガラス、レンズ、フィルム等に配合して用いることもできる。また、本発明の酸窒化チタンは導電性付与剤としてフィルム、繊維、トナー、磁気記録媒体等に配合して用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られた試料Aの可視光反射スペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例2で得られた試料Bの可視光反射スペクトルを示すグラフである。
【図3】比較例1で得られた試料Cの可視光反射スペクトルを示すグラフである。
【図4】比較例2で得られた試料Dの可視光反射スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:TiNxOy・nSiO(組成式中、Tiはチタン原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Siはケイ素原子を表し、xはチタン原子に対する窒素原子の比を、yはチタン原子に対する酸素原子の比を表し、x、yはそれぞれ0より大きく2未満の実数を取り得る。nはTiNxOyに対するSiOのモル比を表し、nは0.05≦n≦0.15の範囲の実数を取り得る。)で表され、しかも、Nで表される窒素原子を10〜20重量%の範囲を含み、かつ、X線回折計を用いて測定した結晶子径が7nm以上17nm未満であることを特徴とする黒色系酸窒化チタン。
【請求項2】
TiNxOy・nSiOの比表面積が50〜100m/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の黒色系酸窒化チタン。
【請求項3】
X線回折計を用いて測定した結晶子径に対して、BET法により測定した比表面積値から下記式1で算出した粒子径の比が0.9〜1.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の黒色系酸窒化チタン。
式1:d=6×10/(SSA×ρ)
(式1中、dは算出される粒子径(nm)、SSAは比表面積値(m/g)を示し、ρは酸窒化チタンの密度(g/cm)であり、ここでは4.9を用いる。6は球形状係数である。)
【請求項4】
粒子表面に、0.01〜30重量%の範囲の無機化合物及び/又は有機化合物を被覆してなることを特徴とする請求項1に記載の黒色系酸窒化チタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182627(P2006−182627A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381128(P2004−381128)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】