説明

黒酢入り菓子及び黒酢入り菓子の製造方法

【課題】本発明は、菓子生地に黒酢もろみを混ぜあわせることで黒酢独特の風味を感じさせない菓子を可能とする黒酢入り菓子及び黒酢入り菓子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、裏ごしされた黒酢もろみに、鶏卵、小麦粉、甘味料として砂糖及び黒酢を加えて混練した菓子生地を焼成することにより粘りのある健康増進作用を持つ黒酢入り菓子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒酢入り菓子及び黒酢入り菓子の製造方法に関する。詳しくは小麦粉に黒酢もろみと黒酢を入れた黒酢入り菓子及び黒酢入り菓子の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
黒酢は、米、米麹および水を壷の中で糖化、アルコール発酵、酢酸発酵の三段階を経て造られるものであり、この黒酢には、脂質代謝改善作用、赤血球変形機能改善作用、抗アレルギー作用、血圧調節作用、血糖調節作用などがあるとされている。
【0003】
この黒酢そのものを飲むには酢独特の刺激臭があるために、黒酢に蜂蜜を入れて飲む、あるいは菓子生地に混ぜ合わせた菓子として食される場合がある。
ここで、菓子生地を作る際には、多くの場合は鶏卵が使用されているのであるが、鶏卵の白身に対して黒酢は分離してしまうために充分に混練することができない。そのため、鶏卵の黄身のみを使用することが一般的であるが、白身を使用せずに黄身のみを使用した場合には、焼き上げた後にふっくら感が無く、更に黒酢の独特の風味が残るなどの問題がある。
【0004】
そこで、従来より健康増進作用をもつものとして黒酢を用いた健康食品が提案されており、例えば特許文献1に記載されている。具体的には黒酢エキスと、カルシウムと、ヘム鉄とを含んだ健康食品であって、カルシウムは特に卵殻カルシウムを用い、黒酢エキス70〜75質量%、卵殻カルシウム29〜25質量%。ヘム鉄3〜5質量%から構成された粉末状をカプセルに充填して構成されている。
【0005】
また、菓子、パン等の食品に添加する固形醸造酢が例えば特許文献2に記載されている。具体的には、黒酢に膨化穀類、膨化でんぷんまたはその細砕物を加え攪拌混合させて黒酢に吸着させ、これを乾燥させて顆粒状とし、菓子、パン等の食品に添加する固形醸造酢が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−29020号公報
【特許文献2】特開平6−7147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1における発明では、黒酢エキスは、醸造された黒酢を減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末状に製造されるものである。そして、黒酢の醸造においては黒酢もろみが副産物として産出され、この黒酢もろみは、その殆んどが家畜飼料等に利用されているのが現状である。
【0008】
更に、粉末状の黒酢は特有の刺激臭が有り、菓子、パン生地等に添加した場合には菓子特有の風味が損なわれることからカプセルに充填して水などにより飲み込むものであり、味覚のない単なる栄養補助食品であり、多くの人から支持されることがない。
【0009】
また、特許文献2における発明では、黒酢に膨化穀類、膨化でんぷんまたはその細砕物を加え攪拌混合させて黒酢に吸着させ、これを乾燥させて顆粒状とした固形醸造酢であり、この固形醸造酢を菓子、パン生地に添加して菓子、パンを焼成した場合には、生地に固形醸造酢が馴染まないために黒酢独特の刺激臭や味覚が残り、菓子として食すには無理が生じる恐れがある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、菓子生地に黒酢もろみを混ぜあわせることで黒酢独特の風味を感じさせない菓子を実現とする黒酢入り菓子および黒酢入り菓子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る黒酢入り菓子は、黒酢もろみと、鶏卵、小麦粉、甘味料及び黒酢を含んでなる。
【0012】
ここで、黒酢もろみに、鶏卵を加えることにより白身が分離することなく混ぜ合わせることが可能となり、更に小麦粉、甘味料として砂糖および黒酢を加えて混練した菓子生地を焼成することによりふっくらとした粘りのある健康増進作用を持つ黒酢入り菓子を提供することができる。
【0013】
また、黒酢もろみは、裏ごしされることにより、鶏卵、小麦粉、甘味料と満遍なく混錬され、きめ細かい菓子生地を作ることが可能となる。
【0014】
また、甘味料が、砂糖、黒砂糖、あるいは蜂蜜の少なくとも一種以上から構成されることにより、例えば黒砂糖特有の風味、あるいは蜂蜜特有の風味や栄養価を加えることでバリエーション豊富な黒酢入り菓子を提供することができる。
【0015】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る黒酢入り菓子の製造方法は、黒酢もろみに水を加えて攪拌し、裏ごしをする黒酢もろみの準備工程と、裏ごしをした黒酢もろみに、鶏卵、小麦粉、甘味料および水を加えて攪拌し、更に黒酢を加えて菓子生地を製造する菓子生地製造工程と、菓子生地を焼き上げる焼成工程とを備える。
【0016】
ここで、裏ごしされた黒酢もろみに、鶏卵、小麦粉、甘味料および水を加えることにより鶏卵の白身が分離することなく混練することが可能となり、更に黒酢を加えた菓子生地を焼成することにより粘りのある健康増進作用を持つ黒酢入り菓子を提供することができる。
【0017】
また、菓子生地製造工程では、前記甘味料として砂糖、黒砂糖、あるいは蜂蜜の少なくとも一種以上を加えることにより、黒砂糖、あるいは蜂蜜独特の風味や味覚を作り出すことが可能となりバリエーション豊富な黒酢入り菓子を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の黒酢入り菓子によれば、黒酢もろみを使用することにより鶏卵の白身を捨てることなく混ぜ合わせることができ、更に黒酢を加えても黒酢独特の刺激臭が黒酢もろみの持つ甘味によって抑制され、食べやすい菓子を得ることが可能となる。
【0019】
また、黒酢もろみと鶏卵の白身とが分離することなく混ぜ合わせることができために、ふっくらと焼き上げることができると共に、黒酢を加えても甘味があり黒酢特有の健康増進作用を有する菓子を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した黒酢入り菓子の一例としてせんべいの製造工程を示すフローチャート図である。
【0021】
ここで、黒酢もろみの準備工程1として、米、米麹および水を壷の中で糖化、アルコール発酵、酢酸発酵の三段階を経て壷から取り出された黒酢もろみ1500gをフードプロセッサーで約10分間粉砕、攪拌をする。そして粉砕された黒酢もろみに対して水約2リットルを加え、さらに10分間攪拌してペースト状となったものを12メッシュの網で裏ごしをする。
【0022】
次に、菓子生地製造工程2として、裏ごしをした黒酢もろみに卵1500g、蜂蜜250g、小麦粉5kg、砂糖4.75kgおよび水800ccを加えてミキサーで攪拌し、更に黒酢500ccを加えて練り込んだ後25分間寝かして菓子生地を作成した。
【0023】
その後、焼成工程3として、充分に寝かし込んだ菓子生地を各種のせんべい形状に整えて煎餅焼成機にて約170度で9分間焼成することでせんべいとして焼き上げた。
【0024】
本発明を適用した黒酢入りせんべいでは、裏ごしをした黒酢もろみに対して鶏卵(黄身、白身)を加えた場合に白身が分離することなく混ぜ合わせることができ、更に蜂蜜、小麦粉、砂糖および水を加えた後に黒酢を加えても鶏卵(黄身、白身)が充分に黒酢もろみに馴染んでいるために黒酢と白身が反応することはなかった。
【0025】
ここで、焼き上がった煎餅は、小麦粉だけの煎餅に比べて粘りがあり、噛むほどに甘味がでることが判った。これは黒酢もろみを加えることにより生地を焼成しても粘りがでて甘味が生じ、かつ黒酢を加えることで黒酢特有の刺激臭が抑えられていることが推測される。
【0026】
なお、黒酢もろみに対して鶏卵、蜂蜜、小麦粉、砂糖、黒酢を加えた後に、胡麻、あるいはブルーベリーなどを加えることで胡麻の持つ特有の抗酸化作用による肝機能を改善する効果、コレステロールの上昇を抑えて血圧を下げる効果、脂質代謝促進効果がり、あるいはブルーベリーに含まれるアントシアニンは瞳のための栄養素となり目の健康を維持する効果を有し、黒酢との相乗効果によりバリエーション豊富な煎餅を製造することができる。
【0027】
また、黒酢もろみと鶏卵とを混ぜ合わせることにより白身が分離することなく黒酢もろみ及び小麦粉とが馴染んだ状態となりふっくらとした焼き上がりとなり、特有の刺激臭がなく、風味のよい煎餅を得ることができる。
【0028】
更に、黒酢にはアミノ酸、有機酸、ビタミン類、ミネラル類が含まれており、その中でも特に豊富に含まれるアミノ酸は一般的な米酢の約7倍もの量を含んでおり、したがって、子供からお年よりまで毎日のおやつとして食すことにより、黒酢に含まれるアミノ酸が血圧、血糖値およびコレステロール値を安定させ健康を維持させる効果を得ることができる。
【0029】
また、本実施例では煎餅の製造方法のみを詳述したが、必ずしも煎餅である必要性は無く、黒酢もろみに対して鶏卵、蜂蜜、小麦粉、砂糖を加えた後に牛乳やチーズなどの乳製品を加えて焼き上げたクッキーやビスケットなどの菓子であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した黒酢入り菓子の一例としてせんべいの製造工程を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0031】
1 黒酢もろみの準備工程
2 菓子生地製造工程
3 焼成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酢もろみと、鶏卵、小麦粉、甘味料及び黒酢を含んでなる
黒酢入り菓子。
【請求項2】
前記黒酢もろみは、裏ごしされている
請求項1に記載の黒酢入り菓子。
【請求項3】
前記甘味料は、砂糖、黒砂糖、あるいは蜂蜜の少なくとも一種以上から構成される
請求項1または請求項2に記載の黒酢入り菓子。
【請求項4】
黒酢もろみに水を加えて攪拌し、裏ごしをする黒酢もろみの準備工程と、
前記裏ごしをした黒酢もろみに、鶏卵、小麦粉、甘味料および水を加えて攪拌し、更に黒酢を加えて菓子生地を製造する菓子生地製造工程と、
前記菓子生地を焼き上げる焼成工程とを備える
黒酢入り菓子の製造方法。
【請求項5】
前記菓子生地製造工程では、前記甘味料として砂糖、黒砂糖、あるいは蜂蜜の少なくとも一種以上を加える
請求項4に記載の黒酢入り菓子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−75076(P2010−75076A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245230(P2008−245230)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500220061)有限会社長命ヘルシン酢醸造 (1)
【Fターム(参考)】