説明

黴に対する穀物及び食料の保護用阻止剤

【課題】穀物及び食料における黴を阻止するための製剤を提供する。
【解決手段】55容量%以下のプロピオン酸水溶液;約4〜約6にpHを調整する量の水酸化アンモニウムなどの塩基、及びラウリル硫酸ナトリウムなどの可溶化剤を含む改良した効力の黴阻止剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、概して、黴阻止剤に関し、さらに詳細には、黴に対する穀物及び食料の保護用の改良したプロピオン酸系阻止剤に関する。この独特の黴阻止剤製剤はプロピオン酸の塩及び可溶化剤を組み合わせる。
【0002】
環境中の微生物の広範囲に及ぶ発生及び繁殖が穀物や食料成分を含む有機物質の分解をもたらす。穀類はエネルギーと動物食餌中のタンパク質の重要な源を構成する。悪気候条件下で、原材料を管理することは、許容できる食料品質を維持するために重要である。穀物は、貯蔵中に発生するマイコトキシン化合物を生じさせる黴を発生させる可能性がある。穀物中の高水分は黴やマイコトキシンの発生を促進させる。
【0003】
プロピオン酸系黴阻止剤は、黴に対する穀物や動物飼料の保護のために費用効果的で効率の高い製品として広く受け入れられる。プロピオン酸は、合衆国連邦農務省(United States Federal Department of Agriculture:USFDA)により安全食品として公認されている(Generally Recognized As Safe:GRAS)。多くの企業は、食料産業の種々のニーズのために様々なプロピオン酸系黴阻止剤製品を提供している。これらの製品の殆どが非常に高濃度のプロピオン酸を含有し、黴阻止剤を施用するのに使用される設備や処置した食料及び穀物を取り扱う及び貯蔵する設備を腐食させる可能性がある。
【0004】
したがって、良好な黴阻止特性を持ちしかもサブストレート(substrate)に対して改良
した展性を持つ低価格の黴阻止剤に対する必要性がある。本発明の製剤は、より廉価で、約4を超えるpHを示し、市場にある既存の製品よりもプロピオン酸の量が少ない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、穀物及び食料における黴を阻止するための製剤からなる。当該製剤はプロピオン酸を基礎とし、pH上昇用塩基、可溶化剤、及びエッセンシャルオイルを含む。プロピオン酸の量は、公知のプロピオン酸系黴阻止剤よりも少ない。良好な展性特性を持つ(すなわち、高HLB数)可溶化剤を製剤中に含有し、保護されるサブストレート全体せわたって製剤の分布を改良する。エッセンシャルオイル、好ましくは、桂皮油が、製剤中に含まれる。桂皮油は抗微生物特性を示し、製剤の腐食性を減少させる。製剤は一層減少させた量の主要活性成分(プロピオン酸)を有し、驚いたことに、黴阻止時に一層有効である。可溶化剤の添加は製剤の黴阻止特性を増強する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、二酸化炭素生成試験を使用するトウモロコシの試料で増殖した黴に対するラウリル硫酸ナトリウムの作用を示す図表である。
【図2】図2は、二酸化炭素生成試験を使用するトウモロコシの試料で増殖した黴に対する異なる濃度のラウリル硫酸ナトリウムを用いて黴阻止剤製剤の作用を示す図表である。
【図3】図3は、MucorAspergillus及びPenicillium種に対する可溶化剤を含有する黴阻止剤製剤及び可溶化剤を含有しない黴阻止剤製剤の作用を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
プロピオン酸系黴阻止剤は、中和していない形態又は一種以上の塩基と組み合わせた状態のいずれかのプロピオン酸を含有する黴阻止剤である。
本発明の黴阻止剤においてプロピオン酸を中和するのに使用する塩基はアルカリ元素の水酸化物があり、具体的には、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム等があり、好ましくは、水酸化アンモニウムである。
【0008】
本発明の製剤中に含まれる可溶化剤には、高HLB数の界面活性剤があり、好ましくは7を超え、具体的には、アニオン界面活性剤があり、より具体的には、N−セチル−N−エチルモルホリニウムエトサルフェート、N−ソヤ−N−エチルモルホリニウムエトサルフェート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシレンラウリルエーテル、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、及びラウリル硫酸ナトリウム等がある
本発明の製剤に含まれるエッセンシャルオイルには、レモングラス油、パルマローザ油、丁子油、桂皮油、ユーカリ油、セージ油、タイム油、及びカッシア油等がある。
【実施例】
【0009】
(実施例1)
材料及び方法
使用する総ての化学品及び試薬は工業等級だった。総ての試験は二回行った。
【0010】
二酸化炭素生成方法を、製剤の効力を評価するための方法として使用するために選択した。試験のために飼料用トウモロコシ試料を使用した。トウモロコシの150g試料を採取し、試料の水分を16%に調整した。1kg/Tonに等しい用量で黴阻止剤を試料に加えた。次いで、試料を徹底的に混合した。未処置試料をコントロールとして使用した。試料を滅菌500mlガラス瓶に入れた。各容器を入口バルブと出口バルブの双方を備えた加工キャップで密にスクリュー締めした。25℃で容器をインキュベートした。頭部空間の二酸化炭素濃度を、理研計器(日本、東京)製赤外線ガス分析計(Model RI-555)を使用して二日毎に測定した。二酸化炭素濃度を時間に対してプロットし、濃度曲線下面積を計算した。
【0011】
例にMucorAspergillus及びPenicilliumの三種の黴を使用のために選択した。Mucor種の試料を腐敗パンから単離した。他の2種の微生物、具体的に、Aspergillus flavus ATCC24125及びPenicillium chrysogenum ATCC48908をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(バージニア州、マナッサス)から入手した。
【0012】
ディスク拡散法を使用して異なる製剤を評価し、比較した。Becton Dickinson and Company USAからポテトデキストロース寒天(Potato Dextrose Agar:PDA)を入手した。寒天平板(直径14cm)を調製し、室温に設定した。懸濁液中のPenicilliumAspergillus及びMucorの胞子濃度を、それぞれ、1.725×10、1.45×10及び2.85×10だった。続いて、試験した微生物の胞子懸濁液を各300μL容量をPDA固体培地平板上に広げた。滅菌紙ディスク(直径6mm)を乾燥した培養済み平板上に置き、15μLの各試験物質を当該ディスク上にゆっくりと加えた。続いて、平板を25℃で48時間インキュベートした。阻止領域の直径を測定し、報告した。
【0013】
結果及び考察
新規製品組成物:新規な製品製剤は約25%〜55%、好ましくは35%〜40%の量
のプロピオン酸、約pH4〜約pH6に製剤のpHを調整する量の塩基(普通、5%〜25%、好ましくは、アルカリ元素のヒドロキシド、具体的には、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウムであり、最も好ましくは水酸化アンモニウムである)、約0.1%〜約20%、好ましくは、1%〜10%の量の可溶化剤(HLB数が7を超え、最も好ましくは、17を超える、好ましくは、アニオン界面活性剤)、並びに残量の水を含む。当該製剤は、約0.01〜約2%、最も好ましくは、約0.1〜約0.5%のエッセンシャルオイルも含むことができる。好適な実施態様製剤の詳細を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
二酸化炭素試験:二酸化炭素試験は、黴阻止剤の効力を測定するように設計した促進微生物安定試験である。より多くの二酸化炭素生成がより高い黴増殖を示す。効力の高い黴阻止剤はこの試験ではより少ない二酸化炭素を生成し黴から試料を保護する。図1は、水中、1%、5%及び10%のラウリル硫酸ナトリウム並びにネガティブコントロール(トウモロコシ試料のみ)を使用する二酸化炭素からの結果を示す。
【0016】
図1から、ラウリル硫酸ナトリウムで処置したトウモロコシ試料は未処置トウモロコシ試料(ネガティブコントロール)と同じかそれよりも多い二酸化炭素を生成したことが分かる。これらのデータは、トウモロコシへのラウリル硫酸ナトリウムの単独添加が黴増殖を阻止するのに有効でなく、事実上黴増殖を促進し得るということを示した。
【0017】
図2は、異なる濃度のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含有する提唱した黴阻止剤製剤を使用する二酸化炭素から得られた結果を示す。表2は、実験に使用した製剤の詳細を示す。
【0018】
【表2】

【0019】
結果は、処置試料に比較して、未処置トウモロコシ試料は10及び13日目において顕
著により高い量の二酸化炭素を生成したことを示した(図2)。ラウリル硫酸ナトリウムを含有する製剤で処置した試料は改良した黴阻止特性を示した。ラウリル硫酸ナトリウム単独では黴成長を阻止するのに有効でないが(図1)、ポジティブコントロールと組み合わせた場合、ラウリル硫酸ナトリウムが製剤の黴阻止特性を増強することに注意することは重要である。
【0020】
ディスク拡散法:図3は、Aspergillus flavus、Mucor 種、及びPenicillium chrysogenumについてのディスク拡散法からの結果を示す。表1に示した最終製剤並びに表2に示したポジティブコントロール及びポジティブコントロール+1%ラウリル硫酸ナトリウムをこのディスク拡散法に付した。結果は、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する製剤がラウリル硫酸ナトリウムを含有しない製剤よりも優れた性能を示したことを示す。
【0021】
結論
新規な低価格黴阻止剤は、プロピオン酸、水酸化アンモニウム、水及びラウリル硫酸ナトリウムを組み合わせる。ラウリル硫酸ナトリウムの添加は製剤の黴阻止性能を増強する。作用の特定の理論により拘束されないが、本発明の製剤の驚くほど高い効果は、黴の阻止のために施用されるサブストレート一面に製品の改良された分配によりもたらされると思われる。
【0022】
上記の記載は本発明の例証的実施態様を構成する。本明細書で記載した前記実施態様及び方法は、当業者の能力、経験及び好みに基づいて変動し得る。一定の順序で方法の工程を単に挙げたが、必ずしも、当該方法の工程の順序に制限にされない。前述の記述及び図面は単に本発明の説明と例証であり、本発明は、特許請求の範囲がそう制限する以外は、制限されない。本発明を開示された当業者は、意図された特許請求の範囲から逸脱しないで、修正及び変動をなすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
55容量%以下のプロピオン酸水溶液;4〜6にpHを調整する量の塩基、及び可溶化剤を含む改良した効力の黴阻止剤組成物。
【請求項2】
塩基を、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化ナトリウムからなる群から選択する、請求項1に記載の黴阻止剤組成物。
【請求項3】
可溶化剤のHLB数が7を超える、請求項1に記載の黴阻止剤組成物。
【請求項4】
可溶化剤のHLB数が17を超える、請求項3に記載の黴阻止剤組成物。
【請求項5】
可溶化剤を、N−セチル−N−エチルモルホリニウムエトサルフェート、N−ソヤ−N−エチルモルホリニウムエトサルフェート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシレンラウリルエーテル、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の黴阻止剤組成物。
【請求項6】
エッセンシャルオイルをさらに含む請求項1に記載の黴阻止剤組成物。
【請求項7】
エッセンシャルオイルを、レモングラス油、パルマローザ油、丁子油、桂皮油、ユーカリ油、セージ油、タイム油、及びカッシア油からなる群から選択する、請求項6に記載の黴阻止剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28617(P2013−28617A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198790(P2012−198790)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2006−276032(P2006−276032)の分割
【原出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(500462328)ケミン、インダストリーズ、インコーポレーテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】KEMIN INDUSTRIES, INC.
【Fターム(参考)】