説明

鼻の閉塞感を改善する香または線香

【課題】 本発明は4種の生薬を適宜組み合わせて使用し、混練、成形して得た香であって、火をつけて焚いたときの成分の揮発性および拡散性に優れ、鼻の閉塞感を改善し、かつ清涼感を楽しむ香または線香を提供する。
【解決手段】 辛夷:30%以下、艾葉:30%以下、竜脳:10%以下およびユーカリ油:20%以下の少なくとも2種と、炭素質材料:10〜80%、バインダー5〜50%よりなる香又は線香であり、上記材料を適宜に選択した粉末を混合し、液体を添加して混練した後、所定の形状に成形し、好ましくは20℃以下で低温乾燥して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生薬を香りの主成分とする香或いは線香に関し、特に、鼻の閉塞感を改善し、鼻炎などを起こさないように、鼻の粘膜を刺激しないような香或いは線香(以下単に香という)およびその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
香は古くからわが国に伝わってきたものであり、日常生活においてなじみのあるものである。すなわち、静謐な雰囲気や古式の行われる祭場などで香りを楽しむため、また宗教上の儀式で厳格な雰囲気を作るために、それぞれに応じて各種の香から選ばれて使われている。
【0003】
香の原料としては、伽羅、沈香、白壇、丁子、桂皮、大茴香(ダイウイキョウ)、カッコウ、甘松、山奈などの生薬があり、これらに炭素質粉末などの木質基材やバインダーなどの助剤を加えて所望の形状の固形物に形成しており、現在では部屋で香りを楽しむためにハーブや花のエッセンシャルオイルなどの香料を練り込んだお香も作られるようになった。
このような香は、香りを楽しむまたは雰囲気を作り出すために使用されているが、日常生活において、香りを楽しむだけでなく、人体によい効果をあたえることができないかということから、本発明者らは香に機能性を与えることに着目し、鋭意研究の結果、特に鼻の閉塞感、鼻つまりや鼻炎などに対して効用のある香の開発に至った。
【0004】
鼻の閉塞感を改善する生薬の利用について、特許文献1及び特許文献2に開示がある。すなわち、特許文献1には、生薬のうちシンイ(辛夷)をアレルギー性鼻炎用内服液剤に用いることが開示されている。また特許文献2に、ユーカリ油、ヒノキチオール、ハッカ油等を必須成分とし、リュウノウ油等を添加成分とした芳香成分をシートに含有させることにより、消炎効果を有して鼻や喉などをすっきりさせる芳香シートを開示している。
【特許文献1】特開2003−342186号公報
【特許文献2】特開平7−145598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、鼻炎を防ぐために生薬を用いているが、特許文献1は鼻炎防止用内服薬であり、特許文献2は洋服やロッカー内などに入れる芳香シートであって、本発明の使用する生薬の一部に共通性があるが、火を付けて有効成分を空間内に拡散させるお香とは明らかに相違する。
本発明は多数の生薬から選択した4種の生薬を組み合わせて使用し、これを混練し、成形して固形にした香であって、火をつけて焚いたときの成分の揮発性および拡散性に優れ、つまり部屋の隅々までほぼ一定濃度で拡散させ、その空気を吸気して鼻の閉塞感を改善し、かつ、清涼感を楽しむお香を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を要旨とする。すなわち、
(1)辛夷、艾葉、竜脳およびユーカリ油の少なくとも2種を主成分として用い、固形物として成形したことを特徴とする鼻の閉塞感を改善する香または線香。
(2)質量%で、辛夷:30%以下、艾葉:30%以下、竜脳:10%以下およびユーカリ油:20%以下の少なくとも2種を主成分として用い、固形物として成形したことを特徴とする記載の鼻の閉塞感を改善する香または線香。
(3)さらに質量%で、炭素質材料:10〜80%、バインダー5〜50%を混合してなる前記(2)に記載の鼻の閉塞感を改善する香または線香。
(4)質量%で、辛夷:30%以下、艾葉:30%以下、竜脳:10%以下およびユーカリ油:20%以下の少なくとも2種と、炭素質材料:10〜80%、バインダー5〜50%よりなる粉末に液体を添加して混練した後、所定の形状に成形し、20℃以下で低温乾燥したことを特徴とする鼻の閉塞感を改善する香または線香の製造方法。
(5)乾燥を20℃以下の温度で行なうことを特徴とする前記(4)に記載の鼻の閉塞感を改善する香または線香の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明香は選択した2種以上の生薬を配合使用することにより、火をつけて焚いたときの成分の揮発性および拡散性に優れると共に、その空気を吸気して鼻の閉塞感を改善し、かつ、清涼感を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は鼻の閉塞感を改善し、或いは清涼感を楽しむための香であり、数ある香の生薬の中から辛夷、艾葉、竜脳、およびユーカリ油の4種を選び、これらのうち目的とする成分に応じて組み合わせ、香に練り込んで使用する。
鼻の閉塞感を改善するメカニズムは現状ではあまり解明されていないが、香が熱により空間内に拡散され、その成分を鼻から吸気した時に鼻の粘膜に作用することにより、閉塞感の改善がみられると推測している。また、香を焚く際に発生する煙が多いと鼻の粘膜を刺激する恐れがあるため、煙の出るのが少ない配合、すなわち炭を主原料としている。
【0009】
次に本発明で使用する生薬について説明する。
辛夷(シンイ):モクレン科の植物であり、木筆の花蕾を乾燥し、粉末にして使用する。粉末粒度は60メッシュ以下、好ましくは100メッシュ以下とする。使用目的は鼻詰まりの改善にあり、消炎作用についても期待がある。添加量は30質量%以下とする。30%を超えて添加すると煙の量が多くなり望ましくない。好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下とする。下限値は特に設定しないが、他の原料(生薬)との関係で0であることもありうる。
【0010】
艾葉(ガイヨウ):菊科の植物、艾(よもぎ)の葉および茎を乾燥し、粒径60メッシュ以下、好ましくは100メッシュ以下の粉末を原料として使用する。鼻や空気中にいる雑菌の殺菌や消炎作用を期待し、添加量は30質量%以下とする。30%を超えて添加すると煙の量が多くなり望ましくない。好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下とする。下限値は特に設定しないが、他の原料(生薬)との関係で0であることもありうる。
【0011】
竜脳(リュウノウ):フタバガギ科の植物であり、竜脳香から採取された結晶であって、粉末状またはその粉末を溶剤に溶かした液体で使用する。消炎や清涼感(スッキリ感)を期待し10%以下添加する。10%を超えて添加すると香りが強過ぎるので10%以下添加することにした。下限は特に限定しないが、他の添加成分との関連で0%であってもよい。
【0012】
ユーカリ油(ユーカリオイル):ユーカリの葉と小枝を水蒸気蒸留により抽出したオイルを混練時に添加する。この添加により清涼感、香り、消炎、鼻炎の改善が図れるように、20%以下添加する。20%を超えて添加すると香が強過ぎるからである。下限は特に限定しないが、他の添加成分との関連で0%であってもよい。
【0013】
以上本発明を構成する4成分の生薬は、4成分混合が好ましいが、必ずしもこれにこだわらない。しかし、4成分のそれぞれを単独で使用するのでは効果は期待できず、従って、少なくとも2以上の成分の組み合わせは必要である。
【0014】
上記生薬以外に本発明では炭素質材料(粉末)、バインダー及び必要に応じて無機質材料などを配合することができる。
炭素質材料は、例えば備長炭、木炭、竹炭、ヤシ殻炭等から選択して10〜80質量%配合させることができる。配合量が10%未満であれば煙が多くなり、鼻粘膜に対して刺激となる可能性があり、一方、80%を超えると有効成分を充分に配合することができなくなり、また、充分に成形できるだけのバインダーが配合できなくなる。
バインダーとしては、例えばタブ皮木粉等を5〜50質量%使用する。5%未満であれば成形するのに充分な粘度が得られず、一方、50%を超えると粘度が高すぎて成形しずらくなると共に、他の成分の配合量が制約される。
【0015】
さらに本発明においては、無機質粉末として、例えば水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、炭酸カルシウムなどから必要に応じて選択し、50質量%以下適宜配合する。無機質粉末は香の燃焼を安定にし、また、煙の発生を抑制するために使用するものであり、50%を超えると燃焼が抑制され過ぎて立ち消えを起こす可能性があり、かつ、他の有効成分を充分配合できなくなるので50%を上限(下限は0)とした。
【0016】
本発明の香は最終製品の形状としては火を着けて使用できる固形物であればよく、例えば、線状(線香)、コーン(円錐状)、渦巻状、フレーク状(焼香)等がある。このような形状の香(線香)を製造するには、従来の製造方法による。すなわち、炭素粉末(10〜80質量%)やバインダー(5〜50質量%)等、更に必要に応じて無機質粉末、助燃剤および着色剤等を適宜加え、これらに香料生薬を添加配合し、水またはエッセンシャルオイル等植物抽出エキスや蜂蜜などの液体を加えて混練し、所望の形状に成形した後、常温または20乃至30℃で乾燥、好ましくは20℃以下の温度で低温乾燥して製品にする。なお、煙の発生を低くする為に木質材料はできる限り少なくする必要がある。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例を説明する。
炭素質(ヤシ殻炭)粉末38%(質量%、以下同じ)、炭酸カルシウム粉末27%、タブ皮木粉23%、辛夷粉末6%、艾葉粉末6%、これらの粉末100%に対し、ユーカリ油8%、竜脳4%、ハチミツ2%、と水(湯)55%を添加してよく練り、直径2.1mmのノズルを通し、線香状に成形した後、約2日ほぼ15℃で乾燥して作成した。
この製品を、花粉症を持つ6人に使用してもらい、使用後の状態を確認した。使用時間は5日乃至10日であり、香を使用して鼻がスッキリしたと感じた人は5人/6人であり、スッキリしなかったという1例は単に閉塞感自体が試験期間中ほとんど起きなかったためと回答した。またその中で、頭痛も改善できたという回答が3例/6例あった。このように、本発明香は優れた鼻閉塞感抑制効果があることがわかった。
【0018】
なお、生薬2種類を使用する香の成分例を以下に例示(A〜F)する。
(成分:質量%)
炭素質材料 無機質粉末 タブ皮木粉 辛夷 艾葉 竜脳 ユーカリ油
A 32 25 23 10 10
B 32 25 23 20 8
C 32 25 23 20 4
D 32 25 23 20 8
E 32 25 23 20 4
F 32 25 23 4 8

【0019】
以上の説明は主に香について説明したが、これらを線香に適用できることは勿論である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
辛夷、艾葉、竜脳およびユーカリ油の少なくとも2種を主成分として用い、固形物として成形したことを特徴とする鼻の閉塞感を改善する香または線香。
【請求項2】
質量%で、辛夷:30%以下、艾葉:30%以下、竜脳:10%以下およびユーカリ油:20%以下の少なくとも2種を主成分として用い、固形物として成形したことを特徴とする鼻の閉塞感を改善する香または線香。
【請求項3】
さらに質量%で、炭素質素材:10〜80%、バインダー:5〜50%を混合してなる請求項2に記載の鼻の閉塞感を改善する香または線香。
【請求項4】
辛夷:30%以下、艾葉:30%以下、竜脳:10%以下およびユーカリ油:20%以下の少なくとも2種と、炭素質材料:10〜80%、バインダー:5〜50%よりなる粉末に液体を添加して混練した後、所定の形状に成形し、乾燥することを特徴とする、鼻の閉塞感を改善する香または線香の製造方法。
【請求項5】
乾燥を20℃以下の低温で行なうことを特徴とする請求項4に記載の鼻の閉塞感を改善する香または線香の製造方法。


【公開番号】特開2006−282624(P2006−282624A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107108(P2005−107108)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年10月5日 日本補完代替医療学会事務局発行の「第7回 日本補完代替医療学会学術集会 プログラム・抄録集」に発表
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(594168517)株式会社薫寿堂 (6)
【Fターム(参考)】