説明

鼻咽腔、鼻腔、または副鼻腔に対してエアゾールを経口投与するためのデバイス

10nm〜200μmの間のサイズの粒子の発生器と、経鼻呼気相の際または経鼻呼気の前の呼吸停止相の際にエアゾールを経口投与するためのマウスピースまたはマウスマスクと、粒子を搬送するためのガス源または圧力源とからなるエアゾールを投与するためのデバイスは、マウスピースが、気密性を有し、最大で4cmの長さだけ患者の歯を越えて延在し、エアゾールの投与の際に鼻腔、鼻咽腔、または副鼻腔に対してエアゾールを投与する手段を構成し、それにより、口へ、鼻咽腔へ、次いで鼻窩および副鼻腔へとエアゾールを逐次適用することが可能となり、次いで患者の外鼻孔の一方または両方から前記エアゾールを逃がすことが可能となることと、デバイスが、エアゾール投与相の際に経口呼気を不能にし、エアゾールの粒子が、肺には送られないこととを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療目的でエアゾールおよび噴霧質を発生させるためのシステムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾールは、ガス中に粒子が浮遊しているものと定義される。これらの粒子は、数ナノメートルから数十マイクロメートルのサイズ範囲に及び得る。医用エアゾールを発生させるためのシステムの目的は、薬剤、液体、または粉末を、気道内に投与するためにエアゾール形態に変容させることである。
【0003】
他の投与方法と比較した場合のエアゾール方法の利点は、薬剤の付着により治療することとなる器官の標的化である。既存のネブライザは、大量の薬剤を気道内に投与することが可能である。肺ネブライザは、肺を標的とし、鼻ネブライザまたは鼻スプレーは、鼻窩および鼻咽腔を標的とする。鼻ネブライザまたは鼻スプレーに関しては、気道内へのエアゾールの第1の通路の箇所である鼻窩にのみエアゾールを付着させることが理論的には可能である。第1の解決策は、大型サイズの粒子を含むエアゾールを使用することである。大型の粒径を伴うエアゾールの問題は、耳鼻咽喉環境の別個の区画(例えば副鼻腔炎の治療の標的部位である副鼻腔)において辺縁的かつ均一に付着しない点である(Sumanら、「Pharm Res. 1999」、6:1648〜52頁)。他の解決策は、小径の粒子を含むエアゾールを使用して、耳鼻咽喉環境において「辺縁的」な付着を試行および確保することである。さらに、この微粒子エアゾールは、肺の中に付着することが可能である。他方において、外鼻孔および鼻咽腔の解剖学的構造を念頭に置くと、外鼻孔内に侵入するエアゾールは、鼻毛によるフィルタリングを受け、外鼻孔および鼻弁が小径であることにより高加速を受ける(C Croceら、「Ann Biomed Eng. 2006」、34:997〜1007頁)。このように鼻窩の初めの数センチメートルを越えて搬送された粒子は、鼻咽腔または副鼻腔内における嵌入または沈降による付着に不適合な小径のものとなる。5μmのMMADエアゾールを吸入するモデル頭部に関して実施された研究によれば、エアゾールの82%が、鼻、鼻弁、および鼻窩の初めの数センチメートル部分に付着し、0.2%が、副鼻腔に付着し、1%が、鼻窩の残りの部分に付着し、26.8%が、肺に付着する(Vecellio、2002、博士論文)。したがって、プラスチネーション頭部のシンチグラフィ画像によるこの研究によれば、鼻弁を通過するエアゾールの5%のみが、その位置に付着する。
【0004】
本テキストにおいては、上鼻気道は、以下の解剖学的領域(図1)、すなわち外鼻孔(2)、鼻弁(5)、鼻窩(6)、および鼻咽腔(7)の連続部分として説明することができる。鼻窩は、最大の解剖学的体積を有し、篩骨領域、甲介、および副鼻腔へのアクセス部分を含む。
【0005】
Atomisor NL11 (FR2835435)空気ネブライザは、この鼻窩の標的化の問題をもたらす(図1)。この使用原理においては、ノーズピース(特許文献1(FR2638361))を取り付けられたAtomisor N11空気ネブライザ(1)が、左右の外鼻孔(2)に連結され、吸気相(図1)の際に患者の耳鼻咽喉環境(3)において5μmのエアゾールを発生させる。この吸気相(図1)の際に、ネブライザ(1)により発生させられたエアゾールは、次いで、耳鼻咽喉環境(3)から患者の肺(4)に直接的に送られる。次いで、この発生させられたエアゾールは、鼻窩の初めの数センチメートルの部分内へとおよびさらにはそこを越えて鼻弁(5)まで加速される。この加速が原因となり、外鼻孔の初めの数センチメートルの部分において、エアゾールが多量に嵌入する。さらに、フィルタリングによる気道保護の第1の自然要素である毛が、最大の粒子を阻止する。鼻弁を通過した最小粒子は、鼻窩(6)に達する。鼻窩(6)は、外鼻孔の解剖学的構造に比べて、嵌入による粒子の付着にとって好適な解剖学的構造を有さない(外鼻孔よりも気流速度が低速である)。
【0006】
鼻スプレー(48)は、毛の間にデバイスを貫通させるのに十分な長さのノーズピースを使用する(図2)。このタイプのデバイスは、高速の初期粒子速度で大型サイズの粒子(20μm〜50μm)を発生させることにより、嵌入による付着を確保する。したがって、スプレーの角度が、鼻咽腔における均一な付着を確保するための重要なパラメータとなる。文献(Kimbellら、2007、「J Aerosl Med」、20:59〜74頁)において述べられているように、このタイプのスプレーによる投与デバイスは、使用の多様性に限度がある。実際に、このデバイスのノーズピースの配向位置および配向角度は、粒子の付着に影響を及ぼし、治療効果にも影響を及ぼす。さらに、粒径および粒子の注入速度を考慮すると、粒子は中間鼻窩に達するに過ぎず(Senocakら、2005、「Otolaryngology Head and Neck Surgery」、133:944〜948頁)、後鼻窩には全く達しない(Chengら、2001、「J Aerosol Med」、14:267〜280頁)(Guoら、2005、「Pharm R」、22:1871〜1878頁)ことが分かる。
【0007】
この耳鼻咽喉環境内への微粒子エアゾールの標的化の問題を解決するために、市販の様々なシステムが、多少効果的な解決策を提案している。
【0008】
PARI Sinusネブライザは、特許文献2(米国特許出願公開第2006/0162722A1号)および特許文献3(米国特許出願公開第2007/0181133号)を実装したものである。このネブライザは、患者が軟口蓋を閉じている際に一方の外鼻孔から微粒子エアゾールを投与することにより、肺における付着を制限し、耳鼻咽喉環境における付着を高める。エアゾールは、一方の外鼻孔内に侵入し、鼻圧を上昇させ副鼻腔内へのエアゾールの進入を促進させるために狭隘部を有する第2のノーズピースを設けられた他方の外鼻孔から出る。このエアゾール投与方法は、患者による能動的な関与を必要とする。患者は、エアゾールの投与の際に、吸気または呼気を行ってはならず、それと同時に軟口蓋を引き上げなければならない。このシステムは、患者による非常に能動的な関与を要求するため、患者が自身の軟口蓋を引き上げる指示に正確に従うことができない場合には、効果を有さないおそれがある。これは、患者の教育および訓練を要するものであり、年齢的な制約によって常に実現され得るとは限らない。このシステムは、外鼻孔の初めの数センチメートルの部分における付着が多量になるのを解消できない。
【0009】
また、特許文献4(WO03/000310A2)、特許文献5(EP1410820A2)、特許文献6(米国特許出願公開第2006/0107957A1号)、特許文献7(米国特許出願公開第2005/035992A1号)、および特許文献8(米国特許出願公開第2006/0096589号)によってその範囲が包含されるOptinoseシステムは、2つの外鼻孔の一方の中にエアゾールを侵入させ、他方の外鼻孔からそのエアゾールを逃がすシステムを使用する。また、このシステムは、患者の経口呼気相の際のエアゾール発生の自動開始を用いる。これらの条件下において、患者は、吸気相の際には、外鼻孔を介して吸気を行い、エアゾールを含まない空気を吸入することが可能である。経口呼気相の際には、軟口蓋が引き上げられ、発生させられたエアゾールは、2つの外鼻孔の一方の中に侵入する。次いで、エアゾールは、第1の外鼻孔から第2の外鼻孔に搬送され、肺は、軟口蓋を密閉することによりエアゾールの侵入から保護される。肺への付着を制限するためのこのシステムの高い性能は、健康な患者においては実証されたが、エアゾールは、マウスピースを介しては侵入せず、常にノーズピースを介して侵入する。(Djupeslandら、「Bidirectional nasal delivery of aerosols can prevent lung deposition. J Aerosol Med. 2004 Fall」、17(3):249〜59)。また、同社の特許WO2007093784は、経鼻呼気相の際にのみエアゾールを発生させるためのシステムについて記載している。このシステムの欠点は、エアゾールが、一方の外鼻孔を通り、および口を通らずに侵入するため、このシステムでは、外鼻孔の初めの数センチメートルの部分におけるエアゾールの付着が多量となる問題が解決されない点である。
【0010】
先行技術によれば、鼻咽腔、鼻腔、または副鼻腔に対するエアゾールの投与は、常に、外鼻孔内に挿入されるノーズピースを用いて実現される点を認めるべきである。経鼻的なこの投与方法は、肺への付着を促進させるためにマウスピースの使用が有利であることが研究により実証されたことの論理的帰結である。実際に、患者に対してフェイスマスクを使用することにより、経口的なエアゾールの吸入が可能となるだけではなく、経鼻的なエアゾールの吸入もまた可能となり、したがって肺への付着が制限され、鼻咽頭への付着が促進される。したがって、マウスピースの使用は、肺に対するエアゾールの投与に関して推奨され(Dautzenberg B、Becquemin MH、Chaumuzeau JP、Diot P、2007、「Good practices of aerosol therapy by nebulization. Rev Mal Respir」、24:751〜757頁)、マウスピースは、鼻咽腔に対するエアゾールの投与に関して推奨される。要するに、肺に対するエアゾールの投与は、患者の口または鼻を介して実現され、鼻腔に対するエアゾールの投与は、患者の鼻を介して実現される(Table1(表1))。
【0011】
【表1】

【0012】
また、特許文献9(WO2004/103447)の特許により、マウスピースと、粘膜または口腔に対して噴霧することにより物質の付着を確保し、したがって標的設定された射出が所与の位置に限定された効果を有するように、口腔内に深く貫入する投与チューブとを備えるデバイスが知られている。
【0013】
また、特許文献10(WO98/533869)の特許により、第1の開口が患者の口内に挿入され、第2の開口が患者の外鼻孔内に挿入される、ストローの形態の管状デバイスを使用することにより、ヒトの鼻内に物質を導入するための方法が知られている。この患者は、口により管状デバイス内に呼気を行うことによって、物質を外鼻孔内に移送する。経口呼気相の際に、軟口蓋が引き上げられて、口腔と鼻腔との間の連絡が密閉される。物質は、患者の口腔または肺に付着する危険性を伴うことなく、鼻腔内に侵入し得る。この方法は、逆方向においては物理的に不可能である。
【0014】
したがって、これらの文献は、非常に限定された用途および効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許発明第2835435号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0162722号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0181133号
【特許文献4】国際公開第03/000310号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1410820号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0107957号
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/035992号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0096589号
【特許文献9】国際公開第2007093784号
【特許文献10】国際公開第2004/103447号
【特許文献11】国際公開第98/533869号
【特許文献12】特許第9313478号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Sumanら、「Pharm Res. 1999」、6:1648〜52頁
【非特許文献2】C Croceら、「Ann Biomed Eng. 2006」、34:997〜1007頁
【非特許文献3】Vecellio、2002、博士論文
【非特許文献4】Kimbellら、2007、「J Aerosl Med」、20:59〜74頁
【非特許文献5】Senocakら、2005、「Otolaryngology Head and Neck Surgery」、133:944〜948頁
【非特許文献6】Chengら、2001、「J Aerosol Med」、14:267〜280頁
【非特許文献7】Guoら、2005、「Pharm R」、22:1871〜1878頁
【非特許文献8】Djupeslandら、「Bidirectional nasal delivery of aerosols can prevent lung deposition. J Aerosol Med. 2004 Fall」、17(3):249〜59
【非特許文献9】Dautzenberg B、Becquemin MH、Chaumuzeau JP、Diot P、2007、「Good practices of aerosol therapy by nebulization. Rev Mal Respir」、24:751〜757頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本出願人は、エアゾールによる耳鼻咽喉環境へのこの標的設定の問題を再考するアプローチを行ってきた。したがって、この状況に直面したことにより、本出願人は、異なる設計のこのタイプの装置に焦点を当てた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の特徴によれば、本エアゾール発生システムは、鼻咽腔、副鼻腔、鼻窩、および外鼻孔を治療するためにマウスピースを用いて患者の口にエアゾールを送達するエアゾール発生器からなる点において、注目すべきものである(Table 1(表1))。本明細書において用いられる用語であるマウスピースは、口内に貫入される片または連結部、および口を覆いあてがわれるオーラルマスクを範囲に含む。
【0019】
別の特徴によれば、10nm〜200μmの間のサイズの粒子の発生器と、経鼻呼気相の際または経鼻呼気の前の呼吸停止相の際にエアゾールを経口投与するためのマウスピースまたはオーラルマスクと、粒子を搬送するためのガス源または圧力源とからなる本エアゾール投与デバイスは、マウスピースが、気密性を有し、最大で4cmの長さだけ患者の歯を越えて貫入し、エアゾールの投与の際に鼻腔、鼻咽腔、または副鼻腔に対してエアゾールを投与する手段を構成し、それにより、口へ、鼻咽腔へ、次いで鼻窩および副鼻腔へとエアゾールを逐次搬送することが可能となり、次いで患者の外鼻孔の一方または両方を介して前記エアゾールを逃がすことが可能となる点と、デバイスが、エアゾール投与相の際に経口呼気を不能にし、エアゾールの粒子が、肺には送られない点とにおいて、注目すべきものである。
【0020】
これらのおよび他の特徴が、以下の説明より明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ネブライザによる経鼻送達のための先行技術を示す図である。
【図2】スプレーによる経鼻送達のための先行技術を示す図である。
【図3】エアゾール投与相の範囲外での経口による吸気および呼気を可能にする、本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図4】エアゾール投与相の範囲外での経口による吸気および呼気を可能にする、本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図5】エアゾール投与相の範囲外での経口による吸気および呼気を可能にする、本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図6】エアゾール投与相の範囲外での経口による吸気および呼気を可能にする、本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図7】経口による呼気も吸気も可能ではない、手動的に作動されるスプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図8】経口による呼気も吸気も可能ではない、手動的に作動されるスプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図9】経口による呼気も吸気も可能ではない、手動的に作動されるスプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図10】経口による呼気も吸気も可能ではない、手動的に作動されるスプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図11】経口による呼気が可能ではない、手動的に作動される弁スプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図12】経口による呼気が可能ではない、手動的に作動される弁スプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図13】経口による呼気が可能ではない、手動的に作動される弁スプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図14】経口による呼気が可能ではない、手動的に作動される弁スプレータイプデバイスを使用した本発明によるエアゾール投与方法の原理を示す図である。
【図15】エアゾールを手動送達するために外部ガスリザーバを備える粉末タイプの発生器を使用した本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図16】エアゾールを手動送達するための外部ガスリザーバを備える粉末タイプの発生器を使用した本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図17】加圧ボトルタイプ発生器とエアゾールを自動送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図18】加圧ボトルタイプ発生器とエアゾールを自動送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図19】空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図20】空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図21】こし器を有するネブライザおよび自動粒子投与手段に対応する貯蔵チャンバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図22】こし器を有するネブライザおよび自動粒子投与手段に連動された貯蔵チャンバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図23】音波に連動された空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図24】音波に連動された空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図25】音波に連動された空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図26】音波に連動された空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図27】上顎洞内にエアゾールを侵入させるために鼻窩内に超過圧力を発生させるノーズピースと連動された自動エアゾール送達用の外部ガスリザーバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図28】上顎洞内にエアゾールを侵入させるために鼻窩内に超過圧力を発生させるノーズピースと連動された自動エアゾール送達用の外部ガスリザーバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図29】上顎洞内にエアゾールを侵入させるために鼻窩内に超過圧力を発生させるノーズピースと連動された自動エアゾール送達用の外部ガスリザーバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図30】上顎洞内にエアゾールを侵入させるために鼻窩内に超過圧力を発生させるノーズピースと連動された自動エアゾール送達用の外部ガスリザーバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理を示す図である。
【図31】粉末発生器と吸気相の第1の部分の際に手動によりエアゾールを送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図32】粉末発生器と吸気相の第1の部分の際に手動によりエアゾールを送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図33】粉末発生器と吸気相の第1の部分の際に手動によりエアゾールを送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図34】粉末発生器と吸気相の第1の部分の際に手動によりエアゾールを送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理を示す図である。
【図35】本発明によるエアゾール付着のシンチグラフィ画像を示す図である。
【図36】ノーズピースを用いてエアゾールを送達するネブライザによるエアゾール付着のシンチグラフィ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
患者の呼吸は、個々の相、すなわち患者の肺内への外気の侵入に相当する吸気相、患者の吸気の終了時の患者の呼吸の一時停止に相当する吸気停止、患者の肺内に収容された空気の体外への排出に相当する呼気相、および患者の呼気の終了時の患者の呼吸の一時停止に相当する呼気停止に分類することができる。本発明は、鼻咽腔、副鼻腔、鼻窩、および鼻を標的化し治療するためにマウスピースを用いて患者の口内にエアゾールを送達するための方法に関する。また、本発明は、経鼻呼気相または呼吸停止相の際にマウスピースを用いて患者の口内にエアゾールを送達するエアゾール投与システムに関する。この投与は、これらの相の全部分または第1の部分の間に達成され得る。したがって、本発明は、周囲空気を用いて、口である呼吸器の第2の開口を経由して鼻エアゾールを投与するための方法および手段に関する。肺(4)は、変形可能な構造体であり、その体積を変化させることにより口(8)または鼻(2)を介して空気の侵入を確保する。エアゾールの補助により肺に達するためには、気管を通過する必要がある。肺には、肺に侵入するための開口が1つだけ存在する。耳鼻咽喉環境の場合には、事情は異なる。耳鼻咽喉環境は、変形不能であり、周囲空気に接触する2つの開口を有するものとして見なし得る構造体である。したがって、一方の開口または他方の開口からエアゾールを侵入させることが理論的には可能である。第1の開口は、外鼻孔(2)により形成され、エアゾールの付着に関する上述の問題をもたらす。第2の開口は、口(8)であり、肺にエアゾールを投与するために従来より使用される。これらの2つの器官の解剖学的比較により、鼻窩(6)内への最大の粒子の侵入を確保するために口(8)を経由してエアゾールを輸送すること(鼻咽喉(7)を経由しての輸送)の利点が判明する。
【0023】
エアゾール発生システムは、従来より2つの主なカテゴリー、すなわちネブライザおよび定量吸入器に区分される。ネブライザは、エアゾールの形態の大量の液体を発生させるデバイスである。ネブライザは、ネブライザのリザーバ内に薬剤を投入することによる事前準備を必要とし、重症患者に対して使用される。ネブライザとは対照的に、定量吸入器は、少量の調整された量のエアゾールを送達するデバイスである。この定量吸入器は、粉末ベース(粉末容量吸入器)または液体ベース(スプレー)であることが可能であり、可搬であり、しばしば薬剤を事前パッキングされるという利点を有する。これらの定量吸入器は、症状の安定した患者に対して使用される。
【0024】
本発明を説明するために、エアゾールを発生させるためにガスまたは加圧液体のいずれを使用するかにより、エアゾール発生器を区別することにする。したがって、空気ネブライザおよび加圧定量吸入器は、加圧ガスを使用するエアゾール発生器である。また、同様に、いくつかの噴霧質は、液体の超過圧力の補助により発生させられる。対照的に、受動粉末容量吸入器、こし器(またはメンブレン)ネブライザ、および超音波ネブライザは、エアゾールの発生にガスも加圧液体も必要としないエアゾール発生器である。
【0025】
エアゾールを構成する粒子は、エアゾールのベクトルガスにより移動され得る。また、これらの粒子は、加圧発生相の際の初期放出によって移動され得る。この初期非ゼロ速度により、発生器から患者の口への粒子の移動が生じる。したがって、発生器から患者の口への粒子の搬送は、発生器自体(粒子の初期速度)により、またはベクトルガスにより達成され得る。ガスの移動は、例えばベンチレータ、圧縮機、またはさらには手動操作「バルブ」(変形可能構造体)などの機械的手段により達成され得る。粒子の移動は、加圧液体(例えばシリンジ)により達成され得る。呼吸停止相または経鼻呼気相の際の患者の口内へのエアゾールの投与は、患者自身(例えば手動による開始)により、またはシステムにより自動的に達成され得る。自動化は、センサ(例えば圧力センサまたは流量センサ)により、またはさらには機械的手段(例えば本出願人の特許第9313478号)の補助により達成され得る。センサは、口に連結された回路の上に、または患者の外鼻孔に連結された回路の上に配置され得る。ソースガスにより作動するエアゾール発生器の場合には、自動システムが、患者の経鼻呼気素の際にまたはさらには呼吸停止相の際にソースガスの発生を開始させる。次いで、エアゾールは、ソースガスによって発生および搬送される。
【0026】
また、このシステムは、貯蔵チャンバ内において、継続的にまたは非継続的にエアゾールを発生させることも可能である。エアゾールは、経鼻呼気相または呼吸停止相の際にのみ、この貯蔵チャンバから患者に搬送される。
【0027】
粒子を発生させるためにソースガスの使用を必要としないエアゾール発生器の場合には、システムは、粒子の発生、もしくは患者の口に粒子を搬送するためのガスの移動のいずれかを、またはそれらの両方を開始させる。
【0028】
エアゾールの経口投与は、患者の吸気相の際には実施されない。これは、エアゾールを投与する自動手段の補助により、またはさらには経鼻呼気相もしくは呼吸停止の際にエアゾールの投与を開始させる患者自身により確保され得る。この場合には、治療効果は、呼吸相の際に患者がエアゾールの投与を適切に行うことに依存する。また、この投与システムは、患者の経口呼気を不能にし、経鼻呼気のみを可能にするように、閉鎖および密閉され得る。
【0029】
本発明は、10nm〜200μmの間のサイズを有する粒子の発生器およびマウスピースを備えるデバイスにより、最も簡単な構成において具現化され得る。
【0030】
したがって、本発明によれば、および簡単な実施形態(図3)においては、デバイス(9)は、周囲空気への開口(11)を備えるマウスピース(10)を備える患者の口(8)に連結され、初期速度により粒子を送達しガスの追加を伴わずに作動する発生器(12)に連結された、開回路である。
【0031】
したがって、システム(9)は、鼻および口による吸気および呼気を可能にする開回路である。吸気相(図3)の際には、患者は、口(8)によりまたは鼻(2)により自由に吸気を行うことが可能である。患者は、エアゾールの投与を開始させなくてもよい。患者の肺(4)内に吸気され侵入する空気は、エアゾールを含まない。吸気相の後に、患者は、無呼吸状態をとり(図4)、それと同時にエアゾールの投与を開始させなければならない(例えばデバイスに対する手動加圧(13)により)。粒子は、患者の口(8)で発生させられ、初期速度により口腔(14)および鼻咽腔(7)に搬送される。次いで、患者は、口からデバイスを引き抜き、無呼吸状態に留まりつつ口唇を閉じることが可能である(図5)。次いで、患者は、体積の変更を生じさせることにより超過圧力を発生させ鼻咽腔(7)の方にエアゾールを移動させるために、(例えば顎などにより)前後方向への口腔(14)閉鎖動作を行う。次いで(または同時に)、患者は、鼻窩(6)を通り鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)へと粒子を搬送するために、鼻から自由に呼気を行うことが可能である(図6)。これらの条件では、エアゾールは外鼻孔を初めに通過せず、その付着効率が上昇する。
【0032】
この原理に基づき、この方法を実施する様々な構成を生み出すことが可能である。
【0033】
本発明によるマウスピースは、気密性を有し、最大で4cmの長さだけ歯を越えて貫入し、鼻腔、鼻咽腔、または副鼻腔に対してエアゾールを投与する手段を構成する。この寸法特徴は、エアゾールの投与条件に関して本発明に固有のものである。患者の歯を越えるマウスピースの最小貫入長さは、1cmである。
【0034】
手動により作動され、口による呼気または吸気のいずれかを不能にするスプレータイプデバイスによるエアゾールの投与方法の原理の第2の構成を、図7、図8、図9、および図10に示す。
【0035】
この構成(図7)においては、デバイス(5)は、ガスの追加を伴わずに作動する粒子発生器(12)に連結されたマウスピース(10)を備える患者の口(8)に連結される密閉回路である。
【0036】
したがって、システム(15)は、鼻のみによる吸気および呼気が可能な密閉回路である。経鼻吸気相または経鼻呼気相(図7)の際に、軟口蓋(16)が、口腔(14)の奥を閉じ、口腔(14)を下方気道(4)および上方気道(3)から隔離する。次いで、患者は、患者の肺(4)内にエアゾールを送達することなく、吸気相(図8)の際にエアゾールの発生を開始させ得る(例えばデバイスに対する手動加圧(13)により)。次いで、患者は、無呼吸状態をとり(図9)、次いで体積の変更を生じさせることにより超過圧力を発生させ鼻咽腔(7)にエアゾールを移動させるために、(例えば顎などにより)前後方向への口腔(14)閉鎖動作を行い得る。次いで、患者は、鼻窩(6)を通り鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)へと粒子を搬送するために、鼻から呼気を行い得る(図10)。
【0037】
手動により作動され、口による呼気を不能にする弁スプレータイプデバイスによるエアゾールの投与方法の原理の第3の構成を、図11、図12、図13、および図14に示す。この構成(図11)においては、デバイス(17)は、マウスピース(10)を介して患者の口(8)に連結された回路である。このデバイス(17)は、ガスの追加を伴わずに作動する粒子発生器(12)および吸気弁(18)を備える。したがって、システム(17)は、鼻および口からの吸気を可能にし、鼻のみからの呼気を可能にする回路である。吸気相(図11)の際には、患者は、弁(18)を介して口(8)から、または鼻(2)から自由に吸気を行い得る。患者は、エアゾールの投与を開始させなくてもよい。患者の肺(4)内に吸気され侵入した空気は、エアゾールを含まない。吸気相の後に、患者は、無呼吸状態をとり(図12)、それと同時にエアゾールの投与を開始させなければならない(例えばデバイス(17)に対する手動加圧(13)により)。粒子は、患者の口(8)で発生させられ、初期速度により口腔(14)および鼻咽腔(7)に搬送される。次いで、患者は、体積の変更を生じさせることにより超過圧力を発生させ鼻咽腔(7)の方にエアゾールを移動させるために、(例えば顎などにより)前後方向への口腔(14)閉鎖動作を行う(図13)。次いで、患者は、鼻窩(6)を通り鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)へと粒子を搬送するために、鼻から自由に呼気を行うことが可能である(図14)。
【0038】
このシステムの第4の構成は、図15および図16に示され、粉末タイプ発生器およびエアゾールを手動送達するための外部ガスリザーバを備える本発明によるシステムの作動原理に関する。この構成においては(図15)、デバイス(19)は、外部ガスリザーバ(21)(例えば変形可能バルブ)の補助により作動する粒子発生器(20)(例えば微粉状粉末)に連結されたマウスピース(10)を備える患者の口(8)に連結された密閉回路である。
【0039】
したがって、システム(19)は、鼻(2)からの吸気および呼気のみを可能にする密閉回路である。吸気相(図15)の際には、患者は、鼻(2)からのみ吸気を行い得る。エアゾールは発生させられない。患者の肺(4)内に吸気され侵入した空気は、エアゾールを含まない。呼気相(図16)の際には、患者は、鼻(2)からのみ呼気を行い得る。患者が経鼻呼気を行う際に、患者は、デバイス(19)のバルブ(21)に対する手動加圧(13)によるエアゾールの発生を開始させなければならない。粒子は、患者の口(8)で発生させられ、リザーバ(21)(バルブ)内に収容されたガスにより鼻咽腔(7)に搬送される。次いで、患者の呼気した空気は、デバイス(19)からのベクトルガスに追加されて、鼻窩(6)を通り鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)へと粒子を搬送する。
【0040】
このシステムの第5の構成は、図17および図18に示され、加圧ボトルタイプ発生器とエアゾールを自動送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理に関する。この構成においては、デバイス(22)は、患者の口(8)に連結され、患者の外鼻孔(2)に連結されるノーズピース(23)を有する。ノーズピース(23)は、患者の経鼻呼気相の際にピストン(25)を作動させることを可能にする機械的手段(24)に連結される。ピストン(25)により、加圧下にある液体およびガスの混合物を備える(例えば加圧ボトル)エアゾール発生器(26)に対する加圧によるエアゾールの投与の開始が可能となり、このアセンブリは、患者の口において密閉アセンブリを形成し、鼻呼吸のみを可能にする。吸気相の際には(図17)、患者は、鼻(2)からのみ吸気を行い得る。機械的手段(24)はピストン(25)を作動させず、エアゾールは発生させられない。患者の肺(4)内に吸気され侵入した空気は、エアゾールを含まない。呼気相の際には(図18)、患者は、鼻(2)からのみ呼気を行い得る。機械的手段(24)が超過圧力を検出し、ピストン(25)が作動され、エアゾール発生器(26)に対して圧力がかけられ、エアゾールがエアゾール発生器(26)内に収容された圧縮ガスにより患者の口(8)から鼻咽腔(7)へと放出される。患者の呼気した肺(4)からの空気は、エアゾール発生器(26)からのガス流に加えられる。次いで、エアゾールは、鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)に送られ、次いで患者の体外に放出される。
【0041】
このシステムの第6の構成は、図19および図20に示され、空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理に関する。この構成においては、空気ネブライザ(27)は、患者の口(8)に連結され、チューブ(29)を経由して空気圧縮機(28)による供給を受ける。また、ネブライザは、圧縮機(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)自体を受けるように設計されたマウスピース(10)の付近に連結部(30)を有する。このアセンブリは、患者の口において密閉アセンブリを形成する。したがって、患者が吸気相にある際には(図19)、患者は鼻からのみ吸気を行うことが可能となり、圧力センサ(32)は超過圧力を検出せず、エアゾールは発生させられない。患者が呼気相にある際には(図20)、患者は、鼻からのみ呼気を行い得る。圧力センサ(32)は超過圧力を検出し、圧縮機(28)はネブライザ(27)に圧力を供給し、エアゾールが発生させられる。次いで、発生させられたエアゾールは、圧縮機(28)の空気により、患者の口(8)から鼻咽腔(7)へと搬送される。患者の呼気した肺(4)からの空気は、圧縮機(28)からの空気流に加えられる。次いで、エアゾールは、鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)に送られ、次いで患者の体外に放出される。
【0042】
このシステムの第7の構成は、図21および図22に示され、ネブライザおよび自動粒子投与手段に対応する貯蔵チャンバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理に関する。この構成においては、こし器ネブライザまたは超音波ネブライザ(33)が、一方の端部では口(8)に、および他方の端部では空気源(28)(例えば圧縮機またはベンチレータ)に連結された貯蔵チャンバ(34)に対応付けられる。また、ネブライザは、空気源(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ自体を受けるように設計されたマウスピース(10)の付近に連結部(30)を有し、このアセンブリは、患者の口において密閉アセンブリを形成する。したがって、患者が吸気相にある際には(図21)、患者は鼻からのみ吸気を行うことが可能となり、圧力センサ(32)は超過圧力を検出せず、空気源(28)から空気は発生させられない。エアゾールは、貯蔵チャンバ(34)内において継続的に発生させられる。患者が呼気相にある際には(図22)、患者は、鼻からのみ呼気を行い得る。圧力センサ(32)は超過圧力を検出し、空気源(28)は貯蔵チャンバ(34)内に空気を発生させ、貯蔵されたエアゾールが作動される。次いで、エアゾールは、空気源(28)からの空気により、患者の口(8)から鼻咽腔(7)の奥へと搬送される。患者の呼気した肺(4)からの空気は、空気源(28)からの空気流に加えられる。次いで、エアゾールは、鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)に送られ、次いで患者の体外に放出される。
【0043】
このシステムの第8の構成は、図23、図24、図25、および図26に示され、音波に連動された空気ネブライザおよび自動粒子投与手段と組み合わされた用途におけるシステムの作動原理に関する。この構成においては、口(8)に連結された空気ネブライザ(27)は、チューブ(29)を経由して空気圧縮機(28)による供給を受ける。また、ネブライザは、圧縮機(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)自体を受けるように設計されたマウスピース(10)の付近に連結部(30)を有し、このアセンブリは、患者の口において密閉アセンブリを形成する。また、ノーズピース(35)が、2つの外鼻孔(2)の一方に連結される。音波を伝播するように設計されたチューブ(36)が、音波源(37)とノーズピース(35)とを連結する。したがって、患者が吸気相にある際には(図23および図24)、患者は一方の外鼻孔のみにより吸気を行うことが可能となり、圧力センサ(32)は超過圧力を検出せず、エアゾールは発生させられない。患者が呼気相にある際には(図25および図26)、患者は、一方の外鼻腔のみにより呼気を行い得る。圧力センサ(32)は超過圧力を検出し、圧縮機(28)はネブライザ(27)に圧力を供給し、音波が音波源(37)からノーズピース(35)に発せられる。次いで、発生させられたエアゾールは、圧縮機(28)の空気により、患者の口(8)から鼻咽腔(7)へと搬送される。患者の呼気した肺(4)からの空気は、圧縮機(28)からの空気流に加えられる。第1の外鼻腔からの音波は、鼻咽腔に伝達され、粒子、ガス、および音波の組合せが、鼻窩(6)に送られる。次いで、音圧を発生させる音波により、副鼻腔(38)内へのエアゾールの侵入が促進される。次いで、エアゾールは、空いている外鼻孔に送られ、次いで患者の体外に放出される。
【0044】
このシステムの第9の構成は、図27、図28、図29、および図30に示され、上顎洞内にエアゾールを侵入させるために鼻窩内に超過圧力を発生させるノーズピースと連動された外部ガスリザーバと組み合わされた用途におけるシステムの作動原理に関する。デバイス(39)は、エアゾールの輸送のための口腔の開きを確保するために最小で1cm(例えば2cm)の長さだけ患者の歯を越えて貫入するマウスピース(45)を介して患者の口(8)に連結される回路である。このデバイス(39)は、粒子および加圧ガスを備えるエアゾール発生器(40)、吸気弁(41)、および呼気相の際にエアゾールの作動を可能にする圧力センサ(42)を備える。また、狭隘部を有するノーズピース(43)が、両方の外鼻孔(2)に連結される。したがって、システム(39および43)は、口からの吸気を可能しかつ促進するが、鼻からの呼気のみを可能にする回路である。吸気相の際には(図27および図28)、患者は、弁(41)を介して口(8)から吸気を行う。センサ(42)は超過圧力を検出せず、エアゾールは発生させられない。患者の肺(4)内に吸気され侵入した空気は、エアゾールを含まない。呼気相の際には(図29および図30)、弁(41)は閉じられ、患者は鼻(2)からのみ呼気を行い得る。患者が経鼻呼気を行う際には、圧力センサ(42)は気道に超過圧力を検出し、エアゾールがエアゾール発生器(4)により発生させられる。粒子は、患者の口(8)に発生させられ、エアゾール発生器(40)の推進ガスにより鼻咽腔(7)へと搬送される。次いで、患者の呼気した空気は、鼻窩(6)を通り鼻咽腔(7)から外鼻孔(2)に粒子を搬送する。ノーズピース(43)の狭隘部は、上方気道にて超過圧力を発生させ、副鼻腔(38および44)内へのエアゾールの侵入を促進させる。次いで、エアゾールは、外鼻腔に送られ、次いで患者の体外に放出される。
【0045】
このシステムの第10の構成は、図31、図32、図33、および図34に示され、粉末発生器と吸気停止の第1の部分の際にエアゾールを手動送達するための外部ガスリザーバとを備える本発明によるシステムの作動原理に関する。この構成においては(図31)、デバイス(46)は、バルブの変形によりガスを発生させる第1の期間の間だけ粉末粒子を投与する外部ガスリザーバ(21)(例えば変改可能バルブ)と共に作動する粒子(例えば微粉状粉末)の発生器(47)に連結されたマウスピース(10)を備える患者の口(8)に連結された密閉回路である。
【0046】
したがって、システム(46)は、鼻(2)からのみ吸気および呼気を可能にする密閉回路である。吸気相の際には(図31)、患者は、鼻(2)からのみ吸気を行い得る。エアゾールは発生させられない。患者の肺(4)内に吸気され侵入した空気は、エアゾールを含まない。次いで、患者は、呼吸停止状態をとり(図32)、それと同時にデバイス(46)のバルブ(21)に対する手動加圧(13)によりエアゾールの発生を開始させる。吸気停止の第1の部分の間に、粒子は、患者の口(8)において発生させられ、リザーバ(21)(バルブ)内に収容されたガスにより外鼻孔(7)へと搬送される。吸気停止の第2の部分の間に(図33)、バルブ(21)により発生させられ患者の口(8)に発生させられるガスは、粒子を含まない。粒子を含まないこのガスは、口、鼻咽腔、鼻窩、次いで外鼻孔を満たし、それにより、浮遊状態の粒子を含まないガスによるこの部位のフラッシングが確保される。次いで、患者は、鼻または口を介して粒子を含まないガスを自由に呼気または吸気することが可能となる(図34)。この構成においては、エアゾールは、患者の肺(4)内では発生させられず、発生させられる粒子の速度は、ガス発生器(21)の流れにより制御され得る。
【0047】
上述の構成においては、回路の形態は、形式変更が可能であり、これらの図面は、例として説明および与えられたものである。薬剤粒子を搬送するためにガスを送達するシステムを備えないデバイスの使用は、患者の積極的な関与を必要とする。口腔内への薬剤の送達後に、患者は、口腔から鼻咽腔に粒子を移動させるために、(嚥下によりまたは顎を閉じることにより)自身の口の内部体積を変化させなければならず、次いで鼻から呼気を行わなければならない。鼻咽腔、副鼻腔、または鼻腔に対してエアゾールを投与する方法のこの原理は、第1の構成、第2の構成、および第3の構成において説明される。薬剤を搬送するために粒子用のガス送達システムを備えるデバイスの使用は、患者のそれほど積極的ではない関与を必要とする。この場合には、患者は、エアゾールの手動送達を、自身の経鼻呼気または自身の呼吸停止と単に同期させるだけでよい。鼻咽腔、副鼻腔、または鼻腔のためのエアゾールシステムのこの作動原理は、第4の構成および第10の構成において説明される。また、このシステムは、使用が非常に簡単であるという利点を有し、吸気停止の際にエアゾールを投与するために経口吸気および手動開始反射行動の両方を必要とする定量エアゾールの原理(pMDI)に比類し得る。デバイスの不正確な使用を最も簡単な形式で制限するために、患者の口における吸気弁(構成9)または密閉デバイス(構成4、構成5、構成6、構成7、構成8、および構成10)が使用されて、エアゾール投与相の際に口からの呼気を不能にする。同様に、非吸気相(呼気相または呼吸停止相)の際にエアゾールを投与するために、自動手段を使用して、患者の手動反射作用の問題を克服することができる(構成5、構成6、構成7、構成8、および構成9)。その結果、口内への粒子の投与を可能にする手段が、自動手段または非自動手段(例えば患者自身または別の人間により作動される手動手段)であることが可能となる。エアゾール発生器のタイプは多様であってもよい。同様に、任意の他の液体エアゾール発生器または固体エアゾール発生器を使用することが可能である(乾燥粉末吸入器または定量吸入器)。また、注入器(スプレー、マイクロスプレーヤ、等々)が後に続くピストンシステムまたはさらにはチューブ内もしくはカプセル内に粉末を事前に詰めるシステムを使用することも可能である。また、追加のノーズピースを使用して、波動を伝達するかまたは超過圧力を生じさせることも可能である。エアゾールの投与は、経鼻呼気相または呼吸停止相の全部または一部の間に実施することが可能である。
【0048】
上述の構成のいずれによっても、解決策が非常に有利なものであることが分かる。なぜならば、実施された試験によれば、鼻窩に付着する放射性エアゾールの線量が、外鼻孔に付着する放射性エアゾールの線量に比べて大幅に高いことが、測定値から立証されるからである(Table 2(表2))(図35および図36)。
【0049】
【表2】

【符号の説明】
【0050】
1 ネブライザ
2 外鼻孔
3 耳鼻咽喉環境、上方気道
4 肺
5 鼻弁
6 鼻窩
7 鼻咽腔
8 口
9 デバイス、システム
10 マウスピース
11 開口
12 発生器、粒子発生器
13 手動加圧
14 口腔
15 システム
16 軟口蓋
17 デバイス
18 吸気弁
19 デバイス
20 粒子発生器
21 外部ガスリザーバ、バルブ
22 デバイス
23 ノーズピース
24 機械的手段
25 ピストン
26 エアゾール発生器
27 空気ネブライザ
28 空気圧縮機、空気源
29 チューブ
30 連結部
31 チューブ
32 圧力センサ
33 超音波ネブライザ
34 貯蔵チャンバ
35 ノーズピース
36 チューブ
37 音波源
38 副鼻腔
39 デバイス
40 エアゾール発生器
41 吸気弁
42 圧力センサ
43 ノーズピース
44 副鼻腔
45 マウスピース
46 デバイス、システム
47 発生器
48 鼻スプレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10nm〜200μmの間のサイズの粒子の発生器と、経鼻呼気相の際または経鼻呼気の前の呼吸停止相の際にエアゾールを経口投与するためのマウスピースまたはマウスマスクと、前記粒子を搬送するためのガス源または圧力源とからなるエアゾール投与デバイスにおいて、前記マウスピースは、手動によりまたは自動的に作動される粒子発生器に対応付けられ、前記アセンブリは、エアゾール投与相の際には気密アセンブリを構成し、患者の口に連結されることと、前記マウスピースは、最大で4cmの長さだけ前記患者の歯を越えて貫入し、前記エアゾールの投与の際に鼻腔、鼻咽腔、または副鼻腔に対してエアゾールを投与する手段を構成し、それにより、内部回路を経由して口へ、次いで鼻咽腔へ、次いで鼻窩および副鼻腔へと前記エアゾールを逐次搬送することが可能となり、次いで前記患者の外鼻孔の一方または両方を介して前記エアゾールを逃がすことが可能となることと、前記デバイスは、前記エアゾール投与相の際に経口呼気を不能にし、前記エアゾールの粒子は、肺には送られないこととを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記マウスピースは、気密性を有し、最小で1cmの長さだけ前記歯を越えて貫入することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記エアゾール(ガス+粒子)の発生の開始が、電気的手段、空気的手段、または機械的手段の補助により自動的に達成されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記患者の口に連結される手段(22)が、前記患者の外鼻孔に連結されるノーズピース(23)を備えることと、前記ノーズピースは、機械的手段(24)に連結されることにより、前記患者の経鼻呼気相の際にピストン(25)の作動を可能にすることとを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、チューブ(29)を経由して空気圧縮機(28)により供給を受ける前記患者の口に連結される空気ネブライザ(27)を備え、前記ネブライザは、前記圧縮機内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)を受けるように設計された前記マウスピースに連結されることと、前記ネブライザは、前記患者の経鼻呼気相の際に作動され、前記患者の口腔に密閉的な態様で連結された前記圧力センサにより検出されることとを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスは、ネブライザ(33)と、前記口(8)におよびガス源(28)に連結された貯蔵チャンバ(34)とを備え、前記ネブライザは、前記ガス源(28)内に収容された圧力センサに連結されたチューブ(31)を受けるように設計された前記マウスピース(10)に連結されることと、前記ネブライザは、前記患者の経鼻呼気相の際に作動され、前記患者の口腔に密閉的な態様で連結された前記圧力センサにより検出されることとを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、音波に連動された空気ネブライザ(27)と、粒子投与手段とを備えることと、前記ネブライザは、前記口に連結され、チューブ(29)を経由して空気圧縮機(28)により供給を受け、前記ネブライザは、前記圧縮機(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)自体を受けるように設計された前記マウスピース(10)の付近に連結部(30)を有し、前記アセンブリは、前記患者の口において密閉されることと、前記デバイスは、前記患者の2つの外鼻孔(2)の一方に連結されるノーズピース(35)と、音響源(37)と前記ノーズピースとを連結して前記音波を伝播するように設計されたチューブ(36)とを備えることとを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記マウスピース(10)は、外部ガスリザーバ(21)の補助により作動する粉末粒子の発生器(20)に連結されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、前記患者の口に連結され、チューブ(29)を経由して空気圧縮機(28)により供給を受ける空気ネブライザ(27)を備え、前記ネブライザは、前記圧縮機(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)を受けるように設計された前記マウスピース(10)の付近に連結部(30)を有することと、前記アセンブリは、前記患者の口において密閉されることとを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、一方の端部においては前記口(8)に、他方の端部においては空気源に連結される貯蔵チャンバ(34)に対応付けられたネブライザを備えることと、前記ネブライザは、前記空気圧縮機(28)内に収容された圧力センサ(32)に連結されたチューブ(31)を受けるように設計された前記マウスピースの付近に連結部(30)を有し、前記アセンブリは、前記患者の口において密閉されることとを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、粒子および加圧ガスを備えるエアゾール発生器(40)と、吸気弁(41)と、前記呼気相の際に前記エアゾールを作動させ得る圧力センサ(42)とを備えることと、前記デバイスは、狭隘部を有し、両方の外鼻孔(2)に連結される、ノーズピース(43)を備えることとを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、前記リザーバ(21)の変形によりガス発生の第1の期間の間だけ粉末粒子を投与する外部ガスリザーバの補助により作動する粉末粒子の発生器(47)に連結されたマウスピース(10)を備える前記患者の口に連結された密閉回路を画成することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。

【図2】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図35】
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【図36】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2013−515581(P2013−515581A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546492(P2012−546492)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052896
【国際公開番号】WO2011/080473
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512168766)
【出願人】(506189113)ユニヴェルシテ フランソワ ラブレ (2)