説明

鼻用の送り込み装置

【課題】本発明は、患者の鼻気道(1)、さらに詳細には鼻気道の後部位に薬物を送り込むための送り込み装置(20,1)を提供する。
【解決手段】この送り込み装置は、患者の口腔咽頭膜の閉塞させるための閉塞ユニットと、薬物を同伴する気体流を、患者の鼻中隔の後周辺部の周囲を流れて他方の鼻孔から出てくるような駆動圧で、患者の鼻孔の一方に送り込むための送り込みユニットとから構成され、該送り込みユニットは、使用時に気体流が前記一方の鼻孔に送り込まれる際に通る出口部と、使用時に前記一方の鼻孔から前記気体流が抜け出ないように前記一方の鼻孔を前記出口へ密封するためのシーリング部材とを含むノーズピース(9,19,58,82,102,111)を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物、さらに詳細には薬剤、特に局所用医薬、清浄剤、または洗浄剤(液体の形で、なるべくなら清浄剤と組み合わされていることが望ましい)を含む液体(懸濁液または溶液の形の)または粉末の一つを患者の鼻気道に送り込むための送り込み装置およびその方法に関する。さらに詳細には、本発明は、薬剤の送り込みと鼻粘膜、鼻咽頭前部、副鼻腔口、耳管の管口、副鼻腔管、耳管、鼓室、および副鼻腔の洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
図1によれば、鼻気道1は、鼻中隔で隔てられた二つの鼻腔から構成されており、前記鼻気道1は、副鼻腔口3と耳管口5、嗅細胞といった多数の口を含んでおり、鼻粘膜によって覆われている。鼻気道1は、鼻咽頭7、口腔9、および下気道11と連通することができ、さらに口腔咽頭膜13を開閉することによって鼻咽頭7の前部や口腔9と選択的に連通する。口腔咽頭膜13は、軟口蓋と呼ばれることが多いが、閉じられた位置にある状態が実線で、また開かれた位置にある状態が点線で図示されている。因みに、口腔咽頭膜の閉塞は、口腔9を通して息を吐き出したりするなどして口腔9内にある程度の正圧をかけることによって達成される。
【0003】
治療を要する鼻の健康状態は多数ある。そういった状態の一つに鼻の炎症がある。これは、具体的には鼻炎であり、アレルギー性のものもあれば、非アレルギー性のものもあり、感染を伴なうことが多く、正常な鼻の機能を阻害する。一例として、一般的に人口の10〜20%がアレルギー性や非アレルギー性の鼻気道の炎症にかかると考えられ、その最も一般的な症状は鼻甲介の勃起組織の鼻づまり、鼻涙液、鼻水の分泌、くしゃみ、かゆみである。本書を読み進むと理解されるであろうが、鼻づまりは鼻呼吸を妨げ、経口呼吸を増進させ、いびきや睡眠障害の原因になる。心配なことに、そういったアレルギー性や非アレルギー性の炎症性疾患の罹患率は増大している。それ以外の鼻の健康状態としては、副鼻腔から生じる鼻のポリープ、咽頭扁桃腺肥大、分泌性中耳炎、副鼻腔障害、嗅覚減退が挙げられる。
【0004】
鼻の健康状態の幾つかの治療に際しては、薬剤の局所的投与が好ましい。鼻づまりの治療や緩和の場合のように鼻粘膜が主要な病理学的経路になっている場合は特にである。現に、局所的投与には、全身投与の場合に発生する恐れのある副作用を極力少なく抑えるという効果がある。一般的に局所的投与に使われる薬剤としては、うっ血除去薬、抗ヒスタミン剤、クロモグリケート、ステロイド剤、および抗生物質が挙げられる。
【0005】
現在、大人も子供も、鼻の健康状態に関連する症状の緩和を薬剤に頼るケースが増えている。今日では、周知の抗炎症薬の中では、局所用ステロイド剤が鼻づまりに効果があることがわかっている。局所用うっ血除去薬も、鼻づまりの緩和に使用すれば効果があるのではないかとされている。また、局所用うっ血除去薬、ステロイド剤、抗菌剤を使った咽頭扁桃腺肥大の治療も、若干議論の余地はあるものの、提案されている。さらに、薬剤の局所的投与は、鼻咽頭の前部、副鼻腔、および耳管における炎症の症状の治療あるいは少なくとも緩和に使用された実績がある。
【0006】
薬剤の送り込みは別としても、液体、特に食塩溶液による鼻粘膜の洗浄は、粒子や分泌物を除去するためだけでなく、鼻粘膜の粘膜繊毛活動を向上させる目的にも、広く行われている。こうした解決法は、活性薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0007】
またさらに、最近では、鼻通路を介する全身への送り込みが増加の一途をたどっており、鼻通路は、ホルモンや抗偏頭痛剤成分のような薬剤(例えばオキシトシンなど)の全身への送り込みについては、良好な投与経路となっている。というのは、鼻粘膜は血流量が多く表面積が大きいために、迅速に全身摂取が行われる点が有利なためである。薬物を患者の鼻気道に送り込むための装置として、これまでに様々な送り込み装置が開発されている。
【0008】
従来、薬剤を含んだ液体や洗浄液を患者の鼻気道に送り込む目的にはスプレー瓶が使われてきた。しかし、送り込まれた薬物の特に鼻気道の後部位への分配は、理想的とは言えず、特にあまりひどくないものからひどいものまで程度にかかわらず鼻閉塞がある場合には、良好な分配が得られなかった。患者が薬物を鼻気道の後部位に送り込もうとして、送出す際に鼻気道を通して息を吸い込む(そのように指示されていることが多い)ことで、こうした分配不良がさらに悪化することが多かった。実際に、送り込まれるたびにある量の薬物が肺の中に吸い込まれたり飲み込まれたりする可能性があり、これは当該薬剤がステロイド剤のような頻繁に投与しなければならない強力な医薬である場合には問題になりかねない。また、スプレーは鼻中隔に向けて噴霧されることが多いが、これは限局性沈着を引き起こす原因になりかねず、好ましくない。さらに、スプレー瓶の送り込み機構の機械的作用は炎症や出血を引き起こす原因になりかねない。
【0009】
特許文献1には、一つの実施形態において、薬剤を同伴する二つの別個の気流を患者の鼻腔のそれぞれに吸入させるようになっている送り込み装置が開示されている。この送り込み装置は、薬剤を染み込ませたスポンジが入っている室と、前記室に接続されたマウスピースと、前記室に接続された第1と第2のノーズピースとから構成されている。一つの実施形態では、ノーズピースが患者のそれぞれの鼻孔にはめ込まれ、ノーズピースを通して息を吸い込むと、薬剤を同伴する気流が患者の肺に吸い込まれる。他の実施形態では、マウスピースが患者の口にくわえられ、マウスピースを通して息を吸い込むと、薬剤を同伴している気流が患者の肺に吸い込まれる。
【0010】
特許文献2には、薬剤を含む粉末を患者の片方の鼻腔の鼻粘膜に送り込むための送り込み装置が開示されている。この装置は、定量の粉末薬剤を含んでいる管状部を含んで構成されている。使用時には、前記管状部の先端部がそれぞれ患者の鼻腔の一つの鼻孔と口に配置され、患者が口を通して息を吐き出すと、吐き出された空気が粉末薬剤を同伴してそれを前記一つの鼻腔内に送り込み、吐き出された空気は管状部の周囲を通って前記一つの鼻孔から外へ逆流する。ある実施例では、前記管状部には前記定量の粉末薬剤の上流に可撓部が設けられている。こうした可撓部を設けることによって、患者は薬剤の上流の一箇所で前記管状部を閉じることができ、息を吐き出している間にこの閉じられた可撓部が解放されると、薬剤を同伴している突発的気流が短時間前記一つの鼻腔内に送り込まれるようになっている。別の実施例では、鼻孔に配置される管状部の先端部は、鼻孔内の、鼻粘膜上に粉末薬剤を沈着させることができるような位置に前記管状部を配置する作用をするような形につくることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許出願公開第408856号明細書
【特許文献2】国際公開第98/53869号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この送り込み装置は構造が単純であるが、この装置の作動としては薬物、特に薬剤を含んだ液体または粉末の形の薬物を鼻気道の後部位に効果的に送り込むようにはやはりなっていない。というのは、薬剤は各々の鼻腔へと別個に送り込まれ、それぞれの鼻腔に出入りする気流は、同一の開口部、すなわちそれぞれの鼻孔を通り、それぞれの鼻腔後部位が閉じられた状態は圧力を跳ね返す表面として作用して、吐き出された空気がそれぞれの鼻腔の後部位にきちんと到達しないうちにそうした空気を鼻孔から外に逆流させるためである。さらに、鼻腔後部位に効果的に薬物を送り込むには制御された持続する双方向の気流が必要であることがわかっているが、気流の突発波を鼻腔の一つの内部に短時間与えることでは、そうした気流は達成できない。
【0013】
薬物を効果的に鼻気道に送り込むためには、投与が効率的でかつ簡単であることが非常に望ましい。しかし、この目標を達成しようとすると問題が生じかねない。特に、鼻に炎症があって病的変化が起きている場合には、特に鼻気道の後部位や鼻組織の後周辺部への液体や粉末のような薬物の投与は慎重を要する。実際に、鼻気道の狭いスリット状の通路は形状が複雑であるため、鼻粘膜が炎症をおこして詰っていると、こうした通路の一部が閉塞され、鼻気道への局所用医薬の分配は困難になる。
【0014】
したがって、本発明の目的の一つとして、鼻気道、特に鼻気道後部位において、また特に咽頭扁桃腺と耳管口がある鼻咽頭前部において最適分布をした薬物、特に局所用医薬の沈着を達成するための送り込み装置とその方法を提供することがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の理由から、本発明は、患者の口腔咽頭膜を閉塞させるための閉塞ユニットと、薬物を同伴する気体流を、患者の鼻中隔の後周辺部の周囲を流れてもう一方の鼻孔から出てくるような駆動圧で、患者の鼻孔の一つに送り込むための送り込みユニットとから構成され、該送り込みユニットが、使用時に気体流が前記一つの鼻孔に送り込まれる際に通る出口部と、使用時に前記一つの鼻孔から前記気体流が抜け出ないように前記一つの鼻孔を前記出口部へ密封するためのシーリング部材とを含むノーズピースを含んで構成されることを特徴とする薬物を患者の鼻気道に送り込むための送り込み装置を提供する。
【0016】
ある実施例では、該薬物は乾燥粉末である。
【0017】
別の実施例では、該薬物は液滴である。
【0018】
なるべくなら、該薬物の粒径分布は主に約1〜10μmの範囲に入ることが望ましい。
【0019】
ある実施例では、該薬物は特に鼻の健康状態の治療用薬剤を含んでいる。好ましい実施例では、該薬物の粒径分布は、わずかではあるがこれより大きな粒子を含むことができ、一般的には約10〜30μm、また好ましくは約20〜30μmの範囲である。
【0020】
別の実施例では、該薬物は、気道を清浄するための清浄剤(粉末または液体状の)であってもよいし、鼻気道を洗浄するための液体であってもよいが、後者の場合にはなるべくなら清浄剤を含んでいることが望ましい。一例として、特に鼻気道の後部位から粒子や分泌物を除去するために、該送り込み装置を使って食塩溶液やその他の溶液を鼻気道に投与して、その結果生じた溶液を診断・研究用として分析することもできる。ある好ましい実施例では、清浄剤や洗浄剤の粒径分布には、特に粒子の機械的作用に関してほんの少しではあるがより大きな粒子を含めることができる。
【0021】
また、本発明は、患者の鼻孔の一つを送り込みユニットの出口部に密閉して、気体流が前記一つの鼻孔を通って抜け出ないようにするステップと、患者の口腔咽頭膜を閉塞するステップと、薬物を同伴する気体流を患者の鼻中隔の後部位の周囲を流れてもう一つの鼻孔から外に流出するような圧力で出口部を介して送り込むステップとから構成される、患者の鼻気道に薬物を送り込むための方法を提供する。
【0022】
ある実施例では、口腔咽頭膜の閉塞は、該膜を押えつけるための器械を使って該膜を閉じるか、あるいは栓を使って該膜の後ろの鼻気道と口腔との間の開口部を一時的に閉じるという方法によって直接的に行われる。
【0023】
ある好ましい実施例では、口腔咽頭膜の閉塞は、口腔内に正圧を、より正確には口腔と鼻気道との間に正の圧力差を生じさせるという方法によって間接的に行われる。因みに、そうした圧力差は息を吐き出したときなどに達成される。
【0024】
なるべくなら、口腔咽頭膜の閉塞は、鼻気道への薬物の送り込みが始まると同時に行われることが望ましい。
【0025】
ある好ましい実施例では、口腔咽頭膜の閉塞は、患者が流動抵抗器に息を吐きかけるという方法によって自動的に行われる。因みに、該流動抵抗器を、患者の唇の間に保持された管状部に動作可能に接続してもよい。該流動抵抗器は、必要とされる口腔内正圧を与えるようにつくることもできる。
【0026】
患者が容易に達成することができる流量は、約1〜20リットル/分、また特に約3〜15リットル/分であり、最大20秒間にわたってかなり一定した気流の持続が可能であることが立証されている。いくつかの治療体制については、当該薬物が鼻気道の遠い部分に浸透できるようにするために比較的大きな流量の安定した気体流を2〜3秒間(望ましくは3〜10秒間)にわたって維持することが重要である。
【0027】
ある実施例では、患者が吐き出した息の気流が、該薬物をある量の空気中に分散させて、そうした分散された薬物を鼻気道内に送り込む機構の動力として使われている。
【0028】
なるべくなら、前記機構は、口腔咽頭膜が閉塞された後か、口腔咽頭膜の閉塞と同時に、当該薬物が鼻気道内に送り込まれるようにつくられていることが望ましい。この点に関しては、鼻腔を介して双方向への空気の流出が可能であるのは、口腔咽頭膜が閉塞されている場合に限られ、口腔咽頭膜の閉塞より前に送出された物質が下気道や内臓に行ってしまうために好ましくないことがわかるであろう。
【0029】
なるべくなら、鼻気道への薬物の放出は、息を吐き出した時につくられる気流によって引き起こされることが望ましい。
【0030】
ある好ましい実施例では、所定の流量に達したときに薬物の放出を引き起こす目的に感圧バルブが使われている。送り込もうとする該薬物を同伴させる気体の流量の制御が重要であることを理解して頂きたい。というのは、こうした流量は、該薬物の粒径分布とともに、粒子沈着効率を決定する重要な要因であるためである。
【0031】
ある好ましい実施例では、患者が完全に所定の流量を維持する体制に入るまでは感圧バルブは開かず、その流量が所定値より下がった場合には該バルブを閉じて薬物の送り込みを停止することができるようになっている。
【0032】
また、ある好ましい実施例では、薬物が駆動気体に同伴されて送り込まれるようになっているが、該感圧バルブが開くタイミングと持続時間の一方または両方と放出される用量とが標準化された投薬量を確保するように慎重に制御されている。
【0033】
ある実施例では、薬物が室内に放出され、定量の薬物の混合を起こさせるために気体流(ある実施例では吐く息の流れ)が供給されるようになっているが、気体流の送り込みを長引かせて、鼻気道を洗い流すこともできる。因みに、このように気体流の送り込みを長引かせて洗い流しても、送り込まれる用量に影響はない。駆動気体の供給には、手動装填できるばねや加圧空気などによって動力を供給される機械式装置を使用してもよい。
【0034】
どのような方式を使用するかに関係なく、流量特性を最適化して、薬物の沈着を向上させるとともに、引込め反射を誘発しそうな突然の送り込み開始を避けるなど、快適係数を向上させることができる。
【0035】
なるべくなら、投与機構によって定量の薬物を送り込み室内に分配することが望ましい。こうした投与機構は、当該薬物を徐々に放出できるようにつくってもよい。このように徐々に放出すれば、薬物が気体流に同伴されやすくなり、特に対側鼻腔における鼻気道の全ての通気部への送り込みが改善されるであろう。
【0036】
ある好ましい実施例では、患者によってつくり出された吐く息の流れが口腔咽頭膜の閉塞を起こさせるが、その吐く息の流れによって薬物を同伴し双方向の流れを与えるための気流が与えられる。この構成は、別個の駆動気体流をつくる必要がないという点で有利である。
【0037】
なるべくなら、ノーズピースは、バルブ領域(通常は流量制限部位である鼻腔内の約2〜3cmの位置にある領域)を拡張するとともに、鼻の炎症がある場合に大きくなる可能性がある抵抗を低減するように、前記一つの鼻腔内に1cm程度延在するように構成されてことが望ましい。
【0038】
該ノーズピースの形状は、個別のニーズに合わせて調整することができる。例えば、乱流を増進させるとともに、薬物の最適分散を達成するように該ノーズピースの内部形状を最適化してもよい。
【0039】
該ノーズピースには、適当な生理的気流をつくり出す手助けをするオリーブ形をしたきつめの鼻部材を設けてもよい。このオリーブ形をした鼻部材は、同じ寸法か異なる寸法の他のオリーブ形部材を取り付けることができるように脱着式であってもよい。鼻詰まりがひどい場合には、このオリーブ形部材をもう一つの鼻孔内に通して、抵抗を減らすとともに、気流がその鼻孔を通りやすくすることもできる。
【0040】
前述したように、該送り込み装置では、最低20リットル/分の気体流を容易に達成することができる。十分な大きさの気体流を与えることによって、複雑な鼻気道の全ての部分、あるいは少なくとも大部分に薬物を浸透させることができる。ある実施例では、該送り込み装置は気体流の大きさを表示するための表示器を具備している。
【0041】
鼻中隔の後の後部通路と開口部の大きさは、ほぼ常に流動抵抗器の開口部より大きい。したがって、鼻気道の後部位の圧力が口腔内の正圧に近づき、口腔咽頭膜の閉塞を危うくするのは、鼻孔出口が完全に閉塞するという非常にまれなケースに限られる。鼻詰まりがひどい場合には、詰った鼻孔にノーズピースを挿入すれば、抵抗が低減して、洗い流しがうまくできるようになる場合もある。
【0042】
鼻気道を一方向に洗い流した後、もう一つの鼻孔から同じ手順を反復してもよい。このようにすれば、両方の鼻腔が双方向に洗浄される。これは、この装置が備えている独特の特徴である。この実施例では、鼻粘膜の全ての部分、特に既存の方法を用いたのでは届きにくい後部位への薬物の分配の向上が確保される。
【0043】
ある好ましい実施例では、該薬物が粉末のような固体状であるが、湿度が高いことが固体の投与上問題になる場合には、フィルタを使用することもできる。
【0044】
該薬物は単一の化合物であってもよいし、化合物の混合物であってもよい。前記化合物は、適当な形のものであれば、粉末、溶液、懸濁液といったように、どのような形のものであってもよい。
【0045】
該薬物は、人間、あるいは場合によっては動物への送り込みに適するものであれば、どのような薬物であってもよい。該薬物を送り込む目的は、鼻気道のいずれかの部分、あるいは周囲の組織や器官のいずれかにおいて作用させることであってもよいし、鼻気道から離れた部位で作用させるためであってもよい。
【0046】
なるべくなら、該薬物を送り込む目的は、鼻気道のいずれかの部分、あるいは周囲の組織や器官のいずれかにおいて後に作用させるためであることが望ましい。
【0047】
該薬物は、有益な医療効果を持っていてもよい。そうした医療効果としては、診断効果、治療効果、予防効果、および粒子、堅くなった外皮、分泌物、有機堆積物等の除去といった清浄効果が考えられる。なるべくなら、該薬物は治療効果を持っていることが望ましい。
【0048】
なるべくなら、該薬物は医薬であることが望ましい。該医薬は、適当な担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤と混合されていてもよい。
【0049】
なるべくなら、該医薬は、上記の健康状態のいずれか一つまたは二つ以上を治療するためのものであることが望ましい。一例として、該医薬はアレルギー性および非アレルギー性の炎症性疾患を治療するためのものであってもよい。
【0050】
投与しようとする典型的な医薬としては、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、クロモグリケート、抗アレルギー薬、抗炎症薬、抗ロイコトリエン剤、オキシトシンのような泌乳促進剤、および抗偏頭痛薬が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
本発明に係る送り込み装置は、最適な送り込みを達成することによって、咽頭扁桃腺肥大や慢性分泌性中耳炎といった上気道の病状の治療に際して局所用医薬の効果を向上させる。
【0052】
該装置は、医薬の他に、食塩溶液やその他の溶液(好ましくは油や薬草を含んでいるもの)を用いて鼻気道を洗浄したり浄化する目的にも使用することができる。
【0053】
本発明に係る送り込み装置は、特定のニーズに合わせて調整することができる。例えば、風船やポップアップ式の肖像を組み込んで、流量を半定量的に表示するとともに、小さい子供が投与を受け入れやすくし、また投与しやすくすることができる。
【0054】
吸入が危うくなるのは、鼻腔を広げようと試みた後でさえも、鼻の抵抗が大きすぎて気体流を鼻気道に通すことができないというまれな状況に限られるであろう。そうした場合には、うっ血除去薬を用いた前処理が必要な場合もある。
【0055】
該送り込み装置は、例えば診断用解析や研究を目的として鼻粘膜から生じる媒介物質や細胞を捕集する際の鼻洗浄手段として使用することもできる。この点に関しては、媒介物質や細胞の溶液中への十分な移動を確保するに足る期間にわたって鼻気道を食塩溶液のような適当な溶液にさらした後で、媒介物質や細胞を適当な捕集容器内に排出させればよい。該装置をこのように使用するには、気道を洗い流すために使われる気流として、吐き出された息の流れとは別個の気体流を使用する必要がある場合もある。こうした洗浄という用途には、吐き出された息を使用することはできない。というのは、下気道には、下気道から生じる媒介物質、分泌物、あるいは細胞が含まれている可能性があり、その場合には鼻の試料が汚濁されてしまいかねないためである。こうした特定の用途には、指示どおりに、鼻孔出口から抜け出てくる流体を容器に捕集する。あるいはまた、鼻孔出口から抜け出てくる流体をフィルタに吸収させて、それを直接分析や遅延分析に供してもよい。実際には、そうしたフィルタなどを使用しても、バクテリア、ウイルス、または媒介物質などのいつくかの生物体についてほぼ即座に検出結果を得ることができる。
【0056】
本発明に係る送り込み装置は、いくつかの理由により有利である。
【0057】
とりわけ、該送り込み装置は、医薬、食塩溶液などの薬物を鼻気道に送り込むための非常に簡単で効率的な手段を提供する。この点に関しては、該装置は、可動部品をほとんど使用しない非常に簡単な技術を採用しているため、比較的安価に大量生産することができる。さらに、本発明に係る装置は使い捨て形式にすることもでき、その場合には送り込まれる薬物に防腐剤を入れる必要がなくなる。
【0058】
また、先行技術に係る装置の一部の場合には後で洗浄法や噴霧法を用いる必要があったが、本発明ではそれが不要になる。しかし、一部の応用法については、やはり後で洗浄・噴霧作業を行うことが望ましい場合もある。
【0059】
本発明に係る送り込み装置は、使用時にノーズピースと鼻孔との間が密封されるため、複雑な気道への長期浸透、鼻腔を通る二方向の気流、および対側鼻通路における薬物の沈着が確保されるという点で有利である。
【0060】
本発明では、口腔咽頭膜は通常閉塞されたままになっている。送り込まれた気流は一方の鼻腔に入り、鼻中隔の後部位を通過して、鼻中隔の後周辺部の後側で180°旋回して、もう一方の鼻腔から出て行く。このように気流が方向転換することによって、鼻甲介の後部位と鼻粘膜への薬物、特に医薬の沈着が向上する。
【0061】
さらに、薬物(一般的には医薬)の二方向沈着と洗浄によって、副鼻腔口の解剖学的位置と方向性のために全ての副鼻腔口への到達度が向上するであろう。これによって、鼻粘膜の炎症に付随して起こることが多い副鼻腔炎の治療に不可欠な副鼻腔の通気と排液が改善される可能性がある。この点に関しては、篩骨洞と蝶形骨洞に向かう口と管は、鼻気道の後部位にあり、上顎篩骨口および前部と腹側の篩骨口が入っている、漏斗を覆っている鉤状突起は後に傾いている。さらに、駆動正圧を利用することによって、副鼻腔口、副鼻腔へつながる副鼻腔管において、また副鼻腔自体においてさえも、医薬の沈着が増大するであろう。
【0062】
またさらに、鼻中隔の後側で気流が180°方向転換するために、咽頭扁桃腺がある鼻咽頭の最高部と鼻咽頭と中耳とを連結している耳管に向かう管口がある箇所の付近における薬物の沈着が特に増大する。一例として、ステロイド剤は、小児患者によく見うけられる肥大性扁桃腺を縮小させることがわかっており、分泌性中耳炎にプラス効果を持つ可能性がある。もっと耳管口に近接して局所用うっ血除去薬を沈着させれば、耳管のうっ血を除去して中耳の負圧を緩和する効率が高まる可能性がある。因みに、中耳の負圧は鼻炎に付随して起こり、中耳が負圧になると、小児患者は分泌性中耳炎にかかりやすくなり、その結果聴力の低下に陥りやすくなる。子供には頻繁に扁桃腺肥大の手術が行われるが、本発明に係る薬物療法の改善によって手術の必要性が低減するはずである。
【0063】
本発明のさらなる効果としては、余剰になりうる薬物、すなわち沈着していない薬物は対側鼻孔から放出されるが、所望される場合には該対側鼻孔にて該薬物を捕集することができるため、他の多くの送り込み技術を採用した場合のように、鼻腔に引き続いて口腔まで達したり、消化管内に入りったりしないということがある。このようにして、不快感、またさらに重要なことには、当該薬物が医薬である場合には好ましくない薬物への全身曝射が低減されるであろう。
【0064】
また、本発明を用いれば、現在鼻気道の洗浄や洗い流しに使われている技法と比べて、食塩溶液やその他の溶液による洗浄の効率が高まり、こぼれや不快感も低減することができる。
【0065】
さらに、本発明は、鼻粘膜から分泌物を除去するともに粘膜繊毛機能を増進させるために、食塩溶液のような溶液やそれ以外の油を用いて簡単に心地のよく鼻粘膜の洗浄を行えるようになっている。
【0066】
またさらに、本発明は、バクテリア、ウイルス、細胞成分、炎症媒介物質といった粘膜構成要素を捕集し、診断するといった目的のために鼻粘膜を洗浄するための簡単で効果的な手段を提供する。
【0067】
またさらに、鼻通路の狭い(ときには詰った)部分は、鼻をすすったり息を吸い込んだりする間に動的崩壊を起こしかねないが、鼻粘膜を正圧(特に動的正圧)にさらすことによって、そうした現象が起きるよりむしろ、そうした部分が開くであろう。こうした動的正圧は、少なくとも5cmH2O、好ましくは少なくとも50cmH2O、さらに好ましくは少なくとも100cmH2O、さらに好ましくは少なくとも200cmH2O、さらに好ましくは400cmH2O、そしてことさら好ましくは500cmH2Oである。本発明によって達成される動的正圧は、鼻気道を通り抜ける気体流がないバルサルバ法によって与えられる静水圧と鮮明な対照を成している。
【0068】
さらに、暖かい湿った空気を気体流として使用するため、特に寒冷な気候で室内空気や屋外空気を使う場合に比べて容認しやすそうであり、引き起こす刺激も少ないと言える。
【0069】
該薬物が乾燥粉末である場合には、吐き出された息の湿度によって粉末が塊になる場合もある。当然、こうした現象が起きるかどうかは、当該粉末の性質と当該装置(特に分散室)の構造によって決まるであろう。こうした特異な問題を軽減するために、粉末の表面特性を改変したり、該装置の分散室の上流に吸湿素子(一般的にはシリカのような乾燥剤を含んでいる)を取り付けたりすることもできよう。好ましい実施例では、該吸湿素子は、流動抵抗器の役割をするフィルタとして設けることもできよう。
【0070】
ある好ましい実施例では、粉末の塊のために暖かい湿った吐き出された空気の直接吸入が利用できなくなることがないようにするために、該送り込み装置は、鼻気道に向けての送り込み気流として、大気のようなより乾燥した空気の気体流をつくり出す転移手段を含んで構成されている。そういった転移手段は、機械的な性質のものであってもよいが、吐き出された空気のエネルギーを利用して、必要に応じて所要の流量で大気を駆動して該物質を送り込まれた気流内に分散させる。この実施例では、粉末の凝塊形成は、既存の乾燥粉末吸入器が示すものと同レベルにまで防止あるいは少なくとも低減されるであろう。
【0071】
所望される場合には、標準的技法を用いて鼻気道に送り込まれた薬物の分配を研究することもできよう。一例として、音響鼻気圧測定法や着色流体を使用することもできよう。さらにはビデオ内視鏡検査によって、送り込まれた薬物の分布を決定することもできよう。さらに、あるいは代替案として、適当な放射性物質を使って鼻腔内の通路を追跡することによって、分配の研究を行うこともできよう。こうした研究の結果は、流量、該装置の形状と寸法(特にノーズピースの構成)、および該薬物の粒径分布を最適化する目的に使用することもできよう。さらには、こうした研究の結果を利用して、患者の応諾性を最適化することもできよう。
【0072】
前述したように、該装置には、所望の正圧に達したことを表示するための風船や類似のポップアップ装置を組み込んでもよい。こうした風船やポップアップ装置をつけることで、該装置を使いたがらない小さな子供たちの応諾性が高まる場合もある。
【0073】
あるいはまた、特に幼児の場合には、薬物を同伴する気体流は、その子供が風船やポップアップ装置を膨らますことで口腔内に所要の正圧をつくり出している間に、親などの別の人の吐き出す息によって、あるいはポンプなどを使用することによって提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】人間の患者の上気道の解剖学的構造の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図5】本発明の第1から第3の実施例の変形送り込みユニットの概略図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図7】本発明の第5の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図8】本発明の第6の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【図9】本発明の第7の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図2は、本発明の第1の実施例に係る送り込み装置の図である。該送り込み装置は、口腔呼気ユニット20と、薬物送り込みユニット22とから構成される。この実施例では、口腔呼気ユニット20と送り込みユニット22は、別個の構成部分として設けられているが、例えばVelcroTMの留め具によって脱着自在に連結したり、例えばねじやリベット、あるいはその両方によって接続したり、一体成形にすることも可能である。
【0076】
該口腔呼気ユニット20は、管状部24と該管状部24の一方の端部に取り付けられたマウスピース26とから構成される。マウスピース26は、使用時には使用者の唇にくわえられるので、交換できるように管状部24とは切り離してつくられているが、一体成形にしてもよい。この実施例では、マウスピース26は管状部24にスナップばめされているが、ねじどめ式のものであってもよい。管状部24には、流動抵抗器28(この実施例では固定バッフルプレート)が含まれている。この流動抵抗器28は、患者が吐き出した呼気に十分な抵抗を与えて患者の口腔内に正圧を生じさせるとともに患者が吐き出すと同時に口腔咽頭膜の閉塞を起こさせるようにつくられている。変形例では、流動抵抗器28は、片寄らせたフラップ、弾性膜、または制動輪などの可動部材にすることもできよう。
【0077】
送り込みユニット22は、患者の鼻孔の一つに密封ばめするようになっているノーズピース30(この実施例ではポリマー素材のような弾性素材でつくられている)と、薬剤を同伴している気体流を患者の鼻腔の一つの内部に送り込まれたときに鼻中隔の後周辺部の先まで流路を開くに足る所定圧力で供給するための薬剤供給ユニット32と、該ノーズピース30と該薬剤供給ユニット32とを連結している管状部34とから構成される。好ましい実施例として、ノーズピース30は、オリーブ形をした外部部材を具備していてもよいし、該ノーズピース30を挿入する鼻腔の前部位を広げさせるような形につくられていてもよい。特に好ましい実施例として、該ノーズピース30は、例えば渦流を誘導する突起を設けるなどすることで、抜け出ていく気体流に最適なフローパターンと粒径分布を与えるような形につくられていてもよい。該ノーズピース30は、取換えがきくように管状部34と切り離してつくられているが、代わりに一体成形されていてもよい。この実施例では、該ノーズピース30は管状部34にスナップばめするようになっているが、ねじどめ式のものでもよい。薬剤供給ユニット32は、加圧定量吸入器によって供給されるような薬剤を含んでいる液滴のエーロゾル・スプレーを生成するためのエーロゾル・スプレー生成器や、薬剤を装填した定量の乾燥粉末を同伴するための加圧気体源を含んで構成することもできる。あるいはまた、この粉末は管状部34の一区画内に装填してもよい。
【0078】
使用時には、患者はマウスピース26を唇にくわえ、ノーズピース30を鼻孔の一つにはめ込んでから、マウスピース26を介して息を吐き出す。すると、吐き出された空気の流れは管状部24で流動抵抗器28による抵抗を受け、患者の口腔内に正圧が生じるようになっている。因みに、この正圧は口腔咽頭膜の全域にわたって患者の口腔咽頭膜の閉塞を起こさせるに足る圧力差を生じさせるようなものである。出願人は、口腔咽頭膜を閉じた位置に維持するためには、口腔と鼻気道との間に約5cmH2Oの正の圧力差が必要であることを既に立証している。さらに、出願人は、患者が約1〜20秒にわたって約3〜30リットル/分の流量を維持できるはずであり、約10〜20リットル/分の流量と約2〜5秒の送り込み時間が最適であることも立証済みである。口腔咽頭膜が閉じられたら、薬剤供給ユニット32が作動されて、薬剤を同伴する気体流がノーズピース30を介して患者の鼻気道内に送り込まれる。前述したように、この気体流の送り込みは、鼻中隔の後周辺部より先まで連通路を開かせて、該気体流が前記一つの鼻腔を通り抜けて、鼻中隔の後部位の周囲を通り(実際には180°の角度で方向転換される)、もう一つの鼻腔から出て行くような圧力で行われる。やはり前述したように、このように二方向に気体流を流すことによって、鼻気道の後部位における薬剤の沈着を大きく向上させることができる。
【0079】
変形例として、送り込み装置22から薬剤供給ユニット32をなくして、代わりに定量の乾燥粉末を管状部34の一区画内に装填して、小児患者の親といった他者が、管状部34の末端に息を吹き込むことによって送り込み気流を提供するようにすることもできる。
【0080】
図3は、本発明の第2の実施例に係る送り込み装置の概略図である。該送り込み装置は、口腔呼気ユニット20と、前述した第1の実施例に係る送り込みユニット22と、該送り込みユニット22を取り付けた患者のもう一方の鼻孔に差し込むようになっている出口ユニット36とから構成される。
【0081】
該出口ユニット36は、管状部38と、該管状部38の一方の端に取り付けられた、患者のもう一方の鼻孔に密封ばめするようになっているノーズピース40(この実施例ではポリマー素材のような弾性素材でつくられている)とから構成されている。該ノーズピース40は、取換えがきくように管状部38と切り離してつくられているが、該管状部38と一体に成形されていてもよい。この実施例では、該ノーズピース40は管状部38にスナップばめするようになっているが、ねじどめ式のものでもよい。送り込みユニット22のノーズピース30の場合と同様に、好ましい実施例として、ノーズピース40はオリーブ形をした外部部材を具備していてもよいし、該ノーズピース40を挿入するもう一方の鼻腔の前部位を広げさせような形につくられていてもよい。管状部38には、同所を通る呼気の流れに鼻気道で動的正圧をつくり出させるに足る流動抵抗を与えるようにつくられた流動抵抗器41(この実施例ではバッフルプレート)が含まれている。好ましい実施例では、流動抵抗器41は、抵抗レベルを調整できるようにすることで鼻気道における動的圧力を制御するように調整自在になっている。変形例として、流動抵抗器41は、片寄らせたフラップ、弾性膜、または制動輪などの可動部材にすることもできよう。
【0082】
ある好ましい実施例では、出口ユニット36は表示器を具備しており、その上流、すなわち鼻気道で所定の正圧に達すると同時に視覚信号または音響信号の少なくとも一つが出されるようになっている。なるべくなら該表示器は警笛で構成されることが望ましい。このようにすれば、患者には該装置の適正使用に関して明確なフィードバックが与えられる。
【0083】
この実施例に係る送り込み装置の使用法は、前記の第1の実施例と同じである。しかし、前述したように、患者の鼻孔出口の下流に出口ユニット36の中に、流動抵抗器41を設けることによって、鼻気道内で動的正圧が維持される。こうした正圧は、副鼻腔口や耳管口といった鼻気道にある様々な口とそれらに対応づけられた管、すなわち副鼻腔管や耳管を拡張させる作用をして、それらの口への薬剤の送り込みを増進させるという点で有利である。さらに、こうした正圧は、耳管口、よく鼻のポリープができる箇所である中鼻咽道、嗅細胞に向かう裂け目を塞ぐことが多い咽頭扁桃腺上の薬剤の沈着を向上させる作用をする。
【0084】
図4は、本発明の第3の実施例に係る送り込み装置の概略図である。該送り込み装置は前記の第2の実施例に係る送り込み装置と非常に似通っているため、不要な説明の重複を避けるために、類似の部品を引用符合で示しながら相違点だけを詳しく説明する。該送り込み装置は、送り込みユニット22の管状部34内の薬剤供給ユニット32の下流に設けられた圧力センサ43(この実施例では感圧ばねまたは感圧膜)と、該センサ43と該薬剤供給ユニット32とに連結された制御ユニット44とをさらに含んで構成される点だけが異なっている。
【0085】
該制御ユニット44は、鼻詰りの程度に関係なく鼻気道における粒子沈着効率を最適化するために、薬剤供給ユニット32によって供給される供給ガスの流量を制御するようにつくられている。上記で述べたように、鼻気道内で最適流量を維持することによって、薬剤を含んでいる粒子の沈着効率(粒子沈着効率と呼ばれる)は増大する。通常、粒子沈着効率を最大化するために約15リットル/分の流量が必要であるとすれば、詰った鼻気道ではそれより小さい流量(たぶん10リットル/分)が必要になり、開いた鼻気道ではそれより大きい流量(たぶん20リットル/分)が必要になろう。
【0086】
これ以外の点では、この送り込み装置の作動は前記の第2の実施例に係る送り込み装置と同じである。
【0087】
図5は、上記の実施例に係る送り込み装置用の変形口腔呼気ユニット20の概略図である。
【0088】
この変形口腔呼気ユニット20は、管状部24の流動抵抗器28の上流に外側開口部45が設けられているとともに、表示器として該外側開口部45に接続された膨らませることができる肖像46をさらに含んで構成され、この肖像46は膨らませると患者の視界内のひときわ目立つ位置を占めるようになっている点が異なっている。図4には、肖像46が膨らまされた状態が示されている。そういった表示機能を提供することで、特に小児患者においては患者の応諾性が高まるはずである。該口腔呼気ユニット20は、該肖像46に接続された膨張管路48をさらに含んで構成され、さらに該肖像46を他者(一般的には小児患者の親)やポンプによって膨らませることが可能である。変形例として、肖像46は、膨らませることが可能になっていなくとも、患者が息を吐き出すとひときわ目立つ位置に来るようなものであればどのような種類のもの(一般的には機械力または電気で作動する肖像)でもよいあろう。好ましい実施例として、肖像46は、患者が最適呼気流量を達成すると同時に膨らまされるようにつくることもできる。このようにして、肖像46は表示器の機能を果たす。
【0089】
この実施例に係る送り込み装置の使用法は、前記の第1の実施例と同じである。しかし、マウスピース26を介して息を吐き出すと同時に、生じた圧力によって肖像46が膨らまされ、患者の視界内のひときわ目立つ位置を占める。このように肖像46が出現することは、小児患者の心を引き付ける。というのは、肖像46を膨らますという面白い要素が不要な不安を和らげる可能性があるためである。
【0090】
図6は、本発明の第4の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【0091】
該送り込み装置は、入口52と出口54と具備した室50と、該入口52に接続されたマウスピース56と、該出口54に接続されたノーズピース58とから構成される。該ノーズピース58は、患者の鼻孔の一つに密封ばめするようにつくられている。該室50には、流動抵抗器60(この実施例ではバッフルプレート)が、また該流動抵抗器60の下流に患者の鼻気道に送り込もうとする定量の乾燥粉末を入れるための薬剤受取り区画62とが設けられている。この実施例では、ノーズピース58はポリマー素材のような弾性素材でつくられている。好ましい実施例では、室50は乾燥剤を含むことも可能である。好ましい実施例では、流動抵抗器60に吸湿フィルタを設けることも可能である。
【0092】
使用時には、患者はマウスピース56を唇にくわえ、ノーズピース58を鼻孔の一つにはめ込んでから、マウスピース56を介して息を吐き出す。すると、吐き出された空気の流れは室50で流動抵抗器60による抵抗と鼻気道の抵抗を受け、口腔咽頭膜の閉塞を起こさせるに足る圧力差を生じさせるような正圧が患者の口腔内で生じるようになっている。吐き出された空気は、流動抵抗器60を通り抜けた後、薬剤受取り区画62で粉末薬剤を同伴し、次いでこの薬剤を同伴した気流がノーズピース58を通り抜けて患者の鼻気道に入る。鼻気道に入る吐き出された空気は、鼻中隔の後周辺部より先まで連通路を開かせて、該気体流が前記一つの鼻腔を通り抜けて、鼻中隔の後部位の周囲を通り(実際には180°の角度で方向転換される)、もう一つの鼻腔から出て行くような圧力で与えられる。やはり前述したように、このように二方向に気体流を流すことによって、鼻気道の後部位における薬剤の沈着を大きく向上させることができる。
【0093】
ある好ましい実施例では、該送り込み装置は、圧力で作動される弁(なるべくならマウスピース56に配置されることが望ましい)を具備している。この弁は、患者の吐き出す息によって所定の正圧が生じた時にだけ(一般的には約10cmH2Oの正圧で)開くようにつくられている。こうした構成は、口腔咽頭膜が開いた状態で薬剤が鼻気道に送出される可能性が回避されるため、薬剤が鼻気道の外部に沈積する危険が低減するという点で有利である。
【0094】
別の好ましい実施例として、3番目に説明した実施例と同様に、該送り込み装置は、鼻気道内で動的正圧を維持するように患者のもう一方の鼻孔の下流に流動抵抗器を設けるための出口ユニットを具備していてもよい。
【0095】
図7は、本発明の第5の実施例に係る送り込み装置の概略図である。該送り込み装置は、患者が息を吐き出して口腔咽頭膜を閉塞するための口腔呼気ユニット70と、患者の鼻気道に薬剤を同伴する気流を供給するための薬剤送り込みユニット72とから構成される。
【0096】
口腔呼気ユニット70は、管状部74と、該管状部74の一方の先端に取り付けられたマウスピース76とから構成される。該マウスピース76は、患者の唇にくわえられるため、取換えがきくように管状部74と切り離してつくられているが、該管状部と一体に成形されていてもよい。この実施例では、マウスピース76は管状部74にスナップばめされているが、ねじどめ式のものであってもよい。該管状部74は、流動抵抗器78(この実施例では歯車)を具備している。この流動抵抗器78は、患者が息を吐き出すと同時に回転して、なおかつ患者の口腔で該口腔と鼻気道との間に所要の正の圧力差を維持するに足る正の圧力の生成を引き起こして、口腔咽頭膜を閉じられた位置に維持するようにつくられている。
【0097】
該送り込みユニット72は、管状部80と、該管状部80の一方の先端に取り付けられた患者の鼻孔の一つに密封ばめするようになっているノーズピース82(この実施例ではポリマー素材のような弾性素材でつくられている)とから構成されている。該ノーズピース82は、取換えがきくように管状部80とは切り離してつくられているが、代わりに該管状部と一体に成形されていてもよい。この実施例では、該ノーズピース82は管状部80にスナップばめするようになっているが、ねじどめ式のものでもよい。好ましい実施例として、該ノーズピース82はオリーブ形をした外部部材を具備していてもよいし、該ノーズピース82を挿入する鼻腔の前部位を広げさせるような形につくられていてもよい。特に好ましい実施例として、該ノーズピース82は、例えば渦流を誘導する突起を設けるなどすることで、抜け出ていく気体流に最適なフローパターンと粒径分布を与えるような形につくることもできる。管状部80には、口腔呼気ユニット70の管状部74にある歯車78と連結されたインペラ84が設けられており、該インペラは、歯車78が回転すると同時に回転して、管状部80内に空気を引き入れるとともに、患者の鼻腔の一つに送り込まれたときに鼻中隔の後周辺部より先まで流路を開かせるに足る圧力で管状部を通る気流を提供するようになっている。
【0098】
薬剤送り込みユニット72は、薬剤を含んでいる定量の乾燥粉末をインペラ84の上流の管状部80に分配するための分配ユニット86をさらに含んで構成される。この実施例では、該分配ユニット86は、手動式に作動され、薬剤を含んでいる定量の乾燥粉末を管状部80内に供給するが、その代わりに患者の当該部位に手動式に介入しなくてもすむように歯車78で駆動するようにつくることもできよう。
【0099】
使用時には、患者はマウスピース76を唇にくわえ、ノーズピース82を鼻孔の一つにはめ込んでから、マウスピース76を介して息を吐き出す。すると、吐き出された空気の流れは歯車78による抵抗を受け、患者の口腔咽頭膜を閉塞させるに足る正圧が患者の口腔内に生じるようになっている。吐き出された空気が歯車78の回転を引き起こし、今度は歯車の回転がインペラ84の回転を引き起こし、インペラ84の回転が管状部80を通る気流を生じさせ、その気流が薬剤を含んでいる定量の乾燥粉末を同伴して、それをマウスピース82を介して患者の鼻気道に送り込む。前述したように、この気流は、鼻中隔の後周辺部より先まで連通路を開かせて、該気流が前記一つの鼻腔を通り抜け、鼻中隔の後部位の周囲を通り(実際には180°の角度で方向転換される)、もう一つの鼻腔から出て行くような圧力で与えられる。やはり前述したように、このように二方向に気体流を流すことによって、鼻気道の後部位における薬剤の沈着を大きく向上させることができる。
【0100】
好ましい実施例では、歯車78は、インペラ84によって生じる同伴気体流が確実に最適となるようにするに足る所定の流量に達するまで、その回転が妨げられるようにつくられている。こうした構成は、最適な粒子沈着効率が確保されるとともに、口腔咽頭膜が開いた状態で薬剤が鼻気道に送り込まれた可能性が回避され、薬剤が鼻気道の外部に沈積する危険が低減するという点で有利である。
【0101】
図8は、本発明の第6の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【0102】
該送り込み装置は、それぞれが薬剤を含んだ粉末を含んでいる複数のブリスター94が設けられたブリスターパック素子92を収納するためのハウジング90と、開放時にブリスター94の一つと連通している管状部96とから構成され、該管状部96の一方の先端部がマウスピース98になっており、使用時には患者がそのマウスピースを唇にくわえるようになっている。該管状部96には、通常は閉じられた第1の位置と開かれた第2の位置との間を移動できるように素子100が配置されている。この実施例では、該素子100は、ねじ切りした軸上に回転自在に取り付けらるとともに圧縮ばねによって通常は閉じられた位置の方に片寄らされているプロペラまたはプロペラ様のもので構成されている。該素子100は、流動抵抗器と弁の両方の機能を果たすようにつくられている。この実施例では、該素子100は、該圧縮ばねの片寄りに対抗して前記ねじ切りした軸の周囲を回転することによって薬剤放出位置である開いた位置に移動し、呼気の流量が所定の流量を上回った時に限り該粉末が気流によって同伴できるようにつくられている。該流量は、なるべくなら約5〜20リットル/分の範囲にあることが望ましい。というのは、この流量の範囲内では、該気流によって同伴される薬剤を含んでいる粉末は、前述したようにそれ自体が鼻抵抗の関数である駆動圧に反比例するためである。こうした構成は、薬剤を含んでいる粉末を最適流量で放出する際に最適粒子沈着効率が達成されるように考えられており、口腔咽頭膜が開いた位置にある状態で薬剤が鼻気道に送り込まれる可能性が回避されるという点で有利である。
【0103】
該送り込み装置は、該素子100の下流の管状部96のもう一方の先端に取り付けられた患者の鼻孔の一つに密封ばめするようになっているノーズピース102(この実施例ではポリマー素材のような弾性素材でつくられている)をさらに含んで構成される。該ノーズピース102は、取換えがきくように管状部96とは切り離してつくられているが、該管状部と一体に成形されていてもよい。この実施例では、該ノーズピース102は、管状部96にスナップばめされているが、ねじどめ式のものであってもよい。好ましい実施例として、該ノーズピース102は、オリーブ形をした外部部材を具備していてもよいし、該ノーズピース102を挿入する鼻腔の前部位を広げさせるような形につくられていてもよい。特に好ましい実施例として、該ノーズピース102は、例えば渦流を誘導する突起を設けるなどすることで、抜け出ていく気流に最適なフローパターンと粒径分布を与えるような形につくられていてもよい。
【0104】
該送り込み装置は、管状部96と連通しているブリスター94を開くためのブリスター開放機構104をさらに含んで構成される。この実施例では、該ブリスター開放機構104は、送り込みに先立って患者が手動式に操作するようになっている。
【0105】
使用時には、患者はマウスピース98を唇にくわえ、ノーズピース102を鼻孔の一つにはめ込んでから、マウスピース98を介して息を吐き出す。すると、吐き出された空気の流れは、所定の流量に達するまで素子100による抵抗を受ける。ひとたびこの所定の流量に達成すると(この流量では口腔咽頭膜は閉じた位置にある)、該素子100が開いた位置に来て、吐き出された気流がブリスター94に入っている粉末薬剤を同伴し、それをノーズピース102を介して鼻気道に送り込む。この気流の駆動圧は、鼻中隔の後周辺部より先まで連通路を開かせて、該気体流が前記一つの鼻腔を通り抜けて、鼻中隔の後部位の周囲を通り(実際には180°の角度で方向転換される)、もう一つの鼻腔から出て行くようなレベルになっている。やはり前述したように、このように二方向に気体流を流すことによって、鼻気道の後部位における薬剤の沈着を大きく向上させることができる。
【0106】
ある好ましい実施例では、該送り込み装置は、マウスピース98の動きによって作動される、別の未使用ブリスター94が送り込み位置に配置されるように該ブリスターパック素子92を回転させるためのブリスターパック増強機構を具備している。特に好ましい実施例として、該ブリスターパック増強機構は、ブリスター開放機構104と連結して、自動的に該ブリスター94を開かせるようにし、それ以上の患者の介入を不要にすることもできる。
【0107】
一つの実施例として、前述したような図3に示される第1の実施例の変形例と同様に、該送り込み装置は、鼻気道における動的正圧を維持するために患者のもう一方の鼻孔の下流に流動抵抗器を設けるための出口ユニットを具備していてもよい。
【0108】
別の変形例として、ブリスターパック素子92をなくして、その代わりに管状部96と連通しており、その中に薬剤を含んでいる定量の乾燥粉末を装填できるようになっている室を擁するハウジング90を設けてもよい。こうした構成にすると、素子100が前記第2の位置に駆動されると同時に該室に入っている粉末が同伴され、該ブリスターパック増強機構は該機構が作動すると同時に薬剤を含んでいる定量の粉末を該室に供給するようにつくられている。
【0109】
本質的に、本発明は、AstraZeneca PLCによって製造されているTurbuhalerTMや、Glaxo PLCによって製造されているAccuhalerTMや、Schering AGによって製造されているTwisthalerTMなどのような乾燥粉末吸入器を広くベースにすることができることがわかるであろう。その場合には、患者によって吐き出された空気を薬剤同伴給気として利用するために、通常のマウスピースをノーズピース114と交換して、マウスピースを該吸入器の空気取入口と連通するように設ける。
【0110】
図9は、本発明の第7の実施例に係る送り込み装置の概略図である。
【0111】
該送り込み装置は、ハウジング110と、該ハウジング110を貫通する管状部112とから構成され、該管状部の一方の先端は、使用時に患者が唇にくわえるマウスピースになっている。
【0112】
該管状部112は、該管状部内の通常は閉じている第1の位置とトリガー位置である第2の位置との間を移動できるように設けられた素子116を具備している。この実施例では、該素子116は、ねじ切りした軸上に回転自在に取り付けらるとともに圧縮ばねによって通常は閉じられた位置の方に片寄らされているプロペラまたはプロペラ様のもので構成されている。該素子116は、管状部112内にエーロゾル・スプレーを送り込むための流動抵抗器と、弁と、トリガーの機能を果たすようにつくられている。それについては、後に詳述する。この実施例では、該素子116は、呼気の流量が所定の流量を上回った時に限って、該圧縮ばねの片寄りに対抗して前記ねじ切りした軸の周囲を回転することによって開いた薬剤放出位置に移動するようにつくられている。薬剤が放出される流量(なるべくなら、約5〜20リットル/分の範囲にあることが望ましい)は、該気流によって同伴される薬剤を含んでいる粉末は、前述したようにそれ自体が鼻抵抗の関数である駆動圧に反比例する。こうした構成は、薬剤を含んでいる粉末を最適流量で放出する際に最適粒子沈着効率が達成されるように考えられており、口腔咽頭膜が開いた位置にある状態で薬剤が鼻気道に送り込まれる可能性が回避されるという点で有利であることがわかるであろう。
【0113】
管状部112は、その縦軸方向に該管状部112を通ってエーロゾル・スプレーを供給するためのノズルブロック117をさらに含んで構成される。以下に詳述するように、該ノズルブロック117はエーロゾル容器120のバルブステム122を受けている。
【0114】
該送り込み装置は、懸濁か溶液かいずれかの形で薬剤を含んでいる定量の推進薬(好ましくはフルオロアルカン(HFA)推進薬または類似の推進薬)を送り込む目的に使われる公知のエーロゾル容器120をさらに含んで構成される。該エーロゾル容器120は、薬剤を含んでいる圧力をかけられたある量の推進薬が入っている本体121と、使用時には該本体121との位置がずれると同時に薬剤を含んでいる推進薬がそこを通って送り込まれるバルブステム122と、該バルブステムが動くと同時に該バルブステム122に薬剤が含まれている所定量の推進薬を送り込むための調量バルブ124とから構成される。
【0115】
該送り込み装置は、薬剤を含んでいる定量の推進薬をノズルブロック117を介して送り込む目的でエーロゾル容器120の本体121とバルブステム122の位置をずらすためのトリガー機構126をさらに含んで構成される。この実施例では、該トリガー機構126は、本体121に作動力を持たせるための弾性素子128と、可動素子116に連結されたレバーアセンブリ130とから構成され、該可動素子116が閉じた位置からトリガー位置に動くと同時に該弾性素子128によって与えられる作動力の放出が引き起こされるようになっている。
【0116】
該送り込み装置は、該可動素子116の下流で管状部112のもう一方の先端に取り付けられた患者の鼻孔の一つに密封ばめするようになっているノーズピース132(この実施例ではポリマー素材のような弾性素材でつくられている)をさらに含んで構成される。該ノーズピース132は、取換えがきくように管状部112とは切り離してつくられているが、該管状部と一体に成形されていてもよい。この実施例では、該ノーズピース132は管状部112にスナップばめするようになっているが、ねじどめ式のものでもよい。好ましい実施例として、該ノーズピース132は、オリーブ形をした外部部材を具備していてもよいし、該ノーズピース132を挿入する鼻腔の前部位を広げさせるような形につくられていてもよい。特に好ましい実施例として、該ノーズピース132は、例えば渦流を誘導する突起を設けるなどすることで、抜け出ていく気体流に最適なフローパターンと粒径分布を与えるような形につくられていてもよい。
【0117】
使用時には、患者は、トリガー機構126を準備し、マウスピース114を唇にくわえ、ノーズピース132を鼻孔の一つにはめ込んでから、マウスピース114を介して息を吐き出す。すると、その吐き出された空気の流れは、所定の流量に達成するまで可動素子116の抵抗を受ける。ひとたびこの所定の流量に達成すると(この流量では口腔咽頭膜は閉じた位置にある)、該素子116が開いた位置に来て、レバーアセンブリ130の動きを引き起こすために、エーロゾル容器120の本体121とバルブステム122の位置がずれて、薬剤を含んでいる定量の推進薬がノズルブロック117に送り込まれて、ノーズピース132を通って鼻気道まで薬剤を含んでいる液滴のエーロゾル・スプレーが生成される。このエーロゾルの流れの圧力は、鼻中隔の後周辺部より先まで連通路を開かせて、該気体流が前記一つの鼻腔を通り抜けて、鼻中隔の後部位の周囲を通り(実際には180°の角度で方向転換される)、もう一つの鼻腔から出て行くような大きさになっている。やはり前述したように、このように二方向に気体流を流すことによって、鼻気道の後部位における薬剤の沈着を大きく向上させることができる。
【0118】
本質的に、本発明は、どのような呼気作動式加圧定量吸入器をも広くベースにすることができることがわかるであろう。その場合には、患者によって吐き出された空気を薬剤同伴空気として利用するために、通常のマウスピースをノーズピースと交換して、マウスピースを該吸入器の空気取入口と連通するように設ける。
【0119】
以上本発明について実施例の形で説明してきたが、最後に本発明は添付のクレームによって画定される発明の範囲を逸脱することなく様々な方法で変形することができることがわかるであろう。
【符号の説明】
【0120】
1 鼻気道
7 鼻咽頭
9 口腔
11 下気道
13 口腔咽頭膜
20 口腔呼気ユニット
22 送り込みユニット
26 マウスピース
28 流動抵抗器
30 ノーズピース
32 薬剤供給ユニット
36 出口ユニット
40 ノーズピース
50 室
60 流動抵抗器
70 口腔呼気ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔咽頭膜を閉塞させるための閉塞ユニットと、
薬物を患者の一方の鼻孔に送り込むための送り込みユニットとを備え、
前記送り込みユニットは、使用時に前記薬物が前記一方の鼻孔に送り込まれる際に通る出口部と、前記出口部と前記一方の鼻孔との間に流体を通さない密封を与えるシーリング部材とを含むノーズピースを備えていることを特徴とする患者の鼻気道に薬物を送り込むための鼻用の送り込み装置。
【請求項2】
前記閉塞ユニットは、患者が使用時にそれを介して息を吐き出すマウスピースと、吐き出された空気の流れに流動抵抗を与えるための前記マウスピースに接続された流動抵抗器とを備えることを特徴とする請求項1に記載の送り込み装置。
【請求項3】
前記流動抵抗器は、患者が息を吐き出す際にその上流位置とその下流位置との間で少なくとも約5cmH2Oの正の圧力差を維持するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送り込み装置。
【請求項4】
前記送り込みユニットは、前記ノーズピースに接続されるとともに前記一方の鼻孔に送り込もうとする薬物を受け取るように構成されている送り込み経路をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項5】
前記送り込みユニットは、薬物を同伴する気体流を前記ノーズピースに供給するための供給ユニットをさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項6】
前記供給ユニットは、呼気の流れと分離した気体流を送り込むように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の送り込み装置。
【請求項7】
送り込まれる気体流の流量を制御するように前記供給ユニットを制御するための制御ユニットをさらに備えていることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項8】
前記閉塞ユニットは、マウスピースと、患者が前記マウスピースを介して息を吐き出す際に動くように構成された可動部材とを備え、前記送り込みユニットは、前記ノーズピースに接続されるとともに前記一方の鼻孔に送り込まれる薬物を受け取るように構成されている送り込み経路と、前記薬物を同伴させるために使用時に前記可動部材とともに動いて前記送り込み経路を通過する気体流を生じさせるように前記可動部材に操作可能に連結されるインペラとをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の送り込み装置。
【請求項9】
前記可動部材が流動抵抗器として作用するとともに吐き出された気流に対して流動抵抗を与えるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の送り込み装置。
【請求項10】
前記可動部材は、その上流で前記患者により息が吐き出される際に、少なくとも約10cmH2Oの正圧を維持するようにつくられている請求項9に記載の送り込み装置。
【請求項11】
前記可動部材は、回転部材であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項12】
薬物の用量を前記送り込み経路内に分配するための分配ユニットをさらに備えていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項13】
前記送り込みユニットはマウスピースと前記マウスピースを前記ノーズピースに接続している経路とから構成され、前記経路は、前記マウスピースを介した呼気によって薬物がノーズピースを介して送り込まれるように、送り込まれる前記薬物を受け取るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の送り込み装置。
【請求項14】
前記送り込みユニットは、患者による呼気に応答して前記供給ユニットを作動させるための作動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項15】
前記送り込みユニットは、薬物を同伴する気体流を前記一方の鼻孔に送り込むように構成されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項16】
前記送り込みユニットは、前記患者によりマウスピースを介して息が吐き出される際に、視覚信号または音響信号の少なくとも一方を与えるための表示器をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項17】
前記表示器は、前記患者によりマウスピースを介して息が吐き出される際に視界に入ってくる表示部材を備えていることを特徴とする請求項16に記載の送り込み装置。
【請求項18】
送り込まれる薬物を収納していることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載の送り込み装置。
【請求項19】
前記薬物は、1あるいはそれ以上の薬剤、鼻気道を浄化するための清浄剤、あるいは鼻気道を洗浄するための洗浄剤であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1つに記載の送り込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−172761(P2010−172761A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113331(P2010−113331)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2000−602333(P2000−602333)の分割
【原出願日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【出願人】(302014273)オプティノーズ アズ (16)
【氏名又は名称原語表記】OPTINOSE AS
【住所又は居所原語表記】Lokkaskogen 18C, N−0773 Oslo, Norway