説明

鼻用スプレーとしての抗いびき組成物

本発明は、いびきを制御するための組成物に関し、前記組成物は、非横紋筋に対する穏やかな作用によって鼻の軽度を増加させるための充血除去作用、血管の収縮作用、及び、粘液及び血管拡張物質の過剰分泌を減少させるための局所抗炎症作用を確保する第1の物質又は複数の物質の組合せ、「スライディングフィルム」の形成及び鼻道の潤滑化により、鼻弁内、下鼻甲介及び中鼻甲介の周囲の空気抵抗の減少を確保する第2の物質又は複数の物質の組合せ、及び、生体粘着特性を示し、前記第1及び第2の物質を、それらの作用部位に維持することを確保する第3の物質又は複数の物質の組合せからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いびきの治療及び防止の分野に関し、より詳細には、特定のいびきの大きい人におけるいびきの治療及び防止に関する。いびきの大きい人では、特徴的ないびきを生じる一組の複雑な現象が関与している。これらの人において、いびきの原因はしばしば咽頭及び鼻にも存在する。
【背景技術】
【0002】
しかしながら、いくつかの製品の咽頭及び口蓋垂に対する標的作用は、一部のいびきの大きい人々の問題を完全に解決することはできない。実際、前記問題は、鼻及び咽頭両方の解剖学的構造に関する現象に作用することで成り立っている。これら二つの標的に対する同時作用は、より良い効果をもたらし得る。
(いびきの一般的問題)
成人の約42%〜60%が時々いびきをかき、男性の20%及び女性の10%が習慣的にいびきをかく。穏やかないびきは容易に45dB〜60dBの騒音レベル(声の騒音)に達し、その一方、大きないびきは95dBを超えることがあり、これはトラックが通過する騒音に相当する。いびきの大きい人では、いびきはしばしば60dBを超え、いびきをかく人自身にだけでなく、その同棲者にも深刻な障害を引き起こすことがあり、その騒音のために睡眠できない。その理由は、いびきの大きい人及び身内の人々にとって、そのいびきの騒音及び強度のために睡眠がしばしば乱されるためである。
【0003】
いびきの原因は人により異なる。解剖学的レベルでは、いびきは主に、気道を通常開いた状態に保持する筋肉が弛緩した後、喉(咽頭)における気道が収縮した時に発生する。この収縮は、乱気流、及び、軟口蓋及び舌根における振動をもたらし、いびき音を発生させる。いびきの大きい人では、鼻に起因するいびきは咽頭に起因するいびきに重なる。
【0004】
鼻に起因するいびきの二つの主な原因は、鼻気道の閉塞及び鼻の変形にある。鼻気道が閉塞する(詰まった、又は塞がれた鼻)と、対象者は吸気のために更なる努力を必要とする。この作用は、いびきをもたらす喉の真空効果及び鼻腔における気流の経路の変形を生じさせる。更に、鼻道の閉塞は対象者に口を介した呼吸を必要とさせ、しばしば喉から生じるいびきを併発させる。
したがって、いびきの大きい人々において、いびきの発生は同時に相互作用する複数の要因、すなわち、主に咽頭における振動及び鼻道の収縮に起因する。
(咽頭のいびき)
咽頭における振動は、過剰に長い軟口蓋、背臥位での睡眠姿勢及び口腔の収縮の結果である。
【0005】
過剰に長い軟口蓋の存在は、最も理解し易い要因である。軟口蓋のこの肥大は、後方の筋肉には比較的影響しないが、それを取り巻く上方の全ての脂肪組織、及び粘膜に影響を及ぼす。口蓋垂が伸張し、扁桃腺の口蓋咽頭弓が肥厚化し、かつ拡大して、軟口蓋を下向きに広げる二つの半分の障壁となる。
【0006】
いびきの発生に関与する第2の要因は、背臥位(仰向けで眠っている体勢)である。この姿勢では、弛緩した軟口蓋が咽頭後壁に寄りかかるという結果をもたらす。この解剖学的位置において、鼻の吸気経路は容易にそれを持ち上げ、その浮上及び振動を引き起こす。睡眠者がうつ伏せになっている場合、軟口蓋は前方に落下し、咽頭の後壁又は側壁にさえ接触することはない。そのため、それは解放されてその後方にある気道を広く開いた状態にするため、空気が容易に通過する。しかし、軟口蓋が咽頭を最も押圧するのは仰向けの体勢である。これは激しいいびきをかく人の習慣的な姿勢であり、窒息の危険性が最も高いのがこの姿勢である。
【0007】
口腔の収縮は、いびきに関与する第3の要因を構成する。この収縮は、肥満、鼻の閉塞及び顎後退によって引き起こされる。
咽頭において、いびきは異常な乱気流の作用による軟口蓋及び咽頭壁の振動の結果である。それは咽頭及び咽頭の組織の粘性層表面を構成する粘液の解剖学的及び機械的特性に即している。粘液はスプレーと相互作用する環境を構成するため(活性物質が噴射され、かつそのレベルで作用しなければならない)、重要な生理学的及び解剖学的要素である。したがって、この生物学的環境の物理的及び生理学的特性に正しく注目することは極めて重要である。
【0008】
鼻腔及び気管はどちらも硬く、変形しないが、吸気はそれらの間の弾性かつ多かれ少なかれ収縮する変形可能な空間を通る。この流量及び流圧に対する収縮による変形は、ベルヌーイの定理によって定められたベンチュリ効果として、壁の振動の原因として現れるであろう。鼻腔及び硬い気管の間の口腔下咽頭壁は、軟らかく、弾性であり、かつ収縮する。したがって、全ては毎秒数回発生するベンチュリ効果としてまとめられ、咽頭壁に対して打ち当てられることに関する軟口蓋の振動を説明する。
【0009】
しかし、この吸気困難によって引き起こされる防衛反応のために、この閉塞の影響下の吸気努力の増加からなる悪循環が生じる。すなわち、この努力は引き起こされる窒息に対抗するように意図されたものであるが、代わりにその閉塞が急速かつ大きいものであるほど、その努力はより強力になる。睡眠時にはこの自発的な制御が不可能であるため、いびきはその開始時から、覚醒又は半覚醒により口腔咽頭の筋肉の緊張を取り戻し、収縮及びその危険な影響を停止させる時まで、悪化するだけである。
【0010】
この振動が生じるためには、軟口蓋が鼻からの気流に押し上げられ、その後何らかの力によって口蓋に対して押し戻されて、毎分約30回連続的に咽頭後壁に接触する必要がある。落ち着いたいびきでは、この力は随意収縮である。腹臥位での受動的な夜間のいびきでは、この力は重力であり、それが長く大容量の軟口蓋に適用される場合、後者は自然に咽頭に接着する傾向がある。
(鼻レベルのいびき)
鼻に由来するいびきは鼻道の収縮の結果である。弛緩する組織が多いほど、又は空気の通過が困難であるほど、いびきの危険性は高くなる。聞き取れる音の呼吸は鼻道のポリープ(ポリープは粘膜上に発生するわずかな腫瘍である)、鼻道の充血(風邪、アレルギー、アルコール又は精神安定剤の吸収)及び加齢による組織の弛緩によって引き起こされ、又は倍化され得る。
【0011】
鼻腔は、深部の粘液下層から分離した基底膜上にある偽重層表皮によって縁取られている。粘液下層は、粘液、漿粘液及び漿液腺からなる。局所の血流は、小動脈、細動脈及び動静脈吻合のネットワーク効果によって細胞に分配される。静脈及び海綿状類洞から形成される血管の容量は、鼻道の開口の程度を決定する。この血管の組合せの収縮又は弛緩は交感神経系の影響下にある。海綿状類洞は、下甲介及び中甲介よりも密集しており、交感神経系によって制御される平滑筋細胞で構成されている。交感神経の緊張が失われ、又はコリン作動性刺激の程度が低いとき、この海綿性類洞組織の充血が引き起こされる。
【0012】
鼻道の開口は、主に血管の容量において生じる変化によって制御される。上位の鼻道の抵抗の関与は、実際には気道の全空気抵抗の3分の2である。気道に対する鼻の閉塞の主な部位は、鼻前庭、鼻弁及び鼻甲介である。
【0013】
鼻道の開口には、「鼻循環」として知られる生理学的な変動が存在する。これらの変動の主な結果は、上甲介及び中甲介に位置する血管の容量の変化である。これらの変化は、70%の人で、約2〜4時間毎に一方の鼻腔から他方へ交代する。体勢もまた、血管の充血の程度の調節に関与する。鼻の閉塞は、対象者が仰臥位である場合には左右両方で増加し、対象者の側臥位によって一方が増加する。
【0014】
いびきの鼻での原因は、上位の鼻道、より正確には、鼻弁、下甲介及び中甲介を空気が通過する時の抵抗の増加である。これは生理病理学的な充血メカニズムの結果であり、血管の肥大、粘液分泌の増加、及び平滑筋構造の肥大をもたらす。空気の通過に対する抵抗は、口蓋及び口蓋垂の軟組織の振動を引き起こす気流を増加かつ変化させる。
(いびきの大きい人)
いびきの大きい人では、鼻道及び咽頭でみられる生理学的変化が特徴的いびきを生み出すと考えられるが、これは、いびきの原因が鼻又は咽頭のどちらかである人にはみられない。いびきの大きい人のいびきは、実際に、著しい周波数及び強度によって特徴づけられる。
【0015】
「標準的」いびきをかく人のいびきは、200〜2000Hzの周波数、70dBまでのデシベルレベルを有する。周波数はいびきの原因によって変化する(Perez−Padilla JR,Skawinski E,Difrancesco LM,Feige RR,Remmers JE,Whitelaw WA.Characteristics of the snoring noise in patients with and without occlusive sleep apnoea.Am Rev Respir Dis.1993 Mar;147(3):635−441)。いびきの大きい人のいびきは、強度の点でかなり強力であり得る。平均的な対象者のいびきは40〜50dBであるが、80〜90dB、時には105dBにさえ達する対象者もいる。鼻から生じるいびきは、口から生じるいびきよりも強度が低いようである。いびきの大きい特定の人々におけるいびきの強度は、彼らのパートナーに聴覚問題を引き起こすほどである。
【0016】
いびきの大きい人に生じる全ての変化及び妨害は、口及び鼻レベルで、記録スペクトルの周波数、強度及び形状の点で極めて特徴的な、極めて大きいいびきを発生させる気流の変更をもたらす。
【0017】
大きいいびきは、軟口蓋の振動と同時に、鼻における気流の変動も有する。いびきの大きい人に特有の解剖学的変化はないようである。
一般的に、鼻、主に鼻弁、上鼻甲介及び下鼻甲介における空気の通過に対する重要な抵抗の増加がみられ、これは気流の変動をもたらす。前記気流の乱れは、鼻由来のいびき、及び、口蓋帆組織の振動を発生又は強化させる口経由の深い呼吸由来のいびきを発生させ、ほとんど常に口蓋垂の振動を伴い、またそれに付加される。
【0018】
いびきの大きい人々ついて、咽頭腔の変化、又は強度及び呼吸気の流路の変動が存在するか否かを更に詳細に明らかにするため、科学的調査が行われた。これらのデータにより、ペルセー・メディカ(Persee Medica)社は、いびきの大きい人において、いびきの鼻での原因と口での原因との間の関係が何かを示すことができた。
【0019】
グリーンらは、いびきをかくか否かによって2つの群に分けられた18人のボランティアについての調査で、咽頭腔の量には群による差がなかったことを示している(Green DE,Block AJ,Collop NA,Hellard DW.Pharyngeal volume in asymptomatic snorers compared with nonsnoring volunteers.Chest.1991 Jan;99(1):49−53)。したがって、この要素はいびきの大きな人を識別する要素ではない。
【0020】
ペレスによる調査で既に明らかなように、いびきの強度及び周波数は識別力のある特徴である。その理由は、鼻及び口に起因するいびきが異なる強度及び異なる周波数を有するためである。いびきの大きい人では、同じ周波数で異なる強度の重なり合い、及び異なる周波数での強度の付加が存在し、記録スペクトル上にこの広範な騒音アスペクトを与える。
【0021】
スタネスクおよび彼のチームは、いびきの大きい人が呼吸気の制限の問題を有することを示している(Stanescu D,Kostianev S,Sanna A,Liistro G,Veriter C.Expiratory flow limitation during sleep in heavy snorers and obstructive sleep apnoea patients.Eur Respir J 1996 Oct;9(10):2116−21)。
更に、軟口蓋の振動は、主に鼻道からもたらされる気流の影響により生じる(しばしば下記の呼吸困難が増加する)。この振動は咽頭及び口蓋垂の筋肉の緊張の低下によって自己維持され、また、局所炎症を発生させて代わりに弛緩を増加させる。第1の「悪循環」が開始し、それによっていびき現象が維持される。同様に、軟口蓋の振動は呼吸中の空気の通過を妨害し、その結果、鼻道における呼吸努力の増加をもたらす。これは局所炎症及び充血を維持し、それによって前記現象を強化する。そのため、いびきの大きい人にいびきを生じさせる前記現象を強化するという第2の「悪循環」が存在する。
【0022】
このいくつかの不均衡の付加又はインターリービングは、いびきの大きい人の特徴である極めて高い強度及び周波数のいびきを生じさせる(添付の図面を参照)。
(従来技術)
抗いびき用に販売されている製品は、咽頭の粘膜又は鼻粘膜を潤滑にするための油を主成分とする。これらの製品は、しばしば消費者の大多数によって効果がないものとされる。実際のところ、これらの製品は迅速に作用するが、睡眠の最初の1時間という、適用してから短時間のうちに効果が失われるとしばしばいわれている。
【0023】
この発見は、これらの製品が作用する部位に留まらずに、急速に喉の後部へ向かって排出されるという事実によって説明される(口用スプレー)。その理由は、粘液の速度及び常時存在する唾液流の影響が、作用の存続期間の短さという主要な結果を伴う油性製品の排出を引き起こすためである。
【0024】
いくつかの製品は精油を含む。これらの調製物に用いられる精油は、それらのいくつかに関して、毒性が全くないわけではない。いくつかの精油には、実際使用上の制限の対象物であり、また、医薬品安全性調査によって示された毒性の明記に従う警告の対象物である。
【0025】
更に、咽頭及び鼻に油性調製物を噴霧することは、肺内の油滴の通過を原因とする油による肺疾患の危険性を伴う。仏国では、油を含有する抗いびき製品の投与後に少数の油性肺疾患の患者が出現したことに対し、仏国の保健機関(AFSSAPS)が、メーカーに懸案される製品を通知すると共に、それらの製品の安全性についての追加データを要求した。これらの調製物に含まれる油の肺レベルでの通過の危険性は、実際、消費者の安全性に対するある種の危険性を表す。
【0026】
結局、いびきの鼻および口での原因に対して同時に作用する製品は存在していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本出願人によって行われた研究は、特にいびきの大きい人に適したいびきの治療及び防止策のための、新たな戦略の開発を可能にした。実際のところ、鼻いびきの咽頭(口蓋垂)に起因するいびきへの付加、及び、これらの二つの現象の間の相互作用が、いびきのより高い騒音レベルを生じさせる結果を引き起こすということが考慮されなければならない。
【0028】
いびきの大きい人のいびきの場合、これら二つの異なる標的を同時に治療する構成が必須である。
この目的は本発明により、好ましくは鼻用スプレーとしての組成物によって達成され、前記組成物は、
・粘液及び血管拡張物質の過剰分泌を低減するための平滑筋に対する交感作用、血管の収縮作用及び局所抗炎症作用により、鼻腔を広げるための充血除去作用を提供する第1の物質又は複数の物質の組合せ、
・「スライディング領域」の形成、及び鼻道の組織の潤滑化により、鼻弁、中鼻甲介及び下鼻甲介において空気抵抗の減少を提供する第2の物質又は複数の物質の組合せ、
・前記第1及び第2の物質をそれらの作用部位で保持することが可能な、生体粘着特性を有する第3の物質又は複数の物質の組合せ
からなる。
前記第1の物質又は複数の物質の組合せは、ブロメライン、ナギイカダ(Ruscus aculeatus)及びルチンからなる群より選択される。
【0029】
前記第2の物質又は複数の物質の組合せは、海水、グリセリン及びホスファチジルコリンからなる群より選択される。
前記第3の物質又は複数の物質の組合せは、カラギーナン群から選択される。
ブロメラインは、鼻腔を広げ、それによって空気を鼻の気道へより良く通すように基礎緊張を増加させるために、鼻気道における平滑筋の交感作用を強化することを可能にする。いくつかの調査及び研究によれば、ブロメラインは、炎症の原因であるプロスタグランジン類の産生を抑制し、免疫系に作用し得る。コミッションEは、手術後及び外傷後の浮腫、特に、鼻腔及び副鼻腔の浮腫を治療するためのブロメラインの使用を許可した。鼻気道におけるブロメラインの抗炎症作用も確認されている。気管支炎、肺炎又は同種の他の肺疾患で入院している124人の被験者に対する臨床試験の結果、ブロメラインの摂取が粘液の粘性の低下をもたらし、それにより、充血した気道からそれらを容易に除去することが明らかになった(Kelly GS.Bromelain:A Literature Review and Discussion of its Therapeutic Applications.Alt Med Rev 1996;1(4):243−257)。何人かの著者も、ブロメラインがアレルギー性鼻炎によって引き起こされる浮腫及び炎症を治療できることを示唆している(Thornhill SM,Kelly AM.Natural treatment of perennial allergic rhinitis.Altern Med Rev.2000 Oct;5(5):448−54)。
【0030】
ナギイカダの抽出物は、血管壁の平滑筋でアドレナリン作用として血管の収縮作用をもたらし、鼻腔を広げ、結果として鼻腔内の空気の通過の抵抗を減少させることを目的とする。2000年に発表された、148人の対象者が12週間モニタリングされた試験において、ナギイカダの抽出物は、血管壁の収縮をもたらすことにより、偽薬よりも慢性静脈不全の症状の緩和に効果的であることが判明した(Lucker P,Jost V,Wolna P,et al.Efficacy and safety of ruscus extract compared to placebo in patients suffering from chronic venous insufficiency.Phytomedicine.2000;7(suppl 2):P−155)。
【0031】
ルチンは、局所抗炎症作用の開始を可能にすることで、粘液及び血管拡張性物質の過剰分泌を減少させ、それにより、浮腫、炎症に続く血管拡張及び平滑筋の組織構造の弛緩を減少させ、その結果鼻腔を広げる。ルチンはバイオフラボノイド巨大ファミリーに属する。それは化学的にケルセチン(もう一つのフラボノイド)に非常に近く、抗酸化、抗炎症、血管保護(血管の保護)及び抗血栓(血栓の形成に対する保護)特性を有する。ルチンは、ユーカリ、サンザシ、イチョウ及びセイヨウオトギリソウを含む数種類の薬草に存在する。
【0032】
実験は動物において行われた。それらは、慢性炎症において、ルチンの抗炎症活性がケルセチン及びヘスペリジン等の他の組成物よりも顕著であることを示した(Giardia T,Rottelli AE,Juarex AO,Pelzer LE.Anti−inflammatory properties of plant flavonoids.Effects of rutin,quercetin and hesperidin on adjuvant arthritis in rat.Farmaco.2001 Sep;56(9):683−7)。
【0033】
グリセリン及びホスファチジルコリンは潤滑機能を提供する。海水は、抵抗メカニズムを減少させることにより、鼻道において空気の通過を容易にする「スライディング領域」の獲得を可能にする。海水は主に内部の局所ルートによって、特に鼻の病気において多くの治療効果を有する。海水の生理溶液の局所的な滴下は、鼻粘液の炎症の低減及び「スライディング領域」の獲得をもたらす。海水は、粘液の線毛機能を回復させる多数の無機塩類及び微量元素を含有する。
【0034】
本発明の鼻用組成物は、粘膜上で生体粘着特性を有するカラギーナンにより、鼻粘膜及び咽頭の長期間の潤滑特性を提供する点で特筆すべきである。
これら全ての物質が、鼻道での空気抵抗を減少させる鼻用スプレーを可能にする。この減少の結果、口からの吸気が増加することによって引き起こされる咽頭での気流の乱れの減少がもたらされる。
【0035】
本発明の鼻用組成物において、前記第1の物質又は複数の物質の組合せに関し、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約0.01〜0.05%、好ましくは約0.15%のブロメライン、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約0.03〜0.07%、好ましくは約0.5%のルスカス(ruscus)抽出物、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約0.01〜0.05%、好ましくは約0.15%のルチン
の上記物質のうち少なくとも一つが前記組成物中に存在する。
【0036】
本発明の鼻用組成物において、前記第2の物質又は複数の物質の組合せに関し、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約0.5〜5%、好ましくは約1%の海水、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約1〜4%、好ましくは約2.65%のグリセリン、
・存在する場合には、重量で前記組成物の約0.5〜2.5%、好ましくは約1.66%のホスファチジルコリン
の上記物質のうち少なくとも一つが前記組成物中に存在する。
特に、前記組成物の第2の物質/第1の物質の重量比は、20〜100、特に30〜80、更には40〜70である。
【0037】
本発明の鼻用組成物において、前記第3の物質又は複数の物質の組合せに関し、カラギーナンは前記組成物の約0.5〜2%、好ましくは約1%である。
前記組成物の第3の物質/第1の物質の重量比は、1〜50、特に2〜20、更には5〜15であってもよい。
【0038】
前記組成物の第2の物質/第3の物質の重量比は、1〜50、特に2〜20、更には3〜10であってもよい。
別の態様によれば、本発明は、特にいびきの大きい人の抗いびき剤として、前記組成物、特に鼻用組成物における前記第1、第2及び第3の複数の物質の組合せの使用方法を提供する。
【0039】
本発明は、口用スプレーとしての前記鼻用組成物の口用組成物との組合せに関する。したがって、本発明は、口用スプレーとしての口用組成物と鼻用組成物との組合せを受容する対象者からなる前記対象者において、いびきを治療又は防止する方法に関する。
【0040】
したがって、本発明は、対象者、特にいびきの大きな人のいびきを治療又は防止するための、上記で定義されたような鼻用組成物の使用方法に関し、前記鼻用組成物は口用抗いびき組成物との組合せで前記対象者に受容される。
【0041】
前記口用組成物は、少なくとも一つの潤滑物質、及び、咽頭に位置する粘液線毛細胞に前記潤滑物質を接着させることができる少なくとも一つの生体粘着物質からなる。前記生体粘着物質は、多糖類、セルロース誘導体、アクリル誘導体又はタンパク質誘導体からなる群より選択される。好ましくは、前記生体粘着物質はカラギーナンファミリーに属する多糖である。
【0042】
前記口用組成物は、約0.5〜20%の生体粘着物質、特にカラギーナンからなる。この組成物は、約1〜5%、好ましくは約1.5〜3%の生体粘着物質、特にカラギーナンを含む。それは、約5〜20%、及び約10〜15%の生体粘着物質、特にカラギーナンを含んでもよい。
【0043】
前記口用組成物において、前記潤滑物質は極性部分及び疎水性部分を有する界面活性剤である。前記界面活性剤の極性部分は、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、グリセロール、キシロース、ペプチド、アミノ酸及びヌクレオチドからなる群より選択される。前記疎水性部分は、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪族アミン、エステル、グリセリド類及びリン脂質からなる群より選択される。前記疎水性部分は、リン脂質、例えばホスファチジルコリンからなる。
【0044】
この口用組成物は、約0.5〜20%の潤滑物質、特にホスファチジルコリンを含む。好ましくは約2〜10%の潤滑物質、特にホスファチジルコリンを含んでもよい。
この口用組成物は、更に咽頭の粘膜及び組織のための一つ以上の抗炎症剤及び/又は緊張化剤からなる。選択された前記抗炎症剤は、有利にはメドースイート(Filipendula ulmaria)抽出物、好ましくはメドースイートの花頂の抽出物である。それは、特にメドースイートの花頂の抽出物において、約0.5〜5%の抗炎症剤を含む。
【0045】
粘膜及び咽頭組織のための前記緊張化剤はローズヒップである。前記口用組成物は0.01〜5%の緊張化剤、特にローズヒップを含む。
前記口用組成物はエアロゾル、特に泡状である。
【0046】
好ましい口用組成物は、
・約1〜5%、好ましくは約3%のカラギーナン、
・約1〜10%、好ましくは約5%のホスファチジルコリン、
・約1〜5%、好ましくは約3%のメドースイート、
・約0.01〜5%、好ましくは約2%のローズヒップ
を含む。
【0047】
前記口用スプレー組成物は、カラギーナンの生体粘着作用の効果により、咽頭(口蓋垂)の壁を一晩中潤滑にし、かつ平滑筋構造の緊張力を増強する。前記鼻用スプレーは、鼻の充血を減少させ、慢性炎症を低減し、かつ壁を潤滑にして呼吸中の空気の通過を容易にする。
【0048】
本発明はまた、二つの前記組成物及び使用説明書からなるパック又はケース、又はセットに関し、いびきに悩まされている対象者に、いびきの大きい人に生じる騒音の前記二つの原因を同時に攻撃することを可能にする二つの前記組成物の組合された作用に基づく治療を提供する。このケース又はパックを形成する前記二つの製品は、厳密な順序で、又は反対に順序に従わずに用いることができる。
【0049】
このパックを形成する組成物は、複数の区画からなる一つの容器、又は別々の複数の容器に入れられてもよい。前記複数の容器は一つのパッケージに入れられてもよい。
この組成物の組合せは、いびきの大きい人にいびきをもたらす鼻及び咽頭の生理学的変化の間の相互作用の治療を初めて可能にする。その理由は、複数の「悪循環」が設定され、累進的に開始し、気流の変動をもたらす上気道の閉塞の出現によって強化されるためである。本発明によって提供される技術的解決策の組合せのみが、いびきの大きい人のいびきの騒音を減少又は除去するために、いびきの原因に対して同時に作用することを可能にする。
【0050】
本発明において、別段の定めがない限り、%は組成物の全重量に対する重量%である。本発明の他の特徴は、下記の鼻用及び口用組成物の実施例により明らかになるであろう。
ヘビー・スノーラー鼻用組成物(鼻用スプレー)[qs:十分量]
【0051】
【表1】

口用組成物(喉スプレー)[qs:十分量]
【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘液及び血管拡張物質の過剰分泌を低減するための平滑筋に対する交感作用、血管の収縮作用及び局所抗炎症作用により、鼻腔を広げるための充血除去作用を提供する第1の物質又は複数の物質の組合せと、
「スライディング領域」の形成、及び鼻道の組織の潤滑化により、鼻弁、中鼻甲介及び下鼻甲介において空気抵抗の減少をもたらす第2の物質又は複数の物質の組合せと、
生体粘着特性を有し、前記第1及び第2の物質をそれらの作用部位で保持することが可能な、第3の物質又は複数の物質の組合せ
からなる抗いびき組成物。
【請求項2】
前記第1の物質又は複数の物質の組合せが、ブロメライン、ナギイカダ(Ruscus aculeatus)の抽出物及びルチンからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の物質又は複数の物質の組合せが、海水、グリセリン及びホスファチジルコリンからなる群より選択される請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第3の物質又は複数の物質の組合せが、カラギーナン群より選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
存在する場合には、重量で前記組成物の約0.01〜5%、好ましくは約0.15%のブロメライン、
存在する場合には、重量で前記組成物の約0.01〜5%、好ましくは約0.5%のルスカス(ruscus)抽出物、
存在する場合には、重量で前記組成物の約0.01〜5%、好ましくは約0.15%のルチン
の上記物質のうち少なくとも一つが前記組成物中に存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
存在する場合には、重量で前記組成物の約0.1〜10%、好ましくは約1%の海水、
存在する場合には、重量で前記組成物の約1〜10%、好ましくは約2.65%のグリセリン、
存在する場合には、重量で前記組成物の約0.5〜10%、好ましくは約1.66%のホスファチジルコリン
の上記物質のうち少なくとも一つが前記組成物中に存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
鼻用組成物の約0.1〜10%、好ましくは約1%のカラギーナンを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
鼻用スプレーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記鼻用組成物が対象者に抗いびき口用組成物と組合せて受容され、前記対象者、特にいびきの大きな人のいびきを治療又は抑制するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用方法。
【請求項10】
前記抗いびき口用組成物が、少なくとも一つの潤滑物質、及び、咽頭に位置する粘液線毛細胞に前記潤滑物質を接着させることができる少なくとも一つの生体粘着物質からなる請求項9に記載の使用方法。
【請求項11】
前記生体粘着物質が、多糖類、セルロース誘導体、アクリル誘導体又はタンパク質誘導体からなる群より選択される請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
前記生体粘着物質が、カラギーナンファミリーに属する多糖である請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
前記口用組成物が、約0.5〜20%の生体粘着物質、特にカラギーナンからなる請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項14】
前記口用組成物が、約1〜5%、好ましくは約1.5〜3%の生体粘着物質、特にカラギーナンからなる請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記口用組成物が、約5〜20%、及び約10〜15%の生体粘着物質、特にカラギーナンからなる請求項13に記載の使用方法。
【請求項16】
前記潤滑物質が、極性部分及び疎水性部分を有する界面活性剤である請求項10〜15のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項17】
前記界面活性剤の極性部分が、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、グリセロール、キシロース、ペプチド、アミノ酸及びヌクレオチドからなる群より選択される請求項16に記載の使用方法。
【請求項18】
前記疎水性部分が、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪族アミン、エステル、グリセリド類及びリン脂質からなる群より選択される請求項16に記載の使用方法。
【請求項19】
前記疎水性部分が、リン脂質、例えばホスファチジルコリンからなる請求項18に記載の使用方法。
【請求項20】
前記口用組成物が、約0.5〜20%の潤滑物質、特にホスファチジルコリンを含む請求項10〜19のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項21】
前記口用組成物が、好ましくは約2〜10%の潤滑物質、特にホスファチジルコリンを含む請求項20に記載の使用方法。
【請求項22】
前記口用組成物が、更に咽頭の粘膜及び組織のための一つ以上の抗炎症剤及び/又は緊張化剤からなる請求項10〜21のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項23】
前記抗炎症剤が、メドースイート(Filipendula ulmaria)抽出物である請求項22に記載の使用方法。
【請求項24】
前記抽出物が、メドースイートの花頂の抽出物である請求項23に記載の使用方法。
【請求項25】
前記口用組成物が、約0.5〜5%の抗炎症物質、特にメドースイートの花頂の抽出物を含む請求項22〜24のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項26】
前記咽頭の粘膜及び組織のための緊張化剤がローズヒップである請求項22に記載の使用方法。
【請求項27】
前記口用組成物が、0.5〜5%の緊張化剤、特にローズヒップを含む請求項22又は23に記載の使用方法。
【請求項28】
前記口用組成物が泡状である請求項10〜17のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項29】
請求項1〜9のいずれか1項によって定められた少なくとも一つの鼻用組成物と、請求項11〜28のいずれか1項によって定められた少なくとも一つの口用組成物と、使用説明書とからなるパック。

【公表番号】特表2009−538889(P2009−538889A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512650(P2009−512650)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051342
【国際公開番号】WO2007/138225
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508353640)オメガ ファーマ キャピタル エヌブイ (2)
【氏名又は名称原語表記】OMEGA PHARMA CAPITAL NV
【Fターム(参考)】