説明

鼻用貼付剤

【課題】花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するために外鼻など人の顔面に貼るための貼付剤であって、長時間にわたって良好な付着性を示し、皮膚刺激がなく、かつ剥離時の痛みのない鼻用貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体の片面に、粘着剤、香料及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤組成物から形成された粘着層を有する鼻用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するために、顔面(例えば、小鼻などの前鼻孔周辺の外皮表面)に貼付して用いることができる鼻用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、花粉症による鼻風邪などの不快感を緩和するために、抗I型アレルギー剤を含有する医療用テープが提案されている(特許文献1)。特許文献1には、支持体の片面に、抗I型アレルギー剤を含有する粘着剤層が積層された医療用テープであって、該粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族系炭化水素樹脂よりなる粘着基剤と、ペパーミント、1−メントール及びシネオールよりなる群より選ばれる1種以上の抗I型アレルギー剤からなる抗I型アレルギー剤含有医療用テープが開示されている。
【0003】
特許文献1には、抗I型アレルギー剤含有医療用テープをマスク内部に設けたポケットに挿入することにより、呼吸と共に抗I型アレルギー剤が鼻の中に吸い込まれ、鼻腔の血液の流れを良好にして、花粉症などを軽減させることが記載されている。具体的に、特許文献1の実施例には、抗I型アレルギー剤含有医療用テープをマスクの内側に貼付して、花粉症の成人5名に8時間使用させたことが記載されている。
【0004】
特許文献1の実施例では、抗アレルギー効果(花粉症による鼻風邪等の不快感がなくなったと判定した人の人数)、抗I型アレルギー剤の香りの持続性、抗I型アレルギー剤の揮散性、医療用テープをマスクから剥離する際の糊残り(マスク上への粘着剤の残留)、接着性(マスクから医療用テープを剥離させる際に、支持体から粘着剤層が剥がれなかったか否か)などを評価している。
【0005】
特許文献1には、抗I型アレルギー剤含有医療用テープを皮膚または衣服に貼付して使用することも記載されているが、皮膚に貼付した実験例は示されていない。もちろん、特許文献1には、抗I型アレルギー剤含有医療用テープを人の顔面に貼付したときの付着性、皮膚刺激性、剥離時の痛みなどを評価した結果は示されていない。
【0006】
ところが、本発明者らの検討結果によれば、特許文献1に記載されたものと同様の組成を有する粘着剤層を形成した抗I型アレルギー剤含有医療用テープは、小鼻(前鼻孔外壁の側方拡張部)などの顔面に貼付すると、経時により付着性が低下することに加えて、剥離時に痛みが生じたり、皮膚刺激が生じたりする問題のあることが判明した。
【0007】
花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するための貼付剤を直接顔面に貼ることができれば、マスクの使用に伴う息苦しさなどの不快感を除去することができる。しかし、人の顔面は、皮脂の分泌量が多いため、考慮すべき特有の問題がある。
【0008】
一般に、人の顔面は、腕や背中、腹部など頭部以外の人体部の皮膚に比べて、皮脂が分泌しやすい。顔面の中でも、外鼻の皮膚表面は、皮脂の分泌量が多い傾向にある。そのため、貼付剤を外鼻などの顔面に貼ると、皮脂の分泌によって貼付剤の付着性が低下し、長時間の使用が困難となる。
【0009】
人の皮膚に対する貼付剤の粘着力を大きくすると、顔面に対する貼付剤の持続的な付着性を改善することができるものの、それだけでは不十分であり、しかも皮膚刺激性や剥離時の痛みが大きくなる。他方、人の皮膚に対する粘着剤の粘着力を小さくすると、皮膚刺激性や剥離時の痛みを改善することができるものの、顔面に対する貼付剤の持続的な付着性が著しく低下する。
【0010】
花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するための貼付剤は、薬効成分が前鼻孔から鼻腔内に拡散することにより持続的に効能を発揮するため、長時間にわたって外鼻などの顔面に貼付できることが求められる。しかし、従来技術では、皮脂の分泌量が多い人の顔面に対して持続的に良好な付着性を示し、長時間の貼付によっても皮膚刺激性が小さく、かつ剥離時の痛みがない貼付剤を得ることは極めて困難であった。
【特許文献1】特開平7−33648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するために、外鼻など人の顔面に貼るための貼付剤であって、長時間にわたって良好な付着性を示し、皮膚刺激がなく、かつ剥離時の痛みのない鼻用貼付剤を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、粘着基剤に香料と脂肪酸エステルとを配合した粘着剤組成物を用いて、支持体の片面に粘着層を形成した貼付剤に想到した。
【0013】
本発明の鼻用貼付剤は、小鼻など人の顔面に対する持続的な付着性に優れており、皮膚刺激性がなく、しかも長時間にわたって香料の効能を発揮した後には、痛みを伴うことなく剥離することができる。
【0014】
本発明の鼻用貼付剤がこのような作用効果を奏する機構については、現段階では必ずしも明らかではないが、本発明者らは、次のように考察している。本発明の鼻用貼付剤は、皮脂との親和性を有する脂肪酸エステルを含有しているため、貼付下の顔面に皮脂が分泌しても、該皮脂が脂肪酸エステルにより吸収されて、経時による付着性の低下が抑制される。また、粘着層が脂肪酸エステルを含有するため、貼付時の皮膚刺激性が抑制される。さらに、脂肪酸エステルによって皮脂が粘着層に吸収されると、粘着層が軟化して、剥離時の痛みが抑制される。
【0015】
このように、本発明の鼻用貼付剤は、通常、数時間から十数時間にわたる貼付中に、皮脂の分泌量が多い外鼻などの顔面に良好に付着し、皮膚刺激性もない。しかも、本発明の鼻用貼付剤は、長時間にわたって使用した後には、痛みを伴うことなく容易に剥離することができる。すなわち、本発明の貼付剤は、顔面に対する持続的な付着性、皮膚刺激性及び剥離性が高度にバランスがとれている。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、支持体の片面に、粘着剤、香料及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤組成物から形成された粘着層を有する鼻用貼付剤が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鼻用貼付剤は、外鼻など人の顔面に貼って使用することができ、花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するのに有効である。本発明の鼻用貼付剤は、皮脂の多い外鼻などの顔面に長時間にわたって良好な付着性を示し、皮膚刺激性がなく、しかも剥離時に痛みを伴うことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の鼻用貼付剤は、支持体の片面に、粘着剤、香料及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤組成物からなる粘着層が設けられた構成を有している。香料に加えて、後記の経皮浸透剤を併用することが好ましい。香料及び経皮浸透剤は、花粉症や鼻風邪の症状を抑える効果を示すものである。
【0019】
支持体としては、特に限定されず、例えば、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、グラシン紙などの紙類;ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム、セロハンフィルムなどのプラスチックフィルム;発泡体;不織布、織布、編布などの布類;これら2種以上の積層体などが挙げられる。不織布、織布、編布などの布類の材質としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0020】
これらの支持体の中でも、伸縮性が良好で、貼付下の皮膚面の動きに対する追随性に優れる点で、不織布、織布、編布などの布類が好ましい。また、貼付下の皮膚の色調を透けて出しやすい点では、透明性に優れたプラスチックフィルムが好ましい。布類などの支持体は、着色剤により肌色などの色調に着色することができる。
【0021】
支持体の厚みは、通常10μmから1mm程度である。支持体が布類の場合、その厚みは、好ましくは100μmから1mm、より好ましくは400〜700μmである。支持体がプラスチックフィルムの場合、その厚みは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0022】
粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを挙げることができる。これらの粘着剤の中でも、配合成分との相溶性などの観点から、ゴム系粘着剤が好ましい。
【0023】
ゴム系粘着剤は、一般に、エラストマー基剤と粘着付与剤と軟化剤を含有し、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)などの各種添加剤を添加したものである。本発明では、ゴム系粘着剤に香料や脂肪酸エステルなどを添加するため、エラストマー基剤と粘着付与剤と各種添加剤成分とを含有するゴム系粘着剤を「粘着基剤」と呼ぶことがある。
【0024】
エラストマー基剤としては、粘着剤の技術分野で用いられている各種合成ゴム及び天然ゴムの中から選択することができる。合成ゴムとしては、例えば、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレンなどの常温で固形のゴム状弾性体を挙げることができる。芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)などのブロック共重合体が好ましい。これらの中でも、人の皮膚に対する粘着力、他の成分との相溶性などの観点から、SISが特に好ましい。
【0025】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂(C5系石油樹脂、C9系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、脂環族系水添石油樹脂(脂環族系飽和炭化水素樹脂ともいう)が好ましい。粘着付与剤は、エラストマー基剤100重量部に対して、通常50〜200重量部、好ましくは80〜150重量部の割合で使用する。
【0026】
軟化剤としては、例えば、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム;プロセスオイル、エキステンダーオイルなどの鉱油;などが挙げられる。これらの中でも、液状ゴムが好ましい。軟化剤は、エラストマー基剤100重量部に対して、通常50〜200重量部、好ましくは80〜150重量部の割合で使用される。
【0027】
充填剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルクなどが挙げられる。充填剤は、一般に、増量、凝集力の向上、着色、色調の調整などの目的で用いられる。充填剤を使用する場合は、エラストマー基剤100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部の割合で使用する。
【0028】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、2,5−ジ−(t−アミル)ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル・ヒロドキシアニソール、スチレン化フェノール、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジラウリル・チオジプロピオネートなどが挙げられる。酸化防止剤は、毒性がなく、非汚染性のフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤を使用する場合は、エラストマー基剤100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の割合で使用する。
【0029】
香料としては、例えば、ラベンダー、ユーカリ油、ヒノキ、ヒノキチオール、テレピン油、オレンジ油、ベルガモット油、バニラ、サンシシエキス、ローズ、ノニル酸ワニリルアミド、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。これらの中でも、ヒノキ、ラベンダー、ユーカリ油が好ましい。香料は、貼付剤から揮散して、呼吸時に前鼻孔から鼻腔内に吸い込まれて、花粉症や鼻風邪の症状を緩和する。
【0030】
香料は、粘着剤組成物の全量基準で、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%の割合で用いられる。粘着層中での香料の含有率が低すぎると、花粉症や鼻風邪の症状を緩和する効果が不十分となる。香料の含有率が高すぎると、効果が過剰となったり、付着力に影響を及ぼしたりすることがあり、経済的でもない。
【0031】
本発明では、香料と共に、経皮浸透剤を併用することが好ましい。経皮浸透剤としては、例えば、1−メントール、1−メントン、d−リモネン、α−テルピネン、α−テルピネオール、シネオール、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、1−メントールが好ましい。
【0032】
経皮浸透剤は、貼付剤の貼付下の皮膚面を浸透して経皮吸収されるが、その一部は、香料と共に前鼻孔から鼻腔内に吸い込まれる。経皮浸透剤は、粘着剤組成物の全量基準で、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%の割合で用いられる。
【0033】
脂肪酸エステルとしては、例えば、1価アルコールの脂肪酸エステル及び多価アルコールの脂肪酸エステルが挙げられる。1価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルクタン酸ヘキサデシルなどが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0034】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビタン、ソルビトール、イソソルバイド、メチルグルコシド、オリゴ糖、還元オリゴ糖などの多価アルコールと脂肪酸とのエステルを挙げることができる。
【0035】
多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコール成分としては、グリセリンが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルの脂肪酸成分としては、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸が好ましい。このような中鎖脂肪酸としては、例えば、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0036】
多価アルコール脂肪酸エステルとして、皮脂との親和性や吸収性、人の皮膚に対する粘着力などの観点から、多価アルコール中鎖脂肪酸エステルが好ましく、グリセリン中鎖脂肪酸エステルがより好ましい。グリセリン中鎖脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリドが好ましく、これらの中でも、中鎖脂肪酸トリグリセリドがより好ましい。
【0037】
脂肪酸エステルは、粘着剤組成物の全量基準で、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%の割合で使用される。脂肪酸エステルの配合割合が過小であると、皮脂の吸収効果が小さくなり、人の皮膚に対する粘着力の向上効果も不十分となる。脂肪酸エステルの配合割合が過大であると、人の皮膚に対する粘着力が低下傾向を示す。
【0038】
本発明の鼻用貼付剤は、一般に、エラストマー基剤、粘着付与剤、軟化剤、香料、脂肪酸エステル、及び必要に応じてその他の成分を含有する粘着剤組成物を調製し、これを支持体上に直接塗工するか、あるいはライナー上に塗工した後、塗工層上に支持体を貼り合わせる方法により製造することができる。
【0039】
ライナーとしては、表面に剥離性能を有する剥離層を形成したものであり、例えば、シリコーン樹脂処理やフッ素樹脂処理をした金属箔、アルミニウム箔、プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0040】
粘着剤組成物の塗工方法としては、この技術分野で一般的に採用されている溶液塗工法、カレンダー塗工法、ホットメルト塗工法などが挙げられるが、これらの中でも、カレンダー塗工法が好ましい。
【0041】
カレンダー塗工法では、先ず、エラストマー基剤を素練りした後、粘着付与剤(好ましくは石油系粘着付与剤)を加えて混練りを行う。次いで、混練物に軟化剤を加えて混練りを行い、最後に、温度を下げてから、香料及び脂肪酸エステルを加えて混練りを行う。得られた混練物(粘着剤組成物)をシリコーン処理したポリエステルフィルム上に所望の厚みに展延し、そして、塗工層(粘着層)上に支持体をラミネートする。
【0042】
粘着層の厚さは、通常5〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmの範囲内である。粘着層の表面には、剥離紙、剥離シートなどのカバー材を被覆することができる。
【0043】
このようにして得られた貼付剤は、前鼻孔周辺の外皮表面に貼付するのに適した形態に裁断することが好ましい。粘着層に含まれる香料や1−メントールなどは、鼻孔から鼻腔内に吸引され、鼻腔の血流の流れを良好にするなどの作用を発揮し、それによって、花粉症や鼻風邪などの症状を緩和する。そのため、本発明の貼付剤は、前鼻孔周辺の外皮表面に貼付するのに適した形状と大きさにすることが好ましい。前鼻孔周辺の外皮表面としては、外鼻、外鼻近くの頬、鼻の下などの皮膚があるが、好ましくは外鼻の皮膚、より好ましくは小鼻(「鼻翼」ともいう)の皮膚である。
【0044】
本発明の鼻用貼付剤の形状としては、楕円形、円形、正方形、長方形など任意である。これらの中でも、貼付作業の容易性や皮膚面への貼付性の観点から、楕円形が好ましい。その大きさは、通常、前鼻孔周辺の外鼻に貼付できる大きさであることが好ましく、小鼻に貼付できる大きさであることがより好ましい。小鼻は、前鼻孔外壁の側方拡張部であるが、左右の側方拡張部(左右の小鼻)のそれぞれに貼付できる大きさであることが特に好ましい。
【0045】
本発明の鼻用貼付剤は、例えば、図1に示すように、楕円形とすることができる。楕円形の貼付剤を左右の小鼻の皮膚表面にそれぞれ貼付するには、長径が1.5〜2.5cm、多くの場合約2cm、短径が0.5〜1.4cm、多くの場合約1cmの楕円形とすることが好ましい。また、本発明の鼻用貼付剤は、鼻尖に貼付したり、左右の小鼻にまたがって貼付したりすることができる。このような場合には、例えば、長径が1.5〜4.5cmで、短径が0.5〜2.0cm(ただし、長径の方を相対的に大きくする)の楕円形とすることが好ましい。
【0046】
本発明の鼻用貼付剤は、人の皮膚(前腕内側の皮膚)に対する粘着力が、好ましくは200mN/15mm以上、より好ましくは230mN/15mm以上、特に好ましくは250mN/15mm以上である。貼付剤の人の皮膚に対する粘着力が低すぎると、皮脂の分泌量が多い外鼻などの顔面に貼付したとき、付着性が悪くなる。本発明の鼻用貼付剤の人の皮膚に対する粘着力の上限は、通常400mN/15mm、好ましくは350mN/15mmである。この粘着力の測定法は、実施例に記載したとおりである。
【実施例】
【0047】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(JSR社製、商品名「SIS5000」)100重量部を120℃で20分間素練り後、粘着付与剤として脂環族系水添石油樹脂(荒川化学社製、商品名「アルコンP100」)120重量部を加えてニーダーで10分間混練りした。次いで、混練物に、軟化剤として液状ポリイソプレン(クラレ社製、商品名「クラプレンLIR30」)100重量部を加えて、ニーダーで10分間混練して均一な粘着基剤を調製した。
【0049】
粘着基剤の温度を110℃に下げてから、香料としてヒノキ(小川香料社製、商品名「ヒノキAR10341」)2重量部(約0.5重量%)、経皮浸透剤として1−メントール(小城製薬社製、商品名「1−メントール」)8重量部(約2重量%)、及び中鎖脂肪酸トリグリセリド(日光ケミカルズ社製、商品名「トリエスターF810」)50重量部(約13重量%)を添加し、再び混練して、均一な粘着剤組成物を得た。
【0050】
このようにして得られた粘着剤組成物をカレンダー塗工機を用いて、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレート・ライナー(藤森工業社製、商品名「フィルムバイナ75E」)上に厚みが100μmとなるように展延した。得られた粘着層の表面にポリエステル不織布(シンワ社製、商品名「7850」、厚さ500μm)を貼り合わせて貼付剤(原反)を作製した。この貼付剤を図1に示すような楕円形(長径2cm、短径1cm)に裁断して鼻用貼付剤とした。
【0051】
[実施例2]
香料として、ヒノキに代えてラベンダー(内外香料社製、商品名「ラベンダー84348」)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして鼻用貼付剤を作製した。
【0052】
[実施例3]
香料として、ヒノキに代えてユーカリ油(小川香料社製、商品名「ユーカリ油」)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして鼻用貼付剤を作製した。
【0053】
[実施例4]
脂肪酸エステルとして、中鎖脂肪酸トリグリセリドに代えてミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製、商品名「IPM」)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして鼻用貼付剤を作製した。
【0054】
[比較例1]
中鎖脂肪酸トリグリセリドを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして鼻用貼付剤を作製した。
【0055】
[比較例2]
軟化剤として、液状ポリイソプレンに代えて流動パラフィンを配合し、かつ香料を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして鼻用貼付剤を作製した。この比較例2は、特許文献1(特開平7−33648号公報)の実施例に準じて行った比較実験例である。
【0056】
<試験法>
(1)ヒト皮膚粘着力
幅15mm×長さ50mmの長方形に裁断した貼付剤を前腕内側に20分間貼付した。この貼付剤を、温度23℃、相対湿度65%の条件で、インストロン型引張試験機TCM/200型〔新興通信工業(株)〕を用いて100mm/分の速度で引っ張った時、貼付剤が皮膚表面から剥離する時の応力を測定し、人の皮膚に対する粘着力としたた。試験数(被験者数)は、5(n=5)であり、その平均値を表1に示す。
【0057】
(2)実用性能試験
5人の成人を被験者とし、長径2cm、短径1cmの楕円形に裁断した貼付剤を左右の小鼻に6時間貼付した。6時間貼付後の付着性、剥離時の痛み、皮膚刺激を評価した。試験結果(平均値)を表1に示す。
【0058】
<評価基準>
(1)付着性
A:付着率が90%以上、
B:付着率が70%以上90%未満、
C:付着率が70%未満。
【0059】
(2)剥離時の痛み
A:痛みが無い、
B:少し痛いが気にならない、
C:痛くて気になる。
【0060】
(3)皮膚刺激
A:刺激は全くなし、
B:刺激はあるが気にならない、
C:刺激があって気になる。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から、脂肪酸エステルを配合した本発明の貼付剤(実施例1〜4)は、人(ヒト)の皮膚に対する粘着力が高く、皮脂の分泌量が多い小鼻に対する長時間の付着性も良好であり、皮膚刺激が感じられず、剥離時の痛みもないものであった。
【0063】
これに対して、脂肪酸エステルを配合しなかった貼付剤(比較例1)は、ヒトの皮膚に対する粘着力が小さく、小鼻に対する長時間の付着性も悪いものであった。流動パラフィンと1−メントールを配合した貼付剤(比較例2)は、ヒトの皮膚に対する粘着力が大きいものであったが、皮脂の分泌量が多い小鼻に対する長時間の付着性は十分ではなく、しかも皮膚刺激があり、剥離時に痛みを感じるものであった。
【0064】
花粉症の成人5人を被験者として、本発明の鼻用貼付剤を左右の小鼻に6時間貼付して使用させた後、花粉症による鼻風邪などの不快感が減少したと感じたと判定した人数は、全員であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の鼻用貼付剤は、花粉症や鼻風邪などの症状を緩和するために、前鼻孔周辺の外皮表面に貼付して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の鼻用貼付剤の形状の一例を示す正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、粘着剤、香料及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤組成物から形成された粘着層を有する鼻用貼付剤。
【請求項2】
前鼻孔周辺の外皮表面に貼付するのに適した形態を有する請求項1記載の鼻用貼付剤。
【請求項3】
粘着剤が、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体をエラストマー基剤とするゴム系粘着剤である請求項1または2記載の鼻用貼付剤。
【請求項4】
香料が、ラベンダー、ユーカリ油、ヒノキ、ヒノキチオール、テレピン油、オレンジ油、ベルガモット油、バニラ、サンシシエキス、ローズ及びノニル酸ワニリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の香料である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鼻用貼付剤。
【請求項5】
脂肪酸エステルが、中鎖脂肪酸トリグリセリドまたはミリスチン酸イソプロピルである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鼻用貼付剤。
【請求項6】
粘着剤組成物が、経皮浸透剤をさらに含有するものである請求項1記載の鼻用貼付剤。
【請求項7】
経皮浸透剤が、1−メントール、1−メントン、d−リモネン、α−テルピネン、α−テルピネオール及び1,8−シネオールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項6記載の鼻用貼付剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8593(P2006−8593A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188005(P2004−188005)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】