説明

(−)−ベンラファキシン誘導体並びにその製造方法および使用方法

【課題】非三環系化合物の抗鬱薬であるラセミ体ベンラファキシン[化学名(±)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール]は、利点を有する一方で、高血圧、頭痛といった有害作用を示す欠点のあることが分かっており、これらの欠点を回避したベンラファキシン誘導体を含有する医薬組成物の提供。
【解決手段】(+)立体異性体を実質的に含まない(−)−ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩と、製薬上許容し得る担体または賦形剤とを含有する医薬組成物。該(−)ベンラファキシン誘導体としては、(−)−O−デスメチルベンラファキシン、(−)−N−デスメチルベンラファキシン、(−)−N,0−ジデスメチルベンラファキシンおよび(−)N,N−ジデスメチルベンラファキシンからなる群より選択されるものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン(venlafaxine)誘導体、その合成方法、該誘導体を含む組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
近年、三環系抗鬱薬に特徴的な心臓血管および抗コリン作用傾向を減少させる非三環系抗鬱薬が複数開発されている。これらの化合物の一部は抗肥満薬として使用されており、また、パーキンソン病や老年性痴呆症といった脳の機能障害の治療において期待が持たれている。例えば、WO94/00047およびWO94/00114を参照されたい。非三環系化合物のベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール]は、広く研究されてきた抗鬱薬であり、例えば、米国特許第4,761,501号およびPento, J.T. Drugs of the Future 13(9):839-840 (1988)に記載されている。その塩酸塩は、現在米国においてEffexor(登録商標)の商品名で市販されている。Effexor(登録商標)はベンラファキシンの(+)および(-)エナンチオマーからなるラセミ混合物であり、鬱病治療用と表示されている。
【0003】
ベンラファキシンは不斉炭素原子を含んでおり、ラセミ体として販売されているが、その(-)エナンチオマーはノルエピネフリンのシナプトソームを介した取込みをより強く阻害し、一方、その(+)エナンチオマーはセロトニンの取込みをより選択的に阻害することが報告されている。Howell, S.R.ら, Xenobiotica 24(4):315-327 (1994)。さらに、2つの異性体の代謝の割合が、種間だけでなく、被験体間でも変動することが研究によって明らかにされている。Klamerus, K.J.ら, J. Clin. Pharmacol. 32:716-724 (1992)。ヒトでは、下記のスキームI(a)に示すように、ベンラファキシンは、飽和性の代謝経路によって2つの副次的な代謝産物(即ち、N-デスメチルベンラファキシンおよびN,O-ジデスメチルベンラファキシン)と1つの主要な代謝産物(即ち、O-デスメチルベンラファキシン)へ変換される。
【化1】

【0004】
Klamerus, K.J.ら, J. Clin. Pharmacol. 32:716-724 (1992)。これらの代謝産物は全てラセミ体である。in vitroでの研究からは、O-デスメチルベンラファキシンがノルエピネフリンとドーパミンの取込みを、親化合物であるラセミ体ベンラファキシンよりも強く阻害することが示唆されている。Muth, E.A.ら Drug Develop. Res. 23:191-199 (1991)。O-デスメチルベンラファキシンは半減期(t1/2)が約10時間であることも報告されており、ベンラファキシンの半減期の約2.5倍である。Klamerus, K.J.ら, J. Clin. Pharmacol. 32:716-724 (1992)。しかしながら、O-デスメチルベンラファキシンの活性をその親化合物と対比することで解明しようとする研究は、ベンラファキシンとの接触に際して実験動物とヒトとの間で代謝に差がある点が障害となっている。Howell, S.R.ら, Xenobiotica 24(4):315-327 (1994)。
【0005】
ラセミ体ベンラファキシンは利点を有する一方で、高血圧、頭痛、衰弱、発汗、悪心、便秘、眠気、口内乾燥、眩暈、不眠、神経過敏、不安、目のかすみ、および射精/オルガズム異常または男性不能が続くといった(但し、これらに限定されない)有害作用を示す。Physician’s Desk Reference pp.3293-3302(第53版, 1999);Sinclair, J.ら, Rev. Contemp. Pharmacother. 9:333-344 (1998)も参照されたい。これらの有害作用によって、用量レベル、投与頻度および薬物療法の継続期間が大幅に制限されてしまう。従って、ベンラファキシンの利点を有する上に、その欠点を回避した化合物の発見が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第94/00047号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/00114号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,761,501号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Pento, J.T., Drugs of the Future, 第13(9)巻:p. 839-840 (1988)
【非特許文献2】Howell, S.R.ら, Xenobiotica 第24(4)巻:p. 315-327 (1994)
【非特許文献3】Klamerus, K.J.ら, J. Clin. Pharmacol. 第32巻:p. 716-724 (1992)
【非特許文献4】Muth, E.A.ら, Drug Develop. Res. 第23巻:p. 191-199 (1991)
【非特許文献5】Physician’s Desk Reference, pp.3293-3302(第53版, 1999)
【非特許文献6】Sinclair, J.ら, Rev. Contemp. Pharmacother. 第9巻:p. 333-344 (1998)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
3.発明の概要
本発明は、(-)-O-デスメチルベンラファキシン等の光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を含む新規な医薬組成物に関する。本発明はまた、高純度かつ高収量にて光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を製造する方法、並びに、1以上の光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を治療または予防を必要とするヒトへ投与することを含んでなる、疾患および障害を治療および予防する方法に関する。
【0009】
本発明の方法および組成物を使用して、鬱病および情動障害(例えば、注意欠陥障害や過活動を伴う注意欠陥障害が挙げられるが、これらに限定されない)を治療または予防することができる。本発明の方法および組成物は、ヒトの肥満および体重増加の治療にも有用である。本発明はまた、老年性痴呆症、パーキンソン病、てんかん、アルツハイマー病、健忘症/健忘症候群、自閉症および精神分裂病といった(但し、これらに限定されない)脳の機能障害の治療;ニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害の治療;並びに疼痛、特に慢性疼痛の治療も包含する。本発明はさらに、強迫性障害、物質乱用、月経前症候群、不安、摂食障害および片頭痛の治療または予防も包含する。最後に本発明は、ヒトの失禁の治療または予防も包含する。
【0010】
本発明の化合物および組成物は、上記障害の治療または予防に対する活性が高い上に、高血圧、頭痛、衰弱、発汗、悪心、便秘、眠気、口内乾燥、眩暈、不眠、神経過敏、不安、目のかすみ、および射精/オルガズム異常または男性不能が続くといった(但し、これらに限定されない)有害作用を軽減または回避するものである。特に、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を用いることで、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用が軽減または回避される。本発明の組成物は、ラセミ体ベンラファキシンに比べて長い半減期を示すことも可能である。
【0011】
本明細書中には、有効成分の製薬上許容し得る塩、溶媒和物、包接体および/または水和物(無水物も含む)が数多く開示されており、これらはいずれも本発明の方法および組成物での使用に適しているが、典型的には、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を塩酸塩として、好ましくは一水和物として製造する。
【0012】
3.1. 定義
本明細書中、用語「ベンラファキシン」は、ラセミ化合物(±)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールを意味する。
【0013】
本明細書中、用語「ベンラファキシン誘導体」および「ベンラファキシンの誘導体」には、ラセミ体ベンラファキシンのヒト代謝産物が包含されるが、これに限定されない。特に、用語「ベンラファキシン誘導体」および「ベンラファキシンの誘導体」は、限定するわけではないが、以下の化合物を含む群から選択される化合物を意味する:(±)-N-デスメチルベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(アミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];(±)-O-デスメチルベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];(±)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];および(±)-O-デスメチル-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(±)-1-[2-(アミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール]。
【0014】
本明細書中、用語「(-)-ベンラファキシン誘導体」および「(-)-ベンラファキシンの誘導体」には、(-)-ベンラファキシンの光学的に純粋なヒト代謝産物が包含されるが、これに限定されない。特に、用語「(-)-ベンラファキシン誘導体」および「(-)-ベンラファキシンの誘導体」は、限定するわけではないが、以下の化合物を含む群から選択される化合物を意味する:光学的に純粋な(-)-N-デスメチルベンラファキシン[化学名(-)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(-)-1-[2-(アミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(-)-O-デスメチルベンラファキシン[化学名(-)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(-)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];および光学的に純粋な(-)-O-デスメチル-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(-)-1-[2-(アミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール]。
【0015】
本明細書中、用語「(+)-ベンラファキシン誘導体」および「(+)-ベンラファキシンの誘導体」には、(+)-ベンラファキシンの光学的に純粋なヒト代謝産物が包含されるが、これに限定されない。特に、用語「(+)-ベンラファキシン誘導体」および「(+)-ベンラファキシンの誘導体」は、限定するわけではないが、以下の化合物を含む群から選択される化合物を意味する:光学的に純粋な(+)-N-デスメチルベンラファキシン[化学名(+)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(+)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(+)-1-[2-(アミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(+)-O-デスメチルベンラファキシン[化学名(+)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];光学的に純粋な(+)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(+)-1-[2-(メチルアミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール];および光学的に純粋な(+)-O-デスメチル-N,N-ジデスメチルベンラファキシン[化学名(+)-1-[2-(アミノ)-1-(4-フェノール)エチル]シクロヘキサノール]。
【0016】
本明細書中で化合物を記述する際、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、化合物において、(-)立体異性体の方がその鏡像異性体(即ち、(+)立体異性体)よりも顕著に高い割合を占めていることを意味する。本発明の好適な実施形態では、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、化合物のうち、少なくとも約90重量%を(-)立体異性体が占め、約10重量%以下を(+)立体異性体が占めることを意味する。本発明のより好適な実施形態では、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、化合物のうち、少なくとも約95重量%を(-)立体異性体が占め、約5重量%以下を(+)立体異性体が占めることを意味する。より一層好適な実施形態では、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、化合物のうち、少なくとも約99重量%を(-)立体異性体が占め、約1重量%以下を(+)立体異性体が占めることを意味する。別の好適な実施形態では、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、化合物がほぼ100重量%(-)立体異性体からなることを意味する。上記のパーセンテージは、化合物の立体異性体を合わせた総重量に基づくものである。「実質的に光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体」、「光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体」および「ベンラファキシン誘導体の(-)異性体」という用語は全て、(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシンの誘導体をいうものである。
【0017】
本明細書中、用語「製薬上許容し得る塩」とは、無機酸および有機酸を含む製薬上許容し得る非毒性の酸から製造される塩をいう。適切な非毒性の酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸(ethenesulfonic)、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸(pamoic)、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等の無機酸および有機酸が挙げられる。特に好適なのは塩酸、臭化水素酸、リン酸、および硫酸であり、特に最も好適なのは塩酸塩である。
【0018】
本明細書中、用語「情動障害」には、鬱病、注意欠陥障害、過活動を伴う注意欠陥障害、双極性症状および躁病症状等が含まれる。用語「注意欠陥障害」(ADD)および「過活動を伴う注意欠陥障害」(ADDH)、即ち、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)は、本明細書中では、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版,American Psychiatric Association (1997)(DSM-IVTM)に見られる通義に従って使用する。
【0019】
本明細書中、用語「鬱病を治療する方法」とは、限定するわけではないが、感情の変動、強烈な悲哀感情、絶望、落ち込み(mental slowing)、集中力の喪失、厭世的な不安、動揺、および自己非難といった鬱病の症候の緩和を意味する。不眠、食欲不振、体重減少、精力や性欲の低下、およびホルモン日周期の異常といった、身体的な変化を緩和するのでもよい。
【0020】
本明細書中、用語「肥満または体重増加を治療する方法」とは、減量、太りすぎの緩和、体重増加の緩和、または肥満の緩和を意味する。これらは全て、通常、食物の過剰摂取に起因するものである。
【0021】
本明細書中、用語「ニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法」とは、ニューロンの異常なモノアミンレベルに関連する疾患状態の症候の緩和を意味する。このような症候は、ニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで軽減される。本発明の化合物または組成物によって再取り込みが抑制されるモノアミンとしては、ノルアドレナリン(すなわちノルエピネフリン)、セロトニンおよびドーパミンが挙げられるが、これらに限定されない。ニューロンへのモノアミンの再取り込みを抑制することで治療される障害としては、パーキンソン病およびてんかんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中、用語「パーキンソン病を治療する方法」とは、意図した動作が徐々に行えなくなる、震え、運動緩徐、硬直、およびヒトの姿勢異常といった(但し、これらに限定されない)パーキンソン病の症候の緩和を意味する。
【0023】
本明細書中、用語「脳の機能障害を治療する方法」とは、限定するわけではないが、老年性痴呆症、アルツハイマー型痴呆症、記憶喪失、健忘症/健忘症候群、意識障害、昏睡、注意力の低下、言語障害、パーキンソン病、レノックス症候群、自閉症、多動症候群および精神分裂病といった知能欠陥(intellectual deficit)を伴う脳の機能障害に関連する疾患状態の緩和を意味する。同じく脳の機能障害の意味に含まれるものには、限定するわけではないが、脳梗塞、脳内出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、頭部損傷等の脳血管疾患に起因する障害があり、症候としては意識障害、老年性痴呆症、昏睡、注意力の低下、言語障害等が挙げられる。
【0024】
用語「強迫性障害」、「物質乱用」、「月経前症候群」、「不安」、「摂食障害」および「片頭痛」は、本明細書中では、当該術分野における通義と矛盾しないように使用する。例えば、DSM-IVTMを参照されたい。用語「治療または予防(する)方法」、「治療(する)方法」および「予防(する)方法」は、このような障害に関連して使用する場合には、このような障害に関連する症候および/または作用の改善、予防または緩和を意味する。いかなる理論にも限定されるものではないが、このような障害の一部を治療または予防することは、セロトニンの取込みを抑制するインヒビターとしての有効成分の活性と関連している可能性がある。
【0025】
本明細書中、用語「失禁を治療または予防する方法」とは、便または尿の不随意性排泄、便または尿の滴下または漏出といった失禁の症候の予防または緩和を意味し、該症候は、括約筋の調節機能を変化させる病状、認識機能の喪失、膀胱の過剰膨張、反射亢進および/または不随意性尿道弛緩、膀胱または神経の異常に伴う筋肉の衰弱等の(但し、これらに限定されない)1つ以上の原因に起因する可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
4.発明の説明
本発明は、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体に関し、該誘導体としては、(-)-O-デスメチルベンラファキシン、(-)-N-デスメチルベンラファキシン、および(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はさらに、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体の合成およびこれらを含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。本発明は、本明細書に開示する化合物の新規な用途にも関し、該用途は、ラセミ体ベンラファキシン並びにベンラファキシンの光学的に純粋な異性体の用途を向上させたものである。
【0027】
本発明の実施形態の1つは、ヒトの情動障害を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシンは、情動障害を治療するのに使用できる上に、ベンラファキシンよりも半減期が長く、且つ/またはベンラファキシンの投与に付随する有害作用が回避もしくは軽減される。
【0028】
本発明の別の実施形態は、ヒトの体重増加または肥満を治療する方法を包含する。この方法には、減量または肥満治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれ、該量は、体重増加または肥満を軽減または予防するのに十分な量である。光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシンは、体重増加または肥満障害を治療するのに使用できる上に、ベンラファキシンよりも半減期が長く、且つ/またはベンラファキシンの投与に付随する有害作用が回避もしくは軽減される。
【0029】
本発明の別の実施形態は、ヒトのニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法を包含する。この方法には、ヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれ、該量は、このような障害を治療するのに十分な量である。ニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害としては、パーキンソン病、てんかん、および鬱病が挙げられるが、これらに限定されない。光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体は、このような障害を治療するのに使用できる上に、ベンラファキシンの投与に付随する有害作用が回避もしくは軽減される。
【0030】
光学的に純粋な、または実質的に光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、およびこれらを含有する組成物は、脳の機能障害の治療においても有用である。このような障害としては、老年性痴呆症、アルツハイマー型痴呆症、記憶喪失、健忘症/健忘症候群、意識障害、昏睡、注意力の低下、言語障害、パーキンソン病、レノックス症候群、自閉症、多動症候群および精神分裂病が挙げられるが、これらに限定されない。脳の機能障害は、限定するわけではないが、脳梗塞、脳内出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、頭部損傷等の脳血管疾患といった要因によって引き起こされる可能性があり、症候としては意識障害、老年性痴呆症、昏睡、注意力の低下、言語障害等が挙げられる。従って、本発明は、ヒトの脳の機能障害を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは光学的に純粋な(-)-O-デスメチルベンラファキシンの使用は、親薬剤であるベンラファキシンを用いるよりも改善をもたらすことを意図している。本発明の光学的に純粋な誘導体は効力が高く、しかも、ベンラファキシンよりも総合的な治療指数が向上している。
【0031】
本発明の別の実施形態は、慢性疼痛を含むヒトの疼痛を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれ、該量は、ヒトの疼痛を緩和するのに十分な量である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、ヒトの強迫性障害を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0033】
本発明の別の実施形態は、ヒトの物質乱用を治療または予防する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0034】
本発明の別の実施形態は、ヒトの月経前症候群を治療または予防する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、ヒトの不安を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0036】
本発明の別の実施形態は、ヒトの摂食障害を治療する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0037】
本発明の別の実施形態は、ヒトの片頭痛を治療または予防する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。
【0038】
本発明の別の実施形態は、ヒトの失禁を治療または予防する方法を包含する。この方法には、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシン、またはその製薬上許容し得る塩を投与することが含まれる。特に、(-)-ベンラファキシン誘導体を使用して、便失禁、腹圧性尿失禁(「SUI」)、運動性尿失禁、切迫失禁、反射性失禁、受動失禁および溢流失禁を治療することができる。好適な実施形態では、前記ヒトは50歳を超える高齢者であるか、または13歳未満の小児である。さらに、本発明は、認識機能または括約筋の調節機能のいずれかが失われた、または両方が失われた患者における失禁の治療を包含する。本発明は、便失禁および腹圧性尿失禁の治療または予防に特によく適している。
【0039】
本発明の別の実施形態は、(-)-N-デスメチルベンラファキシンの製造方法を包含する。この方法には、式5:
【化2】

の化合物と還元剤とを、(±)-N-デスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-N-デスメチルベンラファキシンを単離することが含まれる。好適な還元剤はBH3・Me2Sである。
【0040】
本発明の別の実施形態は、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンの製造方法を包含する。この方法には、式2:
【化3】

の化合物と還元剤とを、(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを単離することが含まれる。好適な還元剤はCoCl2/NaBH4である。
【0041】
本発明の別の実施形態は、(-)-O-デスメチルベンラファキシンの製造方法を包含する。この方法には、(-)-ベンラファキシンとリチウムジフェニルホスフィドとを、(-)-O-デスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させることが含まれる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、(-)-O-デスメチルベンラファキシンの製造方法を包含する。この方法には、(±)-ベンラファキシンとリチウムジフェニルホスフィドとを、(±)-O-デスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-O-デスメチルベンラファキシンを単離することが含まれる。
【0043】
本発明の別の実施形態は、実質的に純粋な(-)-O-デスメチルベンラファキシン並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体を包含する。
【0044】
本発明の別の実施形態は、実質的に純粋な(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体を包含する。
【0045】
本発明の別の実施形態は、(-)-N-デスメチルベンラファキシン並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体を包含する。
【0046】
本発明のさらなる実施形態は、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体を包含する。
【0047】
本明細書中の記載に従って使用および製造し得る本発明の化合物を、下記のスキームI(b)に示す:
【化4】

一部のベンラファキシン誘導体の合成は、Yardley, J.P.ら, J. Med. Chem. 33:2899-2905 (1990)に記載されている。この開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする。この方法は、本発明の化合物の合成へ応用することができ、下記のスキームIIに示す。
【化5】

(式中、Rはメトキシまたはヒドロキシであり、R1は水素またはメチルであり、反応条件は以下の通りである:(a)シクロアルカノン中のLDA、-78℃;(b)Rh/Al2O3;および(c)HCHO、HCOOH、H2O、還流。工程(c)によって生成したラセミ体最終生成物の(-)異性体は、当業者に公知の任意の方法によって単離することができ、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)並びにキラル塩の形成および結晶化が挙げられる。例えば、Jacques, J.ら, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981); Wilen, S.H.ら, Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L., Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962);およびWilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268 (E.L. Eliel編, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)を参照されたい。本明細書中、用語「単離(する)」は、反応混合物からの化合物の単離、該化合物の精製、および該化合物の光学分割を包含するものである。
【0048】
本発明の好適な方法では、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンから製造するが、それ自体は好ましくは下記のスキームIIIに示す方法に従って製造する:
【化6】

この方法によれば、シクロヘキサノンを化合物1と反応させて化合物2を得る。この反応は、好ましくは、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)等の(但し、これに限定されない)触媒の存在下、かつTHF等の(但し、これに限定されない)非プロトン性溶媒中にて行う。次いで、化合物2のシアノ基を還元剤と接触させて化合物3、即ち(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを得る。好適な還元剤はメタノール中のCoCl2/NaBH4であるが、当業者に公知の他の還元剤を用いることもできる。次いで、(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンの塩、例えばHCl塩(化合物4)を、当該技術分野で周知の反応条件を利用して形成すればよい。(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンは、当該技術分野で公知の方法(例えば、キラル塩の形成またはキラルクロマトグラフィーの使用)を利用して(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンから単離できる。
【0049】
再度スキームIIIを参照すると、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンは、化合物2の適切なエナンチオマーから製造することも可能である。化合物2の光学的に純粋なエナンチオマーは、当該技術分野で公知の方法(例えば、キラル塩の形成またはキラルクロマトグラフィーの使用)を利用して単離できる。
【0050】
本発明の別の好適な方法では、(-)-N-デスメチルベンラファキシンを(±)-N-デスメチルベンラファキシンから製造するが、それ自体は下記のスキームIVに示す方法に従って(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンから製造する:
【化7】

この方法によれば、(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン(化合物3)を、例えば、トルエン等の(但し、これに限定されない)溶媒中のHCO2Hを用いて化合物5へ変換する。次いで、化合物5のアルデヒドを還元して化合物6、即ち(±)-N-デスメチルベンラファキシンを得る。好適な還元剤は、THF等の(但し、これに限定されない)非プロトン性溶媒中のBH3・Me2Sである。次いで、(±)-N-デスメチルベンラファキシンの塩、例えばHCl塩(化合物7)を、当該技術分野で周知の反応条件を利用して形成すればよい。(-)-N-デスメチルベンラファキシンは、当該技術分野で公知の方法(例えば、キラル塩の形成またはキラルクロマトグラフィーの使用)を利用して(±)-N-デスメチルベンラファキシンから単離できる。
【0051】
再度スキームIVを参照すると、(-)-N-デスメチルベンラファキシンは、化合物3または5の適切なエナンチオマーから製造することも可能である。化合物3および5の光学的に純粋なエナンチオマーは、当該技術分野で公知の方法(例えば、キラル塩の形成またはキラルクロマトグラフィーの使用)を利用して単離できる。
【0052】
米国特許第4,761,501号およびPento, J.T., Drugs of the Future 13(9):839-840 (1988)(双方の開示内容とも、引用により本明細書に含まれるものとする)等に開示されている方法に従って調製可能なラセミ体ベンラファキシンから、本発明の化合物を製造することも可能である。光学的に純粋な(-)-ベンラファキシンは、上述したような慣用の手段によってラセミ混合物から単離でき、当業者に公知の方法に従って選択的に脱メチル化することが可能である。例えば、March, J., Advanced Organic Chemistry p.361 (第3版, 1985)を参照されたい。
【0053】
本発明の好適な方法では、光学的に純粋な(-)-ベンラファキシンを、下記のスキームVに示す方法に従って(±)-ベンラファキシンから単離する:
【化8】

この方法によれば、(-)-ベンラファキシン(化合物9)を、ジ-p-トルオイル-D-酒石酸等を使用してキラル塩を形成することにより、(±)-ベンラファキシン(化合物8)から単離する。次いで、(-)-ベンラファキシンの塩、例えばHCl塩(化合物10)を、当該技術分野で周知の反応条件を利用して形成すればよい。
【0054】
本発明の化合物は(-)-ベンラファキシンから容易に製造される。例えば、本発明の好適な方法では、(-)-O-デスメチルベンラファキシンを、下記のスキームVIに示すように(-)-ベンラファキシンから製造する:
【化9】

この方法によれば、リチウムジフェニルホスフィド等を用いて(-)-ベンラファキシン(化合物9)のメトキシ基をアルコールへ変換し、(-)-O-デスメチルベンラファキシン(化合物11)を得る。
【0055】
本明細書に記載されているような方法を利用して光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体を製造し得る(±)-ベンラファキシンHClおよび(±)-O-デスメチルベンラファキシンを製造する別の方法を、下記のスキームVIIに示す:
【化10】

スキームVIIによれば、(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン(化合物3)をHCHO/HCO2H等と反応させることにより、(±)-ベンラファキシン(化合物8)を製造する。次いで、リチウムジフェニルホスフィド等を用いて化合物8を(±)-O-デスメチルベンラファキシン(化合物13)へ変換すればよい。あるいは、(±)-ベンラファキシンの塩、例えばHCl塩(化合物12)を、当該技術分野で周知の反応条件を利用して形成してもよい。化合物12および13の光学的に純粋なエナンチオマーは、当業者に公知の方法(例えば、キラル塩の形成またはキラルクロマトグラフィーの使用)を利用して単離できる。化合物12および13の光学的に純粋なエナンチオマーは、化合物8に対応する光学的に純粋なエナンチオマーを出発物質としてスキームVIIに従って製造することもできる。
【0056】
(-)-ベンラファキシンの光学的に純粋な、または実質的に光学的に純粋な誘導体を、本明細書に記載の症状の治療および/または緩和に用いると、効力が明らかに用量に関連し、有害作用が軽減されるため、ベンラファキシン自体と比較して治療指数が向上する。
【0057】
一時的または長期的な疾患の処置における(-)-ベンラファキシン誘導体(本明細書中では「有効成分」とも称する)、好ましくは(-)-O-デスメチルベンラファキシンの予防または治療用量は、治療すべき症状の重篤度および投与経路に応じて変動するものである。用量および、おそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、応答および過去の病歴によっても変動する。一般に、本明細書に記載の症状の場合には、推奨される1日当たりの用量範囲は約10mg〜約1000mgであり、1日1回朝に投与するが、好ましくは食事に合わせて一日を通して複数回投与する。好ましくは1日当たりの用量範囲は、約50mg〜約500mg、より好ましくは約75mg〜約350mgとする。患者を処置する際には、患者の全身的な応答に応じて、単回投与または複数回投与のいずれであっても、低用量(おそらく約50mg〜約75mg)から開始しなければならず、必要に応じて1日当たり約250mg〜約325mgまで増やす。投与量を上げる場合には、少なくとも4日間間隔をあけて約75mgずつ上げるのが好ましい。
【0058】
(-)-ベンラファキシン誘導体の血流からの排除は腎臓および肝臓の機能に依存するため、1日当たりの用量の合計を、中程度の肝臓機能障害を有する患者では少なくとも50%減らし、軽度〜中程度の腎臓機能障害を有する患者では25%減らすことが推奨される。血液透析を受けている患者の場合には、1日当たりの用量の合計を5%減らし、該用量を透析処置が完了するまで抑えることが推奨される。モノアミンオキシダーゼインヒビターと同時に、または該インヒビターの服用の直後にベンラファキシンを服用している患者の場合には何らかの有害反応が報告されているため、本発明の(-)-ベンラファキシン誘導体は、このようなインヒビターを現在服用している患者へ投与しないことが推奨される。一般に、本発明の化合物と他の薬剤(特に、他のセロトニン取込みインヒビター)との同時投与は、注意して行わなければならない。例えば、von Moltke, L.L.ら, Biol. Psychiatry 41:377-380 (1997);およびSinclair, J.ら, Rev. Contemp. Pharmacother. 9:333-344 (1998)を参照されたい。
【0059】
「情動障害を緩和するのに十分な量」、「鬱病を緩和するのに十分な量」、「注意欠陥障害を緩和するのに十分な量」、「強迫性障害を緩和するのに十分な量」、「物質乱用を予防または緩和するのに十分な量」、「月経前症候群を予防または緩和するのに十分な量」、「不安を予防または緩和するのに十分な量」、「摂食障害を予防または緩和するのに十分な量」、「片頭痛を予防または緩和するのに十分な量」、「パーキンソン病を緩和するのに十分な量」、「てんかんを緩和するのに十分な量」、「肥満または体重増加を緩和するのに十分な量」、「減量を達成するのに十分な量」、「ヒトの体重を減少させるのに十分な量」、「疼痛を緩和するのに十分な量」、「痴呆症を緩和するのに十分な量」、「ニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を緩和するのに十分な量」、「脳の機能障害を緩和するのに十分な量」(ここで、前記障害は、老年性痴呆症、アルツハイマー型痴呆症、記憶喪失、健忘症/健忘症候群、意識障害、昏睡、注意力の低下、言語障害、パーキンソン病、レノックス症候群、自閉症、多動症候群、精神分裂病並びに、脳梗塞、脳内出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、頭部損傷等の脳血管疾患からなる群より選択されるものである)、「失禁を治療または予防するのに十分な量」(ここで、前記失禁としては、便失禁、腹圧性失禁、尿失禁、運動性尿失禁、切迫失禁、反射性失禁、受動失禁および溢流失禁が挙げられるが、これらに限定されない)といった各種の用語は、上述の投与量および投与頻度スケジュールの範囲内である。同様に、上記障害の各々を緩和するのには十分であるが、ベンラファキシンに付随する有害作用を引き起こすには至らない量も、上述の投与量および投与頻度スケジュールの範囲内である。
【0060】
任意の適切な投与経路を利用して、患者に治療上または予防上有効な用量の有効成分を投与することができる。例えば、経口、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、口腔、直腸、膣)、非経口(例えば、静脈内、筋肉内)、経皮、および皮下経路を利用することができる。好適な投与経路としては、経口、経皮および粘膜が挙げられる。このような経路に適した剤形としては、経皮パッチ、点眼液、スプレー剤、およびエアゾール剤が挙げられるが、これらに限定されない。経皮吸収用組成物は、クリーム、ローションおよび/または乳液の状態であってもよく、この場合には、この目的のために当該技術分野で慣用の、皮膚への塗布に適した接着剤、またはマトリックスもしくはレザバー型の経皮パッチに配合することができる。好適な経皮吸収用剤形は「レザバー型」または「マトリックス型」のパッチであり、皮膚へ貼り、一定期間身に付けて所望量の有効成分を浸透させるものである。有効成分を患者へ定常的に投与する必要がある場合には、パッチを新しいものと交換すればよい。
【0061】
本発明の他の剤形としては、錠剤、カプレット剤、トローチ剤、ロゼンジ、分散液、懸濁剤、坐剤、軟膏剤、パップ剤(湿布)、ペースト剤、粉剤、包帯剤、クリーム、硬膏剤、液剤、カプセル剤、軟弾性ゼラチンカプセル剤、およびパッチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
実際の用途では、有効成分を、従来の調剤技術に従って調剤用担体と配合してよく混合された混合物とすることができる。担体は、投与のための所望の製剤の剤形に応じて多様な形態をとることができる。経口投与用剤形の組成物を調製する際には、通常の調剤用媒体のいずれを担体として使用してもよく、例えば、経口投与用の液状製剤(懸濁剤、液剤およびエリキシル剤等)またはエアゾール剤の場合には、水、グリコール、油、アルコール、芳香剤、保存剤、着色剤等が使用でき、経口投与用の固形製剤(好ましくはラクトースを使用しないもの)の場合には、デンプン、糖類、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤等の担体が使用できる。例えば、適切な担体としては、粉剤、カプセル剤および錠剤が挙げられ、液状製剤よりも固形の経口投与用製剤が好適である。
【0063】
投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口投与単位剤形の典型である。この場合、固形の調剤用担体を使用する。必要であれば、標準的な水系または非水系技術によって錠剤を被覆する。
【0064】
上述したような一般的な剤形以外にも、当業者に周知の制御放出手段または送達デバイスによって有効成分を投与することもできる。例えば、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、並びに同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号および同第5,733,566号に記載されているものが挙げられる(これらの開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。このような剤形を利用して1以上の有効成分を徐放または制御放出させることができ、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透析膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、もしくはマイクロスフェア、またはこれらを組み合わせて使用して、様々な程度の所望の放出プロフィールを得ることができる。本明細書に記載されたものを含む当業者に公知の適切な制御放出製剤を、本発明の医薬組成物用に容易に選択することができる。従って本発明には、経口投与に適した単回投与用の単位投与剤形が包含され、例えば、制御放出に適応した錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤(gelcap)、およびカプレット剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
制御放出医薬品は全て、放出を制御しない医薬品による療法よりも薬物療法を向上させることを共通の目標としている。理想的には、最適に設計された制御放出製剤を医療に利用することの特徴は、最小限の薬剤物質を最短期間で使用して症状を治療または抑える点にある。制御放出製剤の利点としては、1)薬剤活性の持続、2)投与頻度の減少、および3)患者のコンプライアンスの向上が挙げられる。さらに、制御放出製剤を使用することにより、作用の開始時期、または薬剤の血中レベルといった他の特性を変えることができ、その結果副作用の発生を制御することができる。
【0066】
制御放出製剤の大部分は、所望の治療効果を迅速に発揮するような薬剤量をまず放出し、残りの薬剤量を持続的に徐放してこの治療効果レベルを長期間維持するように設計されている。体内において薬剤をこのような一定レベルに維持するためには、代謝されるかまたは体外へ排泄される薬剤量を補充するような速度で薬剤が剤形から放出されなければならない。有効成分の制御放出は様々な誘導因子によって刺激することができ、該誘導因子としては、pH、温度、酵素、水、または他の生理的条件もしくは化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、カプセル剤、カシェ剤もしくは錠剤等の個別の剤形、または所定量の有効成分を粉末もしくは顆粒として含有するエアゾールスプレー剤、液剤、水系もしくは非水系液体懸濁剤、水中油型エマルジョン、または油中水型液状エマルジョンとしてもよい。このような剤形は調剤法のいずれの方法でも調製することができるが、全ての方法に、1以上の必要な成分を構成する有効成分を担体へ配合する工程が含まれる。一般に、本発明の医薬組成物は、有効成分を液状担体または超微粒子状固形担体またはこれら双方と均一かつ均質に混合し、必要に応じて製品を所望の形状に成形することにより調製する。
【0068】
例えば、錠剤は、場合により1以上の補助成分と共に圧縮または成形することにより調製できる。圧縮錠剤は、適切な機械にて、有効成分を粉末または顆粒等の易流動性状態にて圧縮することにより調製できる。場合により有効成分を賦形剤と混合するが、該賦形剤としては、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、および/または界面活性剤もしくは分散剤が挙げられるが、これらに限定されない。成形錠剤は、適切な機械にて、不活性な液状希釈剤により湿潤化させた粉末状化合物の混合物を成形することにより調製できる。
【0069】
本発明はさらに、ラクトースを含まない医薬組成物および剤形を包含する。ラクトースは、ベンラファキシン製剤において賦形剤として使用されているものである。例えば、Physician’s Desk Reference(登録商標)3294(第53版, 1999)を参照されたい。しかしながら、親薬剤と違って、(-)-ベンラファキシンのN-脱メチル化誘導体(例えば、(-)-N-デスメチルベンラファキシンおよび(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン)は第二級または第一級アミンであるため、ラクトースに接触すると時間が経つにつれて分解する。従って、(-)-ベンラファキシンのN-脱メチル化誘導体を含む本発明の組成物は、ラクトースまたは他の単糖類もしくは二糖類を殆ど含まないのが好ましい。本明細書中では、用語「ラクトースを含まない」または「ラクトース不含」とは、仮にラクトースが含まれるとしても、その量が、有効成分の分解速度を実質的に増加させるには至らない量であることを意味する。
【0070】
本発明のラクトース不含組成物は、USP(XXI)/NF(XVI)(引用により本明細書に含まれるものとする)に掲載されている当該技術分野で周知の賦形剤を含むことが可能である。通常、ラクトース不含組成物には、有効成分、結合剤/充填剤、および滑沢剤が、製薬上適合かつ許容し得る量で含まれる。好適なラクトース不含剤形には、有効成分、微晶質セルロース、前糊化(pre-gelatinized)デンプン、およびステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0071】
一部の化合物は水によって分解が進んでしまうため、本発明はさらに、有効成分を含んでなる無水医薬組成物および剤形を包含する。例えば、水(例えば、5%)を添加することは、貯蔵寿命または製剤の経時的な安定性といった特性を判定する上で、長期保存をシミュレートする手段として製薬分野で広く容認されている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice,第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp.379-80を参照されたい。実際に、水および熱によって分解が促進される。従って、製剤に対する水の作用は、水分および/または湿度が、製剤の製造時、取扱い時、包装時、貯蔵時、出荷時および使用時に通常発生するものであるため、非常に重要である。
【0072】
本発明の無水医薬組成物および剤形は、無水成分もしくは低含水率成分および低水分条件もしくは低湿度条件を使用することで調製できる。ラクトースを含む本発明の医薬組成物および剤形は、製造時、包装時および/または貯蔵時に水分および/または湿度と実質的に接触することが予想される場合には、無水状態であるのが好ましい。
【0073】
無水医薬組成物は、その無水特性が維持されるように調製および保存しなければならない。従って、無水組成物は、好ましくは、水との接触を防ぐことが知られている材料を使用して包装し、適切な処方キットに添付できるようにする。適切な包装の例としては、密閉されたホイルやプラスチック等、単回投与用容器、ブリスターパック、およびストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
これに関して、本発明は、有効成分を含んでなる固形医薬製剤の調製方法を包含する。この方法には、無水条件または低水分/湿度条件下にて、有効成分と賦形剤(例えば、ラクトース)とを混合することが含まれ、該成分は実質的に水を含まない。この方法にはさらに、無水または非吸湿性の固形製剤を低水分条件下にて包装することが含まれていてもよい。このような条件を使用することにより、水との接触の危険性を減らし、有効成分の分解を防止または実質的に減少させることができる。
【0075】
医薬組成物および剤形に用いるのに適した結合剤としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴム等の天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末状トラガカント、グアルゴム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、前糊化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、2208、2906、2910番)、微晶質セルロース、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
微晶質セルロースの適切なものとしては、例えば、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、およびAVICEL-PH-105として販売されている材料が挙げられる(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PA, U.S.Aより入手可能)。適切な結合剤の具体例は、AVICEL RC-581として販売されている微晶質セルロースとカルボキシルメチルセルロースナトリウムとの混合物である。適切な無水または低含水率賦形剤または添加剤としては、AVICEL-PH-103TMおよびStarch 1500 LMが挙げられる。
【0077】
本明細書に開示した医薬組成物および剤形に用いるのに適した充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(顆粒または粉末等)、微晶質セルロース、粉末状セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、前糊化デンプン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物における結合剤/充填剤は、典型的には、医薬組成物の約50〜約99重量%の量で含まれる。
【0078】
崩壊剤を本発明の組成物に用いると、水系環境に曝された際に崩壊する錠剤が得られる。崩壊剤が多すぎると、容器中で崩壊してしまう錠剤が生成するであろう。少なすぎると、崩壊の発生には至らず、その結果、有効成分の剤形からの放出速度および放出程度が変わってしまう場合がある。従って、有効成分の放出に悪影響を与えるほど多すぎも少なすぎもしない十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に開示した化合物の剤形を形成しなければならない。崩壊剤の使用量は製剤の種類および投与方法に応じて変動し、当業者であれば容易に判定し得る。典型的には、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量%の崩壊剤を、医薬組成物に使用することができる。
【0079】
本発明の医薬組成物および剤形を形成するのに使用し得る崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、クロスポビドン(crospovidone)、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、前糊化デンプン、他のデンプン、クレー、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の医薬組成物および剤形を形成するのに使用し得る滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の滑沢剤としては、例えば、syloidシリカゲル(AEROSIL 200、W.R. Grace Co., Baltimore, MD製)、合成シリカの凝集エアゾール(Degussa Co., Plano, Texasより販売)、CAB-O-SIL(Cabot Co., Boston, Massより販売されている火成二酸化ケイ素製品)、またはこれらの混合物が挙げられる。滑沢剤は必要に応じて添加することができ、典型的には、医薬組成物の約1重量%未満の量で添加する。
【0081】
望ましくは、錠剤には各々約25mg〜約150mgの有効成分が含まれ、カシェ剤またはカプセル剤には各々約25mg〜約150mgの有効成分が含まれる。より好ましくは、錠剤、カシェ剤またはカプセル剤には、3種類の投与量、例えば、約25mg、約50mg、または約75mgの有効成分(好ましい剤形である錠剤として計算)のうち、いずれか1種類が含まれる。
【0082】
以下、本発明の組成物の調製を詳述する実施例を参照して本発明をさらに規定する。本発明の趣旨および目的を逸脱することなく、材料および方法のいずれに対しても多くの改変を実施し得ることは、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0083】
5. 実施例
先に論じたように、本発明の化合物を得るために少なくとも2つの異なる合成アプローチを利用できる。第1のアプローチは、(-)-ベンラファキシンの分離、次いで選択的脱メチル化に基づく。第2のアプローチにおいては、ベンラファキシン誘導体のラセミ混合物を、その光学的に純粋な化合物へと分離する。
【0084】
5.1 実施例1:(-)-ベンラファキシンの合成および分割
1-[シアノ-(4-メトキシフェニル)メチル]シクロヘキサノール
THF 400mL中の4-メトキシベンジルニトリル(53.5g、0.36mol)の溶液を、-78℃に冷却した後、反応温度を-65℃より下に維持しながら、リチウムジイソプロピルアミド(200mL、0.40mol)の2.0M THF溶液をゆっくりと添加した。反応物を-78℃で30分間にわたり撹拌した。反応温度が-65℃より上に上がらないような速度で、シクロヘキサノン(39.5g、0.40mol)を添加した。添加後、反応物を-78℃で2時間にわたり撹拌した後、氷を含む1Lの飽和水性NH4Cl中に注いだ。混合物を15分間にわたり撹拌し、酢酸エチルで抽出した(4x 200mL)。合わせた酢酸エチル層を、水(3x 100mL)、ブライン(1x 100mL)で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、無色固体を得、これをヘキサンと共に粉砕した。沈殿をろ過し、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥させて、無色固体を得た(72.0g、収率80.7%)。1H(CDCl3):7.30および6.90(q,4H)、3.80(s,3H)、3.75(s,1H)、1.55(m,10H);13C(CDCl3):159.8、130.8、123.8、120.0、114.1、72.9、55.5、49.5、34.9、25.3、21.6。
【0085】
1-[2-アミノ-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール
機械的撹拌器および熱電対を備えた3Lの3つ口フラスコに、1-[シアノ-(4-メトキシフェニル)メチル]シクロヘキサノール(40.0g、0.16mol)および1Lのメタノールを仕込んだ。得られた溶液を撹拌しながら、塩化コバルト(42.4g、0.32mol)を添加し、透明な濃青色の溶液が得られるまで反応物を撹拌した。反応温度を35℃より下に維持しながら、ホウ化水素ナトリウム(62.0g、1.63mol)を少量ずつ添加した。ホウ化水素ナトリウムを添加すると直ちに気体の活発な放出と共に、濃黒色の沈殿が形成された。添加終了後、スラリーを室温で2時間にわたり撹拌した。TLC試験により、出発物質の完全な消失が示された。反応物を氷/水で冷却し、1Lの3N HClをゆっくりと加えた。反応温度は25℃より下に維持した。添加終了後30分間にわたり反応物を撹拌した。少量の黒色沈殿がなお観察された。減圧下でメタノールを除去した後、水層を酢酸エチルで抽出した(3x 300mL)。水層を氷/水で冷却し、濃NH4OH(〜600mL)をゆっくりと添加することによって塩基性にした(pH紙)。反応温度を25℃より下に維持した。反応物を酢酸エチルで抽出した(4x 200mL)。合わせた酢酸エチル層を、水(3x 100mL)、ブライン(1x 100mL)で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、黄色ゴム状物を得た(34.0g、収率83.6%)。1H(CDCl3):7.20および6.85(q,4H)、3.80(s,3H)、3.20(m,2H)、2.70(t,3H)、2.35(br s,3H))、1.40(m,10H);13C(CDCl3):158.4、132.6、130.6、113.7、73.7、56.7、55.3、42.4、37.3、34.5、26.0、21.9。
【0086】
(±)-ベンラファキシン
1-[2-アミノ-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール(33.0g、0.13mol)を88%ギ酸(66.0g、55mL、1.43mol)および水(330mL)に溶かした後、37%水性ホルムアルデヒド(44.4g、41mL、1.48mol)を添加した。得られた溶液を20時間にわたり還流し、室温に冷却し、そして150mLに濃縮し、3N HClにてpH2.0に調整し、ピンク色の不純物が除去されるまで酢酸エチルで抽出した(〜6x 50mL)。水層を氷/水で冷却し、50%NaOHをゆっくり加えることによって塩基性にした。水層を酢酸エチルで抽出した(3x 75mL)。合わせた酢酸エチル層を、水(3x 25mL)、ブライン(1x 25mL)で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、黄色ゴム状物を得、これは、薄黄色の固体へゆっくりと変わった(34.0g、収率92.6%)。1H(CDCl3):7.05および6.80(q,4H)、3.80(s,3H)、3.30(t,1H)、2.95(dd,1H)、2.35(s,6H)、2.30(dd,1H)、1.30(m,10H) ;13C(CDCl3):158.4、132.9、130.3、113.5、74.4、61.4、55.3、51.8、45.6、38.2、31.3、26.2、21.8、21.5。MS(277,M+)。
【0087】
(±)-ベンラファキシンHCl塩
MTBE 100mL中の(±)-ベンラファキシン(1.0g、3.6mmol)の溶液を0℃に冷却し、MTBE中の15%HClを2mLそれに添加した。無色沈殿が形成された。反応物を0℃で10分間にわたり撹拌した。固体をろ過し、MTBEにて洗浄し、減圧乾燥させて、無色固体として生成物を得た(0.700g、収率61.9%)。1H(CDCl3):11.40(s,1H)、7.15および6.85(q,4H)、4.05(d,1H)、3.80(s,3H)、3.35(t,1H)、3.20(m,2H)、2.80(s,3H)、2.60(s,3H)、1.30(m,10H) ;13C(CDCl3):159.0、131.4、130.3、114.2、73.7、60.4、55.4、52.7、45.3、42.8、36.7、31.5、25.5、21.7、21.3。MS(277,M+(遊離の塩基について))。%純度(HPLC):99.62。
【0088】
ベンラファキシンの酒石酸塩
酢酸エチル 150mL中の(±)-ベンラファキシン(20.0g、0.072mol)の溶液を撹拌しながら、酢酸エチル 120mL中のジ-p-トルオイル-D-酒石酸(16.0g、0.041mol)の溶液を添加した。穏やかな発熱が観察された。15分以内に無色固体が析出し始めた。懸濁物を室温にて4時間にわたり撹拌した。固体をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥させて、(R)-ベンラファキシン・ジ-p-トルオイル-D-酒石酸塩を無色固体として得た(18.0g、収率37.6%)。
【0089】
上記反応からの合わせた母液を、氷冷した1NのNaOH(4x 100mL)、水(3x 200mL)、ブライン(1x 100mL)で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、無色固体を得た(10.8g、0.039mol)。この固体を、75mLの酢酸エチルに溶かし、酢酸エチル75mL中のジ-p-トルオイル-L-酒石酸(11.3g、0.029mol)の溶液をそれに添加した。30分以内に無色固体が析出し始めた。さらなる量の酢酸エチル(50mL)をスラリーに添加し、それを室温にて1晩撹拌した。固体をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥させて、(S)-ベンラファキシン・ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を無色固体として得た(13.0g、収率50.0%)。
【0090】
酒石酸塩の結晶化
(R)-ベンラファキシン・ジ-p-トルオイル-D-酒石酸塩(18.0g、0.027mol)を250mLの酢酸エチル/メタノール(6:1)中に懸濁し、透明な溶液が得られるまで懸濁物を60℃に暖めた。溶液を室温まで放冷し、1晩撹拌した。固体をろ過し、酢酸エチル/メタノール(6:1)で洗浄し、乾燥させた。この工程をさらに2回繰り返した。3回の結晶化の後、生成物を無色固体として得た(5.76g、収率32.0%)、e.e. (HPLC):>99.95。
【0091】
(-)-ベンラファキシン
50mLの冷2N NaOHを、(R)-(-)-ベンラファキシン・ジ-p-トルオイル-D-酒石酸塩(5.3g、8.0mmol)に添加し、水層を酢酸エチルで抽出した(3x 100mL)。合わせた酢酸エチル層を、水性洗浄液が中性になるまで、冷2N NaOH(1x 25mL)および水で洗浄した。酢酸エチル層を乾燥させ(Na2SO4)、酢酸エチルを蒸発させて、(-)-ベンラファキシンを無色固体として得た(2.2g、定量的収率)、e.e. (HPLC):>99.95。1H、13CおよびMSデータは、(±)-ベンラファキシンにおけるのと同様。
【0092】
(-)-ベンラファキシン HCl塩
(±)-ベンラファキシンHCl塩の製造について記載した工程に従って、(-)-ベンラファキシンから(-)-ベンラファキシンHCl塩を調製した。
【0093】
(-)-ベンラファキシン HCl塩:無色固体、[α]D=-2.4(c=0.25、EtOH)、%純度(HPLC):>99.94。e.e. (HPLC):>99.99。1H、13CおよびMSデータは、(±)-ベンラファキシン・HClにおけるのと同様。
【0094】
5.2. 実施例2:(-)-O-デスメチルベンラファキシンの合成および分割
(±)-O-デスメチルベンラファキシン
THF 20mL中のジフェニルホスフィン(3.0g、16.1mmol)の溶液を-10℃に冷却した後、反応温度が0℃より上に上がらないような速度で、n-BuLi(12.7mL、20.2mmol)の1.6M THF溶液をゆっくりと添加した。反応物を0℃で30分間にわたり撹拌した。THF 10mL中の(±)-ベンラファキシン(1.0g、3.6mmol)の溶液を0℃にてゆっくりと添加した。反応物を0℃で15分間にわたり撹拌し、室温とし、1時間にわたり撹拌した。次に、それを1晩還流させた。反応物を室温に冷却し、15℃より下の温度を維持しながら、30mLの冷3N HCl中へゆっくりと注いだ。10分間にわたり撹拌した後、水層を酢酸エチルで抽出した(3x 30mL)。固体NaHCO3をゆっくりと加えることにより、水層をpH6.8〜6.9に調整した。次にそれを、NaClの添加により飽和させ、酢酸エチルで抽出した(6x 30mL)。合わせた酢酸エチル層を乾燥させ(Na2SO4)、酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、無色固体を得た。この固体を冷酢酸エチルと共に粉砕し、ろ過し、冷酢酸エチルで洗浄して、無色固体を得た(0.700g、収率73.8%)。1H(DMSO、d6):9.30(br s,1H)、7.10および6.80(q,4H)、5.60(br s,1H)、3.15(dd,1H)、2.88(t,1H)、2.50(dd,1H)、2.30(s,6H)、1.35(m,10H) ;13C(DMSO、d6):155.5、131.7、130.1、114.4、72.6、60.4、51.6、45.3、37.2、32.4、25.7、21.2。MS(264,M+1)。%純度(HPLC):99.9。
【0095】
(-)-O-デスメチルベンラファキシン
上記した工程に従って、(-)-ベンラファキシンから(-)-O-デスメチルベンラファキシンを調製した。
【0096】
(-)-O-デスメチルベンラファキシン:無色固体、[α]D=-35.2(c=0.25、EtOH)、%純度(HPLC):>99.99。e.e. (HPLC):>99.99。1H、13CおよびMSデータは、(±)-O-デスメチルベンラファキシンにおけるのと同様。
【0097】
5.3. 実施例3:(-)-N-デスメチルベンラファキシンの合成
(±)-N-デスメチルベンラファキシン
トルエン 8mL中の1-[アミノ(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール(1.0g、4.0mmol)の溶液に、96%ギ酸(0.37g、8.0mmol)を添加し、反応物を4時間にわたり還流させた。室温に冷却し、40mLの飽和水性NaHCO3中に注いだ。トルエン層を分離し、水層をトルエンで抽出した(3x 15mL)。合わせたトルエン層を水(3x 15mL)、ブライン(1x 15mL)で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。トルエンを減圧下で蒸発させて、粗製N-ホルミル化合物を黄色ゴム状物として得た(0.930g、収率83.8%)。1H(CDCl3):7.95(s,1H)、7.15および6.85(q,4H)、5.80(s,1H)、4.10(m,1H)、3.80(s,3H)、3.50(s,1H)、2.80(dd,1H)、1.50(m,10H) ;13C(CDCl3):161.4、158.8、131.0、130.7、113.9、73.0、55.3、54.2、38.1、36.1、35.6、25.6、21.9、21.8。(不純物:164.5、129.0、128.0、125.0、56.5、42.0、36.5、35.5)。MS(277,M+)。
【0098】
THF 6mL中の粗製N-ホルミル化合物(0.585g、2.1mmol)の溶液に、BH3・Me2S(0.480g、0.63mLの10M溶液、6.3mmol)を0℃にてゆっくりと添加した。反応物を室温とした後、5時間にわたり還流させた。0℃に冷却し、非常に注意深く温度を10℃より下に制御しながら、5mLのメタノールを添加した。反応物を10分間にわたり撹拌し、揮発成分を蒸発させた。残存物を3N HCl(20mL)と酢酸エチル(20mL)とで分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した(3x 15mL)。水層を0℃に冷却し、濃NH4OHをゆっくり添加することによって塩基性にした。水層をNaClで飽和させ、酢酸エチルで抽出した(3x 20mL)。合わせた酢酸エチル層を乾燥させ(Na2SO4)、酢酸エチルを減圧下で蒸発させて、無色オイルを得た(0.493g、収率88.8%)。1H(CDCl3):7.15および6.85(q,4H)、3.80(s,3H)、3.25(dd,1H)、2.95(dd,1H)、2.82(dd,1H)、2.45(s,3H)、1.40(m,10H) ;13C(CDCl3):158.4、133.0、130.5、113.7、73.9、55.4、53.8、53.0、37.8、36.5、33.7、26.0、21.9。
【0099】
(±)-N-デスメチルベンラファキシン HCl塩
MTBE 25mL中の粗製(±)-N-デスメチルベンラファキシン(0.450g、1.7mmol)の溶液に、MTBE中の15%HClを1mL、0℃にて添加した。得られたスラリーを0℃で15分間にわたり撹拌し、ろ過し、固体をMTBEで洗浄し、減圧乾燥させて、生成物を無色固体として得た(0.380g、収率74.2%)。1H(CDCl3):9.10(br d,1H)、7.15および6.85(q,4H)、3.80(mおよびs,4H)、3.35(dd,1H)、3.15(m,1H)、2.70(t,3H)、1.30(m,10H) ;13C(CDCl3):159.0、130.71、130.4、114.0、74.7、55.4、52.8、50.9、37.0、34.1、30.9、25.5、21.4。%純度(HPLC):98.81。
【0100】
(-)-N-デスメチルベンラファキシン
光学的に純粋な(-)-N-デスメチルベンラファキシンの分割を、本明細書に記載した方法を用いて行うことができる。キラルな塩を使用する場合には、塩の形成前に、好ましくはアミンを保護する。アミンを保護する適当な手段は当業者に公知であり、例えばフェナシルスルホニルクロリドと反応させて対応するスルホンアミドを生成することを含み、これは、亜鉛および酢酸を用いて光学的に純粋な鏡像異性体の分離後除去することができる。例えば、March, J. Advanced Organic Chemistry, p.445(第3版、1985年)参照。
【0101】
5.4. 実施例4:(±)-N-N-ジデスメチルベンラファキシン HCl塩の合成
MTBE 75mL中の1-[アミノ(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール(0.750g、3.0mmol)の溶液に、MTBE中の15%HClを2mL添加した。反応物を0℃で15分間にわたり撹拌した。次にそれを蒸発乾固させ、残存物をMTBE/へキサン(6:4)と共にこねた。固体をろ過し、MTBE/へキサン(6:4)で洗浄した。固体を冷MTBE中に懸濁させ、ろ過し、冷MTBEで洗浄し、減圧下で乾燥させて、生成物を無色固体として得た(0.450g、収率52.3%)。1H(DMSO、d6):7.80(br s,2H)、7.20および6.90(q,4H)、4.50(br s,1H)、3.80(s,3H)、3.40(m,1H)、3.10(m,1H)、2.90(m,1H)、1.35(m,10H) ;13C(DMSO、d6):158.3、130.7、130.0、113.5、71.7、54.9、52.6、36.3、33.6、26.8、25.3、21.4、21.1。%純度(HPLC):99.3。
【0102】
5.5. 実施例5:(±)-O-デスメチル-N,N-ジデスメチルベンラファキシンの合成
THF 175mL中のジフェニルホスフィン(22.2g、0.12mol)の溶液に、反応温度を-10〜0℃に維持しながら、n-BuLi(94mL、0.15mol)の1.6M THF溶液をゆっくりと添加した。添加後、反応物を0℃で30分間にわたり撹拌した。THF 55mL中の(±)-N-N-ジデスメチルベンラファキシン13(5.4g、0.021mol)の溶液を0℃にてゆっくりと添加した。反応混合物を0℃で30分間にわたり撹拌し、室温とし、室温で1時間にわたり撹拌した。次にそれを1晩還流させた。反応混合物を室温に冷却後、温度を15℃より下に維持しながら、それを250mLの3N HCl中にゆっくりと注いだ。30分間にわたり撹拌した後、水層を塩化メチレンで抽出した(3x 200mL)。15℃で濃NH4OHをゆっくり添加して水層をpH6.8〜6.9に調整し、塩化メチレンで抽出した(3x 100mL)。次に、水層を蒸発乾固させて、無色固体を得た。この無色固体を400mLの塩化メチレン/メタノール(7:3)中に懸濁させ、1時間にわたり撹拌した。不溶物をろ別し、塩化メチレン/メタノール(7:3)で洗浄した。ろ液を蒸発させて、無色固体を得た。6.0gの無色固体を、シリカゲルのクロマトグラフィーに供した。塩化メチレン/メタノール(9:1→8.5:1.5)での溶出により、生成物を無色固体として得た(1.5g)。1H(DMSO、d6):8.1(br s、交換可能、1H)、6.95および6.75(q,4H)、4.6(m、交換可能、2H)、3.3(m,1H)、2.9(m,2H)、1.2(m,10H) ;13C(DMSO、d6):156.8、130.5、128.5、115.2、72.0、52.1、48.6、36.6、33.6、25.6、21.7、21.3。%純度(HPLC):97.4%。
【0103】
5.6. 実施例6:有効性および特異性の測定
本発明の化合物の有効性および特異性の測定のために有用な幾つかの方法が文献に開示されている。例えば、Haskins, J.T.ら、Euro. J. Pharmacol. 115:139-146 (1985)参照。特に有用であることがわかった方法は、Muth, E.A.ら、Biochem. Pharmacol. 35:4493-4497 (1986)およびMuth, E.A.ら、Drug. Develop. Res. 23:191-199 (1991)により開示されており、その両方が、参照することによって、本明細書に組入れられる。
【0104】
5.6.1 受容体結合
本発明の化合物の受容体結合の測定は好ましくは、Muthらにより開示された方法により、以下の表1にまとめたプロトコールを用いて行われる。
【表1】

【0105】
使用した組織ホモジネートは好ましくは、小脳(ヒスタミン-1およびアヘン剤結合)、皮質(α1アドレナリン受容体結合、モノアミン摂取)および線条(ドーパミン-2およびムスカリンコリン受容体結合)を除く全脳である。
【0106】
5.6.2 シナプトソーム摂取研究
これらの研究は、Muthら、Biochem. Pharmacol. 35:4493-4497 (1986)に記載されたような、Wood, M.D.,およびWyllie, M.G., J. Neurochem. 37:795-797 (1981)の修正した方法を用いて行うことができる。簡単には、垂直ローターを用いてショ糖密度勾配遠心分離により、新鮮なラット脳組織からP2ペレットを調製する。摂取研究のために、すべての成分を以下のバッファーに溶解し:135mMのNaCl、5mMのKCl、1.2mMのMgCl2、2.5mMのCaCl2、10mMのグルコース、1mMのアスコルビン酸、20mMのTris、pH7.4 、使用前に30分間O2を供給した。種々の濃度の試験薬を、0.1μMの[3H]ドーパミンまたは0.1μMの[3H] ノルエピネフリン(130,000 dpm/チューブ)および0.1μMの[14C]セロトニン(7,500 dpm/チューブ)と共に、0.9mlバッファー中で37℃にて5分間予備インキュベートする。0.1ミリリットルのシナプトソーム調製物を各チューブに加え、さらに4分間37℃にてインキュベートする。次に、2.5mlのバッファーを添加することによって反応を終わらせ、その後、酢酸セルロースフィルター(ポアサイズ0.45μM)を用いて、混合物を減圧ろ過した。次に、フィルターをシンチレーションカウンターで計数し、結果を、ピコモル摂取量/mgタンパク質/分で表す。logit[Na+依存性摂取%]対long[試験薬の濃度]の線形回帰によって、摂取阻害のためのIC50値を計算する。
【0107】
5.6.3 レセルピン誘発低体温症の逆転
オスCF-1マウス(20-25g、Charles River)におけるレセルピン誘発低体温症の逆転は、Askew, B. Life Sci. 1:725-730 (1963)の方法の適用に従って行うことができる。試験化合物を、水中0.25%Tween 80(登録商標)に懸濁もしくは溶解した後、複数の投与量レベルで、オスマウスに腹腔内投与し(8/投与量レベル)、マウスは、18時間前に45.0mg/kgのレセルピンを皮下に処置しておいた。ビヒクル対照群は、薬剤群と同時進行させる。試験化合物、ビヒクルおよびレセルピンを、0.01ml/gの容量で投与する。レセルピンは、少量(約4滴)の濃酢酸の添加により可溶化され、次いで、蒸留水の添加により適当な容量にされる。深さ2cmで、Yellow Springs Instruments サーミスタープローブによって、直腸温度を記録する。レセルピン前処理後18時間および、試験化合物またはビヒクルの投与後3時間は1時間ごとの間隔で測定を行う。
【0108】
すべての時間中の直腸温度は、その後の対照値に対するダンネットの比較(Dunnett's comparison)を用い、繰り返し測定についての変動のための2通りの分析に供せられて、レセルピン誘発低体温症に拮抗するための最小有効投与量(MED)が決定される。
【0109】
5.6.4 ラット松果体のノルアドレナリンサブセンシティビティ(subsensitivity)の誘発
適当なラットは、オスSprague-Dawleyラット(250-300g、Charles River)であり、これらは、松果体のベータ-アドレナリン受容体密度における1日の変動を和らげるように、かつ、ノルアドレナリン作用薬に対する一貫した超高感度の応答を維持するように、すべての実験中連続光中に維持されなければならない。Moyer, J.A.ら、Soc. Neurosci. Abstract 10:261 (1984)。連続光に曝して2日後、ラットに、5日間毎日2回塩水または試験化合物(10mg/kg、腹腔内)を注射する(全部で9回の注射)。別のラット群は、4日間毎日2回塩水注射、その後、第5日目に試験化合物(10mg/kg、腹腔内)の1回の注射を受けなければならない。試験化合物または塩水の最後の注射の1時間後に、動物は、0.1%アスコルビン酸(対照)またはイソプロテレノール(0.1%アスコルビン酸中の2μモル/kg、腹腔内)を投与される。2.5分後にラットを断頭する。予備的実験において、この時間は、松果体におけるサイクリックAMPレベルのイソプロテレノールに誘発される増加が最大であることを示していた。Moyer, J.A.ら、Mol. Pharmacol. 19:187-193 (1981)。松果体を除去し、30秒以内にドライアイス上で凍結して、cAMP濃度の断頭術後の増加を最小にする。
【0110】
cAMPについてのラジオイムノアッセイの前に、松果体を、1mlの氷冷した2.5%過塩素酸中に入れ、約15秒間超音波処理する。次に、超音波処理物を4℃にて49,000gで15分間遠心分離した後、得られた上清を除去し、過剰のCaCO3で中和し、そして4℃にて12,000gで10分間遠心分離する。中和した抽出物のcAMP含量は、125I標識抗原および抗血清(New England Nuclear Corp., Boston, MA)を用いた標準のラジオイムノアッセイによって測定することができる。Steiner, A.L.ら、J. Biol. Chem. 247:1106-1113 (1972)。すべての未知のサンプルは、二回アッセイし、CaCO3で中和した2.5%過塩素酸溶液中で調製したcAMPの標準溶液と比較しなければならない。結果は、ピコモルcAMP/松果体として表し、統計分析は、その後のStudent-Newman-Keuls試験を用いた変動の分析によって行われる。
【0111】
5.6.5 単回(single unit)の電気生理学
クロラール水和物で麻酔したラットにおける青斑(LC) または背面の縫線核(DR) の個々のニューロンの発火頻度(firing rate)は、LCについて先に記載されたようにして、1軸(barrel)のガラスミクロ電極を用いて測定される。Haskins, J.T.ら、Eur. J. Pharmacol. 115:139-146 (1985)。Konig, J.F.R.およびKlippel, R.A. ラット脳:前脳部および脳幹の下方部分の定位アトラス(The rat brain: A stereotaxic atlas of the forebrain and lower parts of the brain stem)、Baltimore: Williams and Wilkins (1963)の方向性定位(stereotaxic orientation)を用いると、電極チップは、青斑より1.00mm上の点から油圧マイクロドライブ(hydraulic microdrive)によって下げなければならない(AP 耳介間線(interaural line)に対して2.00mm尾側および正中線に対して1.03mm側部)。薬剤は、側部尾静脈カニューレによって静脈内投与される。残留薬剤の影響を避けるために、各ラットにおいて1つの細胞だけが研究されなければならない。
【0112】
5.7 実施例7:経口処方
本発明の医薬組成物は、種々の方法で投与することができる。経口処方物は、投与が最も容易である。
【0113】
5.7.1 硬質ゼラチンカプセル投与形態
表IIは、本発明の薬剤組成物の適当なカプセル形態の成分を提供する。
【表2】

【0114】
活性成分(光学的に純粋な(-)-ベンラファキシン誘導体)をふるいにかけ、列挙した賦形剤とブレンドする。混合物を、当技術分野で公知の適当な機械および方法を用いて、適当な大きさの2ピース(two-piece)硬質ゼラチンカプセルに充填する。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版または18版参照。それぞれ、参照により、その全部が本明細書に組入れられる。充填重量を変えることによって、必要ならば、適合させるカプセルの大きさを変えることによって、他の投与量を調製できる。上記の安定な硬質ゼラチンカプセル処方物のいずれのものをも形成することができる。
【0115】
5.7.2 圧縮錠剤投与形態
本発明の医薬組成物の圧縮錠剤形態の成分を表IIIに提供する。
【表3】

【0116】
適当なふるいによって活性成分をふるい、均質なブレンドが形成されるまで、賦形剤とブレンドする。乾燥ブレンドをふるいにかけ、ステアリン酸マグネシウムとブレンドする。次に、得られた粉末ブレンドを圧縮して、所望の形および大きさの錠剤にする。活性成分対賦形剤の比を変えることによって、または錠剤重量を変更することによって、他の強度の錠剤を調製することができる。
【0117】
本発明を特定の実施形態に関して記載してきたが、特許請求の範囲に規定された本発明の意図および範囲からはずれることなく種々の変更および修正を行うことができることが、当業者に明らかである。そのような修正はまた、添付の特許請求の範囲内にあると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩と、製薬上許容し得る担体または賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
(-)-ベンラファキシン誘導体が、(-)-O-デスメチルベンラファキシン、(-)-N-デスメチルベンラファキシン、(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシンおよび(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンからなる群より選択されるものである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
(-)-ベンラファキシン誘導体が、(-)-O-デスメチルベンラファキシンまたは(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシンである、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
静脈内注入、経皮送達、または経口送達に適合した、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩の量が、ラセミ体ベンラファキシン誘導体の総重量の約90重量%を超える量を占める、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
(-)-ベンラファキシン誘導体が、その塩酸塩を含んでなる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記製薬上許容し得る賦形剤が、ラクトース、クロスカルメロースナトリウム、微晶質セルロース、前糊化デンプン、およびステアリン酸マグネシウムを含んでなる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
実質的に全ての単糖類または二糖類を含まない、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
ラクトースを含まない、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
(-)-ベンラファキシン誘導体が(-)-O-デスメチルベンラファキシンであり、賦形剤がラクトースを含んでなるものである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
賦形剤が、微晶質セルロース、前糊化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、およびクロスカルメロースナトリウムをさらに含んでなる、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩と、製薬上許容し得る担体または賦形剤とを含んでなる医薬剤形。
【請求項13】
錠剤またはカプセル剤である、請求項12記載の剤形。
【請求項14】
静脈内注入、経皮送達、または経口送達に適合した、請求項12記載の剤形。
【請求項15】
治療上有効な量が約10mg〜約1000mgである、請求項14記載の剤形。
【請求項16】
治療上有効な量が約50mg〜約500mgである、請求項15記載の剤形。
【請求項17】
治療上有効な量が約75mg〜約350mgである、請求項16記載の剤形。
【請求項18】
(-)-N-デスメチルベンラファキシンの製造方法であって、式5:
【化1】

の化合物と還元剤とを、(±)-N-デスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-N-デスメチルベンラファキシンを単離することを含んでなる前記方法。
【請求項19】
還元剤がBH3・Me2Sである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンの製造方法であって、式2:
【化2】

の化合物と還元剤とを、(±)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンを単離することを含んでなる前記方法。
【請求項21】
還元剤がCoCl2/NaBH4である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(-)-O-デスメチルベンラファキシンの製造方法であって、(±)-ベンラファキシンとリチウムジフェニルホスフィドとを、(±)-O-デスメチルベンラファキシンを形成するのに十分な時間および温度にて接触させ、(-)-O-デスメチルベンラファキシンを単離することを含んでなる前記方法。
【請求項23】
実質的に純粋な(-)-O-デスメチルベンラファキシン、並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体。
【請求項24】
実質的に純粋な(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン、並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体。
【請求項25】
(-)-N-デスメチルベンラファキシン、並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体。
【請求項26】
(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシン、並びにその製薬上許容し得る塩、溶媒和物および包接体。
【請求項27】
ヒトの情動障害を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項28】
(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩の量が、情動障害を緩和するのには十分であるが、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用を引き起こすには至らない量である、請求項27記載のヒトの情動障害を治療する方法。
【請求項29】
情動障害が、鬱病、注意欠陥障害、および過活動を伴う注意欠陥障害からなる群より選択されるものである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
ヒトの肥満または体重増加を治療する方法であって、体重の減少または維持を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなり、該量は、肥満または体重増加を緩和するのに十分な量である、前記方法。
【請求項31】
前記量が、肥満または体重増加を緩和するのには十分であるが、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用を引き起こすには至らない量である、請求項30記載のヒトの肥満または体重増加を治療する方法。
【請求項32】
ヒトのニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなり、該量は、前記障害を緩和するのに十分な量である、前記方法。
【請求項33】
前記量が、前記障害を緩和するのには十分であるが、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用を引き起こすには至らない量である、請求項32記載のヒトのニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法。
【請求項34】
前記モノアミンがドーパミンである、請求項33記載のヒトのニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法。
【請求項35】
前記障害がパーキンソン病またはてんかんである、請求項33記載のヒトのニューロンへのモノアミンの再取込みを抑制することで改善される障害を治療する方法。
【請求項36】
ヒトの脳の機能障害を治療する方法であって、ヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなり、該量は、脳の機能障害を緩和するのに十分な量である、前記方法。
【請求項37】
(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩の量が、脳の機能障害を緩和するのには十分であるが、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用を引き起こすには至らない量である、請求項36記載のヒトの脳の機能障害を治療する方法。
【請求項38】
前記障害が、脳血管疾患によって引き起こされるものである、請求項36記載のヒトの脳の機能障害を治療する方法。
【請求項39】
前記脳血管疾患が、脳梗塞、脳内出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、および頭部損傷からなる群より選択されるものである、請求項38記載のヒトの脳の機能障害を治療する方法。
【請求項40】
前記脳の機能障害が、老年性痴呆症、アルツハイマー型痴呆症、記憶喪失、および健忘症/健忘症候群からなる群より選択されるものである、請求項38記載のヒトの脳の機能障害を治療する方法。
【請求項41】
ヒトの疼痛を治療する方法であって、ヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなり、該量は、疼痛を緩和するのに十分な量である、前記方法。
【請求項42】
(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩の量が、疼痛を緩和するのには十分であるが、ラセミ体ベンラファキシンの投与に付随する有害作用を引き起こすには至らない量である、請求項41記載のヒトの疼痛を治療する方法。
【請求項43】
疼痛が慢性の疼痛である、請求項41記載のヒトの疼痛を治療する方法。
【請求項44】
ヒトの強迫性障害を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項45】
ヒトの物質乱用を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項46】
ヒトの月経前症候群を治療または予防する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項47】
ヒトの不安を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項48】
ヒトの摂食障害を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項49】
ヒトの片頭痛を治療または予防する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項50】
ヒトの失禁を治療または予防する方法であって、このような治療を必要とするヒトへ、(+)立体異性体を実質的に含まない治療上有効な量の(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を投与することを含んでなる前記方法。
【請求項51】
前記失禁が、便失禁、溢流失禁、受動失禁、反射性失禁、腹圧性尿失禁、切迫失禁、運動性尿失禁、および尿失禁からなる群より選択されるものである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
(-)-ベンラファキシン誘導体が、(-)-O-デスメチルベンラファキシン、(-)-N-デスメチルベンラファキシン、(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシン、および(-)-N,N-ジデスメチルベンラファキシンからなる群より選択されるものである、請求項27記載の方法。
【請求項53】
(-)-ベンラファキシン誘導体が、(-)-O-デスメチルベンラファキシンまたは(-)-N,O-ジデスメチルベンラファキシンである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
(-)-ベンラファキシン誘導体を、静脈内注入もしくは経皮送達によって投与するか、または錠剤もしくはカプセル剤として経口投与する、請求項27記載の方法。
【請求項55】
投与量が1日当たり約10mg〜約1000mgである、請求項27記載の方法。
【請求項56】
投与量が1日当たり約50mg〜約500mgである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
投与量が1日当たり約75mg〜約350mgである、請求項56記載の方法。
【請求項58】
(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩の量が、ラセミ体ベンラファキシン誘導体の総重量の約90重量%を超える、請求項27記載の方法。
【請求項59】
(+)立体異性体を実質的に含まない(-)-ベンラファキシン誘導体またはその製薬上許容し得る塩を、製薬上許容し得る担体と共に投与する、請求項27記載の方法。
【請求項60】
(-)-ベンラファキシン誘導体を塩酸塩として投与する、請求項27記載の方法。

【公開番号】特開2011−93924(P2011−93924A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1270(P2011−1270)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2000−585198(P2000−585198)の分割
【原出願日】平成11年12月1日(1999.12.1)
【出願人】(500293320)サノヴィオン ファーマシュティカルズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】