説明

(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー

【課題】融点が比較的低く、かつ種々の溶媒に対する溶解性に優れた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを提供する。
【解決手段】式(1):
【化1】


(式中、R〜RおよびR〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。nは、3〜12の整数を示す。R11〜R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、n個のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n個のR12は、同一であっても異なっていてもよい。但し、チオフェン環に結合するn個のR11およびn個のR12のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物である(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料および発光材料、並びに、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子用電荷輸送材料、有機薄膜トランジスタ材料およびレーザー発振用発光材料等として、導電性オリゴマーや導電性ポリマー等の有機電子材料が提案されている。
【0003】
これら有機電子材料は、豊富な機能を有するだけでなく、柔軟性・耐衝撃性に優れること、大面積に適応可能であること、製造コストが比較的安価であること等といった特徴を持ち合わせていることから非常に有望視され、例えば、有機半導体レーザー、有機LED、有機ELディスプレイ、有機薄膜太陽電池、フレキシブルシートディスプレイ、電子ペーパー、ICカード、情報タグ、バイオセンサ、アクチュエーター等への応用が検討されている。
【0004】
このような有機電子材料として、種々の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーが提案され、これらが有する種々の特性について報告されている(特許文献1、2および非特許文献1参照)。例えば、特許文献1および2には、特定の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーが発光材料やレーザー材料として有用であることが開示されている。また、非特許文献1には特定の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーについて、半導体材料としての特性が開示されている。
【特許文献1】特開2000−26451号公報
【特許文献2】特開2004−292497号公報
【非特許文献1】M.Yoon, A. Facchetti, C.E.Stern, and T.J.Marks, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 5792
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機電子材料の用途は今後もますます多様化し、それに対応するための多種多様な材料の出現が望まれているなかで、これまで提案されている(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、一般に、融点が比較的高く、また種々の溶媒に対する溶解性に劣るといった特性から、用途範囲が限定される懸念があった。例えば、5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンでは、融点が357℃と高く、有機溶媒に対する溶解度はテトラヒドロフランに対しても25℃で0.01wt%未満であり、その他溶媒にはほとんど溶解しない。これらの特性は、例えば、大画面表示パネルを製造する際の大きな障害であり、また、インクジェット等の種々の塗布法や印刷法を採用する際の適用容易性を妨げるものである。
【0006】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、融点が比較的低く、また種々の溶媒に対する溶解性に優れた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料および発光材料、並びに、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示すとおりの、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料および発光材料、並びに、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法に関する。
項1.式(1):
【化1】

(式中、R〜RおよびR〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。nは、3〜12の整数を示す。R11〜R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、n個のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n個のR12は、同一であっても異なっていてもよい。但し、チオフェン環に結合するn個のR11およびn個のR12のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー。
項2.項1に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料。
項3.項1に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む発光材料。
項4.式(2):
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。mは、0〜12の整数を示す。R13〜R14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、m個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、m個のR14は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。)で表される化合物と、式(3):
【化3】

(式中、R〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。mは、前記式(2)におけるmと同じ整数を示す。nは、3〜12の整数であって、(n−m)が0以上となる整数を示す。R15〜R16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、(n−m)個のR15は、同一であっても異なっていてもよく、(n−m)個のR16は、同一であっても異なっていてもよい。Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(4):
【化4】

(式中、R〜RおよびR13〜R14は、それぞれ、前記式(2)におけるR〜RおよびR13〜R14と同じ基を示し、mは、前記式(2)におけるmと同じ整数を示す。R〜R10およびR15〜R16は、それぞれ、前記式(3)におけるR〜R10およびR15〜R16と同じ基を示し、nは、前記式(3)におけるnと同じ整数を示す。但し、m個のR13、m個のR14、(n−m)個のR15および(n−m)個のR16のうちの少なくとも1個は炭素数1〜12のアルキル基である。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。
項5.
【化5】


(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。tは、0〜5の整数を示す。R17〜R18は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、t個のR17は、同一であっても異なっていてもよく、t個のR18は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。)で表される化合物と、式(6):
【化6】

(式中、tは、前記式(5)におけるtと同じ整数を示す。nは、3〜12の整数であって、(n−2t)が1以上となる整数を示す。R19〜R20は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、(n−2t)個のR19は、同一であっても異なっていてもよく、(n−2t)個のR20は、同一であっても異なっていてもよい。但し、(n−2t)個のチオフェン環鎖は左右非対称構造を有する。XおよびXは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(7):
【化7】

(式中、R〜RおよびR17〜R18は、それぞれ、前記式(5)におけるR〜RおよびR17〜R18と同じ基を示し、R19〜R20は、それぞれ、前記式(6)におけるR19〜R20と同じ基を示す。tは、前記式(5)におけるtと同じ整数を示し、nは、前記式(6)におけるnと同じ整数を示す。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。
項6.金属触媒が、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)である項4または5に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。
【0008】
なお、式(4)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、式(1)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーと同一化合物であり、式(7)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、式(1)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーのうち、R〜R10がR〜Rとそれぞれ同じ基である(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーと同一化合物である。
【0009】
本発明において、左右非対称構造とは、当該構造式において左右に伸びるチオフェン環の列を左右に二分する直線を対称軸とするものである。当該対称軸は、具体的には、チオフェン環の総数が偶数個である場合は、中央に位置し隣り合う2個のチオフェン環間に設けられる直線であり、チオフェン環の総数が奇数個である場合は、中央に位置する1個のチオフェン環内の中央部に設けられる直線であって、チオフェン環の列に対して垂直な直線である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、下記式(1)で表される化合物であって、かつ、左右非対称構造を有するものである。
【0012】
【化8】

式中、R〜RおよびR〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。nは、3〜12の整数を示す。R11〜R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、n個のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n個のR12は、同一であっても異なっていてもよい。但し、チオフェン環に結合するn個のR11およびn個のR12のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。
【0013】
〜RおよびR〜R10で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、sec−ヘキシル基、sec−オクチル基、sec−デシル基、sec−ドデシル基、t−ブチル基、t−ヘキシル基、t−オクチル基、t−デシル基およびt−ドデシル基等が挙げられる。
【0014】
〜RおよびR〜R10で示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、iso−プロポキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基およびt−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0015】
〜RおよびR〜R10で示される炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−へプタフルオロプロピル基、n−パーフルオロブチル基、n−パーフルオロペンチル基およびn−パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
11〜R12で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、sec−ヘキシル基、sec−オクチル基、sec−デシル基、sec−ドデシル基、t−ブチル基、t−ヘキシル基、t−オクチル基、t−デシル基およびt−ドデシル基等が挙げられる。
【0017】
式(1)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーのうち、製造が比較的容易であることから、同一のチオフェン環に結合するn対のR11およびR12は、それら全ての組み合わせにおいて少なくとも一方が水素原子であるかあるいは同じアルキル基である(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーが好適に用いられる。
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの具体例を以下に示す。
【0018】
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0019】
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、左右非対称構造を有することから、左右対称構造を有する類似の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーと比べて、融点が同程度であるかもしくは低く、また種々の溶媒に対する溶解性が同等かもしくは優れるという特性を有する。ここで、本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーが同等かもしくは優れた溶解性を示す溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトンおよびアセトニトリル等を挙げることができる。
【0020】
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、融点が比較的低く、種々の溶媒に対する溶解性に優れている特性を有し、高いキャリア注入・輸送機能を有し、また輝度が高い光を発することができることから、当該化合物単独で、あるいは任意の他の化合物と組み合わせることにより、適用範囲の広い有機半導体材料および発光材料として用いることができる。本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを用いることにより、各種の基板上に蒸着、スパッタリングおよび熱転写することが容易になり、インクジェット等の塗布法や印刷法への適用が容易になり、さらに各種の樹脂との混練が容易になるため、種々のデバイスを容易に製造することができる。
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、前記式(1)で表され、かつ、左右非対称構造を有するものであるが、式(1)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、下記式(4)としても表現することができる。式(4)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、例えば、下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物とを金属触媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0021】
【化17】

【化18】

【化19】

【0022】
式(4)中、R〜R10は、それぞれ、式(1)におけるR〜R10と同じ基を示す。また、nは、式(1)におけるnと同じ整数を示し、mは、0〜12の整数であって、(n−m)が0以上となる整数を示す。また、R14およびR15は式(1)におけるR11に、R13およびR16は、式(1)におけるR12に相当する。m個のR13、m個のR14、(n−m)個のR15、および、(n−m)個のR16は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。但し、m個のR13およびm個のR14が全て水素原子である場合は、チオフェン環に結合する(n−m)個のR15および(n−m)個のR16のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。また、(n−m)個のR15および(n−m)個のR16が全て水素原子である場合は、チオフェン環に結合するm個のR13およびm個のR14のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。
【0023】
式(2)中、R〜RおよびR13〜R14は、それぞれ、式(4)におけるR〜RおよびR13〜R14と同じ基を示す。mは、式(4)におけるmと同じ整数を示す。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。
【0024】
は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示し、その具体例としては、例えば、ボロン誘導体基、ハロゲン化金属基およびトリアルキルスズ基等が挙げられる。ボロン誘導体基としては、ボロン酸基、ジメチルボラン基、ジエチルボラン基、ジフェニルボラン基、ピナコリルボラン基、カテコールボラン基、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノニル基およびトリフルオロホウ素基等が挙げられる。ハロゲン化金属基としては、塩化マグネシウム基、臭化マグネシウム基、ヨウ化マグネシウム基、塩化亜鉛基、臭化亜鉛基およびヨウ化亜鉛基等が挙げられる。またトリアルキルスズ基としては、トリメチルスズ基、トリエチルスズ基およびトリブチルスズ基等が挙げられる。
【0025】
式(3)中、R〜R10およびR15〜R16は、それぞれ、式(4)におけるR〜R10およびR15〜R16と同じ基を示す。nおよびmは、式(4)におけるnおよびmと同じ整数を示す。Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0026】
式(2)および式(3)で表される化合物は、市販品を用いてもよいし、公知の方法およびそれに準拠した方法により適宜必要に応じて製造したものを使用してもよい。
【0027】
式(2)で表される化合物の製造方法としては、例えば、式(2)中におけるmが1であり、R〜RおよびR13〜R14が全て水素原子であり、Yがヨウ化マグネシウム基である2−(5−フェニルチエニル)マグネシウムヨージドは、2−フェニルチオフェンとN−ヨードコハク酸イミドとを反応させて2−ヨード−5−フェニルチオフェンを製造し、さらにマグネシウムを反応させる方法(特許文献1参照)等の公知の方法により製造することができる。また、式(2)中におけるmが1であり、R〜RおよびR13〜R14が全て水素原子であり、Yがピナコリルボラン基である2−(5−フェニルチエニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2ジオキサボランは、2−ブロモ−5−フェニルチオフェンにn−ブチルリチウムおよびホウ酸トリメチルを順次反応させ、さらにピナコールと反応させる方法(J.J.Apperloo, L.B.Groenendaal, H.Verheyen, M.Jayakannan, R.A.J.Jassen, A. Dkhissi, D. Beljonne, R.Lazzaroni, and J.L.Bredas, Chem. Eur. J. 2002, 8, 2384)等の公知の方法により製造することができる。さらに、式(2)中におけるmが0であり、R〜Rが全てフッ素原子であり、Yが臭化マグネシウム基であるペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドは、ブロモペンタフルオロベンゼンとマグネシウムとを反応させる方法(Org. Synth., Coll. Vol.6, p.875 (1988); Vol. 59, p.122 (1979))等の公知の方法により製造することができる。また、下記式(8)で表されるように、式(2)中におけるmが4であり、4個のチオフェン環のうち、Yと結合するチオフェン環に結合するR14、およびベンゼン環と結合するチオフェン環に結合するR13が共にn−ヘキシル基であり、チオフェン環に結合するその他の3個のR13および3個のR14並びにR〜Rが全て水素原子であり、Yがトリブチルスズ基である5−トリブチルスタニル−5'''−フェニル−3,3'''−ジヘキシル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンは、5−ブロモ−3,3'''−ジヘキシル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンとフェニルボロン酸とを反応させて5−フェニル−3,3'''−ジヘキシル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンを製造し、さらにn−ブチルリチウムおよび塩化トリブチルスズを順次反応させる方法(N.Negishi, Y.Ie, M.Taniguchi, T.Kawai, H.Tada, T.Kandeda, and Y.Aso, Org. Lett., 2007, 9, 829)等の公知の方法により製造することができる。
【化20】

【0028】
式(3)で表される化合物の製造方法としては、例えば、式(3)中における(n−m)が1であり、R〜R10およびR15〜R16が全て水素原子であり、Xが臭素原子である2−ブロモ−5−フェニルチオフェンは、2−フェニルチオフェンとN−ブロモコハク酸イミドとを反応させる方法(特許文献1参照)等の公知の方法により製造することができる。また、式(3)中における(n−m)が2であり、2個のR15および2個のR16並びにR〜R10が全て水素原子であり、Xが臭素原子である5−ブロモ−5'−フェニル−2,2'−ビチオフェンは、2,2'−ビチオフェンとN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて5−ブロモ−2,2'−ビチオフェンを製造し、これにフェニルボロン酸を反応させて5−フェニル−2,2'−ビチオフェンとし、さらにN−ブロモコハク酸イミドを反応させる方法(S.Hotta, T.Katagiri, Heterocyclic Chem., 2003,40,845)等の公知の方法により製造することができる。さらに、下記式(9)で表されるように、式(3)中における(n−m)が3であり、3個のチオフェン環のうち、中央のチオフェン環に結合するR15およびR16が共にn−ブチル基であり、両側のチオフェン環に結合するその他の2個のR15および2個のR16並びにR〜R10が全て水素原子であり、Xが臭素原子である5−ブロモ−3',4'−ジブチル−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェンは、3',4'−ジブチル−5−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェンとN−ブロモコハク酸イミドとを反応させる方法(M.J.Coster, J.J.De Voss, Org. Lett., 2002,4,3043)等の公知の方法により製造することができる。
【化21】

【0029】
前記式(2)で表される化合物と前記式(3)で表される化合物とを金属触媒の存在下で反応させる、前記式(4)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法において、式(2)で表される化合物の使用割合は、特に限定されないが、式(3)で表される化合物1モルに対して、0.5〜10モルの割合であることが好ましく、0.8〜2モルの割合であることがより好ましい。式(2)で表される化合物の使用割合が0.5モル未満の場合は、収率が低下するおそれがある。また、式(2)で表される化合物の使用割合が10モルを超える場合は、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0030】
前記金属触媒としては、特に限定されず、例えば、パラジウム触媒およびニッケル触媒等が挙げられる。パラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリブチルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、パラジウム(0)カーボン、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ジアセトビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジアセト[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジアセト[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジアセト[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジアセト[1,1’−ジフェニルホスフィノ]フェロセン]パラジウム(II)等が挙げられる。
【0031】
またニッケル触媒としては、例えば、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル(II)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジブロモ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)、ジブロモ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル(II)、ジブロモ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、ジブロモ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等が挙げられる。
【0032】
これらの金属触媒の中でも、反応性が高い観点から、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)およびジブロモ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)が好適に用いられる。
【0033】
金属触媒の使用割合は、特に限定されないが、式(3)で表される化合物1モルに対して、0.001〜0.5モルの割合であることが好ましく、0.01〜0.15モルの割合であることがより好ましい。金属触媒の使用割合が0.001モル未満の場合は、反応が完結しにくくなるおそれがある。また、金属触媒の使用割合が0.5モルを超える場合は、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0034】
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応に用いられる反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。中でも、ヘキサン、トリクロロベンゼン、テトラヒドロフランおよびシクロペンチルメチルエーテルが好適に用いられる。
【0035】
前記反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(3)で表される化合物100重量部に対して、20〜20000重量部であることが好ましく、100〜10000重量部であることがより好ましい。反応溶媒の使用量が20重量部未満の場合は、反応生成物が析出して撹拌が困難となるおそれがある。また、反応溶媒の使用量が20000重量部を超える場合は、使用量に見合う効果がなく容積効率が悪化し経済的でない。
【0036】
反応温度は、通常、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜150℃であり、より好ましくは−10〜120℃である。反応温度が−80℃未満の場合は、反応に長時間を要するおそれがある。また、反応温度が200℃を超える場合は、副生成物が増加するおそれがある。また、反応時間は、反応温度により異なるが、通常0.5〜50時間である。
【0037】
かくして得られる(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、反応液を濃縮し固体を析出させる方法や反応液を冷却して固体を析出させた後にろ過する方法等により容易に単離することができる。
【0038】
本発明に係る(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、前記式(1)で表され、かつ、左右非対称構造を有するものであるが、式(1)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーのうち、R〜R10がR〜Rとそれぞれ同じ基である(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーはまた、下記式(7)としても表現することができる。式(7)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、例えば、下記式(5)で表される化合物と下記式(6)で表される化合物とを金属触媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【化22】

【化23】

【化24】

【0039】
式(7)中、R〜Rは、それぞれ、式(1)におけるR〜Rと同じ基を示す。また、nは、式(1)におけるnと同じ整数を示し、tは、0〜5の整数であって、(n−2t)が1以上となる整数を示す。また、R17およびR18は、式(1)におけるR11またはR12に相当し、R19およびR20は、それぞれ、式(1)におけるR11およびR12に相当する。2t個のR17、2t個のR18、(n−2t)個のR19、および、(n−2t)個のR20は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。但し、(n−2t)個のチオフェン環鎖は左右非対称構造を有する。
【0040】
式(5)中、R〜RおよびR17〜R18は、それぞれ、式(7)におけるR〜RおよびR17〜R18と同じ基を示す。tは、式(7)におけるtと同じ整数を示す。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。
【0041】
で示される、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基の具体例としては、前記式(2)においてYで示される、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基の具体例と同じ基を挙げることができる。
【0042】
式(6)中、R19〜R20は、それぞれ、式(7)におけるR19〜R20と同じ基を示す。nおよびtは、式(7)におけるnおよびtと同じ整数を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0043】
式(5)および式(6)で表される化合物は、市販品を用いてもよいし、公知の方法およびそれに準拠した方法により適宜必要に応じて製造したものを使用してもよい。
【0044】
式(5)で表される化合物の製造方法としては、前記式(2)で表される化合物の製造方法と同様の方法を挙げることができる。
【0045】
式(6)で表される化合物の製造方法としては、例えば、式(6)中における(n−2t)が2であり、隣り合うもう一方のチオフェン環側に位置する1個のR19がメチル基であり、もう1個のR19および2個のR20が全て水素原子であり、XおよびXが共に臭素原子である5,5’−ジブロモ−3−メチル−2,2’−ビチオフェンは、2−ブロモ−3−メチルチオフェンと2−チエニルマグネシウムブロミドとを反応させて3−メチル−2,2’−ビチオフェンを製造し(A.Burkhardt, A.Nkansah, R.Shabana, A.Galal, Phosphorus, Sulfur Silicon Relat. Elem., 1989, 42, 63)、これとN−ブロモスクシンイミドとをさらに反応させる方法等の公知の方法により製造することができる。また、式(6)中における(n−2t)が3であり、3個のチオフェン環のうち、中央のチオフェン環に結合する1個のR19がn−ドデシル基であり、3個のR20および両側のチオフェン環に結合するその他の2個のR19が全て水素原子であり、XおよびXが共に臭素原子である5,5''−ジブロモ−3'−ドデシル−2,2':5',2''−テルチオフェンは、3−ドデシルチオフェンとN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて2,5−ジブロモ−3−ドデシルチオフェンを製造し、これに2−チエニルマグネシウムブロミドを反応させて3'−ドデシル−2,2':5',2''−テルチオフェンとし、さらにN−ブロモコハク酸イミドを反応させる方法(P.Baeuerle, F.Pfau, H.Schlupp, F.Wuerthner, K.Gaudi, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2, 1993, 3, 489)等の公知の方法により製造することができる。また、下記式(10)で表されるように、式(6)中における(n−2t)が5であり、5個のチオフェン環のうち、中央のチオフェン環に結合する1個のR19がn−ヘキシル基であり、5個のR20およびその他の両側のチオフェン環に結合する4個のR19が全て水素原子であり、XおよびXが共に臭素原子である5,5''''−ジブロモ−3''−ヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンは、5−ブロモ−2,2'−ビチオフェンとマグネシウムとを反応させて5−(2,2'−ビチエニル)マグネシウムブロミドを製造し、これに2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェンを反応させて、3''−ヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンとし、さらにN−ブロモコハク酸イミドを反応させる方法(K.Y.Musick, Q.Hu, L.Pu, Macromolecules, 1998, 31, 2933)等の公知の方法により製造することができる。
【化25】

【0046】
前記式(5)で表される化合物と前記式(6)で表される化合物とを金属触媒の存在下で反応させる、前記式(7)で表される(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法において、式(5)で表される化合物の使用割合は、特に限定されないが、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.5〜20モルの割合であることが好ましく、1.6〜4モルの割合であることがより好ましい。式(5)で表される化合物の使用割合が0.5モル未満の場合は、収率が低下するおそれがある。また、式(5)で表される化合物の使用割合が20モルを超える場合は、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0047】
前記金属触媒としては、前記した、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応に用いられる金属触媒と同じものを挙げることができる。
【0048】
金属触媒の使用割合は、特に限定されないが、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.002〜1モルの割合であることが好ましく、0.02〜0.3モルの割合であることがより好ましい。金属触媒の使用割合が0.002モル未満の場合は、反応が完結しにくくなるおそれがある。また、金属触媒の使用割合が1モルを超える場合は、使用量に見合う効果がなく経済的でない。式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物との反応に用いられる反応溶媒としては、前記した、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応に用いられる反応溶媒と同じものを挙げることができる。
【0049】
前記反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(6)で表される化合物100重量部に対して、20〜20000重量部であることが好ましく、100〜10000重量部であることがより好ましい。反応溶媒の使用量が20重量部未満の場合は、反応生成物が析出して撹拌が困難となるおそれがある。また、反応溶媒の使用量が20000重量部を超える場合は、使用量に見合う効果がなく容積効率が悪化し経済的でない。
【0050】
反応温度は、通常、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜150℃であり、より好ましくは−10〜120℃である。反応温度が−80℃未満の場合は、反応に長時間を要するおそれがある。また、反応温度が200℃を超える場合は、副生成物が増加するおそれがある。また、反応時間は、反応温度により異なるが、通常0.5〜50時間である。
【0051】
かくして得られる(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、反応液を濃縮し固体を析出させる方法や反応液を冷却して固体を析出させた後にろ過する方法等により容易に単離することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によると、融点が比較的低く、また種々の溶媒に対する溶解性に優れた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料および発光材料、並びに、当該(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例
に限定されるものではない。
【0054】
製造例1(5−ブロモ−3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン)
【0055】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに、下記式(11)で表される5−ブロモ−3−ヘキシル−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェン9.8g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル100mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で下記式(12)で表される3−ヘキシル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液48ml(24mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化26】

【化27】

【0056】
次に、5%塩酸50mlを添加して30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水50mlを加え、さらに30分撹拌した後に分液し、得られた有機層を濃縮して固体を析出させた。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(13)で表される橙色結晶の3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン9.6g(17mmol)を得た。得られた3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンの5−ブロモ−3−ヘキシル−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェンに対する収率は83%であった。
【化28】

【0057】
次に、得られた3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン6.5g(10mmol)およびジメチルホルムアミド50mLを、撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下でN−ブロモスクシンイミド1.8g(10mmol)を少量ずつ分割して加えた。2時間撹拌した後、n−ヘプタン50mlと水50mlを加えてさらに30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(14)で表される、橙色結晶の5−ブロモ−3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン5.9g(9mmol)を得た。3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンに対する収率は90%であった。
【化29】

【0058】
製造例2(5−ブロモ−3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェン)
【0059】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに、下記式(15)で表される5−ブロモ−2−(4−メトキシフェニル)チオフェン5.4g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル40mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(16)で表される3−ブチル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液48ml(24mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化30】

【化31】

【0060】
次に、2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加え、さらに30分撹拌した後に分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(17)で表される、黄色結晶の3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェン4.7g(14mmol)を得た。5−ブロモ−2−(4−メトキシフェニル)チオフェンに対する収率は72%であった。
【化32】

【0061】
次に、得られた3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェン3.9g(12mmol)およびジメチルホルムアミド50mLを、撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下でN−ブロモスクシンイミド2.5g(14mmol)を少量ずつ分割して加えた。2時間撹拌した後、n−ヘプタン80mlと水50mlを加えてさらに30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、メタノールで再結晶することにより、下記式(18)で表される、黄色結晶の5−ブロモ−3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェン4.0g(10mmol)を得た。3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェンに対する収率は82%であった。
【化33】

【0062】
製造例3(5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの合成)
【0063】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに、下記式(19)で表される5,5''−ジブロモ−3'−ヘキシル−2,2':5',2''−テルチオフェン9.8g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル80mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で下記式(12)で表される3−ヘキシル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液48ml(24mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化34】

【化35】

【0064】
次に、2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加え、さらに30分撹拌した後に分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(20)で表される、橙色結晶の3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン8.0g(12mmol)を得た。5,5''−ジブロモ−3'−ヘキシル−2,2':5',2''−テルチオフェンに対する収率は60%であった。
【化36】

【0065】
次に、得られた3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン8.0g(12mmol)およびジメチルホルムアミド50mLを、撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた300mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下でN−ブロモスクシンイミド4.3g(24mmol)を少量ずつ分割して加えた。2時間撹拌した後、n−ヘプタン100mlと水100mlを加えてさらに30分撹拌した後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(21)で表される、橙色結晶の5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン9.0g(11mmol)を得た。3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンに対する収率は91%であった。
【化37】

【0066】
実施例1(4',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン)
【0067】
製造例1で得られた5−ブロモ−3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン3.3g(5mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.14g(0.25mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル20mLを撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液12ml(6mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化38】

【0068】
次に、2.5%塩酸10mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(23)で表される、橙色結晶の4',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン3.0g(4mmol)を得た。得られた4',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの5−ブロモ−3,4'−ジヘキシル−5'''−フェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンに対する収率は82%であった。
【化39】

【0069】
得られた橙色結晶が、4',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0070】
融点:138℃
【0071】
H−NMR(400MHz, THF-d8):δ 0.91 (t, 6H), 1.33-1.36 (m, 8H), 1.43-1.48 (m, 4H), 1.69-1.74 (m, 4H), 2.84 (t, 4H), 7.08(s, 1H), 7.13 (d, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.21 (d, 1H), 7.23-7.28 (m, 4H), 7.34-7.40 (m, 6H), 7.62-7.66 (m, 4H)
【0072】
実施例2(3'−ブチル−5−(4−メトキシフェニル)−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェン)
【0073】
製造例2で得られた5−ブロモ−3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェン3.3g(5mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.14g(0.25mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル20mLを撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液12ml(6mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化40】

【0074】
次に、シクロペンチルメチルエーテル50mlおよび2.5%塩酸10mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(24)で表される、橙色結晶の3'−ブチル−5−(4−メトキシフェニル)−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェン2.0g(4mmol)を得た。得られた3'−ブチル−5−(4−メトキシフェニル)−5’’−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェンの5−ブロモ−3−ブチル−5'−(4−メトキシフェニル)−2,2'−ビチオフェンに対する収率は82%であった。
【化41】

【0075】
得られた橙色結晶が、3'−ブチル−5−(4−メトキシフェニル)−5''−フェニル−2,2':5',2''−テルチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0076】
融点:181℃
【0077】
H−NMR(400MHz, THF-d8):TM0.96 (t, 3H), 1.45 (sextet, 2H), 1.69 (quintet, 2H), 2.82 (t, 2H), 3.80 (s, 3H), 6.93 (d, 2H), 7.11 (d, 1H), 7.15 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.23-7.27 (m, 2H), 7.33-7.39 (m, 3H), 7.56 (d, 2H), 7.63 (d, 2H)
【0078】
実施例3(3’−ヘキシル−5,5’’−ジフェニル−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)
【0079】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに、下記式(25)で表される2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン6.6g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル100mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液40ml(20mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化42】

【化43】

【0080】
次に、反応液に5%塩酸50mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水50mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮して固体を析出させた。メタノールを用いて再結晶させた後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(26)で表される、黄色結晶の3’−ヘキシル−5,5’’−ジフェニル−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン9.2g(19mmol)を得た。得られた3’−ヘキシル−5,5’’−ジフェニル−2,2’:5’,2’’−テルチオフェンの2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェンに対する収率は95%であった。
【化44】

【0081】
得られた黄色結晶が、3’−ヘキシル−5,5’’−ジフェニル−2,2’:5’,2’’−テルチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0082】
融点:124℃
【0083】
H−NMR(400MHz, CDCl2):TM0.91 (t, 3H), 1.32-1.38 (m, 4H), 1.41-1.48 (m, 2H), 1.71 (quintet, 2H), 2.81 (t, 2H), 7.10 (s, 1H), 7.14 (d, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.28 (d, 1H), 7.28-7.32 (m, 2H), 7.32 (d, 1H), 7.38-7.43 (m, 4H), 7.61-7.66 (m, 4H)
【0084】
実施例4(4'−ヘキシル−5,5'''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン)
【0085】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた2000mL容の四つ口フラスコに、下記式(27)で表される5,5'−ジブロモ−3−ヘキシル−2,2'−ビチオフェン8.2g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル100mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液40ml(20mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化45】

【化46】

【0086】
次に、反応液にシクロペンチルメチルエーテルを1000mlおよび2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水100mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を5℃に冷却して固体を析出させた後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(28)で表される、橙色結晶の4'−ヘキシル−5,5'''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェン9.1g(16mmol)を得た。得られた4'−ヘキシル−5,5'''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンの5,5'−ジブロモ−3−ヘキシル−2,2'−ビチオフェンに対する収率は90%であった。
【化47】

【0087】
得られた橙色結晶が、4'−ヘキシル−5,5'''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2'''−クアテルチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0088】
融点:150℃
【0089】
H−NMR(400MHz, THF-d8TM0.91 (t, 3H), 1.33-1.38 (m, 4H), 1.41-1.48 (m, 2H), 1.70 (m, 2H), 2.82 (t, 2H), 7.13 (d, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.22 (d, 1H), 7.24-7.28 (m, 4H), 7.34-7.39 (m, 6H), 7.62-7.66 (m, 4H)
【0090】
実施例5(3''−ヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン)
【0091】
撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた2000mL容の四つ口フラスコに、下記式(29)で表される5,5''−ジブロモ−3'−ヘキシル−2,2':5',2''−テルチオフェン9.8g(20mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.54g(1mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル100mLを仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液40ml(20mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化48】

【化49】

【0092】
次に、反応液にシクロペンチルメチルエーテル1000mlおよび2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水100mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を5℃に冷却して固体を析出させた後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(30)で表される、橙色結晶の3''−ヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン11.4g(18mmol)を得た。得られた3''−ヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの5,5''−ジブロモ−3'−ヘキシル−2,2':5',2''−テルチオフェンに対する収率は90%であった。
【化50】

【0093】
得られた橙色結晶が、3''−ヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0094】
融点:196℃
【0095】
H−NMR(400MHz, THF-d8TM0.91 (t, 3H), 1.34-1.49 (m, 6H), 1.68-1.71 (m, 2H), 2.82 (t, 2H), 7.13 (d, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.22-7.24 (m, 5H), 7.34-7.39 (m, 6H), 7.63-7.66 (m,4H)
【0096】
実施例6(3,3'',3''''−トリヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン)
【0097】
製造例3で得られた5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン4.1g(5mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.14g(0.25mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル50mLを撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(31)で表されるフェニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液30ml(15mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化51】

【0098】
次に、反応液に2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(32)で表される、橙色結晶の3,3'',3''''−トリヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン3.4g(4mmol)を得た。得られた3,3'',3''''−トリヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンに対する収率は83%であった。
【化52】

【0099】
得られた橙色結晶が、3,3'',3''''−トリヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0100】
融点:98℃
【0101】
H−NMR(400MHz, THF-d8TM0.91 (t, 9H), 1.33-1.39 (m, 12H), 1.41-1.49 (m, 6H), 1.68-1.76 (m, 6H), 2.81-2.85 (m, 6H), 7.11 (d, 1H), 7.16 (d, 3H), 7.21 (d, 1H), 7.24 (t, 2H), 7.31 (d, 2H), 7.35 (t, 4H), 7.62 (m, 4H)
【0102】
実施例7(4',3''',3'''''−トリヘキシル−5,5''''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2'''':5'''',2''''':5''''',2''''''−セプチチオフェン)
【0103】
製造例3で得られた5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン4.1g(5mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.14g(0.25mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル50mLを撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた1000mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(22)で表される5−フェニル−2−チエニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液20ml(10mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化53】

【0104】
次に、反応液にシクロペンチルメチルエーテル500mlを加えた後、さらに2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を5℃に冷却して固体を析出させた後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(33)で表される、赤褐色結晶の4',3''',3'''''−トリヘキシル−5,5''''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2'''':5'''',2''''':5''''',2''''''−セプチチオフェン4.3g(4mmol)を得た。得られた4',3''',3'''''−トリヘキシル−5,5''''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2'''':5'''',2''''':5''''',2''''''−セプチチオフェンの5,5''''−ジブロモ−3,3'',3''''−トリヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンに対する収率は88%であった。
【化54】

【0105】
得られた赤色結晶が、4',3''',3'''''−トリヘキシル−5,5''''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2'''':5'''',2''''':5''''',2''''''−セプチチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0106】
融点:191℃
【0107】
H−NMR(400MHz, THF-d8):TM0.91 (t, 9H), 1.33-1.39 (m, 12H), 1.41-1.49 (m, 6H), 1.68-1.76 (m, 6H), 2.81-2.85 (m, 6H), 7.12 (d, 1H), 7.16-7.17 (m, 5H), 7.21-7.23 (m, 3H) , 7.25 (t, 2H), 7.34 (d, 2H), 7.36 (t, 4H), 7.63 (d, 4H)
【0108】
比較例1(3'',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン)
【0109】
国際公開第2005/092947号パンフレットの記載に従って製造した下記式(34)で表される5,5''''−ジブロモ−3'',4''−ジヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン3.7g(5mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)0.14g(0.25mmol)およびシクロペンチルメチルエーテル50mLを撹拌機、温度計および冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに仕込み、室温、窒素雰囲気下で、下記式(31)で表されるフェニルマグネシウムブロミドの0.5Mシクロペンチルメチルエーテル溶液20ml(10mmol)を1時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。
【化55】

【化56】

【0110】
次に、反応液に2.5%塩酸100mlを添加して30分撹拌した。その後、分液して有機層を得て、これに水20mlを加えて30分撹拌した。これを分液し、得られた有機層を5℃に冷却して固体を析出させた後、濾別し、減圧乾燥することにより、下記式(35)で表される、橙色結晶の3'',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェン3.2g(4mmol)を得た。得られた3'',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの5,5''''−ジブロモ−3'',4''−ジヘキシル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンに対する収率は87%であった。
【化57】

【0111】
得られた橙色結晶が、3'',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンであることを下記の分析結果により確認した。
【0112】
融点:157℃
【0113】
H−NMR(400MHz, THF-d8):TM0.92 (t, 6H), 1.33-1.41 (m, 8H), 1.45-1.53 (m, 4H), 1.59-1.67 (m, 4H), 2.80 (t, 4H), 7.12 (d, 2H), 7.22-7.28 (m, 6H), 7.34-7.39 (m, 6H), 7.63-7.66 (m, 4H)
【0114】
評価
[融点および溶媒に対する溶解性]
【0115】
実施例1で得られた4',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンおよび比較例1で得られた3'',4''−ジヘキシル−5,5''''−ジフェニル−2,2':5',2'':5'',2''':5''',2''''−キンクエチオフェンの融点およびテトラヒドロフランに対する、25℃での溶解度を測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【表1】

【0116】
表1から、実施例1で得られた左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーと比較例1で得られた左右非対称構造を有さない(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーとは、それらの構造が非常に近似しているにもかかわらず、実施例1で得られた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、融点が低くテトラヒドロフランに対する溶解性に優れていることがわかる。
[発光特性]
【0117】
実施例1〜7で得られた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーについて、発光材料としての有用性を評価した。評価方法としては、実施例1〜7で得られた各結晶物の数片を試料管に入れて密栓し、試料管の外部から紫外光(365nm)を照射して、当該結晶物から発せられる蛍光の色調を目視で観察した。これらの結果を表2に示す。
【表2】

【0118】
表2から、実施例1〜7で得られた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、発光材料として有用であることがわかる。
[半導体特性]
【0119】
実施例3および4で得られた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーについて、キャリア移動度を測定した。測定に際し、抵抗値1Ω・cmのSiウエハーを用いて、厚さ300nmの熱酸化膜を形成したゲート絶縁層上にくし型Au電極(厚さ50nm、幅40μm、チャネル長10μm、チャネル幅8cm)を形成させ、さらに実施例3および4で得られた各(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーをそれぞれ蒸着、または有機溶媒に溶解後塗布させて得られた有機薄膜トランジスタを作成して測定用試料とし、各測定用試料についての10−3Paの真空下におけるI−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求めた。これらの結果を表3に示す。
【表3】

【0120】
表3から、実施例3および4で得られた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーは、有機半導体材料として有用であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R〜RおよびR〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。nは、3〜12の整数を示す。R11〜R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、n個のR11は、同一であっても異なっていてもよく、n個のR12は、同一であっても異なっていてもよい。但し、チオフェン環に結合するn個のR11およびn個のR12のうち少なくとも1個は、炭素数1〜12のアルキル基である。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー。
【請求項2】
請求項1に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む有機半導体材料。
【請求項3】
請求項1に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを含む発光材料。
【請求項4】
式(2):
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。mは、0〜12の整数を示す。R13〜R14は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、m個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、m個のR14は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。)で表される化合物と、式(3):
【化3】

(式中、R〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。mは、前記式(2)におけるmと同じ整数を示す。nは、3〜12の整数であって、(n−m)が0以上となる整数を示す。R15〜R16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、(n−m)個のR15は、同一であっても異なっていてもよく、(n−m)個のR16は、同一であっても異なっていてもよい。Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(4):
【化4】

(式中、R〜RおよびR13〜R14は、それぞれ、前記式(2)におけるR〜RおよびR13〜R14と同じ基を示し、mは、前記式(2)におけるmと同じ整数を示す。R〜R10およびR15〜R16は、それぞれ、前記式(3)におけるR〜R10およびR15〜R16と同じ基を示し、nは、前記式(3)におけるnと同じ整数を示す。但し、m個のR13、m個のR14、(n−m)個のR15および(n−m)個のR16のうちの少なくとも1個は炭素数1〜12のアルキル基である。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。
【請求項5】
【化5】


(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基または炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を示す。tは、0〜5の整数を示す。R17〜R18は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、t個のR17は、同一であっても異なっていてもよく、t個のR18は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子とクロスカップリング可能な置換基を示す。)で表される化合物と、式(6):
【化6】

(式中、tは、前記式(5)におけるtと同じ整数を示す。nは、3〜12の整数であって、(n−2t)が1以上となる整数を示す。R19〜R20は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を示し、(n−2t)個のR19は、同一であっても異なっていてもよく、(n−2t)個のR20は、同一であっても異なっていてもよい。但し、(n−2t)個のチオフェン環鎖は左右非対称構造を有する。XおよびXは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることを特徴とする、式(7):
【化7】

(式中、R〜RおよびR17〜R18は、それぞれ、前記式(5)におけるR〜RおよびR17〜R18と同じ基を示し、R19〜R20は、それぞれ、前記式(6)におけるR19〜R20と同じ基を示す。tは、前記式(5)におけるtと同じ整数を示し、nは、前記式(6)におけるnと同じ整数を示す。)で表され、かつ、左右非対称構造を有する(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。
【請求項6】
金属触媒が、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)である請求項4または5に記載の(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの製造方法。

【公開番号】特開2009−114074(P2009−114074A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285196(P2007−285196)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】