説明

(バイオ)−ポリカーボネートを得るための環状カーボネートの開環重合用有機系

【課題】カーボネートの重合用触媒としてスルホン酸を含む新規な有機触媒系と、この触媒系を用いた、エーテル単位を含まないバイオ−ポリカーボネートを得るための重合方法。
【解決手段】有機触媒系は開始剤と触媒としての式R'-SO3Hのスルホン酸とで形成される[R'は下記(1)または(2)を表す:(1)置換されていてもよいC1〜20直鎖アルキル基またはC3〜20アルキル基、(2)少なくとも一つの下記(a)〜(d)の基で置換されていてもよいアリール基:(a)C2〜20直鎖アルキル置換基またはC3〜20分岐鎖または環状アルキル基(上記アルキル置換基はハロゲン基またはニトロ基で置換されていてもよい)、(b)ハロゲン基、(c)ニトロ基または(d)CR1R2R3基(R1はハロゲン原子を表し、R2およびR3は独立して水素原子またはハロゲン原子)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状カーボネートの開環重合に関するものである。本発明の対象は特に、カーボネート重合用触媒としてのスルホン酸を有する新規なカチオン有機系と、脱カルボキシル化によって挿入されるエーテル単位を含まないバイオ−ポリカーボネートを得ることができる重合方法とにある。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートはホモポリマーまたは他の生分解性ポリエステルとのコポリマーの形をしたバイオ材料の重要なクラスである。制御された構造を有する生分解性ポリマーは放出制御医薬の封入したり、そのビヒクルとして使用される。生分解性インプラントは広く利用されており、特に、整形外科では従来取り除くことが必要であった金属部品、例えばピンの取出し手術を回避することができ、この手術中に金属部品を破壊する危険を無くすことができる。膝の軟骨修復用半月板ネジはトリメチレンカーボネートをネットワーク中に混和することで所望堅さの配合物にすることができる。さらに、生分解性インプラントはメラミン化学およびウレタン化学でコーティングおよびプラスチックの配合物に選択肢を与える役目もしている。
【0003】
アニオン配位挿入重合は主として金属錯体またはアルコキシドによって開始される。この重合では脱カルボキシル化現象は殆ど起きない。しかし、この重合法で使用した金属化合物が合成後のポリマー中に存在すると、合成したポリマーの安定性および/または性能に悪影響が及ぶ。さらに、金属塩がポリカーボネートの使用中にポリカーボネートの分解を触媒するということは周知であり、このポリマーを医療用途で用いるときに金属塩は望ましくない。
従って、最終反応媒体の精製段階を実行して残留金属の痕跡量を除去することが必要である。しかし、この重合後の処理段階は難しく、費用対効果が問題になることがある。
【0004】
一方、カチオン重合触媒にはポリカーボネートの脱カルボキシル化の問題がある。この脱カルボキシル化現象は、得られた材料の熱安定性および紫外線安定性を低下させるので望ましくない。
【0005】
金属触媒を含まない代替法も提案されていた。そうした方法では触媒の役目をする酸またはアルキル化剤を用いて、カーボネート官能基を活性化する。この機構を用いた時には反応媒体中で有機金属錯体を使用しなくてもよくなる。
【0006】
非特許文献1(J. Macromol. Sci., Chem., A 26(4), 631-44、1989)には、塩素化溶剤およびニトロベンゼン中で、25〜50℃でトリメチレンカーボネート(TMC)を重合する時の開始剤としてのメチルトリフレート(MeOTf)およびトリエチルオキソニウム テトラフルオロボレート(BF4-Et3O+)の使用が提案されている。しかし、移動反応では数平均分子量(Mn)は6000g/モルを超えることができず、カーボネート単位に対して5〜10%の量でエーテル単位が挿入される。
【0007】
非特許文献2(Macromolecules.30,737-744、1997)では上記と同じ触媒系をTMCで種々の温度および溶剤の条件下でテストし、エーテル結合の比率を最小にしている。しかし、その比率は依然として高く、6〜29%であり、最大Mnは2000〜13 000g/モル(ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定)で、多分散性指数は1.5〜3.1である。この著者はより温和なアルキル化剤、例えば沃化メチル(MeI)または臭化ベンジル(BnBr)の使用をさらに提案している。脱カルボキシル化は無くなるが、18〜96時間という非常に長い反応時間が必要であり、触媒の量は10〜20%と多く、温度はが100℃以上である。Mnは1000〜3700g/モルで、多分散性指数は1.5〜3である。
【0008】
非特許文献3(J.Pol.Sci.:Part A,36,2463-2471、1998)では、触媒としてトリフルオロ酢酸とアルコールまたは水タイプのプロトン性開始剤とから成る新規な触媒系が提案されている。0℃および50℃の温度でジクロロメタンおよびトルエンに対して脱カルボキシル化は無く、反応時間はそれぞれ30時間および24時間と長い。
【0009】
非特許文献4(Macromolecules.33,4316-4320、2000)では触媒系がエーテル塩酸と水またはブチルアルコールとから成る。25℃では脱カルボキシル化は24時間という長時間無く、−40℃の温度では1.5時間または3時間という短時間無いことが証明されている。
【0010】
トリフルオロ酢酸またはエーテル塩酸とアルコールとから成るこの有機系は、脱カルボキシル化を起こさないが、非常に長い反応時間(0℃または25℃の温度)または短時間の非常に低い温度(−40℃)のいずれかを必要とする。いずれの場合も、運転条件は工業規模でのプロセスの運転には適しない。
【0011】
従って、短い反応時間および室温に近い温度で、痕跡量の金属も含まない経済的なプロセスで、エーテル単位の挿入がなく、多分散性指数が低いポリカーボネートを製造することができる新規な系および方法が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Macromol.Sci.,Chem.,A 26(4),631-44(1989)
【非特許文献2】Macromolecules.30,737-744(1997)
【非特許文献3】J.Pol.Sci.:Part A,36,2463-2471(1998)
【非特許文献4】Macromolecules.33,4316-4320(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、上記ニーズは触媒として特定のスルホン酸を用い、開始剤として水またはアルコールを用いることによって満たすことができるということを見出した。この有機触媒系を用いると少ない触媒量で、加熱せずに短時間で反応させることができる。この触媒系は室温以上の温度でも脱カルボキシル化を全く起こさない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の観点から、本発明の対象は、水から成る開始剤と触媒としての下記式のスルホン酸とで形成される、環状カーボネートの開環重合反応用触媒系にある:
R’−SO3
[ここで、R’は下記(1)または(2)を表す:
(1)オキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素から成る群の中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい、1〜20の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3〜20の炭素原子を含む分岐鎖または環状のアルキル基、または、
(2)少なくとも一つの下記(a)〜(d)の基で置換されていてもよいアリール基:
(a)2〜20の炭素原子を含む一つの直鎖アルキル置換基または3〜20の炭素原子を含む一つの分岐鎖または環状のアルキル基(上記アルキル置換基はフッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される少なくとも一つのハロゲン基またはニトロ基で置換されていてもよい)、
(b)フッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択されるハロゲン基、
(c)ニトロ基、または、
(d)CR123基、(ここで、R1はハロゲン原子を表し、R2およびR3は独立して水素原子またはハロゲン原子を表す)]
【発明を実施するための形態】
【0015】
開始剤は少なくとも一種のヒドロキシル官能基を含み、特に、水または第一アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ネオペンチルアルコール、ベンジルアルコールおよびこれらの混合物の中から選択される。本発明の好ましい実施例では開始剤はヒドロキシル化されたバイオ資源(bioresourced)または低分子量の天然化合物から得ることができ、特にバイオエタノール、プロパンジオール、グリセロール、プロピレングリコール、イソソルビド、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリトリトール、より一般的には単糖ファミリの天然分子、例えばフラクトース、リボースおよびグルコースを挙げることができる。
【0016】
別の実施例では、開始剤はモノ−またはポリ−ヒドロキシル化したオリゴマーまたはポリマーにすることができ、特に下記の中から選択できる:
(1)(アルコキシ)ポリアルキレングリコール、例えば、(メトオキシ)ポリエチレングリコール(MPEG/PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、
(2)ポリ(アルキル)アルキレンアジペートジオール、例えばポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)ジオール(PMPA)およびポリ(1,4−ブチレンアジペート)ジオール(PBA)、
(3)α−ヒドロキシル化またはα、ω−ジヒドロキシレート化ポリジエン(必要に応じて水素化されていてもよい)、例えばα、ω−ジヒドロキシレート化ポリブタジエンまたはα、ω−ジヒドロキシレート化ポリイソプレン、
(4)モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリアルキレン、例えばモノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリイソブチレン、
(5)末端ヒドロキシル官能基を有するポリラクチド、
(6)ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ(3−ヒドロキシブチレート)およびポリ(3-ヒドロキシバレレート)。
【0017】
本発明の別の変形例では、開始剤は変性または未変性の多糖、例えばデンプン、キチン、キトサン、デキストランまたはセルロースのファミリから得られる。
【0018】
開始剤は、別の可能性としてアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンポリマーのファミリのビニル共オリゴマー(coologomer)またはコポリマーにすることができる。これらはアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンモノマーと水酸基を有する機能性モノマー、例えばヒドロキシル化アクリル、メタアクリルモノマー、例えばポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)およびポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)との共重合で得られる。この重合は従来のラジカル重合、制御されたラジカル重合またはアニオン重合法で実行できる。
【0019】
開始剤は、さらに別の可能性として、少なくとも一つのヒドロキシル基を有するラジカル開始剤および/または制御剤を用いた制御されたラジカル重合で得られるビニルコポリマーにすることができる。
【0020】
開始剤として使用されるオリゴマーおよびポリマーは数平均分子量が1000〜100000 g/モル、例えば1000〜20000 g/モルで、多分散性指数が1〜3、例えば、1〜2.6である。
【0021】
この種のオリゴマーまたはポリマーを使用することで、重合開始剤上のヒドロキシル基の配列に従って、直鎖、星型またはグラフトブロックコポリマーを得ることができる。
【0022】
重合開始剤に対する環状モノマーのモル比は5〜500が好ましく、より好ましくは10〜200、さらに好ましくは40〜100(限界値含む)にする。
重合開始剤に対する環状モノマーのモル比は5〜500が好ましく、より好ましくは10〜200、さらに好ましくは40〜100(限界値含む)にする。
スルホン酸に対する開始剤のモル比は0.1〜10、好ましくは1〜5(限界値含む)にする。
【0023】
第2の観点から、本発明の対象は下記式(I)の環状カーボネートを非塩素化芳香族溶剤中で反応させる段階を有する、エーテル結合を含まない、均質なポリカーボネートの製造方法にある:
【化1】

【0024】
(ここで、Rはオキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素の中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい、2〜20の炭素原子を含む直鎖アルキレン基または2〜20の炭素原子を含む分岐鎖のアルキレン基またはアルキルアリーレン基を表す)
【0025】
この反応段階は10分〜12時間、好ましくは1時間〜3時間の時間を必要とする。この反応段階は0〜110℃、好ましくは20℃〜30℃(限界値含む)の温度で行う。
本発明の別の対象は、以下で詳細に説明する、上記方法で得られる均質な一ポリカーボネートにある。
【0026】
本明細書の「均質なポリカーボネート」とはエーテル結合を含まないポリカーボネートを意味する。この均質性はNMRによって、CH2−O−CH2型の信号が存在しないことで特徴付けられる。その数平均モル質量は15 000g/モル以上で、多分散性指数は低く、1〜1.2である。
【0027】
環状カーボネートとしてはトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネートおよび2−メチル、2−カルボキシベンジルトリメチレンカーボネートが挙げられるが、これらが全てではない。
好ましい実施例では、環状カーボネートは完全にバイオ再生可能資源から得られる。例えば、トリメチレンカーボネートはバイオ起源の1,3−プロパンジオールと二酸化炭素との縮合で製造するのが有利である。本発明でのバイオ資源の化合物の特性はASTM D6852規格で定義される。
【0028】
本発明の触媒系は、少ない触媒導入量で環状カーボネートを重合でき、温和な条件下でも反応時間が短いので特に有利である。さらに、この触媒系の存在下で形成されるポリカーボネートは脱カルボキシル化によって挿入されるエーテル単位を含まない(NMRで証明される)。重合反応を高温で行ってもそうである。
【0029】
得られたポリカーボネートは金属触媒の非存在下で合成されので痕跡量も金属も含まない。再生可能な資源から得られたポリカーボネートを使用した場合には、バイオ−ポリカーボネートタイプのポリマーが得られる。この特性が上記のものと組み合わされ、本発明のポリカーボネートはバイオ材料、すなわち生分解性インプラントとしての使用または放出制御医薬の封入または放出制御薬剤用ビヒクルでの用途が特に勧められる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
トリメチレンカーボネート(TMC)のホモポリマーの製造
下記の一般的手順を用いて実行した。
アルコールとトルエンはナトリウム上で蒸留した。トリメチレンカーボネートは水素化カルシウム(CaH2)上で乾燥テトラヒドロフラン(THF)溶液中で蒸留して乾燥した。スルホン酸は追加の精製なしで使用した。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)はカルシウム二水素化物(CaH2)上で蒸留して乾燥し、水酸化カリウム(KOH)上で保存した。
【0031】
シュレンク(Schlenk)チューブは減圧下にヒートガンで乾燥し、痕跡量の水分も除去した。
反応はTHF中でBruker 1HNMR(プロトン核磁気共鳴)と、Waters GPC(ゲル透過クロマトグラフィ)とでモニターした。サンプルを採取し、DIEAで中和し、蒸発し、特徴付け用溶剤中に取った。1H NMRは、最初の開始剤の−OH基を有する−CH2−基のプロトンの信号に対するO−C(=O)O官能基を有する−CH2−基の信号の半分の積分比を求めてモノマーの重合度(DP)を定量できる。ポリカーボネート中のエーテル単位の混和はエーテル官能基−O−を有する−CH2−基の信号で検出できる。スペクトルは300MHz分光計で重水素化クロロホルムで記録した。THF中のGPCで数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwと多分散性指数(PDI)とを決定できる。
【0032】
実施例1A
トルエン(6ml)中のトリメチレンカーボネート(550mg, 40eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、ペンタノール(14.7μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(8.8μ1,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち4時間30分後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:DP=32(0%の脱カルボキシル化)(添付の[図1]に示すスペクトル)
GPC:Mn=6000g/モル、PDI=1.18
【0033】
実施例1B
トルエン(6ml)中のトリメチレンカーボネート(550mg, 40eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、水(2.4μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(8.8μl,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち2時間30分後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=4500g/モル、PDI=1.08
【0034】
実施例1C
トルエン(12ml)中のトリメチレンカーボネート(1.1g, 80eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、水(2.4μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(8.8μ1,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間30分後)まで反応媒体をアルゴン下で80℃で撹拌する。対応するNMRスペクトルは添付の[図2]に示す。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=7500g/モル、PDI=1.17
エーテル単位の形成は3.50ppmでの三重線で検出される。これは酸素−CH2−O−CH2に対するα位のCH2基に対応する。添付スペクトルから各種変換率でTMCが変換されるまで末端CH2OHのシグナルの側に3.50ppmの信号は全く検出されないことがわかる。
【0035】
実施例1D
水およびペンタノール開始剤の比較
水による開始
トルエン(9ml)中のトリメチレンカーボネート(825mg, 80eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、水(1.8μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(40μ1,3eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち8時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=9300g/モル、PDI=1.05、モノモダルプロフィル
【表1】

【0036】
ペンタノールによる開始
トルエン(9ml)中のトリメチレンカーボネート(825mg, 80eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、ペンタノール(11μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(40μ1,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち10時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=8200g/モル、PDI=1.17、ビモダルプロフィル
【表2】

【0037】
水による開始
トルエン(22ml)中のトリメチレンカーボネート(2.05g, 300eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、水(1.2μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(22μ1,5eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち4時間後)まで反応媒体をアルゴン下で80℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=14 100g/モル、PDI=1.12、モノモダルプロフィル
【表3】

【0038】
ペンタノールによる開始
トルエン(22ml)中のトリメチレンカーボネート(2.05g, 300eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、ペンタノール(7.3μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(22μ1,5eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち8時間後)まで反応媒体をアルゴン下で80℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=15 300g/モル、PDI=1.42、ビモダルプロフィル
【表4】

【0039】
実施例1E
高分子量Mn>20 000のTMCホモポリマーの合成
トルエン(15ml)中のトリメチレンカーボネート(1.375g, 100eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、水(2.4μ1, 1eq.)およびメタンスルホン酸(43μ1,5eq.)を連続して添加する。反応媒体をアルゴン下で30℃で激しい撹拌下に維持する。NMRでモノマーが変換したことが確認されたら(すなわち6時間後)、1.375g(100eq)のトリメチレンカーボネートを一回添加する。同様に、モノマーが変換されたら、3回目の1.375g(100eq)を反応媒体に添加する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=25 000g/モル、PDI=1.07、モノモダルプロフィル。
【表5】

【0040】
実施例2
トリメチレンカーボネート(TMC)コポリマーの製造
実施例2A
ポリ(ジメチルシロキサン)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)ジブロックコポリマーの製造
トルエン(1.5ml)中のトリメチレンカーボネート(137.5mg, 10eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、α−ヒドロキシル化ポリ(ジメチルシロキサン)(833mg, 0.13mmol)およびメタンスルホン酸(8.8μl,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:DP(TMC)=9,(0%の脱カルボキシル化)
GPC:Mn=7400g/モル、PDI=1.26
【0041】
実施例2B
ポリ(トリメチレンカーボネート)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)トリブロックコポリマーの製造
トルエン(3ml)中のトリメチレンカーボネート(275mg, 20eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、α,ω−ジヒドロキシル化ポリ(ジメチルシロキサン)(833mg, 0.13mmol)およびメタンスルホン酸(8.8μl,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:DP(TMC)=19,(0%の脱カルボキシル化)
GPC:Mn=8500g/モル、PDI=1.24
【0042】
実施例2C
ポリ(乳酸)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)ジブロックコポリマーの製造
トルエン(3ml)中のトリメチレンカーボネート(275mg, 20eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、ポリ(乳酸)(Mn=1530g.mol-1)(206mg, 0.13mmol)およびメタンスルホン酸(8.8μl,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:DP(TMC)=9,(0%の脱カルボキシル化)
GPC:Mn=4300g/モル、PDI=1.14
【0043】
実施例2D
ポリ(ε−カプロラクトン)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)ジブロックコポリマーの製造
トルエン(1.5ml)中のトリメチレンカーボネート(137.5mg, 10eq., 0.9mol.l-1)の溶液中に、ポリ(ε−カプロラクトン)(166mg, 0.13mmol)およびメタンスルホン酸(8.8μ1,1eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
TMCの変換率:≧ 99%
1H NMR:DP(TMC)=9,(0%の脱カルボキシル化)
GPC:Mn=2700g/モル、PDI=1.17
【0044】
実施例2E
ポリ(トリメチレンカーボネート)−b−ポリ(水素化ブタジエン)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)トリブロックコポリマーの製造
トルエン(5.3ml)中の360mg(0.13mmol)のKrasol(登録商標)HLBH-P 3000(Sartomerの低分子量のα,ω−ジヒドロキシル化水素化ポリオレフィン)(M〜3000g/モル、Mn〜5550g/モル、PDI=1.08)の溶液中に、490mgのトリメチレンカーボネート(40eq., 0.9mol.l-1)および11μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)を連続して添加する。反応媒体をアルゴン下で30℃で2時間撹拌する(変換率:100%)。媒体を中和し、蒸発する。
NMR:DP(TMC)=39
GPC:Mn=9630g/モル、PDI=1.22
【0045】
実施例2F
ポリ(トリメチレンカーボネート)−b−ポリ(ブタジエン)−b−ポリ(トリメチレンカーボネート)トリブロックコポリマーの製造
トルエン(5.3ml)中の350mg(0.13mmol)のKrasol(登録商標)LBH-P 3000(Sartomerの低分子量のα,ω−ジヒドロキシル化ポリオレフィン)(M〜3000g/モル、Mn〜5600g/モル、PDI=1.11)の溶液中に、490mgのトリメチレンカーボネート(40eq., 0.9mol.l-1)および11μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)を連続して添加する。反応媒体をアルゴン下で30℃で2時間撹拌する(変換率:100%)。媒体を中和し、蒸発する。
NMR:DP(TMC)=41
GPC:Mn=10 200g/モル、PDI=1.28

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から成る開始剤と触媒としての下記式のスルホン酸とで形成される、環状カーボネートの開環重合反応用触媒系:
R’−SO3
[ここで、R’は下記(1)または(2)を表す:
(1)オキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素から成る群の中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい、1〜20の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3〜20の炭素原子を含む分岐鎖または環状のアルキル基、または、
(2)少なくとも一つの下記(a)〜(d)の基で置換されていてもよいアリール基:
(a)2〜20の炭素原子を含む一つの直鎖アルキル置換基または3〜20の炭素原子を含む一つの分岐鎖または環状のアルキル基(上記アルキル置換基はフッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される少なくとも一つのハロゲン基またはニトロ基で置換されていてもよい)、
(b)フッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択されるハロゲン基、
(c)ニトロ基、または、
(d)CR123基、(ここで、R1はハロゲン原子を表し、R2およびR3は独立して水素原子またはハロゲン原子を表す)]
【請求項2】
上記スルホン酸がメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始剤に対する環状モノマーのモル比が5〜500、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜100である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スルホン酸に対する環状モノマーのモル比が5〜500、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜100である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
スルホン酸に対する開始剤のモル比が0.1〜10、好ましくは1〜5である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
下記式(I):
【化1】

(ここで、Rはオキソ基およびハロ基の中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい、2〜20の炭素原子を含む直鎖アルキレン基または2〜20の炭素原子を含む分岐鎖のアルキレン基またはアルキルアリーレン基を表す)
の環状カーボネートを出発材料として用いて、エーテル結合を含まない、均質なポリカーボネートを製造する方法であって、
上記環状カーボネートを非塩素化芳香族溶剤中で請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒系の存在下で反応させる段階を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
環状カーボネートがトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネートおよび2−メチル、2−カルボキシベンジルトリメチレンカーボネートから成る群の中から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記環状カーボネートを再生可能な資源、例えばバイオ起源の1,3−プロパンジオールと二酸化炭素との縮合で得る請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
上記の反応段階を0〜110℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で、10分〜12時間、好ましくは1時間〜3時間で実行する請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で得られる、エーテル結合を含まず、痕跡量の金属も含まない均質なポリカーボネート。
【請求項11】
請求項10に記載または請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で得られる少なくとも一種のポリカーボネートを含む組成物。

【公表番号】特表2012−522098(P2012−522098A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502750(P2012−502750)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050608
【国際公開番号】WO2010/112770
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【出願人】(511142615)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE
【Fターム(参考)】