説明

(ブロック)ポリイソシアネート組成物及びそれを用いた塗料組成物

本発明は、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群及びポリオール群のそれぞれの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含んで構成され、i)ジイソシアネートモノマー濃度:3質量%以下、ii)ポリオール成分濃度:1〜50質量%、及びiii)ガラス転移温度:−50〜0℃の全てを満足する、硬化性と乾燥性がともに優れたポリイソシアネート組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性と乾燥性、および耐候性に優れた(ブロック)ポリイソシアネート組成物を硬化剤としたウレタン系塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを硬化剤としたウレタン系塗料組成物はその塗膜の耐薬品性、可とう性などが優れている。特に、脂肪族、脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネートを使用した場合、更に耐候性が優れている。そのため、そのようなポリイソシアネートの使用は常温または熱硬化の2液ウレタン塗料、熱硬化性の1液ウレタン塗料の形態で、建築、重防、自動車、工業用及びその補修など多岐にわたっている。
【0003】
特に、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと言う)、脂環族ジイソシアネートであるイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと言う)から得られるポリイソシアネートは工業的入手のし易さ、これを用いて得られる塗膜が優れた耐候性有することから多用されている。そして、HDIとIPDIはそれぞれ異なる特徴を有している。HDIは2つの1級のイソシアネート基を有するため反応性が高く、イソシアネート基間に6つのメチレン基を有するため、それを含む塗料組成物から得られる塗膜の可とう性に優れている。その半面、高い塗膜硬度を達成することが難しい場合がある。一方、IPDIの2つのイソシアネート基は1級と2級であり、高い反応性を達成することが難しい場合があるが、イソシアネート基間に環構造を有するため、それを含む塗料組成物は乾燥性が優れており、得られる塗膜の硬度は高い。
【0004】
上記のHDIの反応性とIPDIを含む塗料組成物の乾燥性という両者の利点を兼ね備えたポリイソシアネートが切望されている。これに関するいくつかの提案がある。HDIプレポリマーとIPDIプレポリマーを混合したポリイソシアネート組成物が特許文献1、特許文献2に開示されている。この技術においては、組成物中でそれぞれのイソシアネートプレポリマーが独立して存在しているために、IPDIプレポリマーの低反応性を克服することは難しかった。
【0005】
HDIとIPDIから得られるビウレット結合含有ポリイソシアネートが特許文献3に、HDIとIPDIから得られるイソシアヌレート結合含有ポリイソシアネートが特許文献4に、モノアルコールで変性されたHDIとIPDIから得られるイソシアヌレート結合含有ポリイソシアネートが特許文献5に開示されている。これらは全て、HDIとIPDIを共に分子内に組み込んだポリイソシアネートに関する技術であるが、結果的にポリイソシアネートの1分子あたりの、反応性の高い1級イソシアネート基数は低下し、反応性(硬化性)が低下する場合があった。
【0006】
一方、HDIとポリオールから誘導された、イソシアネート基平均数(1分子が持つ統計的平均のイソシアネート基数)の高いポリイソシアネートが特許文献6に開示されている。ポリイソシアネートの架橋性は高められたが、加えて高い乾燥性達成が望まれていた。
【特許文献1】米国特許第5137972号明細書
【特許文献2】特開2002−293873号公報
【特許文献3】特公平4−71908号公報
【特許文献4】米国特許第4419513号明細書
【特許文献5】米国特許第5258482号明細書
【特許文献6】米国特許第5817732号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、硬化性と乾燥性がともに優れた(ブロック)ポリイソシアネート組成物、その製法、及びこれを含む、高い塗膜硬度を達成可能な塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びポリオールの特定割合から誘導される、特定の物性値を有する(ブロック)ポリイソシアネート組成物によって前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
(1)下記構造式(I)で表され、かつ、
i)ジイソシアネートモノマー濃度:3質量%以下、
ii)ポリオール成分濃度:1〜50質量%、及び
iii)ガラス転移温度:−50〜0℃
の全てを満足するポリイソシアネート組成物:
R−(NCO)n ・・・ (I)
(式中、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群及びポリオール群のそれぞれの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物から誘導されるポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールの結合部分の少なくとも一部はアロファネート結合を介して結合されており、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=95/5〜50/50(質量比)であって、n(ポリイソシアネート1分子が持つ統計的平均のイソシアネート基数)が4.5〜20である。)。
(2)粘度が100,000〜2,000,000mPa・s/25℃である、(1)記載のポリイソシアネート組成物。
(3)ポリオールの1分子あたりの水酸基平均数が3〜8である、(1)または(2)記載のポリイソシアネート組成物。
(4)ガラス転移温度が−45℃〜−10℃である、(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
(5)イソシアヌレート結合を含む、(1)から(4)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
(6)ポリオールの数平均分子量が500以下である、(1)から(5)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
(7)(1)から(6)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されて構成された、ブロックポリイソシアネート組成物。
(8)(1)から(6)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物の製造方法であって、
脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群及びポリオール群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を、イソシアネート基/水酸基(当量比)=3/1〜30/1で反応させるステップ、
任意に、上記反応の後あるいは上記反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行うステップ、及び
その後、未反応ジイソシアネートモノマーを除去するステップを含む、上記方法。
(9)(1)から(7)のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物またはブロックポリイソシアネート組成物、及び少なくとも1種のポリオールを含む、塗料組成物。
(10)クリヤコートに用いる、(9)記載の塗料組成物。
(11)(10)記載の塗料組成物を、顔料を含むベースコート上に塗装することを含む、塗装方法。
(12)ベースコートが水性塗料である、(11)記載の塗装方法。
(13)さらに、ベースコートとクリヤコートを同時に硬化することを含む、(11)または(12)記載の塗装方法。
なお、本願で言う「ポリイソシアネート組成物」とは、多数種のポリイソシアネート分子の混合物(種々の結合様式及び重合度を有して形成された各分子の集合体)であって、組成物全体として上記の構造式(I)で表されるものを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用できる脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、限定される訳ではないが、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、HDI、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。
【0011】
本発明に用いる脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましく、限定される訳ではないが、例えば、IPDI、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、IPDIが好ましい。
【0012】
本発明によるポリイソシアネート組成物中の脂肪族ジイソシアネート成分と脂環族ジイソシアネート成分の質量割合は95/5から50/50、好ましくは、90/10から60/40である。脂肪族ジイソシアネート成分の前記割合が95/5を越えると、そのポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物により得られる塗膜の硬度が低下する場合がある。一方、脂環族ジイソシアネート成分の前記割合が50/50を越えると、そのポリイソシアネート組成物が白濁し、それを含む塗料組成物により得られる塗膜の可とう性が低下する場合がある。
【0013】
本発明によるポリイソシアネート組成物を構成するポリオールには、1分子内に2個以上の水酸基を有する化合物、例えば、2価アルコール類から8価アルコール類が含まれる。
2価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。3価アルコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。4価アルコール類としては、例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−トレイトールなどが挙げられる。5価アルコール類としては、例えば、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、L−ラムニトールなどが挙げられる。6価アルコール類としては、D−グルシトール、D−マンニトール、ガラクチトールなどが挙げられる。7価アルコールとしては、トレハロールなどが挙げられる。8価アルコールとしては、例えばスクロース、マルトース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオースなどが挙げられる。更に、これらポリオールにε−カプロラクトンなどを付加することもできる。
【0014】
本発明に用いるポリオールの1分子あたりの水酸基平均数は好ましくは3〜8であり、より好ましくは3〜5である。ポリオールの水酸基平均数が3未満であると、本発明のポリイソシアネート組成物に要求されるイソシアネート基平均数n(ポリイソシアネート1分子が持つ統計的平均のイソシアネート基数であり、(ポリイソシアネート数平均分子量)×(イソシアネート基濃度)/42から得られる)の下限(4.5)が達成できない場合がある。一方、ポリオールの水酸基平均数が8を越えると、ポリオールの水酸基とジイソシアネートのイソシアネート基の反応性が低下し、本発明のポリイソシアネート組成物を製造し難い場合がある。
また、本発明に用いるポリオールの数平均分子量は500以下であり、更に好ましくは300以下である。500を越えると、本発明の目的である塗膜硬度を達成できない場合がある。
【0015】
本発明のポリイソシアネート組成物中のポリオール成分濃度は1から50質量%、好ましくは3から30質量%、更に好ましくは3から15質量%である。ポリオール成分濃度が1質量%未満ではポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数が低下する場合がある。一方、ポリオール成分濃度が50質量%を越えると塗料組成物に使用するポリオールとの相溶性が低下する場合がある。
【0016】
本発明のポリイソシアネート組成物はジイソシアネートとポリオールがアロファネート結合を介して結合していることが好ましい。下にアロファネート結合を示す。
【化1】


アロファネート結合はジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基から形成される。アロファネート結合に代えて一部ウレタン結合を形成することもできる。アロファネート結合とウレタン結合の割合は10:0から8:2、好ましくは10:0から9:1、更に好ましくはウレタン結合が存在しない。ウレタン結合が上記割合8:2を越えると、本発明のポリイソシアネート組成物に要求されるイソシアネート基平均数nの下限(4.5)の達成が難しい場合がある。特開平6−172474号公報には、2種の異なるジイソシアネートから得られるイソシアヌレート結合含有ポリイソシアネートと、ジオールから得られるウレタン結合を有するポリイソシアネートが記載されている。それに対して、本願は、ウレタン結合がないか、あるいは少量のみ存在する、アロファネート結合を有するポリイソシアネート組成物に関するものである。
【0017】
本発明のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数nは4.5〜20である。イソシアネート基平均数nが4.5を下回ると、ポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物の硬化性が低下する場合があり、イソシアネート基平均数nが20を越えると、塗料組成物に使用するポリオールとの相溶性が低下する場合がある。
【0018】
本発明のポリイソシアネート組成物に存在するジイソシアネートモノマーとしての濃度は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。ジイソシアネートモノマー濃度が3質量%を越えると、硬化性の低下に加え、乾燥性も低下する場合がある。
【0019】
本発明のポリイソシアネート組成物のE型粘度計で測定した粘度は、好ましくは100,000から2,000,000mPa・s/25℃、より好ましくは150,000から1,500,000mPa・s/25℃である。ポリイソシアネート組成物の粘度が100,000mPa・s/25℃未満であると、イソシアネート基平均数nの下限(4.5)が達成できない場合がある。一方、ポリイソシアネート組成物の粘度が2,000,000mPa・s/25℃を越えると、塗料組成物に使用するポリオールとの相溶性が低下する場合がある。
【0020】
本発明のポリイソシアネート組成物のガラス転移温度(以下Tgと言う)は−50℃から0℃であり、好ましくは−45℃から−10℃である。Tgが−50℃未満であるとポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物の乾燥性が低下する場合がある。一方、Tgが0℃を越えるとポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物の硬化性が低下する場合がある。Tgとはガラス状態と液体状態との間の状態変化時の温度である。Tgはポリマーである塗膜に関しては、非常に重要な要素であることは周知である。ポリマーであれば、Tgはそのセグメント運動の凍結、解放に対応しているので、その分子量には依存しないとされている。
【0021】
本発明者らは、これまで着目されなかったポリイソシアネート組成物のTgに着目した。ポリイソシアネート組成物を得るためのジイソシアネート原料として、HDIのみを使用した場合、このポリイソシアネート組成物のTgはこの分子量に影響される。しかしながら、これにより架橋した塗膜のTgはポリイソシアネート組成物のTgに影響されない。また、HDIを原料としたポリイソシアネート組成物にIPDIを原料としたポリイソシアネート組成物を混合することにより、この混合物のTgは高くなる。この混合物で架橋された塗膜のTgも高くなる。
本発明のポリイソシアネート組成物のTgは分子量、IPDIの使用割合により影響される。そして、これにより架橋された塗膜のTgは、IPDI割合が同じ、前記の混合されたポリイソシアネート組成物から得られる塗膜Tgに比較して、驚くべきことに高いことを見出した。そしてこのような観点から限定されたTgの特定範囲をポリイソシアネート組成物の構成要件の1つとすることによって、これを用いた塗料組成物の硬化性、乾燥性いずれもが優れていることを見出した。
【0022】
本発明のポリイソシアネート組成物はイソシアヌレート基を含むことが好ましい。イソシアヌレート基は3つのイソシアネート基から形成される構造であり、塗料組成物の乾燥性を向上させるために有効である。また、イソシアヌレート基以外にイソシアネート基が関連して形成される、ビウレット基、尿素基、イミノオキサジアジンジオン基、イミノオキサジアジントリオン基、ウレトジオン基、カルボジイミド基、アミド基、アシルウレア基、イミド基などを含むこともできる。
【0023】
また、本発明のポリイソシアネート組成物はそのイソシアネート基の一部またはすべてをブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネート組成物としても有用である。この場合に使用されるブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等が挙げられる。
【0024】
より具体的なブロック化剤の例を下記に示す。
(1)アルコール系;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類、
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
好ましいブロック剤は、アルコール系、オキシム系、酸アミド系、活性メチレン系、ピラゾール系から選ばれる少なくとも1種であり、2種以上を併用することができる。
【0025】
次に本発明のポリイソシアネート組成物の製造方法を述べる。
まず、上記した脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基を反応させる。本発明のポリイソシアネート組成物(すなわち反応後)の脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分比率(質量比)は、反応前のそれに比べて大きくなる。このことは意外なことであった。上記特許文献4(第3欄、45行から)には、反応前の脂肪族ジイソシアネート成分と脂環族ジイソシアネート成分の比率と、生成したポリイソシアネート中の前記比率は一致していると記載している。
【0026】
これらジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比は3/1から30/1、好ましくは10/1から20/1である。当量比が3/1未満であると得られる本発明のポリイソシアネート組成物の好ましい粘度範囲の上限を越える場合がある。一方、当量比が30/1を越えると得られるポリイソシアネート組成物の生産性が劣る。
この反応温度は、50〜200℃、好ましくは50〜150℃である。50℃未満では、反応が進み難く、200℃を越えると得られるポリイソシアネート組成物の着色など好ましくない副反応が生じる場合がある。反応時間は、0.5時間から3時間の範囲が好ましい。
【0027】
ポリオールの水酸基の1部またはすべてがジイソシアネートのイソシアネート基と反応した後または反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行うことも好ましい。このイソシアヌレート化反応を行わない場合、得られたポリイソシアネート組成物を使用して得られる塗膜の硬度が低下する場合がある。イソシアヌレート化の反応温度は50〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応温度が50℃未満では、反応が進み難く、反応温度が200℃を越えると、得られるポリイソシアネート組成物の着色につながる好ましくない副反応が生じる場合がある。
【0028】
この際に使用するイソシアヌレート化触媒としては、例えば一般に塩基性を有するものが好ましい。例えば、(i)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(ii)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(iii)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩、(iv)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(v)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(vi)マンニッヒ塩基類、(vii)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(viii)トリブチルホスフィン等の燐系化合物等が挙げられる。最も好ましくは、アンモニウム塩である。
【0029】
これらの反応終了させるために、前記触媒を失活させる。触媒を中和し、失活させる場合には、リン酸、酸性リン酸エステルなどの酸性物質を添加し、また、熱分解、化学分解により失活することもできる。
ポリイソシアネート組成物の収率(得られたポリイソシアネート組成物の質量/仕込み原料の合計質量×100)は10〜70質量%、好ましくは30〜60質量%の範囲から選択される。
【0030】
本発明のポリイソシアネート組成物は脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートとポリオールを反応させることによって誘導される。ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基の反応及び、イソシアヌレート化反応の両者を併用することが好ましい。
この様に、構造の異なる少なくとも2種以上のジイソシアネートとポリオールを原料として、少なくとも2つの異なる反応、アロファネート化反応に加えて、イソシアヌレート化反応を行った結果得られるポリイソシアネート組成物は、架橋性が高く、また、これを硬化剤として含む塗料組成物から得られる塗膜の硬度は高く、乾燥性に優れていることは驚くべきことであった。
【0031】
反応終了後、未反応ジイソシアネートモノマーは薄膜蒸発缶、抽出などにより除去され、本発明のポリイソシアネート組成物は実質的に未反応ジイソシアネートモノマーを含まない。得られたポリイソシアネート組成物中の未反応ジイソシアネートモノマー濃度は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。未反応ジイソシアネートモノマー濃度が3質量%を越えると、ポリイソシアネート組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0032】
本発明のポリイソシアネート組成物の好ましい製造方法は、ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基の反応によりウレタン結合を形成後、イソシアヌレート化反応と同時にアロファネート化反応を行わせることが好ましい。これらの反応は、イソシアヌレート化反応触媒と反応条件の選択により実行できる。
【0033】
次に本発明のポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物について述べる。
上記のように得られたポリイソシアネート組成物と、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を分子内に2個以上もつ化合物と混合することにより、本発明の塗料組成物を構成することができる。これらは反応し、架橋塗膜を形成できる。
前記の活性水素を分子内に2個以上含む化合物としては、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオールなどが挙げることができ、2種以上を併用できる。好ましくはポリオールである。このポリオールの例としては、前記したポリオールに加えて、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、エポキシポリオール、フッ素ポリオールがある。
【0034】
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステルの群から選ばれた単独または混合物と;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステルの群から選ばれた単独または混合物を用い;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下、あるいは非存在下において;重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物;との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオールは芳香族ジイソシアネート、脂肪族、脂環族ジイソシアネート及びこれらから得られるポリイソシアネートで変性することができる。この場合、特に脂肪族、脂環族ジイソシアネート及びこれらから得られるポリイソシアネートで変性されたポリエステルポリオールが耐候性、耐黄変性などから好ましい。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、分子量500以下のポリオールの単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属シアン化合物錯体などを使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を前記ポリオールにランダムあるいはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール、更にエチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール及び、これらポリエーテルを媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール等が含まれる。
【0037】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンなどが挙げられる。
エポキシポリオールとしては、例えば、ノボラック型、β−メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリコールエーテル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、ハロゲン化型、レゾルシン型など及び、これらをアミノ化合物、ポリアミド化合物などで変性した化合物が挙げられる。
フッ素ポリオールは分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば米国特許第4345057号明細書、EP第180962号公報などで開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステルなどの共重合体などがある。
【0038】
塗料組成物の構成成分として使用されるポリオールの水酸基価は30〜200mgKOH/g、酸価0〜30mgKOH/gの中から選択されることが好ましい。これらのポリオールは2種以上を併用しても良い。
好ましいポリオールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールであり、更に好ましくはアクリルポリオールであり、ポリエステルポリオール、非水ディスパージョン(NAD)を併用することができる。
本発明のポリイソシアネート組成物を用いて塗料組成物を調製する場合、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基と前記ポリオールの水酸基の当量比は、1/2から2/1の範囲から適宜選択されることが好ましい。
【0039】
また、塗料組成物の用途、目的に応じて各種溶剤、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノールなどの光安定剤、キナクリドン、ピグメントレッド、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、アルミニウム粉などのメタリック顔料、パールマイカ粉などの光干渉顔料、錫化合物、亜鉛化合物、アミン化合物などの硬化促進剤などを配合することができる。溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル類、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、などの群から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
この様に調製された塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装などの手段により、鋼板、表面処理鋼板などの金属あるいはプラスチック、無機材料などの素材に、プライマーまたは上中塗り剤として、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装などの分野に有用である。
特に前記顔料を含まないクリヤ塗料としても、耐酸性雨性、耐候性に優れているため好ましい。
更に、前記顔料を含む非水または水性ベースコート上に塗装することができ、ベースコートとクリヤコートを同時に硬化することができる。
【0041】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。部はすべて質量部である。
まず、各物性の測定方法について述べる。
(数平均分子量の測定)
ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−802A
カラム:東ソー(株)G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
(収率)
収率は次式から算出した。
収率(%) = 得られたポリイソシアネート組成物の質量/仕込み原料の合計重量×100
(イソシアネート基平均数)
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数は次式から算出した。
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数 = ポリイソシアネート組成物の数平均分子量 × イソシアネート基濃度/42
(イソシアネート基濃度)
トルエンに溶解したポリイソシアネート組成物にn−ジブチルアミンを添加し、1規定塩酸を使用した電位差滴定により、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基濃度を求めた。
(HDI成分/IPDI成分の質量比)
反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中のHDI、IPDI濃度から、未反応HDI質量及び未反応IPDI質量を算出した。仕込んだHDI、IPDI質量とこれらの差のHDI成分とIPDI成分の質量比をポリイソシアネート組成物中の比とした。
【0042】
(未反応ジイソシアネートモノマー濃度)
前記GPC測定で得られる未反応ジイソシアネートの分子量(例えばHDIであれば168)に対応するピーク面積%を、ポリイソシアネート組成物中の未反応ジイソシアネートモノマーの質量濃度として表した。
(粘度の測定)
ポリイソシアネート組成物の粘度を、E型粘度計(東機産業株式会社のRE−80U)を用いて、コーンプレート3度R12、回転数2.5rpm、25℃で測定した(単位:mPa・s/25℃)。
【0043】
(アロファネート結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合の有無)
Bruker社製FT−NMR DPX−400を用いて、重クロロフォルムCDCl3を溶媒に、サンプル(ポリイソシアネート組成物)濃度5質量%、400MHz、積算回数256回で、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し、アロファネート結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合の有無を確認した。HDI由来のβ位、γ位の全プロトンを基準として、イソシアヌレート結合の場合はイソシアヌレート結合に隣接するHDI由来のメチレン基の全プロトン、アロファネート結合、ウレタン結合はそれぞれが有するプロトンの割合が1%以上の場合を「有り」、1%未満を「無し」と表した。
【0044】
(ポリイソシアネート組成物のTg)
ポリイソシアネート組成物のTgを、示差熱分析計(Seiko Instruments Inc.の商品名 DSC6220)を用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
(塗膜のTg)
剛体振り子型粘弾性測定器(株式会社エ−・アンド・デイ社のRPT−3000W)を用いて、塗料組成物を140℃で、30分硬化させた膜厚20μmの塗膜を4℃/分で昇温し、対数減衰率を測定した。そのピークトップを塗膜のTgとした。
(ゲル分率)
塗料組成物を80℃で、30分硬化させた塗膜約0.2gを、アセトン約40gに20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する値を計算し、90%未満の場合は×、90%以上の場合は○で表した。
(塗膜硬度)
塗料組成物を80℃で、30分硬化させた膜厚40μmの塗膜硬度をケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester)を用いて20℃で測定した(単位:回)。
(ガーゼ乾燥性)
塗料組成物をガラス板上に膜厚40μmになるように塗装後、60℃、30分の焼付け後、1時間、20℃放置した。その塗膜上に日本局方ガーゼを5枚重ね、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とガーゼを取り除き、塗膜上に残ったガーゼ跡を観察する。跡無しの場合を5、跡がはっきりと見える場合を1として1〜5の5段階とし、さらにそれらの中間を0.5単位で表した。
【0045】
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 560部、IPDI 240部、3価アルコールであるトリメチロールプロパン(分子量134)20部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエート0.096部を加えて、反応液の屈折率を測定し、収率が43%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDI、IPDIを除去した。得られた353gのポリイソシアネートの25℃における粘度は165,000mPa・s、イソシアネート基濃度は19.2質量%、ジイソシアネートモノマー濃度は0.3質量%、数平均分子量は1050、イソシアネート基平均数は4.8、Tgは−32℃、HDI成分/IPDI成分の質量比は78/22であった。アロファネート基、イソシアヌレート基の存在を確認し、ウレタン結合の存在は確認できなかった。
仕込み原料の組成、反応条件及び調製したポリイソシアネート組成物の物性を表1に示す。
【0046】
(実施例2−5)
仕込み原料の組成と反応条件を表−1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行った。それら仕込み原料の組成と反応条件、及びそのポリイソシアネート組成物の物性を表1に示す。
【0047】
(実施例6−10)
アクリルポリオール(アクゾノーベル社の商品名「SETALUX1767」、樹脂分濃度65%,水酸基価150mgKOH/樹脂g)と、実施例1−5で得られたポリイソシアネート組成物の各々を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、有機溶剤で塗料粘度を適度に調整後、各物性評価を行った。用いた硬化剤及び塗膜の物性を表2に示す。
【0048】
(比較例1−3)
仕込み原料の組成と反応条件を表−1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行った。それら仕込み原料の組成と反応条件、及びそのポリイソシアネート組成物の物性を表1に示す。
【0049】
(比較例4)
HDI 240部、IPDI 560部、P303 60部を用い、収率45%とした以外は実施例1と同様に行った。得られたポリイソシアネート組成物は白濁していた。そのためこれ以後の物性評価を中止した。
(比較例5−9)
表2に示す硬化剤を用いた以外は実施例6と同様に行った。用いた硬化剤及び塗膜の物性を表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の(ブロック)ポリイソシアネート組成物を含むウレタン系塗料組成物は耐候性、高度な硬化性、乾燥性、塗膜硬度をともに達成することができる。従って、その塗料組成物は、鋼板、表面処理鋼板などの金属あるいはプラスチック、無機材料などの素材に、プライマーまたは上中塗り剤として、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装などの幅広い分野に有用である。また、顔料を含まないクリヤ塗料としても、耐酸性雨性、耐候性に優れた塗料として有用である。更に、顔料を含む非水または水性ベースコート上に塗装することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で表され、かつ、
i)ジイソシアネートモノマー濃度:3質量%以下、
ii)ポリオール成分濃度:1〜50質量%、及び
iii)ガラス転移温度:−50〜0℃
の全てを満足するポリイソシアネート組成物:
R−(NCO)n ・・・ (I)
(式中、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群及びポリオール群のそれぞれの群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物から誘導されるポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールの結合部分の少なくとも一部はアロファネート結合を介して結合されており、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=95/5〜50/50(質量比)であって、n(ポリイソシアネート1分子が持つ統計的平均のイソシアネート基数)が4.5〜20である。)。
【請求項2】
粘度が100,000〜2,000,000mPa・s/25℃である、請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
ポリオールの1分子あたりの水酸基平均数が3〜8である、請求項1または2記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
ガラス転移温度が−45℃〜−10℃である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
イソシアヌレート結合を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
ポリオールの数平均分子量が500以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の一部またはすべてがブロック剤で封鎖されて構成された、ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物の製造方法であって、
脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群及びポリオール群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を、イソシアネート基/水酸基(当量比)=3/1〜30/1で反応させるステップ、
任意に、上記反応の後あるいは上記反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行うステップ、及び
その後、未反応ジイソシアネートモノマーを除去するステップを含む、上記方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物またはブロックポリイソシアネート組成物、及び少なくとも1種のポリオールを含む、塗料組成物。
【請求項10】
クリヤコートに用いる、請求項9記載の塗料組成物。
【請求項11】
請求項10記載の塗料組成物を、顔料を含むベースコート上に塗装することを含む、塗装方法。
【請求項12】
ベースコートが水性塗料である、請求項11記載の塗装方法。
【請求項13】
さらに、ベースコートとクリヤコートを同時に硬化することを含む、請求項11または12記載の塗装方法。

【国際公開番号】WO2005/082966
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510517(P2006−510517)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003368
【国際出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】