説明

(メタ)アクリルシランの製造方法

本発明は、一般式(1)のシランを、一般式(2)のアルキルハロゲン化シラン(S1)及び一般式(3)の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)から製造する方法に関し、この方法は、アルキルハロゲン化シラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する1種又はそれ以上の成分(L)を、成分(S1)及び(S2)の反応前又は反応中に蒸留によって、反応混合物、部分混合物又は個々の反応成分から少なくとも部分的に除去することを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルシラン及びメタクリルシランを、高い反応速度及び高い空時収量で製造する方法に関する。
【0002】
アクリルシラン及びメタクリルシランは、有機材料と無機材料との間の接着剤として、例えば、ガラス繊維のため又は「人工大理石」を製造する際の糊中で、有機ポリマー、例えば塗料中の架橋剤として、あるいは、充填剤処理のために、広範囲の使用が見出されている。
【0003】
この種の化合物を製造するための種々の方法は、公知である。したがって、例えばDE 2851456又はDE 3832621において、貴金属触媒ヒドロシリル化が記載されており、その際、Si−H含有化合物を、アリル(メタ)アクリレートに付加する。しかしながら、この方法の欠点は、これに関して、部分的に高い毒性のアルコキシシラン、例えばトリメトキシシランを使用しなければならないか、あるいは、相当するクロロシラン、例えばトリクロロシランを使用する場合には、付加的なアルコール分解工程が要求されるといった事実である。後者は、特に、これに伴って、重合しやすい(メタ)アクリルシランの付加的な温度負荷の点において極めて望ましくない。さらに、この合成経路を用いた場合には、シリル基と(メタ)アクリル基との間のスペーサーが少なくとも3個の炭素原子を有する(メタ)アクリルシランのみが製造される。特に有用なα−(メタ)−アクリロキシメチル−アルコキシシランは、その高い加水分解反応性に基づいてこの方法を利用することができない。
【0004】
したがって、(メタ)アクリルシランをクロロアルキルシランとアルカリ金属−(メタ)−アクリレートとの反応によって製造することができる製造方法が、有利かつ一般的である。これに関して不均一系反応を促進するために、反応混合物にしばしば相間移動触媒を添加する。この種の方法は、例えばEP 0437653、EP 1249454又はWO 2007/063011中に記載されている。
【0005】
この種の不均一系反応の反応速度は、相間移動触媒の添加によってもしばしば緩慢である。すなわち、ほぼ完全な反応を達成するのに何時間にも亘る反応時間及び典型的には70〜120℃の高い反応温度が必要とされる。
【0006】
これは、反応生成物が重合しやすいことから、特にラジカル重合の場合には問題である。それというのも(メタ)アクリレートの重合は極めて発熱性であり、かつ温度が増加するにつれその重合速度は顕著に増加するので、「連続的な」重合のリスクは、極めて深刻に増加した安全性のリスクを示す。さらにこの重合は、少ない割合でしかない生成物からの収量損失を招き、かつ、遅くとも、生じたポリマーが蒸留塔の塔底部に冨化する蒸留による精製の際に、専ら再除去が困難なポリマーの堆積を招き、かつ製造プロセスを顕著に妨害しうる。
【0007】
確かに、例えば多くの特許文献、例えばEP 0 520 477に記載されているように、ラジカル重合はラジカル捕捉剤の添加によって抑制されうる。しかしながら、この種の処理の効果は時間的に限定され、それというのも、ラジカル捕捉剤は、その機能を発揮することにより消費されるためである。
【0008】
同時に、使用されるラジカル捕捉剤の量を最小限にとどめることが求められる。これは、この材料が高価であることのみならず、とりわけ、最終的にラジカル捕捉剤及びその分解生成物が最終的には不純物であって、かつこのようなものはさらに望ましくない性質を発揮しうることに基づく。したがって、EP 0 520 477にも記載されたラジカル捕捉剤のような多くの安定化剤は、例えば変色を招く。結局これは、(メタ)アクリルシランを最終的に集中的に重合又は共重合すべき場合に、その重合挙動に当然のことながら影響を与える。この影響は、さらにポリマー最終生成物の性質、例えば平均鎖長又は鎖長分布に関するものであってもよく、通常、望ましくない。
【0009】
したがって、反応が可能な限り短い時間で、可能な限り低い温度で進行する合成方法が好ましい。これは、(メタ)アクリルシランがその合成の際ばかりでなく、大抵は蒸留的な精製の際においても熱的に負荷されることが、なお一層考えられる。したがって、全負荷量を、絶対不可避の最小値に限定すべきである。
【0010】
したがって本発明の課題は、アクリルシラン又はメタクリルシランを製造するための従来の方法を改善することであり、この方法は、低い温度及び/又は短い反応時間であっても、相当する生成物を同じ品質で製造することを可能にする。
【0011】
本発明の対象は、一般式(1)
【化1】

[式中、R、R1’はそれぞれ互いに独立して水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、
は、1〜40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、この炭化水素基は、窒素、酸素、硫黄又はリンの元素から選択された1個又は複数個のヘテロ原子を含有していてもよく、
及びRは互い独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、
Xはハロゲン原子であり、かつ、
w+はアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、かつ、
wは、Mw+の価数に相当し、その値は1又は2であり、かつ、
zは0、1又は2の値であってもよい]のシランを、
一般式(2)
【化2】

[式中、上記に示すとおりである]のハロゲンアルキルシラン(S1)及び一般式(3)
【化3】

[式中、上記に示すとおりである]の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)から出発して製造する方法に関し、この場合、この方法は、成分(S1)及び(S2)の反応前又は反応中において、ハロゲンアルキルシラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する1種又はそれ以上の成分(L)を、反応混合物、部分混合物又は個々の反応成分から、少なくとも部分的に蒸留により除去する。
【0012】
本発明は、成分(S1)及び(S2)の反応速度が、反応混合物から低沸点成分(L)を蒸留的に除去することによって顕著に促進されることに基づく。これは、高い空時収量を導く。
【0013】
一般式(1)〜(3)において、R及びR1’は、好ましくは水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、特にCHを示し、Rは好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、特にCH基又は(CH−基を示し、Rは好ましくはCH又はエチル基を示し、かつ、Rは好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を示し、その際、メチル基及びエチル基は特に好ましい。Xは、好ましくは塩素又は臭素を示し、特に好ましくは塩素を示す。Mw+は、好ましくは、Li、Na、K、Rb、Csのイオンから選択されたアルカリ金属イオンを示し、その際、ナトリウムイオン及び特にカリウムイオンが特に好ましい。
【0014】
特に好ましくは、本発明による方法は、メタクリロキシ官能基又はアクリロキシ官能基を有するシラン(S)を製造するのに役立つ。
【0015】
好ましくは、成分(S1)及び(S2)の反応前又は反応中において、反応混合物から蒸留的に除去され、かつハロゲンアルキルシラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する成分(L)は、痕跡量のアルコール、水及び/又は(メタ)アクリル酸である。特に好ましくは、ここではアルコール、特に一般式(4)
【化4】

[式中、Rは、一般式(2)及び(3)で記載されたのと同一の意味を示す]のアルコール(A)である。これに関して、一般式(4)のアルコール(A)は、シラン(S1)及び塩(S2)の不純物として、反応混合物中に含まれる。同様にこれはエステル交換によって形成されてもよく、その際、シラン(S)又は(S1)のシラン官能基におけるOR−基は、塩(S2)中に含まれる他のプロトン性不純物(例えば、水、(メタ)アクリル酸又は他のアルコール)によって置換される。
【0016】
(メタ)アクリル酸塩(S2)は、大抵において、少量のプロトン性不純物、特に(メタ)アクリル酸、水及び/又はアルコールを含有するので、シラン(S)又は(S1)のシリル基の前記置換反応は、従来技術に記載する反応を実施する際に、通常、一定量のアルコール(A)が反応混合物中に存在することを招き、その量は、本発明による低沸点成分(L)の除去によって減少させることができ、これは、驚くべきことに、すでに言及した本発明による効果を導く。
【0017】
好ましくは、成分(S1)及び(S2)の反応の際に、さらに1種又はそれ以上の相間移動触媒(P)並びに1種又はそれ以上の安定化剤(St)を添加する。相間移動触媒(P)の例は、EP 0437653、EP 1249454又はWO 2007/063011に記載された化合物であり、特にテトラオルガノアンモニウム塩又はテトラオルガノホスホニウム塩、例えばテトラブチルホスホニウムクロリド又は−ブロミド、ブチルトリブチルホスホニウムクロリド又は−ブロミド、メチルトリブチルホスホニウムクロリド又は−ブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリドである。さらに一般式(5)
【化5】

[式中、Rは、同一又は異なっていてもよく、かつ、酸素原子及び/又は窒素原子で中断されていてよい、1〜20個の炭素原子を有する場合により置換された1価の炭化水素基を示す]の第3級ホスフィンは、相間移動触媒(P)として使用することができる。好ましいホスフィンは、例えばトリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン又はトリフェニルホスフィンである。相間移動触媒(P)は、それぞれ使用されたシラン(S1)の量に対して好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%の量で使用する。
【0018】
安定化剤(St)の例は、例えばEP 0 520 477に記載されているような市販の化合物である。これに関して芳香族アミン、キノン、ヒドロキノン、立体障害フェノール又は安定化ラジカル、例えばフェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N−ジメチルアミノ)−メチルフェノール、2,2,,6,6−テトラメチル−ピペリジル−N−オキシド又は3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンであってもよい。安定化剤(St)は、それぞれ使用されたシラン(S1)の量に対して好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.4質量%の量で使用する。
【0019】
これに関して酸素は、共安定化剤として使用することができる。この理由から、本発明による反応は、空気欠乏下で、すなわち、0.1〜2%の酸素を含有する窒素下で実施することができる。
【0020】
相間移動触媒(P)並びに安定化剤(St)は、場合によってはさらに1種又はそれ以上の溶剤(L1)中の溶液として添加することができる。溶剤(L1)として、すべての溶剤を使用することができ、好ましくは通常の低沸点溶剤、例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エーテル、例えばTHF、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、芳香族、例えばトルエン、キシレン又はアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタンを使用することができる。
【0021】
好ましくは、溶剤(L1)は、本発明による方法の際に低沸点成分(L)と一緒に除去する。
【0022】
一般式(1)のシラン(S)を製造するための本発明による方法の一つの好ましい実施態様において、この方法は、以下の工程を示す:
− 一般式(2)のハロゲンアルキルシラン(S1)の装入、
− ハロゲンアルキルシラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する1種又はそれ以上の成分(L)の少なくとも部分的な蒸留による除去、
− 一般式(3)の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)の添加。
【0023】
これに関してこの工程は、好ましくは、前記順序で実施する。
【0024】
好ましくは他の工程において、さらに1種又はそれ以上の相間移動触媒(P)及び/又は1種又はそれ以上の安定化剤(St)であるか、さもなければ溶剤(L1)中の1種又はそれ以上の前記成分の溶液を添加する。この添加は、シラン(S1)の装入前、装入中又は装入後に実施することができる。同様に、成分(P)、(St)及び/又は(L1)を、ハロゲンシラン(S1)と予め混合し、かつ一緒にして装入することも可能である。
【0025】
特に好ましくは、溶剤(L1)中の1種又はそれ以上の相間移動触媒(P)並びに場合によっては1種又はそれ以上の安定化剤(St)の溶液を、1種又はそれ以上の低沸点成分(L)の(部分的な)除去前に添加し、したがって当該工程において、1種又はそれ以上の溶剤(L1)も同様に完全に又は少なくとも部分的に除去する。
【0026】
さらに反応混合物は、なおも1種又はそれ以上の溶剤を含有していてもよい。しかしながら好ましくは、反応は溶剤不含で実施する。
【0027】
本発明による方法を実施するに際に、個々又はすべての反応成分を反応容器中に装入した後に、相当する混合物が沸騰する程度に圧力を低下させることによって、低沸点成分(L)を除去する。それにより、好ましくは全反応混合物の0.1〜5質量%を蒸留により除去する。
【0028】
一つの好ましい方法において、すでに一般式(1)のシラン及び場合によってはすでに相間移動触媒(P)及び/又は安定化剤(St)を含有するものであるが、いまだ塩(S2)を含むものではない混合物から、低沸点成分を除去する。他の好ましい変法では、さらに(メタ)アクリル酸(S2)を完全又は部分的に添加した後に、低沸点成分(L)を除去する。特に好ましくは、1種又はそれ以上の低沸点成分(L)を除去するための蒸留工程を、反応開始前又は開始時に実施し、かつ1個又は複数個の付加的な蒸留工程をさらに反応中に実施する。後者は、反応中においてシラン(S)又は(S1)のシリル基における前記置換により、例えばこれが溶解されている塩(S2)から痕跡量の水を遊離させ、かつ、これにより生じるシラン(S)又は(S1)の加水分解反応を介して、再度少量のアルコール(A)が形成される場合には、特に合理的である。その後に、この痕跡量のアルコールは、付加的な蒸留工程を介して除去される。
【0029】
式(4)の遊離アルコールの含量は、成分(S1)及び(S2)の反応中において、それぞれ全反応混合物に対して、好ましくは4質量%を下回り、特に2質量%を下回り、その際、1.5質量%を下回るか、あるいは、1質量%を下回る値が特に好ましい。
【0030】
特に好ましい実施態様において、反応温度で、及び/又は加熱段階中における低沸点成分(L)の蒸留的除去を実施し、かつ専ら冷却器中の圧力及び/又は還流比を調整する。長い加熱及び冷却段階によって時間の無駄が生じないことが、利点である。
【0031】
好ましくは、温度は、低沸点成分(L)の蒸留的除去の間及び/又は一般式(2)のハロゲンアルキルシラン(S1)と、一般式(3)の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)との反応の間において、少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも70℃及び好ましくは高くとも150℃、特に好ましくは高くとも120℃である。副産物として生じるハロゲンの塩並びに場合によっては一般式(4)のアニオンを含む(メタ)アクリル酸の残りの部分は、好ましくは濾過によって分離除去する。引き続いて、生成物は好ましくは蒸留により精製され、その際、1個又はさらに複数個の精製工程を実施する。好ましくは、最初に、低沸点不純物を蒸留により除去する。これは、好ましくは減圧であり、かつ少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも40℃であって、かつ好ましくは高くとも120℃、特に好ましくは高くとも80℃の温度で実施する。
【0032】
引き続いて、場合によっては一般式(1)のシラン自体を蒸留し、その際、さらにこの蒸留工程は好ましくは減圧下で実施され、その結果、塔底温度は、蒸留中に、200℃を下回り、好ましくは150℃を下回り、かつ特に好ましくは130℃を下回る。
【0033】
一般式(1)の不飽和ケイ素化合物(S)の例は、アクリルシラン、例えば、
アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、
アクリロキシメチルトリフェニルオキシシラン、
アクリロキシメチルトリイソプロポキシシラン、アクリロキシメチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アクリロキシメチル(メチル)ジメトキシシラン、アクリロキシメチル(メチル)ジエトキシシラン、
アクリロキシメチル(メチル)ジフェニルオキシシラン、
アクリロキシメチル(メチル)ジイソプロポキシシラン、
アクリロキシメチル(メチル)ビス(2−メトキシエトキシ)シラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)メトキシシラン、アクリロキシメチル(ジメチル)エトキシシラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)フェニルオキシシラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)イソプロポキシシラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)(2−メトキシエトキシ)シラン
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリフェニルオキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン
3−アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(メチル)ジフェニルオキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(メチル)ジイソプロポキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(メチル)ビス(2−メトキシエトキシ)シラン
3−アクリロキシプロピル(ジメチル)メトキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(ジメチル)エトキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(ジメチル)フェニルオキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(ジメチル)イソプロポキシシラン、
3−アクリロキシプロピル(ジメチル)(2−メトキシエトキシ)シラン又は
さらにメタクリルシラン、例えばメタクリロキシメチルトリメトキシシラン、
メタクリロキシメチルトリエトキシシラン
メタクリロキシメチルトリフェニルオキシシラン、
メタクリロキシメチルトリイソプロポキシシラン、
メタクリロキシメチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジメトキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジエトキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジフェニルオキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジイソプロポキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ビス(2−メトキシエトキシ)シラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)メトキシシラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)エトキシシラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)フェニルオキシシラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)イソプロポキシシラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)(2−メトキシエトキシ)シラン
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリフェニルオキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、
3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジフェニルオキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジイソプロポキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(メチル)ビス(2−メトキシエトキシ)シラン、
3−メタクリロキシプロピル(ジメチル)メトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(ジメチル)エトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(ジメチル)フェニルオキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(ジメチル)イソプロポキシシラン、
3−メタクリロキシプロピル(ジメチル)(2−メトキシエトキシ)シラン。
【0034】
一般式(1)の特に好ましい不飽和オルガノケイ素化合物(S)の例は、Rがメチレン基を示す化合物である。このシランは、しばしば特に高い反応性及びそれに伴う特に高い重合傾向により特徴付けられる。特に好ましくは、
アクリロキシメチルトリメトキシシラン、
アクリロキシメチルトリエトキシシラン、
アクリロキシメチル(メチル)ジメトキシシラン、
アクリロキシメチル(メチル)ジエトキシシラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)メトキシシラン、
アクリロキシメチル(ジメチル)エトキシシラン、
メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、
メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジメトキシシラン、
メタクリロキシメチル(メチル)ジエトキシシラン、
メタクリロキシメチル(ジメチル)メトキシシラン及び
メタクリロキシメチル(ジメチル)エトキシシラン。
【0035】
前記式の全ての前記の記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。全ての式において、ケイ素原子は四価である。
【0036】
以下の実施例及び比較例において、特に記載がない限り、全ての量の表記及びパーセントの表記は、質量に対するものであり、かつ全ての反応は、0.10MPa(絶対)及び20℃の温度で実施される。
【0037】
例1:
KPG撹拌機、冷却器及び温度計を備えた500mlのフラスコ中に、319.12g(1.50mol)のクロロメチル−トリエトキシシランを装入し、かつ8.85gのテトラブチルホスホニウムクロリド及び0.15gのフェノチアジンを添加した。これを、油浴中で110℃に加熱し、引き続いて195.6g(1.575mol)のカリウムメタクリレートを添加した。添加終了時において、圧力を反応容器中で100mbarまでに減少させ、その際、全部で約15gの低沸点成分を蒸留的に除去した。その後に、圧力を再度大気圧まで増加させた。蒸留及びさらにはすべての後続の反応中において、反応温度を108℃〜112℃の間に一定に維持する。1時間の全反応時間(反応開始時における蒸留を含む)後に、GCにより測定されたメタクリロキシメチルトリエトキシシランへの変換率は約82mol%であった。2時間後に、変換率は約92mol%であった。4時間後に反応はほぼ完全であった(すなわち、未変換のクロロメチルトリエトキシシランの含量が0.5mol%を下回る)。エタノール含量は、反応経過においてわずかな上昇傾向で、すべての試料の場合において1.2〜1.5mol%であった。
【0038】
生じた塩化カリウムの濾過後に、生成物は、実験室用簡易蒸発器(Laborkurzwegverdampfers)を用いて蒸留した。これに関して、生成物は、約94%の収率で、約98.5%の純度で得られた。
【0039】
例2:
KPG撹拌機、冷却器及び温度計を備えた500mlのフラスコ中に、319.12g(1.50mol)のクロロメチル−トリエトキシシランを装入し、かつ8.85gのテトラブチルホスホニウムクロリド及び0.15gのフェノチアジンを添加した。これを、油浴中で110℃に加熱し、かつ、引き続いて195.6g(1.575mol)のカリウムメタクリレートを添加した。添加終了時において、反応容器中の圧力を100mbarになるまでに減少させ、その際、全部で約14gの低沸点成分を蒸留により除去した。その後に、圧力を再度大気圧まで増加させた。蒸留及びさらにはすべての後続の反応中において、反応温度を108℃〜111℃の間に一定に維持した。1時間の全反応時間(反応開始時における蒸留を含む)後に、GCにより測定されたメタクリロキシメチルトリエトキシシランへの変換率は約83mol%であった。引き続いて、再度の圧力低下によって、再度約6gの蒸留物が除去された。2時間後に、反応混合物中で0.2mol%を下回る反応成分が存在していた。1時間後の第1の試料のエタノール含量は1.3mol%であり、2時間後の第2の試料のエタノール含量は0.9mol%であった。
【0040】
比較例1
カリウムメタクリレートの添加後の蒸留工程を省略することを除いて、例1と同様に実施した。1時間後に、GCにより測定された変換率は約40mol%であった。2時間後に、変換率は約59mol%であった。さらに引き続いて4時間後に、変換率は約81mol%のみを達成することができた。エタノール含量はすべての試料において2.0〜2.1mol%であって相対的に一定であった。
【0041】
例3:
KPG撹拌機、冷却器及び温度計を備えた500mlのフラスコ中に、231.98g(1.50mol)のクロロメチル−メチルジメトキシシランを装入し、かつ8.85gのテトラブチルホスホニウムクロリド及び0.15gのフェノチアジンを添加した。これを、油浴中で90℃に加熱し、引き続いて195.6g(1.575mol)のカリウムメタクリレートを添加した。添加終了時において、反応容器中の圧力を約700mbarまで減少させ、その際、全部で約7.8gの低沸点成分を蒸留的に除去した。その後に、圧力を再度大気圧まで増加させた。蒸留並びにさらにはすべての後続の反応中において、反応温度を88℃〜90℃の間に一定に維持した。1時間の全反応時間(反応開始時における蒸留を含む)後に、GCにより測定されたメタクリロキシメチル−メチルジメトキシシランへの変換率は約93mol%であった。引き続いて、再度の圧力低下によって、再度約4.1gの蒸留物を除去した。2時間後に、変換率は約99Mol%であり、かつ3時間後には、反応混合物中に0.2mol%を下回る反応成分が存在していた。第1の試料のメタノール含量は、1時間後に1.0mol%であり、第2の試料及び第3の試料のメタノール含量は、2時間又は3時間後に0.8mol%であった。
【0042】
生じる塩化カリウムの濾過後に、生成物を、実験室用簡易蒸発器を用いて蒸留した。これに関して生成物は、約92%の収率で、約98.2%の純度で得られた。
【0043】
比較例2:
カリウムメタクリレートの添加後又は1時間の反応時間後の蒸留工程を省略することを除き、例2と同様におこなった。1時間の反応時間後にGCにより測定された変換率は、約75mol%であった。2時間後に、変換率は約85mol%であった。最終的に3時間後には約93mol%の変換率が達成された。4時間後になってようやく変換率は、約97mol%で十分なレベルであった。エタノール含量は、すべての試料において1.6〜1.7mol%であって相対的に一定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R、R1’はそれぞれ互いに独立して水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、
は、1〜40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、この炭化水素基は、窒素、酸素、硫黄又はリンの元素から選択された1個又は複数個のヘテロ原子を含有していてもよく、
及びRは互い独立して、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の炭化水素基を示し、
Xはハロゲン原子であり、かつ、
w+はアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、かつ、
wは、Mw+の価数に相当し、その値は1又は2であり、かつ、
zは0、1又は2の値であってもよい]
のシラン(S)を、
一般式(2)
【化2】

[式中、上記に示すとおりである]
のハロゲンアルキルシラン(S1)及び一般式(3)
【化3】

[式中、上記に示すとおりである]
の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)から出発して製造する方法において、成分(S1)及び(S2)の反応前又は反応中において、ハロゲンアルキルシラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する1種又はそれ以上の成分(L)を、反応混合物、部分混合物又は個々の反応成分から、少なくとも部分的に蒸留により除去する、前記方法。
【請求項2】
及びR1’が水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、好ましくはCH又はエチル基を示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Xが塩素を示す、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
成分(L)が、一般式(4)
【化4】

[式中、Rは、請求項1に記載の一般式(2)及び(3)で記載されたのと同一の意味を示す]のアルコール(A)を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の相間移動触媒(P)を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
低沸点成分(L)の蒸留による除去中における温度が60℃〜150℃である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(2)のハロゲンアルキルシラン(S1)と、一般式(3)の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)との反応中における温度が60℃〜150℃である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも以下の工程
− 一般式(2)のハロゲンアルキルシラン(S1)の装入、
− ハロゲンアルキルシラン(S1)の沸点を下回る沸点を有する1種又はそれ以上の成分(L)の少なくとも部分的な蒸留による除去、
− 一般式(3)の不飽和有機カルボン酸の塩(S2)の添加
を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法
【請求項10】
1種又はそれ以上の溶剤(L1)中での1種又はそれ以上の相間転移触媒(P)並びに場合によっては1種又はそれ以上の安定化剤(St)の溶液を、1種又はそれ以上の低沸点成分(L)の完全又は部分的な除去前に添加し、それにより、1種又はそれ以上の低沸点成分(L)の完全又は部分的な除去工程の際に、1種又はそれ以上の溶剤(L1)も同様に完全又は部分的に除去する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
成分(S1)及び(S2)の反応中において、一般式(4)
【化5】

[式中、Rは、式(2)及び(3)で記載されたものと同一の意味を有する]の遊離アルコール(A)の含量が、全反応混合物に対して4質量%を下回る、請求項1〜10までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504572(P2012−504572A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529522(P2011−529522)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062517
【国際公開番号】WO2010/040653
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】