説明

(メタ)アクリル塗料およびこれを塗装してなる被覆材料

【課題】高い反射率および加工性が両立された(メタ)アクリル塗料、および被覆材料を提供する。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル系樹脂20〜80質量部、(B)(メタ)アクリル系モノマー80〜20質量部、(C)酸化チタン、を含むアクリル塗料であって、前記(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーが、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の縮合度:1〜4)を含み、当該化合物が全(メタ)アクリル系モノマー中に0.1〜80モル%の範囲内で含有されている(メタ)アクリル塗料を準備する。当該塗料を基材12の表面に塗布して塗布膜を形成した後、加熱処理を施し塗膜14とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル塗料および当該塗料を塗装してなる被覆材料に関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具や液晶表示ディスプレイ、プラズマディスプレイのような電子機器などは、輝度を向上させるため、光源の背面などに反射板が設置されている。反射板は、光源から放射された可視光線を所望の方向に反射させることによって液晶表示ディスプレイ等の輝度を向上させる。
【0003】
汎用の反射板は、鋼板、ステンレス板またはアルミ板のような金属板を基材とし、その光反射面となる表面に光の反射率が高い白色の塗装が施されているものが多い。上記白色の塗装は、ポリマーのような有機化合物を主成分とし、この有機化合物よりも反射率が高い酸化チタンのような無機微粒子が添加されているため、高反射率が発揮される。
【0004】
反射板に要求される諸特性としては、その光反射面における可視光線の反射率が高いことはもちろんであるが、複雑な形状に加工できるような高い加工性が求められている。また、近年の電子機器をはじめとした反射板搭載装置におけるデザインの複雑化に伴って、高加工性に対する要求は強い。そのため、現在、反射率の高さと加工性の高さとを両立させた反射板について盛んに検討されている。
【0005】
今までに、このような液晶ディスプレイのバックライトに用いられる反射板に関しては、アルミニウム板上に、樹脂100質量部に対して酸化チタンを150〜300質量部を含有する膜厚50〜100μmの下塗り層と、該下塗り層上に、樹脂100質量部に対して酸化チタン顔料を100〜250質量部を含有し、光沢が15以下で、且つ膜厚10〜30μmの上塗り層を形成させた液晶ディスプレイのバックパネル用の高拡散反射塗装金属板が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、特許文献2には、バインダー100体積部に対して白色顔料が150体積部以上、1500体積部未満の高顔料濃度層、またはバインダーと白色顔料と5vol%以上35vol%未満の空隙率を有する被覆層を、少なくとも一層形成することにより、高い拡散反射率を有する被覆材料、および当該材料を塗装した金属板が提案されている。
【特許文献1】特開2002−172735号公報
【特許文献2】特開2006−192660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの文献に開示されている塗膜は、反射率を向上させるために高濃度の酸化チタンが配合されている。特に、特許文献2に開示されている塗膜の各成分を質量部に換算すると、バインダーの比重を1.2、酸化チタンの比重を4.9としたとき、バインダー100質量部に対して、612〜6120質量部の酸化チタンが配合されていることになる。しかしながら、このように多量の酸化チタンを含む塗膜は極めて脆くなるので、反射板を所望の形状に加工するとき、塗膜が容易に割れるなどの問題が避けられない。
塗膜の強度を向上させるためには、塗膜中の酸化チタンの含有量を減らすことが有効であると考えられる。ただし、塗膜中の酸化チタンの含有量を減らすと、塗膜の反射率も低下するという問題があった。すなわち、優れた加工性および高い反射率を有する被覆材料が求められていたが、いまだこれらの性能を満足する被覆材料は存在しなかった。
このような状況に鑑み、本発明は、優れた加工性および高い反射率を有する被覆材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の(メタ)アクリル系モノマー、および酸化チタンを含むアクリル塗料を用いることによって上記問題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち上記課題は以下の本発明のアクリル塗料により解決される。
[1] (A)(メタ)アクリル系樹脂10〜90質量部、
(B)(メタ)アクリル系モノマー90〜10質量部、
(C)酸化チタン、
を含む(メタ)アクリル塗料であって、
前記(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーは、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
前記化合物は、前記(メタ)アクリル系モノマー中に0.1〜80モル%含有されている、(メタ)アクリル塗料。
【化1】

[前記一般式(1)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
(CHCHO)、またnは1〜4であり、
は炭素数が1〜4のアルキル基である]
[2]前記(B)成分は、下記の一般式(2)、(3)、または(4)の化合物を含む、[1]に記載の(メタ)アクリル塗料。
【化2】

[前記一般式(2)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜15の炭化水素基を表す]
【化3】

[前記一般式(3)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜12のアルキレン基を表す]
【化4】

[前記一般式(4)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜10のアルキレン基を表す]
[3]前記酸化チタンは、前記(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して60〜100質量部である、[1]または[2]に記載の(メタ)アクリル塗料。
[4]前記(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.1〜20質量部のポリイソシアネートをさらに含む[1]〜[3]いずれかに記載の(メタ)アクリル塗料。
[5]前記ポリイソシアネートは、活性メチレン型ブロックイソシアネートである、[4]に記載の(メタ)アクリル塗料。
【0010】
また、上記課題は本発明の被覆材料により解決される。
[6]前記[1]に記載の(メタ)アクリル塗料に含まれる前記(B)(メタ)アクリル系モノマーを重合してなる塗膜を有する、被覆材料。
[7]前記塗膜は、酸化チタン含有量が異なる隣接した2つの層を含み、
酸化チタン含有量が高い層Xと酸化チタン含有量が低い層Yの界面は、前記塗膜の表層から5〜50%の厚みに存在し、かつYは基材と接している、[6]に記載の被覆材料。
[8]前記XとYにおける、塗膜100質量部あたりの酸化チタン質量部をx、yとしたときに、x/yで定義される濃度比は、1.1〜1.8である、[7]に記載の被覆材料。
【0011】
さらに、上記の課題は、本発明の被覆材料の製造方法によって解決される。
[9]前記[1]に記載の(メタ)アクリル塗料を基材に塗布する工程、および前記基材を一次加熱した後に、前記一次加熱よりも高い温度で前記基材を二次加熱する工程を含む、被覆材料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、優れた加工性および高い反射率を有する被覆材料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.本発明の(メタ)アクリル塗料
本発明の(メタ)アクリル塗料は、
(A)(メタ)アクリル系樹脂10〜90質量部、
(B)特定の化合物を含む(メタ)アクリル系モノマー90〜10質量部、ならびに
(C)酸化チタンを含むことを特徴とする。
本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルまたはメタアクリル」の意味である。すなわち「(メタ)アクリル塗料」とはアクリレート系モノマー、メタアクリレート系モノマーを含む塗料である。本発明では、「(メタ)アクリル」を単に「アクリル」、「(メタ)アクリル塗料」を「塗料」と称することもある。
【0014】
(A)(メタ)アクリル系樹脂
本発明の塗料は(A)成分として(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂は、後述する(B)成分の(メタ)アクリル系モノマーの重合体とともに、塗料のマトリックス樹脂(「ビヒクル」ともいう)となる。本発明においては(メタ)アクリル系モノマーが溶媒のような役割を担うことが好ましいため、(メタ)アクリル系樹脂は、((メタ)アクリル系モノマーに溶解することが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合して得られる熱可塑性樹脂を意味する。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが含まれる。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合してなる樹脂が好ましい。このような樹脂を成分として含む塗料から形成された塗膜は、耐熱性に優れるからである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルが含まれる。中でも、本発明の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、入手が容易であるため、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0017】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの共重合体であることがさらに好ましい。このような(メタ)アクリル系樹脂は分子内に水酸基を有する。水酸基は官能基であるため、後述するとおり、架橋剤としてイソシアネート等が添加された場合にこれらと反応し、塗膜に架橋構造を導入できる。架橋構造が導入された塗膜は、強度・靭性・耐熱性に優れる。
【0018】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの例には、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(BHEA)、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPA)、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPMA)が含まれる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、この中でもHEMAが好ましく、その含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対し、2〜30質量部であることが好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂として、上記した樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を併用してもよい。
【0019】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は50,000〜400,000である。本発明において「〜」はその両端の数値を含む。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって、標準ポリスチレン検量線より測定される。(メタ)アクリル系樹脂の分子量が高すぎると(B)成分であるアクリル系モノマーへの溶解性が低下する。一方、(メタ)アクリル系樹脂の分子量が低すぎると塗膜性能が低下する。(メタ)アクリル系樹脂の数平均分子量が前記範囲にあると両者のバランスに優れる。
【0020】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、10〜60℃であることが好ましい。Tgは示差走査熱量計(DSC)法により測定される。Tgが60℃より高くなると、塗膜の加工性、耐衝撃性が劣化しやすい。また、Tgが10℃より低くなると、塗膜性能の低下や、塗膜のベタつきが生じるおそれがある。以上から(メタ)アクリル系樹脂のTgは10〜60℃であることが好ましい。
【0021】
(B)(メタ)アクリル系モノマー
本発明の塗料は(B)成分として(メタ)アクリル系モノマーを含む。(メタ)アクリル系モノマーとは、分子内にアクロイル基、メタクロイル基を有する重合性化合物をいう。本発明において、(メタ)アクリル系モノマーは、塗料としたときに溶媒のような役割を担うことが好ましいため、(メタ)アクリル系モノマーは室温で液状のものが好ましい。前述のとおり(メタ)アクリル系モノマーは「アクリル系モノマー」とも呼ばれる。
【0022】
本発明のアクリル系モノマーは下記一般式(1)で表される化合物を含み、当該化合物の含有量は、全アクリル系モノマー中0.1〜80モル%である。このような一般式(1)で表される化合物は、「エーテル系アクリレート」とも呼ばれる。
【0023】
【化5】

【0024】
前記一般式(1)中のRは水素原子またはメチル基を表す。
(CHCHO)であり、nは1〜4である。*はRの向きを示しており、Rの炭素原子はアクリル酸の酸素原子と結合している。
【0025】
前記一般式(1)で表される化合物は、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。nは1〜4の整数を表すが、中でも、n=2であることが好ましい。また、Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表し、当該アルキル基は分岐アルキル基であってもよい。Rとしては、エチル基が好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表されるエーテル系アクリレートの例には、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレートが含まれる。
【0027】
本発明のアクリル塗料は、塗料中の(メタ)アクリル系モノマーが重合されて塗膜を形成する。この際、エーテル系アクリレートが特定量存在すると、塗料中に含まれる酸化チタンが塗膜表層部(空気界面側)へ集中して存在するようになる。この現象は以下のように推察される。
【0028】
本発明のアクリル塗料は、(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーが溶媒のような役割を担うため、(A)成分である(メタ)アクリル系樹脂を溶解させ、均一となった溶液中に(C)成分である酸化チタンが分散した状態になる。当該塗料から形成された膜(「塗布膜」ともいう)を加熱すると、(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーの重合が進行する。ところが、(B)成分として添加されているエーテル系アクリレートは、モノマーの状態では(A)成分および他の(B)成分と相溶するものの、重合が進行すると、(A)成分や他の(B)成分との相溶性が低下する。その結果、相分離が生じ、主として(A)成分が塗膜表層部に押し出される。その際に、(A)成分と一緒に酸化チタンも表層側へ移送される。よって、表層部に酸化チタン高濃度層を有する塗膜が形成される。ただし、メカニズムはこれに限定されない。
【0029】
エーテル系アクリレートは塗料中に0.1モル%以上存在すれば上記相分離が生じる。しかしながら、エーテル系アクリレートが多すぎると、塗膜のTgが低下し、塗膜に粘着性が生じるため好ましくない。そのため、エーテル系アクリレートの含有量は、(B)成分中、0.1〜80モル%である。本発明において、塗膜のTgは、DSC方法によって測定することができる。
【0030】
本発明のアクリル系モノマーは、下記一般式(2)、(3)、または(4)の化合物を含むことが好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
前記一般式(2)中のRは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数が1〜15の炭化水素基を表し、アルキル基、分岐アルキル基、アリール基であってもよい。中でもRは10〜15のアルキル基であることが好ましい。本発明において前記一般式(2)の化合物は、「モノアクリレート」とも呼ばれる。
【0033】
前記一般式(2)で表されるモノアクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸アリールエステルが含まれる。
【0034】
【化7】

【0035】
前記一般式(3)中の、Rは水素原子またはメチル基である。Rは炭素数が1〜12のアルキレン基を表し、分岐アルキレン基であってもよい。中でもRは炭素数が5〜7のアルキレン基であることが好ましい。一般式(3)の化合物は二官能性アクリレートであり、アクリル系モノマーの重合体(アクリル系ポリマーともいう)に架橋構造を導入することができる。このようにアクリル系ポリマーが架橋構造を有すると、塗膜の強度、耐熱性が向上する。本発明において一般式(3)の化合物は、「ジアクリレート」とも呼ばれる。
【0036】
前記一般式(3)で表されるジアクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0037】
【化8】

【0038】
一般式(4)中の、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数が1〜10のアルキレン基を表し、分岐アルキレン基であってもよい。中でもRは2〜6のアルキレン基であることが好ましく、ブチレン基であることがより好ましい。一般式(4)の化合物は水酸基を有するので「ヒドロキシアクリレート」とも呼ばれる。水酸基は種々の化合物と反応するため、塗料の成分とした場合にはその反応性が高くなるほか、アクリル系ポリマーに種々の性能を付与することができる。
【0039】
前記一般式(4)で表されるヒドロキシアクリレートの例には、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0040】
上記した(1)〜(4)のモノマーの組成は、エーテル系アクリレート0.1〜80モル%であれば特に限定されない。しかしながら、塗装の際の重合性、得られる塗膜の強度などを向上させる観点から、モノアクリレートは7〜75モル%、ジアクリレートは0〜30モル%、ヒドロキシアクリレートは2〜5モル%であることが好ましい。
【0041】
(C)酸化チタン
本発明の塗料は(C)成分として酸化チタンを含む。酸化チタンは屈折率が高いため、当該酸化チタンを含有させた塗料からは、酸化チタンとマトリックスとの界面において高反射率を示す塗膜が得られる。反射率とは、2つの媒質の境界面で反射する光の強度と入射する光の強度の比をいう。塗膜の反射率を測定する方法は、後で詳細に説明する。酸化チタンの粒径は100〜400nmであることが好ましく、200〜300nmであることがより好ましい。塗膜における分散状態が良好であり、高い反射率が得られるからである。
【0042】
一般に、酸化チタンは、チタン鉱石を硫酸溶解する工程を経る「硫酸法」と、チタン鉱石を塩素化する工程を経る「塩素法」により製造される。本発明においてはいずれの方法で製造された酸化チタンを用いてもよいが、不純物が少なく高反射率の(メタ)アクリル塗料を得る観点から、塩素法によって得られた酸化チタンが好ましい。このような塩素法でつくられた酸化チタンは、不純物が少なくかつ白色度が高いからである。
【0043】
酸化チタンは表面処理されていることが好ましい。表面処理方法の例には、無機物または有機化合物による表面処理が含まれる。本発明の酸化チタンは有機化合物により表面処理されていることが好ましい。(A)成分の(メタ)アクリル系樹脂や(B)成分の(メタ)アクリル系モノマーへの分散性が良好となるからである。また、酸化チタンにはルチル型とアナターゼ型とがあるが、本発明の酸化チタンとしては、ルチル型であることが好ましい。アナターゼ型の酸化チタンは光触媒作用を発現し、塗膜性能が低下することがあるためである。
【0044】
本発明の(メタ)アクリル塗料における(A)、(B)成分の配合量は、(A)成分:(B)成分=「10〜90質量部」:「90〜10質量部」である。しかしながら、塗膜の耐熱性、耐候性、靭性を考慮すると、(A)成分:(B)成分=「10〜50質量部」:「90〜50質量部」であることが好ましく、「10〜30質量部」:「90〜70質量部」であることがより好ましい。
【0045】
また、酸化チタン(C)の配合量は、被覆材料の加工性および反射性を良好にする観点から、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して60〜100質量部であることが好ましい。本発明では、(A)成分と(B)成分とを合わせて「マトリックス」と称することがある。
【0046】
(D)その他添加剤
本発明の塗料は、熱ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。本発明の塗料は、(B)成分を重合させて塗膜を形成するが、塗料が熱ラジカル重合開始剤を含むと、重合が進行しやすいからである。熱ラジカル重合開始剤とは、熱エネルギーを吸収することによりラジカル種を発生する化合物をいう。好ましい熱ラジカル重合開始剤の例には、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤が含まれる。中でも、本発明の熱ラジカル重合開始剤としては、高い反応性を有するため、過酸化物系熱ラジカル重合開始剤が好ましい。熱ラジカル重合開始剤として、上記したものを単独で用いてもよいし、上記したもののうち2種類以上を併用してもよい。さらにナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの分解促進剤を併用してもよい。
【0047】
熱ラジカル重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系樹脂と(メタ)アクリル系モノマーの合計量(マトリックス)100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.3〜3質量部であることがより好ましい。熱ラジカル重合開始剤の配合量が少ないと重合に時間がかかり、さらには塗装時にモノマーの揮発分が多くなるので塗装作業性が低下する。一方、熱ラジカル重合開始剤の配合量が過剰であると、反応時に多量の気泡が発生し、ワキ、肌荒れなどの塗膜欠陥が生じやすい。以上から、熱ラジカル重合開始剤の配合量は上記範囲であることが好ましい。
【0048】
過酸化物系熱ラジカル重合開始剤の例には、イソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシベンゾエートが含まれる。中でも1分間半減期温度が100〜170℃の熱ラジカル重合開始剤が好ましく、1分間半減期温度が130〜150℃の熱ラジカル重合開始剤がより好ましい。1分間半減期温度とは、熱ラジカル重合開始剤を不活性ガス下、一定の温度で1分間熱分解反応を行った際に、熱ラジカル重合開始剤濃度が元の半分になるときの温度である。
【0049】
本発明の塗料はアクリル系モノマーを架橋させるための架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の例には、ポリイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、シランカップリング剤系架橋剤が含まれる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いもよい。
架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100質量部に対し、0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。架橋剤を添加することにより塗膜の強度、耐熱性が向上する。
【0050】
本発明の塗料は、ポリイソシアネート系架橋剤を含むことが好ましい。ポリイソシアネート系架橋剤中の複数のイソシアネート基が、アクリル系モノマーに含まれる水酸基と反応するため、塗膜中に架橋構造を形成しやすいからである。また、(A)成分である(メタ)アクリル系樹脂が、水酸基を含んでいる場合、ポリイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基は、(A)成分中の水酸基とも反応する。その結果、(A)成分と(B)成分の一部、および(B)成分同士の一部が化学的に架橋された構造を有する塗膜が得られる。このような架橋構造を有する塗膜は、塗膜の強度、耐熱性に特に優れる。
【0051】
ポリイソシアネート系架橋剤の例には、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート;これらイソシアネートをトリメチロールプロパンなどと付加反応させたイソシアネート化合物;イソシアヌレート化物;ビュレット型化合物;イソシアネートと、ポリエーテルポリオールポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でマスク(ブロック化)したブロックイソシアネートが含まれる。
【0052】
本発明のイソシアネート系架橋剤としては、ブロックイソシアネートが好ましい。このようなブロックイソシアネートは、常温では水酸基と反応しないため、ブロックイソシアネートが添加された塗料は、保存安定性に優れる。一方で、ブロックイソシアネートは、ブロック剤が外れる温度まで加熱されると、ブロック剤が外れて活性イソシアネート基が再生され、水酸基との高い反応性を有するようになる。よって、当該ブロックイソシアネートを含む塗料は、常温における貯蔵安定性が高く良好でありながら、物性が良好な塗膜を形成できる。
【0053】
ブロックイソシアネートとしては公知のものを用いてよいが、そのブロック剤の例には、以下のものが含まれる。
マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン型ブロック剤。
ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム型ブロック剤。
フェノール、クレゾール等のフェノール型ブロック剤。
アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等の酸アミド型ブロック剤。
ブチルメルカプタン等のメルカプタン型ブロック剤。
コハン酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド型ブロック剤。
イミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール型ブロック剤。
尿素、チオ尿素等の尿素型ブロック剤。
ヒドラジン、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等のヒドラジン型ブロック剤。
N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸型ブロック剤。
ジフェニルアミン、アニリン等のアミン型ブロック剤。
エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン型ブロック剤。
【0054】
中でも、本発明のブロックイソシアネートとしては、オキシム型ブロックイソシアネートまたは活性メチレン型ブロックイソシアネートが好ましい。これらは、比較的低温(90〜150℃)でブロック剤が外れるため、塗装作業性に優れるからである。特に、活性メチレン型ブロックイソシアネートは、90℃程度でブロック剤が外れるものがあるので好ましい。このような活性メチレン型ブロックイソシアネートの例には、旭化成ケミカルズ株式会社社製、K6000が含まれる。
【0055】
オキシム型ブロックイソシアネートは、イソシアネート基の炭素原子が、前述のオキシム型ブロック剤中のオキシム基の酸素原子と結合されることによりブロック化されている。このためオキシム型ブロックイソシアネートは、水酸基と反応した後、またはブロック剤が外れた後にオキシム化合物を生成する。当該化合物は(B)成分のラジカル反応を阻害する場合がある(特開2007−217561号公報の段落0011参照)。
【0056】
一方、活性メチレン型のブロックイソシアネートは、イソシアネート基の炭素原子が、前述の活性メチレン型ブロック剤中のメチレン基の炭素原子と結合されることによりブロック化されている。このため、活性メチレン型のブロックイソシアネートは水酸基と反応した後にアルコールを生成する。当該アルコールは(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーのラジカル重合を阻害しない。
さらに、活性メチレン型のブロックイソシアネートは、ブロック剤が外れた際に生成するメチレン化合物が(B)成分の重合を促進させる。そのため、イソシアネート系架橋剤として活性メチレン型ブロックイソシアネートを用いると、ラジカル重合開始剤の量を低減でき、滑らかな塗装面を持ちながら、強靭な塗膜を得ることができる。
【0057】
以上から、本発明のブロックイソシアネートとしては、活性メチレン型ブロックイソシアネートが特に好ましい。前記メチレン化合物が(B)成分の重合を促進させるメカニズムは明らかではないが、メチレン基にラジカルが発生し、ラジカル開始剤として関与すると推察される。
【0058】
イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤であるエポキシ系架橋剤の例には、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンが含まれる。
【0059】
前記アジリジン系架橋剤の例には、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネートが含まれる。
【0060】
前記金属キレート系架橋剤の例には、アルミニウムイソプロピレートジイソプロポキシビスアセチルアセトンチタネート、アルミニウムトリエチルアセトアセテートが含まれる。
【0061】
前記メラミン樹脂系架橋剤の例には、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が含まれる。
【0062】
シランカップリング剤系架橋剤の例には、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシランが含まれる。
【0063】
本発明の塗料は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤とは、塗膜の柔軟性を向上させるために配合される添加剤である。本発明に用いられる可塑剤は、1分子中に3個以上のエステル結合をもつエステル化合物が好ましい。このような可塑剤の例には、トリメリット酸誘導体;ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどの脂肪酸誘導体;リン酸誘導体;ポリエステル系可塑剤が含まれる。可塑剤として、これらの化合物を単独で用いてもよいし、あるいはこれらの化合物の2種類以上を併用してもよい。
可塑剤の配合量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。塗膜にベタつきなどを発生させることなく、可塑剤の効果を発現できるからである。また可塑剤として分子量500以上程度の高分子化合物を用いると、塗膜加工時の衝撃により塗膜が破損することを防止できる。
【0064】
本発明の塗料は、酸化チタン以外の顔料を含んでいてもよい。顔料の例には、体質顔料、無機・有機の着色顔料、防錆顔料が含まれる。体質顔料の例には、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウムが含まれる。無機着色顔料の例には、硫化亜鉛、鉛白、黄色酸化鉄、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデン赤、パーマネントレッド、ベンガラ、黄土、クロムグリーン、紺青、群青、アルミ粉末、銅合金粉末が含まれる。有機着色顔料の例には、ハンザエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、フラバンスロンイエロー、インダンスレンブルーなどが含まれる。上記顔料は所望の性能を発現するように選択される。顔料は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
顔料の配合量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜100質量部とすることが好ましい。
【0065】
本発明の塗料は、上記のような添加剤以外にも、充填材、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。
【0066】
(E)本発明の塗料の製造方法
本発明の塗料は公知の方法で製造できる。例えば、アクリル系モノマー(B)に(メタ)アクリル系樹脂(A)を溶解させて樹脂組成物を得る工程、当該樹脂組成物と酸化チタン(C)、および必要に応じて各種添加剤(D)を混合する工程、により得られる。各成分を混合する手段は特に限定されないが、三本ロール、ビーズミルなどを用いることが好ましい。
このようにして製造された塗料は、粘度が0.1〜10Pa・sであることが好ましく、2〜4Pa・sであることがより好ましい。
【0067】
2.本発明の塗料を塗装してなる被覆材料
本発明の塗料を基材の表面に塗布した後、塗料中に含まれるモノマーを重合させると、当該塗料が塗装された被覆材料が得られる。本発明では塗料を基材に塗布して得られる重合前の膜を「塗布膜」、当該膜中のモノマーを重合させて得た膜を「塗膜」と呼ぶ。
【0068】
図1は、本発明の被覆材料の一態様を示す。図中、10は被覆材料、12は基材、14は塗膜、18は下塗り層である。
【0069】
基材12とは、塗料が塗布される材料である。基材12の例には、金属材料、セラミック材料、高分子材料が含まれるが、中でも金属材料が好ましく、鋼がより好ましい。基材12の形状は特に限定されないが、「板」や「箔」であることが好ましく、鋼板であることが特に好ましい。
【0070】
塗膜14は、酸化チタン濃度が異なる隣接した2つの層を含む。この2つの層のうち、酸化チタン低濃度層14aは、基材12側であり下塗り層18と隣接するように存在する。一方で、酸化チタン高濃度層14bは、被覆材料10の表層付近に酸化チタン低濃度層14aと隣接して存在する。このような構造は、既に述べたとおり、エーテル系モノマーを含有させた塗料を重合させることによって得られる。
【0071】
「酸化チタン低濃度層が基材と接する」とは、図1に示すように基材12の表面に下塗り層18が存在する場合、酸化チタン低濃度層14aが当該下塗り層18と接触している状態をいう。また、下塗り層18を含まない場合は、「酸化チタン低濃度層が基材と接する」とは、酸化チタン低濃度層14aと基材12とが直接接触している状態をいう。
【0072】
本発明の被覆材料は、塗膜に酸化チタン高濃度層14bを有するため、高い反射率を達成できる。さらに基材と接する酸化チタン低濃度層により塗膜の柔軟性、基材との高い密着性が確保できる。従って本発明の被覆材料は、高い反射率を有し、優れた加工性を有する。
酸化チタン低濃層14aと酸化チタン高濃度層14bとの界面16は、塗膜14の表層から5〜50%の厚みに存在し、かつ酸化チタン低濃層14aは基材12と接していることが好ましい。中でも、上記界面16は塗膜の表層から5〜10%の厚みに存在することがより好ましい。上記表層から界面16までの厚みは、塗膜14全体の厚みをL2、酸化チタン高濃度層14bの厚みをL3とするとき、(L3/L2)×100(%)で算出される。また、本発明の塗膜14全体の厚みL2は、50〜400μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましい。
【0073】
酸化チタン高濃度層14bおよび酸化チタン低濃度層14aにおける塗膜100質量部あたりの酸化チタン質量部をx、yとしたときに、x/yで定義される濃度比は、1.1〜1.8であることが好ましい。さらに、塗膜14の反射率を向上させる観点から、前記xの値は、50〜100質量部であることが好ましく、60〜80質量部であることがより好ましい。
【0074】
前記濃度比は、塗膜14の断面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)や二次イオン質量分析装置(SIMS)で分析することにより求められる。具体的には、EPMAなどで塗膜断面の酸化チタン分布を測定し、酸化チタン低濃度層14aと酸化チタン高濃度層14bとの界面を特定し、各層に含まれる酸化チタン量を定量することによって求めることができる。
また、酸化チタン低濃度層14aと酸化チタン高濃度層14bとの界面は顕微鏡観察によっても特定することができる。
【0075】
本発明の塗膜における反射率は、JIS Z8722に準拠した物体色の測定に使用される分光測色計(ミノルタ製 CM3700d、光源C)を用いて、450〜750nmの波長に対する反射率として測定できる。本発明では、波長650nmにおける塗膜の反射率が95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。
【0076】
また、本発明の塗膜の加工性は、JIS K5600−5−1に準拠し、直径2mmのマンドレルでT曲げ試験を行った場合において、塗膜割れなどの不良が認められない程度であることが好ましい。
本発明の被覆材料は、塗膜の上に、さらに保護膜や各種機能層などを有していてもよい。
【0077】
3.本発明の被覆材料の製造方法
本発明の被覆材料は、発明の効果を損なわない程度で任意に製造できるが、以下その好ましい製造方法を記載する。
発明の被覆材料は、
(a)(A)〜(C)成分を含む(メタ)アクリル塗料を基材に塗布する工程、および
(b)前記基材を一次加熱した後に、前記一次加熱よりも高い温度で前記基材を二次加熱する工程、を含む方法で製造されることが好ましい。
【0078】
(a)の工程において、塗料を基材に塗布する方法の例には、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコートによる方法が含まれるが特に限定されない。塗布膜の厚みは、最終的に得られる塗膜が所望の膜厚となるように調整される。ただし、塗布膜を空気中で重合する場合は、膜厚が100μm以上であることが好ましい。100μm未満の膜厚では、ラジカルが空気中の酸素により失活しやすいからである。
【0079】
(b)の工程(「焼付工程」ともいう)では、先ず、塗料が塗布された基材を低温で加熱(一次加熱)した後、当該加熱よりも高い温度で基材を加熱(二次加熱)することにより、塗布膜中の(B)成分を段階的に重合させる。(B)成分を段階的に重合させることにより、モノマーの蒸発等を制御できるため、良好な塗膜が得られる。この場合、一次加熱の条件と二次加熱の条件は、二次加熱温度が一次加熱温度よりも高ければ特に限定されない。これらの条件は(B)成分であるアクリル系モノマーの重合速度と、蒸発の度合いを勘案して、適宜選択すればよい。
【0080】
また、塗料が既に述べた架橋剤を含む場合は、(b)工程の一次加熱段階において、ラジカル重合よりも架橋剤による架橋反応を優先的に進行させることが好ましい。本発明においては、架橋剤としてブロック化イソシアネート(特に活性メチレン型ブロック化イソシアネート)を用いることが好ましいため、一次加熱段階は、イソシアネートと(B)成分中のヒドロキシアクリレート中の水酸基との反応を進行させることが好ましい。また、(A)成分が水酸基を含む場合は、イソシアネートと(A)成分中の水酸基の反応も進行させることが好ましい。
【0081】
そして、(b)工程の二次加熱段階において、ラジカル重合を進行させることが好ましい。このように段階的に反応させることにより、架橋剤による架橋構造が形成され、かつ(B)成分の重合が十分に進行した塗膜が得られる。もし、(b)工程の一次加熱段階において架橋剤による架橋反応よりもラジカル重合を優先的に進行させてしまうと、架橋剤による架橋構造を塗膜中に形成することが困難となる場合がある。先に(B)成分の重合体が形成されてしまうと分子のモビリティが低下するからである。このような塗膜は、強度が低下することがある。
【0082】
以上から、一次加熱時の温度は、イソシアネート系架橋剤等による架橋反応がラジカル重合よりも優先して生じる温度であることが好ましい。したがって一次加熱温度は、ブロック剤が外れる温度以上であってアクリル系モノマーの重合開始温度以下とすることが好ましい。本発明においては、90℃程度でブロック剤が外れる活性メチレン型のブロックイソシアネートを用い、ラジカル開始剤として1分間半減期温度が130〜150℃のものを用いることが好ましいため、一次加熱温度は80〜90℃とすることが好適である。加熱時間は特に限定されないが、30〜600秒程度とすることが好ましい。二次加熱温度は、130〜150℃とすることが好ましく、加熱時間は30〜600秒とすることが好ましい。
【0083】
焼付工程において基材を加熱する方法は特に限定されない。例えば、基材を熱風炉の中に一定時間放置して加熱すればよい。あるいは、設定温度の異なる複数の熱風炉を用意して、一方の熱風炉に基材を一定時間放置した後、基材を他方の熱風炉に移動して、さらに一定時間放置してもよい。焼付工程では、表面の塗膜強度および耐擦過性に優れた塗膜を得る観点から、全焼付工程を通じて、塗布膜中の未重合(メタ)アクリル系モノマーのうち、2質量%以上を揮発させることが好ましく、5〜10質量%を揮発させることがより好ましい。
【0084】
本発明の被覆材料は、前記塗布工程を複数回行ういわゆる「重ね塗り」によって得てもよい。しかしながら、高い塗布作業性を実現させる観点からは、塗布工程を1回行う「一度塗り」とすることが好ましい。前述のとおり、本発明の塗料は、焼付工程において塗布膜の重合が進行する中で、塗布膜中の酸化チタンがその表層部近傍に移動する。そのため、塗料中に極端に高濃度の酸化チタンが含まれていない場合でも、塗膜の表層部に酸化チタンの高濃度層を設けることができる。これにより、本発明の塗料は、塗布工程において高い塗装性を実現し、さらに塗膜となった後は、反射率および加工性がいずれも高くなる。
【0085】
本発明の被覆材料は、アクリル塗装を塗装する前の基材に下塗り塗装をしてもよい。下塗り塗装は、例えばアクリル変性エポキシ樹脂塗料、アクリル変性ポリエステル樹脂塗料などを化成処理した基材に塗布・焼付けすることにより行える。こうして得た下塗り塗膜は本発明の塗料との密着性が良好であるため好ましい。下塗り塗料は防錆顔料を含んでいてもよい。防錆顔料は下塗り塗料の樹脂100質量部に対し10〜30質量部とすることが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明に関する実施例および比較例について説明する。ただし、本発明の実施例は下記の形態に限定されるものではない。
【0087】
各実施例および比較例では、アクリル系モノマーとして以下の5種類の化合物を用いた。
エトキシジエチレングリコールアクリレート(ECA):化学式(1)の化合物
ラウリルアクリレート(LA):化学式(2)の化合物:化学式(3)の化合物
3−メチル−1,5ペンタンジオールジアクリレート(MPDA)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):化学式(3)の化合物
4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):化学式(4)の化合物
【0088】
[実施例1;塗料1〜4の調製]
メチルメタクリレート(MMA):50質量部とn−ブチルメタアクリレート(nBMA):46質量部とヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA):4質量部からなる重量平均分子量:14×10のコポリマーを(メタ)アクリル系樹脂とした。
この(メタ)アクリル系樹脂とアクリル系モノマーとを表1に示す組成で混合し、アクリル系モノマーに(メタ)アクリル系樹脂が溶解した樹脂組成物を得た。
当該樹脂組成物100質量部に対し、イソシアネート架橋剤(旭化成ケミカルズ株式会社製、K6000)8.0質量部、熱ラジカル重合開始剤として有機過酸化物(日本油脂株式会社社製、パーオクタO)2.5質量部、酸化チタン(石原産業製、CR58−2)80質量部を添加した。そして、この混合物を三本ロールで混練することにより塗料1〜5を調製した。
【0089】
【表1】

【0090】
[実施例2;被覆材料の調製]
片面当たりめっき付着量が45g/mであり、板厚が0.5mmである溶融亜鉛めっき鋼板を基材とし、Ni置換処理後にクロムフリーの化成皮膜を形成した。このようにして得た化成処理基材にアクリル変性エポキシ樹脂を塗布し、230℃×40秒で加熱して乾燥膜厚が5μmの下塗り塗膜を形成した。
【0091】
下塗り塗膜の上に塗料1〜4をそれぞれナイフコートで塗布し、塗布膜を形成した。次に、当該基板を、板温度90℃となるように30秒間加熱(一次加熱)し、続いて板温度150℃となるように60秒間加熱(二次加熱)し、被覆材料を得た。塗布膜の厚みは、塗膜の膜厚が150〜200μmとなるように調整された。得られた被覆材料の塗膜は、二層構造となり表層側に酸化チタン高濃度層、基材側に酸化チタン低濃度層が存在した。
【0092】
得られた各被覆材料は以下のとおりに評価した。
1)曲げ試験
JIS K5600−5−1に準拠して直径2mmのマンドレルでT曲げを実施した(2R曲げ)。曲げ加工終了直後、および曲げ加工終了から1日後の時点において、曲げ部外側にある塗膜を観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表2に示す。
塗膜に割れが認められるもの:×(不良)
割れは無いが、深いしわが認められ用途によっては問題となりうるもの:△(やや不良)
割れが無く、しわが生じていないか、問題にならない程度に軽微なしわが認められるもの:○(良好)
【0093】
2)反射率
JIS Z8722に準拠した物体色の測定に使用される分光測色計(CM−3700d,光源C)を用いて、450〜750nmの波長における各被覆材料の反射率を測定した。650nmの波長に対する反射率を表2に示した。
【0094】
[比較例1]
実施例1と同様にして、表1に示す組成の比較用塗料5を調製した。続いて実施例2と同様にして塗料5を塗装した被覆材料を作製した。被覆材料の塗膜は、厚み方向における酸化チタンの分散状態は一定であった。当該被覆材料を実施例2と同様にして評価した結果を表3に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
表2に示されるとおり、本発明のアクリル塗料を塗装して得た被覆材料は、高い反射率、優れた加工性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のアクリル塗料は塗装作業性に優れ、これを塗装して得た被覆材料は、高い反射率、優れた加工性を有している。以上から本発明のアクリル塗料は、反射板用塗料として有用であり、本発明のアクリル塗料を塗装して得た被覆材料は、反射材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の被覆材料の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0100】
10 被覆材料
12 基材
14 塗膜
14a 酸化チタン低濃度層
14b 酸化チタン高濃度層
16 酸化チタン高濃度層−酸化チタン低濃度層界面
18 下塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル系樹脂10〜90質量部、
(B)(メタ)アクリル系モノマー90〜10質量部、
(C)酸化チタン、
を含む(メタ)アクリル塗料であって、
前記(B)成分である(メタ)アクリル系モノマーは、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
前記化合物は、前記(メタ)アクリル系モノマー中に0.1〜80モル%含有されている、(メタ)アクリル塗料。
【化1】

[前記一般式(1)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
(CHCHO)、またnは1〜4であり、
は炭素数が1〜4のアルキル基である]
【請求項2】
前記(B)成分は、下記の一般式(2)、(3)、または(4)の化合物を含む、請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料。
【化2】

[前記一般式(2)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜15の炭化水素基を表す]
【化3】

[前記一般式(3)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜12のアルキレン基を表す]
【化4】

[前記一般式(4)中の、
は水素原子またはメチル基を表し、
は炭素数が1〜10のアルキレン基を表す]
【請求項3】
前記酸化チタンは、前記(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して60〜100質量部である、請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料。
【請求項4】
前記(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.1〜20質量部のポリイソシアネートをさらに含む請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートは、活性メチレン型ブロックイソシアネートである、請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料。
【請求項6】
請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料に含まれる前記(B)(メタ)アクリル系モノマーを重合してなる塗膜を有する、被覆材料。
【請求項7】
前記塗膜は、酸化チタン含有量が異なる隣接した2つの層を含み、
酸化チタン含有量が高い層Xと酸化チタン含有量が低い層Yの界面は、前記塗膜の表層から5〜50%の厚みに存在し、かつYは基材と接している、請求項6に記載の被覆材料。
【請求項8】
前記XとYにおける、塗膜100質量部あたりの酸化チタン質量部をx、yとしたときに、x/yで定義される濃度比は、1.1〜1.8である、請求項7に記載の被覆材料。
【請求項9】
請求項1に記載の(メタ)アクリル塗料を基材に塗布する工程、および
前記基材を一次加熱した後に、前記一次加熱よりも高い温度で前記基材を二次加熱する工程を含む、被覆材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−144009(P2009−144009A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321315(P2007−321315)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】