説明

(メタ)アクリル樹脂組成物及びこれを用いた解体方法

【課題】初期接着性に優れ、かつ、容易に解体(剥離)可能とする(メタ)アクリル樹脂組成物の提供。
【解決手段】(M)(メタ)アクリレート100質量部と(C)光重合開始剤25〜100質量部を含有する (メタ)アクリル樹脂組成物。(M)(メタ)アクリレートが(A)多官能(メタ)アクリレート及び/又は(B)単官能(メタ)アクリレートを含有し、(C)光重合開始剤はベンジルジメチルケタールであり、硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃である。(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質を含有しても良い。(D)の形状が球状であり、(D)の平均粒径が5〜200μmである。(D)の 粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25である。該 (メタ)アクリル樹脂組成物を含有する易解体性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は初期接着性に優れるだけでなく、使用時の接着安定性にも優れる。又、使用後は接着体にエネルギー照射することにより、容易に解体(剥離)し、基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)可能とする(メタ)アクリル樹脂組成物、これを用いる易解体性接着剤及び接着・解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種の基材を接着剤で貼り合わせた複合接着体は、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いられている。近年、環境問題、省資源問題等により、接着基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)させるため、不要となったときには容易に解体(剥離)可能な接着剤が求められている。
【0003】
このような要求に対して熱硬化性接着剤中に有機系熱膨張性粒子を30〜300質量部の割合で添加することによって接着後、加熱処理により接着力が著しく低下して容易に自己剥離が可能になる熱剥離型接着剤が報告されている(例えば、特許文献1参照)。一方、このような熱硬化性にして熱剥離型の接着剤では硬化時の温度を高めると、有機系熱膨張性粒子が膨張し接着することができないため、低温での硬化が必須である。しかしながら、低温での硬化は長時間を要するため生産性に劣るという問題があるだけでなく、加熱処理により接着体を解体するため接着基材が熱により破損してしまうという問題があった。
【0004】
特許文献2では、特定の官能基を有するエポキシ樹脂と硬化剤を混合し接着後、加熱処理を施すことによって樹脂構造が分解し、容易に解体(剥離)可能であることが報告されている。しかしながら、このようなエポキシ樹脂と硬化剤を混合する易解体性接着剤であっても硬化に数時間から数日を要すため、生産性に問題があるだけでなく、加熱処理により接着体を解体するため、接着基材が熱により破損してしまうという問題がある。
【0005】
更に特許文献3では、刺激によりガスが発生するガス発生剤を含有することを特徴とする光硬化性刺激剥離型接着剤組成物が報告されている。光硬化性であるため速やかに硬化し生産性には優れるものの、接着剤中に含まれるガス発生剤は熱に対する安定性が少ない。従って、使用時に容易にガスを発生し、解体してしまうため実用性に著しく乏しい。
【0006】
特許文献4では、樹脂硬化体のガラス転移温度をコントロールしかつ樹脂組成物に溶解しない粒状物質を適量添加することを特徴とする接着性組成物及びそれを用いた仮固定方法が報告されている。しかしながら、このような接着性組成物及びそれを用いた仮固定方法は剥離を行うために、接着体を90℃以下の温水に浸漬しなければならない。接着基材が水溶性である場合や、電子部品である場合にも実用できることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−171648号公報
【特許文献2】特開2006−111716号公報
【特許文献3】特開2006−188586号公報
【特許文献4】国際公開第2008/018252号パンフレット
【発明の開示】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、生産性に優れ、接着基材に熱などによるダメージを与えず、使用時に優れた接着性、接着安定性を含む一方、必要に応じて容易に剥離することができる光硬化型易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物、易解体性接着剤及びこれを用いた接着・解体方法を提供することを目的とする。
【0009】
即ち本発明は、(M)(メタ)アクリレート100質量部と(C)光重合開始剤25〜100質量部を含有する (メタ)アクリル樹脂組成物であり、(M)(メタ)アクリレートが(A)多官能(メタ)アクリレート及び/又は(B)単官能(メタ)アクリレートを含有する該 (メタ)アクリル樹脂組成物であり、(C)光重合開始剤がベンジルジメチルケタールである該(メタ)アクリル樹脂組成物であり、得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃である該 (メタ)アクリル樹脂組成物であり、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質を含有する該(メタ)アクリル樹脂組成物であり、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の形状が球状である該(メタ)アクリル樹脂組成物であり、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の平均粒径が5〜200μmである該 (メタ)アクリル樹脂組成物であり、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の レーザー回折法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25である該(メタ)アクリル樹脂組成物であり、該(メタ)アクリル樹脂組成物を含有する易解体性接着剤であり、該易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着工程により得られた接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法であり、該易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射した後、接着工程により得られた接着体を30〜300℃に加熱して、接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法であり、該易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射した後、接着工程により得られた接着体を0〜100℃の水に浸漬して、接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法であり、該解体工程に用いる照射のエネルギー源として、キセノンガス封入のフラッシュランプを用いる接着・解体方法であり、接着工程に用いる可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギー量にて易解体接着剤に照射して接着体を接着して接着体を得、解体工程に用いる可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいて300〜150000mJ/cmのエネルギー量にて易解体接着剤に照射して接着体を解体する該接着・解体方法である。
【0010】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物は光硬化型であるため、初期接着性に優れ、使用後は接着体に可視光線又は紫外線の少なくとも一方を照射することにより、容易に解体(剥離)し、基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)可能とする。又、使用時は熱安定性に優れる。従って、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いられる易解体接着剤として極めて有用であり、その解体方法としては可視光線又は紫外線の少なくとも一方を照射することのみでも解体することができ、工業的に優位な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する(M)(メタ)アクリレートは、(メタ)アクロイル基を有する化合物である。(M)(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、(A)多官能(メタ)アクリレート及び/又は(B)単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
【0012】
本発明で使用する(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや2個以上の(メタ)アクロイル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0013】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0014】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0016】
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーの中では、易解体性の点で、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0018】
(A)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、効果が大きい点で、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、10〜80質量部が好ましく、25〜65質量部がより好ましい。
【0019】
(B)単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
単官能(メタ)アクリレートの中では、接着性及び易解体性の点で、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート及びフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又はフェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
(B)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、効果が大きい点で、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、20〜90質量部が好ましく、35〜75質量部がより好ましい。
【0022】
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。又、可視光線や紫外線の活性光線により (メタ)アクリル樹脂組成物に硬化歪みが発生し、接着体の解体に至る。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体等、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシフェニル酢酸などのオキシフェニル酢酸誘導体が挙げられる。光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、易解体性の点で、ベンジルジメチルケタールが好ましい。
【0023】
(C)光重合開始剤の使用量は、(M)100質量部に対して、25〜100質量部が好ましく、30〜95質量部がより好ましい。25質量部以上であれば、接着体の易解体性に必要な(メタ)アクリル樹脂組成物の硬化歪みが十分に発生し、解体性が確実に得られるし、100質量部以下であれば粉体状の光重合開始剤であっても溶解性に問題はない。より好ましい形態として(C)成分を30質量部以上使用することにより、光照射量に依存なく硬化可能となり、硬化歪みによる易解体性が向上する。
【0024】
又、前記(M)の配合組成物に、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジブチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジオクチル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリエチレングリコールアシッドフォスフェート等のビニル基又は(メタ)アクリル基を有するリン酸エステルを併用することにより、金属面への密着性を更に向上させることができる。
【0025】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃の範囲内であることが好ましい。前記硬化体のガラス転移温度がこの範囲内にあることで、易解体性に必要な (メタ)アクリル樹脂組成物の硬化歪みによるうねりが大きく生じる。その結果、接着面積が減少し、接着強度が低下するので、容易に接着体を解体することができる。易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50℃以上であると使用時にずれを生じにくく、接着精度の面で優れる。50℃以下であると解体性に優れる。接着精度と易解体性の点で、前記易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物から得られる硬化体のガラス転移温度は、−25〜45℃がより好ましく、−20〜42℃が更に好ましく、0〜40℃が尚更一層好ましい。
【0026】
本発明に於いては、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質を、(M)成分と共に使用することが好ましい。これにより、硬化後の組成物が一定の厚みを保持することが容易となり、精度良く接着できる。更に、接着剤の厚みを制御することにより、安定した解体性を得ることができる。
【0027】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質としては、一般的に使用される有機、無機粒子いずれでもかまわない。有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリポリプロピレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられ、無機粒子としてはガラス、シリカ、アルミナ、チタン等のセラミック粒子が挙げられる。
【0028】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質は、接着剤の膜厚の制御の点で、球状であることが好ましい。有機粒子としては、メタクリル酸メチルモノマー、スチレンモノマーと架橋性モノマーとの公知の乳化重合法により単分散粒子として得られる架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。無機粒子としては球状シリカが、粒子の変形が少なく、粒径のバラツキによる硬化後の組成物の膜厚のバラツキが少なくなる点で、好ましい。その中でも更に粒子の沈降等による貯蔵安定性や組成物の反応性の点で、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子や架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上がより一層好ましい。架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上が更に好ましい。
【0029】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質のレーザー法による平均粒径は5〜200μmが好ましい。前記粒状物質の平均粒径が5μm以上であると易解体性に優れ、200μm以下であると接着時にずれを生じにくく、接着精度が優れる。易解体性と接着精度の点で、平均粒径は8〜150μmがより好ましく、9〜120μmが更に好ましい。尚、本発明における粒子径及び粒径分布の標準偏差は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」により測定した。粒子径は、体積基準である。
【0030】
又、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の粒径のレーザー法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差は0.0001〜0.25が好ましい。この範囲に粒状物質の粒径の標準偏差があると粒径のバラツキによる硬化後の組成物の膜厚のバラツキが少なくなり、接着精度が向上する点で、優れる。接着精度及び易解体性の点で、粒状物質の粒径の標準偏差は0.0001〜0.15が更に好ましく、0.0001〜0.1がより一層好ましく、0.0001〜0.08が尚更一層好ましく、0.0001〜0.072が著しく好ましい。
【0031】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の使用量は、接着強度、接着精度、易解体性の点で、(M)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、0.2〜6質量部が更に一層好ましい。
【0032】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物は、その貯蔵安定性向上のため少量の重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0033】
これらの重合禁止剤の使用量は、(M)100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上で貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下で良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0034】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物においては、極性有機溶媒を共に用いても良い。
【0035】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等の各種エラストマー、無機フィラー、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤及び界面活性剤等の添加剤を使用しても良い。
【0036】
本発明の易解体性接着剤を使用した接着・解体方法としては、接着工程として該易解体接着剤を用いて可視光線若しくは紫外線を易解体接着剤に照射し、接着基材同士を接着する。接着工程における可視光線若しくは紫外線のエネルギー量としては波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギー量であることが好ましい。1〜10000mJ/cmであれば易解体性接着剤が硬化し、十分な接着強度が得られる。1mJ/cm以上であれば接着剤が十分に硬化し、10000mJ/cm以下であれば易解体接着剤に硬化歪みが発生せず、接着強度が大きくなる。接着強度の点で、10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
【0037】
その後、接着工程により得られた接着体を解体する解体工程として、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射することにより該接着体を解体することができる。解体工程における可視光線若しくは紫外線のエネルギー量としては波長365nmにおいて300〜600000mJ/cmが好ましい。300〜600000mJ/cmであれば照射することにより硬化歪みが大きく発生し、該硬化体自体が大きくうねりを生じる。その結果、接着面積の減少が達成されて接着強度が低下するので、容易に接着体を解体することができる。解体時のエネルギー量は易解体性と、光エネルギーによる接着基材の劣化の点で、500〜200000mJ/cmがより好ましく、1000〜150000mJ/cmが最も好ましい。
【0038】
上述の解体工程においては、該接着体を加熱しながら可視光線若しくは紫外線を照射しても良い。加熱しながら可視光線若しくは紫外線を照射することにより、該接着剤硬化体により大きな硬化歪みを発生させることができ、より容易に解体することが可能となる。易解体性と、熱による接着基材の劣化の点で、該接着体を加熱する温度は30〜300℃が好ましく、40〜280℃がより好ましく、50〜250℃がより一層好ましい。
【0039】
本発明の易解体性接着剤を使用した接着・解体方法としては、上述した光エネルギーによる接着・解体方法を用いた後、30〜300℃に接着体を加熱することにより、硬化体に発生した硬化歪みによるうねりが大きくなり、より容易に解体することができる。易解体性と、熱による接着基材の劣化の点で、加熱する温度は40〜280℃がより好ましい。
【0040】
本発明の接着工程におけるエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプなど公知のエネルギー照射源であれば使用することができる。
【0041】
本発明の解体工程におけるエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等公知のエネルギー照射源が挙げられる。これらの中では、キセノンガス封入のフラッシュランプを用いることが好ましい。キセノンガス封入のフラッシュランプは、形状を自由に設計できる。接着体の形状に合わせてフラッシュランプを設計することにより、連続的にエネルギーを照射することができるため著しく生産性に優れる。
【0042】
更に、本発明の易解体性接着剤を使用した接着・解体方法としては、上述した光エネルギーによる接着・解体方法を用いた後、0〜100℃の水に接着体を浸漬することにより、接着基材と易解体性接着剤界面に水が侵入し、より容易に解体できる。又、水の温度は高温である方が、硬化体に発生した硬化歪みによるうねりが大きくなり、水が侵入しやすくなり、容易に解体することができる。解体性と温水による接着基材の劣化の点で、水の温度は30〜95℃がより好ましい。
【0043】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
(易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物の作製)
以下に記す手順により易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物を作製した。(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本曹達社製「TE−2000」(ウレタンアクリレート、以下「TE−2000」と略す)30質量部、(メタ)アクリレートである1,9−ノナンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステル 1,9ND」、以下「1,9−ND」と略す)15質量部、(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す、疎水性の(メタ)アクリレートである)30質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変成アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」、疎水性の(メタ)アクリレートである)25質量部、(C)光重合開始剤としてBDK:ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGACURE651」、以下「BDK」と略す)30質量部、(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質(以下「(D)粒状物質」という、表では「(A)、(B)、(C)に溶解しない粒状物質」ということもある)として平均粒径100μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.063、の球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、重合禁止剤として、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学工業社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部使用して易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物を作製した。得られた易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物を使用して、以下に示す評価方法にてガラス転移温度、引張せん断接着強さを行った。それらの結果を表1〜2に示す。又、積算光量は紫外線積算照度計(アイグラフィック社製:EYE UV METER UVPF-A1(365nm受光器使用))により測定した。(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。
【0045】
(評価方法)
ガラス転移温度:易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物を、1mm厚のシリコンシートを型枠とし、PETフィルムに挟み込んだ。易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物を、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて上面から硬化させた後、更に下から365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて硬化させ、厚さ1mmの易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物の硬化体を作製した。作製した硬化体をカッターにて長さ50mm×幅5mmに切断し、ガラス転移温度測定用硬化体とした。得られた硬化体をセイコー電子産業社製、動的粘弾性測定装置「DMS210」により、窒素雰囲気中にて前記硬化体に1Hzの引張方向の応力及び歪みを加え、昇温速度毎分2℃の割合で昇温しながらtanδを測定し、該tanδのピークトップの温度をガラス転移温度とした。
【0046】
引張せん断接着強さ(表の「接着強さ」):JIS K 6850に従い測定した。具体的には被着材とした耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、25mm×25mm×2.0mm)を用いて、接着部位を直径8mmの円形として、作製した易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物にて、2枚の耐熱ガラスを貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長の積算光量500mJ/cmの条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0047】
粒状物質の平均粒径粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差(表の「(A)、(B)、(C)に溶解しない粒状物質の粒径の標準偏差」):レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製「SALD−2200」)により測定した。
【0048】
(接着・解体方法(A))
接着基材である青板硝子A(150mm×150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した易解体性接着剤を2.5g塗布し、青板硝子B(80mm×80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を500mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長の光を易解体性接着剤に2000mJ/cmずつ5回照射し、合計10000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを解体することができた。解体性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、該フック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOH ENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張り、解体するために必要な引っ張り強度を測定した。解体の確認として、引っ張り強度を表1〜2に記載した(表の「解体の確認」)。
【0049】
(実施例2)
(接着・解体方法(B))接着基材である青板硝子A(150mm×150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した易解体性接着剤を2.5g塗布し、青板硝子B(80mm×80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を100mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を易解体性接着剤に2000mJ/cmずつ3回照射し、合計6000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を60℃に加温したホットプレート上で5分間加熱し、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを解体することができた。解体性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させた。吸盤付きフックのフック部にデジタルプッシュプルゲージ(AIKOH ENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)を接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張ることにより、解体するために必要な引っ張り強度を測定した。解体の確認として、引っ張り強度を表1〜2に記載した。
【0050】
(実施例3)
(接着・解体方法(C))接着基材である青板硝子A(150mm×150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した易解体性接着剤を2.5g塗布し、青板硝子B(80mm×80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を2000mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を易解体性接着剤に2000mJ/cmずつ2回照射し、合計4000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を80℃の温水に5分間浸漬した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させた。吸盤付きフックのフック部にデジタルプッシュプルゲージ(AIKOH ENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)を接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張ることにより、解体するために必要な引っ張り強度を測定した。解体の確認として、引っ張り強度を表1〜2に記載した。
【0051】
【表1】



【0052】
【表2】



【0053】
(実施例4〜6、比較例2〜4)
(D)粒状物質として平均粒子径75μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.066の球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−75S」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例1、2、3と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)、(B)、(C)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0054】
(使用材料)
UV−3000B:ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3000B」)
R−684:ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」)
【0055】
(実施例7)
(D)粒状物質として平均粒子径10μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.058の球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学社製「SP−210」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例1と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0056】
(実施例8)
(D)粒状物質として平均粒子径40μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.062の球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学社製「GS−240」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例1と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0057】
(実施例9)
(D)粒状物質として、平均粒子径140μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.086の球状架橋ポリメチルメタクリレート粒子(ガンツ化成社製「GM−5003」を目開き150μmの篩と125μmの篩を用いて篩分けして作製)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例1と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0058】
(使用材料)
1.6−HX:ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステル1.6−HX」)
【0059】
(実施例10、11、比較例1)
(D)粒状物質として平均粒子径20μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.061の球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学社製「GS−220」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例1と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0060】
(実施例12、13)
(D)粒状物質として平均粒子径20μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.061の球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学社製「GS−220」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例2と同様にして仮固定用接着剤を作製した。得られた仮固定用接着剤について、実施例2と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(B)を行った。又、(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【0061】
(使用材料)
I−907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGACURE907」)
【0062】
(実施例14〜16)
(D)粒状物質として平均粒子径20μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.061の球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学社製「GS−220」)を使用し、表1〜2に示す種類の原材料を表1〜2に示す組成で使用したこと以外は実施例3と同様にして易解体性接着剤を作製した。得られた易解体性接着剤について、実施例3と同様にガラス転移温度、引張せん断接着強さ、接着・解体試験(A)、接着・解体試験(B)、接着・解体試験(C)を行った。又、解体試験の際の剥離用UV照射はキセノンガス封入のフラッシュランプ(ウシオ電機社製:FUV―201)を使用した。(D)粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表1〜2に示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の易解体性接着剤用(メタ)アクリル樹脂組成物は光硬化型であるため、生産性及び初期接着性に優れる。使用後は接着体にエネルギー照射することにより、容易に解体(剥離)し、基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)可能とすることができるため、使用時の接着安定性にも優れ、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いることができる。本発明は、非常に有用である。
【0064】
本発明の接着・解体方法は、接着基材に熱などによるダメージを与えず、必要に応じて光を照射することにより容易に剥離することができる。近年、環境問題、省資源問題等により、接着基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)させることが求められており、産業上、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(M)(メタ)アクリレート100質量部と(C)光重合開始剤25〜100質量部を含有する (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項2】
(M)(メタ)アクリレートが(A)多官能(メタ)アクリレート及び/又は(B)単官能(メタ)アクリレートを含有する請求項1記載の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項3】
(C)光重合開始剤がベンジルジメチルケタールである請求項1乃至2記載の(メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項4】
得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃である請求項1乃至3の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項5】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質を含有する請求項1乃至4記載の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項6】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の形状が球状である請求項5記載の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項7】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の平均粒径が5〜200μmである請求項5乃至6記載の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項8】
(D)(M)(メタ)アクリレートと(C)光重合開始剤に溶解しない粒状物質の レーザー回折法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25である請求項5乃至7記載の (メタ)アクリル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8記載の(メタ)アクリル樹脂組成物を含有する易解体性接着剤。
【請求項10】
請求項9記載の易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着工程により得られた接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法。
【請求項11】
請求項9記載の易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射した後、接着工程により得られた接着体を30〜300℃に加熱して、接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法。
【請求項12】
請求項9記載の易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射して、接着基材同士を接着して接着体を得る接着工程と、易解体接着剤に可視光線若しくは紫外線を照射した後、接着工程により得られた接着体を0〜100℃の水に浸漬して、接着体を解体する解体工程とを有する接着・解体方法。
【請求項13】
請求項10乃至12記載の解体工程に用いる照射のエネルギー源として、キセノンガス封入のフラッシュランプを用いる接着・解体方法。
【請求項14】
接着工程に用いる可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギー量にて易解体接着剤に照射して接着体を接着して接着体を得、解体工程に用いる可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいて300〜150000mJ/cmのエネルギー量にて易解体接着剤に照射して接着体を解体する請求項10乃至12記載の接着・解体方法。

【公開番号】特開2010−248353(P2010−248353A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98500(P2009−98500)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】