説明

(メタ)アクリル系フィルム、及びそれを用いたマーキングフィルム、レセプターシート

【課題】高い引張強さ及び伸び特性を有するフィルムを提供する。
【解決手段】(A)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、(B)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、とから形成され、上記成分(A)と(B)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い引張強さをもちながら伸び特性に優れる、(メタ)アクリル系フィルムに関する。本発明のフィルムは、上記特性を有するため、粘着テープの基材として、住宅・建築物の内外装飾材、建具の表面化粧材、車両内外装材等に使用でき、ハロゲンを含んでいないため、焼却時において有害ガス発生の問題があるポリ塩化ビニル樹脂の代替品として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のように表面化粧用に用いられるフィルムとしては、引張強さと伸び特性のバランスの取れた塩化ビニル系樹脂が広く用いられてきた。しかし、近年になって、塩化ビニル系樹脂は焼却時にダイオキシン等の猛毒物質や塩化水素等の有毒ガスが発生する場合があるという問題が指摘され、塩素を含有しない他の樹脂による代替品が検討されている。
【0003】
この問題を解決するために、アクリル系樹脂が候補に挙げられ、アクリル系樹脂のベースフィルム表面にアクリル系樹脂の保護シートを積層した化粧用シート(特許文献1参照)、オレフィン系樹脂のベースフィルム表面にアクリル系樹脂の保護シートを積層した化粧用シート(特許文献2参照)等が開示されている。
【0004】
しかし、アクリル系樹脂をフィルムに加工した場合、そのフィルムは硬質で脆く化粧用シート等の使用に耐えることができない。このようなアクリル系樹脂の脆さを改善し柔軟性を付与するために、一般にアクリル系ゴム粒子等のゴム成分を配合することが一般的であり、多数の技術の提案がなされている。
【0005】
例えば、(A)メチルメタクリレートを主体としたモノマーを重合してなる硬質熱可塑性アクリル系樹脂20〜98重量部と、(B)多層構造ポリマー粒子2〜80重量部とをブレンドしてなる耐衝撃性に優れるアクリル系樹脂組成物が開示されている(特許文献3及び特許文献4参照)。上記多層構造ポリマー粒子は、
(I)25℃以上のTgを有するメチルメタクリレート主体のモノマーを乳化重合してなる硬質ポリマーである第1層、
(II)25℃以下のTgを有する、炭素数1〜8個のアルキル基を有するアルキルアクリレート45〜99.99重量%、アリル(メタ)アクリレートなどの多官能グラフト剤0.1〜10重量%、及びジメタクリレートなどの多官能性架橋剤5重量%以下、その他の共重合可能なモノマー40重量%以下であるモノマー混合物を、第1層の存在下に重合してなる第2層、
(III)25℃以上のTgを有するメチルメタクリレート主体のモノマーを第2層存在下に重合してなる第3層、
よりなる3層構造を有し、第1層5〜30重量%、第2層40〜85重量%、第3層10〜30重量%よりなり、粒径200〜900Åを有するものである。
【0006】
しかしながら、これらのアクリル系樹脂では高い引張強さ及び伸び特性を両立することはできなかった。
【0007】
一方、カルボキシル基を含有するアクリル系ポリマーに、アミノ基を含有したアクリル形ポリマーを添加してなる樹脂が記載されている(特許文献5参照)。ここには、(1)炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、カルボキシル基含有モノマー0.5〜10wt%を共重合させて得た重量平均分子量80万以上の樹脂組成物100重量部に対して、(2)炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルメタアクリレート、シクロアルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレンより選ばれる1種又は2種以上のモノマーを主成分とし、アミノ基含有モノマー0.5〜10重量%を共重合させて得た、40℃以上のTg、重量平均分子量10万以下の樹脂組成物1〜40重量%添加してなる粘着剤組成物が開示されているが、この組成物は粘着剤であり、フィルムとして使用した場合、引張強さがまったくでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−48014号公報
【特許文献2】特開平10−157018号公報
【特許文献3】特公昭60−17406号公報
【特許文献4】特公昭60−30698号公報
【特許文献5】特開平10−310754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、その課題とするところは、燃焼時に塩素系の有毒ガスを発生しないアクリル系ポリマーを使用したフィルムであって、高い引張強さ及び伸び特性を有するフィルムを提供することにある。本発明に係るフィルムは2種類以上のポリマーを混合することにより作製されるが、ガラス転移点の高い(メタ)アクリレート系ポリマーはフィルムの強い引張強さを発揮させ、ガラス転移点の低い(メタ)アクリレート系ポリマーはフィルムの低温での伸び特性を良好にさせる。
【0010】
また、ポリマー中のカルボキシル基と3級アミノ基が、酸−塩基の強固なイオン結合を形成するため、ポリマー同士の混和性を良好にし、フィルムの強靭さを発揮させる。
さらに、(メタ)アクリル系ポリマーを用いることにより塩化ビニル系樹脂を用いたフィルムと比較しても優れた耐候性を発揮するフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、以下の(1)〜(8)が提供される。
(1)(A)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(B)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、上記成分(A)と(B)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【0012】
(2)(C)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(D)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、上記成分(C)と(D)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【0013】
(3)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、JIS K 6251で規定する25℃での引張強さが5MPa以上であり、伸びが25%以上であることを特徴とする(メタ)アクリル系フィルム。
【0014】
(4)(A)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(B)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(E)前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、上記成分(A)と(B)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【0015】
(5)(C)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(D)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(E)前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、上記成分(C)と(D)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【0016】
(6)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、JIS K 6251で規定する25℃での引張強さが5MPa以上であり、伸びが25%以上であることを特徴とする(メタ)アクリル系フィルム。
【0017】
(7)着色剤受容面である表面とそれと対向する裏面とを有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の(メタ)アクリル系フィルムと、
当該(メタ)アクリル系フィルム表面に受容された着色剤と、
当該(メタ)アクリル系フィルム裏面に固定的に配置され、当該(メタ)アクリル系フィルムを被着体に接着する接着剤を含有する接着層
とを備えたマーキングフィルム。
【0018】
(8)静電トナー印刷を用いて上記(7)のマーキングフィルムを製造するのに用いられるレセプターシートであって、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の(メタ)アクリル系フィルムと、前記(メタ)アクリル系フィルム裏面に固定的に配置された前記接着層とを備えたレセプターシート。
【発明の効果】
【0019】
本発明の(メタ)アクリル系フィルムは、従来のアクリル系フィルムでは達成することができなかった、高い引張り強度及び伸び特性の両者を併せ持つ。また、(メタ)アクリル系であるため、優れた耐候性を発揮する。さらに、ハロゲンを含んでいないため、焼却時における有害ガス発生の問題がある塩化ビニルの代替品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のマーキングフィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
((メタ)アクリル系フィルム)
本発明の(メタ)アクリル系フィルムは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーより形成される。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。上記カルボキル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーとカルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを共重合することにより得られる。上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーとアミノ基を含有する不飽和モノマーとを共重合することにより得られる。
【0022】
この共重合は、ラジカル重合により行なうことが好ましい。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、0.05〜5質量部とするのがよい。
【0023】
本発明の(メタ)アクリル系フィルムにおいて、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのTgを高く、好ましくは0℃以上とした場合には、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのTgはそれより低く(好ましくは0℃以下)にし、前者のTgを低く(好ましくは0℃以下)とした場合には後者のTgを高く(好ましくは0℃以上)にするのがよい。高いTgを有する(メタ)アクリル系ポリマーはフィルムの高い引張強さを発揮させ、低いTgを有する(メタ)アクリル系ポリマーはフィルムの低温での伸び特性を良好にするからである。
【0024】
また、上記ポリマーの重量平均分子量は、通常は、10,000以上、好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。なお、この重量平均分子量は、GPC法によるスチレン換算分子量を意味する。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノエチレン性不飽和モノマーは、上記ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2 (式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基である)で表されるものの他、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類も含まれる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレートや2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどがあり、所望のガラス転移温度や引張強さ、伸び特性を得るために、その目的に応じて1種又は2種以上を使用する。
【0026】
例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)など0℃以上のTgを有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以上の(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0027】
また、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)など、単体で重合したホモポリマーが0℃以下のTgを有する成分を主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以下の(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0028】
ここで、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めた。
1/Tg=X1/(Tg1+273.15)+X2/(Tg2+273.15)+・・・+Xn/(Tgn+273.15)
(Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移点
Tg2:成分2のホモポリマーのガラス転移点
X1:重合の際に添加した成分1のモノマーの重量分率
X2:重合の際に添加した成分2のモノマーの重量分率
X1+X2+・・・+Xn=1)
【0029】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを構成する、カルボキシル基を含有した不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0030】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、具体的には80〜95.5質量部の範囲で、及びカルボキシル基を含有した不飽和モノマーを0.5〜20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0031】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを構成する、アミノ基を含有した不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及びビニルイミダゾールなどの含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される3級アミノ基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0032】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、具体的には80〜95.5質量部の範囲で、及びアミノ基を含有した不飽和モノマーを0.5〜20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0033】
上記のようにカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとをそれぞれ別々に重合した後、通常のフィルム成形方法により、本発明に係る(メタ)アクリル系フィルムを形成することができる。具体的には、例えば、これらのポリマーの溶液を混合し、ライナーの剥離面上に塗布し、乾燥・固化させることによりフィルムを形成することができる。この塗布装置としては、通常のコータ、たとえば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を用いることができる。固化操作は、揮発性溶媒を含む塗料の場合の乾燥操作や、溶融した樹脂成分を冷却する操作と同様である。また、このフィルムは、溶融押出成形法によっても形成することができる。
【0034】
これらのフィルムの形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの配合比を変化することにより、所望の引張強さ及び伸び特性を有するフィルムを得ることができる。具体的には、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのうちTgが高いポリマーとTgが低いポリマーの配合比は10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜90:10、より好ましくは30:70〜90:10であり、Tgが高いポリマーを多くすることが好ましい。
【0035】
本発明のフィルムの形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを架橋させることが好ましい。架橋させることにより網目構造が形成され、低温における伸び特性がさらに向上する。架橋成分としては、カルボキシル基と反応することのできる官能基を有する架橋剤を用い、具体的にはビスアミド系架橋剤(例えば、3M製RD1054)、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCryl CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)等を用いる。この架橋剤の添加量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル系フィルムにおいて、引張強さは好ましくは3MPa以上であり、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上である。引張強さが3MPa未満であると、フィルムを被着体に施工する際に破れやすいという問題が生じるからである。また、本発明の(メタ)アクリル系フィルムにおいて、伸びは好ましくは25%以上であり、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは75%以上である。伸びが25%未満であると、施工時に破れやすいという問題が生じるからである。
【0037】
なお、この引張強さ及び伸びはJISK 6251に規定される方法に準拠し、以下の条件で測定される。
・測定サンプル形状: JIS K6251に記載される「ダンベル状3号形」
・引張速度300mm/min
・測定温度 5℃及び25℃の2水準
【0038】
また、測定結果は以下のようにしてまとめた。
引張強さ T(単位:MPa)
測定サンプルの切断に至るまでの最大引張力 F(単位:N)と、測定サンプルの断面積 A(単位:mm2)を測定し、以下の式から求めた。
T=F/A
伸び E (単位:%)
測定サンプルの切断時の標線間距離 L1(単位:mm)と、標線間距離 L0(25mm)を測定し、以下の式から求めた。
E=(L1−L0)/L0 × 100
【0039】
本発明の(メタ)アクリル系フィルムの厚さは特に制限はなく、従来の化粧用シートと同様の厚さのものとすることができる。具体的には、用途によっても異なるが一般に1〜1000μmの範囲から選ばれ、特に好ましい範囲は5〜500μm、さらに好ましくは、20〜150μmである。厚さが薄すぎると機械的強度が低下し、フィルムを被着体に接着した後で剥離する場合に、フィルムが破損するおそれがある。反対に厚すぎると、フィルムの柔軟性が低下するおそれがある。
【0040】
本発明の(メタ)アクリル系フィルムは市販の塩ビフィルムに比較して耐候性に優れ、促進老化試験後の表面光沢保持率、色差とも塩ビフィルムと同等もしくはそれ以上の性能を示す。
【0041】
なお、表面光沢保持率及び色差は次の様にして測定される。
まず、イソオクチルアクリレ−ト/メチルアクリレート/アクリル酸共重合体で組成比が70:22.5:7.5(質量比)からなるアクリル系粘着剤(溶剤は酢酸エチル、重量平均分子量36万、Tgは−7℃)を準備する。上記アクリル系粘着剤100質量部に対し、ビスアミド系架橋剤1.7質量部(固形分比)の粘着剤組成物を準備し、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布した。90℃で5分間加熱し乾燥及び架橋した。その後、上記(メタ)アクリル系フィルム等、測定用フィルムをラミネートし測定用サンプルの準備をした。前記測定用サンプルを厚さ1mmのアルミ板(A5082P)に貼り付け、ダイプラ・ウインテス製メタルウエザーメーター(KU-R5C1-A)に200時間投入後、表面光沢保持率と色差を測定した。照射条件は、光エネルギー60mW/cm2にて、温度60℃、湿度50%で4時間点灯→温度40℃、湿度98%で4時間消灯のサイクルであった。
【0042】
ポータブルグロスメーター(村上色彩技術研究所製GMX-202)にて60°表面光沢度を測定した。表面光沢保持率の計算式は以下のようである。
[表面光沢保持率(%)]={[照射後表面光沢度]/[照射前表面光沢度]}×100
【0043】
カラーメーター(日本電色製Σ90)にてL*、a*、b*を測定した。照射前の測定値をL1*、a1*、b1*、照射後の測定値をL2*、a2*、b2*として色差の計算式は以下のようである。
[色差]=[(L2*−L1*)2+(a2*−a1*)2+(b2*−b1*)21/2
【0044】
さらに、上記フィルムには、隠蔽性が要求される場合には隠蔽性顔料を添加することができ、その他、フィルムの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の添加剤の1種以上を添加しても良い。
【0045】
(マーキングフィルム)
本発明のマーキングフィルムの好適な一例について、図1に沿って説明する。図1は、本例のマーキングフィルムを模式的に示している。マーキングフィルム(100)中の(メタ)アクリル系フィルム(1)は、表面(11)及び裏面(12)を有し、表面(11)において受容された着色剤、すなわちトナー(2)を受容している。トナーの脱落等を防止する目的で、保護フィルム(3)をマーキングフィルム表面に設置することもできる。この場合、トナー(2)は、保護フィルム(3)を通して、保護フィルム(3)の最表面(31)から視認可能な画像を形成している。また、(メタ)アクリル系フィルム(1)の表面(11)にレセプター層(5)を設け、トナー(2)と(メタ)アクリル系フィルム(1)との密着性を上げることもできる。
【0046】
(メタ)アクリル系フィルム(1)の裏面(12)には、接着層(4)が固定的に配置されている。接着層は通常、平坦な接着面を形成するが、凹凸接着面を形成してもよい。この凹凸接着面には、接着層(4)の接着面(41)に、接着剤を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体表面と接着面(41)との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。
【0047】
(メタ)アクリル系フィルム(1)としては、上記の(メタ)アクリル系フィルムを用いる。着色剤は、通常トナー又はインクである。トナーはバインダ樹脂と、そのバインダ樹脂中に分散された顔料を含んでなる。バインダ樹脂は、例えば、塩酢ビ系コポリマー、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む混合物から形成される。
【0048】
保護フィルム(3)は、全体として光透過性を有する。光透過率は通常60%以上で、好適には70%以上、特に好適には80%以上である。本明細書における「光透過率」は、分光光度計又は、光度計の機能も備えるカラーメーターを使用し、550nmの光を用いて測定された全光線透過率を意味する。
【0049】
保護フィルム(3)は、透明性の高い樹脂を含む樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムの樹脂は、例えば、フッ素系樹脂、フタレート系ポリエステル(PET、PEN等)、アクリル樹脂や、耐石油性樹脂等である。フッ素系樹脂は、フッ素系モノマーを重合して得たポリマーである。フッ素系モノマーは、例えば、フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン等のフッ素系エチレンモノマーである。フッ素系モノマーに加えて、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリレート等の1種又は2種以上の共重合可能なモノマーを混合しても良い。また、フッ素系樹脂とアクリル樹脂とをブレンドした、樹脂組成物から保護フィルムを形成しても良い。なお、保護フィルムの厚さは、通常5〜120μm、特に好適には10〜100μmである。
【0050】
保護フィルム(3)を(メタ)アクリル系フィルム(1)に接着するには、通常、保護フィルム用接着層(30)を使用する。保護フィルム用接着層(30)の接着剤は、特に限定されないが、通常、粘着性ポリマーを含有する感圧接着剤である。(メタ)アクリル系フィルム表面(11)においてトナー(2)が形成した凹凸に良好に追従し、保護フィルム(3)と(メタ)アクリル系フィルム(1)との間に気泡が残らない様にそれらを互いに密着することができるからである。気泡は画像の視認性を低下させるので、気泡が残らない様にするのが良い。この保護フィルム用接着層(30)の厚さは、通常20〜100μm、特に好適には25〜80μmである。
【0051】
レセプター層(5)を形成する樹脂としては特に限定されるものではないが、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂等が使用できる。レセプター層を形成する樹脂のガラス転移点は、通常0〜100℃の範囲である。レセプター層のガラス転移点が高すぎるとトナー転写性能が低下し、鮮明な画像が得られないおそれがある。さらに、レセプター層のガラス転移点が高すぎると、マーキングフィルム全体の柔軟性が低下するおそれがある。一方、着色剤受容面の常温タックを効果的に低下させるのに、レセプター層のガラス転移点を0℃以上にするのがよい。この様にすれば、保護フィルムで被覆する前のマーキングフィルム前駆体どうしや、レセプターシートどうしが貼りつくことを効果的に防止できる。したがって、これらをロール状に保管した後、ロールを容易に巻きほどいて使用することが容易である。このレセプター層の厚さは、通常2〜50μm、好適には5〜40μmである。
【0052】
接着層(4)の接着剤は、特に限定されないが、通常、粘着性ポリマーを含有する感圧接着剤である。この様な感圧接着性の接着層としては、例えば、粘着性ポリマーを含有する単層フィルム状の感圧接着フィルムや、2つの感圧接着層を有する両面接着シートが好適に使用される。
【0053】
接着層(4)は、例えば、粘着性ポリマーを含有する接着剤の塗膜から形成できる。好ましい接着剤は、粘着性ポリマーと粘着性ポリマーを架橋する架橋剤とを含有する。本明細書において粘着性ポリマーとは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリマーである。粘着性ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル等が使用できる。
【0054】
粘着性ポリマーの合成の1例について、アクリル系ポリマーを例にとって説明する。まず、第1モノマーとして、アクリル性不飽和酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)やアクリロニトリル等の極性(メタ)アクリルモノマーを用意する。この第1モノマーと、第2モノマーとしてのアクリルモノマーとを混合し、モノマー混合物を調製する。第2モノマーとしては、アルキルアクリレート、例えば、イソオクチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等が使用できる。この様にして調製したモノマー混合物を、通常の重合方法、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等を用い、所定の分子量の粘着性ポリマーを合成する。
【0055】
粘着性ポリマーを架橋するのに架橋剤を用いる場合、架橋剤の添加量は、架橋剤の種類にもよるが、粘着性ポリマー100質量部に対して、通常0.02〜2質量部、好適には0.03〜1質量部である。架橋剤は、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物[イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)等の二塩基酸のビスアジリジン誘導体]等が使用できる。
【0056】
接着層のガラス転移点(Tg)は、好適には−50〜0℃、特に好適には−45〜−5℃である。接着層のTgが高すぎると、被着体とマーキングフィルムとの密着性が低下するおそれがあり、反対にTgが低すぎると、マーキングフィルムをロール状に巻いて保管した場合に、接着剤がロールの脇の部分(側面部分)からしみ出し、互いに重なったマーキングフィルムが貼りつくことを防止できないおそれがある。なお、接着層のTgは、動的粘弾性測定装置(Rheometrics Scientific Inc.社製、RDA−II)を用いて測定されたTanδから求めた値である。測定条件は、シェアレート=1ラジアン/秒のねじれモード、昇温範囲は−60〜100℃、昇温速度は5℃/秒である。試料の厚さは通常1〜2mmである。
【0057】
接着層の厚さは、通常5〜200μm、好適には20〜100μm、さらに好適には25〜80μmである。また、感圧接着層は、本発明の効果を損なわない限り、粘着付与剤、弾性微小球、粘着性ポリマー微小球、結晶性ポリマー、無機粉末、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していても良い。
【0058】
この接着層(4)は、通常、平坦な接着面を形成するが、前述の様な凹凸接着面を形成してもよい。凹凸接着面を形成する方法の1例についてここで説明する。
【0059】
まず、所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、粘着性ポリマーを含む塗料(接着シートの接着層形成用の接着剤塗料)を塗布、乾燥して接着層を形成する。これにより、接着層のライナーと接する面(これが、接着シートにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述の様に、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含んでなる様に予め設計される。
【0060】
この様な接着層の溝は、マーキングフィルムを施工する際に気泡残りを防止できる限り、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置し規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置し不規則なパターンの溝を形成しても良い。複数の溝が互いに略平行に配置される様に形成される場合、溝の配置間隔は10〜2,000μmであるのが好ましい。溝の深さ(接着面からレセプターフィルムの方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常10〜100μmである。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、略半楕円形である。
【0061】
このマーキングフィルム(100)は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、上記の(メタ)アクリル系フィルム(1)を準備する。ここで、このマーキングフィルム(100)がレセプター層(5)を含む場合、レセプター層をライナー上に形成し、このライナー付きレセプター層上に(メタ)アクリル系フィルムを形成する。この場合、本発明の効果を損なわない限り、(メタ)アクリル系フィルム(1)とレセプター層(5)の間に他の層、例えばプライマー層や接着層を配置してもよい。
【0062】
次に、上記(メタ)アクリル系フィルム(1)の裏面に接着剤層(4)を密着させる。接着層は、ライナーの剥離面に、接着剤を含有する塗布液を塗布、乾燥してライナー付き接着層を形成した後、このライナー付き接着層を(メタ)アクリル系フィルム(1)の裏面に積層し、密着させる。
【0063】
その後、(メタ)アクリル系フィルム(1)の表面に、トナー(2)により画像を形成し、必要によりその上に保護フィルム(3)を配置することにより、本発明のマーキングフィルム(100)を完成させることができる。トナー(2)を(メタ)アクリル系フィルム(1)の表面に転写して画像を形成する場合は、通常の印刷法を用い、トナーを転写して形成する。静電トナー印刷を用いる場合は、一時的にトランスファーメディアとよばれる仮担持体上へ画像を形成し、その画像を(メタ)アクリル系フィルム(1)の表面に加熱・加圧により転写する。
【0064】
このマーキングフィルムの全体の厚さは、通常30〜1500μm、好適には50〜950μmである。厚さが薄すぎると機械的強度が低下し、マーキングフィルムを被着体に接着した後で再剥離する場合に、破損するおそれがある。反対に厚すぎると、マーキングフィルムの柔軟性が低下するおそれがある。
【0065】
(レセプターシート)
本発明のレセプターシートは、トナー等の着色剤が適用される上記(メタ)アクリル系フィルムと、当該フィルムを被着体に接着する接着層とを備えた、接着層付きフィルムである。すなわち、上記マーキングフィルムにおける、トナー(2)及び保護フィルム(3)を含まず、(メタ)アクリル系フィルム(1)と接着層(4)から構成されている。従って、(メタ)アクリル系フィルムおよび接着層は、上記マーキングフィルムと同様の構成を用いることができ、またその形成方法も同様とすることができる。
【0066】
レセプターシート全体の厚さは、通常5〜1200μm、好適には25〜700μmである。厚さが薄すぎると機械的強度が低下し、マーキングフィルムを被着体に接着した後で再剥離する場合に、レセプターシートが破損するおそれがある。反対に厚すぎると、レセプターシートを含むマーキングフィルムの柔軟性が低下するおそれがある。
【0067】
実施例1
次の様にして本例の(メタ)アクリル系フィルムを作製した。
まず、メチルメタクリレート(MMA)94質量部とジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)6質量部とをメチルエチルケトン(MEK)150質量部に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(AVN)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で20時間反応させ、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は120,000、Tgは98℃であった。
【0068】
次に、n−ブチルアクリレート(BA)94質量部とアクリル酸(AA)6質量部とをモノマーとして用いた以外は上記と同じ手順でカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は260,000、Tgは−49℃であった。
【0069】
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が80:20となるように混合,攪拌した後、この攪拌溶液を、38μm剥離処理ポリエステルキャリアーフィルム(帝人社製:商品名ピューレックスTM A-71)に、乾燥後のフィルム厚みが50μmになるようにナイフコーターを用いて塗布し、100℃で20分間乾燥した後、(メタ)アクリル系フィルムを得た。
【0070】
このフィルムについて、JIS K6251に準拠した方法で、5℃及び25℃でそれぞれ300mm/minの速度で引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0071】
実施例2
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が70:30となるように混合した以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
【0072】
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0073】
実施例3
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が60:40となるように混合した以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
【0074】
実施例4
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が50:50となるように混合した以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0075】
実施例5
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が40:60となるように混合した以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0076】
実施例6
実施例1と同様にしてアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。次にエチルアクリレート(EA)94質量部とアクリル酸(AA)6質量部とをモノマーとした以外は上記と同じ手順でカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は260,000、Tgは−17℃であった。
【0077】
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が55:45(質量比)となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様の手順で(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、上記と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0078】
実施例7
実施例1と同様にしてアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。
次に2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)90質量部とアクリル酸(AA)10質量部とをモノマーとした以外は実施例1と同じ手順でカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は450,000、Tgは−60℃であった。
【0079】
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が65:35(質量比)となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様の手順で(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、上記と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0080】
実施例8
メチルメタクリレート(MMA)64質量部とn−ブチルアクリレート(BA)30質量部とジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)6質量部とをモノマーとした以外は実施例1と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は260,000、Tgは32℃であった。
【0081】
実施例1と同様にしてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が80:20(質量比)となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様の手順で(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、上記と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0082】
実施例9
上記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が65:35となるように混合した以外は実施例8と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、上記と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0083】
実施例10
まず、メチルメタクリレート(MMA)95質量部とメタクリル酸(MAA)5質量部とをメチルエチルケトン(MEK)150質量部に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(AVN)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で20時間反応させ、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は160,000、Tgは110℃であった。
【0084】
次に、n−ブチルアクリレート(BA)90質量部とジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)10質量部とをモノマーとした以外は上記と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は160,000、Tgは−50℃であった。
【0085】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が55:45となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0086】
実施例11
実施例10と同様にして、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。次に、n−ブチルアクリレート(BA)94質量部とジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)6質量部とをモノマーとした以外は上記と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は210,000、Tgは−49℃であった。
【0087】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が50:50となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0088】
実施例12
メチルメタクリレート(MMA)55質量部と、n−ブチルメタクリレート(BMA)40質量部と、メタクリル酸(MAA)5質量部とをモノマーとした以外は実施例11と同様にして、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は170,000、Tgは69℃であった。
【0089】
次に、実施例11と同様にして、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が75:25となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0090】
実施例13
n−ブチルメタクリレート(BMA)95質量部と、メタクリル酸(MAA)5質量部とをモノマーとした以外は実施例1と同様にして、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は170,000、Tgは26℃であった。
【0091】
次に、n−ブチルアクリレート(BA)92.5質量部と、1-ビニルイミダゾール(Vim)7.5質量部とをモノマーとした以外は上記と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は270,000、Tgは−45℃であった。
【0092】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液とアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液との固形分比が80:20となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0093】
実施例14
メチルメタクリレート(MMA)79質量部とn−ブチルアクリレート(BA)15質量部とジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)6質量部とをモノマーとした以外は実施例1と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は75,000、Tgは63℃であった。
【0094】
このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部と、実施例1と同様にして作製したカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液90質量部と、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部に対し0.5質量部の架橋剤A(3M製RD1054、ビスアミド系架橋剤)を混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0095】
次に、イソオクチルアクリレート70質量部、メチルアクリレート22.5質量部及びアクリル酸7.5質量部からポリマーを調製した。このポリマーの重量平均分子量は360,000、Tgは−7℃であった。このポリマーのMEK溶液とビスアミド系架橋剤を固形分比100:1.7で混合し、粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物をナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布した。90℃において5分間加熱し、乾燥及び架橋を行った。その後、上記の(メタ)アクリル系フィルムをこの粘着剤組成物とドライラミし、マーキングフィルムを得た。
【0096】
スコッチプリント9512システム(3M社製静電プリンター)を用いてトライデント(Trident、3M社製トランスファーメディア)に転写用デジタル画像を形成した。次に、オルカIII(3M社製ヒートラミネーター)を用いて上記マーキングフィルムに画像を熱転写した。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度135℃、下部ロール温度50℃、スピード70cm/分、圧力60psiであった。トライデントの紙キャリアを除去し、トナー画像が完全に転写されたことを目視により確認した。密着性試験としてトナーに碁盤目状に100個の切り込みを入れ、3M社製#610テープを貼り付け、高速で剥離した。#610テープ側にトナーの転移はなく、密着性は良好であることが確認された。
【0097】
実施例15
実施例14と同様にして調製した(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部に対し0.5質量部の架橋剤B(日清紡製カルボジライトV−07、トルエン溶液、NCO%=0.10%、カルボジイミド(NCN)当量200)を混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0098】
実施例14と同様の粘着剤組成物と上記アクリルフィルムをドライラミし、マーキングフィルムを得た。実施例14と同様にしてこのマーキングフィルムに画像を熱転写したところ、トナー画像が完全に転写されたことを目視によって確認した。3M社製#610テープ密着性試験において、#610テープ側にトナーの転移はなく、トナー密着性は良好であることが確認された。
【0099】
実施例16
実施例14と同様にして調製した(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部に対し1.0質量部の架橋剤C(日本触媒製ケミタイトPZ33(2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート])、分子量425)を混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0100】
実施例14と同様の粘着剤組成物と上記アクリルフィルムをドライラミし、マーキングフィルムを得た。実施例14と同様にしてこのマーキングフィルムに画像を熱転写したところ、トナー画像が完全に転写されたことを目視によって確認した。3M社製#610テープ密着性試験において、#610テープ側にトナーの転移はなく、トナー密着性は良好であることが確認された。
【0101】
実施例17
実施例14と同様にして調製した(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部に対し1.0質量部の架橋剤D(綜研化学製E−AX、エポキシ系架橋剤)を混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0102】
実施例14と同様の粘着剤組成物と上記アクリルフィルムをドライラミし、マーキングフィルムを得た。実施例14と同様にしてこのマーキングフィルムに画像を熱転写したところ、トナー画像が完全に転写されたことを目視によって確認した。3M社製#610テープ密着性試験において、#610テープ側にトナーの転移はなく、トナー密着性は良好であることが確認された。
【0103】
実施例18
メチルメタクリレート(MMA)77質量部とn−ブチルアクリレート(BA)15質量部とジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)6質量部とアクリル酸(AA)2質量分をモノマーとした以外は実施例1と同じ手順でアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は75,000、Tgは63℃であった。
【0104】
このアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部と、実施例1と同様にして作製したカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液90質量部を混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0105】
実施例14と同様の粘着剤組成物と上記アクリルフィルムをドライラミし、マーキングフィルムを得た。実施例14と同様にしてこのマーキングフィルムに画像を熱転写したところ、トナー画像が完全に転写されたことを目視によって確認した。3M社製#610テープ密着性試験において、#610テープ側にトナーの転移はなく、トナー密着性は良好であることが確認された。
【0106】
実施例19
実施例18と同様にして調製した(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、Tg=−49℃であるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液100質量部に対し0.5質量部の架橋剤Aを混合、攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、同様に引張試験を行い、結果を表1に示した。
また、このフィルムについて前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0107】
実施例14と同様の粘着剤組成物と上記アクリルフィルムをドライラミし、マーキングフィルムを得た。実施例14と同様にしてこのマーキングフィルムに画像を熱転写したところ、トナー画像が完全に転写されたことを目視によって確認した。3M社製#610テープ密着性試験において、#610テープ側にトナーの転移はなく、トナー密着性は良好であることが確認された。
【0108】
比較例1
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーどうしを混合させたフィルムを以下の手順で作製した。
まず、実施例1と同様にして、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。次に、実施例10と同様にして、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。上記2種類のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー溶液を固形分比が80:20となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0109】
比較例2
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、BAホモポリマーとを混合させたフィルムを以下の手順で作製した。
まず、メチルメタクリレート(MA)94質量部とアクリル酸(AA)5質量部とをメチルエチルケトン(MEK)150質量部に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(AVN)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で20時間反応させ、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は160,000、Tgは105℃であった。
【0110】
次に、n−ブチルアクリレート(BA)100質量部をメチルエチルケトン(MEK)150質量部に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(AVN)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で20時間反応させ、BAホモポリマーのMEK溶液を作製した。上記2種のポリマー溶液を固形分比が80:20となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0111】
比較例3
2種類のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを混合させたフィルムを以下の手順で作製した。
まず、比較例2と同様にしてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。次に、実施例1と同様にしてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。上記2種のポリマー溶液を固形分比が80:20となるように混合,攪拌した後、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0112】
比較例4
カルボキシル基とアミノ基とを有する(メタ)アクリル系ポリマーから成るフィルムを、以下の手順で作製した。
メチルメタクリレート(MMA)65.8質量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)4.2質量部と、n−ブチルアクリレート(BA)28.2質量部と、アクリル酸(AA)1.8質量部とをメチルエチルケトン(MEK)150質量部に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル(AVN)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で20時間反応させ、カルボキシル基とアミノ基とを有する(メタ)アクリル系ポリマーのMEK溶液を作製した。このポリマーの重量平均分子量は180,000、Tgは37℃であった。
【0113】
次に、38μm剥離処理ポリエステルキャリアーフィルム(帝人社製:商品名ピューレックスTM A-71)に、乾燥後のフィルム厚みが50μmになるように上記ポリマー溶液を塗布し、100℃で20分間乾燥した後、(メタ)アクリル系フィルムを得た。
このフィルムについて、実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0114】
比較例5
ポリ塩化ビニルフィルム(住友スリーエム(株)社製、商品名3650CF)について実施例1と同様に引張試験を行なった。結果を表1に示す。
【0115】
比較例6
粘着剤付きポリ塩化ビニルフィルム(住友スリーエム(株)社製、商品名スコッチカルフィルム JS1900A)について前記した方法で表面光沢保持率(%)と色差の測定を行なった。結果は表2に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【符号の説明】
【0118】
1 (メタ)アクリル系フィルム
2 トナー
3 保護フィルム
4 接着層
5 レセプター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(B)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、上記成分(A)と(B)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項2】
(C)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(D)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、上記成分(C)と(D)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項3】
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
とから形成され、JIS K 6251で規定する25℃での引張強さが5MPa以上であり、伸びが25%以上であることを特徴とする(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項4】
(A)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(B)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(E)前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、上記成分(A)と(B)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項5】
(C)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下で重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(D)主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上で重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
(E)前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、上記成分(C)と(D)の配合比が質量比で10:90〜90:10である(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項6】
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得た、重量平均分子量が10,000以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと
前記カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤
とから形成され、JIS K 6251で規定する25℃での引張強さが5MPa以上であり、伸びが25%以上であることを特徴とする(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項7】
前記アミノ基が3級アミノ基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項8】
前記モノエチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が平均1〜12であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系フィルム。
【請求項9】
着色剤受容面である表面とそれと対向する裏面とを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系フィルムと、
当該(メタ)アクリル系フィルム表面に受容された着色剤と、
当該(メタ)アクリル系フィルム裏面に固定的に配置され、当該(メタ)アクリル系フィルムを被着体に接着する接着剤を含有する接着層
とを備えたマーキングフィルム。
【請求項10】
静電トナー印刷を用いて請求項9に記載のマーキングフィルムを製造するのに用いられるレセプターシートであって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系フィルムと、前記(メタ)アクリル系フィルム裏面に固定的に配置された前記接着層とを備えたレセプターシート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−1552(P2011−1552A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161817(P2010−161817)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2004−243720(P2004−243720)の分割
【原出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】