説明

(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系化合物、(メタ)アクリル系樹脂の製造方法、(メタ)アクリル系化合物の製造方法及び活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物

【課題】 硬化時の収縮がおきにくく、かつ、耐摩耗性に優れる硬化塗膜が得られる(メタ)アクリル系樹脂ならびに(メタ)アクリル系樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】 1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造単位と(メタ)アクリロイル基とを含有する(メタ)アクリル系樹脂、塩基性触媒の存在下、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させて反応混合物を得る工程と、反応混合物と(メタ)アクリル酸とを混合し、反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応を行う工程とを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時の収縮がおきにくく、かつ、耐摩耗性、耐摩耗性に優れる硬化塗膜が得られる(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系化合物及びこれらを含有する活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物ならびに(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコート剤は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、タッチパネル、CRT(陰極管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネセンスディスプレイ)等の種々のディスプレイおよび光ディスクにおける表面保護に使用されている。表面保護は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、タッチパネル表面に透明プラスチック基材にハードコート剤を塗布、硬化して得られるハードコート層を設けたフィルムを設ける事により行われる。ディスプレイや光ディスクの保護に用いられるこれらのフィルムには硬度が高く耐引っ掻き性に優れるハードコート層を設ける必要があり、高い硬度および耐引掻き性を達成するハードコート剤とする為に多官能性アクリレート、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが使用される。しかしながら、このような多官能性アクリレートはUV光または電子線による硬化後に、高度の体積収縮を示す。
【0003】
このような高度の体積収縮を起こすハードコート剤をフィルムに塗布し、ハードコート層を得ると、フィルム基材のカーリングをもたらす。コーティングされたフィルム基材のカーリングは、光学特性および機械特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
硬化収縮によるカールを抑制したハードコート層を有するフィルムを得る為に、例えば、トリシクロデカンジメタノールのジアクリレートを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該特許文献1で開示された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では耐摩耗性に優れる高硬度のハードコート層が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−215096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、硬化時の収縮がおきにくく、かつ、耐摩耗性に優れる硬化塗膜が得られる(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル系化合物及びこれらを含有する活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物とならびに上記(メタ)アクリル系樹脂及び(メタ)アクリル系化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造を有する活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル樹脂や活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル系化合物は硬化時の収縮がおきにくいこと、該活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル樹脂や活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル系化合物に活性エネルギー線を照射することにより得られる硬化塗膜は耐摩耗性に優れ、コーティング剤用途に好適に用いられること、該活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル樹脂や活性エネルギー線硬化型(メタ)アクリル系化合物は塩基性触媒の存在下、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させた後(メタ)アクリル酸を反応させる製造方法や、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸とを反応させる製造方法や、2,2,5,5−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロプロピオン酸塩化物とを反応させる製造方法や、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸とをエステル交換反応させる製造方法により得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造単位と(メタ)アクリロイル基とを含有する(メタ)アクリル系樹脂を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、下記一般式(3)で表されることを特徴とする(メタ)アクリル系化合物を提供するものである。
【0010】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基である。)
【0011】
また、本発明は下記一般式(4)で表されることを特徴とする(メタ)アクリル系化合物を提供するものである。
【0012】
【化2】

(式中、R1は水素原子またはメチル基である。)
【0013】
また、本発明は塩基性触媒の存在下、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させて反応混合物を得る工程と、反応混合物と(メタ)アクリル酸とを混合し、反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応を行う工程とを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸とを反応させることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物とを反応させて反応混合物を得る工程、該反応混合物からハロゲンを除去する脱ハロゲン化水素反応を行う工程とを含有することを特徴とする(メタ)アクリレート系化合物の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、エステル交換触媒存在下に1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸とを反応させることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記(メタ)アクリル系樹脂または(メタ)アクリル系化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明で得られる(メタ)アクリル系樹脂や(メタ)アクリル系化合物は1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造を有する。この構造により得られる硬化塗膜は低収縮性であるにもかかわらず耐引掻き性、耐摩耗性にも優れる。その為、本発明で得られる(メタ)アクリル系樹脂や(メタ)アクリル系化合物は可撓性プラスチックフィルム等のコーティング成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の(メタ)アクリル系樹脂のサイズ排除クロマトグラフィーの図である。
【図2】1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンのガスクロマトグラフィーの図である。
【図3】1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの質量分析の結果を表す図である。実測値:M=363=(M+)−1(化学イオン化による)
【図4】1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの1−H−NMRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造と(メタ)アクリロイル基とを含有する。前記1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造としては、例えば、下記(1)で表される構造等が挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
前記(1)で表される構造と(メタ)アクリロイル基とを含有する(メタ)アクリル系樹脂としては例えば、下記(2)で表される(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0023】
【化4】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子または(メタ)アクリロイル基である。nは1〜20である。)
【0024】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、シクロヘキサノン、ホルムアルデヒドおよび(メタ)アクリル酸を原料として製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、A)塩基性触媒の存在下、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させて反応混合物を得る工程(第一工程と略記する。)、B)反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応を行う工程(第二工程と略記する。)を含有する製造方法(以下、これを製法1と略記する。)等が挙げられる。以下に製法1の概略を示す。
【0025】
【化5】

【0026】
前記製法1の第一工程は、交差カニッツァロ反応であり、ここで、ホルムアルデヒドは、シクロヘキサノン環のカルボニルのα位に付加し、カルボニル基は、同時にアルコールに還元され、中間体として、2,2,5,5−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールが得られる。
【0027】
製法1の第二工程では、三つの主な下位プロセスが同時に生じる。
・1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造単位を与える分子内環エーテル生成(質量分析法および核磁気共鳴スペクトル法で確認)
・オリゴマーを与える分子間エーテル化(サイズ排除クロマトグラフィーで確認)および
・アクリル酸およびメタクリル酸によるヒドロキシル基のエステル化(質量分析法およびIR−スペクトル法およびヒドロキシル含有量で確認)。
【0028】
本発明の(メタ)アクリル化樹脂の理想的な生成経路を、以下の反応スキームに示す。
【0029】
【化6】

【0030】
上の反応スキームで説明されているように、本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造単位を有するオリゴマー〔上記式(2)においてnが2以上〕およびモノマー〔上記式(2)においてnが1〕を含有し、これは、本手順で主に形成される。
【0031】
前記製法1において第一工程は本発明の(メタ)アクリル化樹脂を製造するために、塩基性触媒の存在下でシクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させる。この反応は交差カニッツァロ反応で、この反応によりペンタノールである2,2,5,5−テトラキス(ヒドロキシメチル)とシクロヘキサノールを含む反応混合物が得られる。
【0032】
前記第一工程で用いる好適な塩基性触媒としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウムまたは炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの反応は例えば20〜80℃、好ましくは25〜70℃で行う。また、反応時間は通常24〜120時間、好ましくは24〜72時間である。シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの反応比率としては例えば、シクロヘキサノン:ホルムアルデヒド=1:5〜6(重量比)であり、1:5〜5.5(重量比)がより好ましい。反応中は攪拌するのが好ましい。尚、塩基性触媒の存在下でのシクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの反応は例えば、Organic Syntheses, Coll.Vol.4,p.907(1963);Vol.31,p.101(1951)等に記載されている。
【0033】
第一工程において必要に応じて溶媒を加えることができる。溶媒としては、例えば、水等が挙げられる。
【0034】
前記製法1の第一工程終了後、第二工程において得られた反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応を行う。この縮合とともに1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造単位を与える分子内環エーテルが生成され、また、分子間エーテル化が生じる。縮合反応を行う際に用いる触媒としては、酸触媒を用いることができる。酸触媒としては硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、リン酸等が挙げられる。中でも入手容易で、安価で、反応性に優れる点から硫酸およびp−トルエンスルホン酸が好ましい。触媒の使用量としては、反応混合物の固形分と(メタ)アクリル酸の重量を基準として通常0.2〜5重量%である。反応混合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる際の反応比率としては、反応混合物の水酸基(モル数)に対して(メタ)アクリル酸を過剰となるような条件下、例えば反応混合物の水酸基:(メタ)アクリル酸=1:1.05〜1:1.5(モル比)で反応させる。
【0035】
第二工程の縮合反応は通常溶媒存在下で行われる。溶媒としては例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンまたはこれらの混合物等が挙げられる。溶媒の使用量としては反応溶液全体の重量を基準として5〜30重量%が好ましい。溶剤は、反応混合物を極性である(メタ)アクリル酸に溶解した後に、反応系に加えるのが、反応系内を攪拌しやすいことから好ましい。縮合反応の際に生成する反応水は、例えば共沸で除去し、所望の量の水が除去されたときに、反応を停止する。反応温度は、溶媒により決められる。好適な反応温度は、エーテル化反応、特に分子間エーテル化の進行が良好でオリゴマーの分子量も大きくしやすいことから90〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。
【0036】
前記第二工程においては、重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、例えば、キノン類、例えばハイドロキノンおよびそのモノメチルエーテル、種々のフェノール類、p−tert−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール、2,4−ジクロロ−6−ニトロフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、p−ニトロソジメチルアニリン、ニトロソベンゼン、フェノチアジン、N−ニトロソジメチルアミン、ヘキサメチルホスホルアミド、ならびに種々の銅塩等が挙げられる。重合禁止剤としては重合防止効果が高く、樹脂に着色が起こりにくいことから4−メトキシフェノールおよびハイドロキノンが好ましい。重合禁止剤の使用量としては、例えば、溶剤を除く反応混合物の重量を基準として200〜2000重量ppm、好ましくは約500〜1000ppmの範囲である。尚、重合禁止剤として種々のフェノール類等のフェノール性の重合禁止剤を使用する場合には、重合禁止剤の活性化を維持するために、空気の吹き込みが必要とされる。
【0037】
第二工程終了後、得られた反応物は本発明の(メタ)アクリル系樹脂を含有し、これをこのまま使用しても良いが、必要に応じて精製することもできる。精製は種々の精製法により行うことができる。好ましい精製法は酸性触媒および未反応(メタ)アクリル酸を除去するための、水、炭酸ナトリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液での抽出である。
【0038】
第二工程反応終了後、得られた反応物または必要に応じて精製した反応物は通常溶剤中に溶解している。この溶剤はロータリーエバポレーター等の種々の手段で除去することができる。溶剤を除去する前に、溶剤中の水分を除去しておく事もできる。溶剤中の水分を除去するには、例えば、硫酸ナトリウム等を用いた種々の方法を用いることができる。
【0039】
得られた本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、反応したアクリル酸の量および分子量に応じて、無色〜淡黄色の、液体または固体である。得られた(メタ)アクリル系樹脂の分子量(重量平均分子量)は、300〜10000の範囲である。(メタ)アクリロイル基の含有量は、例えば8.24mmol/g〜1.5mmol/gである。水酸基の含有量は、0.01mmol/g〜3.0mmol/gである。酸価は、通常、5mgKOH/g未満である。製法1で製造される本発明の(メタ)アクリル系樹脂のサイズ排除クロマトグラフィーで分析された組成物の例を、図1に示す。
【0040】
前記製法1で得られる(メタ)アクリル系樹脂は、通常混合物である。例えば、前記式(2)においてnが1のものや2以上のもの、R2が水素原子のものや(メタ)アクリロイル基のもの等の混合物である。
【0041】
本発明にいてモノマーおよび低分子量オリゴマー〔(メタ)アクリル系樹脂〕の成分は、質量分析法によりキャラクタリゼーションを行った。質量分析法でモル−ピークを検出するために、イソブタンでの温和なイオン化を行った。さらに、イオン化生成物は、質量72および55が欠けており、アクリル化物質の存在を証明している。単離された1,5−ビス(アクリロイルオキシメチル)−9−アクリロイルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの構造は、図4に示すようなNMRスペクトル法により同定された。
【0042】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂中の(メタ)アクリロイル基の量は滴定により決定した。具体的には、例えば、本発明の(メタ)アクリル系樹脂とモルホリンとを反応させた後、次いで、モルホリンの過剰量は無水酢酸でクエンチし、アミンを過塩素酸で滴定することにより決定した。縮合反応(エーテル化およびエステル化)は、生成した水の量でコントロールし、エステル化反応は、酸価の滴定によった。ヒドロキシル価、酸価およびアクリレート含有量の滴定方法は、文献公知であり、例えば、"Organic Functional Group Analysis",Pergamon press,New York,1963中に記載されている。
【0043】
前記製法1において、第一工程終了後時間をおいて第二工程を行っても良いし、第一工程終了後速やかに第二工程を行っても良い(以下ワンポット法と略記する。)。第一工程終了後、時間をおく場合とは、例えば、第一工程終了後第一工程の反応系で含まれる溶媒を除去し、反応混合物を乾燥させる工程を経る場合等が挙げられる。製法1の中でも第一工程終了後時間をおいて第二工程を行う例として実施例1に記載してある。ワンポット法を行う場合、第一工程終了後は反応混合物を含む系内は塩基性となっている。第二工程で酸性触媒を加える為、第二工程では反応系は酸性になるので反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応は起こるが、必要に応じて第二工程を行う前に系内に酸を加え中和しても良い。ここで用いる酸としては、前記した酸性触媒等を用いることができる。酸は触媒として用いる酸と同じものを使用しても良いし、異なっていても良い。ワンポット法による(メタ)アクリル系樹脂の例が実施例3に記載してある。
【0044】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は以下の方法でも製造することができる(これを製法2と略記する。)。まず、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールを製造する。これは、シクロヘキサンとホルムアルデヒドとを反応させて製造しても良いし、他の方法で製造されたものでも良い。
【0045】
2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールは、アクリル酸の不存在下に、酸性触媒の存在下、分子間エーテル化によりオリゴマー化される。酸性触媒としては、例えば、製法1の第二工程で用いる酸性触媒等が挙げられる。反応する温度としては、例えば、140℃以上にすると分子間エーテル化により生成する水を反応中に除去することができる。このようにして製造されるオリゴマー体は通常無色固体状である。
【0046】
【化7】

nは例えば1〜20である。
【0047】
次に上記の方法で得られたオリゴマー体と(メタ)アクリル酸と反応させエステル化させることにより(メタ)アクリル化され、下記に示す(メタ)アクリル系樹脂が獲られる。
【0048】
【化8】

nは例えば1〜20である。
【0049】
オリゴマー体と(メタ)アクリル酸との反応比率としては、オリゴマー体の水酸基(モル数)に対して(メタ)アクリル酸を過剰となるような条件下、例えばオリゴマー体の水酸基:(メタ)アクリル酸=1:1.05〜1:1.5(モル比)で反応させる。
【0050】
製法2では本発明の(メタ)アクリル系樹脂の中でも低分子量のものが少なく、高分子量成分を多く含む樹脂をえることができる。
【0051】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂は、以下の方法でも製造することができる(これを製法3と略記する。)
【0052】
まず、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールから1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを製造する。ここで用いるテトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールは、シクロヘキサンとホルムアルデヒドとを反応させて製造しても良いし、他の方法で製造されたものでも良い。2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールから酸触媒存在下分子内エーテル化により1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを製造する。この製造例は参考例1に記載されている。
【0053】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを製造した後、これと(メタ)アクリル酸とを反応させる。このときの反応時間は、例えば、前記製法1における2,2,5,5−テトラキス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノールを含む反応混合物と(メタ)アクリル酸との反応よりも短く、例えば1〜5時間である。反応温度は、90〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。
【0054】
製法3において少量のオリゴマー〔例えば、前記式(1)で記載される(メタ)アクリレート系樹脂においてn=2以上のもの〕と主にモノマー状の物質〔例えば、前記式(1)で記載される(メタ)アクリレート系樹脂においてn=1のもの〕が得られる。この知見は、実施例4の分析において見られるように明らかである。以下に1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンとアクリル酸との反応スキームの一例を示す。
【0055】
【化9】

【0056】
製法3は本発明の(メタ)アクリル系樹脂の中でも高分子量のものが少なく、低分子量の樹脂を多く含む樹脂が得られる。
【0057】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂の中でも、下記式で表される1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンは上記製法1〜3とは異なる方法で製造することができる。具体的には、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを(メタ)アクリル酸アルキルエステルでエステル交換する方法である(以下製法4と略記する。)。
【0058】
【化10】

【0059】
製法4で用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。中でも生成するアルコールの除去が容易なことから(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0060】
エステル交換反応を行う際には通常触媒を用いる。触媒としては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、亜鉛系触媒等が挙げられる。チタン系触媒としては、例えば、チタンテトラ(イソプロピレート)等が挙げられる。スズ系触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。
【0061】
エステル交換反応を行う際の温度は通常のエステル交換反応に用いる温度でよく、通常100〜180℃である。また、反応時間としては、通常2〜12時間である。
【0062】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの反応比率としては、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン:(メタ)アクリル酸アルキルエステル=1:3〜1:6(モル比)が好ましく、1:3〜1:3.6が好ましい。
【0063】
更に、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナンを製造する方法として、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物とを反応させて反応物(3-クロロプロピオン酸エステル中間体化合物)を得る工程(以下、第一工程と略記する。)、該反応物から脱ハロゲン化水素反応を行う工程(以下、第二工程と略記する。)とを含有する製法を例示することができる(これを製法5と略記する。)。
【0064】
前記第一工程において2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールは、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物で(メタ)アクリル化される。塩化水素が切り離されるので、オキサビシクロノナン生成は、アシル化と共に生じる。
【0065】
2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物との使用比率としては、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノール:3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化=1:3〜1:6(モル比)が好ましく、1:3〜1:3.6がより好ましい。
【0066】
2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物との反応温度としては、例えば、40〜100℃がより好ましい。また、反応時間としては、例えば、2〜24時間がより好ましい。
【0067】
第一工程で反応物(3-クロロプロピオン酸エステル中間体化合物)を得た後、第二工程において脱ハロゲン化水素反応を行う。脱ハロゲン化水素反応は、例えば、第一反応で得た反応物と三級アミンとを反応させる事により行われる。反応物と三級アミンとを反応させる事により脱ハロゲン化水素が生じて、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナンが生成する。三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、該反応物と三級アミンとの反応比率としては、該反応物:三級アミン=1:1〜2(モル比)が好ましく、1:1(等モル量)が好ましい。
【0068】
製法5の反応スキームの一例を下記に示す。
【0069】
【化11】

【0070】
更に、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナンを製造する方法として、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと3−クロロプロピオン酸または3−クロロ(メチル)プロピオン酸とを反応させて反応物(3−クロロプロピオン酸エステル中間体化合物)を得る工程(以下、第一工程と略記する。)、該反応物から脱ハロゲン化水素反応を行う工程(以下、第二工程と略記する。)とを含有する製法を例示することができる(これを製法6と略記する。)。
【0071】
前記第一工程において1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンは、3−クロロプロピオン酸または3−クロロプロピオン酸でエステル化される。
【0072】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと、3−クロロプロピオン酸または3−クロロ(メチル)プロピオン酸との反応比率としては、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン:3−クロロプロピオン酸または3−クロロ(メチル)プロピオン酸=1:3〜1:6(モル比)が好ましく、1:3〜1:3.6がより好ましい。
【0073】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと、3−クロロプロピオン酸または3−クロロ(メチル)プロピオン酸との反応温度としては、例えば、40〜100℃が好ましい。また、反応時間としては、例えば、2〜24時間が好ましい。
【0074】
第一工程で反応物(3−クロロプロピオン酸エステル中間体化合物)を得た後、第二工程において脱ハロゲン化水素反応を行う。脱ハロゲン化水素反応は、例えば、第一反応で得た該反応物と三級アミンとを反応させる事により行われる。該反応物と三級アミンとを反応させる事により脱ハロゲン化水素が生じて、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナンが生成する。三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、該反応物と三級アミンとの反応比率としては該反応物:三級アミン=1:1〜2(モル比)が好ましく、1:1(等モル量)が好ましい。
【0075】
製法6の反応スキームの一例を下記に示す。
【0076】
【化12】

【0077】
更に、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナンを製造する方法として、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと(メタ)アクリル酸塩化物とを反応させる製法を例示することができる(これを製法7と略記する。)。
【0078】
(メタ)アクリル酸塩化物としては、例えば、アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等を好ましく挙げることができる。
【0079】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと、(メタ)アクリル酸塩化物との使用比率としては、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン:(メタ)アクリル酸塩化物=1:2〜1:6(モル比)が好ましく、1:3〜1:3.6がより好ましい。
【0080】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンと、(メタ)アクリル酸塩化物との反応温度としては、例えば、0〜50℃が好ましい。また、反応時間としては、例えば、2〜24時間が好ましい。
【0081】
製法7により、実施例7に記載のように、部分的にアクリル化された化合物、例えば、以下に示す1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを製造することもできる。
【0082】
【化13】

(式中R1は水素原子またはメチル基である)
【0083】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂および(メタ)アクリル系化合物を用いることによりは、ラジカル重合性紫外線硬化型組成物および電子線硬化型組成物を得ることができる。該組成物は紫外線硬化型インク、コーティング用途として有用である。
【0084】
該組成物を調製する際には(メタ)アクリル系樹脂および(メタ)アクリル系化合物は種々の反応性希釈剤、溶剤、樹脂、色素、光開始剤および添加剤を混合することができる。
【0085】
反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート;
【0086】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリレート;
【0087】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
【0088】
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の多官能(メタ)アクリレート;
【0089】
および、上記した(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
反応性希釈剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。反応性希釈剤の使用量は、得られる塗膜の耐摩耗性の低下をさけるため、本発明の(メタ)アクリル系樹脂または(メタ)アクリル系化合物100重量部に対して100重量部以下であることが好ましく、なかでも10〜70重量部であることが好ましい。
【0091】
溶剤としては、通常、沸点が50〜200℃のものが、塗工時の作業性、硬化前後の乾燥性に優れる活性エネルギー線硬化型塗料用樹脂組成物が得られる点から好ましく、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、またはこれらの混合物類等が挙げられる。
【0092】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂または(メタ)アクリル系化合物に溶剤を加えて組成物とした場合は、例えば、組成物を基材等に塗布した後、活性エネルギー線を照射する前に溶剤を除去するのが好ましい。溶剤を除去する手段としては、例えば、熱風乾燥機等を用いることができる。また、溶剤の使用量は、特に限定されないが、通常は塗料の固形分濃度が10〜70重量%となる範囲である。
【0093】
本発明の本発明の(メタ)アクリル系樹脂または(メタ)アクリル系化合物に溶剤を加えて組成物するにあたり用いることができる樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等に代表される、不飽和二重結合を含有する樹脂の如き各種のエネルギー線硬化型樹脂類等が挙げられる。
【0094】
開始剤としては、各種のものが使用できるが、それらのうちでも特に代表的なものを例示すれば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン等の水素引き抜きによってラジカルを発生するタイプの化合物等が挙げられる。これらの化合物は、メチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと併用するのが一般的である。
【0095】
別のタイプの光重合開始剤としては、例えば、分子内分裂によってラジカルを発生するタイプの化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。
【0096】
また、必要により、開始剤と併用して、ハイドロキノン、ベンゾキノン、トルハイドノキノン、パラターシャリーブチルカテコールの如き重合禁止剤類などを添加することもできる。
【0097】
上記色素としては、特に限定されるものではなく、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、紫顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。これら着色剤の具体例としては種々のものが掲げられ、有機顔料としては、例えば、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の如き、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の如き溶性アゾ顔料;
【0098】
フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の如き、各種の(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の如き、各種の塩素性染め付けレーキ;キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の如き、各種の媒染染料系顔料;アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の如き、各種の建染染料系顔料;シンカシアレッドB等の如き、各種のキナクリドン系顔料;ヂオキサジンバイオレット等の如き、各種のヂオキサジン系顔料;クロモフタール等の如き各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0099】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の如き、各種のクロム酸塩;紺青等の如き、各種のフェロシアン化合物;酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン等の如き、各種の金属酸化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の如き、各種の硫化物ないしはセレン化物;
【0100】
硫酸バリウム、硫酸鉛等の如き、各種の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、群青等の如き、各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の如き、各種の炭酸塩;コバルトバイオレット、マンガン紫の如き、各種の燐酸塩;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の如き、各種の金属粉末顔料;これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料;金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等の如き、メタリック顔料やパール顔料;黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
【0101】
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0102】
さらに、プラスチック顔料〔例えば、大日本インキ化学工業(株)製グランドールPP−1000、PP−2000S〕等も使用できる。
【0103】
色素の使用割合は、色素の種類、望まれる色相、用いる光重合開始剤の種類等により異なり、特に限定されるものではないが、紫外線により硬化せしめる場合、色素は硬化に必要な紫外線の多くを吸収してしまうため、硬化するのに十分な紫外線がラジカル重合製不飽和2重結合に供給できる範囲が好ましく、通常は樹脂固形分100重量部に対して色素は30重量部以下となる範囲が好ましい。
【実施例】
【0104】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳しく説明する。以下において、部および%は特に断りのない限り、すべて重量基準である。
【0105】
実施例1〔2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールの合成〕
本実施例は前記製法1の第一工程である。シクロヘキサノン196g(2.0mol)、水性ホルムアルデヒド(28重量%)1150g(10.7mol)および水2000ccの均一混合物に、水酸化カルシウム100gを加え、30℃で48時間撹拌した。混合物を濾過し、黄色溶液を硫酸でコンゴレッドを対照として中和した。生成した硫酸カルシウムを濾別し、溶液をロータリーエバポレーターで、シロップまで濃縮した。2日後、シロップは、結晶物質になった。タイル状の結晶を、氷冷アセトン179gと共に摩砕し、濾別した。収量:170g。母液から、さらに70gの生成物を、結晶化後に分離した。得られた生成物の融点は128〜130℃であった。
【0106】
実施例2(アクリル系樹脂の合成)
本実施例は前記製法1の第二工程である。
ディーン−スタークロート、還流冷却器、内部温度計および気体導入管を備えた2000mlの三口丸底フラスコ中で、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール345.0g(1.56mol)、アクリル酸640.0g(8.88mol)、p−トルエンスルホン酸7.00g、4−メトキシフェノール2.45gおよびトルエン300mlを室温で混合した。空気を混合物中に吹き込み(3泡/秒)、混合物を80℃に加熱し、次いで、シクロヘキサン200mlを加えた。90℃で、水の生成が始まった。4時間後92mlの水を集めたのちに、反応を停止した。反応中、内部温度は100℃に上昇した。溶液を50℃で濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液500mlを用いた抽出を中性まで6回行った。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し(透明)、4−メトキシフェノール0.15gを加えたのち、溶媒をロータリーエバポレーター50℃(50ミリバール)で除去した。濃縮中、空気を混合物に吹き込んだ。本発明のアクリル系樹脂(1)が389g得られた。得られたアクリル系樹脂(1)の特性値を第1表に示す。得られたアクリル樹脂(1)のGPC法による分析チャートとそれぞれのピーク対応する化合物を第1図に示す。各化合物は質量分析法で同定した。GPC法により分析する際には低分子量は、純粋なモノマーを共に注入することにより同定した。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例3
本実施例は前記製法1の一種であるワンポット法である。
シクロヘキサノン196g(2.0mol)、水性ホルムアルデヒド(28重量%)1150g(10.7mol)および水2000ccの均一混合物に、水酸化カルシウム100gを加え、30℃で48時間撹拌した。混合物を濾過し、溶液をフラスコに戻し、硫酸でコンゴレッドを対照として中和した。生成した硫酸カルシウムを濾別し、溶液をフラスコに戻し、水を留去した。その後、アクリル酸320g(4.44mol)、p−トルエンスルホン酸4.00g、4−メトキシフェノール1.2gを加え、混合物に空気を散布し、55℃に加熱した。次いで、トルエン150mlおよびシクロヘキサノン100mlを加えた。5時間後、46mlの水を集めたのちに、反応を停止した。反応中、内部温度は100℃に上昇した。溶液を50℃で濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液250mlを用いた抽出を中性まで6回行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し(透明)、4−メトキシフェノール0.1gを加えたのち、溶媒をロータリーエバポレーターで50℃(50ミリバール)で除去し、黄褐色粘稠溶液である本発明のアクリル系樹脂(2)を190g得た。濃縮中、空気を混合物に吹き込んだ。アクリル系樹脂(2)中のアクリレートの含有量は3.9mmol/gであった。
【0109】
実施例4〔エステル化による1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの合成例〕
ディーン−スタークロート、還流冷却器、内部温度計および気体導入管を備えた500mlの三口丸底フラスコ中で、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール172.5g(0.78mol)、アクリル酸302.0g(4.44mol)、p−トルエンスルホン酸3.7g、4−メトキシフェノール1.25gを室温で混合した。空気を混合物中に吹き込み、それを80℃に加熱し、次いで、シクロヘキサン200mlを加えた。80℃で、水の生成が始まった。6時間後、61mlの水を集めたのちに、反応を停止した。溶液を50℃で濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液250mlを用いた抽出を中性まで6回行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し(透明)、4−メトキシフェノール0.05gを加えたのち、溶媒をロータリーエバポレーター50℃(50ミリバール)で除去した。濃縮中、空気を混合物に吹き込んだ。収量:165g。サイズ排除クロマトグラフィーで分析した結果を第2表に示す。
【0110】
【表2】

*物質は、純粋モノマーの共注入により特定した。
【0111】
実施例5〔1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの合成〕
本実施例は製法5である。まず、第一工程を行う。この工程で1,5−ビス(3−クロロプロピルオキシメチル)−9−(3−クロロプロピルオキシメチル)−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの合成する。
【0112】
磁気撹拌器、還流冷却器、気体導入管および内部温度計を備えた500mlの三口フラスコ中で、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール50g(0.227mol)、3−クロロプロピオン酸塩化物205gおよび2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(BHT)0.5gを混合した。気体導入管を、2個の空の洗浄ビン、最後に濃水酸化ナトリウム500mlを満たしたビーカーにつないだ。ゆっくりした流れの窒素を反応の完結まで使用した。混合物を30〜40℃で4.5時間撹拌した。最初に、ネバネバする物質が生成し、撹拌が困難になった。反応の間に、混合物は、だんだんと液状になった。4.5時間後、それは液状であるが、粘稠であった。撹拌を75℃でさらに2.5時間続けた。その後、いくらかの3−クロロプロピオン酸塩化物を加え、IR分光法ですべてのヒドロキシル基が消費されたことを示すまで、75℃で撹拌を続けた。混合物を冷却し、混合物を氷水1Lに注ぎ、30分間撹拌した。次いで、ジクロロメタン300mlを加え、層を分離し、有機層を各々100mlの水で2回、各々100mlの飽和NaHCOで5回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで、乾固するまで濃縮した。褐色の粘稠物質(粗生成物)138.2gを得た。
【0113】
次に、製法5の第二工程を行う。
第一工程を2バッチ行い得られたの粗生成物274gをアセトン600mlに溶解し、磁気撹拌器、還流冷却器、気体導入管および滴下ロートを備えた1000mlの四口丸底フラスコに入れた。ゆっくりした流れの空気を流し、トリエチルアミン115g(0.880mol)を、1g/分の速度で加えた。内部温度は40℃に上昇した。続いて、混合物を50℃で4時間撹拌した。析出した固体を濾過し、アセトン600mlで洗浄した。アセトン層を、ロータリーエバポレーターで、乾固するまで濃縮した。濃縮の間、空気を混合物に吹き込んだ。得られた半固体の物質を50℃でシクロヘキサン350mlと共に撹拌し、濾過し、分液ロートに移した。暗褐色の層が生じ、それを分離した。残りの黄色溶液から、暗橙色の層が生じた。それも分離した。残りの液体を、結晶化ボウルに入れた。暗褐色の層を、シクロヘキサン100ml中で50℃に加熱した。いくらかの黒い固体が残り、液体を再び分液ロートに移した。褐色油状体を分離し、黄色液体を結晶化ボウルに入れた。溶媒をエバポレートすると、橙色結晶が生成し、それを濾過し、濾紙上で乾燥した。結晶を、50℃でシクロヘキサンから再結晶した。次いで、混合物を10℃に冷却し、その後、結晶化した白色結晶を濾過した。双方の反応から得られた物質を合わせると、粗物質67.4gが得られ、それをシクロヘキサン130mlから再結晶した。その後、重量59.4gの粗物質を、メタノール100mlから再結晶した。析出した固体を濾過し、濾紙上で乾燥した。母液をその容積の半分まで濃縮し、氷浴中で冷却した。析出した結晶を濾過し、同様に濾紙上で乾燥した。母液を再び冷蔵庫中で一晩保存し、析出した固体を濾過した。固体を、30℃で一晩、真空オーブン中で乾燥した。すべての3種の試料は、純粋な生成物である。それらを合わせると、目的化合物51.0g(0.140mol;収率:62%)が白色結晶性物質として得られた。得られた物質を(メタ)アクリル系化合物(4)と略記する。(メタ)アクリル系化合物(4)を質量分析法(m/z)、H−NMRスペクトル法(CDCl)、13C−NMRスペクトル法(CDCl)、赤外線分光法(KBr)で分析した結果、下記構造を有していた。各測定法における評価値を以下に示す。
【0114】
質量分析法(m/z):
309(2;M−55); 55(100;M−309); 221(38;M−143); 135(34;M−229); 148(26;M−216 ); 120(13;M−244 ); 105(13;M−259); 119(11;M−245); 107(11;M−257); 91(11;M−273); 149(10;M−215)
【0115】
H−NMRスペクトル法(CDCl):
1.59−1.80(2 H;m;Hb,c); 1.90−2.02(4 H;m;Hb,c); 2.40−2.57(1 H;m;Ha,d); 3.72−3.93(8 H;m;He,f,g); 5.17(1 H;s;H); 5.84−5.93(3 H;m,=CHH); 6.06−6.21(3 H;m,=CH−); 6.38−6.49ppm(3 H;m,=CHH
【0116】
13C−NMRスペクトル法(CDCl):
19.8(1 C;s;C−); 33.3(2 C;s;−C−); 38.4(2 C;s;−C−); 66.4(2 C;s;−C−); 69.1(2 C;s;−C−); 77.0(1 C;s;−C−); 127.7(1 C;s;−C−); 127.8(2 C;s;−C11−); 131.0(2 C;s;−C−); 131.5(1 C;s;−C12−); 164.7(1 C;s;>C=O); 165.6 ppm(2C;s;>C10=O)
【0117】
赤外線分光法(KBr):
2972,2932,2910,2858(−C−H,>CH); 1726(−C=O); 1637,1618(C=C); 1407(COO−); 1300; 1259; 1207(=C−O−C); 1117; 1043; 975; 806cm−1
【0118】
【化14】

【0119】
参考例1
本例は、実施例6(製法7)で用いる1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの合成例を示したものである。
オーバーヘッド撹拌器、ディーン−スターク装置、還流冷却器および内部温度計を備えた1000mlの三口丸底フラスコ中で、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール100.0g(0.454mol)、メタンスルホン酸4.0ml、およびジエチレングリコールジメチルエーテル680mlを混合した。混合物を150℃で14時間撹拌した。溶媒520mlを、45℃の油浴温度で、オイルポンプ真空中で除去した。約400mlの溶媒を除去後、固体が析出した。固体を濾過し、ジエチレングリコールジメチルエーテルで洗浄した。母液をさらにオイルポンプ真空中で濃縮し、次いで、冷蔵庫中で保存した。半固体状の、べたつく物質を濾紙に移し、吸引乾燥し、2つの少量部のジエチレングリコールジメチルエーテルおよび少量部の石油エーテルで洗浄した。両方の固体を合わせたのち、べたつく褐色固体が得られ、これを、真空オーブン中で、40℃、12時間乾燥した。粗製物51.6gをアセトニトリル250mlから再結晶した。撹拌しながらゆっくり冷却した。結晶化は、室温で一晩で完結した。固体を濾過し、少量のアセトニトリルで洗浄した。純度97%の淡褐色結晶性物質32.5g(0.161mol;理論値の35%)が得られた。得られた物質をGC、GPC(?)、GC−MS:(m/z;3 TMS)、H−NMR(アセトンd6)で分析した結果、下記構造を有していた。各測定法における評価値を以下に示す。
【0120】
【化15】

【0121】
GC:純度97%、GPC:純度99.2%
GC−MS:(m/z;3 TMS)
418(0.8;M); 73(100;M−345); 135(39;M−283); 147(38;M−271); 120(36;M−298); 148(31;M−270); 103(30;M−315); 238(26;M−180); 149(22;M−269); 225(18;M−193); 195(16;M−223)
【0122】
H−NMR(アセトンd6)
1.40−1.60(4 H;m;H); 1.70−1.80(1 H;m;H); 2.3−2.6(1 H;m;H); 3.05(2 H;s;CH−OH); 3.51(4 H;d;H); 3.55(2 H;dd;H) 3.73(1 H;s,CH−OH); 4.68ppm(2 H;dd;H
【0123】
13C−NMR(アセトンd6)
20.6(1 C;s;C−); 33.1(2 C;s;−C−); 39.2(2 C;s;−C−); 67.5(2 C;s;−C−); 68.5(2 C;s;−C−); 75.1ppm(1 C;s;−C−)
【0124】
実施例6〔アシル化による1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンの合成〕
本実施例は前記製法7である。
機械的撹拌器、気体導入管、滴下ロートおよび内部温度計を備えた1000mlの四口丸底フラスコ中で、1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン32.5gを、トリエチルアミン36.8g(0.364mol)、ジクロロメタン480mlおよびハイドロキノンモノメチルエーテル0.10gと混合した。混合物を氷浴で冷却した。アクリル酸塩化物28.3g(0.313mol)を3時間以内で滴下した。添加完結後、撹拌を、0℃で60分間、室温で2時間続けた。アクリル酸塩化物7.2g(0.01mol)を、追加して10分以内で加え、混合物を室温で6時間撹拌した。水100mlを加え、有機層を分離した。それを水100mlで2回、次いで、100mlの飽和NaHCO溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で抽出した。水相を、再びジクロロメタン100mlで抽出し、合わせた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、溶液100mlを得た。濃縮中、空気を溶液に吹き込んだ。残留溶液を、結晶化ボウルに注ぎ入れ、残っている溶媒を空気中、室温でエバポレートさせた。褐色のべたつく固体(51.6g)を、シクロヘキサン200mlから再結晶し、水と石油エーテルで繰返し洗浄した。褐色固体(35.6g)を再びシクロヘキサン200mlから再結晶した。固体を石油エーテルで洗浄し、室温で一晩、真空オーブン中で乾燥した。試料を再び石油エーテルで洗浄して残留しているトリアクリレート(1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン)を除去し、前記と同じ条件下に、再び乾燥し、固形物を得た。得られた物質を(メタ)アクリル系化合物(5)と略記する。(メタ)アクリル系化合物(5)を、H−NMRスペクトル法(CDCl)、13C−NMRスペクトル法(CDCl)、赤外線分光法(KBr)、GPCで分析した結果、下記構造を有していた。各測定法における評価値を以下に示す。
【0125】
【化16】

【0126】
GCーMS(保持時間):10.15,10.55分;純度:2種の異性体(I、II)において97.4%
【0127】
I:
310(2;M+−1); 55(100;M+−255); 73(69;M+−237); 129(34;M+−181); 221(56;M+−89); 238(41;M+−72); 135(36;M+−175); 148(34;M+−162); 119(33;M+−191); 75(29;M+−116); 105(23;M+−205)
【0128】
II:
311(2.5;M++1); 55(100;M+−255); 129(81;M+−181); 73(69;M+−237); 135(48;M+−175); 149(32;M−161); 148(29;M−162); 75(26;M−116); 120(22;M−190); 119(19;M−191); 91(17;M−219)
【0129】
H−NMR(CDCl):
1.39−1.61(4 H;m;H); 1.75−1.86(4 H;m;H); 2.2−2.5(2 H;m;H); 3.29,3.30,3.33(1 H;m;H); 3.53,3,56(4 H;d;H); 3.72,3.77(4 H;d, H); 3.81,3.85(4 H;d,H−); 4.19,4.23(4 H;d,H); 8.85,5.88(2 H;dd;H); 6.08,6.11,6.14,6.17(2 H;dd;H); 6.39,6.45ppm(2 H;dd;H);
【0130】
13C−NMR(CDCl):
20.2(1 C;s;C−); 33.0(2 C;s;−C−); 39.1(2 C;s;−C−); 67.5(2 C;s;−C−); 68.5(2 C;s;−C−); 70.3(1 C;s;−C−); 128.0(2 C;s;−C−); 131.4(2 C;s;−C−); 166.6ppm(2C;s;>C=O)
【0131】
GPC(THF):RI:235g/mole 純度94.2%〔GPCのPS(ポリスチレン)換算分子量で235のところに純度94.2%(面積比)でピークが出ている〕
【0132】
IR(KBr):
3512,3466(−O−H); 2976,2918,2871(−C−H,>CH); 1720,1707(−C=O)); 1637,(C=C); 1410(COO−); 1300; 1209(=C−O−C)); 1117; 1070; 976; 810cm−1
【0133】
実施例7(メタクリル系樹脂の合成)
本実施例は製法2の第二工程である
ディーン−スタークロート、還流冷却器、内部温度計および気体導入管を備えた1000mlの三口丸底フラスコ中で、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール220.0g(1.00mol)、メタクリル酸344.0g(4.00mol)、メタンスルホン酸3.30g、4−メトキシフェノール1.45gおよびトルエン150mlを室温で混合した。空気を混合物中に吹き込み、80℃に加熱し、次いで、シクロヘキサン100mlを加えた。内部温度90℃で、水の生成が始まった。5時間後、51mlの水を集めたのちに、反応を停止した。反応中、内部温度は100℃に上昇した。溶液を50℃で濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液250mlで中性まで4回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濾過し(透明)、4−メトキシフェノール0.1gを加えたのち、溶媒をロータリーエバポレーター50℃(50ミリバール)で除去した。濃縮中、空気を混合物に吹き込んだ。本発明のアクリル系樹脂(6)が389g得られた。終了は205gであった。得られたアクリル系樹脂(6)の特性値を第3表に示す。
【0134】
【表3】

【0135】
実施例8
実施例5で得られたアクリル系樹脂(4)を用い、第4表に示す通り、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、2−ブタノンを添加して不揮発分濃度が50%になるように希釈した後、イルガキュア#184〔チバ・スペシャリテイー・ケミカルズ(株)製光重合開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン〕を配合し、それぞれ、活性エネルギー線硬化型組成物(1)を調製した。
【0136】
活性エネルギー線硬化型組成物(1)を支持体上に塗布し活性エネルギー線硬化型組成物(1)の層を硬化後の膜厚が15μmになるように形成した後、該塗料の層に活性エネルギー線を照射することにより該組成物の層を硬化させて硬化層を形成した。このときの支持体として80μm厚のTACフィルムを用いた。得られた硬化層の硬度と硬化収縮の一つであるソリを評価した。それぞれの支持体における保護層の形成方法及び評価方法を下記に示す。また、評価結果を評価結果を第4表に合わせて示す。
【0137】
硬化層の製造条件:活性エネルギー線硬化型組成物(1)の層を形成した後70℃で5分間予備乾燥する。その後窒素雰囲気中100mJ/cmの照射量で照射し、硬化層を得る。
【0138】
硬度の評価方法。
コーティングの表面での深い引掻きに対する抵抗性を与える硬度は、JIS K−5400に従って、鉛筆硬度でチェックした。研磨または洗浄に対する抵抗性および磨耗抵抗性を与える耐摩耗性は、#0000のスチールウールでの繰返し摩擦により評価した。処理面を、目視、光沢計およびヘイズメーター測定で、非処理面と比較した。
【0139】
ソリ(カーリング)の評価方法
重合中での、コーティング剤の外側収縮は、基材の中心部に力を付与し、基材のカーリングをもたらすが、これは、以下に示すように、収縮の程度に依存する。
【0140】
【表4】

【0141】
硬化層を有する基材フィルムを10cm角の小片に切断した。小片を、硬化層を上向きにして、ガラス板上に置いた。四隅の各々の、ガラス板からの持ち上がり長さ〔△X(mm)〕を測定し、平均値をカーリングの評価用の指標として用いた。
【0142】
実施例2および比較例1
第4表に示した組成とした以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物(2)及び比較対照用活性エネルギー線硬化型組成物(1´)を調製した。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第4表に示す。
【0143】
【表5】

【0144】
第4表の脚注
荷重=500g、(硬化24時間後、25℃、相対湿度50%で測定)
#0000スチールウールで176g/cmの圧力で10回摩擦(硬化24時間後、25℃、相対湿度50%で測定) レベル:5=非常に良好〜1=劣る
【0145】
実施例10〜11及び比較例2〜3
第5表で示す配合にした以外は実施例8と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物(10)〜(11)及び比較対照用活性エネルギー線硬化型組成物(2´)〜(3´)を調製した。基材及び硬化層の製造条件及び耐磨耗試験を以下の通りに変更した以外は実施例8と同様にして硬化層の評価を行った。その結果を第5表に示す。
【0146】
基材:125μm厚のPETフィルム
硬化層の製造条件:基材に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布し、70℃で5分間予備乾燥する。その後空気雰中500mJ/cmの照射量で照射し、硬化層を得る。
【0147】

【0148】
第5表の脚注
17−806=DIC株式会社製ウレタンアクリレート系UV硬化性樹脂組成物
荷重=500g、硬化24時間後、25℃、相対湿度50%で測定
#0000スチールウールで176g/cmの圧力で10回摩擦、硬化24時間後、25℃、相対湿度50%で測定
【0149】
実施例12及び比較例4〜5
第6表で示す配合にした以外は実施例8と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物(5)及び比較対照用活性エネルギー線硬化型組成物(4´)〜(5´)を調製した。基材及び硬化層の製造条件を以下のとおり変更した以外は実施例8と同様にして硬化層の評価を行った。その結果を第6表に示す。
【0150】
基材:100μm厚のPETフィルム(東洋紡績株式会社製E5001)
硬化層の製造条件:硬化後の膜厚が12μmになるように基材に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布し、70℃で5分間予備乾燥する。その後空気雰中608mJ/cmの照射量で照射し、硬化層を得る。
【0151】
【表6】

【0152】
第6表の脚注
荷重=500g、硬化24時間後、25℃、相対湿度50%で測定
TEMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
06−215096:日本化薬(株)製KAYARAD R−684 4.85部、メチルエチルケトン4.5部、シクロヘキサノン0.5部、チバカイギー社製イルガキュア907 0.15部の混合物
【0153】
実施例8においては、硬度および耐摩耗性は実質的に影響されないが、収縮性は、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造を有する化合物を添加することにより、かなり減少することを明確に示している。
【0154】
実施例2から製造された本発明のアクリル化樹脂(1)を用いた組成物(3)、(4)は、鉛筆硬度およびスチールウール処理前後のヘイズにより測定される耐引掻き性がほとんど影響を受けていないことを示している。その一方で、収縮性は、かなり減少している。
【0155】
収縮性の減少という利点は、例えば、本発明の三官能性モノマー、1,5−ビス(アクリルオキシメチル)−9−アクリルオキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナンを、同様の分子量を有する他の三官能性アクリレート、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)と比較した場合に、さらにより明確となる(実施例12参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造と(メタ)アクリロイル基とを含有する(メタ)アクリル系樹脂。
【請求項2】
前記1,5−ビス(オキシメチル)−9−オキシ−3−オキサビシクロ[3.3.1]−ノナン構造が下記一般式(1)で表される構造である(メタ)アクリル系樹脂。
【化1】

【請求項3】
下記一般式(2)で表される構造を有する請求項2記載の(メタ)アクリル系樹脂。
【化2】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子または(メタ)アクリロイル基である。nは1〜20である。)
【請求項4】
(メタ)アクリロイル基を1.5〜8.24mmol/gの濃度で有し、且つ、水酸基を1.5〜8.24mmol/gの濃度で有する請求項3記載の(メタ)アクリル系樹脂。
【請求項5】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする(メタ)アクリル系化合物。
【化3】

(式中、R1は水素原子またはメチル基である。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする(メタ)アクリル系化合物。
【化4】

(式中、R1は水素原子またはメチル基である。)
【請求項7】
塩基性触媒の存在下、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとを反応させて反応混合物を得る工程と、反応混合物と(メタ)アクリル酸とを混合し、反応混合物と(メタ)アクリル酸との縮合反応を行う工程とを含有することを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項8】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸とを反応させることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項9】
2,2,5,5−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールと、3−クロロプロピオン酸塩化物または3−クロロ(メチル)プロピオン酸塩化物とを反応させて反応混合物を得る工程、該反応混合物からハロゲンを除去する脱ハロゲン化水素反応を行う工程とを含有することを特徴とする(メタ)アクリレート系化合物の製造方法。
【請求項10】
1,5−ビス(ヒドロキシメチル)−9−ヒドロキシ−3−オキサビシクロ[3,3,1]−ノナンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを反応させることを特徴とする(メタ)アクリル系化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項記載の(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項5または6に記載の(メタ)アクリル系化合物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティング用樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−201937(P2011−201937A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67851(P2010−67851)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】