説明

(メタ)アクリル酸の製造プロセスにおける廃水流れから有機化合物を除去する方法。

【課題】(メタ)アクリル酸の製造プロセスにおける廃水流れから、酢酸のような有機化合物をを除去する方法を提供する。
【解決手段】特に、(メタ)アクリル酸、酢酸、プロピレンおよびアクロレインを含む混合生成物ガス1が分別吸収2にかけられて、(メタ)アクリル酸、水および酢酸を含む水性生成物流れ9と、プロピレンおよびアクロレインを含む吸収塔排ガス8とを生じさせる。この水性生成物流れは蒸留されて、精製された(メタ)アクリル酸流れ11と、水および酢酸を含む廃水流れ13,14とを生じさせる。次いで、吸収塔排ガスは廃水流れと接触させられて、そして酢酸の少なくとも一部分が廃水流れから吸収塔排ガスに移動して、ストリップされた廃水流れ17と、富化された吸収塔排ガス18とを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリル酸の製造方法に関し、より具体的にはこの方法における廃水流れから有機化合物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸モノマーの製造は概して、アルカン、アルケンまたはそれらの混合物の気相酸化によって達成されて、(メタ)アクリル酸、並びに未反応原料、副生成物、不純物などをはじめとする様々な他の化合物を含む混合生成物ガスを生じさせる。これら他の化合物から(メタ)アクリル酸を分離するには、吸収工程において混合生成物ガスが水性流れと接触させられて、大部分の(メタ)アクリル酸、水および少量の他の化合物を含む水性(メタ)アクリル酸生成物を生じさせることができる。この吸収工程によって吸収塔(absorber)排ガスも生じさせられ、そして吸収塔排ガスは少なくとも幾分かの他の化合物を含み、この他の化合物は大部分が有機化合物、例えば、限定されないが、未反応アルカン、未反応アルケン、アルデヒドおよび他の望ましくない揮発性有機化合物(VOC)である。
【0003】
もともとは、従来の吸収は一般的に、この混合生成物ガスをより濃縮された水性(メタ)アクリル酸生成物に変換するために使用された(米国特許第6,399,817号参照)。より最近では、分別吸収(fractional absorption)が利用されてきたが、それは分別吸収が混合生成物ガスの成分をより効率的に分離し、それ故に、より濃縮された水性(メタ)アクリル酸生成物を生じさせ、この生成物が下流の精製プロセスを容易にすることができるからである(例えば、米国特許第6,482,981号および第7,183,428号を参照)。分別吸収においては、(メタ)アクリル酸を含む混合生成物ガス、および吸収性水性媒体が分別吸収塔に供給され、そこでは、(メタ)アクリル酸および混合生成物ガスのより高い沸点の成分が水性液相に吸収され、水性(メタ)アクリル酸流れを生じさせ、この流れは分別吸収塔のボトムから出て、一方で、酢酸のような最軽量成分は気相に保持され、そして吸収塔排ガスとして頂部から出る。
【0004】
具体的な吸収方法とは関係なく、生じる水性(メタ)アクリル酸生成物は多くの場合、さらなる量の水、未反応化合物および他の不純物の除去のために1以上の分離装置において蒸留、ストリッピング、分別、精留などのさらなる精製プロセスにかけられて、所望の純度を有する(メタ)アクリル酸生成物を生じさせる。多くの精製工程は結果的に大部分が水である廃棄物流れを生じさせるが、そのことが、その廃棄物流れは上記酸化および吸収プロセスから生じる少量の有機化合物も含んでいるにもかかわらず、その廃棄物流れが一般的には廃水流れと称される理由である(米国特許第6,399,817号;第6,482,981号;および第7,183,428号を参照)。
【0005】
一般的な方法は、この廃水流れを水路、河川、湖または池に単に放出することであったが、環境的な懸念が、その廃水中に含まれる環境に害のある化合物をまず除去するかまたは不活性にするプロセス廃水の前処理を要求する規制につながった。よって、プロセス廃水を廃棄することは、プロセス操作全体に対してコストを追加してきた。このような廃棄コスト並びに環境への危険性を低減させるために、廃水流れを製造プロセスの様々な工程に、例えば、酸化反応器または吸収塔に戻して再利用することがより一般的になっている(米国特許第5,248,819号および第6,399,817号を参照)。
【0006】
さらに、廃水流れは、他の場所で使用されうるか、またはより経済的な廃棄方法に向かわせられうる有機化合物を回収しおよび除去するために、再利用または廃棄の前に処理されてきた。吸収塔排ガスを酸化反応器に再循環させるかまたは吸収塔自体に戻すことも知られている(米国特許第5,248,819号および第6,677,482号を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,399,817号明細書
【特許文献2】米国特許第6,482,981号明細書
【特許文献3】米国特許第7,183,428号明細書
【特許文献4】米国特許第5,248,819号明細書
【特許文献5】米国特許第6,677,482号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(メタ)アクリル酸製造方法の廃棄物流れがより効果的に使用され、再利用され、処理されおよび廃棄されることができる方法および技術を特定しかつ開発する努力が続けられている。本発明の方法は、(メタ)アクリル酸製造方法における分別吸収塔からの吸収塔排ガスを、再利用または廃棄前の廃水流れから有機化合物をストリップするためのストリッピングガスとして使用することによりこのような製造方法の効率を高める。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(メタ)アクリル酸の精製の際に生じる廃水流れから酢酸を除去する方法を提供する。この方法は最初に(メタ)アクリル酸、酢酸、プロピレンおよびアクロレインを含む混合ガスでの分別吸収を行って、(メタ)アクリル酸、水および酢酸を含む水性生成物流れと、プロピレンおよびアクロレインを含む吸収塔排ガスとを生じさせることを含む。次いで、この水性生成物流れは蒸留されて、精製された(メタ)アクリル酸流れと、水および酢酸を含む廃水流れとを生じさせる。本発明の方法は、吸収塔排ガスと廃水流れとを接触させて、それにより、酢酸の少なくとも一部分を廃水流れから吸収塔排ガスに移動させて、酢酸含量が低下したストリップされた廃水流れと、酢酸含量が増大した富化された吸収塔排ガスとを生じさせることをさらに含む。この富化された吸収塔排ガス流れは熱酸化装置に供給される。
【0010】
ストリップされた廃水流れは廃棄されるうるか、またはその中の1種以上の成分を除去するかまたは不活性にするためのさらなる処理にかけられうる。ストリップされた廃水流れの全部もしくは一部分は少なくとも1つの他のプロセス工程に供給されうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の方法が適用された(メタ)アクリル酸の精製方法の配置図である。
【図2】図2は流量増大に従ったストリッピング効率のほぼ直線的な増大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照して、以下に説明される実施形態から本発明のより完全な理解が得られるであろう。
【0013】
他に特定されない限りは、本明細書において示される全てのパーセンテージは重量パーセンテージである。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸もしくはメタクリル酸のいずれか、またはその双方を意味する。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクロレイン」はアクロレインまたはメタクロレインを意味する。
【0016】
用語「ストリッピング」は、本明細書において使用される場合、目的物質を含む溶液からストリッピングガス相へ1種以上の目的物質を移動させるような、目的物質を含む溶液とストリッピングガスとの接触をいう。
【0017】
本発明の方法は図1を参照して説明され、図1は本発明の方法が実施されている典型的な(メタ)アクリル酸製造方法の一般的略図を提供する。
【0018】
図1を参照すると、(メタ)アクリル酸を製造する方法において、混合生成物ガス1が分別吸収塔2に供給されて、混合生成物ガス1から(メタ)アクリル酸を分離し、回収する。具体的に限定されないが、混合生成物ガス1は、例えば、適切な酸化触媒の存在下での分子酸素含有ガスでの炭化水素材料の気相触媒酸化によって得られうる。(メタ)アクロレインおよび/または(メタ)アクリル酸への炭化水素材料の気相触媒酸化、並びにこれを行うための反応器、触媒および方法は当該技術分野において一般的に知られており、例えば、米国特許第4,203,906号;第4,256,783号;第4,365,087号;第4,873,368号;第5,161,605号;第5,177,260号;第5,198,578号;第5,739,391号;および第5,821,390号に記載されている。
【0019】
反応器に供給される反応物質に応じて、混合生成物ガス1は、概して、不活性ガス、例えば、限定されないが、窒素、ヘリウム、アルゴンなど;アクリル酸;未反応炭化水素反応物質、例えば、限定されないが、プロピレン、アクロレイン、プロパンなど;蒸気、および分子酸素含有反応物質、例えば、これに限定されないが、空気、酸素など;反応副生成物、例えば、これに限定されないが、酢酸、ホルムアルデヒド、マレイン酸および他の有機物質;並びにCO、COおよびHOを含む。
【0020】
一般的には、混合生成物ガス1の組成は、混合生成物ガス1の全重量を基準にして、5〜30重量%のアクリル酸、0.1〜3.0重量%の酢酸、0.02〜0.2重量%のアクロレイン、30〜95重量%の不活性ガス、および1〜30重量%の蒸気を含む。
【0021】
図1に示されるように、再利用される廃水を含む水性流れ3も分別吸収塔2に供給される。この廃水は、混合生成物ガスから(メタ)アクリル酸を吸収するのに使用するのに適した任意の廃水であることができ、かつ任意のソースからのものであることができる。結果的に、廃水が再利用されるプロセス流れと同じ(メタ)アクリル酸プロセス流れからこの廃水が得られることは必須ではない。むしろ、この廃水はある(メタ)アクリル酸プロセス流れから得られ、そして別のものに再循環されることができる。廃水の適切な例には、これに限定されないが、(メタ)アクリル酸の脱水から生じる廃水、他の水性留出物、およびラフィネートが挙げられる。同様に、この廃水が(メタ)アクリル酸廃水流れから生じることは必須ではない。よって、この廃水は他の化学プロセス廃水流れから生じうる。さらに、この廃水は河川、井戸、湧水などのような天然のソースから得られうる。
【0022】
水性流れ3は、再利用廃水100重量パーセント以下の任意の適切な量の再利用廃水4を含むことができる。典型的には、水性流れ3は、アクリル酸製造プロセスからの廃水流れ4と、本質的に純粋な水の流れ5、例えば、脱イオン水との混合物であろう。ある実施形態においては、例えば、水性流れ3は廃水を過半量含む。別の実施形態においては、水性流れ3は廃水を0.1重量%〜100重量%含む。好ましくは、水性流れ3は廃水を100重量%含む。再利用廃水がどれだけ利用されるかに関係なく、水性流れ3は水を過半量、およびアクリル酸、酢酸および蒸留溶媒の少なくとも1種を半分未満の量で含むであろう。概して、この水性流れは酢酸を3.0重量%未満、好ましくは2.0重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満含む。別の実施形態においては、この水性流れは蒸留溶媒および/またはアクリル酸を実質的に含まない。
【0023】
さらに図1を参照すると、分別吸収塔2においては、混合生成物ガス1が水性流れ3と接触させられて、水性(メタ)アクリル酸流れ9を形成する。この形成される水性(メタ)アクリル酸流れ9は、一般的には、20〜95重量%、好ましくは35〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%の(メタ)アクリル酸;80〜5重量%、好ましくは65〜10重量%、より好ましくは50〜20重量%の水;並びに、8重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重量%以下の酢酸を含む。
【0024】
一般的には、混合生成物ガス1は、165℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは250℃〜325℃の温度で分別吸収塔2に供給される。水性流れ3は、分別吸収塔2のボトムから回収されるべきアクリル酸の望まれる濃度に応じて、反応器に供給される(混合ガス生成物流れ1における)炭化水素材料1ポンドあたり0.1〜1.0ポンドの水性流れ3の割合で分別吸収塔2に供給される。分別吸収塔2は、混合生成物ガスの(メタ)アクリル酸およびより高い沸点の成分が水性液相に吸収されて、水性(メタ)アクリル酸流れ9を生じさせ、一方で、酢酸のような最軽量成分が気相に維持され、そして吸収塔排ガス8として頂部から出る、当該技術分野において知られている任意の適切な分別吸収塔設計であることができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸を濃縮するために、水性(メタ)アクリル酸流れ9は、図1に概略的に示される生成物カラム10およびその後の酢酸回収カラム12のような1以上の蒸留カラムに供給される。蒸留カラム10、12は、当該技術分野において知られている任意の適切な蒸留カラムであることができる。例えば、シーブトレイ、デュアルフロートレイ様式、または充填カラム様式が使用されうる。
【0026】
水性(メタ)アクリル酸流れ9は生成物カラム10において蒸留されて、(メタ)アクリル酸流れ11と、水、酢酸および他の有機化合物を含む中間廃棄物流れ13とを形成する。カラム10、12の一方または双方で行われる蒸留は単純な非共沸蒸留でありうる。共沸蒸留が望まれる場合には、(メタ)アクリル酸流れの共沸蒸留に適する1種以上の蒸留溶媒がこの蒸留カラム10、12のいずれかまたは双方において使用されうる。ある実施形態においては、例えば、溶媒は実質的に水不溶性であり、一般的には、室温で水中に0.5重量パーセント以下、好ましくは0.2重量パーセント以下の溶解度を有する。このような水不溶性溶媒の適切な例には、これに限定されないが、ヘプタン、ヘプテン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン;オルト−、メタ−もしくはパラ−キシレン;トリクロロエチレン、トリクロロプロペン、2,3−ジクロロブタン、1−クロロペンタン、1−クロロヘキサン、並びに1−クロロベンゼンが挙げられる。別の実施形態においては、溶媒は酢酸エチル、酢酸ブチル、ジブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、メタクリル酸エチル、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンおよびメチルtert−ブチルケトンから選択される。さらなる実施形態においては、蒸留溶媒は、少なくとも2種の溶媒を含む混合溶媒である。この混合溶媒に有用な溶媒の適切な例には、これに限定されないが、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルtert−ブチルケトン、イソプロピルアセタート、n−プロピルアセタート、トルエン、ヘプタン、およびメチルシクロヘキサンが挙げられる。好ましい蒸留溶媒はトルエンである。
【0027】
生成物カラム10のボトムから出てくるのは、実質的に水を含まない(メタ)アクリル酸流れ11である。一般的に、この(メタ)アクリル酸流れ11は水を1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満しか有さない。このアクリル酸流れは、実質的でない量で以下の少なくとも1種を含んでいても良い:酢酸、プロピオン酸、β−アクリルオキシプロピオン酸(AOPA)、アクロレイン、フルフラール、ベンズアルデヒド、マレイン酸、無水マレイン酸、プロトアネモニンおよびアセトアルデヒド。
【0028】
(メタ)アクリル酸流れ11は(メタ)アクリルエステルまたはメタアクリラートポリマー製造における原料として使用するのに適する。この(メタ)アクリル酸はそのままで使用されることができ、または限定されないが、特定の不純物を除去するための追加の蒸留、および様々な等級の(メタ)アクリル酸を形成するためのさらなる処理をはじめとして、さらに処理されることができる。
【0029】
図1に示されるように、中間廃棄物流れ13は、次いで、廃水としてのこの流れ13の廃棄または再利用の前に酢酸を回収するために、酢酸回収カラム12に供給されることができる。より具体的には、この中間廃棄物流れ13は酢酸回収カラム12において蒸留されて、より多くの水、酢酸および他の有機化合物を含む第2の廃水流れ14と、(メタ)アクリル酸を含むボトム流れ15とを生じさせることができる。図1に示されるように、このボトム流れ15は(メタ)アクリル酸生成物を再補足するために、生成物カラム10に戻されて再利用されることができる。
【0030】
次いで、第2の廃水流れ14はこのプロセスにおける他のどこかに再循環されて使用されることができ、または廃棄され水処理施設に送られても良い。しかし、このプロセスにおける有機化合物の蓄積を妨げるために、再利用の前に第2の廃水流れ14の外に、酢酸のような有機化合物の少なくとも幾分かをストリップすることが有利であろう。第2の廃水流れ14が処理および最終的な廃棄のために送られる場合には、最初に有機化合物の幾分かを除去しておくことが処理コストを低下させるであろうし、それ故に、このプロセス廃棄物流れの処理のコストを低減させるであろう。
【0031】
よって、本発明の方法に従って、図1に示されるように、ストリッピングカラム16において、第2の廃水流れ14と、吸収塔排ガス流れ8の少なくとも一部分を含むストリッピングガス7とを接触させることにより、第2の廃棄物流れ14における有機化合物の少なくとも一部分が除去される。ストリッピングガスとして吸収塔排ガス流れ8の少なくとも一部分を使用するこの廃水流れ14のストリッピングは、処理および廃棄するコストがより低い先行するオーバーヘッド廃水流れ14よりも少ししか有機化合物を含まないストリップされた廃水流れ17を生じさせる。先行する吸収塔排ガス8よりも多くの酢酸および他の有機化合物を含む富化排ガス流れ18も製造される。ストリッピングカラム16からの富化排ガス流れ18は、一般的には、焼却および/または酸化のための廃棄物処理に送られ、次いで大気に放出される。吸収塔排ガス流れ8の一部分のみがストリッピングカラム16においてストリッピングガスとして使用される場合には、吸収塔排ガス流れ8のその他の部分23の全部もしくは一部分が、酸化反応器(示されていない)などに再循環されうる。
【0032】
ストリッピングカラム16は廃水から望ましくない有機成分をストリップするのに適する任意のカラムであることができる。このようなカラムは当該技術分野において知られており、充填カラムおよびトレイ含有カラムが挙げられる。
【0033】
一般的には、ストリッピングカラム16においてストリッピングガス7として使用されるガスは0〜100重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜20重量%の水含量、および20℃〜250℃、好ましくは、45℃〜125℃、より好ましくは50℃〜90℃の温度を有するべきである。吸収塔排ガスは、廃水から望ましくない成分を適切にストリップするのに充分な熱および水含量を伴って吸収塔から出てくるので、吸収塔排ガス流れ8の少なくとも一部分をストリッピングガス7として使用することは有利である。よって、潜在的な排ガスストリッピング流れの処理、すなわち、加熱および水の添加または除去が回避される。
【0034】
しかし、場合によっては、空気、燃焼用空気、他の排ガス流れなどの他のストリッピングガス流れを、単独でまたは吸収塔排ガス流れ8の全部もしくは一部分と組み合わせて使用することが望ましい場合がある。これは、適切な操作温度範囲を得るために、ストリッピングガス7の追加の加熱を必要とする場合がある。また、廃水流れ14からの有機物質の除去を増大させるために、追加の加熱が必要とされる場合がある。その結果、生蒸気スパージ、外部または内部リボイラー、ストリッピングガスフィードプレヒーター、またはストリッピングカラムへの追加の熱を供給する当該技術分野において知られた他の方法が使用されうる。さらに、ストリッピングカラム内での追加の運動量移動(momentum transfer)が必要とされる例があり得る。例えば、カラム内での圧力降下が増大し、吸収塔圧力が、適切な運動量移動をもたらすのに不十分である場合がある。したがって、送風機などの装置を用いてこのような運動量移動を増加させることができる。
【0035】
図1に示される重合禁止剤フィード20、21および22のような様々な場所で、1種以上の重合禁止剤がこの製造プロセスに導入されうる。重合禁止剤は、水溶性またはアルコール可溶性重合禁止剤を包含しうる。適当な例としては、これに限定されないが、ヒドロキノン;4−メトキシフェノール;4−エトキシフェノール;1,2−ジヒドロキシベンゼン;カテコールモノブチルエーテル;ピロガロール;4−アミノフェノール;2−メルカプトフェノール;4−メルカプトフェノール;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ フリーラジカル;4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ フリーラジカル;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ フリーラジカル;その異性体;その誘導体;これらの2種以上の混合物;または前記の1種以上と分子酸素との混合物が挙げられる。
【0036】
図1を再び参照すると、廃水流れ4の全部もしくは一部分は廃水流れ14、17から得られることができ、そして水性流れ3と共に分別吸収塔2に供給されることができる。例えば、蒸留オーバーヘッド廃水流れ14は、吸収塔排ガス8を含むストリッピングガス流れ7を用いてストリッピングカラム16内で望ましくない成分についてのストリップがなされることができ、ストリップされた廃水流れ17を生じさせうる。次いで、この廃水流れ17の全部もしくは一部分(流れ19、点線で示される)は水性流れ3と一緒にされて、分別吸収塔2に供給されうる。ストリップされるまたはストリップされない廃水流れ4の量は、利用可能な廃水流れ中の望ましくない成分の量に従って変動するであろう。
【0037】
本発明の方法の有効性が以下の実施例によって示される。
【実施例】
【0038】
吸収塔排ガス(AOG)流れを模倣するために、水飽和N流れを使用して、実験室においてガスストリッピング実験が行われた。この水−ガス流れは、それをストリッピングカラムに導入する前に、商業スケールのAOG流れの典型的な温度で予備加熱された。この実験は、廃水プロセス流れを模倣したフィード流れ中の有機化合物が取り出され、この水−ガス(AOG)流れに吸収されたこと、そして、このストリッパーからのストリップされたボトム流れがより低い濃度の有機化合物を有していたことを示した。実験室実験の詳細は以下の通りである。
【0039】
アクリル酸(4.875重量%)、酢酸(4.657重量%)および水(91重量%)を含む模擬廃水フィードが大きな容器内で調製された。この容器は秤の上に置かれ、それにポンプシステムが取り付けられた。Nが計量され、そして70℃に設定した浴の中で予備加熱され、ステンレス鋼ラシヒリングを充填したシェルアンドチューブ熱交換器のボトムに供給された。水(N流れを基準にして25mol%)がこの交換器システム内にポンプ移送され、生じた流れがカラムシステムに供給された。
【0040】
このカラムシステムは、100mLのボトムフラスコを伴った10−トレイ、1インチのオールダーショウ(Oldershaw)システムであった。フィードは600グラム/時間(g/h)の流量でトップトレイに添加された。このシステムはボトムにおける液体量を一定にするように操作された。模擬廃水フィード中での重合を禁止するためにヒドロキノン(HQ)が使用された。
【0041】
流量は8リットル/分(L/分)、13L/分、20L/分、28L/分となるように計量された。オーバーヘッドおよびボトムは1時間ごとに集められ、有機物および水含量について分析された。
【0042】
典型的な実験においては、交換器はN下で予備加熱され、出口温度が60℃に到達したら、水がこの交換器に添加され、ヒーターが排水目標温度(65℃)で制御される。カラムは熱を得るようにされ、頂部セクション(トレイ8)が45℃に到達すると、次いでフィードが導入される。ボトムは一定の量および目標フローを維持するように取り出される。最初の1時間からのカット(cut)は典型的には廃棄され、次いで、ボトムおよびオーバーヘッドが時間ごとに集められる。上述のように実行された1つの実験からのデータの例が以下の表に提示される。
【0043】
8および13L/分のNフローの条件下で、得られたストリッピング効率は4.6%(AAおよびAcOHを一緒にして)および13L/分でのストリッピング効率は10.4%(一緒にして)であった。図2に示されるように、フローが増大するにつれて、ストリッピング効率はほぼ直線的な増加を示し、28L/分で30%の値であった(以下の図を参照)。ストリッピング効率は(有機物オーバーヘッド)/(供給された有機物)の割合(%)として定義される。
【0044】
【表1】

【符号の説明】
【0045】
1 混合生成物ガス
2 分別吸収塔
3 水性流れ
4 再利用廃水
5 本質的に純粋な水の流れ
7 ストリッピングガス
8 吸収塔排ガス
9 水性(メタ)アクリル酸流れ
10 生成物カラム
11 (メタ)アクリル酸流れ
12 酢酸回収カラム
13 中間廃棄物流れ
14 第2の廃水流れ
15 ボトム流れ
16 ストリッピングカラム
17 ストリップされた廃水流れ
18 富化排ガス流れ
19 流れ
20、21、22 重合禁止剤フィード
23 吸収塔排ガス流れのその他の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸の精製の際に生じる廃水流れから酢酸を除去する方法であって、
(A)(メタ)アクリル酸、酢酸、プロピレンおよびアクロレインを含む混合ガスでの分別吸収を行って、(メタ)アクリル酸、水および酢酸を含む水性生成物流れと、プロピレンおよびアクロレインを含む吸収塔排ガス流れとを生じさせ;
(B)前記水性生成物流れを蒸留して、精製された(メタ)アクリル酸流れと、水および酢酸を含む廃水流れとを生じさせ;並びに
(C)前記吸収塔排ガスと、前記廃水流れとを接触させて、それにより、酢酸の少なくとも一部分を前記廃水流れから前記吸収塔排ガスに移動させて、酢酸含量が低下したストリップされた廃水流れと、酢酸含量が増大した富化された吸収塔排ガスとを生じさせる;
ことを含む方法。
【請求項2】
前記ストリップされた廃水流れが廃棄される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリップされた廃水流れが、その中の1種以上の成分を除去するかまたは不活性化するためのさらなる処理にかけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリップされた廃水流れの少なくとも一部分が、少なくとも1つの他のプロセス工程に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記富化された吸収塔排ガス流れが熱酸化装置に供給される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合ガスが気相触媒酸化反応から得られ、かつ(メタ)アクリル酸を25〜29重量%および酢酸を1〜3重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水性生成物流れが(メタ)アクリル酸を70〜93重量%含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸留工程が少なくとも2つの蒸留カラムにおいて達成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記廃水流れが水を60〜90重量%含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49665(P2013−49665A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−147044(P2012−147044)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】