説明

(メタ)アクリル酸系架橋共重合体およびそれを用いた二次電池の電極

【課題】対溶媒安定性に優れ、ひび割れが発生することのない(メタ)アクリル酸系架橋共重合体および二次電池の電極を提供する。
【解決手段】一般式(1):


で表される(メタ)アクリル酸イミノ化合物と、ニトロキシド化して得られる架橋共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体およびそれを用いた二次電池の電極に関する。更に詳しくは、エネルギー密度が高く大容量の二次電池の電極材料として用いられる、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体およびそれを用いた二次電池の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンや携帯電話等の急速な市場拡大に伴い、これらに用いられるエネルギー密度の高い小型大容量二次電池への要求が高まっている。この要求に応えるために、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体としてその電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発されている。中でもリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、安定性に優れた大容量二次電池として種々の電子機器に利用されている。このようなリチウムイオン二次電池は、一般に、活物質として正極にリチウム含有遷移金属酸化物を、負極に炭素を用いたものであり、これら活物質へのリチウムイオンの挿入、脱離反応を利用して充放電を行っている。
【0003】
近年、より大容量化を目的に、電極反応に直接寄与する電極活物質としてラジカル化合物を利用した二次電池が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記二次電池では、負極と正極との両極間の荷電担体輸送を行う電解液を構成する溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソフラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒が、単独で、もしくは2種以上を混合して用いられる。また、前記ラジカル化合物として、例えば、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート)、ポリ(2,2,5,5−テトラメチル−2−ピロリジニルメタクリレート)およびポリ(2,2,5,5−テトラメチル−2−ピロリニルメタクリレート)等の高分子の側鎖に安定なラジカルを持つ化合物が用いられる。
【0005】
しかしながら、これらの従来提案されているラジカル化合物では、対溶媒安定性が不充分で、電極活物質が電解液を構成する溶媒に溶出するため、二次電池の性能安定性が不充分であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らはこのような従来の問題点を解決すべく研究した結果、対溶媒安定性に優れたラジカル化合物の製造方法として、特定の(メタ)アクリル酸化合物を架橋剤の存在下に重合する重合工程を含むことを特徴とする架橋ポリ(メタ)アクリル酸ニトロキシド化合物の製造方法および当該化合物を用いた二次電池の電極の製造方法について特許出願した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−304996号公報
【特許文献2】国際公開第2005/116092号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の架橋ポリ(メタ)アクリル酸ニトロキシド化合物は、優れた対溶媒安定性を有し、それを用いることにより二次電池の安定性が向上するものの、これを塗料化して集電体に塗布する際に比較的多量の溶剤を必要とし、また乾燥後の集電体の塗布面にひび割れが発生する場合があった。ひび割れが発生すると、当該電極の、二次電池製造における加工性を損なったり、当該電極を用いた二次電池の容量が低下したりする等の不具合があった。
【0008】
本発明は、対溶媒安定性に優れ、それを塗布した集電体の塗布表面に乾燥によるひび割れが実質的に発生することのない(メタ)アクリル酸系架橋共重合体およびそれを用いた二次電池の電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特許文献2における架橋ポリ(メタ)アクリル酸ニトロキシド化合物についてさらに検討を加え、さらに優れた特性を有する(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、一般式(1):
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸イミノ化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを架橋剤の存在下で重合した後、ニトロキシド化して得られる(メタ)アクリル酸系架橋共重合体に関する。
また、本発明は、前記(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を用いた二次電池の電極に関する。
なお、本発明においては、アクリル酸およびメタクリル酸を(メタ)アクリル酸といい、アクリレートおよびメタクリレートを(メタ)アクリレートという。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸イミノ化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを架橋剤の存在下で重合した後、ニトロキシド化して得られるものである。
【化2】

式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0012】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸イミノ化合物としては、具体的には例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル(メタ)アクリレートが挙げられ、市販品を用いることができる。
【0013】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを用いることで、電解液を構成する溶媒に対する溶出防止性(対溶媒安定性)を維持しつつ、塗料化に際しては、比較的少量の溶媒で高い塗工性を実現することができ、乾燥時のひび割れを抑制することが可能となる。このような効果が得られる理由は詳らかではないが、導入されたアルキル基同士の反発で溶媒が分子鎖間に入りやすくなるため、スラリーの流動性がアルキル基導入前より改善されるためであると考えられる。
【0014】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を得るために用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルおよび(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられる。一方、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール部の大きさとしては、例えば、アルキレングリコール部の繰り返し数が1〜100であるものが挙げられる。これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を塗料化した際の塗布容易性が優れることから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルおよび(メタ)アクリル酸ベヘニルが好適に用いられ、さらに(メタ)アクリル酸ステアリルが特に好適に用いられる。なお、これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステルの使用割合は、当該(メタ)アクリル酸系架橋共重合体の良好な塗布表面が得られる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記(メタ)アクリル酸イミノ化合物1モルに対して0.00001〜0.25モルの割合であることが好ましく、0.00005〜0.10モルの割合であることがより好ましく、0.001〜0.05モルの割合であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を得るために用いられる架橋剤としては、分子内に複数個の重合性不飽和基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸系多官能化合物、アリルエーテル系多官能化合物およびビニル系多官能化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系多官能化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アリルエーテル系多官能化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアリルエーテルおよびジブチレングリコールジアリルエーテル等が挙げられる。ビニル系多官能化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、高い重合反応性を有する観点から、(メタ)アクリル酸系多官能化合物が好適に用いられ、特に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。なお、これら架橋剤は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
架橋剤の使用割合は、優れた対溶媒安定性を有する(メタ)アクリル酸系架橋共重合体が得られる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記(メタ)アクリル酸イミノ化合物1モルに対して0.00001〜0.25モルの割合であることが好ましく、0.00005〜0.1モルの割合であることがより好ましく、0.0001〜0.05モルの割合であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明において、前記(メタ)アクリル酸イミノ化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを、架橋剤の存在下で重合する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法、乳化重合法および溶液重合法等の方法を用いることができる。
【0019】
懸濁重合法としては、例えば、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応器を用いて、所定量の(メタ)アクリル酸イミノ化合物、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤並びに油溶性ラジカル重合開始剤を不活性炭化水素系溶媒に混合したものと、界面活性剤とを、反応不活性である水に混合して分散させた後、窒素ガスにより脱酸素し、攪拌下で加熱する方法が挙げられる。
【0020】
懸濁重合法に用いられる油溶性ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化−tert−ブチル、ラウロイルパーオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナートおよびジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート等の過酸化物系重合開始剤;α、α′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルおよびジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン、過酸化ジ−tert−ブチル/ジメチルアニリン、ラウロイルパーオキシド/ジメチルアニリン等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、安価であり取扱いが簡便なα、α′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤が好適に用いられる。
【0021】
懸濁重合法に用いられる油溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、使用する油溶性ラジカル重合開始剤の種類や反応温度により異なるが、通常、(メタ)アクリル酸イミノ化合物100重量部に対して0.005〜5重量部である。
【0022】
懸濁重合法に用いられる不活性炭化水素系溶媒としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の非環式飽和炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式飽和炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手が容易で、安価であり、得られる重合反応生成物の品質が安定する観点から、芳香族炭化水素系溶媒および非環式飽和炭化水素系溶媒が好ましく、中でも、トルエンおよびn−ヘキサンが好適に用いられる。
【0023】
懸濁重合法に用いられる不活性炭化水素系溶媒の使用量は、(メタ)アクリル酸イミノ化合物を十分溶解させて重合反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、(メタ)アクリル酸イミノ化合物100重量部に対して50〜300重量部であることが好ましく、100〜200重量部であることがより好ましい。
【0024】
懸濁重合法に用いられる前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれをも用いることができる。
【0025】
懸濁重合法に用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪族カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、アシロイルメチルタウレート、N−メチル−N−アシルアミドプロピオン酸ナトリウム、モノアルキルビフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ナフタリンスルホン酸ナトリウム−ホルマリン縮合物、アシルグルタミン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルメチルカルボン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルエタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
懸濁重合法に用いられるカチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、カチオン化セルロース、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびアルキルピリジニウムクロライド等が挙げられる。
【0027】
懸濁重合法に用いられるノニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルジメチルアミンオキシド、脂肪酸アルキロールアミド、ω−メトキシポリオキシエチレン−α−アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、シュガー脂肪酸部分エステル、ポリビニルアルコールおよび部分ケン化ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
懸濁重合法に用いられる両性界面活性剤としては、例えば、N−アシルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニオベタイン、N−アシルアミドプロピル−N’,N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン、N−アシルアミドエチル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N−アルキル−N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、アルキルジアミノエチルグリシンおよびアシル化ポリペプタイド等が挙げられる。
【0029】
これらの界面活性剤の中でも、工業的に入手が容易で、安価であり、得られる重合反応生成物の品質が安定する観点から、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールおよび部分ケン化ポリビニルアルコールが好適に用いられる。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの中でも、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0030】
懸濁重合法に用いられる界面活性剤の使用量は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記水100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
また、懸濁重合法に用いられる水の使用量は、重合熱を十分除去できる観点および重合温度を制御しやすくする観点から、(メタ)アクリル酸イミノ化合物100重量部に対して200〜3000重量部であることが好ましく、300〜2000重量部であることがより好ましい。
なお、前記懸濁重合反応において、必要に応じてイソプロピルアルコール等の連鎖移動剤やメタノール等の重合停止剤等の添加剤を、適宜加えてもよい。
【0031】
懸濁重合法における反応温度としては、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。反応時間は、前記反応温度により異なるため一概には言えないが、通常、0.5〜10時間である。
【0032】
かくして得られた重合反応生成物は、反応溶媒中に粒子状態で存在するため、当該反応液をろ過することにより単離することができる。さらに、水、メタノール、ヘキサン等を用いて、未反応物等を除去、洗浄し、乾燥することにより精製することができる。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を得るために用いられる別の重合方法である乳化重合法としては、例えば、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応器を用いて、所定量の(メタ)アクリル酸イミノ化合物、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤並びに界面活性剤を、不活性溶媒である水に混合して分散させた後、窒素ガスにより脱酸素し、水溶性ラジカル重合開始剤を添加して、攪拌下で加熱する方法が挙げられる。
【0034】
乳化重合法に用いられる水溶性ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物系重合開始剤、硫酸第一鉄アンモニウム/過硫酸アンモニウムおよびエタノールアミン/過硫酸カリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、安価であり取扱いが簡便な過硫酸カリウム等の過酸化物系重合開始剤が好適に用いられる。
また、乳化重合法における、界面活性剤の種類や使用量、重合開始剤の使用量、不活性溶媒としての水の使用量、反応温度および反応時間は、前記懸濁重合法におけるそれらと同様のものを適用することができる。
【0035】
なお、乳化重合法において、(メタ)アクリル酸イミノ化合物を溶解するために、懸濁重合法で用いるものと同様の不活性炭化水素系溶媒を適宜加えてもよく、さらに、必要に応じてイソプロピルアルコール等の連鎖移動剤やメタノール等の重合停止剤等の添加剤を適宜加えてもよい。
【0036】
かくして得られた重合反応生成物は、例えば、反応液を大量の冷水と混合し、当該重合反応生成物を沈澱させた後、ろ過する等して単離することができる。さらに、水、ヘキサン、メタノール等を用いて、未反応物等を除去、洗浄した後、乾燥することにより精製することができる。
【0037】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を得るために用いられる別の重合方法である溶液重合法としては、例えば、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応器に、所定量の(メタ)アクリル酸イミノ化合物、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤並びに不活性溶媒を仕込み、窒素ガスにより脱酸素した後、攪拌しながら重合開始剤を添加する方法が挙げられる。
【0038】
溶液重合法に用いられる不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の非環式飽和炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式飽和炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の不活性溶媒が挙げられる。
溶液重合法に用いられる不活性溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、(メタ)アクリル酸イミノ化合物100重量部に対して50〜2000重量部であることが好ましい。
【0039】
溶液重合法に用いられる重合開始剤としては特に限定されず、ラジカル重合開始剤やアニオン系重合開始剤を用いて重合することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、第三級ブチルハイドロパーオキシド、過硫酸カリウム等の過酸化物系重合開始剤;α、α′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ系重合開始剤;硫酸第一鉄アンモニウム/過硫酸アンモニウム、エタノールアミン/過硫酸カリウム、臭素酸ナトリウム/二酸化硫黄等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、安価であり取扱いが簡便なα、α′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤が好適に用いられる。また、アニオン系重合開始剤としては、例えば、グリニャール試薬(n−ブチルマグネシウムブロマイド、イソブチルマグネシウムブロマイド、tert−ブチルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、イソブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド等)およびアルキルリチウム(n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,1,−ジフェニルヘキシルリチウム等)等が挙げられる。これらの中でも、得られる重合反応生成物の品質が安定する観点からtert−ブチルリチウム等のアルキルリチウムが好適に用いられる。
溶液重合法に用いられる重合開始剤の使用量は、使用する重合開始剤の種類や反応温度により異なるが、通常、(メタ)アクリル酸イミノ化合物100重量部に対して0.005〜5重量部である。
なお、前記溶液重合反応において、必要に応じてイソプロピルアルコール等の連鎖移動剤やメタノール等の重合停止剤等の添加剤を、適宜加えてもよい。
【0040】
溶液重合法における反応温度としては、使用する重合開始剤の種類により異なるが、通常−100〜100℃が好ましく、−50〜80℃がより好ましい。反応時間は前記反応温度により異なるため一概には言えないが、通常、2〜10時間である。
【0041】
かくして得られた重合反応生成物は、反応液をヘキサン等の脂肪族炭化水素等の溶媒と混合し、当該重合反応生成物を沈澱させた後、ろ過する等して単離することができる。さらに、ヘキサン、メタノール等を用いて、未反応物等を除去、洗浄し、乾燥することにより精製することができる。
【0042】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体は、前記重合反応生成物をニトロキシド化することにより製造することができる。
前記重合反応生成物をニトロキシド化する方法としては、特に限定されず、例えば、立体障害を有する第2級アミンを、酸化剤を用いて酸化することにより、対応するニトロキシド遊離基を有する化合物を製造する公知の方法等を挙げることができる。具体的には、例えば、前記重合反応生成物と不活性溶媒とを混合した後、攪拌下、酸化剤を添加しながら反応させることにより、前記重合反応生成物をニトロキシド化することができる。
【0043】
ニトロキシド化に使用する不活性溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等の脂肪族ニトリル類、ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類およびベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、並びに水等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類およびメタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール類が好適に用いられる。
【0044】
ニトロキシド化に使用する不活性溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記重合反応生成物100重量部に対して50〜5000重量部であることが好ましく、100〜3000重量部であることがより好ましい。
【0045】
ニトロキシド化に使用する酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸および過フタル酸等の過酸化物やこれらのハロゲン化物、酸化銀、四酢酸鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムおよび過マンガン酸カリウム等の酸化物、並びに空気等が挙げられる。
【0046】
ニトロキシド化に使用する酸化剤の使用割合は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記重合反応生成物の製造に用いた(メタ)アクリル酸イミノ化合物1モルに対して1〜100モルの割合であることが好ましく、1.5〜50モルであることがより好ましい。
【0047】
また、前記ニトロキシド化反応において、必要に応じて触媒を使用することができる。触媒としては、通常のニトロキシド化反応に使用されている触媒を挙げることができる。
ニトロキシド化反応に用いられる触媒の具体例としては、タングステンおよびモリブデン等の18族型元素周期律表第6族から選ばれる金属元素を含む化合物であって、例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、パラタングステン酸並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)およびアンモニウム塩や酸化タングステン、タングステンカルボニル等のタングステン化合物;モリブデン酸、リンモリブデン酸、パラモリブデン酸並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)およびアンモニウム塩や酸化モリブデン、モリブデンカルボニル等のモリブデン化合物等が挙げられ、さらに具体的には、パラタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、モリブデンヘキサカルボニル等が挙げられる。
【0048】
ニトロキシド化反応に用いられる触媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、前記重合反応生成物100重量部に対して0.001〜20重量部であることが好ましく、0.01〜10重量部であることがより好ましい。
【0049】
ニトロキシド化の反応温度としては、0〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
【0050】
前記重合反応生成物をニトロキシド化する方法の操作としては、容易に収率よく反応できることから、まず前記重合反応生成物、不活性溶媒および必要に応じて触媒を混合した後、酸化剤を添加しながら反応させるのが好ましい。
酸化剤を添加しながら反応させる時間は、特に制限はないが、通常、1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。さらに、通常、酸化剤の添加終了後、前記温度に1〜10時間保持して反応を完結させる。
【0051】
かくして得られた、本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体は、ろ過や乾燥等を組み合わせて前記反応液から単離することができる。なお、前記ニトロキシド化反応において、重合反応生成物は必ずしも不活性溶媒に溶解させる必要はなく、例えば膨潤した状態であっても、前記ニトロキシド化反応は容易に進行する。
【0052】
本発明の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を用いて、これを集電体と結着させることにより二次電池の電極を製造することができる。
前記集電体は、二次電池の電極から発生する電荷が集められる電極構成部であって、導電体からなる。集電体に使用される部材としては、通常、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス等の金属箔、金属平板および金属メッシュ、並びに炭素棒等が挙げられる。
【0053】
本発明の二次電池の電極を製造する方法としては、例えば、当該(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を塗料化する塗料化工程と該塗料を集電体に塗布する塗布工程とを含む方法を挙げることができる。前記塗料化の方法および塗布の方法には特に制限がなく、公知の方法や装置を用いて行うことができる。
【0054】
塗料化の方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体にバインダーを混合した後、溶媒を加えてスラリー状にする方法等が挙げられる。バインダーの具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドおよび各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。また前記溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0055】
また、塗布の方法としては、例えば、前記塗料化により得られたスラリーを集電体の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開させた後、乾燥させて溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0056】
なお、前記塗料化に際し、インピーダンスを低下させる目的から、(メタ)アクリル酸系架橋共重合体に補助導電材やイオン伝導補助材を適宜加えてもよい。補助導電材の具体例としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、および、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子等が挙げられる。また、イオン伝導補助材の具体例としては、高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等が挙げられる。
【0057】
前記塗料化した(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を塗布して得られる塗膜の膜厚は、10〜1000μmであることが好ましく、50〜300μmであることがより好ましい。
【0058】
本発明の二次電池の電極は、例えば、リチウムイオン二次電池等、エネルギー密度が高く大容量の二次電池の電極として好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明によると、対溶媒安定性に優れるだけでなく、それを塗料化した際の塗布容易性に優れ、乾燥によるひび割れが実質的に発生することのない(メタ)アクリル酸系架橋共重合体およびそれを用いた二次電池の電極が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0061】
実施例1
内容積200mlの三角フラスコに2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート22.50g(100ミリモル)、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)、メタクリル酸−n−ステアリル0.34g(1.0ミリモル)、重合開始剤としての2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.34g(1.4ミリモル)およびトルエン26mlを仕込み、混合して均一溶液を得た。
次に、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管を備えた500ml容の4つ口フラスコに、水200mlおよび界面活性剤としての部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度:87%,重合度:2000)3.0gを仕込み、混合し、この溶液を25℃に保ちながら、攪拌下、前記均一溶液を加えて分散させた。引き続き、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、攪拌下、60℃にて6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ろ過した後、水500ml、次いでヘキサン500mlでそれぞれ洗浄し、減圧乾燥して白色粉体の重合反応生成物23.1gを得た(収率99.8%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.06、3.92、1.87、1.23、1.21、1.17、0.94、0.73ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
【0062】
次に、得られた重合反応生成物10g、触媒としてタングステン酸ナトリウム二水和物0.73g(2.2ミリモル)、およびメタノール300mlを攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた500ml容の4つ口フラスコに仕込み、25℃に保ちながら窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、30%の過酸化水素溶液50.40g(445ミリモル)を3時間かけて滴下した。引き続き8時間25℃に保持した後、反応液をろ過し、メタノール500ml、次いで水500mlでそれぞれ洗浄し、減圧乾燥して赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.8gを得た。
【0063】
実施例2
内容積200mlの三角フラスコに2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート22.50g(100ミリモル)、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)、メタクリル酸−n−ステアリル0.34g(1.0ミリモル)およびトルエン26mlを仕込み、混合して均一溶液を得た。
次に、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管を備えた500ml容の4つ口フラスコに、水200ml、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0gおよび重合開始剤としての過硫酸カリウム0.38g(1.4ミリモル)を仕込み混合し、この溶液を25℃に保ちながら、攪拌下、前記均一溶液を加えて分散させた。引き続き、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、攪拌下、60℃にて6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ろ過した後、水500ml、次いでヘキサン500mlでそれぞれ洗浄し、減圧乾燥して白色粉体の重合反応生成物22.5gを得た(収率97.1%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.06、3.92、1.88、1.23、1.20、1.17、0.94、0.72ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
【0064】
次に、得られた重合反応生成物10g、触媒としてタングステン酸ナトリウム二水和物0.73g(2.2ミリモル)、およびメタノール300mlを攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた500ml容の4つ口フラスコに仕込み、25℃に保ちながら窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、30%の過酸化水素溶液50.40g(445ミリモル)を3時間かけて滴下した。引き続き8時間25℃に保持した後、反応液をろ過し、メタノール500ml、次いで水500mlでそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥して赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.9gを得た。
【0065】
実施例3
実施例1において、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)に代えて、1,9−ノナンジオールジメタクリレート3.29g(11.1ミリモル)を用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体の重合反応生成物24.5gを得た(収率93.8%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.07、3.91、1.88、1.24、1.21、1.17、0.94、0.73ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.91ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.6gを得た。
【0066】
実施例4
実施例1において、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)に代えて、1,9−ノナンジオールジアクリレート0.28g(1.0ミリモル)を用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体の重合反応生成物22.4gを得た(収率96.9%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.06、3.91、1.87、1.22、1.20、1.16、0.93、0.72ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.91ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.8gを得た。
【0067】
実施例5
実施例1において、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)に代えて、エチレングリコールジメタクリレート0.20g(1.0ミリモル)を用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体の重合反応生成物21.9gを得た(収率95.1%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.07、4.35、3.92、1.88、1.25、1.21、1.18、0.95、0.73ppmにピークが認められた。これらピークのうち4.35ppmに認められたピークはエチレングリコールジメタクリレートに起因するものであり、3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.9gを得た。
【0068】
実施例6
実施例1において、メタクリル酸−n−ステアリル0.34g(1.0ミリモル)に代えて、メタクリル酸−n−ステアリル0.03g(0.1ミリモル)を用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体の重合反応生成物22.6gを得た(収率99.0%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.06、3.92、1.87、1.23、1.20、1.16、0.93、0.72ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.8gを得た。
【0069】
実施例7
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管を備えた500ml容の4つ口フラスコに、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート70.0g(311ミリモル)、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.92g(3.1ミリモル)、メタクリル酸−n−ステアリル2.10g(6.2ミリモル)およびテトラヒドロフラン150mlを仕込み、均一溶液を得た。この溶液を25℃に保ちながら、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、重合開始剤としてのα,α’−アゾビスイソブチロニトリル0.358g(2.2ミリモル)を加えて、攪拌下、50℃にて6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサン2000ml中に加えてろ過した後、ヘキサン500mlで洗浄し、減圧乾燥して白色粉体の重合反応生成物70.4gを得た(収率97.5%)
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.05、3.92、1.86、1.22、1.20、1.16、0.93、0.72ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
【0070】
次に、得られた重合反応生成物18gおよびジクロロメタン150mlを攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた500ml容の4つ口フラスコに仕込み、25℃に保ちながら窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、ジクロロメタン200mlに溶解させたm−クロロ過安息香酸34.0g(純分65重量%、128.0ミリモル)を5時間かけて滴下した。引き続き6時間、25℃に保持した後、遠心分離により反応液から白色沈澱物を分離除去し、残りの上層部を10重量%炭酸カリウム水溶液150ml、次いで飽和食塩水150mlでそれぞれ洗浄後、有機層を適量の硫酸マグネシウムで脱水し、硫酸マグネシウム除去後、減圧乾燥して赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体16.2gを得た。
【0071】
実施例8
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、環流冷却管を備えた500ml容の4つ口フラスコに2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート70.0g(311ミリモル)、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.92g(3.1ミリモル)、メタクリル酸−n−ステアリル2.10g(6.2ミリモル)および脱水したトルエン150mlを仕込み、均一溶液を得た。この溶液を0℃に保ちながら、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、重合開始剤として市販のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.5mol/l)1.4ml(n−ブチルリチウムとして2.2ミリモル、0.14g)を加えて、攪拌下、0℃にて6時間反応させた後、メタノールを添加して反応を停止させた。反応終了後、反応液を室温までもどし、ヘキサン2000ml中に加えてろ過した後、ヘキサン500mlで洗浄し、減圧乾燥して白色粉体の重合反応生成物70.5gを得た(収率96.1%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、5.06、3.92、1.87、1.23、1.21、1.18、0.94、0.74ppmにピークが認められた。これらピークのうち3.92ppmに認められたピークはメタクリル酸−n−ステアリルに起因するものである。
【0072】
次に、得られた重合反応生成物10g、触媒としてタングステン酸ナトリウム二水和物0.73g(2.2ミリモル)、およびメタノール300mlを攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた500ml容の4つ口フラスコに仕込み、25℃に保ちながら窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、30%の過酸化水素溶液50.40g(445ミリモル)を3時間かけて滴下した。引き続き8時間25℃に保持した後、反応液をろ過し、メタノール500ml、次いで水500mlでそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥して赤色粉体のメタクリル酸系架橋共重合体9.5gを得た。
【0073】
比較例1
実施例1においてメタクリル酸−n−ステアリル0.34g(1.0ミリモル)を用いない以外は実施例1と同様にして、白色粉体の重合反応生成物21.1gを得た(収率92.5%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、認められたピークは5.06、1.88、1.25、1.21、1.16、0.94、0.73ppmであり、実施例1に認められた3.92ppmのピークは観測されなかった。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体9.2gを得た。
【0074】
比較例2
実施例2においてメタクリル酸−n−ステアリル0.34g(1.0ミリモル)を用いない以外は実施例2と同様にして、白色粉体の重合反応生成物21.8gを得た(収率95.6%)。
得られた白色粉体の重合反応生成物のH−NMRを測定したところ、認められたピークは5.07、1.87、1.23、1.20、1.16、0.93、0.72ppmであり、実施例1に認められた3.92ppmのピークは観測されなかった。
次に、得られた重合反応生成物について、実施例1と同様の操作を行うことにより、赤色粉体9.5gを得た。
【0075】
比較例3
実施例1において、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)を用いない以外は実施例1と同様にして、赤色粉体9.7gを得た。
【0076】
比較例4
実施例2において、1,9−ノナンジオールジメタクリレート0.30g(1.0ミリモル)を用いない以外は実施例2と同様にして、赤色粉体9.5gを得た。
【0077】
(メタ)アクリル酸系架橋共重合体および赤色粉体の評価
実施例1〜8で得られたメタクリル酸系架橋共重合体および比較例1〜4で得られた赤色粉体について、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの混合溶媒(重量比:3/7)の各溶媒に対する溶解性を評価した。各溶媒に対してそれぞれの粉体濃度が10重量%となるように混合し、室温にて24時間攪拌した後、ろ過して得たろ液を、150℃、10mmHgで15時間減圧乾燥を行い、粗溶解分を得た。この粗溶解分を純水で洗浄し、150℃、10mmHgで3時間減圧乾燥を行い、溶解分を得て溶解度を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示された結果から、実施例1〜8で得られたメタクリル酸系架橋共重合体および比較例1〜2で得られた赤色粉体は、評価に用いた全ての溶媒に対する溶解度が1%未満であることから、対溶媒安定性に優れていることがわかる。
これに対して、比較例3、4で得られた赤色粉体は、評価に用いた全ての溶媒に対する溶解度が極めて高く、対溶媒安定性に劣るものであった。
【0080】
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体について、上記評価で使用した各溶媒に対して10重量%となるように混合した後、攪拌下40℃にて保存した。所定期間経過後、ろ過して得たろ液を、150℃、10mmHgで15時間減圧乾燥を行い、粗溶解分を得た。この粗溶解分を純水で洗浄し150℃、10mmHgで3時間減圧乾燥を行い、溶解分を得て溶解度を求めた。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示された結果から、実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体は、評価に用いたすべての溶媒に対する溶解度が保存期間50日にわたって1%未満であることから、長期にわたる対溶媒安定性に優れていることがわかる。
【0083】
実施例9(リチウムイオン二次電池の電極の作製)
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を、めのう乳鉢を用いて粉砕して100μm以下の粒径とし、そのうちの0.5gと、溶媒としてのN−メチルピロリドン10gと、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン0.1gと、補助導電材としてのグラファイト粉末0.4gとを混合、攪拌して黒色のスラリーを得た。このスラリー2gを、リード線を備えたアルミニウム箔(面積:1.5cm×1.5cm、厚さ:100μm)の表面に滴下し、ワイヤーバーで全体が均一な厚さとなるように展開した後、120℃で6時間減圧乾燥することにより、実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を集電体に結着させた電極を作製した。集電体の塗布表面を目視観察したところ、ひび割れは認められなかった。なお、メタクリル酸系架橋共重合体からなる塗膜について、膜厚を膜厚測定装置(MORITEX(株)、MHF−D100LR)にて測定したところ140μmであった。
【0084】
実施例10
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例2で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ150μmであった。
【0085】
実施例11
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例3で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0086】
実施例12
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例4で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0087】
実施例13
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例5で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0088】
実施例14
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例6で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ150μmであった。
【0089】
実施例15
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例7で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0090】
実施例16
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、実施例8で得られたメタクリル酸系架橋共重合体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、集電体の塗布表面にひび割れは認められなかった。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0091】
比較例5
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、比較例1で得られた赤色粉体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、実施例9と同等のスラリーの塗布容易性を得るためには、溶媒としてのN−メチルピロリドンの使用量を12gに増加する必要があった。また、N−メチルピロリドンの使用量を12gにして120℃で6時間減圧乾燥し、目視観察したところ、集電体の塗布表面には部分的にひび割れが認められた。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ150μmであった。
【0092】
比較例6
実施例1で得られたメタクリル酸系架橋共重合体に代えて、比較例2で得られた赤色粉体を用いること以外は、実施例9と同様にして電極を作製したところ、実施例9と同等のスラリーの塗布容易性を得るためには、溶媒としてのN−メチルピロリドンの使用量を15gに増加する必要があった。また、N−メチルピロリドンの使用量を15gにして120℃で6時間減圧乾燥し、目視観察したところ、集電体の塗布表面には部分的にひび割れが認められた。なお、実施例9と同様にして膜厚を測定したところ140μmであった。
【0093】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、エネルギー密度が高く大容量の二次電池に有用な電極材料およびそれを用いた電極を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸イミノ化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを架橋剤の存在下で重合した後、ニトロキシド化して得られる(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルおよび(メタ)アクリル酸ベヘニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸エステルの使用割合が、(メタ)アクリル酸イミノ化合物1モルに対して0.00001〜0.25モルの割合である、請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項4】
架橋剤が、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項5】
重合の方法が、懸濁重合法であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項6】
重合の方法が、乳化重合法であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系架橋共重合体を用いた二次電池の電極。

【公開番号】特開2008−45096(P2008−45096A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237785(P2006−237785)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】