説明

(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製法。

【課題】重合体中に残存する単量体の量が充分に低減され、しかも水不溶解分も充分に低減された水に対する溶解性に優れる高粘度の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を効率よく製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】重合性単量体中の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)である重合反応原料液中に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を、該重合性単量体に対して0.3〜1.5質量%共存させ、重合開始剤の存在下、光を照射して水溶液重合することにより、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下である重合体を得る(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体中に残存する単量体の量が充分に低減され、しかも水不溶解分も充分に低減された水に対する溶解性に優れる高粘度の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を効率よく製造することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸(塩)を主たるモノマー単位として含む単独もしくは共重合体の高重合度物は、増粘剤、粘着剤、凝集剤等として広く実用化されている。また、医薬分野においては、湿布薬、パップ剤の粘着性や保水性向上を目的とした添加剤や親水性軟膏基材として使用されている。これらの分野においては、特に、生体に悪影響を与える可能性が危惧される残存単量体は極力低減された重合体であり、かつ水不溶解分の少なく、水に対する溶解性に優れる高粘度の高分子量の重合体が要求されているが、この物性値を同時に満足する重合体を製造することは困難であった。
【0003】
ところで、これら(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製法としては、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、スラリー重合法、水溶液重合法等が挙げられるが、これらの中で最も汎用されているのは水溶液重合法である。即ち水溶液重合法によれば、(メタ)アクリル酸(塩)を主体とする重合性単量体の水溶液に周知のラジカル重合開始剤を添加し、必要により適度に加熱する(熱重合という)、あるいは近紫外〜紫外領域の波長の光を照射して光重合を行うことによって、高重合度の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体が含水ゲル状物として得られる。この含水ゲル状物を押出機やカッター等を用いて細粒化し、次いで乾燥、粉砕を行なうと粉末状にすることができる。そしてこの粉末は水に添加すると容易に再溶解するので、増粘剤や粘着剤、凝集剤等として利用することができる。
【0004】
この様な(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の増粘作用、凝集作用等は、重合度が高くなるほど向上することが確認されている。ところが重合度を高めようとすると、重合の特に後半期あるいは乾燥工程等で重合体に枝分れや架橋反応が起こり、水に対する溶解性が低下して不溶物が生成するために、高粘度重合体が得られず、上記の様な用途に適用したときの性能が不充分となる。
【0005】
(1)(メタ)アクリル酸である重合反応原料液中に、アルカリ金属イオンおよびアンモニウムイオンよりなる群から選択される1種以上を前記原料液中の全酸基に対して100〜120モル%存在させると共に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される水溶性化合物の1種以上を、重合性単量体に対し0.01〜20質量%共存させ静置状態で水溶液重合する方法(特許文献1)。
【0006】
この文献の実施例によると、水不溶解分についての評価は、原料単量体に対して、グリセリン0.13〜13.0質量%を添加し、熱重合による水溶液静置重合を行った結果、水不溶解分が0.2〜0.8質量%であるアクリル酸重合体を得たとある。しかし、残存単量体に関する評価はされていない。
【0007】
(2)(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を、多価アルコール(0.01〜20質量%)、アミン類、および重合開始剤の存在下で、反応液を加温する加温温度を、重合を開始してから終了するまでの間に昇温させて重合させて(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造する方法(特許文献2)。
【0008】
この文献の実施例によると、原料単量体に対して、グリセリン2.0〜9.0質量%を添加し、熱重合による水溶液静置重合を行った結果、水溶解に優れた高分子量のアクリル酸重合体を得たとある。しかし、残存単量体に関する評価はされていない。
【0009】
(3)アクリル系水溶性重合体含水ゲルを押出機より押出する際、30℃、B型粘度計で測定したときの粘度が550〜650mPa・sで且つ不溶解分が1.5〜5質量%である含水ゲルを0.06〜0.14kwh/kgの比動力で押出することによって、水溶性に優れ、水不溶解分が充分に低減された高粘度の高分子量のアクリル系水溶性重合体を製造する方法(特許文献3)。
【0010】
この文献の実施例によると、原料単量体に対して、グリセリン2.5質量%を添加し、光を照射する水溶液重合(光重合)を行った結果、水不溶解物量が0.12〜1.22質量%であり、残存単量体量が0.55〜0.96質量%であるアクリル酸重合体を得たとある。また、原料単量体に対して、グリセリン1.00質量%を添加し、熱重合による水溶液静置重合を行った結果、水不溶解分が0.32質量%であり、残存単量体量が0.42質量%であるアクリル酸重合体を得たとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2671724号公報
【特許文献2】特許第3813310号公報
【特許文献3】特開2007−112946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来、水不溶解分の少ない高分子量の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を得る手段は種々検討されているが、該重合体中に残存する単量体の低減についての検討は不十分な状況である。
【0013】
そこで、本発明は、残存単量体は極力低減され、かつ水不溶解分の少ないという、少なくともこれら2つの物性値を同時に満足する高分子量の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は上記課題を解決するために、種々の反応条件、例えば、反応温度、反応時間、原料濃度、原料液のpH、種々の添加剤、重合開始剤、連鎖移動剤、加熱による静置水溶液重合法、光重合法、ゲルの乾燥条件等について、これらのあらゆる組み合わせによる条件について鋭意検討を加えた。その結果、上記特許文献1〜3では水不溶解分の少ない重合体を得るという効果を得るために、反応液に添加している、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を、単量体に対して特定範囲の少量を添加して反応させると意外にも残存単量体が低減できることを見出し、本発明を完成させた。特許文献1〜3からは上記水溶性化合物の添加量が多ければ多いほど水不溶解分の量が低減できることが示唆されているが、本発明者等の検討によれば、この水溶性化合物の添加量が少ないほど残存単量体量が低減される効果が大きいことを知見した。すなわち、水不溶解分の量が低減され、かつ、残存単量体量が低減されるには、特定の濃度範囲が存在することになる。また、この効果は熱重合による静置水溶液重合よりも近紫外〜紫外領域の光照射による光重合による静置水溶液重合による製法の方が大きいことを知見した。本発明者等はこれらの知見に総合的に検討を加えた結果、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、重合性単量体中の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)である重合反応原料液中に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を、該重合性単量体に対して0.3〜1.5質量%共存させ、重合開始剤の存在下、光を照射して水溶液重合することにより、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下である重合体を得ることを特徴とする(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製法である。
【0016】
本発明においては、上記水溶液重合で得られる水溶性含水ゲルを加熱乾燥することにより、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下である乾燥重合体を得ることができる。好ましくは、水溶性含水ゲルを押し出し成形してペレット、紐状成形体等に微細化した後、乾燥させ、次いでミル等で粉砕し、得られる粉砕物を分級して所望の粉体を得る工程を含む方法を採用することにより、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下である乾燥粉体を得る。また、本発明は、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下であり、かつ、水不溶解分が0.3質量%以下で、好ましくは分子量が80万以上の高分子量の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を製造する方法を提供する。さらに、本発明は上記の特定の水溶性化合物の共存下、重合反応原料液のpHを9.0〜11.0に調整して光重合反応を行い、好ましくは、その際の重合開始剤としてアゾ系水溶性化合物を使用する(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、重合体中に残存する単量体の量が充分に低減され、しかも水不溶解分も充分に低減された水に対する溶解性に優れる高粘度の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を効率よく製造することができる。
【0018】
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体(例えば、アクリル酸(塩)系水溶性重合体)は、このように高品質のものであることから、医薬用、塗料用、土木・建築用、その他一般工業用において、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤、表面改質剤等として種々の分野で多岐にわたって好適に使用することができる。更に、粘度や残存する単量体の量等においてより高品質のものが求められる増粘剤やほぐれ促進剤等として食品用や飼料用の食品添加物、飼料添加物等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の製造方法の好適な形態を示す工程図である。
【図2】本発明方法で用いる重合装置の一態様を示すものであり、平面図及び正面図である。
【図3】本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を製造する重合装置の一形態を示す側面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の製造方法は、重合反応の際に特定の添加剤を特定量使用する点に特徴を有するが、製品として、乾燥粉体形態の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を得るには、処理工程としては、図1に示すように、重合、押出、乾燥、粉砕、分級の順に、これらの工程を含むことが好ましい。すなわち、重合工程と乾燥工程との間で押し出しすることが好適である。ここで、重合工程とは、重合開始剤の存在下、光を照射して単量体成分を水溶液重合することにより、例えば、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体成分を重合する工程であり、押出工程は、該重合工程で得られた(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲル(以下、単に「ゲル」、「ベースゲル」、「含水ゲル」とも言う。)を比動力をかけながら押し出しすることにより、乾燥しやすいように解砕する工程である。乾燥工程は、解砕された含水ゲルを乾燥させる工程であり、粉砕工程は、その乾燥物を一定の大きさ(粒度)に砕く工程であり、このようにして得られた粉粒体を次の分級工程で分級することにより、種々の分野に好適に使用できるアクリル系水溶性重合体が得られることとなる。
【0022】
本発明においては、重合性単量体中の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)である重合反応原料液中に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物(以下、これらの化合物を水溶性化合物(A)ということもある。)を、該重合性単量体に対して0.3〜1.5質量%共存させ、重合開始剤の存在下、光を照射して水溶液重合することにより、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を得る。
【0023】
本発明を実施する際に重合反応原料液中に共存させる水溶性化合物(A)は、重合速度を低下させることなく、しかも重合反応末期に枝分れや架橋反応を起こさせることなく水溶性の非常に優れた高重合度物であり、水不溶解分及び残存単量体の量が充分低減された重合体を生成させるうえで最も重要な添加剤である。水溶性化合物(A)の具体例としてとしては、以下に示す如くの1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が例示される。
【0024】
即ち、水溶性化合物(A)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖(たとえばアラビノース、キシロース等のペントース;ガラクトース、グルコース、マンノース、フルクトース等のヘキソース;6−デオキシグルコース、6−デオキシタロース等のデオキシヘキソース;グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸等)、糖アルコール(たとえばエリトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、ボレミトール、オクチトール等)、オリゴ糖(たとえばスクロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、アガロビオース等の二糖;マルトトリオース等の三糖;マルトテトラオース等の四糖等)および鹸化度が70%以上(好ましくは95%以上)のポリビニルアルコールが挙げられ、これらは単独で使用してもよく或は2種以上を併用することもできる。これらの中でも特に好ましいのは、主たる重合性単量体となる(メタ)アクリル酸((塩))に対して優れた相溶性を示すエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよび糖アルコール類である。特に好ましいのは、食品添加物として認められ、人体に対する安全性の高いグリセリンである。
【0025】
また、該水溶性化合物(A)の添加量は、原料の重合性単量体に対し0.3〜1.5質量%の範囲に設定しなければならない。添加量が1.5質量%を超える場合は、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%を超えるようになり、残存単量体の低減という本発明の効果が充分得られない。一方、水不溶解分については0.1質量%程度以下となり、充分低減された重合体を得ることができる。該水溶性化合物の添加量が、0.3質量%未満の場合は、重合体中に残存する単量体の量については、0.1質量%程度以下の充分残存単量体の低減された重合体を得ることができる。しかし、水不溶解分については1.0質量%程度以上となる。以上より、本発明の目的である、重合体中に残存する単量体の量が充分に低減され、しかも水不溶解分も充分に低減された水に対する溶解性に優れる高粘度の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体を得るためには、該水溶性化合物の添加量は、原料の重合性単量体に対し0.3〜1.5質量%、好ましくは0.3〜1.0質量%の範囲に設定しなければならない。このようにすることにより、残留単量体が0.5質量%以下、かつ水不溶解物の量が0.3質量%以下の重合体が得られることになる。
【0026】
上記のとおり、本発明で得られるアクリル酸(塩)系水溶性重合体は、不溶解物が、0.3質量%以下のものでもある。このような範囲とすることで、水不溶解分を可溶化すると共に高粘度化を図ることができるため、得られるアクリル酸(塩)系水溶性重合体は、分子量が高く、高粘度且つ低不溶解分のものとなり、各種用途に好適に用いることができる優れた品質を有するものとなる。例えば、パップ剤として使用した場合には、少ない使用量でアクリル酸(塩)系水溶性重合体の作用効果を充分に発揮することが可能となり、より均質な膏体が得られることとなる。
【0027】
本発明でいう残存単量体濃度(残存モノマー濃度)とは、食品添加物公定書第7版436、437頁、又は、飼料添加物の成分規格等収載書第10版239、240頁に記載のポリアクリル酸ナトリウム、純度試験の項に記載の以下の方法で測定されるものである。
(残存モノマーの測定方法)
含水ゲルの場合は固形分換算で約1gのゲルを、また、最終的な製品形態である粉状の場合は粉末として約1gを精密に量り、300mlのヨウ素瓶に入れ、水100mlを加え、時々振り混ぜながら約24時間放置して溶かす。この液に臭素酸カリウム・臭化カリウム試液10mlを正確に量って加え、よく振り混ぜ、(塩)酸10mlを手早く加え、直ちに密栓して再びよく振り混ぜた後、ヨウ素瓶の上部にヨウ化カリウム試液約20mlを入れ、暗所で20分間放置する。次に栓を緩めてヨウ化カリウム試液を流し込み、直ちに密栓をしてよく振り混ぜた後、0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬 デンプン試液2mL)。別に同様の方法で空試験を行い、次式により含量を求める。
【0028】
【数1】

【0029】
ただし、a:空試験における0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験における0.1mol/1チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
また、本発明でいう水不溶解分とは以下の方法により算出される。
(水不溶解分の算出方法)
容量500mlのビーカーに、イオン交換水500gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、このイオン交換水に、上記アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルの乾物1gをママコができないように添加する。次にこの混合物を、ジャーテスターを用いて30℃で2時間撹拌(100rpm)した後、32メッシュのフィルタを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出す。そして、この不溶物を乾燥しないように直ちに(1分以内に)秤量し、下記計算式(1)に基づいて不溶解分を算出する。なお、上記濾過及び秤量は、25℃、相対湿度60%の状態で行う。
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100 (1)
(原料単量体)
本発明で使用する原料単量体は、(メタ)アクリル酸(塩)であり、重合体を構成する全モノマー単位の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)からなるものである。必要により含有させることのできる共重合性単量体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体成分;ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有重合性単量体成分等の酸基含有重合性単量体成分;(メタ)アクリルアミド、第3級ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体成分;グリセロールモノ(メタ)アリルエーテル等のアリルエーテル系単量体成分;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体成分;アクリロニトリル等のニトリル系単量体成分;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン等の疎水性単量体成分等が例示され、これらは必要により2種以上含むものであってもよい。しかしこれらの共重合性単量体成分のうち、疎水性の単量体成分は重合体の水溶性を阻害する傾向があるので、好ましくは親水性の共重合性単量体成分を使用するのがよく、これらの中で特に好ましいのはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体成分である。
【0030】
そして本発明の製法を実施するに当たっては、得られる重合体の水溶性を高めるための要件として、重合反応原料液中に存在させる全単量体中の60モル%以上を(メタ)アクリル酸(塩)とし、必要により共存させることのできる他の重合性単量体は、全重合性単量体中に占める比率で40モル%以下に抑えられる。
【0031】
上述のように、上記重合体の中でも、アクリル系水溶性重合体としては、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体が好ましく、アクリル酸(塩)系水溶性重合体がより好ましい。以降、アクリル酸(塩)系水溶性重合体の好ましい例として、アクリル酸(塩)系水溶性重合体について記載する。
【0032】
本発明において、アクリル酸(塩)系水溶性重合体とは、その中和度が80モル%以上の重合体を意味する。中和度とは、アクリル酸(塩)系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量である。
【0033】
上記中和された形態の基とは、酸基における解離し得る水素イオンが他のカチオンで置換された基である。したがって中和度の求め方としては、例えば、アクリル酸(塩)系水溶性重合体を形成する単量体成分がアクリル酸をxモル、アクリル酸の(塩)としてアクリル酸ナトリウムをyモル、ノニオン性単量体をnモル含むとし、これらがすべて重合したとすると、ノニオン性単量体がイオン性ではなく、中和された形態ではないために、下記式により求められることになる。
【0034】
【数2】

【0035】
上記式において、分母はアクリル酸(塩)系水溶性重合体の製造に使用した酸基量と中和された形態の基量のモル数の和である。分子は中和された形態の基量と中和点を越えて存在する余剰のカチオンのモル数との和である。上記式により中和度(中和された形態の基の含有割合)をモル%として得ることができる。中和度としては、80モル%以上、103モル以下が好ましい。特に好ましくは90モル以上、101モル以下である。
本発明の製造方法における重合工程、及び必要に応じて採用される次工程としての、押出工程、乾燥工程、粉砕工程及び分級工程について、上述と同様にアクリル酸(塩)系水溶性重合体を製造する場合を、以下に更に説明する。
(重合工程)
重合工程では、上述したようにアクリル酸及び/又はアクリル酸(塩)により構成されるアクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分を重合することとなる。上記アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲルは、このようにして得られる重合体により形成される、水を含んでなるゲル状物であるが、アクリル酸(塩)としては、アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物、すなわちアクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アンモニウム等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でもアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0036】
重合方法としては、一般に、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、スラリー重合法、水溶液重合法があるが、本発明では、近紫外〜紫外領域の波長の光を照射して光重合を行う水溶液重合法を採用する。この方法により、本発明が目的とするところの残存単量体量が0.5質量%以下で、好ましくは、水不溶解分は0.3質量%以下かつ高分子量の水溶性重合体を効率的に製造できるようになる。一般に、光重合は、熱重合に比べて重合完結までの所要時間が短く、生産性に優れたものとなる場合が多いが、本発明が特定する水溶性化合物(A)との併用により、特に、重合時間を短くすることにより、枝分かれ成分が生成する確率が低くなり、不溶解分の含有量を少なくすることができ、また、残存単量体の量を低減できると言う効果が得られる。
【0037】
その際の重合の形態としては、注型重合法やベルト重合法が採用できる。いずれも重合時の単量体濃度としては、20〜60質量%とすることが好ましい。より好ましくは、25〜55質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。なお、上記の反応液中の単量体成分の濃度は、重合に使用する全単量体成分を含む反応液(溶媒の水を含む)の質量に対する質量比として求めたものである。
【0038】
上記重合方式としては、上記光重合を行う場合には、反応液等に近紫外線を照射することが好ましい。例えば、上記光重合においては、光重合開始剤の存在下、10W/m2以下の近紫外線を照射して重合する工程と、次いで、10W/m2を超える近紫外線を照射することにより重合を完結する工程とを含むものであることが好ましい。このように異なる強度の近紫外線を2段階に分けて照射することにより、単量体の重合が促進され、得られる重合体を高粘度のものとすることができると共に、重合体中に残存する単量体を低減でき、得られるアクリル酸(塩)系水溶性重合体を上述のような品質の高いものとすることができる。
【0039】
上記最初の近紫外線を照射して重合する工程としては、照射強度を10W/m2以下とすることが好ましい。10W/m2を超える場合、光量が高過ぎて充分に高い粘度の重合体を得ることができず、また、不溶解分をより少なくすることができないおそれがある。より好ましくは、8W/m2以下であり、更に好ましくは、6W/m2以下である。下限値としては、1W/m2以上であることが好ましい。1W/m2未満であると、重合反応を充分に促進できないおそれがある。より好ましくは、1.5W/m2以上であり、更に好ましくは、2W/m2以上である。
【0040】
上記重合工程は、10W/m2以下の近紫外線の照射時間が5分以上であることが好ましい。照射時間が5分未満であると、重合反応を充分に促進できず、高粘度の重合体が得られないおそれがある。より好ましくは、10分以上であり、更に好ましくは、15分以上である。照射時間の上限としては、100分未満であることが好ましく、100分以上である場合には、生産性が低くなり、本発明の作用効果が充分に得られないことになる。より好ましくは、80分未満であり、更に好ましくは、60分未満である。
【0041】
上記2段階目の近紫外線を照射することにより重合を完結する工程としては、照射強度を10W/m2を超えるものとすることが好ましい。10W/m2以下である場合、光量が低過ぎて残存する単量体を充分に減少させることができないおそれがある。より好ましくは、12W/m2を超えるものあり、更に好ましくは、15W/m2を超えるものである。上限値としては、100W/m2以下であることが好ましい。100W/m2を超えるものであると、照射強度が強過ぎて、低分子量化するおそれがある。より好ましくは、80W/m2以下であり、更に好ましくは、50W/m2以下である。上記2段階目の近紫外線の照射時間としては、残存する単量体を充分に低減でき照射時間であれば特に限定されないが、1〜30分であることが好ましい。より好ましくは、2〜20分であり、更に好ましくは、3〜15分である。
【0042】
上記重合工程において近紫外線を照射する装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が好適である。具体的には、ネオアーク(N)、ネオアーク(W)、ネオアーク(WW)、マスターカラーCDM(3000K)、マスターカラーCDM(4200K)、ネオアークビーム(N)、ネオアークビーム(WW)、ネオアークビーム(屋外兼用)、ネオアークEベース(N)、ネオアークEベース(WW)、HQIランプ(D)、HQIランプ(NDL)、HQIランプ(WDL)、ダイナビーム2、陽光ランプ、HL−ネオハライド2(透明形)、HL−ネオハライド2(拡散形)、HL−ネオハライド(透明形)、HL−ネオハライド(拡散形)、ネオハライドランプ(透明形)、ネオハライドランプ(拡散形)、カラーHIDランプ(B)、カラーHIDランプ(G)、ネオカラー(高演色形)、ネオカラー(高彩度形)、HL−ネオルックスD、ツイン・ネオルックス・L、ツイン・ネオルックス、HL−ネオルックス、ネオルックス、蛍光水銀ランブ、白熱色蛍光水銀ランプ、透明水銀ランプ、ブラックライト水銀ランプ、チョークレス水銀ランプ等が挙げられる。また、近紫外線の波長領域としては、300nm以上であり、また、500nm以下であることが好適である。300nm未満の波長の紫外線を照射した場合、重合反応が急激化し、高粘度で残存単量体の量が少ないアクリル酸(塩)系重合体が得られない場合がある。
【0043】
なお、本明細書中、近紫外線の光照射強度は、近紫外線が照射される反応液の上面部、すなわち反応液表面において測定される光照射強度である。光照射強度は、下記の光量計で測定することができる。
装置:UVメーター
メーカー:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm)
なお、近紫外線の強度に関する問題としては、その強度が強すぎると重合制御が困難となる問題、すなわち突沸問題と不溶解分が増える傾向にあるという品質問題がある。最初は強度を弱くして次いで強度を強くすることで、このような問題に対しても有利となる。
【0044】
上記近紫外線の強度を変更する方法としては、照射強度の異なる紫外線ランプを用いる方法、インバーター制御により照射強度を増減する方法、紫外線ランプと重合液との間に、減光版を設置する方法等により近紫外線の照射強度を変更することができる。上記重合工程として、ベルト重合法を用いる場合、ベルトと紫外線ランプとの間に、パンチングメタル等の減光版を設置する等して近紫外線射強度を変更することができ、同一のランプを用いる場合であっても異なる複数の減光版を用いることで、照射強度を適宜変更することができるので、強度の異なった近紫外線を多段階で照射することができ、本発明の方法として用いることができる。
【0045】
上記重合工程においては、重合液のピーク温度を70℃以下に抑制することが好ましい。
上記重合液のピーク温度が70℃を超えると、重合反応が過度に進行することとなり、得られる重合体の粘度が充分に高いものとならないおそれがある。より好ましくは、65℃以下であり、更に好ましくは、60℃以下である。重合液のピーク温度の下限としては、粘度が充分なものとなる温度であればよく、25℃以上であることが好ましい。より好ましくは、30℃以上であり、更に好ましくは、35℃以上である。なお,上記ピーク温度は、通常、上記初期の近紫外線の照射において達成されるものであるが、ピーク温度に達する時期的制限はない。
【0046】
上記重合液のpHとしては、重合反応が好適に進行する限り特に限定されない。例えば、pHが11以上であってもよく、この場合、重合液のpHの調整が容易であるため好ましい。しかし、不溶解分及び残存単量体を極力低下するためには、重合液のpHを9.0〜11.0とすることが好ましい。より好ましくはpH9.5〜10.5である。
【0047】
上記光重合の場合の重合開始剤としては、以下のような化合物が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、1,1′−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2′−アゾビス(2−N−シクロへキシルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系光重合開始剤。
【0048】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)とベンゾフェノンとの共融混合物、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369)と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651)との3:7の混合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:3の混合物、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI403)と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)との1:1の混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)との1:1の液状混合物、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの共融混合物、4−メチルベンゾフェノンとベンゾフェノンとの液状混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドとオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]とメチルベンゾフェノン誘導体との液状混合物。
【0049】
1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルファニル)プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、α−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、アクリル化アミンシナジスト、ベンゾイン(iso−及びn−)ブチルエステル、アクリルスルホニウム(モノ、ジ)ヘキサフルオロリン酸(塩)、2−イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド、2−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインヒドロキシアルキルエーテル、ジアセチル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体。
【0050】
これら光重合開始剤の中でも、アゾ系水溶性化合物、特に、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)及びその(塩)酸、硫酸、酢酸(塩)等が好ましい。
【0051】
上記光重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、1g以下が好ましい。これにより、アクリル酸(塩)系水溶性重合体の重量平均分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、0.001g以上であり、また、0.5g以下である。光重合する時の重合開始温度としては、0〜30℃が好ましい。重合時の反応液の最高温度は150℃以下、好ましくは120℃、より好ましくは110℃以下となるように重合を制御することが好ましい。
【0052】
上記重合方法においてはまた、上記重合開始剤とともに連鎖移動剤を併用することもできる。適当量の連鎖移動剤を使用することにより、アクリル酸(塩)系水溶性重合体の重量平均分子量がより大きく、かつ不溶解分がより少ない重合体を製造することができ、その結果、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
【0053】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム等の亜燐酸系化合物;次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類が好適である。これらの中でも、次亜燐酸系化合物が好ましい。より好ましくは、次亜燐酸ナトリウムである。上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や光重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、0.2g以下が好ましい。また、更に好ましくは、0.001g以上であり、また、0.15g以下であり、特に好ましくは、0.005g以上であり、また、0.10g以下である。
【0054】
上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。また、水以外にも親水性有機溶媒等を適宜併用してもよい。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類、低級エーテル類等が好適である。
【0055】
光照射による水溶液重合においては、例えば、窒素ガスをバブリングする等の方法により、水溶液中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。
【0056】
また、重合操作方法としては、回分式でも連続式でもよいが、静置重合による方法が好ましい。なお、静置重合の中の1つの重合形態としてベルト重合がある。ベルト重合として、図3で示すベルト重合機を用いた重合反応は、本発明の好ましい形態の一つである。以下、図3に示したベルト重合機について詳述する。
【0057】
ベルトはその上部に隣接する形態で高さ50mmの堰6(エッジロープ)を有し、幅300mm、材質はSUS301である。ベルト上の空間部は酸素濃度が8容量%となるように連続的に窒素が供給されている。また、ベルト上部には近紫外線ランプ1(東芝ライテック社製、商品名ブラックライト水銀ランプH250BL−L)が一列に6本取り付け点灯されている。なお、重合液の供給口から数えて4本までのブラックライトは重合液の上面位置での光強度が約3.7W/m2となるように減光板2(パンチングメタル、開口率10.7%)で減光してある。また、重合液の供給口から数えて5〜6本のブラックライトは重合液の上面位置での光強度が約17W/m2となるように減光板3(パンチングメタル、開口率51%)で減光してある。ベルトはスピード10.9cm/minで連続的に動いている。重合熱の除去のため、ベルト下部より温度35℃の水がスプレーノズル5より噴霧されている。また、ベルト重合機出口にはスクレーパー4が取り付けられていて、含水ゲルはベルト面に残留することなしに排出される。スプレーノズル5は、上部のベルトに下方から水を噴霧する構造となっており、上部のベルトの温度を調節することができる。通常は、重合反応により、上部のベルトが熱せられ、スプレーノズル5から噴霧される水により、ベルト面を冷却することになる。なお、噴霧された水は、ベルト下部から回収される。
【0058】
(押出工程)
押出工程では、上述したように、重合工程で得られた重合体のゲル状物を比動力をかけながら押し出しすることとなる。上記押出工程において解砕された含水ゲルの形態としては特に限定されないが、例えば、顆粒状、ペレット状、紐状等が好適であり、その大きさもまた特に限定されない。これらの解砕された含水ゲルは、押出機の中で空気を含んで多孔質化するので、乾燥性が向上することになる。解砕された含水ゲルは、乾燥すると軽量化されるので、輸送や保存等に有利となる。
【0059】
(乾燥工程)
乾燥工程では、上記押出工程において解砕された含水ゲルを、上述のように、ベルト上で乾燥を行うことが好適である。
【0060】
(粉砕工程)
粉砕工程では、上記乾燥工程により乾燥された含水ゲルを一定の大きさ(粒度)に砕くこととなるが、粉砕工程としては特に限定されず、通常行われる方法が採用される。
【0061】
(分級工程)
分級工程では、上記粉砕工程により砕かれた粉粒体の粒度を調製することとなり、分級方法としてもまた、特に限定されず、通常行われる方法が採用される。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0063】
(実施例1)
実施例で用いた重合容器を第2図に示す。該重合容器はSUSのプレートにより上下に分離されていて、下部は冷却水が通水する構造となっている。重合はSUSプレート上部に重合液を導入した後、近紫外線を照射することにより行われる。近紫外線の照射は、該重合器の上部より、ブラックライト水銀ランプ(東芝ライテック社製、一次重合には型名H100BL-B、二次重合にはH250BL-Bの水銀ランプを使用した。)を照射して行う。重合ピーク温度は、生成するゲルの中に差し込まれた温度記録計(TR)で測定した。生成するゲルの上部空間部には所定濃度の酸素を含む不活性ガス(IG;酸素8容量%、残量窒素92容量%の混合ガス)が流されている。
【0064】
まず、容量1L(リットル)のガラス製ビーカーに、アクリル酸ナトリウム37質量%の水溶液525.4g及びグリセリン0.58gを添加した後、PHを10.0に調整した。次いで少量のイオン交換水を添加して全量を533.1gに調整した。該重合液を窒素バブリングすることにより、溶存酸素濃度を5.0ppmとした。次いで、光重合開始剤として、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1.5%水溶液6.9gを添加した後、該重合液を、直ちに2図に示した重合器に入れた。重合液の厚みは15mmであった。尚、重合器には、その下部に温度20℃の冷却水が予め通水してある。
重合液中のアクリル酸ナトリウムの濃度は36%であった。グリセリンの添加量はアクリル酸ナトリウムに対して0.3%であった。2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩の添加量はアクリル酸ナトリウム1モルに対して0.05gであった。
【0065】
重合液を入れた後、直ちに強化ガラスで蓋をすると共に、重合液とガラスの間には酸素濃度8%のガスを通気(300ml/min)した。次いで、ガラスの上部より、前記型名H100BL-Bの水銀ランプをその照射強度は7.5W/mとなるように照射した。冷却水を流しながら重合反応を14分間継続した。重合温度のピークは照射開始して12分後であり、その温度は74℃であった。照射開始して14分後に、前記型名H250BL-Bの水銀ランプをその照射強度が13W/mとなるように照射した。照射は10分間行い、重合を完結した。このようにして、ポリアクリル酸ナトリウムを含む含水ゲルを得た。該含水ゲルを細かく裁断し、200℃で40分乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した後、20メッシュの篩で分級することにより20メッシュパスの重合体(1)を得た。
【0066】
該重合体(1)の残存単量体及び水不溶解分を前記に従って測定した。その結果、重合体(1)の残存単量体は0.12%、水不溶解分は0.10%であった。結果を表1に示した。なお、表において、重合触媒(V−50)とは2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩のことである。
【0067】
(実施例2〜4)
第1表に示した重合条件とした他は実施例1と同様に重合を行い重合体(2)〜(4)
を得た。重合体(2)〜(4)の残存単量体及び水不溶解分を実施例1と同様に測定し、その結果を第1表に示した。
【0068】
(実施例5〜9)
第1表に示した水溶性化合物(A)を用いた他は実施例2と同様に重合を行い、重合体(5)〜(9)を得た。重合体(5)〜(9)の残存単量体及び水不溶解分を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。
【0069】
(比較例1,2)
表1に示した重合条件とした他は実施例1と同様に重合を行い比較重合体(1)〜(2)を得た。比較重合体(1)〜(2)の残存単量体及び水不溶解分を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。
【0070】
(比較例3)
温度計、窒素ガス吹込管および攪拌機を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ナトリウム37質量%水溶液973g、グリセリン1.08gを仕込んだ後、希水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.0とした。次いで、水浴で10±2℃に冷却した後、窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素を0.3ppmとした。この重合液に過硫酸アンモニウム0.013%(対仕込単量体)を添加すると共に、イオン交換水を加えて全量を1000gとした。
【0071】
該重合液中の仕込単量体(アクリル酸ナトリウム)濃度は36%であり、グリセリンの添加量は仕込単量体に対して0.3%であった。攪拌を停止して35℃の恒温水槽に浸すことにより熱重合を開始した。水溶液は20分後から白濁し始めゲル化した。反応物は重合開始から75分後に最高温度95℃を示した。4時間保持した後、透明になったゲル状重合体を取り出した後、実施例1と同様にして、比較重合体(3)を得た。このように熱重合法により得られた比較重合体(3)の残存単量体及び水不溶解分を実施例1と同様に測定した。残存単量体は0.36(%)であり、水不溶解分は2.3(%)であった。
【0072】
【表1】

【符号の説明】
【0073】
1:ブラックライト水銀ランプ(H250BL−L)、東芝ライテック株式会社製
2:減光板(開口率10.7%、パンチングメタル)
3:減光板(開口率51%、パンチングメタル)
4:スクレーパー
5:スプレーノズル
6:堰(エッジロープ)
7:アクリル酸(塩)系水溶性重合体含水ゲル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体中の60モル%以上が(メタ)アクリル酸(塩)である重合反応原料液中に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、単糖、糖アルコール、オリゴ糖および鹸化度70%以上のポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を、該重合性単量体に対して0.3〜1.5質量%共存させ、重合開始剤の存在下、光を照射して水溶液重合することにより、重合体中に残存する単量体の量が0.5質量%以下である重合体を得ることを特徴とする(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体の製法。
【請求項2】
上記水溶液重合の後に加熱乾燥する請求項1記載の製法。
【請求項3】
水不溶解分が0.3質量%以下の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を得る請求項1または2記載の製法。
【請求項4】
重合反応原料液のpHが9.0〜11.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製法。
【請求項5】
重合開始剤がアゾ系水溶性化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−252076(P2011−252076A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126593(P2010−126593)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】