説明

(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体粉末の製造方法

【課題】(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液の重合と乾燥とを同一工程で行う上で、乾燥面への液の載りをよくして生産性を向上し、また重合時間を短縮することができ、しかも乾燥ユーティリティを少なくしてより効率的に生産することができる(メタ)アクリル酸重合体粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法であって、該製造方法は、該水溶液を増粘させて増粘液を得る工程と、該増粘液を濃縮乾燥機に供給し、重合及び乾燥を行う工程とを含む(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体粉末の製造方法に関する。より詳しくは、各種工業製品の原料等に用いられる水溶性の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする単量体群の水溶液から製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末は、水溶性の重合体粉末として工業的に有用なものであり、例えば、凝集剤や増粘剤、粘着剤、粘着性向上剤、分散剤等としての優れた基本性能を有し、掘削土処理剤や湿布薬・パップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等の他、製紙、洗剤や化粧品、水処理、繊維処理、土木建築や農・園芸、塗料や接着剤、窯業、製造プロセス、その他の分野において多岐にわたって使用されている。このような(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体粉末の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする単量体群を原料とし、重合溶媒として水性媒体を用いて重合した後、乾燥、粉末化する工程が好適である。
【0003】
従来の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)を主原料とする高吸水性ヒドロゲルの製造方法に関し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸等と共重合可能な分子内に二個以上の反応性基を有する架橋剤から成る水性媒体混合物を噴霧又は薄膜共重合法にて共重合させる製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、吸水性樹脂の製造方法に関し、共重合性単量体の濃度を65重量%以上とし、90℃以上に強制加熱して重合を行わせる製造法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、高吸水性複合体の製造法に関し、共重合性単量体の水溶液又は水分散液を、繊維性基材に含浸又は塗布した状態で100℃以上に強制加熱して重合と乾燥とを同時に行わせる製造法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの製造方法においては、単量体の水溶液等の重合工程、乾燥工程を経て製品が得られることになるが、ドラムドライヤーを用いてその表面で重合と乾燥を行うことにより、2つの工程を1つにして生産の効率化、生産コストの削減を図る場合、(メタ)アクリル酸(塩)等を主成分とする単量体の水溶液等を重合させずにドラムにフィード(供給)しなければならない。このような方法では、重合の完結に時間を要することになり、またドラム表面(乾燥面)への液の載りが悪く生産性も悪い。なお、ドラムにフィードする前に重合工程を行うと、吸水性樹脂の製造方法であることに起因して粘度が高くなり過ぎたり、ゲルが生成したりしてフィードする配管が詰まってしまうことになる。したがって、単量体の水溶液等の重合工程、乾燥工程を1つの工程で行うことにより生産工程を効率化する場合、重合、乾燥の時間を短縮し、また生産性を向上することによって生産の効率化の目的を充分に達成することができ、また重合、乾燥に要するエネルギーを抑えて生産工程のユーティリティにおいて有利な製造方法となるようにするための工夫の余地があった。各種工業用途で有用な重合体粉末をより効率的に供給し、また幅広い分野において供給することができるようにするために、(メタ)アクリル酸(塩)等を主成分とする単量体の水溶液から重合体粉末を製造する方法において、生産性の面で有利なものとすることが求められている。
【特許文献1】特許昭63−60044号公報
【特許文献2】特開昭63−275607号公報
【特許文献3】特開昭63−275616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液の重合と乾燥とを同一工程で行う上で、乾燥面への液の載りをよくして生産性を向上し、また重合時間を短縮することができ、しかも乾燥ユーティリティを少なくしてより効率的に生産することができる(メタ)アクリル酸重合体粉末の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法について種々検討したところ、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液をドラムドライヤーやディスクドライヤー等の濃縮乾燥機の乾燥面に供給して重合と乾燥とを実質的に同時に行うことにより、重合と乾燥とを同一装置で行うために装置がコンパクトかつ安価ですみ、生産性の効率化を図ることができることにまず着目し、該水溶液を部分的に重合する等の方法によって増粘させた液を乾燥面に供給すると、増粘液をドラムやディスク等の乾燥面にフィードすることになるため、乾燥面への液の載りがよくなることを見いだした。増粘させていない場合、例えば、ドラムとドラムの隙間から液が漏れ、乾燥面であるドラムに載ることなく原料が漏れることになり、生産性の低下につながる。更に、重合時間を短くすることができ、乾燥している間に重合を充分に簡潔することができること、また重合熱が乾燥ユーティリティを少なくさせることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法であって、上記製造方法は、上記水溶液を増粘させて増粘液を得る工程と、上記増粘液を濃縮乾燥機に供給し、重合及び乾燥を行う工程とを含む(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の製造方法は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)重合体粉末を製造することになるが、得られる重合体が水溶性であることが必要である。
本発明の製造方法においては、上記水溶液を増粘させて濃縮乾燥機に供給し、乾燥面において重合と乾燥とを実質的に同時に行うことを特徴として有することになる。すなわち、上記水溶液を増粘させて増粘液を得る増粘工程と、上記増粘液を濃縮乾燥機に供給し、重合及び乾燥を行う重合・乾燥工程とを含むことになる。
【0009】
上記増粘工程において、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液の増粘方法としては、(1)該水溶液を部分的に重合して増粘させる方法(部分重合法)、(2)増粘剤を添加することによって増粘させる方法(増粘剤添加法)、これらを組み合わせる方法が好適であるが、中でも、増粘剤の添加を不必要とする点で(1)の部分重合法が好ましい。すなわち、上記増粘工程は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液を部分的に重合して増粘させることが好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする単量体群の水溶液を部分的に重合して増粘させ、次いで重合・乾燥工程を行う(メタ)アクリル酸水溶性重合体粉末の製造方法は、本発明の好ましい形態の一つである。
上記増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、澱粉、アルギン酸、グアガム、アラビアガム、トラガントガム等の天然物、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、架橋ポリアクリル酸、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水溶性エポキシ化合物、水溶性ポリエステル等の合成高分子が挙げられる。
上記増粘剤は、増粘剤の種類に応じて必要な量を添加すればよいが、増粘液に含まれる量として0.1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0010】
上記部分重合法の場合、上記製造方法は、全単量体に対して1〜70モル%が部分的に重合した増粘液を濃縮乾燥機に供給することが好ましい。1モル%未満であると、得られた増粘液の粘度が充分でないため増粘液の濃縮乾燥機の乾燥面への載りが悪くなるおそれがあり、70モル%を超えると、得られた増粘液の粘度が高過ぎて配管の詰まりの原因となったり、増粘液が濃縮乾燥機に滑らかに供給できなったりするおそれがある。より好ましくは、2〜60モル%であり、更に好ましくは、5〜50モル%である。
このように、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液を部分的に重合して得た増粘液を乾燥面に供給することで、乾燥面への液の載りがよくなって生産性が向上することになり、また乾燥面に液が載らずに漏れてしまうことを防止するとともに、重合時間を短縮して重合と乾燥とを実質的に同時に行う工程において乾燥している間に充分に重合を完結させて生産効率の向上と製品品質の向上とを図ることができる。
【0011】
上記増粘液の粘度は、10mPa・s以上であることが好ましい。増粘液の粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低すぎて増粘液の濃縮乾燥機の乾燥面への載りが悪くなり、本発明の作用効果を充分に発揮できないおそれがある。また、粘度の上限については特に制限はないが100000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎて配管の詰まりの原因となったり、増粘液が濃縮乾燥機に滑らかに供給できなったりするおそれがある。より好ましくは、20〜50000mPa・sであり、更に好ましくは、50〜10000mPa・sである。
本発明では、増粘液を濃縮乾燥機に供給する直前の状態において上記増粘液の粘度範囲であることが好ましい。例えば、水溶液の混合槽から配管を用いて増粘液を濃縮乾燥機に供給する場合には、混合槽中で増粘された水溶液の粘度を測定して工程管理を行ってもよく、また、配管から濃縮乾燥機に供給される増粘液を採取して測定してもよいが、増粘工程の最後の状態、又は、重合・乾燥工程の直前の状態における増粘液の状態が上記粘度範囲となるようにすることが好ましい。従って、粘度測定時の液温についても重合・乾燥工程の直前の状態における増粘液の液温ということになる。
上記増粘液において、粘度を上記範囲とすることにより、増粘液を乾燥面に供給する際、増粘液が薄膜を形成することができる。このように増粘液を薄膜とすることで、乾燥、ドラム表面からのかきとり、及び、その後必要に応じて粉体化する場合の処理も容易に行うことができる。乾燥面に供給された増粘液(薄膜)の厚さとしては、用いる増粘液や濃縮乾燥機により適当に選択できるものであり特に限定されないが、0.001〜3mmが好ましく、0.01〜2mmがより好ましい。
【0012】
上記増粘液を濃縮乾燥機に供給し、重合と乾燥とを行う工程において用いられる本発明における「濃縮乾燥機」とは、以下の乾燥機を意味する。すなわち濃縮乾燥機とは、乾燥面(支持体)を有するものであり、この乾燥面上で増粘液の重合と乾燥とを行えるようになっている。また、支持体が回転する機構を有し、該支持体上に該増粘液を供給するものであればよく、生産性の点から、乾燥面への増粘液の供給と、乾燥面における重合と乾燥とを、連続して行う連続生産が可能なものであることが好ましい。このような濃縮乾燥機としては、例えば、ドラムを乾燥面とするドラムドライヤーが好適であり、ドラムを1つ備えるシングルドラムドライヤー、ドラムを2つ備えるダブルドラム型やツインドラム型等のダブルドラムドライヤー、多円筒乾燥機、乾燥装置部分の内部を真空にすることができる真空式ドラムドライヤー等が挙げられる。また、ディスク面を乾燥面とするCDドライヤーも好適である。
【0013】
上記濃縮乾燥機は、乾燥させる増粘液に応じて適宜使い分ければよく、一般的には、ドラムドライヤーの場合、乾燥しにくいものであればダブルドラム型、乾燥しやすいものであればツインドラム型が好適であり、また粘度がより高いものを濃縮乾燥する場合は、CDドライヤーを用いることが好適である。
図1に、濃縮乾燥機としてダブルドラム型のダブルドラムドライヤーの概略図を示す。
この場合、原料供給装置1から増粘液が供給され、エンドボード(給液部堰板)2に供給され、円筒ドラム3の外周表面に増粘液が載ることになる。ドラム3は、ドラム間隙の調節ができ、供給する液量を調節することができるように設置されている。ドラムは矢印の方向に回転し、ドラムに載った液は、回転と共に移動し、移動に伴い重合反応と乾燥とが進行し、スクレーパー4で重合・乾燥したものをかき取り、必要により粉体化することによって重合体粉末を得ることができる。
【0014】
図2は、濃縮乾燥機としてCDドライヤーの概略図を示す。CDドライヤーでは、フィードパイプ101から原料である増粘液がディスク102の表面(中空円板の両側面)にふりかけられ、ディスク102の回転に伴って重合反応と乾燥とが進行し、スクレーパー103で重合・乾燥したものをかき取り、必要により粉砕することによって重合体粉末を得ることになる。
これらの濃縮乾燥機においては、例えば、ドラムドライヤーの場合には、ドラムの中にスチームを入れてドラム表面を加熱することにより、増粘液の重合と乾燥を促進することが好ましい。本発明において好適な加熱条件としては、0.1〜1MPaの蒸気圧のスチームをドラムの中に導入し、ドラム表面の温度を100〜180℃とし、ドラム表面に増粘液が供給されてから5〜120秒(ドラム表面での重合・乾燥時間)でドラム表面から重合・乾燥物がかき取られるようにすることが好ましい。より好ましくは、ドラム表面の温度を105〜150℃とし、ドラム表面での重合・乾燥時間を10〜60秒とすることである。CDドライヤーの場合も、ドラムドライヤーの場合に準じて重合、乾燥条件を設定すればよい。
【0015】
上記スクレーパーの材質としては、用いる増粘液の種類や乾燥面により適宜選択できるものであり特に限定されないが、例えば、金属製、ステンレススチール製、テフロン(登録商標)製等を用いることができる。また、スクレーパーの設置場所としては、薄膜及びかきとった薄膜が乾燥面(支持体)に付着しない場所であることが好ましく、剥離した薄膜同士が付着しない場所であることがより好ましい。なお、増粘液の重合・乾燥したものを乾燥面からかきとる装置としては、スクレーパーに限定されるものではなく、その他の装置を用いることができる。
なお、濃縮乾燥機から重合・乾燥物をかき取る前後、かき取ったものを粉末化する工程において、適宜、重合・乾燥物に風を吹き付ける等の方法により冷却してかき取り、粉末化を容易にした後、かき取り、粉末化操作を行ってもよい。
【0016】
本発明を実施する製造工程において、増粘工程から重合・乾燥工程における一連の設備としては、増粘液を調製する混合槽、該増粘液を濃縮乾燥機に供給するための配管、及び、濃縮乾燥機を必須とすることが挙げられる。混合槽の代りにスタテックミキサー等のラインミキサーを用いて混合することは勿論可能である。なお、本発明の製造方法においては、濃縮乾燥機の乾燥面において重合、乾燥を行うことになり、また増粘工程において水溶液を部分的に重合して増粘させる場合は、混合槽や配管においても重合が行われることになる。
上記混合槽や配管は、保温材によって混合液、増粘液が保温されるようにしたものが好ましい。このように混合槽や配管を保温することは、後述するように酸型単量体を含む単量体水溶液をアルカリ剤で中和することにより中和熱を発生させ、該中和熱によって効率よく重合、乾燥を行う場合に特に有効である。
【0017】
本発明はまた、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法であって、上記増粘液を濃縮乾燥機に供給する前に、該増粘液に含まれる酸型単量体をアルカリ剤を用いて部分的に又は完全に中和せしめることにより昇温した後、該増粘液を濃縮乾燥機に供給する(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法でもある。
【0018】
上記製造方法において、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体及び/その他の単量体中に含まれる酸型単量体の中和により、中和熱が発生し、これを利用することにより効率的に水性媒体の一部又は全部を蒸発させながら(メタ)アクリル酸(塩)系単量体の重合と乾燥とを行うことが可能となる。従って、このように中和熱を利用することで、乾燥ユーティリティーを減少させることができる。
上記中和反応は、増粘液を濃縮乾燥機に供給する前に中和熱が生じるよう進行するようにすればよい。
この場合アルカリ剤により中和される酸型単量体とは、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体中の(メタ)アクリル酸系単量体や(メタ)アクリル酸(塩)系単量体と共重合されるその他の酸型単量体を表す。
【0019】
本発明において被中和液を中和するのに用いられるアルカリ中和剤は、特に限定されるものではないが、被中和液が酸を含む場合には、例えば、ナトリウムやカリウム等の一価金属を含む化合物、マグネシウムやカルシウム等の二価金属を含む化合物、アンモニア、アミン等の塩基が挙げられ、より好ましくは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられる。
上記中和剤の添加時期としては、濃縮乾燥機の乾燥面に供給される前に添加されるようにすることが必要である。例えば、混合槽において、他の原料とともに添加するのが好適である。
【0020】
本発明の製造方法においては、酸基を持つ酸型重合体及び酸基を持たない塩型重合体を好適に製造することができる。生成物が全部又は部分的に塩型の重合体の場合、最初から(メタ)アクリル酸を全部中和又は部分中和した原料を使用してもよく、中和工程において全中和又は部分中和してもよい。中和する場合には、上述したように中和熱を利用して重合、乾燥を行うことが可能できる。
【0021】
以下に本発明における(メタ)アクリル酸(塩)系単量体から重合体を調製するための重合反応について詳述する。上記(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の単量体を主成分とする単量体群としては、(メタ)アクリル酸(塩)を必須とし、(メタ)アクリル酸(塩)以外の単量体を含有していてもよい。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物、すなわち(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。より好ましくは、アクリル酸ナトリウムである。
また、本発明においては、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする単量体群の水溶液を用いることが好適であり、全単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)の占める割合は、50モル%以上が好ましい。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、70モル%以上である。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸(塩)以外の単量体としては、α−ヒドロキシ(メタ)アクリル酸、クロトン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和スルホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ホスホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。全単量中のこれら(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩以外の単量体の占める割合は50モル%以下が好ましい。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の重合方法としては、熱重合方法、光重合方法等を挙げることができるが、中でも熱重合方法が好適である。
上記熱重合方法としては、上述した(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする単量体群、熱重合開始剤、必要に応じてアルカリ剤、重合促進剤、連鎖移動剤等を重合溶媒と共に加熱又は無加熱状態で重合を行うことになる。
【0025】
本発明において熱重合開始剤としては、水性媒体に可溶な広い範囲の重合開始剤が使用可能であるが、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;過酢酸、過コハク酸等の有機過酸化物;空気、酸素、オゾン等の無機系酸化剤等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記熱重合開始剤の使用量としては、上記単量体成分100質量%に対して、0.01〜5質量%が好ましい。ガス状の無機系酸化剤の使用量については、後述する無機系還元剤と併用されることが好適であるが、該無機系還元剤1モルに対して、標準状態に換算し10L以上であることが好ましい。
【0027】
上記熱重合方法においては、重合促進剤を用いてもよく、広い範囲の重合促進剤が使用可能である。
上記重合促進剤としては、アスコルビン酸(塩)や有機アミン類等の有機系還元剤;重亜硫酸(塩)や亜硫酸(塩)等の無機系還元剤;コバルト塩、鉄塩、銅塩、セリウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、モリブデン塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、亜鉛塩等の遷移金属塩等が好適であり、中でも、無機系還元剤が好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合促進剤の使用量としては、有機系還元剤を使用する場合は、単量体成分100質量%に対して、0.01〜5質量%が好ましい。無機系還元剤を使用する場合は、単量体成分100質量%に対して、0.01〜30質量%が好ましい。また、遷移金属塩を使用する場合は、単量体成分100質量%に対して、0.01〜100ppmが好ましい。
【0028】
本発明にかかる重合溶媒は、水性溶媒が好適である。水性溶媒とは、水、並びに、水と、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒を示す。該有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら有機溶媒は、必要に応じて、1種類を用いてもよく、また、2種類以上を用いてもよい。水性溶媒として混合溶媒を用いる場合における水と有機溶媒との割合は、特に限定されるものではない。上記例示の水性溶媒のうち、水が特に好ましい。上記低級アルコール類やケトン類は、連鎖移動剤としての作用も備えている。
【0029】
上記熱重合方法における重合条件において、重合開始時における単量体成分の反応液中の濃度(単量体濃度)としては、単量体成分の組成、熱重合開始剤の種類や使用量等に応じて適宜設定すればよいが、15質量%以上であり、また、70質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは、20〜65質量%であり、更に好ましくは、25〜60質量%であり、特に好ましくは、35〜55質量%であり、最も好ましくは、40〜50質量%である。単量体濃度を高くすることで、生産性を向上させることができる面でより有利である。また、混合槽内での反応温度としては、30〜120℃が好ましい。より好ましくは、40〜110℃であり、更に好ましくは、50〜105℃である。更に、混合槽やラインミキサー等内での平均滞留時間としては、0.1〜100秒が好ましい。より好ましくは、1〜50秒である。
【0030】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;(重)亜硫酸(塩);亜燐酸、亜燐酸ナトリウム等の亜燐酸系化合物;次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム等の次亜燐酸系化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(重)亜硫酸(塩)や次亜燐酸系化合物が好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合濃度や重合開始剤との組み合わせ等により適宜設定すればよいが、単量体成分1モルに対して、0.0001モル以上が好ましく、また、0.2モル以下が好ましい。0.001モル以上で0.1モル以下が更に好ましく、0.005モル以上で0.05モル以下が特に好ましい。
【0031】
上記方法により得られる(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体としては、上記(メタ)アクリル酸(塩)を必須として重合したものであり、必要に応じて上記(メタ)アクリル酸(塩)以外の単量体が含まれて重合したものが好適である。
上記(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体としてはまた、(メタ)アクリル酸(塩)とアルコキシ(C数1〜3)ポリアルキレングリコール(n数2〜300)モノ(メタ)アクリレートとの共重合物が好適である。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸水溶性重合体の重量平均分子量としては、使用される用途に応じて適宜設定すればよく、例えば、0.3万以上、500万以下であることが好ましい。より好ましくは、1万以上、300万以下であり、更に好ましくは、5万以上、100万以下である。
上記重量平均分子量は、重量平均分子量が100万以下の重合体の場合、測定条件を下記のように設定したGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography)測定により得ることができる。
ポンプ:L7110(商品名、日立製作所社製)
キャリヤ液:燐酸水素2ナトリウム12水和物34.5g及び燐酸2水素ナトリウム2水和物46.2gに超純水を加えて全量を5000gにした水溶液
流速:0.5ml/min
カラム:水系GPCカラムGF−7MHQ 1本(商品名、昭和電工社製)
検出器:UV検出器 L−7400(商品名、日立製作所社製)波長214nm
分子量計算ソフト:SIC480データステーション(商品名、SICシステムインスツルメンツ社製)
分子量標準サンプル:ポリアクリル酸ナトリウム(創和科学社製)粉末
【0033】
重量平均分子量が100万を超える重合体の場合、以下のように光散乱法により測定することができる。例えば、ダイナミック光散乱光度計を用いて以下の条件により測定することが可能である。
(光散乱法における測定条件)
装置:ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、商品名:DSL−700)
溶媒:0.16M/LのNaClの水溶液
試料濃度:0.05〜2mg/ml
pH:10(at25℃)
測定温度:25℃
【0034】
本発明において製造された(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末は、凝集剤や増粘剤、粘着剤、粘着性向上剤、分散剤等としての優れた基本性能を有し、掘削土処理剤や湿布薬・パップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等の他、製紙、洗剤や化粧品、水処理、繊維処理、土木建築や農・園芸、塗料や接着剤、窯業、製造プロセス、その他の分野において多岐にわたって使用されている。具体的に、製紙分野では、塗工紙用の顔料分散、塗工紙用のラテックスの安定化、塗工カラーのレオロジー調整、パルプ漂白時のHの安定化、パルプ蒸解時のスケール防止等;洗剤分野では、衣料用粉末洗剤のビルダー、自動食器洗い器用洗剤のビルダー、各種粉末及び液体洗剤のビルダー等;水処理分野では、ボイラーや冷却塔等のスケール防止、鉄鋼用集塵水のスケール防止、地熱発電のスケール防止、その他種々のスケール防止、腐食防止等;繊維処理分野では、精錬や漂白時等のキレート剤、分散染料のマイグレーション防止等;土木建築分野や農・園芸分野では、掘削用添加剤、セメント硬化遅延剤等;塗料分野では、塗料用顔料の分散等;窯業分野では、キャスタブル耐火物の分散剤、陶土の解こう分散剤等;その他の分野では、脱臭剤、粉鉄鉱石バインダー、焼入冷却液の製造、吸湿剤、乾燥剤等の用途に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体粉末の製造方法は、上述の構成からなり、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液の重合と乾燥とを同一工程で行う上で、乾燥面への液の載りをよくして生産性を向上し、また重合時間を短縮することができ、しかも乾燥ユーティリティを少なくして、多く分野において好適に用いることができる工業的に有用な(メタ)アクリル酸水溶性重合体粉末をより効率的に製造することができる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例1
図3に示した重合兼乾燥装置における攪拌翼301付の混合槽302内に、ポンプPよりアクリル酸100%溶液153質量部/時、ポンプPより水酸化ナトリウム30質量%水溶液282質量部/時、ポンプPより過硫酸ナトリウム15質量%水溶液28.2質量部/時、ポンプPより亜硫酸水素ナトリウム35質量%水溶液36.3質量部/時の割合でそれぞれ別々の滴下口より供給した。装置は供給される原料と同量の部分重合液(増粘液)がポンプPより排出されるようになっている。原料が供給されてE出口を通過する時間(平均滞留時間)は約15秒に設定してある。混合槽内の温度を温度計303にてモニターしたところ、重合熱と中和熱により発熱して90〜102℃を呈していた。
図3において、混合槽302には、液面を一定に保つために計測機器X(図中で「LIC」と表示)が取り付けられ、これによりポンプPより濃縮乾燥機(ドラムドライヤー)に供給された分だけ混合槽に原料が供給され、連続的に効率よく生産できるようになっている。また、混合槽302及び配管304は、保存材305によって保温されるようになっている。
【0038】
を出た部分重合液をダブルドラム型のドラムドライヤーD0303型(商品名、カツラギ工業株式会社製、ドラムサイズ315φ×350L、ドラム表面温度120℃、ドラム回転数2rpm)の上部に供給し、重合と乾燥を同時に行った。乾燥物(重合粉末)はスクレーパーSより順調に掻取ることができた。
なお、Eより排出される重合液を直ちに希釈することにより重合を停止させ、該希釈液の残留モノマーを臭素付加法で分析したところ、仕込み全アクリル酸に対して66モル%であった。つまりE出口における重合率は44モル%であった。そして、スクレーパーSで掻取られた粉末の物性は以下に示した通りであった。
水分 1.3%
残留モノマー 2.1%
重量平均分子量 34.6万
なお、水分は150℃における恒量値である。残留モノマーは臭素付加法で測定したものである。重量平均分子量は、上述の方法に従って測定した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の製造方法における重合・乾燥工程に好適なダブルドラム型のダブルドラムドライヤーの概略図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法における重合・乾燥工程に好適なCDドライヤーの概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施例において用いられた製造装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1:原料供給装置
2:エンドボード
3:ドラム
4、103:スクレーパー
101:フィードパイプ
102:ディスク
301:攪拌翼
302:混合槽
303:温度計
304:配管
305:保温材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法であって、
該製造方法は、該水溶液を増粘させて増粘液を得る工程と、該増粘液を濃縮乾燥機に供給し、重合及び乾燥を行う工程とを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法。
【請求項2】
前記増粘工程は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液を部分的に重合して増粘させることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法。
【請求項3】
前記製造方法は、全単量体に対して1〜70モル%部分的に重合した増粘液を濃縮乾燥機に供給することを特徴とする請求項2記載の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法。
【請求項4】
前記増粘液の粘度は、10mPa・s以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末の製造方法。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含有する水溶液から(メタ)アクリル酸(塩)系重合体粉末を製造する方法であって、
前記増粘液を濃縮乾燥機に供給する前に、該増粘液に含まれる酸型単量体をアルカリ剤を用いて部分的に又は完全に中和せしめることにより昇温した後、該増粘液を濃縮乾燥機に供給することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−137880(P2006−137880A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329690(P2004−329690)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】