説明

(メタ)アクリレート誘導体組成物及びその製造方法

【課題】 簡便な多分岐(メタ)アクリレートを製造する方法を提供すると共に、反応終了後特段の高度濾過等の処理を行うことなく使用が可能な多分岐(メタ)アクリレート組成物を提供すること。
【解決手段】 スルホン酸系エステル化反応触媒の存在下、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレートの製造方法であって、
反応終了後、該スルホン酸系エステル化反応触媒を除去するための水洗・分液操作工程を行わずに反応液を塩基性物質で処理する工程を含むことを特徴とする多分岐(メタ)アクリレートの製造方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸系エステル化反応触媒の存在下に、多分岐(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。また、本発明は、本製造方法によって得られる多分岐(メタ)アクリレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、分岐樹脂の原料である多分岐ポリエーテルポリオールの製造について報告されている。例えば、特許文献1には、オキセタン化合物を熱カチオン重合させることにより得られるポリオールについて記載がある。具体的には、反応器にオキセタン化合物と熱カチオン開始剤の混合物を仕込み、加熱して反応させる方法、並びに反応器にオキセタン化合物と熱カチオン開始剤の混合物を仕込み、加熱して反応が開始した後に、連続的又は逐次的にオキセタン化合物と熱カチオン開始剤との混合物を滴下する方法等が挙げられている。
また、特許文献2には、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化号物と開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分構造中に1級水酸基と2級水酸基とを有する多分基ポリエーテルポリオールが記載されている。
【0003】
上記多分岐ポリエーテルポリオールのアクリレート化合物は、UV硬化樹脂の分野では、低粘度、低収縮、高密着性、高硬化性を有することから、これらの特性を生かした用途開発が期待されているが、当該化合物及びその製造方法は、学術文献、特許等で散見されるものの、実用化が遅れている。その理由としては、原料の多分岐ポリエーテルポリオールの製造が困難であること、及び通常アクリルエステル化反応後の処理に水洗・分液・濾過等の操作が必要なことから製造コストが著しく高く、これらの問題が解決されていないことが挙げられる。
【0004】
例えば、前記特許文献1には、ポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応物が記載されており、エステル化反応は、常法に従えば良いことが記載されており、具体的には、有機溶媒中、酸触媒及びラジカル重合禁止剤の存在下に、ポリオールと(メタ)アクリル酸を反応させる方法が開示されている。酸触媒として好ましいものとしては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸及びギ酸等の有機酸又はそれらの塩、陽イオン交換樹脂等の固体酸、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅及び硫酸第二銅等のルイス酸、並びに活性白土等を挙げることができる。これらの中でも、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられている。
【0005】
また、エステル交換法による方法として、特許文献3には、スタノキサンを触媒として使用する方法が記載されているが、当該法では、反応終了後の生成物中からのスズの除去が問題となる。
【0006】
しかしながら、上記文献に代表されるアクリル酸エステル化反応では、反応終了後に水洗・分液操作を行う必要があることから大量の廃液が発生すること、また、分液操作を行わずに、塩基性物質等で反応液を処理すると、アクリレート化合物中に酸触媒に由来する析出物が生成し次工程へそのまま移行することができず、珪藻土濾過等の新たな工程を必要とする等の問題点が解決されていない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335854号公報
【特許文献2】特開2006−282698号公報
【特許文献3】特開2004−190019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景技術を鑑み、本発明の課題は、簡便な多分岐(メタ)アクリレートを製造する方法を提供すると共に、反応終了後特段の高度濾過等の処理を行うことなく使用が可能な多分岐(メタ)アクリレート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、
スルホン酸系エステル化反応触媒の存在下、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレートの製造方法であって、
反応終了後、該スルホン酸系エステル化反応触媒を除去するための水洗・分液操作工程を行わずに反応液を塩基性物質で処理する工程を含むことを特徴とする多分岐(メタ)アクリレートの製造方法を提供することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な多分岐(メタ)アクリレートを製造する方法が提供可能となると共に、反応終了後特段の高度濾過等の処理を行うことなく使用が可能な多分岐(メタ)アクリレート組成物を提供するができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題解決のため、本発明者は、スルホン酸系エステル化触媒の選択、及び反応の後処理法について詳細な検討を行った結果、
1)スルホン酸系エステル化触媒として、長鎖アルキル置換ベンゼンスルホン酸を用い、
2)反応の処理として、反応終了後に反応液を塩基性物質で処理する
ことにより、一気にこれらの問題を解決した。
【0012】
即ち、本発明は、
1.スルホン酸系エステル化反応触媒の存在下、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレートの製造方法であって、
反応終了後、該スルホン酸系エステル化反応触媒を除去するための水洗・分液操作工程を行わずに、反応液を塩基性物質で処理する工程を含むことを特徴とする多分岐(メタ)アクリレートの製造方法、
2.スルホン酸系エステル化反応触媒が、置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有する
ベンゼンスルホン酸、又はビニルスルホン酸である1.に記載の多分岐(メタ)アクリレー
トの製造方法。
3.置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である請求項2に記載の多分岐(メタ)アクリレートの製造方法、
4.塩基性物質が、アルカリ溶液である1.〜3.の何れかに記載の多分岐(メタ)アクリレートの製造方法、
5.1.〜4.の何れかに記載の製造方法により得られる多分岐(メタ)アクリレート、及びスルホン酸系触媒と塩基性物質とで形成される塩を含む重合性不飽和樹脂組成物、
6.更に、希釈溶剤、又は重合性単量体を含む5.に記載の重合性不飽和樹脂組成物、
を提供する。
【0013】
本発明に用いられるヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールは、例えば特開2006−282698に記載の多分岐ポリエーテルポリオールを用いることができる。
【0014】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールである。
【0015】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタンは、下記一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、一般式(1)中、Rは、メチレン基、エチレン基、若しくはプロピレン基であり、一方、Rは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、又は炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。また、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0018】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタンの中でも、Rがメチレン基であり、かつ、Rが炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物、とりわけ3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンが好ましい。
【0019】
次に、上記ヒドロキシアルキルオキセタンと開環反応させる1官能性エポキシ化合物は、オレフィンエポキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル等が挙げられる。
【0020】
ここで、オレフィンエポキサイドは、具体的には、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシドが挙げられる。
【0021】
アルキルグリシジルエーテルは、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0022】
アルキルグリシジルエステルは、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。
【0023】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを開環反応させる方法は、具体的には、以下の(方法1)〜(方法3)が挙げられる。
【0024】
(方法1)
方法1は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/1官能性エポキシ化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合し、これらをパーオキサイドフリーの有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、又はジオキソランで、原料成分/有機溶剤の質量比が1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で溶解する。
【0025】
得られた溶液を−10℃〜−15℃まで攪拌しながら冷却、次いで、重合開始剤を単独で、或いは溶液状態で、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.5時間かけて滴下する。ここで、重合開始剤は、原料モノマーの全質量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.75〜0.3質量%なる割合で使用できる。また、重合開始剤を溶液状態で使用する場合、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、特に25〜50質量%であることが好ましい。ついで、この重合溶液を25℃になる迄攪拌し、次いで、リフラックスする温度まで加熱し、0.5〜3時間かけて原料成分を全て反応するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。
【0026】
重合後、得られた前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、前記重合開始剤と当量の水酸化アルカリ水溶液による攪拌、又は、前記重合開始剤と当量のナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドの添加によって中和する。中和後、濾過し、溶媒で目的物を抽出後、減圧下に溶媒を留去し、目的とする多分岐ポリエーテルポリオール(A)を得ることができる。
【0027】
(方法2)
方法2は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/1官能性エポキシ化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、70℃以上の沸点を有する炭化水素系溶媒中に溶解する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、原料モノマーと炭化水素系溶媒との比率は、前者:後者が1:1〜1:10、特に1:2.5〜1:3.5であることが好ましい。
【0028】
この混合物の温度は、0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持され、次いで、攪拌下に原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%の重合開始剤を一度に加える。
重合開始剤の添加直後、系内は不均一系になって25〜40℃まで系内温度が上昇する。一旦、15〜25℃まで冷却した後、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0029】
(方法3)
方法3は、原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%となる量の重合開始剤を、70℃以上の沸点を有する炭化水素系有機溶媒に溶解し、これを0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、該炭化水素系溶媒中の重合開始剤濃度は、0.01〜1質量%、特に0.025〜0.25質量%であることが好ましい。
【0030】
この溶液に対して、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/1官能性エポキシ化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、混合した混合物を、系内の温度が20〜35℃になるように連続的に滴下する。滴下終了後も系内の温度が20〜25℃になるまで攪拌を行う。
【0031】
次いで、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0032】
ここで用いる重合開始剤は、HSO、HCl、HBF、HPF、HSbF、HAsF、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF、AlCl、TiCl、SnClなどのルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールイオドニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールイオドニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネートなどのオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステルなどのアルキル化剤が挙げられる。
【0033】
これらのなかでも特に、HPF、HSbF、HAsF、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが活性に優れる点から好ましく、特にHPF及びトリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0034】
このようにして得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)の数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴としている。
【0035】
即ち、本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、1官能性エポキシ化合物とを開環反応させて得られる多分岐構造を有することから該多分岐ポリエーテルポリオール(A)の慣性半径が小さくなり、更に、数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500という低い値を有することから、従来になく流動性が極めて良好となり、ウレタン系樹脂組成物として作業性が飛躍的に改善される。また、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであり、分子量が小さい割に多くの水酸基を有することから硬化時の架橋密度が高くなって、硬質の塗膜を形成できる。
【0036】
このような多分岐ポリエーテルポリオール(A)の具体的構造は、ヒドロキシアルキルオキセタン と、1官能性エポキシ化合物 とを開環反応させて得られる種々の構造が含まれる。具体的には、下記一般式(1)
【0037】
【化2】

【0038】
(ここで、一般式(1)中、R及びRは、前記したものと同一である。)
で表されるヒドロキシアルキルオキセタンと、下記一般式(2)
【0039】
【化3】

【0040】
(ここで、一般式(2)中、Rは前記1官能性エポキシ化合物のエポキシ基の他の構造を表す。)で表される1官能性エポキシ化合物を開環反応させた場合、下記の構造で表される繰り返し単位、及び、末端構造単位の中から適宜選択される構造単位で前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)は構成されることになる。
【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
ここで、前記各構造単位において実線部分は当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、他の構造単位とエーテル結合を形成する単結合を示す。また、前記OR〜OR、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタンに起因する構造単位であって、OR〜ORは繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は末端構造単位を表す。
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記1官能性エポキシ化合物に起因する構造単位であって、ER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は末端構造単位を表す。
【0044】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、前記OR〜OR及びER1から選択される繰り返し単位によって多分岐構造が形成され、末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有するものである。なお、これらの繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していてもよいし、OR〜ORが分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであってもよい。なお、本発明では2級水酸基(H2)が必須であることから、前記EE1は必須の構造単位として多分岐ポリエーテルポリオール(A)中に存在する。
【0045】
本発明の多分岐(メタ)アクリレートは、上記多分岐ポリエーテルポリオール(A)に(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0046】
本明細書中において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタアクリル酸を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)には、多官能オキセタン化合物のオキセタニル基とエポキシ基との付加反応により生じたヒドロキシメチル基が存在している。多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシメチル基の水酸基と(メタ)アクリル酸との縮合反応によって合成される。
【0047】
(メタ)アクリル酸と多分岐ポリエーテルポリオール(A)との反応は、例えば約−50〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度範囲で行なうことができる。
【0048】
(メタ)アクリル酸の使用量は、目的により選定されるが、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)中のヒドロキシ基化学当量に対して、0.1〜2.0モルが好適である。0.1モルより少ないと導入される(メタ)アクリレート基の量が少なくなり、好ましくない。一方、2.0モルを越えて多量に使用すると、未反応の(メタ)アクリル酸が反応液中に多量残存し、減圧除去工程に長時間費やすなどの恐れがあるため好ましくない。より好ましくは、0.5〜1.2モルである。
【0049】
前記反応は、有機溶媒の存在下、又は無溶媒下でも進行するが、反応時撹拌効率を改善するため有機溶媒の存在下で行なうことが好ましい。
使用できる有機溶媒としては、(メタ)アクリレートとの反応に影響を与えるものでなければ、特に制限はないが、好ましくは、炭化水素系有機溶媒、芳香族系有機溶媒、エーテル系有機溶剤を挙げることができる。更に、具体的には炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができ、芳香族系有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンを挙げることができ、エーテル系有機溶剤としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチールエーテル等を挙げることができる。
【0050】
反応温度は、使用されるエステル化反応触媒、有機溶媒によって異なるが、通常−20℃〜150℃の温度を挙げることができ、反応時間は、通常1〜48時間を挙げることができる。
より好ましい温度は、50〜100℃である。
【0051】
本発明では、(メタ)アクリレートとの反応で使用されるエステル化反応触媒に特徴を有する。本発明の多分岐(メタ)アクリレートの製造では、通常のエステル化反応触媒を用いることができる。このようなエステル化反応触媒としては、HSO、HCl、HBF、HPF、HSbF、HAsF、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF、AlCl、TiCl、SnClなどのルイス酸等を挙げることができるが、本発明では、特にスルホン酸系エステル化反応触媒が好ましい。このスルホン酸系触媒の使用量としては、(メタ)アクリル酸と多分岐ポリエーテルポリオール(A)の合計仕込み量に対して通常0.01〜20重量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0052】
好ましい触媒として、より具体的には、置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸を挙げることができる。このようなベンゼンスルホン酸としては、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることができ、工業的に入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
ドデシルベンゼンスルホン酸は、エステル化反応後の反応液を塩基性物質で処理する工程を
経て得られる反応後の組成物に析出物を生じないことを確認している。
【0053】
また、同様に反応後の組成物に析出物を生じないことからビニルスルホン酸を好適な触媒として挙げることができる。
本発明では、生成物である多分岐(メタ)アクリレート組成物を含む重合性不飽和樹脂組成物を提供するが、各種のスルホン酸系エステル化反応触媒の検討を行い、上記課題を解決できる触媒の種類を多数検討を行った後になしえたもので、特に長鎖アルキルベンゼンスルホン酸、或いはビニルスルホン酸を用いた場合に、上記課題の解決が可能であることを見出したことによる。
【0054】
また、前記反応においては、(メタ)アクリレートの重合性二重結合の重合によるゲル化を防止する目的で、空気を吹き込んだり、重合禁止剤を加えてもよい。
【0055】
重合禁止剤の例としては、メトキノン、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジン、トリフェニルアンチモン、塩化銅、4-ヒドロキシ-2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1-オキシル等の通常公知の重合禁止剤が挙げられる。
【0056】
本発明のエステル化反応では、反応終了後に塩基性物質で反応液を処理する工程を有する。
エステル化反応では、スルホン酸系エステル化触媒の除去方法として、反応液に水を添加し、水洗・分液操作を行うことによりスルホン酸系エステル化触媒を水層への除去を行うことが一般的である。しかしながら、本発明の多分岐(メタ)アクリレートの製造において、この水洗・
分液操作を行うと、分液が不可能か、或いは辛うじて分液されたとしても、有機層及び水層に強い濁りが生じ、生成物である多分岐(メタ)アクリレートの分離・精製工程が別途必要になる欠点がある。
そこで、本発明では、水洗・分液操作を行わずに塩基性物質で反応液を処理する工程を有する。
【0057】
本発明で用いられる塩基性物質は、使用されたスルホン酸系エステル化触媒を中和するものであれば特に制限はないが、アルカリ溶液(アルコール性、又は水性)が好ましい。アルカリ水溶液が特に好ましい。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム等を挙げることができ、水溶液濃度に限定はないが、使用する水が少ない方が好ましく、例えば、20〜50%の濃度の水溶液を挙げることができる。本アルカリ水溶液は、エステル化反応終了後に反応液に添加を行えばよい。このアルカリ水溶液の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、少なくともスルホン酸系触媒を中和するのに必要な量のアルカリ化合物を添加することが好ましい。
【0058】
アルカリ水溶液の添加後は、反応系に減圧装置を接続し、徐々に減圧度を上げながら系内の溶媒及び残存する(メタ)アクリル酸、微量の水の除去工程を行えばよい。この工程での温度は、通常−20℃〜150℃の温度を挙げることができ、好ましくは0〜100℃の温度範囲で行なう。
こうして、本発明で目的とする多分岐(メタ)アクリレートを含む重合性不飽和樹脂組成物を得ることができ、本多分岐(メタ)アクリレートは、更に希釈溶剤、又は重合性不飽和単量体を含んでよい。
【0059】
用いることのできる希釈溶剤としては、重合性不飽和樹脂組成物と混和可能な有機溶剤を挙げることができ、例えば、炭化水素系有機溶媒、芳香族系有機溶媒、エーテル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤を挙げることができる。更に、具体的には炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等を挙げることができ、芳香族系有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンを挙げることができ、エーテル系有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等を挙げることができ、ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができ、用途に応じて適宜選択される。
【0060】
また、本発明の重合性不飽和樹脂組成物は、重合性不飽和単量体を含んでよく、このような重合性不飽和単量体としては、通常公知の化合物を挙げることができ、例えば、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリレート、アリル化合物、カルボン酸ビニルエステル、ビニルエーテル、マレイミド化合物等挙げることができる。更に、具体的には芳香族ビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。アリル化合物としては、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられ、カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル等が挙げられ、ビニルエーテルとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられ、マレイミド化合物等としては、シクロヘキシルマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等挙げられる。その他の重合性不飽和単量体として、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、α−メチレン−γ−ブチロラクトン等も挙げられ、用途に応じて適宜選択される。
【0061】
また、本発明の多分岐(メタ)アクリレートは、多分岐構造であるため、同じ分子量の線状ポリマーと比較すると、分子同士の絡み合いがなくなるため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できる。
【0062】
更に、本発明の多分岐(メタ)アクリレートの1種又は2種以上の混合物に、重合開始剤として光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤を混合することにより、光硬化性又は熱硬化性の重合性不飽和樹脂組成物が得られる。
【0063】
前記重合開始剤として用いられる光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの光ラジカル重合開始剤の配合量は、重合性不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。光ラジカル重合開始剤の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、又は照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤を添加しても、硬化性に変化は無く、物性的、経済的に好ましくない。
【0065】
本発明の硬化性組成物又は光硬化性・熱硬化性組成物においては、活性エネルギー線による硬化を促進させるために、硬化促進剤又は増感剤を上記のような光ラジカル重合開始剤と併用してもよい。
【0066】
硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等の三級アミン類;β−チオジグリコール等のチオエーテル類等が挙げられる。
増感剤としては、(ケト)クマリン、チオキサンテン等の増感色素類;及びシアニン、ローダミン、サフラニン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等の色素のアルキルホウ酸塩等が挙げられる。
【0067】
これらの硬化促進剤又は増感剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、重合性不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り0.1〜10質量部の割合が好ましい。
【0068】
前記重合開始剤として用いられる熱ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレイト、4,4’−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2’−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられ、より好ましくはノンシアン、ノンハロゲンタイプの1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が挙げられる。
【0069】
熱ラジカル重合開始剤は、重合性不飽和基含有多分岐化合物100質量部当り好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜10質量部の割合で用いられる。
【0070】
また、熱ラジカル重合開始剤として有機過酸化物のうち硬化速度の小さいものを用いる場合には、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチル−p−トルイジン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の三級アミン、又はナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の金属石鹸を促進剤として用いることができる。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物は熱硬化性成分を含むことができる。熱硬化性成分としては、1分子中に少なくとも2つ以上のオキシラン基又はオキセタニル基を有する多官能エポキシ化合物又はオキセタン化合物を好適に用いることができる。
【0072】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドを酸触媒下で反応させて得られるノボラック類に、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1027、EPPN−201、BREN−S;ダウ・ケミカル社製のDEN−431、DEN−438;DIC(株)製のN−730、N−770、N−865、N−665、N−673、N−695、VH−4150等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール、ビスフェノール、ビスフェノール、テトラブロモビスフェノール等のビスフェノール類にエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、油化シェルエポキシ(株)製のエピコート1004、エピコート1002;ダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337等)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502等)、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェノールジグリシジルエーテル、その他脂環式エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂、カルド型エポキシ樹脂、カリックスアレーン型エポキシ樹脂等公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
本発明の重合性不飽和基含有多分岐化合物は、種々の分野において樹脂添加剤として有利に用いることができる。例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等の分子量調節剤、ポリオレフィン樹脂、ブタジエンゴム等の架橋剤等である。また、光硬化性成分又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。得られた硬化物は種々の分野に適用することができ、例えば木工、プラスチック、鋼板用塗料、UV硬化型インキ、感光性樹脂凸版、光硬化接着剤、嫌気性接着剤、コンクリート用ランニング剤、パテ等の空隙補修剤、FRP成形品、押し出し樹脂成形品、フイルム、発泡樹脂成形品等多くの用途に利用可能である。
【実施例】
【0074】
(製造例1)<多分岐ポリエーテルポリオール(A)の合成>
窒素、空気リフラックスコンデンサー、マグネット式撹拌棒、温度計を具備した1000mLの3つ口フラスコ中で、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.24g(8.7mmol)を、乾燥かつ過酸化物フリーのメチル−t−ブチルエーテル273gで希釈した。
別途容器にて、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン140g(1.21mol)とプロピレンオキサイド70.0g(1.21mol)を混合し、上記3つ口フラスコへ、定量ポンプで5.5時間かけて滴下した。このとき、系内の温度を20℃に保つよう、随時アイスバスで冷却を行った。滴下終了後、さらにプロピレンオキサイド63.0g(1.08mol)を、同様に系内の温度を20℃に保ちつつ、3時間かけて滴下し、さらに4時間攪拌した。ここで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.620g(4.4mmol)を添加し、さらに20℃で6時間攪拌した。
【0075】
反応混合物は、反応に使用した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の10倍重量のハイドロタルサイトを加え、1時間還流させることにより吸着除去した。ハイドロタルサイトを濾別したのち、メチル−t−ブチルエーテルを除去し、透明で高粘性の多分岐ポリエーテルポリオール(A)267gを得た。
この多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、Mn=2,876g/mol、Mw=7,171g/mol、水酸基価=253mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基に対する2級水酸基の比率は、40%であった。これを多分岐ポリエーテルポリオール(A)HB−1と言う。
【0076】
(実施例1)<重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの合成>
ディーン・スターク管、窒素及び空気導入管、撹拌装置、温度計を具備した500mLの4つ口フラスコ中に、前述の多分岐ポリエーテルポリオール(A)HB−1を155g、アクリル酸51g、シクロヘキサン200g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.21g、触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸4g(12.3mmol)を仕込み、窒素と空気2対1の混合ガス流通下で、82℃まで昇温した。シクロヘキサンの還流が始まり、水の流出が徐々に始まった。その後、85℃まで昇温して24時間反応させると、理論脱水量の70%に達したので冷却を開始した。30℃付近まで冷却した後、ディーン・スターク管を水冷コンデンサに交換した。次に50%水酸化ナトリウム0.98g(12.3mmol)を仕込み、80℃まで昇温、保持した。次に減圧装置に接続し、徐々に減圧度を上げながら系内の溶媒及び残存するアクリル酸、微量の水の除去工程を実施した。酸価が5以下になったので、反応容器より取り出し、硝子瓶に充填した。得られた重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの水酸基価は、73.1mg・KOH/gで、全水酸基のアクリル酸エステル価率は、66%であった。アクリル基濃度は、2.54mmol/gと算出された。以下、これを重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂HBA−1とする。室温で放冷一日後に外観を目視確認した。淡黄色透明で濁りは無かった。
【0077】
(実施例2)<重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの合成>
実施例1と同様にして500mLの4つ口フラスコ中に、前述の多分岐ポリエーテルポリオール(A)HB−1を155g、アクリル酸51g、シクロヘキサン200g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.21g、触媒としてビニルスルホン酸1.3g(12.3mmol)を仕込み、窒素と空気2対1の混合ガス流通下で、82℃まで昇温した。シクロヘキサンの還流が始まり、水の流出が徐々に始まった。その後、85℃まで昇温して20時間反応させると、理論脱水量の80%に達したので冷却を開始した。30℃付近まで冷却した後、ディーン・スターク管を水冷コンデンサに交換した。次に50%水酸化ナトリウム0.98g(12.3mmol)を仕込み、80℃まで昇温、保持した。次に減圧装置に接続し、徐々に減圧度を上げながら系内の溶媒及び残存するアクリル酸、微量の水の除去工程を実施した。酸価が5以下になったので、反応容器より取り出し、硝子瓶に充填した。得られた重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの水酸基価は、50.5mg・KOH/gで、全水酸基のアクリル酸エステル価率は、76%であった。アクリル基濃度は、2.86mmol/gと算出された。以下これを重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂HBA−2とする。実施例1と同様に外観を目視確認した。淡黄色透明で濁りは無かった。
【0078】
(比較例1)<重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの合成>
実施例1と同様にして500mLの4つ口フラスコ中に、前述の多分岐ポリエーテルポリオール(A)HB−1を155g、アクリル酸51g、シクロヘキサン200g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.21g、触媒としてパラトルエンスルホン酸2.1g(12.3mmol)を仕込み、窒素と空気2対1の混合ガス流通下で、82℃まで昇温した。シクロヘキサンの還流が始まり、水の流出が徐々に始まった。その後、85℃まで昇温して20時間反応させると、理論脱水量の70%に達したので冷却を開始した。30℃付近まで冷却した後、ディーン・スターク管を水冷コンデンサに交換した。次に50%水酸化ナトリウム0.98g(12.3mmol)を仕込み、80℃まで昇温、保持した。次に減圧装置に接続し、徐々に減圧度を上げながら系内の溶媒及び残存するアクリル酸、微量の水の除去工程を実施した。酸価が5以下になったので、反応容器より取り出し、硝子瓶に充填した。得られた重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの化合物の水酸基価は、71.0mg・KOH/gで、全水酸基のアクリル酸エステル価率は、67%であった。アクリル基濃度は、2.57mmol/gと算出された。
以下これを重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルHBA−3とする。実施例1と同様に外観を目視確認した。淡黄白色で濁っていた。
【0079】
(比較例2)<重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの合成>
実施例1と同様にして500mLの4つ口フラスコ中に、前述の多分岐ポリエーテルポリオール(A)HB−1を155g、アクリル酸51g、シクロヘキサン200g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.21g、触媒としてパラトルエンスルホン酸2.1g(12.3mmol)を仕込み、窒素と空気2対1の混合ガス流通下で、82℃まで昇温した。シクロヘキサンの還流が始まり、水の流出が徐々に始まった。その後、85℃まで昇温して20時間反応させると、理論脱水量の70%に達したので冷却を開始した。30℃付近まで冷却した。次に20%水酸化ナトリウム50g(250mmol)を仕込み、この温度保持しながら10分間攪拌した。次に攪拌を停止し、分液ロートに全量移送し、静置し溶剤/水の分離工程を実施した。直後は乳白色で乳化状態であった。24時間後確認すると、同様乳白色で溶剤と水は分離していなかった。3日後も同様に分離していなかった。
よって、本製法では、重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルを得ることができなかった。
【0080】
<評価方法>
<重合性不飽和単量体への溶解性確認(外観目視観察)>
得られた重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂60g、スチレンモノマー40gを50℃加温下、混合攪拌し、溶液を作製した。室温静置一日後の溶液の外観を目視観察した。
この結果を3段階にて評価した。
○:淡黄色透明で、濁り、沈殿等認められない。
△:淡黄色透明で、濁りが認められる。
×:淡黄色白色で、濁り、沈殿が認められる。
評価に使用した重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂は、実施例で得られたHBA−1、及びHBA−2と、比較例で得られたHBA−3である。その結果を表−1に示す。
【0081】
<ポリスチレン樹脂合成時、少量添加による分子量増大性の確認>
スチレンモノマー9g、トルエン1g、重合開始剤0.0018g(パーブチルZ、日油製)、重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂0.009gを30℃で混合攪拌し、溶液を作製した。これを硝子アンプルに仕込み、窒素置換したのち封管した。このアンプルをオイルバスに侵積し、バス内のオイルを130℃から160℃まで5時間かけて緩やかに昇温した。室温にて約5時間放冷後、アンプルを割り、重合物を取り出した。この重合物の1gを60gのトルエンに溶解し、300メッシュのSUS金網でろ過し不溶物の有無を確認する。次に500gのメタノールで再沈殿させ、重合物を回収し、真空乾燥にて60℃で12時間乾燥させ、評価用のポリスチレン樹脂を得た。なお、ブランク試験として、重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂を使用しないものも、同時比較した。評価に使用した重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルは、実施例で得られたHBA−1、HBA−2、及び比較例で得られたHBA−3である。
【0082】
得られたポリスチレン樹脂をTHFに溶解し、分子量分布測定した。検出器は、屈折率式と、多角度レーザー散乱検出の二つで分子量を測定した。屈折率式から得られた重量平均分子量をRI−Mwとする。多角度レーザー散乱検出から得られた重量平均分子量をMALS−Mwとする。その結果を表−2に示す。なお、ブランク試験として、重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂を使用しなかった結果も表−2(評価例1)に示す。
【0083】
<紫外線硬化塗膜性能の確認(紫外線硬化樹脂適性の評価)>
重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂50g、メチルエチルケトン50g、光開始剤1gヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)を50℃に加温下、暗所にて攪拌、溶液を作製した。室温静置一日後の溶液の外観を目視観察した。
この結果を3段階にて評価した。
○:淡黄色透明で、濁り、沈殿等認められない。
△:淡黄色透明で、薄く濁りが認められる。
×:淡黄色白色で、濁り、沈殿が認められる。
評価に使用した重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂は、実施例で得られたHBA−1、及びHBA−2と、比較例で得られたHBA−3である。その結果を表−1に示す。
【0084】
次に、この溶液を用いて紫外線硬化塗膜を作製した。バーコーターを用いて、100ミクロンのPETフイルム上に塗布後、80℃の乾燥機にて5分乾燥させ、室温まで冷却した。厚さ約100μmで得られた塗布物を、コンベアスピード5m/分、出力160W/cmのメタルハライドランプで0.8J/cmの条件で紫外線照射を、2回行なった。得られた硬化物を以下の方法に従い評価した。
硬度評価:鉛筆硬度JIS K−5400による鉛筆引っかき試験をおこない、硬化物の破れにより評価を行った。
屈曲試験:塗膜を有するPETフイルムを180℃屈曲させ、塗膜の割れ、剥がれを目視観察した。
この結果を3段階にて評価した。
○:塗膜の割れ、剥がれ等認められない。
△:塗膜の割れが認められる。
×:塗膜の割れ、剥がれが認められる。
塗膜の透明性:黒色の画用紙の上に試片を置き、濁りの有無を目視確認した。
評価に使用した重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルは、実施例で得られたHBA−1、HBA−2、及び比較例で得られたHBA−3である。その結果を表−3(評価例2)に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
<表中の略号の説明>
・DBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
・VSA:ビニルスルホン酸
・PTSA:p−トルエンスルホン酸
・SM:スチレンモノマー
【0089】
表−1から判るように、本発明の製造法によれば、水洗を行わないため重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂を容易に回収、製造できる。廃棄されるのは、少量の水(縮合水)のみであり、回収された反応溶媒、未反応の(メタ)アクリル酸は再使用可能である。得られた本発明の重合性不飽和樹脂は、濁りが無く、溶液とした場合も濁らず、多くの用途の樹脂原料として使用可能である。
【0090】
また、表−2から判るように、本発明の重合性不飽和樹脂は、ポリスチレン樹脂の分子量調節剤としても有用で、分子量を増大させるが不溶物の生成が起き難く、制御し易い。また、表−3から判るように、本発明の重合性不飽和樹脂を紫外線硬化させた塗膜は、透明で基材追従性に優れ、適度な硬度を発現するため、紫外線硬化性塗料の主剤としても有用である。
【0091】
一方、従来の酸触媒反応後、アルカリ水洗等を行う方法では、本重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテル樹脂は、水と乳化し易く分離が困難となり、回収できなくなり、量産性に劣る。
従来のp−トルエンスルホン酸等の短鎖アルキルベンゼンスルホン酸等を用いて同様に反応することは可能であるが、スルホン酸塩等の析出による該樹脂の濁りが発生し、ろ過が困難である。よってそのまま使用すると、濁り、不溶物の生成等品質上の問題がある。そのため、多くの用途の樹脂原料として使用は、困難である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の多分岐(メタ)アクリレートは、重合性の不飽和樹脂組成物としての利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸系エステル化反応触媒の存在下、ヒドロキシアルキルオキセタンと1官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレートの製造方法であって、
反応終了後、該スルホン酸系エステル化反応触媒を除去するための水洗及び分液操作工程を行わずに、反応液を塩基性物質で処理する工程を含むことを特徴とする多分岐(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
スルホン酸系エステル化反応触媒が、置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸、又はビニルスルホン酸である請求項1に記載の多分岐(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である請求項2に記載の多分岐(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項4】
塩基性物質が、アルカリ溶液である請求項1〜3の何れかに記載の多分岐(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の製造方法により得られる多分岐(メタ)アクリレート、及びスルホン酸系エステル化反応触媒と塩基性物質とで形成される塩を含む重合性不飽和樹脂組成物。
【請求項6】
更に、希釈溶剤、又は重合性不飽和単量体を含む請求項5に記載の重合性不飽和樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−173952(P2011−173952A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37235(P2010−37235)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】