説明

(メタ)アルキル酸モルホリノアルキル類の製造方法

【課題】本発明の課題は、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造技術において、製品の純度および収率の向上を容易に達成するものである。
【解決手段】本発明は、下記工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法である。
(1)アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する工程。
(2)化合物Xを分離した液を精製する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を製造する方法を対象にしている。
特に製品純度が高い(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を製造する方法に関するものである。なお、アクリロイル基とメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリル酸とメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類は、モルホリン骨格を有することから、親水性、親油性、密着性、耐熱性、制電性、生体親和性等の特徴をもち、医農薬原料、合成中間体、更に重合性材料として有用な化合物である。
具体的には、接着剤、粘着剤、生体材料、歯科材料、光学部材、情報記録材料、光ファイバー用材料、レジスト材料、絶縁体、封止剤、印刷インキ、塗料、粉体塗料、注型材料、化粧板、WPC、被覆材、ライニング材、土木建築材料、パテ、補修材、床材、舗装材ゲルコート、オーバーコート、ハンドレイアップ・スプレーアップ・引抜成形・フィラメントワインディング・SMC・BMC等の成形材料、シート等の広範囲の工業用途に用いられる。
【0003】
このような(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法としては、(メタ)アクリル酸エステルとN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類をエステル交換反応させる方法が知られている。その際触媒として、チタン化合物を用いることが特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−249471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者らの検討によれば、N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類は親水性が高く、水分を吸収しやすいため、チタン化合物の一部を失活させてしまい、経済的に(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を製造するには限界があった。そこで、本願発明者らは、原料中の水分や雰囲気中の水分で失活することの無い触媒として、アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(化合物X)を見出した。
【0006】
しかしながら、化合物Xの存在下に、精製を充分に行って純度を高めようとしても、N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類が継続的に発生し、不純物としてN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の含有量が増加して製品純度を低下させてしまい、高純度の(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を製造するには限界があった。
【0007】
本願発明者らの検討の結果、上記N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の発生は、エステル交換反応で得られた反応液に含まれる化合物Xに結合していたN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類が精製時の加熱処理において徐々に分解し、発生することを見出した。
【0008】
上記化合物Xの作用によるN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の生成を防ぐために、エステル交換反応の後に、化合物X不活性化処理を行うことも考えられる。しかし、不活性化処理を施した化合物Xは再利用することができず、廃棄しなければならないため、生産コストが増加し、経済的ではない。また、精製工程でN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類が生成するのを確実に防止できるまで化合物Xを不活性化するには、処理操作に手間と時間がかかり、全体の生産性を低下させてしまう。
【0009】
本発明の課題は、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造技術において、化合物Xを不活性化処理することなく、N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の発生による製品収率の低下を抑制し、製品純度の向上を容易に達成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、上記課題を解決するために下記の手段を用いることで達成することを見出し発明を完成した。
【0011】
第一の発明は、下記工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法である。(1)アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する工程(以下、「化合物X分離工程」と称する)。(2)化合物Xを分離した液を精製する工程(以下、「精製工程」と称する)。である。
【0012】
第二の発明は、下記工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法である。(1)アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する工程(以下、「化合物X分離工程」と称する)。((2)化合物X分離工程の前に軽沸分を分離する工程(以下、「軽沸分分離工程」と称する)。(3)軽沸分の分離および化合物Xの分離を行なった後の液を精製する工程(以下、「精製工程」と称する)。である。
【発明の効果】
【0013】
アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離した後に精製することで(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類製品の純度あるいは製品収率が格段に向上させることができる。さらに、本発明において分離された化合物Xは、活性を有する状態で分離されるため、そのまま活性の高い状態で再びエステル交換反応に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
−化合物X分離工程−
化合物Xの分離には、濾過、蒸留等の通常の分離処理技術が適用できる。これらの中でも、蒸留によって、化合物Xを蒸留ボトムに残し、化合物Xを含まない粗精製液を留出させる方法が好ましい。化合物X分離工程における気相部の分子状酸素濃度の設定によって、化合物X分離時における(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の重合を効果的に防止できる。
【0015】
好ましい分子状酸素濃度の条件は、反応系気相部の分子状酸素濃度は、下限を0.01容量%以上、上限を10容量%以下に設定できる。下限は、0.02容量%以上がより好ましく、0.05容量%以上がさらに好ましい。上限は、9容量%以下がより好ましく、8容量%以下がさらに好ましい。上記分子状酸素濃度の範囲が、収率、重合抑制、爆発回避、経済性の点で有効である。分子状酸素濃度の設定は、分子状酸素または空気等の分子状酸素を含むガスと、窒素やアルゴン等の不活性ガスとを、反応器に別々に供給したり、予め混合して供給したりすることにより行われる(以下、「酸素濃度条件」と称する)。
【0016】
蒸留温度は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましく、125℃以下が特に好ましい。125℃以下の温度では、化合物Xに結合しているN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の発生が抑制でき、後の精製工程(c)がより簡素化される。
【0017】
蒸留による分離操作は、常圧あるいは減圧の何れでもよいが、減圧下で行われることが好ましい。特に、上記蒸留温度を達成することが可能な減圧度が好ましい。また、蒸留時間は、化合物X分離が完結するように、適宜に設定できる。
【0018】
蒸留装置は、蒸留釜とコンデンサーと留出受器を備えていればよい。空塔を有する装置、多孔板トレイ、泡鐘トレイ、バルブトレイ、ディアルフロートレイを備えた有堰あるいは無堰棚段式蒸留塔を有する装置、規則充填物を充填した精留塔を有する装置、および、不規則充填物を充填した精留塔を有する装置等も採用することができる。これらを組み合わせて使用することもできる。蒸留による分離操作は、連続式でも回分式でも半回分式でもよい。
【0019】
蒸留による分離操作では、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどでの重合を防止するために、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどに重合禁止剤を添加することが好ましい。好ましい重合禁止剤の種類は、後述する重合禁止剤を使用することができ、好ましい重合禁止剤の添加量は、存在する(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類などの総量に対して、後述する量と同じ量範囲が採用できる。
【0020】
なお、重合禁止剤は、そのまま粉体状態や液体状態で添加してもよく、液体に溶解させた溶液として添加してもよい。溶液として添加する方法が好ましく、留出液組成物と同じ組成物、留出液組成物中の1成分、留出液組成物中の複数成分の溶液として添加する方法が好ましい。
【0021】
−化合物X再利用−
反応液から分離除去された化合物Xおよび/または化合物Xを含む組成物は、再びエステル交換反応に使用することができる。化合物Xを高沸点成分とともに分離した場合は、化合物Xを高沸点成分と分離してもよい。また分離せずにそのままエステル交換反応などの触媒として再利用することができる。
【0022】
−精製工程−
化合物Xが分離除去された粗精製液を精製して、最終的に製品となる(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を得る工程である。精製工程には、軽沸分の分離、N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の分離、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の分離が含まれる。これらの内、軽沸分離は、化合物X分離工程の前に行うこともできる。
【0023】
精製工程は、基本的には通常の(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類製造における精製技術が適用できる。精製工程には、抽出操作、水洗操作、蒸発操作、蒸留操作、カラムクロマトグラフ操作などが含まれる。これらの操作を複数組み合わせることもできる。これらの中でも、蒸留による精製が好ましい。
【0024】
精製操作の際における精製系気相部の分子状酸素濃度の設定によって、精製時の重合を効果的に防止できる。好ましい分子状酸素濃度条件は、前記の「酸素濃度条件」を適用することができる。
【0025】
蒸留温度は、重合を防止するため、蒸留ボトムの温度が180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。
蒸留による精製は、常圧あるいは減圧の何れでもよいが、減圧下で行われることが好ましい。特に、上記蒸留ボトムの温度を達成することが可能な減圧度が好ましい。
【0026】
蒸留装置は、空塔を有する装置、多孔板トレイ、泡鐘トレイ、バルブトレイ、ディアルフロートレイを備えた有堰あるいは無堰棚段式蒸留塔を有する装置、規則充填物を充填した精留塔を有する装置、および、不規則充填物を充填した精留塔を有する装置等が採用できる。これらを組み合わせて使用することもできる。蒸留による精製は、連続式でも回分式でも半回分式でもよい。
【0027】
化合物Xが分離除去された粗精製液の重合を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましい。好ましい重合禁止剤の種類は、後述する重合禁止剤同じものを使用することができ、好ましい重合禁止剤の添加量は、存在する(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類などの総量に対して、後述する量と同じ量範囲が採用できる。
【0028】
蒸留による分離操作では、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどでの重合を防止するために、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどに重合禁止剤を添加することが好ましい。好ましい重合禁止剤の種類は、後述する重合禁止剤を使用することができ、好ましい重合禁止剤の添加量は、存在する(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類などの総量に対して、後述するのと同じ量範囲が採用できる。
【0029】
なお、重合禁止剤は、そのまま粉体状態や液体状態で添加してもよく、液体に溶解させた溶液として添加してもよい。溶液として添加する方法が好ましく、留出液組成物と同じ組成物、留出液組成物中の1成分、留出液組成物中の複数成分の溶液として添加する方法が好ましい。
【0030】
−軽沸分分離工程−
反応液に含まれる目的製品以外の物質の中で、比較的に沸点が低い成分は、比較的に低温度での蒸留などによって除去することができる。低温度の処理であれば、化合物Xの作用で前記したN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類が生成することが防げる。従って、精製工程の内、軽沸分分離工程は化合物X分離工程の前後何れで行なってもよい。
【0031】
軽沸分の分離工程における加熱温度は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましく、125℃以下が特に好ましい。該温度範囲であれば、化合物X分離工程前に軽沸分分離工程を行っても前記した化合物Xの作用が起こらない。
【0032】
軽沸分分離工程は、常圧または減圧下で行う。好ましくは上記温度範囲を達成する減圧下での蒸留である。
【0033】
軽沸分の分離操作の際における軽沸分系気相部の分子状酸素濃度の設定によって、軽沸分の分離時の重合を効果的に防止できる。好ましい分子状酸素濃度条件は、前記した条件と同様な条件を採用できる。
【0034】
蒸留装置は、蒸留釜とコンデンサーと留出受器を備えていればよい。空塔を有する装置、多孔板トレイ、泡鐘トレイ、バルブトレイ、ディアルフロートレイを備えた有堰あるいは無堰棚段式蒸留塔を有する装置、規則充填物を充填した精留塔を有する装置、および、不規則充填物を充填した精留塔を有する装置等も採用することができる。これらを組み合わせて使用することもできる。蒸留による軽沸分除去は、連続式でも回分式でも半回分式でもよい。
【0035】
蒸留による軽沸分の分離では、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどでの重合を防止するために、空塔や蒸留塔やコンデンサーなどに重合禁止剤を添加することが好ましい。好ましい重合禁止剤の種類は、後述する重合禁止剤を使用することができ、好ましい重合禁止剤の添加量は、存在する(メタ)アクリル酸エステル類の総量に対して、後述するのと同じ量範囲が採用できる。
【0036】
なお、重合禁止剤は、そのまま粉体状態や液体状態で添加してもよく、液体に溶解させた溶液として添加してもよい。溶液として添加する方法が好ましく、留出液組成物と同じ組成物、留出液組成物中の1成分、留出液組成物中の複数成分の溶液として添加する方法が好ましい。
【0037】
このような処理によって分離できる軽沸分としては、過剰に使用されたり未反応のままであったりした原料の(メタ)アクリル酸エステル類や共沸溶媒、副生する低級アルキルアルコールなどがある。
【0038】
軽沸分分離工程で除去された軽沸分を回収すれば、再利用することができる。例えば原料の(メタ)アクリル酸エステル類や共沸溶媒などのエステル交換反応に有用な軽沸分であれば、再びエステル交換反応に供給することができる。
【0039】
−N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の分離−
化合物Xを分離した反応液から、原料として用いたN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類を分離する。分離方法としては蒸留による分離が好ましい。
【0040】
蒸留温度は、蒸留ボトムの温度の下限が20℃以上、上限が180℃以下に設定できる。下限は、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、上限は、170℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましく、150℃以下が特に好ましい。
【0041】
−(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の分離−
化合物Xを分離した反応液から、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を分離する。分離方法としては蒸留による分離が好ましい。
【0042】
蒸留温度は、蒸留ボトムの温度の下限が20℃以上、上限が180℃以下に設定できる。下限は、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、上限は、170℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましく、150℃以下が特に好ましい。
【0043】
−(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類−
化合物X分離工程および精製工程を経て、高純度の(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類が得られる。(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の純度は98%以上が達成できる。好ましくは純度98.5%以上、より好ましくは純度99%以上である。(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の用途としては特に限定されず、例えば、医農薬原料、合成中間体、更に重合性材料として広範囲に用いることができる。前記した従来の(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類と同様の具体的用途にも、勿論、有用である。
【0044】
―実施における好ましい例―
本発明における「アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む液」とは、ジルコニアアセチルアセトナートと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ジブチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ジオクチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ジブチルスズジアセテートと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液、ジブチルスズジラウレートと(メタ)アクリル酸モルホリノアルキルを含む液などが挙げられる。これらの中でも、ジルコニアアセチルアセトナートと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジブチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジオクチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジブチルスズジアセテートと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジブチルスズジラウレートと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液などが好ましく、ジルコニアアセチルアセトナートと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジブチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジオクチルスズオキサイドと(メタ)アクリル酸モルホリノエチルを含む液などがより好ましく、ジルコニアアセチルアセトナートとアクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジブチルスズオキサイドとアクリル酸モルホリノエチルを含む液、ジオクチルスズオキサイドとアクリル酸モルホリノエチルを含む液などがさらに好ましい。
【0045】
以下、上記反応と本発明における方法とを組み合わせて、更に本発明を具体的に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り当該方法に限定されるものではない。
【0046】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル類と、下記一般式(2)で表されるN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類とを用い、化合物Xを触媒とするエステル交換反応によって、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を製造する方法であって、前記化合物X存在下におけるエステル交換反応で前記(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液を得る工程(以下、「反応工程」と称する)と、前記反応工程のあとで前記(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する化合物X分離工程と、前記化合物X分離工程のあとで前記化合物Xが分離された粗精製液を精製して、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を得る精製工程とを含む。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
−反応工程−
化合物Xを触媒とするエステル交換反応で(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液を得る工程である。
【0051】
−使用材料−
<(メタ)アクリル酸エステル類>
前記一般式(1)で表される。
【0052】
一般式(1)中のRで示される炭素数1から6のアルキル基の具体例として、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好適に用いられる。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル類の具体例として、以下の化合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルである。これらは、単独あるいは混合物として用いることができる。
【0054】
<N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類>
前記一般式(2)で表される。
【0055】
一般式(2)中のRは炭素数2から10の有機残基である。
前記一般式(2)中のR4で表される有機残基とは、例えば、炭素数2〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合および/またはエステル結合により酸素原子を有する炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜10の置換されてもよい芳香族基等が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜6のアルキレン基、構造中にエーテル結合により酸素原子を有する炭素数2〜6のアルキレン基が好適である。
【0056】
具体的には、以下の化合物Xが挙げられる。N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N−(3−ヒドロキシプロピル)モルホリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)モルホリン、N−(2−ヒドロキシイソプロピル)モルホリン、N−(4−ヒドロキシブチル)モルホリン、N−(3−ヒドロキシイソブチル)モルホリン、N−(6−ヒドロキシヘキシル)モルホリン、N−(4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル)モノモルホリン、N−(p−(ヒドロキシメチル)フェニル)モルホリン、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)モルホリン、N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)モルホリン、N−(2−(2−ヒドロキシプロピオキシ)プロピル)モルホリン。
【0057】
これらの中でも、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N−(3−ヒドロキシプロピル)モルホリン、N−(2−ヒドロキシイソプロピル)モルホリン、N−(4−ヒドロキシブチル)モルホリン、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)モルホリンが好適に用いられる。
【0058】
<化合物X:触媒>
具体的には以下の化合物が挙げられる。リチウムアセチルアセトナート、ジルコニアアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジブトキシスズアセチルアセトナート、ジブトキシチタンアセチルアセトナート等のアセチルアセトナート錯体;ジメチルスズオキサイド、メチルブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のジアルキルスズ化合物;ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド等のジスタノキサン;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等のジアルキルスズジカルボン酸塩が挙げられる。これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0059】
これらの化合物Xの中でも、ジルコニアアセチルアセトナート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが好適に用いられる。
【0060】
−エステル交換反応−
化合物X存在下で、特定の(メタ)アクリル酸エステル類と、N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類とを反応させて、特定の(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を生成させる。
【0061】
−反応モル比−
前記原料となる(メタ)アクリル酸エステル類とN−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類との反応モル比を、(メタ)アクリル酸エステル類/N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類=6/1〜1/5(モル比)に設定できる。5/1〜1/3がより好ましく、4/1〜1/2がさらに好ましく、3/1〜1/1が特に好ましい。反応モル比を適切に設定することで、収率や経済性を向上できる。
【0062】
−化合物X使用量−
前記化合物Xの使用量は、前記N−(ヒドロキシアルキル)モルホリン類1モルに対して、下限が0.0005モル以上、上限が20モル以下に設定できる。下限は、0.001モル以上がより好ましく、0.003モル以上がさらに好ましい。上限は、10モル以下がより好ましく、1モル以下がさらに好ましい。化合物Xが少な過ぎると十分な化合物X作用が発揮できず、化合物Xが多過ぎると不経済であるとともに副反応を起こし易くなる。
【0063】
−反応条件−
反応温度は、下限が40℃以上、上限が160℃以下に設定できる。下限は、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。上限は、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。副生するアルコールの沸点あるいは共沸温度以上であれば、副生物の除去が行い易い。
【0064】
反応圧力は、常圧、加圧および減圧の何れでもよい。また、反応時間は、目的の反応が完結するように、適宜設定できる。
【0065】
−水分量−
反応液の水分量を5質量%以下に設定しておくことが好ましい。より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。水分量を制限することで、選択率、収率、経済性などが向上できる。
【0066】
−酸素濃度−
反応系気相部の分子状酸素濃度は、下限を0.01容量%以上、上限を10容量%以下に設定できる。下限は、0.02容量%以上がより好ましく、0.05容量%以上がさらに好ましい。上限は、9容量%以下がより好ましく、8容量%以下がさらに好ましい。上記分子状酸素濃度の範囲が、収率、重合抑制、爆発回避、経済性の点で有効である。
【0067】
分子状酸素濃度の設定は、分子状酸素または空気等の分子状酸素を含むガスと、窒素やアルゴン等の不活性ガスとを、反応器に別々に供給したり、予め混合して供給したりすることにより行われる。
【0068】
−アルコール除去−
反応により副生するアルコールを反応系外へ除去することができる。副生アルコールの除去方法として、減圧下で反応を行う方法、共沸溶媒を用いて反応を行う方法、吸着剤の存在下で反応を行う方法等が採用できる。減圧下で反応を行う方法、共沸溶媒を用いて反応を行う方法が好ましい。
【0069】
共沸溶媒として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類を過剰に使用すると、共沸溶媒として機能する。
【0070】
共沸溶媒の使用量を、一般式(1)の(メタ)アクリル酸エステル類と一般式(2)のN −(ヒドロキシアルキル)モルホリン類の合計重量に対して、下限を0質量%以上、上限を300質量%以下に設定できる。上限は、200質量%以下がより好ましく、150質量%以下がさらに好ましく、100質量%以下が特に好ましい。上記使用量範囲が、収率、経済性の点で有効である。
【0071】
−重合禁止剤−
重合禁止剤の存在下で反応させることが、重合を抑制し、収率の点で好ましい。重合禁止剤としては、1種又は2種以上を用いることができる。重合禁止剤として、ラジカル重合禁止剤が使用できる。具体的には、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等のN−オキシル系重合禁止剤;等が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、好ましいラジカル重合禁止剤として、キノン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤、N−オキシル系重合禁止剤を挙げることができる。好ましい重合禁止剤は、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、アルキル化ジフェニルアミン、ジブチルジチオカルバミン酸銅、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等である。
重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル類に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が特に好ましい。また、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。上記重合禁止剤添加量の範囲が、収率の点、重合抑制の点および経済性の点で好ましい。
【0073】
−化合物X分離工程−
前述した通りである。
【0074】
−精製工程−
前述した通りである。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
<反応工程>
攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、液体添加ラインおよびオルダーショウ型精留塔(10段)を備えた3Lガラス製装置に、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン645.7g、アクリル酸メチル840.3g、フェノチアジン1.5g、ジブチルスズオキサイド3.0gを添加し、攪拌混合した。ガス吹込みラインより7容量%酸素(窒素バランス)を液相部に吹込みながらオイルバスにより還流温度まで昇温した。塔頂部温度がアクリル酸メチル/メタノールの共沸温度になるまで全還流し、共沸温度に達した時点を反応開始とした。塔頂部温度が共沸温度を維持するように還流比を調節しながら8時間反応を続けた。なお、副生するメタノールはアクリル酸メチルとの共沸混合物として反応系外へ留去させ、共沸混合物中のアクリル酸メチルと同質量のアクリル酸メチルを反応開始から反応終了まで連続的に反応系へ添加した。
【0077】
反応中、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸メチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるよう塔頂部より連続的に添加した。
【0078】
冷却後、GC−1700型ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製;以下「GC」と呼ぶ)により分析した結果、目的物であるアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチルの収率は97モル%であった。
<軽沸分分離工程>
攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、留出装置(留出ライン、コンデンサー、受器)および減圧装置を備えた2Lガラス製装置に、反応工程により得られた反応液1493.3gを添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、オイルバスにより内温を100℃に調整した。減圧装置により667hPaから徐々に67hPaまで減圧し、原料アクリル酸メチルおよび副生メタノールを留去した。軽沸分分離工程の操作時間は2.5時間であった。
【0079】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸メチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるようコンデンサーへ連続的に添加した。
<触媒分離工程>
軽沸分分離工程に連続して軽沸分分離工程のボトム残液を蒸留した。7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、減圧装置により17hPaに調整し、未反応N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチルを留出させ、粗精製液788.6gを得た。内温が125℃に到達した時点で終了とした。触媒分離工程の操作時間は4時間であった。
【0080】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるようコンデンサーへ連続的に添加した。
【0081】
得られた留出分およびボトム液をGCにより分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンの新たな発生は認められなかった。
<精製工程>
上記触媒分離工程までと同様の操作により得られた粗精製液783.8gおよびフェノチアジン1.6gを、攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、オルダーショウ型精留塔(10段)、および減圧装置を備えた2Lガラス製蒸留装置に添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、減圧装置により塔頂部圧力17hPaとした。135℃のオイルバスで加熱し、還流比5でN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンおよびアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル混合液252.8gを留去した。
【0082】
連続してボトム残液を、オイルバス温度150℃、還流比0.1として、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル513.6gを留出させた。精製工程の操作時間は10時間であった。
【0083】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるよう塔頂部より連続的に添加した。
【0084】
得られたアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液をGCにより分析した結果、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液の純度は99.3%であった。
【0085】
〔実施例2〕
触媒分離工程の操作温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
【0086】
その結果、工程b終了後に得られた留出分およびボトム液をGCにより分析したところ、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンが、工程b操作前より1.2質量%増加していた。
【0087】
また、このN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン増加により、精製工程cの操作時間が30分延長された。
【0088】
アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液の純度は99.2%であった。
【0089】
〔実施例3〕
<反応工程>
実施例1と同様の操作を行なった。
<触媒分離工程>
攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、留出装置(留出ライン、コンデンサー、受器)および減圧装置を備えた2Lガラス製装置に、工程aにより得られた反応液1493.3gを添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、オイルバスにより内温を100℃に調整した。減圧装置により667hPaから徐々に17hPaまで減圧した。留出量が低下すると内温を徐々に上昇させ、内温が125℃に到達した時点で終了とした。
【0090】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるようコンデンサーへ連続的に添加した。粗精製液1379.6g得た。触媒分離工程の操作時間は6時間であった。
【0091】
得られた留出分およびボトム液をGCにより分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンの発生は認められなかった。
<精製工程>
上記触媒分離工程までと同様の操作により得られた粗精製液1375.4gおよびフェノチアジン2.1gを、攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、オルダーショウ型精留塔(10段)、および減圧装置を備えた2Lガラス製蒸留装置に添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、オイルバスにより内温を100℃に調整した。減圧装置により塔頂部圧力を667hPaから徐々に17hPaまで減圧し、還流比0.1で原料アクリル酸メチルおよび副生メタノールの混合液591.1gを留去した。その後、135℃のオイルバスで加熱し、還流比5でN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンおよびアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル混合液257.4gを留去した。
【0092】
連続してボトム残液を、オイルバス温度150℃、還流比0.1として、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル507.3gを留出させた。精製工程の操作時間は12時間であった。
【0093】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるよう塔頂部より連続的に添加した。
【0094】
得られたアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液をGCにより分析した結果、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液の純度は99.2%であった。
【0095】
〔実施例4〕
反応工程の触媒をジルコニアアセチルアセトナート3.0gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
【0096】
その結果、反応工程での収率は98モル%であり、精製工程により得られたアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液の純度は99.4%であった。
【0097】
〔比較例1〕
実施例1の反応工程と同様の操作を行い、反応液を得た。
【0098】
該反応液1492.2gを、攪拌装置、温度計、ガス吹込みライン、オルダーショウ型精留塔(10段)、および減圧装置を備えた2Lガラス製蒸留装置に添加し、7容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に吹込みながら攪拌混合し、オイルバスにより内温を100℃に調整した。減圧装置により塔頂部圧力を667hPaから徐々に17hPaまで減圧し、還流比0.1で原料アクリル酸メチルおよび副生メタノールの混合液594.2gを留去した。その後、135℃のオイルバスで加熱し、還流比5でN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンおよびアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル混合液462.1gを留去した。
【0099】
連続してボトム残液を、オイルバス温度150℃、還流比0.1として、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル303.4gを留出させた。精製工程の操作時間は14時間であった。
【0100】
この間、1質量%メトキシヒドロキノンのアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液を、上昇蒸気量に対してメトキシヒドロキノンが200質量ppmとなるよう塔頂部より連続的に添加した。
【0101】
得られたアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液をGCにより分析した結果、アクリル酸2−(N−モルホリノ)エチル溶液の純度は97.9%であった。
【0102】
上記結果から、触媒であるジブチルスズオキサイドの存在下でアクリル酸2−(N−モルホリノ)エチルの精製を行うことにより、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンが発生し、製品純度および製品収率が低下していることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法。
(1)アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する工程(以下、「化合物X分離工程」と称する)。
(2)化合物Xを分離した液を精製する工程(以下、「精製工程」と称する)。
【請求項2】
下記工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類の製造方法。
(1)アセチルアセトナート錯体、ジアルキルスズ化合物、ジスタノキサン及びジアルキルスズカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下「化合物X」と称する)と、(メタ)アクリル酸モルホリノアルキル類を含む反応液から化合物Xを分離する工程(以下、「化合物X分離工程」と称する)。
(2)化合物X分離工程の前に軽沸分を分離する工程(以下、「軽沸分分離工程」と称する)。
(3)軽沸分の分離および化合物Xの分離を行なった後の液を精製する工程(以下、「精製工程」と称する)。

【公開番号】特開2006−290850(P2006−290850A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117646(P2005−117646)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)