説明

(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料の形成方法

本発明は、(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料の形成方法であって、その際、含水二酸化チタンが、小板状粒子上で堆積され、(a)α−ヒドロキシカルボン酸、特にグリコール酸又はシュウ酸、及びアミノ酸、特にグリシン、アラニン、バリン、アスパラギン酸(α−、β−及びγ−型)の存在下で、又はアミノ酸の存在下で、本方法及びそれらの使用によって得られた顔料に対してチタン堆積を実施することを含む方法に関する。該方法は、外生の金属及びTi(III)の不在下で実施しうる。本発明のルチル形TiO2で被覆された基材は、製造中に光沢、色、色の均一性、及び殆どない小さい粒子の形成物を含むスズ含有生成物の少なくとも同様の利点及び特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外生の金属及びTi(III)の不在下で(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料の形成方法に、その方法によって得られる顔料に、及びその使用に関する。
【0002】
DE1165182号は、炭素薄膜で雲母顔料を被覆した金属酸化物の被覆方法を記載しており、その際炭素薄膜は、酸素の不在下で炭化水素の熱分解によって得られる。
【0003】
DE19502231号は、(a)TiO2及びCブラックを含有する最外被覆の場合に1以上の被覆、又は(b)最外でTiO2を含有し、かつ次にCブラックを含有する場合に2以上の被覆を有する、層状の基材に基づく暗い体質顔料を有する有効顔料を開示している。該顔料は、液体媒体なしに、金属酸化物で被覆された基材と、Cブラックとを高速撹拌機を使用して混合し、水性媒体中で被覆された基材を懸濁し、そして酸化Tiの最外層を堆積し、被覆された基材を500〜1000℃で不活性ガスの条件下で還元反応させることによって得られる。
【0004】
US4076551号は、実質的に、基材粒子上で、粒子サイズ1mn.未満のカーボンブラック粒子を含有する水性懸濁液中で、カーボンブラックを含有する金属水酸化物又はオキシ塩化ビスマス層の沈着物からなり、かつその生成物を洗浄し、乾燥し、そして場合により焼成する、カーボンブラックを含有する顔料の製造方法を記載している。
【0005】
GB2268504号は、カーボンブラックを含有する膜が、アニオン又はカチオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤、並びに有機機能性シラン化合物によって固定されることを特徴とする、カーボンブラックで被覆された小板状基材を含有する、改良された耐摩擦性を有する顔料を記載している。
【0006】
EP675175号は、1つ以上の金属酸化物及びコロイド状有機粒子で、及び場合によりオルガノシランで被覆された基材の、700℃より高い温度で酸素の不在下での熱分化によって得ることができる、炭質顔料を記載している。該顔料は、金属塩が加水分解される値までpHを調節するための塩基又は酸を添加する場合に、加水分解可能な金属塩溶液及び水性有機コロイド溶液を、同時にしかし単独で水性基材懸濁液に添加し、場合によりオルガノシラン及び/又は水性有機コロイド溶液を添加し、被覆された基材を分離し、洗浄しそして乾燥し、並びに700℃より高い温度で、酸素の不在下で該基材を焼成することを含む方法によって製造される。コロイド状有機粒子の例は、デンプン、セルロース、ゼラチン又はそれらの誘導体である。
【0007】
US5753024号は、酸素を除外して、900〜1100℃で、SnO2及び他の金属酸化物並びにコロイド状有機粒子で被覆された基材(II)を熱分解することによって得られるSnを含有する灰色顔料(I)に関する。コロイド状有機粒子の例は、デンプン、セルロース、ゼラチン、デキストリン、又はデンプン、セルロース、ゼラチンもしくはデキストリンの誘導体である。
【0008】
EP750021号は、(A)有機コロイド粒子の熱崩壊によって得られた炭素でドープされた二酸化チタン、続いて(B)酸化鉄(III)層の多層被覆を含有する、金属酸化物で被覆された基材を基礎とする金色顔料を記載している。コロイド状有機粒子の例は、デンプン、セルロース、ゼラチン又はデキストリンの粒子である。
【0009】
WO2004104109号は、板状の顔料基材に関し、その際該顔料基材は、それらの上に炭素を含有する被覆を有し、該被覆は、熱分解された炭素を含有するイオン種を有する。
【0010】
真珠箔顔料は、プラスチックの組込み、自動車被覆、及び化粧品を含む種々の適用において広く使用される。雲母基材上で、二酸化チタンで被覆される真珠箔顔料は、高い屈折率を有する。該顔料は、完全に硬化された場合に、約1.5の屈折率を有する媒体、例えば塗膜、又はネイルエナメル膜中で、通常分散される。真珠箔顔料の屈折率は、従って、光の反射率が生じるべきである場合に、1.5よりも著しく高い必要がある。この高い屈折率は、二酸化チタン層によって提供され、その指数は、約2.4〜2.7で変動しうる。ルチル形の二酸化チタンは、アナターゼ形よりもより高い指数を有し、結果として、ルチル変性が、アナターゼ形よりもより大きい反射率を有する。従って、真珠箔顔料における二酸化チタンのルチル変性は、アナターゼ変性より望ましい。
【0011】
ルチル変性を好む多くの他の理由がある。該ルチル変性は、アナターゼ変性よりも、屋外曝露において安定である。二酸化チタンで被覆された基材のルチル変性は、よりよい光沢及び反射率、よりよい色及び色の均一性を有し、かつより少ない小さい粒子も含有する生成物をもたらす。基材上で二酸化チタンの形成中の加工工程において、該基材に堆積されない粒子が形成してよい。色素性TiO2と似ているそれらの小さい粒子は、光散乱を生じる。非常に多くの小さい粒子が存在する場合に、真珠光沢のある外観が、失われる又は減少されてよい。ルチル形の結晶形における基材の被覆方法は、アナターゼ形と比較して非常に少ない小さい粒子をもたらす。
【0012】
ルチル形における色素性TiO2の形成は、公知である。最も報告されている事例において、主な問題は、ルチル構造の形成であり、それというのも、被覆が、基材、例えば雲母上で製造されないからである。極めて平滑な表面、厚さの均一性、及び色の均一性の維持を含む、高品質の真珠箔顔料の形成において主に重要である他の問題は、関係ない。
【0013】
色素性TiO2の形成と比較して、雲母は、よく知られているように、アナターゼ指向性である。従って、雲母が含水二酸化チタンの層で被覆され、かつ従って洗浄、乾燥及び大抵750℃〜900℃の焼成を含む通常の加工方法を受ける場合に、形成された二酸化チタンは、アナターゼ形である。雲母の存在は、アナターゼ結晶形における配向に対して、TiO2を生じる。かかる顔料は、例えば、US3,437,515号、US3,418,146号及びUS3,087,828号において記載されている。
【0014】
ルチル結晶形が所望される場合に、添加剤の使用が要求されている。最も頻繁に、含水酸化スズの層は、最初に雲母の表面上で、続いて含水二酸化チタンの層を沈着される。この層をなした組合せが、加工処理及び焼成される場合に、その二酸化チタンは、ルチル形で配向される。これは、US4,038,099号及びUS4,086,100においても詳細に記載されている。酸化スズを使用して雲母基材上でルチル形TiO2を形成する他の方法も記載されている。
【0015】
多くの添加物が、それ自体ルチル形TiO2の形成を助けることができるが、雲母上でのルチル形TiO2の形成は、非常に特殊な添加物を要求する。雲母上でのTiO2の被覆は、平滑及び均一である必要がある。不規則な表面が形成される場合に、光散乱が起こり、かつその顔料は、真珠箔顔料としてもはや機能しない。TiO2の被覆は、強く雲母にも堆積する必要もあり、そうでなければTiO2の被覆は、加工中に雲母から分離され、かなりの破損及び光沢の損失をもたらしうる。光沢、色及び色の均一性が維持されることも必要である。小さな粒子の形成は、抑制される必要がある。そうでなければ、小さい粒子は、光を散乱し、かつ前記のように真珠光沢を減少しうる。従って、使用される添加剤は、多くの機能を実施する必要があり、さらにルチル結晶のディレクタである。ルチル変性に対してTiO2を配向することができる添加剤(スズ以外)を見出すと同時に、品質及び全ての他の所望の特性を維持することは難しい。
【0016】
US5,433,779号は、Fe、並びに1つ以上のZn、Ca及びMgイオンの低い濃度が、雲母上での含水二酸化チタンの沈着の開始前に被覆中に導入される場合に、その沈着は、含水酸化スズの層が添加されているかのように進行する。完全なルチルの形成が、達成される。
【0017】
US6,056,815号は、絶えず撹拌させた小板懸濁液の存在下でTi(III)塩溶液を沈着することによりチタンの開始層を有する雲母の小板基材を最初に被覆することによって、雲母を被覆させるルチル形二酸化チタンの製造方法を教示している。その沈着は、有利には、約2〜3、有利には約2.4〜2.8のpHを調整することによって達成される。2よりも著しく低いpHは、アナターゼ構造、又はせいぜい、アナターゼ及びルチルの混合物を有する被覆をもたらす一方で、3よりも著しく高いpHは、大抵凝集を引き起こす。その後、含水二酸化チタンは、四塩化チタン槽からTi(III)層上で沈着される。この方法は、非常に高価であり、感受性があり、かつ取扱いが難しい、Ti(III)化合物の使用を要求する。TiCl3の加水分解は、例えば酸化を妨ぐために不活性雰囲気下で厳しく調整されるべきであり、かつTiCl3加水分解中のpH調整は、重要であり、さらに、それらの理由のために、TiCl4付加の開始は、不活性雰囲気下で同様に行われる必要がある。
【0018】
US6936348号は、場合により、白金、白金化合物、パラジウム及びパラジウム化合物からなる群から選択された少なくとも1つの要素を基材に結合し、そして基材上でルチル形の結晶を、55〜85℃の温度及び1.3以上のpHを有するチタン含有溶液からの中和反応によって堆積することを含む、ルチル形の二酸化チタンを堆積する方法を開示している。
【0019】
従って、基材、例えば雲母上で二酸化チタンのルチル変性を形成するが、全ての他の所望の特徴をさらに維持するためのスズ以外の添加物がある一方で、酸化スズの使用は、市販のルチル形二酸化チタンで被覆される雲母を製造するために使用される最も一般的な方法である。
【0020】
しかし、ルチル形TiO2で被覆された基材、例えば雲母を製造するためのスズの使用に対して、2つの主な欠点がある。まず最初は、酸化スズが、食品との接触に使用されるべきであるポリマー組成物において許可されていないことである。従って、酸化スズを含有するあらゆる高品質の真珠箔顔料又は干渉顔料は、ポリマー膜に色を使用することができない。第二には、いくつかの国において、酸化スズの存在が、市販の製品において許可されていないことである。従って化粧品の製造は、アナターゼ形の製品のみを有するかかる国に向けた化粧品製品を調合すること、及び世界の他の国々のためにルチル形製品で調合された同様の製品の第二系列を有すること、又は全世界のための単一のアナターゼ形の製品系列を有することのいずれかの選択に直面している。その結果、ルチル形TiO2で被覆された製品は、よりよい色、色の均一性、及び光沢を有するが、世界的に使用されるための食品と接触しているポリマー調合物及び化粧品系列は、アナターゼ形の製品を使用する。
【0021】
JP59033364号によって、フレークの雲母粒子、四塩化チタン、及び多塩基有機酸又は多塩基ヒドロキシ有機酸を、水性媒体中で加熱することによって混合して、薄膜において雲母粒子の表面上で有機酸の含水チタン塩を堆積し、又は得られた粒子を、脱水、熱分解のために燃焼し、そして該チタン塩を酸化する。使用されるべき多塩基有機酸又は多塩基ヒドロキシ有機酸は、水溶液中でチタン酸塩と反応することによって有機酸のチタン酸塩を形成するものであり、それらは、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、及びそれらの誘導体を含む。雲母を、有機酸顔料の含水チタン酸塩によって燃焼する条件における違いは、アナターゼ形又はルチル形の酸化チタンの選択的な製造を可能にする。JP59033364号において記載されている方法は、雲母上でTiO2の被覆が、十分に平滑及び均一ではない欠点を有する。
【0022】
従って、本発明の1つの目的は、TiO2被覆の品質を改良することである。本発明の他の目的は、製造中に光沢、色、色の均一性、及び殆どない小さい粒子の形成物を含むスズ含有生成物の少なくとも同一の利点及び特徴を有する、二酸化チタンが、ルチル結晶形であり、及びスズ又は他の添加物が、ルチル化を促進するために使用されない、二酸化チタンで被覆された基材の真珠箔顔料を提供することである。本発明の前記の及び他の目的は、以下の詳細な説明から、通常の技術の当業者に明らかである。
【0023】
驚くべきことに、TiO2前駆物質が、アミノ酸を含有する場合に、TiO2被覆の品質は、改良される。アミノ酸は、二酸化チタン粒子のサイズに影響し、その際基材の表面上での凝集は、干渉色に対して特徴付ける層を導く。凝集サイズは、アミノ酸の選択に及びpHに依存する。被覆の他の改良は、アミノ酸の混合、及び/又は定期的な堆積中のpHの変化において達成されうる。定期的なpHの変化が好ましく、及び直線的に又は段階的に最小値(実施例1.1)から最大値(実施例2.3)までのpHの変動を意味する。その周期は、10分から2時間、有利には1時間である。
【0024】
アミノ酸の例は、アラニン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、システイン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、グルタミン酸、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、バリン、チロシン、及びアスパラギンである。現時点で最も好ましいアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、及びアスパラギン酸(α−、β−及びγ−型)である。
【0025】
TiO2前駆体が、さらにα−ヒドロキシカルボン酸、例えばグリコール酸又はシュウ酸を含有する場合に、基材上で沈着される含水二酸化チタンの層は、ルチル形で配向する。二酸化チタンのルチル形の結晶化は、保護雰囲気、例えばアルゴン下で、又は空気中で、500℃〜1000℃、特に600〜800℃より高い焼成後にさらに改良される。
【0026】
焼成が、真空下で、及び/又は保護雰囲気、例えばアルゴン下で行われる場合に、炭素は、TiO2層を含有する炭素をもたらす、α−ヒドロキシカルボン酸及び/又はTiO2中で含有されるアミノ酸から形成される。
【0027】
従って、本発明は、
(A)小板状基材、及び
(C)炭素を含有する(ルチル形)二酸化チタン層
を含有する顔料に関する。
【0028】
TiO2層内に取り込まれる炭素は、吸収層として作用し、その際一般的にTiO2層を含有する炭素は、5〜50nm、有利には5〜20nmの厚さを有する。
【0029】
その顔料は、TiO2層を含有する1つ以上の炭素を含有してよい。
【0030】
本発明の好ましい一実施態様において、該顔料は、以下の層構造を有する:TRASUB/D/Y、TRASUB/Y/D、又はTRASUB/Y/D/YもしくはTRASUB/D/Y/D、例えばTRASUB/TiO2/Y、TRASUB/Y/TiO2、TRASUB/Y/TiO2/Y、又はTRASUB/TiO2/Y/TiO2、その際TRASUBは、透明又は低い屈折率を有する半透明の基材、特に天然もしくは合成雲母、他の層状ケイ酸塩、ガラス、Al23、SiOz、特にSiO2、SiO2/SiOx/SiO2(0.03≦x≦0.95)、SiO1.40-2.0/SiO0.70-0.99/SiO1.40-2.0、又は0.70≦z≦2.0、特に1.40≦z≦2.0を有するSi/SiOzであり、Yは、TiO2層を含有する炭素であり、かつDは、低い屈折率の金属酸化物、例えばSiO2、Al23、AlOOH、B23もしくはそれらの混合物、有利にはSiO2、又は高い屈折率の金属酸化物、例えばTiO2、ZrO2、Fe23、Fe34、Cr23、ZnO、もしくはそれらの酸化物の混合物、有利には(ルチル形)TiO2である。層Dの厚さは、使用される金属酸化物に依存し、かつ一般的に20〜600nmである。
【0031】
本発明の好ましい他の実施態様において、該顔料は、以下の層構造を有する:M/X/Y、例えばAl(50〜1000nm)/X(100〜600nm)/Y(5〜50nm)、その際Mは、Ag、Al、Au、Cu、Cr、Fe、Ge、Mo、Ni、Si、Ti、又はそれらの合金、例えば真鍮もしくは鋼、有利にはAlであり、Yは、TiO2層を含有する炭素であり、かつXは、0.70≦z≦2.0、有利には1.0≦z≦2.0、最も有利には1.4≦z≦2.0であるSiOzである。その金属層(基材)の厚さは、50〜1000nm、有利には50〜200nmの範囲である。
【0032】
TiO2層を含有する炭素は、α−ヒドロキシカルボン酸及び/又はアミノ酸の存在下でTiO2を沈着することによって得られ、その際有機金属の一部は、TiO2被覆内で閉じこめられる。真空下及び/又は保護雰囲気、例えばアルゴン下での、300〜800℃、特に600〜800℃での焼成後に、炭素は、TiO2層中で含有されるα−ヒドロキシカルボン酸及び/又はアミノ酸から形成される。
【0033】
従って、本発明は、
(a)α−ヒドロキシカルボン酸、特にグリコール酸又はシュウ酸、及びアミノ酸、特にグリシン、アラニン、バリン、アスパラギン酸(α−、β−及びγ−型)の存在下で、並びにスズの不在下で、又はアミノ酸の存在下で、チタン堆積を実施すること
を含む、(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料の形成方法に関し、その際含水二酸化チタンが、小板状粒子上で堆積(続いて焼成)される。
【0034】
"α−ヒドロキシカルボン酸及び/又はアミノ酸の存在下で"という言葉は、α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸の同時の存在だけでなく、α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸のその後の存在も含まない。すなわち、TiO2は、例えば、最初にα−ヒドロキシカルボン酸の存在下で、そしてアミノ酸の存在下で沈着されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ルチル形TiO2被覆を含有する本明細書の比較実施例1によって得られたAl23フレークのX線回折スペクトルを示す。
【図2】図2は、アナターゼ形TiO2被覆を含有する本明細書の比較実施例2によって得られたAl23フレークのX線回折スペクトルを示す。
【0036】
一実施態様において、本発明の方法は、整然と、(a)小板状粒子と、低いpHでチタン塩及びアミノ酸を含む被覆槽とを接触し、かつ小板状粒子を、酸性pHで含水の形の二酸化チタンで、低いpHでチタン塩を含む被覆槽からの堆積によって被覆することを含む。
【0037】
工程(a)におけるpHは、有利には1.2〜2.5である。
【0038】
TiO2層の沈着後に、(b)二酸化チタンで被覆された粒子を、被覆槽から取り出し、そしてそこから過剰酸及び不純物を除去するために洗浄し、そして(c)500〜1000℃、特に600〜800℃の温度で焼成して、その上からルチル結晶における二酸化チタンの半透明被覆を製造する。
【0039】
チタン塩水溶液を、被覆される材料の懸濁液にゆっくりと添加し、その際懸濁液は、約50〜100℃、特に70〜90℃に加熱され、そして続いて約0.5〜5、特に約1.2〜2.5の定常pH値を、塩基、例えばアンモニア水溶液又はアルカリ金属水酸化物水溶液中で同時に測定することによって維持する。沈着されたTiO2の所望の層の厚さを達成してすぐに、チタン塩溶液及び塩基の添加を中止する。出発溶液中でのAl23又はMgOのための前駆体の添加は、TiO2層の形態を改良するための方法である。
【0040】
原則として、TiO2のアナターゼ形は、出発顔料の表面上で形成する。しかしながら、少量のSnO2の添加によって、ルチル構造を形成させることが可能である。例えば、WO 93/08237号において記載されているように、二酸化スズを、二酸化チタンの沈着の前に堆積することができ、かつ二酸化チタンで被覆された製品は、700〜900℃で焼成されうる。場合により、SnO2の堆積は、アミノ酸の存在下で行われうる。
【0041】
本発明の特に好ましい一実施態様において、基材フレークを、密閉した反応器中で蒸留水と混合し、そして約90℃で加熱する。そのpHを、約1.8〜2.2まで調整し、かつTiOCl2、HCl、グリシン及び蒸留水を含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によってpHを一定(1.8〜2.2)に保つ間に、ゆっくりと添加する。アミノ酸、例えばグリシンの添加によって、TiO2の沈着中に、形成されるべきTiO2被覆の品質が改良される。有利には、TiOCl2、HCl、及びグリシン、並びに蒸留水を含有する配合物を、水中で基材フレークに添加する。
【0042】
本発明の他の実施態様において、ルチル形二酸化チタンの堆積層を有する小板状粒子を含有し、かつルチル形促進剤としてスズを含有しない真珠箔顔料は、含水二酸化チタンを、α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸の存在下で、小板状粒子上で沈着することによって達せられる。その方法は、一般的に、スズが使用されないことを除いてスズを含有するルチル形TiO2で被覆された雲母を形成するために使用されることと同様であり、かつその沈着は、α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸の存在下で行われる。α−ヒドロキシカルボン酸は、ルチル相を生じるために使用される。アミノ酸は、TiO2被覆の品質を改良するために使用される。
【0043】
本発明の方法において有利に使用されうるα−ヒドロキシカルボン酸の例は、ベンジル酸、1−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸、乳酸、フェニルグリコール酸(マンデル酸)、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシコハク酸、サリチル酸、特にグリコール酸、又はシュウ酸である。
【0044】
本発明のルチル形TiO2で被覆された基材は、製造中に光沢、色、色の均一性、及び殆どない小さい粒子の形成物を含むスズ含有生成物の少なくとも同一の利点及び特徴を有する。
【0045】
前記の実施態様において、本発明の方法は、整然と、及び外生の金属の不在下で、
(a)小板状粒子と、低いpHでチタン塩及びα−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸を含む被覆槽とを接触し、かつ小板状粒子を、酸性pHで含水の形の二酸化チタンで、低いpHでチタン塩を含む被覆槽から堆積することによって被覆すること
を含む。
【0046】
工程(a)におけるpHは、有利には1.2〜2.5である。
【0047】
TiO2層の沈着後に、(b)二酸化チタンで被覆された粒子を、被覆槽から取り出し、そしてそこから過剰酸及び不純物を除去するために洗浄し、そして(c)500〜1000℃、特に600〜800℃の温度で焼成して、その上からルチル結晶における二酸化チタンの半透明被覆を製造する。
【0048】
ルチル形二酸化チタンで被覆された小板状顔料は、新しく、かつさらに本発明の目的をもたらす。
【0049】
従って、本発明は、ルチル形二酸化チタンで被覆された小板状顔料に関し、その際該顔料は、粒子上で堆積される添加剤を方向付けする金属又は他のルチルを有さない。
【0050】
好ましい一実施態様において、該顔料は、
(A)小板状基材、及び
(B)炭素を含有するルチル形二酸化チタン層を含有し、又は
(A)小板状基材、及び
(B)炭素を含有するルチル形二酸化チタン層、
(C)アルカリ又はアルカリ土類金属酸化物を、追加の構成成分として含有しうる、低い屈折率の金属酸化物、特にSiO2、Al23、AlOOH、B23、又はそれらの混合物の層、並びに
(D)高い屈折率の金属酸化物、特にTiO2、ZrO2、Fe23、Fe34、Cr23、ZnO、又はそれらの酸化物の混合物の層
を含有する多層顔料である。
【0051】
炭素を含有するルチル形二酸化チタン層は、半透明である。"半透明"は、該層が、光散乱を特徴としないことを意味する。該層を含有する材料の固有の光学特性(主に屈折の有効指数)のあらゆる可能な変動は、最も短い可視波長(380nm)よりも10倍未満短い空間尺度である。
【0052】
好適な小板の形状をした基材は、透明、部分的に反射性、又は反射性である。それらの例は、天然の雲母状酸化鉄(例えばWO99/48634号におけるような)、合成及びドープ雲母状酸化鉄(例えばEP−A−068311号におけるうな)、雲母(黒雲母、バーミキュライト、絹雲母、白雲母、金雲母、蛍光金雲母、カオリナイト、又は同類)、又はあらゆる合成雲母(合成蛍光金雲母)、塩基性炭酸鉛、フレーク状硫酸バリウム、MoS2、SiO2、Al23、TiO2、ガラス、ZnO、ZrO2、SnO2、BiOCl、酸化クロム、BN、MgOフレーク、Si34、及びグラファイトである。特に好ましい基材は、雲母、SiO2フレーク、Al23フレーク、TiO2フレーク、及びガラスフレークである。
【0053】
他の好ましい実施態様は、コアとして平坦な金属粒子の使用である。好適な金属粒子の例は、Ag、Al、Au、Cu、Cr、Fe、Ge、Mo、Ni、Si、Ti、又はそれらの合金、例えば真鍮もしくは鋼のフレーク、有利にはAlフレークである。その材料に依存して、天然の光学的に非干渉の酸化物層は、金属粒子の表面上で形成しうる。部分的に反射するコアは、有利には、380〜800nmの範囲で垂直にその表面に落ちる光の少なくとも35%の反射率を有する。
【0054】
小板状基材の追加の例は、小板状有機顔料、例えばキナクリドン、フタロシアニン、フルオロルビン、赤ペリレン、又はジケトピロロピロロールである。
【0055】
本発明の方法は、半透明のルチル形二酸化チタンで被覆された小板の形状をした基材の形成に好適である。コア粒子のサイズは、それ自体重要ではなく、かつその粒子の使用に適応させることができる。一般に、該粒子は、約1〜200μm、特に約5〜100μmの長さ、及び約0.05〜5μm、有利には0.1〜2μmの厚さを有する。小板状の形状を有する粒子は、約2:1〜約1000:1の長さ:厚さのアスペクト比、及び3:1〜1:1の長さ:幅の比を有する、2つの実質的に平坦及び平行な表面を有するようなものであることを理解する。
【0056】
基材の上部で少なくとも1つの半透明のルチル形酸化チタン層を有する、透明、又は低い屈折率を有する半透明の基材を基礎とした小板状粒子、特に天然、又は合成雲母、他の層状ケイ酸塩、ガラス、Al23、SiOz、特にSiO2、SiO2/SiOx/SiO2(0.03≦x≦0.95)、SiO1.40-2.0/SiO0.70-0.99/SiO1.40-2.0、又は0.70≦z≦2.0、特に1.40≦z≦2.0を有するSi/SiOzが好ましい。半透明のルチル形TiO2層の上部で、低い屈折率の金属酸化物、例えばSiO2、Al23、AlOOH、B23又はそれらの混合物、有利にはSiO2を適用し、そして後者の層の上部でさらにルチル形TiO2層を適用することによって、より濃い色、及びより透明である顔料を得ることができる(EP−A−892832号、EP−A−753545号、WO93/08237号、WO98/53011号、WO9812266号、WO9838254号、WO99/20695号、WO00/42111号、及びEP−A−1213330号)。
次の層構造を有する顔料が、特に好ましい:
【表1】

その際、TRASUBは、透明、又は低い屈折率を有する半透明の基材、特に特に天然、又は合成雲母、他の層状ケイ酸塩、ガラス、Al23、SiOz、特にSiO2、SiO2/SiOx/SiO2(0.03≦x≦0.95)、SiO1.40-2.0/SiO0.70-0.99/SiO1.40-2.0、又は0.70≦z≦2.0、特に1.40≦z≦2.0を有するSi/SiOzであり、
Yは、TiO2層を含む炭素であり、かつ
STLは、半透明の層、例えばCu、Ag、Cr、もしくはSnの半透明の金属層、又は半透明の炭素層である。
【0057】
該小板状基材は、有利には、雲母、SiO2フレーク、Al23フレーク、及びガラスフレークから選択される。
【0058】
本発明の方法は、制限されることなく、基材としてAl23に基づいて説明される。Al23フレークは、例えば、US4374119号、JP−B−03−72527号、JP−A−04−39362号、Eur.Coat.J.、1999年4月、90〜96頁、WO2004060804号及びWO2006101306号において記載されている。例えば、主成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を含有する、WO2006101306号において記載されている、酸化アルミニウム(α−アルミナ)の小板を使用することが可能である。前記のフレーク状のα−アルミナ結晶は、厚さ0.04〜0.5μm、平均粒子直径15〜25μm、及びアスペクト比50〜250(請求項3)を有する。選択的に、1:10〜1:100の幅:直径のアスペクト比、直径0.1〜30ミクロンを有する、WO2004060804号において記載されている超微粒の板状アルミナ粒子を使用することができる。
【0059】
US3,553,001号において記載されている方法が、有利には、本発明の実施態様に従って、ルチル形二酸化チタン層の適用のために、使用される。被覆方法においては、Al23フレークを、有利には蒸留された水中で分散する。
【0060】
チタン塩水溶液を、被覆される材料の懸濁液にゆっくりと添加し、その際懸濁液は、約50〜100℃、特に70〜90℃に加熱されており、そして続いて約0.5〜5、特に約1.2〜2.5の定常pH値を、塩基、例えばアンモニア水溶液又はアルカリ金属水酸化物水溶液中で同時に測定することによって維持する。沈着されたTiO2の所望の層の厚さを達成してすぐに、チタン塩溶液及び塩基の添加を中止する。
【0061】
"滴定法"とも言われるこの方法は、チタン塩の過剰量を防ぐことによって区別される。それは、含水TiO2での平坦な被覆に必要であり、かつ被覆される粒子の使用できる表面によって単位時間毎に処理されうる量でのみ、加水分解のために、単位時間毎に供給することによって達成される。
【0062】
α−ヒドロキシカルボン酸、例えばグリコール酸の添加によって、TiO2の堆積中に、ルチル構造を形成させることが可能である。有利には、TiOCl2、HCl、及びグリコール酸、並びに蒸留水を含有する配合物を、水中で基材フレークに添加する。
【0063】
アミノ酸、例えばグリシンの添加によって、TiO2の堆積中に、形成されるべきTiO2被覆の質を改良することが可能である。有利には、TiOCl2、HCl、及びグリシン、並びに蒸留水を含有する配合物を、水中で基材フレークに添加する。
【0064】
α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸の添加によって、双方の効果が、達せされてよい。α−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸が、同時に、又は続いて添加されることが可能であってよい場合に、現在、最初にα−ヒドロキシカルボン酸を含有する配合物が、そしてアミノ酸を含有する配合物が添加されることが好ましい。
【0065】
α−ヒドロキシカルボン酸を、チタン1mol毎に、0.01〜1mol、特に0.01〜0.1molの量で添加する。アミノ酸を、チタン1mol毎に、0.01〜1mol、特に0.01〜0.1molの量で添加する。
【0066】
有利には、Al23フレークを、密閉した反応器中で、蒸留水と混合し、そして約90℃で加熱する。そのpHを、約2.2まで調整し、そしてTiOCl2、HCl、グリコール酸及び蒸留水を含む配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間に、ゆっくりと添加する。そのpHを、2.0まで調整し、そしてTiOCl2、HCl、グリシン及び蒸留水を含む配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間に、ゆっくりと添加する。そして、その生成物を濾過し、乾燥し、そしてアルゴン3mbar下で600℃で焼成する。
【0067】
Al23フレークの代わりに、雲母及びガラスフレークが、基材フレークとして使用されうる。その白色のために、白雲母の雲母が好ましい雲母であるが、金雲母、リピドライト(lipidolite)、又は合成雲母を含む他の雲母が、使用されうる。使用される雲母の平均粒子サイズは、約3ミクロンの平均粒子サイズから約100ミクロンの平均粒子サイズまで変動しうる。好適なガラスフレーク(Aガラス、Cガラス、Eガラス、又はECRガラス)は、5〜150μmの範囲における平均粒子サイズ、及び0.1〜2μmの厚さを有する。ガラスフレークのアスペクト比は、10〜300の範囲、有利には50〜200の範囲である。
【0068】
本発明による(有効)顔料は、例えば全体としてポリマーの着色、被覆(自動車部門のための被覆を含む、仕上げ剤を含む)、及びインクの印刷(オフセット印刷、凹版印刷、ブロンジング及びフレキソ印刷を含む)のための、並びに例えば化粧品における、インクジェット印刷における適用のための、織物、セラミック及びガラスのための上薬を乾燥する、並びに紙及びプラスチックを製造するレーザーための全ての慣用の目的のために使用されうる。かかる適用は、参考文献、例えば"High Performance Pigments"(H.M.Smith、Wiley VCH−Verlag GmbH、Weinheim、2002年)、"Special effect pigments"(R.Glausch et al.、Curt R.Vincentz Verlag、Hannover、1998年)から公知である。
【0069】
本発明による顔料が、干渉顔料(有効顔料)である場合に、それらは、ゴニオマチック(goniochromatic)であってよく、輝く、より高く飽和した(光沢のある)色をもたらす。それらは、従って、従来の、透明顔料、例えば有機顔料、例えばジケトピロロピロール、キナクリドン、ジオキサジン、ペリレン、イソインドリノン等との組合せに非常に特に好適であり、それは、有効顔料に対して同様の色を有するための該透明顔料に好適である。しかしながら、特に興味深い組合せの効果は、透明顔料の色及び有効顔料の色が、相補的である場合に、例えばEP−A−388 932号又はEP−A−402 943号と類似して得られる。
【0070】
従って、本発明は、ペイント、インクジェット印刷において、織物の染色のため、コーティング、印刷インク、プラスチック、化粧品、並びにセラミック及びガラスのための上薬を着色するための本発明の顔料の使用にも関し、かつペイント、印刷インク、プラスチック、化粧品、セラミック及びガラスは、本発明による顔料で着色される。
【0071】
本発明による(有効)顔料は、着色される高分子量の有機材料に対するあらゆる着色的に有効な量で添加されうる。高分子量の有機材料、及び高分子量の有機材料に対して、本発明の顔料の0.01〜80質量%、有利には0.1〜30質量%を含有する着色された基材組成物が、有利である。1〜20質量%、特に約10質量%の濃度が、しばしば粒子において使用されうる。
【0072】
高濃度、例えば30質量%以上の濃度は、たいてい、比較的低い顔料含有率を有する着色された材料を製造するための着色剤として使用されうる、濃縮物の形("マスターバッチ")であり、その際本発明による顔料は、市販の調合物における異常に低い粘度を有し、結果としてそれらはまだ巧く加工されることができる。
【0073】
有機材料を着色する目的のために、本発明による有効顔料が、単独で使用されてよい。しかしながら、種々の色調又は色彩効果を達成するために、他の色を付与した構成成分、例えば白、有色、黒、又は有効顔料のあらゆる所望の量を、本発明の有効顔料に加えて高分子量の有機材料に添加することも可能である。有色顔料が、本発明による有効顔料との混合物において使用される場合に、その全量は、高分子量の有機材料に対して、有利には0.1〜10質量%である。特に高いゴニオマチックは、10°の測定角度で、20〜340、特に150〜210の色調(ΔH*)における違いを有する、有効顔料を使用して行われた呈色、及び有色顔料を使用して行われた呈色で、本発明による有効顔料と、他の色、特に相補的な色の有色顔料との好ましい組合せによって提供される。
【0074】
本発明による顔料を有する高分子量の有機材料の着色は、マスターバッチの形で適切である場合に、例えば、かかる顔料を混合することによって実施され、その際その基材は、ロールミル、又は混合もしくは磨砕装置を使用する。そして、着色された材料は、それ自体公知である方法、例えばカレンダー加工、圧縮形成、押出し、被覆、流し込み、又は射出成形を使用して、所望の最終の形にされる。プラスチック産業において慣用のあらゆる添加剤、例えば可塑剤、充填剤又は安定剤は、顔料の取込前、又は取込後に、慣用の量で、ポリマーに添加されうる。特に、硬くない形状の物品を製造するため、又はそれらの脆性を低減するために、可塑剤、例えばリン酸、フタル酸又はセバシン酸のエステルを、高分子量化合物に、造形前に添加することが所望される。
【0075】
塗料を着色し、かつインクを捺印するために、本発明による高分子量の有機材料及び有効顔料は、慣用の添加剤、例えば充填剤、他の顔料、乾燥剤又は可塑剤と共に適切である場合に、同様の有機溶剤又は溶剤混合物中で細かく分散又は溶解され、その際、それは、別々に溶解もしくは分散されるべき個々の構成成分のために、又は共に溶解もしくは分散されるべき多くの構成成分のために、及びその後のみ、まとめられるべき全ての構成成分のために可能である。
【0076】
有利には、本発明による有効顔料を着色された高分子量の有機材料中での分散、及び本発明による顔料組成物の加工を実施して、有効顔料がより小さい部分に分解されないような比較的低い剪断力のみを生じる条件下にさらされる。
【0077】
プラスチックは、本発明の顔料を0.1〜50質量%、特に0.5〜7質量%の量で含む。被覆部門において、本発明の顔料は、0.1〜10質量%の量で使用される。ペイント及び印刷インクのための結合剤系の着色において、例えば凹版、オフセット印刷又はスクリーン印刷のために、その顔料は、0.1〜50質量%、有利には5〜30質量%、及び特に8〜15質量%の量で印刷インク中へ取り込まれる。
【0078】
本発明による有効顔料は、唇又は皮膚を化粧するため、及び髪又は爪を着色するためにも好適である。
【0079】
従って、本発明は、化粧品配合物又は調合物の総質量に対して、本発明による顔料、特に有効顔料0.0001〜90質量%、及び化粧品に好適なキャリヤー材料10〜99.9999質量%を含有する化粧品調合物又は配合物にも関する。
【0080】
かかる化粧品配合物又は調合物は、例えば、口紅、ほお紅、ファンデーション、マニキュア液及びヘアシャンプーである。
【0081】
その顔料は、単独で、又は混合物の形で使用されてよい。さらに、本発明の顔料と共に、例えば前記に記載されているような組合せで、もしくは公知の化粧品調合物中で、他の顔料及び/又は着色剤を使用することが可能である。
【0082】
有利には、本発明による化粧品配合物及び調合物は、本発明による顔料を、該調合物の総質量に対して0.005〜50質量%の量で含有する。
【0083】
本発明による化粧品配合物及び調合物に好適なキャリヤー材料は、かかる組成物中で使用される慣用の材料を含む。
【0084】
本発明による化粧品配合物及び調合物は、例えば、棒、軟膏、クリーム、乳濁液、懸濁液、分散液、粉末又は溶液の形であってよい。それらは、例えば、リップスティック、マスカラ配合物、ほお紅、アイシャドー、ファンデーション、アイライナー、粉おしろい又はマニキュア液である。
【0085】
本発明による化粧品配合物及び調合物は、従来の方法で、例えば、場合により混合物を融解するために加熱しながら、構成成分を共に混合又は撹拌することによって製造される。
【0086】
本発明の種々の特徴及び概要は、以下の実施例においてさらに説明される。それらの実施例は、当業者が本発明の範囲内で作用する方法を示すために提供され、かかる範囲が請求項において定義されるのみである場合に、本発明の範囲に対して制限されるべきではない。次の実施例において、及び本明細書及び請求項における他の場所に特に示されない限り、全ての部分及び百分率は、質量%であり、温度は、摂氏度であり、かつ圧力は、大気で、又は大気付近である。
【0087】
実施例
比較実施例1
Al23フレーク(Advanced Nanotechnology社製、コランダム、平均の厚さ約(360±100)nm、及びBET1m2/g)4.5gを、蒸留水300mlと、密閉した反応器中で混合し、そして90°まで加熱する。そのpHを2.2に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.2に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリコール酸5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、6時間、0.8ml/分の速度で添加する。そして、その生成物を濾過し、乾燥し、そして6時間アルゴン3mbar下で600℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2が、ルチル変性で存在することを示し(図1を参照)、かつ元素分析は、その生成物が、Ti13質量%を含有することを示す。その粉末は、空気中で黄色オレンジ色を示す。
【0088】
比較実施例2
実施例1を、TiOCl234g、37%HCl32g、及び蒸留水445gを含有する配合物を、TiO2層の形成中に提供することを除いて、繰り返す。X線回折分光は、TiO2が、アナターゼ変性で存在することを示す(図2を参照)。
【0089】
実施例1
Al23フレーク(Advanced Nanotechnology社製、コランダム、平均の厚さ約(360±100)nm、及びBET1m2/g)12gを、蒸留水300mlと、密閉した反応器中で混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.0に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.0に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリシン5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、16時間、0.4ml/分の速度で添加する。その生成物を濾過し、乾燥し、そして6時間、空気3mbar下で700℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2が、ルチル及びアナターゼ変性で存在することを示し(図3参照)、かつ元素分析は、その生成物が、Ti18.2質量%を含有することを示す。その粉末は、空気中ですみれ色−紫色を示す。
【0090】
実施例2
Al23フレーク(Advanced Nanotechnology社製、コランダム、平均の厚さ約(360±100)nm、及びBET1m2/g)12gを、蒸留水300mlと、密閉した反応器中で混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.2に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.2に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリコール酸5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、0.5時間、0.4ml/分の速度で添加する。そして、該pHを2.0で調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリシン5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、11時間、0.4ml/分の速度で添加する。その生成物を濾過し、乾燥し、そして6時間、空気3mbar下で700℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2が、ルチル変性で存在することを示し(図3参照)、かつ元素分析は、その生成物が、Ti12.2質量%を含有することを示す。その粉末は、空気中で黄色を示す。グリシンの存在は、TiO2層を形成する、TiO2クラスターのサイズを低減させる。より平滑で、より均一なTiO2表面が得られる。
【0091】
実施例3
Xymara(登録商標)dual pearl D25の12gを、蒸留水1.5lと、密閉した反応器中で混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.2に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.2に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリシン10.2g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、1時間、0.4ml/分の速度で添加する。
【0092】
そして、その生成物を濾過し、乾燥し、そして1時間アルゴン3mbar下で600℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2がルチル変性で存在することを示す。その粉末は、空気中で明るい青−緑色を示す。その乾燥粉末0.8gを、塩化ポリビニル(PVC Evipol(登録商標)SH 7020、EVC GmbH製、Frankfurt a.M)26.6gと、
ジイソデシルフタレート(Vestinol(登録商標)、Huels Chemie社製)92.21質量%
バリウム亜鉛カルボキシレート(Irgastab(登録商標)BZ561、Ciba Specialty Chemicals Inc.製)を基礎とする加熱安定剤3.60質量%、及び
エポキシ化大豆油(Rheoplast(登録商標)39、Ciba Specialty Chemicals Inc.製)4.19質量%
からなるマスターバッチ14.6mlとを混合する。30分湿潤した後、その混合物を、ロールミル上で、8分間、160℃のロール温度で、PVC膜に加工し、濃い青−緑色を有する。
【0093】
実施例4
Xymara(登録商標)dual pearl D25の12gを、蒸留水1.5lと、密閉した反応器中で混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.2に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.2に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリコール酸5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、1時間、0.4ml/分の速度で添加する。
【0094】
そして、その生成物を濾過し、乾燥し、そして1時間アルゴン3mbar下で600℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2がルチル変性で存在することを示す。その粉末は、空気中で明るい青−緑色を示す。その乾燥粉末0.8gを、塩化ポリビニル(PVC Evipol(登録商標)SH 7020、EVC GmbH製、Frankfurt a.M)26.6gと、
ジイソデシルフタレート(Vestinol(登録商標)、Huels Chemie社製)92.21質量%
バリウム亜鉛カルボキシレート(Irgastab(登録商標)BZ561、Ciba Specialty Chemicals Inc.製)を基礎とする加熱安定剤3.60質量%、及び
エポキシ化大豆油(Rheoplast(登録商標)39、Ciba Specialty Chemicals Inc.製)4.19質量%
からなるマスターバッチ14.6mlとを混合する。30分湿潤した後、その混合物を、ロールミル上で、8分間、160℃のロール温度で、PVC膜に加工し、明るい青−緑色を有する。
【0095】
実施例5
Xymara(登録商標)dual pearl D25の12gを、蒸留水1.5lと、密閉した反応器中で混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.2に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで15分間撹拌する。そして、該pHを2.2に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリシン10.2g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、1時間、0.4ml/分の速度で添加する。
【0096】
そして、その生成物を濾過し、乾燥し、そして1時間アルゴン3mbar下で600℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2がルチル変性で存在することを示す。その粉末は、空気中で明るい青−緑色を示す。その乾燥粉末0.8gを、塩化ポリビニル(PVC Evipol(登録商標)SH 7020、EVC GmbH製、Frankfurt a.M)26.6gと、
ジイソデシルフタレート(Vestinol(登録商標)、Huels Chemie社製)92.21質量%
バリウム亜鉛カルボキシレート(Irgastab(登録商標)BZ561、Ciba Specialty Chemicals Inc.製)を基礎とする加熱安定剤3.60質量%、及び
エポキシ化大豆油(Rheoplast(登録商標)39、Ciba Specialty Chemicals Inc.)4.19質量%
からなるマスターバッチ14.6mlとを混合する。30分湿潤した後、その混合物を、ロールミル上で、8分間、160℃のロール温度で、PVC膜に加工し、濃い青−緑色を有する。
【0097】
実施例6
Al23フレーク(Advanced Nanotechnology社製、コランダム、平均の厚さ約(360±100)nm、及びBET1m2/g)12gを、蒸留水300mlと混合し、そして90℃で加熱する。そのpHを2.0に調整し、そしてその懸濁液を、400rpmで撹拌した。そして、該pHを2.0で維持し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリコール酸5.11g、グリシン5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、1M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、7.5時間、0.4ml/分の速度で添加する。
【0098】
その生成物を濾過し、乾燥し、そして2時間、Ar下で700℃で焼成する。X線回折分光は、TiO2が、ルチル変性で存在することを示し、かつ元素分析は、その生成物が、Ti11.7質量%を含有することを示す。その粉末は、空気中で銀のような色を示す。
【0099】
実施例7
Al23フレーク(Advanced Nanotechnology社製、コランダム、平均の厚さ約(360±100)nm、及びBET1m2/g)12gを、蒸留水480mlと混合する。その懸濁液を、600ml/分で、閉ループ中で、マイクロ波加熱炉中で駆動する。該pHを1.8に調整し、そしてTiOCl234g、37%HCl32g、グリシン5.11g及び蒸留水445gを含有する配合物を、4M NaOH溶液の連続添加によって定常pHを維持している間、45分間、4ml/分の速度で添加する。電子オーブンによる焼成における懸濁液を、好適な冷却によって最大80℃で維持する。そしてその生成物を濾過し、乾燥し、そして2時間、Ar下で700℃で焼成する。銀色のような黄色がかった粉末を得る。X線回折分光は、TiO2がルチル変性で存在することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料の形成方法であって、その際、含水二酸化チタンを、小板状粒子上で堆積させ、該チタン堆積を(a)α−ヒドロキシカルボン酸、特にグリコール酸もしくはシュウ酸、及びアミノ酸、特にグリシン、アラニン、バリン、アスパラギン酸(α−、β−及びγ−型)、又はアミノ酸の存在下で、実施することを含む方法。
【請求項2】
連続して、
(a)小板状粒子と、チタン塩及びα−ヒドロキシカルボン酸及びアミノ酸、又はアミノ酸を含む被覆槽とを低いpHで接触し、かつ小板状粒子を、酸性pHで含水の形の二酸化チタンで、低いpHでチタン塩を含む被覆槽からの堆積によって被覆することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の工程(a)におけるpHが、1.2〜2.5である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
(b)二酸化チタンで被覆された粒子を、被覆槽から取り出し、そして該粒子を洗浄して、そこから過剰酸及び不純物を除去すること、かつ
(c)該粒子を500〜1000℃の温度で焼成して、その上にルチル結晶形における二酸化チタンの半透明被覆を製造すること
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(ルチル形)二酸化チタンで被覆された小板状顔料であって、ルチル形二酸化チタン層が、炭素を含有し、かつ該顔料が、場合によりその粒子上で堆積された金属又は他のルチル指向性の添加剤を有さない顔料。
【請求項6】
(A)小板状基材、及び
(B)炭素を含有するルチル形二酸化チタン層
を含有する、請求項5に記載の顔料。
【請求項7】
(A)小板状基材、及び
(B)炭素を含有するルチル形二酸化チタン層、
(C)アルカリ又はアルカリ土類金属酸化物を、追加の構成成分として含有しうる、低い屈折率の金属酸化物、特にSiO2、Al23、AlOOH、B23、又はそれらの混合物の層、並びに
(D)高い屈折率の金属酸化物、特にTiO2、ZrO2、Fe23、Fe34、Cr23、ZnO、又はそれらの酸化物の混合物の層
を含有する、請求項6に記載の顔料。
【請求項8】
前記の小板状基材が、雲母、SiO2フレーク、Al23フレーク、及びガラスフレークから選択される、請求項6に記載の顔料。
【請求項9】
ペイント、インクジェット印刷において、織物の染色のため、コーティング、印刷インク、プラスチック、化粧品、並びにセラミック及びガラスのための上薬を着色するための、請求項5から8までのいずれか1項に記載の顔料の使用。
【請求項10】
請求項5から8までのいずれか1項に記載の顔料で着色された、ペイント、印刷インク、プラスチック、化粧品、セラミック及びガラス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519395(P2010−519395A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551164(P2009−551164)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051910
【国際公開番号】WO2008/104467
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】