説明

(有機チオメチル)クロロシラン誘導体およびその製造方法

【課題】(有機チオメチル)クロロシラン誘導体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体:


(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示し;R2は炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示す。);第4級有機ホスホニウム塩、第3級アミン、または第4級有機アンモニウム塩触媒の存在下、ジクロロヒドロシラン化合物と有機チオメチルハロゲン化合物を脱ハロゲン化水素反応させることを特徴とする(有機チオメチル)クロロシラン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(有機チオメチル)クロロシラン誘導体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、水素−ケイ素結合を有するクロロヒドロシラン化合物と硫黄原子を含有する有機チオメチルハロゲン化合物との脱ハロゲン化水素反応を行う際に、反応触媒として第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミンおよび有機アンモニウム塩から選択された触媒を使用することによって、さらに低い反応温度の条件で少量の触媒でも脱ハロゲン化水素反応を効率よく行うことができ、反応後には触媒の回収および再使用も可能であるなど、全体として経済的な工程から構成されており、反応の結果として生成した目的物の分子構造内に塩素−珪素結合を有しているため様々な機能基の導入が可能であるので、機能性シリコン高分子合成用の単量体またはシラン系結合剤の原料として有用な新規(有機チオメチル)クロロシラン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄原子を含有する有機シラン化合物は、機能性シリコン高分子を生産する工程に用いられる産業的に有用な化合物である。硫黄を含有する有機シラン化合物の合成方法に係る公知の方法として、ヴォロンコフ(Voronkov)と彼の共同研究者らは1975年にRSNa(R=Et、Pr、(CH32CHCH2、(CH33C、Ph)とハロアルキルトリアルコキシシランをヘキサン溶媒下に反応させて硫黄を含有する新しい有機シラン化合物を合成したと報告している[非特許文献1]。但し、1,1,1−トリメトキシ−3−チオ−1−シラブタンの合成においてはヨウ化メタン(CH3I)とNaSCH2Si(OCH33を反応させて合成した。また、RSMgXとハロアルキルトリアルコキシシランをテトラヒドロフラン(THF)溶媒下でグリニャール反応させて硫黄原子を含有する有機シラン化合物をイン−シチュ(in situ)反応を通じて合成したと報告している[非特許文献2]。
【0003】
前述したように、現在まで知られている硫黄を含む有機シラン化合物の合成方法はアルコキシシラン化合物の合成に限定されている。また、現在まで知られている公知の方法は、反応性が大きく、様々な機能基の導入がさらに容易なクロロシリル基を有する化合物を合成できず、また、反応に用いられる重要な原料物質として(ハロアルキル)アルコキシシランを用いるため原料物質の供給のためには、制限されたアルケニルクロリドを使用するほかないという短所がある。特に、原料物質の供給のためにアルケニルクロリドを用いる反応の場合、溶媒の爆発性が問題となり、また、反応生成物として生成される塩を中和させるための別途の工程が追加されるなど、工業化するには相当の問題を抱えている。
なお、本発明者らは、第3級有機ホスフィン触媒の存在下で、アルキルハライドとクロロシランを脱ハロゲン化水素反応させて様々な有機ケイ素化合物を合成する方法を報告している[特許文献1、特許文献2]。
【0004】
【化1】

【0005】
また、本発明者らは、クロロメチル基を有する有機ケイ素化合物が第3級有機アミンや第3級有機ホスフィンのような有機塩基の存在下で水素−ケイ素結合を有するクロロシランと反応する場合、塩の形成によって、再使用のための還元が難しいという問題を解決し、第4級有機ホスホニウム塩を触媒として用いた方法を報告している[Jung, I.; Yoo, B.; Han, J.; Kang, S. U.S. Patent, 6,392,077]。この方法は、反応後に触媒の回収や再使用が容易であり、繰り返し使用することができるため、工程の経済性が高められるという長所がある。
しかし、水素−ケイ素結合を、同じクロロヒドロシラン化合物と硫黄原子を含有する有機チオメチルハロゲン化合物の脱ハロゲン化水素反応に第4級有機ホスホニウム塩、有機アミンまたは有機アンモニウム塩を触媒として用いて硫黄原子含有有機シラン化合物を合成した例はこれまで報告されていない。
【0006】
【特許文献1】韓国特許第306574号
【特許文献2】米国特許第6,251,057号
【非特許文献1】Voronkov, M. G.; Sorokin, M.S.; D' yakov, V.M.; Sigalov, M.V. Zhurnal Obshchei Khimii, 1975, 45(8), 1807-11
【非特許文献2】Sorokin, M. S.; Voronkov, M. G. Russian Journal of General Chemistry, 2001, 71(12), 1883-90
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、前述した従来の硫黄原子を含有する有機シラン化合物の製造方法上の問題を解消し、また、様々な機能基を導入できるように分子構造内にSi−Cl結合を有する(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を合成するために鋭意努力した。その結果、第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミンまたは有機アンモニウム塩を触媒として用いる脱ハロゲン化水素反応によって硫黄原子を含有する新規構造の有機シラン化合物とその製造方法を開発し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、新規の(有機チオメチル)クロロシラン誘導体およびその製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を特徴とする。
【化2】

【0009】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示し;R2は炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示す。)
また、本発明は、下記反応式1に示すように、第4級有機ホスホニウム塩、第3級アミン、第4級有機アンモニウム塩から選ばれた触媒の存在下で、下記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物と下記式(3)で表される有機チオメチルハロゲン化合物を脱ハロゲン化水素反応させて下記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を製造する方法を含む。
【0010】
【化3】

(式中、R1、R2、およびXはそれぞれ前記で定義した通りである。)
【発明の効果】
【0011】
本発明は、特定の触媒を用いる条件で、水素−ケイ素結合を有するクロロヒドロシラン化合物と硫黄を含む有機チオメチルハロゲン化合物を脱ハロゲン化水素反応によって、Si−C結合反応を行うことにより、硫黄を含む新規構造の有機シラン化合物を合成でき、また、従来の脱ハロゲン化水素反応に比べて少量の触媒でも反応が完結でき、さらに、使用済みの触媒は回収が容易であり特別な処理過程なしで直接再使用できるので非常に経済的な製造方法であり、歩留まりも高いため(有機チオメチル)クロロシラン誘導体の商業的生産に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、有機シラン化合物の分子構造内に硫黄原子とSi−Cl結合を同時に含む構造的特徴を有し、様々な機能基の導入が可能であるため、機能性シリコン高分子合成用の単量体およびシラン系結合剤の原料などに有用な新規構造の(有機チオメチル)クロロシラン誘導体とその製造方法に関する。
本発明による製造方法では、シラン系原料物質として従来の方法で通常用いられてきた(ハロアルキル)アルコキシシランの代わりに、工業的な生産が可能な前記式(2)で表されるクロロヒドロシランを用いることにより、通常の脱ハロゲン化水素反応に比べて比較的低い反応温度(70〜150℃)を必要とし、連続の製造工程も可能であるなどの工程上の有利な利点がある。特に、本発明による脱ハロゲン化水素反応を行うにおいて、触媒として用いられる第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミン、第4級有機アンモニウム塩は、少量でも十分な触媒活性を示すだけでなく、触媒の使用後回収が容易であるため、触媒の選択による工程上のまた他の有利な利点がある。
【0013】
本発明の脱ハロゲン化水素反応は、第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミン、第4級有機アンモニウム塩から選ばれた塩基触媒を用いる合成法であって、Si−H結合を有するクロロヒドロシラン化合物と硫黄原子を含有する有機チオメチルハロゲン化合物を脱ハロゲン化水素反応させることによって、硫黄を含有する新しい構造の有機シラン化合物を合成する。本発明による典型的な製造方法では、高温高圧に耐えられるステンレス鋼材質からなる反応槽内で、窒素雰囲気の条件下で、前記式(3)で表されるクロロヒドロシラン化合物と触媒を入れ、これに前記式(2)で表される有機チオメチルハロゲン化合物を入れた後栓をして反応させる。
その使用量においては、前記式(3)で表される有機チオメチルハロゲン化合物に対して、前記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物を1〜5のモル比で使用することが好ましい。また、触媒は少量使用し、具体的には、前記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物1モルに対して0.01〜1モルの範囲で使用する。
【0014】
前記カップリング反応に用いられる溶媒は反応物によって多少差異はあるが、脂肪族または芳香族炭化水素系列の有機溶媒、たとえば、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどを使用してもよく、場合に応じて、反応溶媒なしで反応を行ってもよい。
前記カップリング反応の温度は70〜150℃範囲、好ましくは100〜120℃範囲を保持する。
前記の反応条件下で1〜48時間反応させた後、反応が終了したら栓を開けてハロゲン化水素(HX)ガスを放出させ、反応混合物から触媒を分離した後、触媒が分離された反応混合物を分別蒸留して反応生成物を分離する。
【0015】
本発明は、反応に用いられた触媒を回収して再使用できる経済性のある製法発明ということにもその特徴がある。反応混合物から触媒を分離する方法としては次のような方法がある。第一の方法は、常圧または減圧の条件下で蒸留して触媒から反応混合物を分離する方法である。第二の方法は、反応混合物に同一体積のヘキサン溶媒を入れ、触媒を沈澱させ、濾過のような固体分離法によって触媒を回収する方法である。前述のような方法を通じて回収された触媒は、本発明による反応に再使用しても最初の反応に用いられた触媒と同様な収率で生成物が得られた。本発明者らの実験結果によれば、触媒を5回繰り返し使用しても初期と同様な触媒活性を示した。したがって、本発明による触媒である第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミン、または第4級有機アンモニウム塩は、触媒活性に優れているだけでなく、5回以上繰り返し使用することができることを確認できた。
前記触媒の回収率は90%以上と非常に高いので経済的に非常に有利である。特に、前記触媒を担体、たとえば、シリコン樹脂、シリカ、ゼオライトなどに固定化して使用する場合、反応後に回収して再使用するのに非常に便利である[Jung, I. N.; Cho, K. D.; Lim, J. C. Yoo, B. R. US Patent 4,613,491]。
【0016】
以下、本発明による製造方法に用いられる反応物質および触媒の種類についてさらに詳しく説明する。
前記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物は、クロロ原子を含むとともにSi−H結合を有する化合物であって、ジクロロシラン、トリクロロシラン、アルキルジクロロシランから選択使用してもよい。
前記式(3)で表される有機チオメチルハロゲン化合物は、ハロメチルアルキルスルフィドおよびハロメチルアリールスルフィドの中から選択使用する。具体的には、クロロメチルメチルスルフィド、クロロメチルフェニルスルフィドなどを使用してもよい。
また、本発明では、触媒として第4級有機ホスホニウム塩、トリアルキルアミンおよび第4級有機アンモニウム塩の中から選択使用する。
【0017】
第4級有機ホスホニウム塩としては、たとえば、下記式(4)または式(5)で表される化合物を使用してもよい。
(R'')4EX (4)
(式中、Eはリンまたは窒素原子を示し;Xはハロゲン原子を示し;R''は互いに同一または異なっているものであって、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、または
−Cn2n−C65(nは0〜6の整数);または、2つのR''が互いに共有結合で連結されてC4−C8環を形成してもよい。)
X(R'')3E−Y−E(R'')3X (5)
(式中、Eはリンまたは窒素原子を示し;Xはハロゲン原子を示し;R''は互いに同一または異なっているものであって、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、または−Cn2n−C65(nは0〜6の整数);Yは炭素数1〜12のアルキル基または選択的にアルキル基を含む芳香族基である。)
【0018】
前記式(4)で表される第4級有機ホスホニウム塩の具体的な化合物としては、テトラアルキルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムハライド、アルキルトリフェニルホスホニウムハライドなどを使用してもよく、さらに具体的には、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリドなどを使用してもよい。
前記式(5)で表される第4級有機ホスホニウム塩の具体的な化合物としては、ビス(クロロトリアルキルホスホニウム)アルキレン、ビス(クロロトリアルキルホスホニウム)フェニレン、ビス(クロロトリフェニルホスホニウム)アルキレン、ビス(クロロトリフェニルホスホニウム)フェニレンなどを使用してもよい。
トリアルキルアミン触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどを使用してもよい。
第4級有機アンモニウム塩触媒としては、テトラアルキルアンモニウムハライド、テトラフェニルアンモニウムハライド、アルキルトリフェニルアンモニウムハライド、ジアルキルジフェニルアンモニウムハライド、トリアルキルフェニルアンモニウムハライドなどを使用してもよく、具体的には、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラフェニルアンモニウムクロリド、メチルトリフェニルアンモニウムクロリド、ジエチルジフェニルアンモニウムヨージド、トリエチルフェニルアンモニウムクロリドなどを使用してもよい。
下記式(6)の有機塩基が第3級有機アミンであってもよい。
(R'')3N (6)
(式中、R''は互いに同一または異なっているものであって、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、または−Cn2n−C65(nは0〜6の整数)である。)
【0019】
前記化合物の無機または有機支持体に固定された化合物は触媒として用いられる。
前記触媒は化合物または塩の形態で使用されてもよいが、好ましくは、前記第4級有機ホスホニウム塩は担体、たとえば、シリコンレジン、シリカ、ゼオライト、その他の無機支持体、または有機高分子から選ばれるものを使用してもよい。また、本発明において触媒の担持のために用いられる担体は当分野で広く用いられる公知物質に過ぎず、本発明はその選択使用に対して特別に制限を置かない。
以上述べたように、本発明による製造方法は、一般的な有機シラン化合物の製造方法に比べて非常に経済的で効率的な方法であって、様々な(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を合成することが可能であり、工程の進行が非常に容易であり、製造コストも安価であるという長所がある。
【0020】
また、本発明で製造された前記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体は機能性シリコン高分子の合成に幅広く活用できるが、親水機能性置換基を含む変性シリコン化合物は界面活性剤として実生活に使用されている。従来の親水性変性シリコンは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドをシリコン高分子と結合した構造が一般的である。しかし、本発明で合成した前記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体は、硫黄原子を酸化させて親水性スルホキシドに容易に転換できる。一般的なジメチルスルフィドは、常温で過酸化水素で処理すると容易に酸化されて親水性ジメチルスルホンオキシドに転換されることが知られている(A. Kh. Sharipov, Russian Journal of Applied Chemistry, 2003, 76, 108-113)。このような特性を用いて疎水性である前記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を基質の表面に化学結合させてコーティングし、これを酸化させて基質の表面を親水性に転換させることも可能である。
【0021】
(実施例)
以上述べたような本発明を下記実施例によってさらに詳しく説明する。ただし、下記実施例ではクロロヒドロシラン化合物、有機チオメチルハロゲン化合物、第4級有機ホスホニウム触媒、有機アミン触媒、第4級有機アンモニウム触媒の代表的使用例のみを記載しているが、本実施例で使用された均等範囲内で他の化合物に取り替えて用いても等しい効果が得られるので、本発明は下記実施例の記載によって限定されない。
実施例1 メチルチオメチル−トリクロロ−シランの製造
【化4】

【0022】
オーブンで乾燥した250ml容量のステンレス鋼管からなる反応槽を、乾燥した窒素気体下で冷却した後、5.01g(0.0169mol)のテトラブチルホスホニウムクロリド、34.9g(0.361mol)のクロロメチルメチルスルフィドと138.1g(1.02mol)のトリクロロシランを入れた。反応槽の入口を栓で密封し、100℃で12時間反応させた後、反応物を減圧蒸留して52.2g(収率73.8%)のメチルチオメチル−トリクロロ−シランを得た。
1H−NMR(CDCl3,ppm)δ2.26(s,3H,CH3),2.41(s,2H,CH2
【0023】
実施例2 ジクロロ−メチル−メチルチオメチル−シランの製造
【化5】

【0024】
前記実施例1と同様な方法で、2.10g(0.00713mol)のテトラブチルホスホニウムクロリドと13.77g(0.143mol)のクロロメチルメチルスルフィドと49.2g(0.428mol)のジクロロメチルシランを100℃で12時間反応させて5.04g(収率20.2%)のジクロロ−メチル−メチルチオメチル−シランを得た。
1H−NMR(CDCl3,ppm)δ0.87(s,3H,SiCH3),2.27(s,3H,SCH3),2.28(s,2H,CH2
【0025】
実施例3 トリクロロ−フェニルチオメチル−シランの製造
【化6】

【0026】
前記実施例1と同様な方法で、0.552g(0.00187mol)のテトラブチルホスホニウムクロリドと2.97g(0.0187mol)のクロロメチルフェニルスルフィド、そして7.61g(0.0562mol)のトリクロロシランを120℃で12時間反応させて2.15g(収率44.6%)のトリクロロ−フェニルチオメチル−シランを得た。
1H−NMR(CDCl3, ppm)δ2.91(s,3H,CH2),7.21−7.42(m,5H,ArH)
【0027】
実施例4 ジクロロ−メチル−フェニルチオメチル−シランの製造
【化7】

【0028】
前記実施例1と同様な方法で、0.615g(0.00209mol)のテトラブチルホスホニウムクロリドと3.31g(0.0209mol)のクロロメチルフェニルスルフィド、そして7.23g(0.0628mol)のジクロロメチルシランを120℃で12時間反応させて1.82g(収率36.9%)のジクロロメチル(フェニルチオメチル)シランを得た。
1H NMR(CDCl3,ppm)δ0.84(s,3H,SiCH3),2.71(s,2H,CH2),7.19−7.37(m,5H,ArH)
【0029】
実施例5 メチルチオメチル−トリクロロ−シランの製造
【化8】

【0030】
1)トリエチルアミンの存在下で反応
前記実施例1と同様な方法で、1.21g(0.0120mol)のトリエチルアミン、1.16g(0.0120mol)のクロロメチルメチルスルフィドと8.13g(0.0600mol)のトリクロロシランを入れた。反応槽の入口を栓で密封し、100℃で12時間反応させた後、反応物を減圧蒸留して1.12g(収率47.8%)のメチルチオメチル−トリクロロ−シランを得た。
2)テトラブチルアンモニウムクロリド触媒の存在下で反応
前記実施例1と同様な方法で、0.301g(0.00108mol)のテトラブチルアンモニウムクロリド、1.04g(0.0108mol)のクロロメチルメチルスルフィドと4.39g(0.0324mol)のトリクロロシランを入れた。反応槽の入口を栓で密封し、100℃で12時間反応させた後、反応物を減圧蒸留して1.08g(収率51.0%)のメチルチオメチル−トリクロロ−シランを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体:
【化1】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示し;R2は炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示す。)
【請求項2】
第4級有機ホスホニウム塩、第3級アミン、または第4級有機アンモニウム塩から選ばれた触媒の存在下で、下記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物と下記式(3)で表される有機チオメチルハロゲン化合物を脱ハロゲン化水素反応させて下記式(1)で表される(有機チオメチル)クロロシラン誘導体を製造することを特徴とする(有機チオメチル)クロロシラン誘導体の製造方法:
【化2】

【化3】


【化4】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示し;R2は炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示し;Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項3】
前記第4級有機ホスホニウム塩が下記式(4)で表されることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
(R'')4EX (4)
(式中、Eはリンまたは窒素原子を示し;Xはハロゲン原子を示し;R''は互いに同一または異なっているものであって、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、または−Cn2n−C65(nは0〜6の整数);または、2つのR''が互いに共有結合で連結されてC4−C8環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記第4級有機ホスホニウム塩が下記式(5)で表されることを特徴とする請求項2記載の製造方法:
X(R'')3E−Y−E(R'')3X (5)
(式中、E、XおよびR''は請求項3で定義した通りであり;Yは炭素数1〜12のアルキレン基または選択的にアルキル基を含む芳香族基である。)
【請求項5】
下記式(6)の有機塩基が第3級有機アミンであってもよいことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
(R'')3N (6)
(式中、R''は請求項3で定義した通りである。)
【請求項6】
前記化合物の無機または有機支持体に固定された化合物が触媒として用いられることを特徴とする、請求項3、4および5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が、シリコン樹脂、シリカおよびその他の無機支持体または有機高分子から選ばれることを特徴とする請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記触媒が前記式(2)で表されるクロロヒドロシラン化合物1モルに対して0.01〜1モルの範囲で用いられることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項9】
前記カップリング反応が70〜150℃の範囲で行われることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項10】
前記カップリング反応が反応溶媒なしで行われることを特徴とする請求項2記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−265225(P2006−265225A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318365(P2005−318365)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(501226550)韓國科學技術研究院 (1)
【Fターム(参考)】