説明

(複数の)活性成分の徐放のための医薬製剤、ならびに特に治療上のその適用

本発明は、(複数の)活性成分AI、特に、(複数の)タンパク質および(複数の)ペプチドの徐放のための水性コロイド懸濁液をベースとする新規な医薬製剤、ならびにこれらの製剤の、特に治療上の適用に関する。本製剤は、生分解性、水溶性であり、疎水性の基(HG)のα-トコフェロールおよび少なくとも部分的にイオン化されているイオン化親水性基(IG)のGluを保有する、両親媒性のポリマーPOのマイクロメトリック粒子をベースとする低粘度の水性コロイド懸濁液を含み、前記粒子は、等張性の条件下、pH=7.0で自発的にAIと非共有結合するのに適し、0.5と100μmの間のサイズである。この懸濁液は、POのIH基の極性と反対の極性を有する多価イオン(Mg++)を含み、割合rは式(A)を満たし、式中、nは前記多価イオンのイオン価であり、[MI]は多価イオンのモルであり、[IG]はイオン化基IGのモル濃度であり、0.3と10の間である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の活性成分AP、特にタンパク質およびペプチド活性成分の持続放出のための、水性コロイド懸濁液をベースにする新規な医薬製剤に関し、これらの製剤の適用、特に治療上の適用に関する。
【0002】
これらの医薬製剤は、ヒト治療にも獣医学治療にも適用する。
【背景技術】
【0003】
薬剤上のAP、特に治療用タンパク質の持続放出の分野においては、多くの場合において、患者の血漿タンパク質またはペプチドの濃度が、確実に健常対象者に観られる値にできるだけ接近することが必要とされている。
【0004】
この目的は、血漿におけるタンパク質の寿命が短いと損なわれ、このため治療用タンパク質を繰返し注射することが必要になる。次いで、治療用タンパク質の血漿濃度は、高濃度のピークおよび非常に低い最低濃度を特徴とする「のこ歯状の」特性を有する。濃度ピークは健常対象者における基底の濃度よりも非常に高く、インターロイキンIL2などの治療用タンパク質は毒性が高いために、非常に顕著な悪影響がある。さらに、最低濃度は、治療効果を有するのに必要である濃度より低く、そのため患者の受ける治療のカバーは劣り、患者は長期の重篤な結果を被る。
【0005】
また、治療用タンパク質の患者の血漿濃度を患者の治療に理想的な値に近づけるために、問題の医薬製剤は、長期にわたる血漿濃度における変動を制限するように、治療用タンパク質を持続放出させなければならない。
【0006】
さらに、この有効製剤は、好ましくは、当業者はすでに精通している以下の規格を満たさなければならない:
1-血漿濃度を治療レベルに維持するための、活性の、非変性の治療用タンパク質、例えば、ヒトまたは合成のタンパク質の持続放出;
2-容易に注射可能であるのに十分に低い注射粘度;
3-生体適合性および生分解性の形態;
4-毒性も、免疫原性も示さない形態;
5-優れた局所耐容性を有する形態。
【0007】
これらの目的を達成しようと、先行技術で提唱された最良の取り組みの1つは、治療用タンパク質を添加したナノ粒子の、低粘度の液体懸濁液からなる治療用タンパク質を持続放出するための形態を開発することであった。これらの懸濁液により、天然の治療用タンパク質の投与は促進された。
【0008】
このように、Flamel Technologiesは、治療用タンパク質が、疎水性基および親水性基を含むコポリアミノ酸のナノ粒子と会合する方法を提唱している。
【0009】
特許US-B-5904936号は、一方が中性および疎水性であり、他方がイオン化可能である、少なくとも2つのタイプのアミノ酸を含む両親媒性のポリアミノ酸コポリマーの、平均サイズが0.01と0.5μmの間のサブミクロン粒子(NPV)、および平均サイズが0.5と20μmの間のマイクロメトリック粒子(MPV)を記載している。インスリンなどのタンパク質は、水溶液におけるこれらの粒子上に自発的に吸着される。ポリアミノ酸コポリマーは、例えば、ポリ(L-ロイシン-ブロック-L-グルタミン酸ナトリウム)のブロックコポリマーである。前記特許は、ポリ-Leu/Gluのコロイド懸濁液に、モノカチオン塩(硫酸アンモニウム)またはポリカチオン性の塩(Fe2+、Fe3+、Zn2+、Ca2+、Al2+、Al3+、またはCu2+)、酸(HCl)、またはカチオン性ポリマー(ポリリジン)を加えることによる、NPVのMPVへの凝集について記載している。
【0010】
特許出願WO-A-2005/033181は、アスパラギン酸の単位またはグルタミン酸の単位を含み、その終端が8から30個の炭素原子を含む疎水性基を保有する、直鎖の、両親媒性の、アニオン性のホモポリアミノ酸を開示している。特に、「疎水性に修飾されている」テレケリックホモポリアミノ酸は、例えば、PheOC18/C18終端を有するポリ[GluONa]、またはPheOC18/α-トコフェロール終端を有するポリ[GluONa]である。水では、これらの「疎水性に修飾されている」テレケリックホモポリアミノ酸は、pH7.4の水性懸濁液で、少なくとも1つの活性タンパク質(インスリン)と容易に会合することができるナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成する。
【0011】
US-B-5904936およびWO-A-2005/033181による懸濁液によって「ベクトル化されている」活性タンパク質(例えば、インスリン)のin vivoの放出時間は、有益に増大することができる。
【0012】
放出時間における増大は、PCT出願WO-A-05/051416に記載されている薬剤形態によって部分的に実現されている。前記特許出願では、ポリ(L-グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)の、疎水性に修飾されているコロイド懸濁液を、皮下注射後に、内因性の血清アルブミンに接触した患者においてin situでゲルが形成するような濃度で注射する。次いで、タンパク質が、典型的には1週間の期間にわたってゆっくりと放出される。しかし、例えば、ヒト成長ホルモンの場合のように、投与すべき治療用タンパク質の濃度が比較的高い場合、放出時間は数日だけに限定される。
【0013】
どのような場合であっても、疎水性に修飾されているポリアミノ酸のナノ粒子またはマイクロ粒子のコロイドに関するこの先行技術のどれも:
(I)非経口の注射後に活性タンパク質の放出時間を増大すること、例えば、特にタンパク質濃度が高い場合の皮下注射、
(II)および/または、これを含む製剤を注射した後に、活性タンパク質の血漿濃度のピークを低減すること
を可能にする製剤を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許出願WO-A-2005/033181
【特許文献2】特許US-B-5904936号
【特許文献3】PCT出願WO-A-05/051416
【特許文献4】WO05/051416
【特許文献5】FR-A-2 801 226
【特許文献6】WO-A-00/30618
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Surfactant Science Series」22巻、Surfactant Solutions、R.Zana編集、チャプター3、M.Dekker、1984年
【非特許文献2】「Biopolymers」、1976年、15巻、1869頁
【非特許文献3】「Alpha-amino acid N-carboxy anhydride and related heterocycles」、H.R.Kricheldorf、Springer Verlag (1987年)
【非特許文献4】Tomidaら、Polymer、1997年、38巻、4733〜36頁
【非特許文献5】Injectable Drug Development、P.K.Guptaら、Interpharm Press、Denver、Colorado、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって本発明の一目的は、このような状況下において、先行技術の不完全さを克服する、特に、非経口の(例えば、皮下)注射後に、非変性のAP(例えば、治療用タンパク質およびペプチドおよび小分子)、例えば、ヒトまたは合成のタンパク質に対するin vivoの放出時間の延長の獲得を可能にする、APを持続放出するための医薬製剤を提案することである。
【0017】
本発明の別の一目的は、非経口の(例えば、皮下)注射後に、高濃度の治療用タンパク質およびペプチド、例えば、数mg/mlを含むものに対するin vivoの放出時間の延長の獲得を可能にする医薬製剤を提案することである。
【0018】
本発明の別の一目的は、物理化学的および生物学的両方の期間において貯蔵に対して安定であるAPをin vivoで持続放出するための医薬製剤を提案することである。
【0019】
本発明の別の一目的は、少なくとも1つの以下の性質:生体適合性、生分解性、無毒性、良好な局所耐容性を有するAPをin vivoで持続放出するための医薬製剤を提案することである。
【0020】
本発明の別の一目的は、APをin vivoでゆっくりと持続放出するための医薬製剤を提案することであり、前記製剤は、少なくとも1つのAPと自己会合し、または自己会合可能であるポリマーPOのマイクロメトリック粒子を含み、POは、疎水性基(GH)およびイオン化基(GI)を保有する水溶性の生分解性ポリマーであり、水でコロイド性ナノ粒子の懸濁液を自発的に形成する。
【0021】
本発明の別の一目的は、上記参照のポリマーPOのマイクロメトリック粒子を含む医薬製剤を提案することであり、ポリマーPOは、皮下注射後、APの水性媒体においてポリマーPOのコロイド懸濁液と混合した同じタンパク質を投与した後に得られる放出時間より長い時間にわたって、治療用タンパク質またはペプチドを放出することができる。
【0022】
本発明の別の一目的は、APをin vivoでゆっくりと持続放出するための医薬製剤を提案することであり、この製剤は、少なくとも1つのAPと自己会合するポリマーPOのマイクロメトリック粒子を含み、ポリマーPOは、例えば、その主鎖がアスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基から作られているポリアミノ酸であり、これらの残基の少なくともいくつかは、鎖および/または鎖の終端における少なくとも1個の疎水性基GHのグラフト化によって修飾されており、POは、やはり生分解性であり、水溶性であり、両親媒性である。
【0023】
本発明の別の一目的は、上記に列挙した目的において言及される製剤および/または製剤の前駆物質に由来する製品を提案することである。
【0024】
出願者の功績は、WO05/051416による製剤のナノ粒子の、GI基の極性と反対の極性の多価イオンを含むマイクロメトリック粒子への凝集が、それとこれらのマイクロ粒子が会合しているAP(例えば、タンパク質またはペプチド)の放出時間の著しい延長を可能にするマイクロ粒子の特定の集団の選択をもたらすことを見出したことである。
【0025】
ある種の多価イオンは、本発明による製剤の優れた耐容性をもたらすことを見出したのも、出願者の功績である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって本発明は、ポリマー(PO)のマイクロメトリック粒子をベースとする低粘度の水性コロイド懸濁液を含む、APを持続放出するための液体医薬製剤であって、
i.ポリマーPOは
疎水性基(GH)および少なくとも部分的にイオン化されているイオン化親水性基(GI)を保有する、水溶性、生分解性、両親媒性のコポリマーであり、
等張性の条件下、pH=7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成し、
ii)前記粒子は、等張性の条件下、pH=7.0で、少なくとも1つの活性成分(AP)と自発的かつ非共有的に会合することができ、
POのマイクロメトリック粒子は、試験Tで測定して、0.5と100μmの間の、好ましくは1と70μmの間の、特に好ましくは2と40μmの間のサイズを有し、ポリマーの基GIの極性と反対の極性の、4以下のイオン価を有する多価イオン、好ましくは2価イオン、3価イオン、またはそれらの混合を含み、前記多価イオンは、ポリマーのナノ粒子を、試験Mで測定し、式:
【数1】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、特に好ましくは0.8と3.0の間となるような量のマイクロメトリック粒子へと凝集させるために加えてあることを特徴とする製剤に関する。
【0027】
本発明にしたがって選択されるこれらのマイクロメトリック粒子は、両親媒性のコポリマーのナノ粒子の多数の凝集によって生成される。この凝集は、コポリマーが保有するイオン化基GI(少なくとも部分的にイオン化されている)の極性と反対の極性の多価イオンの存在によって、有利にもたらされる。別々のナノ粒子に属するポリマー鎖と複合することによって、コポリマーの基GIの極性と反対の極性のこれらの多価イオンは、ポリマーのナノ粒子のマイクロ粒子への凝結をもたらす。
【0028】
APは、マイクロメトリック粒子に凝集する前にコポリマーのナノ粒子POと自発的に会合することができ、かつ/あるいは凝集の間および/または後にマイクロメトリック粒子と自発的に会合することができる。
【0029】
さらに、本発明による製剤は、非毒性であり、良好な局所耐容性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例8にしたがって調製したPOのナノ粒子に含まれるか[■ナノ粒子23mg/g]またはPOのマイクロ粒子[◆マイクロ粒子73mg/g]に含まれるかによる、試験Lにおける、時間の関数としての[tは分]ヒト成長ホルモンの放出[注射した全濃度に対するhGHの%]を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示にわたって、本発明による製剤のマイクロメトリックサイズを有するマイクロ粒子とは異なるものとして、「サブミクロン粒子」または「ナノ粒子」の語は、そのサイズが(下記の試験T’で測定して)1nm以上および500nm未満であり、好ましくは5と250nmの間である粒子を意味する。
【0032】
本発明の目的では、「タンパク質」の語は、それがオリゴペプチドであっても、またはポリペプチドであっても、タンパク質またはペプチドのいずれかを意味する。このタンパク質またはペプチドは、例えば、1つまたは複数のポリオキシエチレン基のグラフト化によって、修飾されていてもよく、またはされていなくてもよい。
【0033】
活性成分は、本開示にわたってAPの呼称によって呼ばれており、APは、少なくとも1つの活性成分を意味する。
【0034】
本発明の目的では、および本開示にわたって、1つまたは複数のAPとポリマーPO(例えば、ポリアミノ酸)との間の関係を限定するのに用いられる「会合」および「会合する」の語は、APがポリマーPOに、静電気的な、および/または疎水性の相互作用、および/または水素結合、および/または立体障害など、非共有的に結合していることを意味する。
【0035】
遠心法に対する角速度は、
【数2】

のとき1分あたりの回転数(r/分)に等しい単位である、rpm(1分あたりの回転数)で表される。
【0036】
レーザー回折によるマイクロ粒子のサイズを測定するための試験T
a-マイクロ粒子が水性分散液の形態である場合における試験T1
1)装置および操作条件
【0037】
【表1】

【0038】
2.試料の調製
分析用の試料、400μlを5ml試験管において600μlの脱塩水で希釈し、次いで、ボルテックスで10(10±5)秒間調製物を撹拌することによって調製する。
【0039】
3.試料の分析
静止状態の、湿潤試料分散系に貯蔵されている循環液体を空にし、新鮮な脱塩水で置き換える。Hydro2000SMユニットの撹拌速度を2400rpmに設定する。
【0040】
上記に記載する実験条件下で測定を開始する:
1-レーザー光のアラインメント
2-バックグラウンドのノイズの記録
【0041】
これらのステップの後、オペレーターは、以下のやり方で分析用の試料を導入する:希釈した試料を不確実値が5%と20%の間になるまで(パスツールピペットで)滴下し、獲得を開始する。
【0042】
それより低い値で分析した物体の50%が見出される直径である、D50に対してデータを得る。
【0043】
D50の測定を3回、3つの異なる調製物に対して行い、それらの平均値をとる。
【0044】
b-マイクロ粒子が乾燥形態である場合の試験T2
1.装置および操作条件
【0045】
【表2】

【0046】
2.試料の調製
-Span80の0.1%ヘプタン溶液を調製する(粉末Span80 0.01gを、20mlフラスコ中に測り、次いで最終重量10gまでヘプタンを加える)。
-粉末約6mgを、5ml試験管中に測る。
-0.1% Span80を含むヘプタン0.7gを試験管に加える。
-試験管を2分間超音波水浴に配置して、粉末を完全に分散させる。
【0047】
3.試料の分析
静置状態の湿潤試料分散系に貯蔵されている循環液体を空にし、ヘプタンで置き換える。Hydro2000SMユニットの撹拌速度を2000rpmに設定する。
【0048】
上記に記載した実験条件下で測定を開始する:
1-レーザー光のアラインメント
2-バックグラウンドのノイズの記録
【0049】
これらのステップの後、オペレーターは、以下の様式で分析用の試料を導入する:希釈した試料を不確実値が5%と20%の間になるまで(パスツールピペットで)滴下し、獲得を開始する。
【0050】
それより低い値で分析した物体の50%が見出される直径である、D50に対してデータを得る。
【0051】
D50の測定を3回、3つの異なる調製物に対して行い、それらの平均値をとる。
【0052】
準弾性光散乱によってナノ粒子サイズを測定するための試験T’
本発明によるポリマーPOの粒子の流体力学的径の平均を、以下に定義する手順Mdによって測定する:
POの溶液を、0.15M NaCl媒体において濃度1または2mg/mlで調製し、24時間撹拌する。次いで、これらの溶液を、0.8〜0.2μmのフィルターを通過させた後、波長632.8nmの垂直に偏光したHe-Neレーザー光で操作するMalvern Compact Goniometer Systemを用いて動的光散乱法によって分析する。ポリマーPOのナノ粒子の流体学的径を、「Surfactant Science Series」22巻、Surfactant Solutions、R.Zana編集、チャプター3、M.Dekker、1984年の書籍に記載されている通りに、summation法によって、電場の自己相関関数から計算する。
【0053】
イオンクロマトグラフィーによって多価イオン含量を測定するための試験M
多価イオンであるMg2+の定量化を例にとる。方法は、他のカチオンを決定するのと実質的に同じである(コントロールだけが変化する)。
【0054】
1.装置と試薬
イオンクロマトグラフ
伝導度検出器、カチオン自己再生型サプレッサー、およびサーモスタット付きオーブンを装備したDionex ICS2500 イオンクロマトグラフィーシステム
カラム(Dionex):IonPac CS16 5×250mmカラム
ガードカラム(Dionex):IonPac CG16 5×50mmガードカラム
カチオンサプレッサー(Dionex):CSRS-ULTRA II-4mm
イオンクロマトグラフィー用プラスチック容器(Dionex)
脱塩水(MilliQ)
0.1N塩酸(HCl)(Riedel de Haen)
メタンスルホン酸(MSA)(Aldrich)
多価イオンの硫酸塩:例えば、MgSO4(Aldrich)
【0055】
2.溶液の調製
溶媒:0.01N HCl
0.1NHCl 100mlを、MilliQ水約500mlを含む1lフラスコ中に導入する。MilliQ水で体積を1リットルにし、溶液をマグネチックで撹拌する。
移動相:30mM MSA
メスシリンダーを用いて、MilliQ水2リットルを、2lのイオンクロマトグラフィー用プラスチック容器に導入する。MSA3.89mlを、自動ピペットで加える。
フラスコを装置に配置し、混合および相の脱気のためにヘリウムのバブリングを開始する。
【0056】
3.コントロールと試料の調製
コントロールの調製
1mg/lから2.6mg/lの濃度範囲のMg2+で、3つのコントロールを調製する。
【0057】
【表3】

【0058】
貯蔵液の希釈を調製する。
【0059】
【表4】

【0060】
試料の調製
サンプリングの直前にマイクロ粒子製剤をボルテックスで完全に撹拌し、自動ピペットで混合する。
重量および希釈体積を調節して、1mg/lと2.6mg/lの間の予想のMg2+濃度をもたらすために、少なくとも1回希釈を行う。
ポリマーを沈殿させるために、0.01N HClで希釈を行う。
所望により、引き続き希釈を行う。
溶液を、少なくとも30分間、マグネチックで撹拌する。
0.45μmフィルターを通過させた後、フラスコに移す。
【0061】
1試料あたり2回調製を行う。
【0062】
4.イオンクロマトグラフィーの条件
【0063】
【表5】

【0064】
5.結果の処理加工
検量線の決定
コントロールを全て順番通りに考慮することによって、回帰直線を得た。相関係数は、>0.99でなければならない。
直線の方程式は以下の通りである:
Y=aX+b
式中、Y=マグネシウムピークの面積
X=コントロール溶液の濃度(mg/l)
【0065】
試料のマグネシウムイオン含量の決定
【数3】

M=Mg2+含量(g/l)
Yassay=アッセイ用のマグネシウムピークの面積
a=検量線の勾配
b=検量線の起点における縦軸
Vd=希釈体積(ml)
Pc=試料重量(mg)
最終結果は、2アッセイの平均である。イオンクロマトグラフィーで一般に認められている変動係数は10%であるが、これは方法が確証される場合に確定される。
【0066】
割合rの計算
上記のプロトコールでは、マグネシウム含量の決定について記載した。他の多価カチオン(Ca2+、Zn2+、Al3+など)の含量Tを、類似の方法によって同様に決定する。
この方法でMの値が決定したら、それを用いて多価イオンのモル濃度IM:
【数4】

を推定し、式中、Mionは、g/molにおける多価イオンの分子量である。
【0067】
イオン化ポリマーの構造、特に、その理論上の重合度DP、その理論上の分子量Mp、およびその疎水性のグラフト化率(すなわち、疎水性のグラフトによって修飾される基の分画αH)を知ることで、ポリマー濃度C(g/lで表される)に対するイオン化基のモル濃度を計算することができる:
【数5】

これを用いて、
【数6】

が計算され、式中、nは多価イオンのイオン価である。
【0068】
本発明による製剤は、マイクロメトリック粒子が、以下に記載する試験Dで測定して、0.05と1.0の間、好ましくは0.07と0.7の間、特に好ましくは0.1と0.5の間の見かけのポリマー密度dappを有することを特徴とすることが好ましい。
【0069】
見かけの密度dappを測定するための試験D
濃度C(mg/g)のポリマーPOを有するマイクロ粒子懸濁液を、マグネチックで撹拌することによって均一化する。2mlのアリコートのマイクロ粒子懸濁液をマイクロピペットで取り、予め風袋を差し引いた遠沈管に配置する。次いで、管に配置したマイクロ粒子懸濁液の重量を測定する(gにおける重量m)。管を遠心機に配置し、8000rpmで30分間回転させる。適合したマイクロピペットを用いて上清を正確に除去する。これを用いて、沈降物の体積Vsed(mlにおける)を推定する:
Vsed=Vtot-Vsur
【0070】
見かけのポリマー密度dapp(g/cm3における)は、以下の式によって得られる。
【数7】

【0071】
APを添加したマイクロメトリック粒子の懸濁液は、AP(例えば、治療用タンパク質またはペプチド)の放出時間の特に有用な延長をもたらし、血漿濃度のピークを低減する。
【0072】
特に、APの放出時間は、先行技術の製剤、特に特許出願WO05/051416に記載したものに比べて有意に増大する。本発明による製剤によって誘発されるin vivoにおけるAPの放出時間の延長はいっそう価値がある、というのは、AP(例えば、治療用タンパク質)は依然として完全に生理活性であり非変性であるからである。
【0073】
このように、本発明による製剤の、有利な機能的特徴は、試験Lで測定される、所与のAPの放出時間Trが、同じ試験Lで測定される、多価イオンを含まない同一の製剤の放出時間trに比べて増大し、この増大は、Trが1.1×tr以上であり、特に好ましくはTrが1.5×tr以上であるような増大であることが好ましい。
【0074】
本発明によるマイクロメトリック粒子からのAPの放出を測定するための試験L
吸収性のポリプロピレン材料から、2×2cmの正方形を切り出す。
【0075】
PBSと呼ばれるリン酸バッファー溶液を、PBS(Aldrich)の錠剤1個を水200mlに溶解することによって調製する。これにより、0.01Mリン酸バッファー+0.0027M塩化カリウムおよび0.137M塩化ナトリウムを含む溶液200mlが得られる。
【0076】
BSAと呼ばれる、ウシアルブミン30mg/gを含むバッファー溶液を、分画V(SAFC)である6gのウシ血清アルブミンを予め調製したPBS294gに溶解することによって調製する。
【0077】
1本はPBSを含み、他方は正方形の吸収性の材料を浸すためのBSA溶液を含む、50mlのFalconチューブ2本を冷蔵庫に貯蔵する。
【0078】
容量5mlを有する気密性のチューブに、これらの溶液4または5mlを配置する(各々2つの媒体に対して5試料を提供する)。これらを冷蔵庫に貯蔵する。
【0079】
15時間の間隔の後、連続相を含む5mlチューブを、前もって37℃に1時間配置する。
【0080】
正方形を、37℃で1時間、5個をPBSに、5個をBSAに(または注入時に問題がある場合はそれ以上)浸す。
【0081】
製剤0.5mlを、各正方形の中央に27G針(1mlシリンジ)で注入し (その表面と平行に) 、正方形を最初に紙上に軽く吸収させる。
【0082】
注入した側に印を付ける。
【0083】
この手順を10個の正方形に適用し、動態が全て同調するように、後になるまで連続媒体に浸さない。注入したスポットがチューブの上部付近になるように正方形を配置する。
【0084】
試料をホルダーに配置し、撹拌しながら全て37℃のオーブン中に導入する。
【0085】
撹拌は放出の動態に多大な影響を及ぼし、したがってコントロールしなければならない。撹拌を、2つの障害バー間9cmで40に設定する。
【0086】
100μlアリコートの連続相を、様々な時間でとる。
【0087】
HPLCによるタンパク質のアッセイ
2つの溶離相を用いる:
A相:水1260ml/アセトニトリル680ml/THF60ml/TFA1.8ml
B相:アセトニトリル630ml/水340ml/THF30ml/TFA0.8ml
【0088】
HPLC条件は、以下の表に照合される:
【0089】
【表6】

【0090】
次いで、連続媒体におけるタンパク質濃度を、時間の関数としてプロットする。
【0091】
後者がプラトーに達したときに、放出されたタンパク質の全量をこの曲線から読む。検証すべき試験について、この値は開始時に導入されたタンパク質の少なくとも40%を表さなければならない。次いで、導入したAPの50%を放出するのに必要とされる時間である時間Trをこの曲線から読む。
【0092】
好ましい一特徴によると、本発明による液体医薬製剤は、ポリマーPOの基GIの極性と反対の極性の多価イオン、好ましくは2価イオンを含む塩を、ポリマーPOのナノ粒子の懸濁液、および任意選択でAPに加えることによって、懸濁液のマイクロメトリック粒子を水性の液体で自発的に得られることを特徴とする。
【0093】
好ましい一実施形態では、本発明による製剤は、POのマイクロ粒子と会合しているAPを含む。
【0094】
この製剤は、非経口的に注射可能であり、注射の条件下で液体であるという利点を有する。
【0095】
本発明によると、「液体」、「低粘度」、または「非常に低粘度」の記述子は、有利には、20℃で1000mPa.sに等しくまたはそれより低い動的粘度に相当する。好ましくは、製剤の動的粘度は、20℃で測定して1000s-1のせん断勾配に対して、好ましくは500mPa.s以下であり、特に好ましくは2と200mPa.sの間であり、例えば、1.0と100mPa.sの間、もしくは1.0と50mPa.sの間である。
【0096】
動的粘度の測定
動的粘度に対する対照の測定を、例えば20℃で、円錐平板形状(4cm、2°)を装備したAR1000レオメータ(TA Instruments)を用いて行うことができる。粘度vを、せん断勾配1000s-1に対して測定する。
【0097】
このように粘度が低いことにより、本発明の製剤を、非経口的に、特に、粘膜、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、または脳内の経路によって、またはとりわけ腫瘍内に注射するのが容易になっている。
【0098】
本発明による製剤を、口、鼻、肺、膣、目、または頬側の経路によって投与することもできる。
【0099】
本発明の製剤のこの液体状態または低粘度は、周囲温度に相当する注射温度、例えば4と30℃の間、および生理学的温度の両方で存在する。
【0100】
本発明において有用なポリマーPOは、疎水性基GHおよびイオン化基GIを保有する、水溶性の、生分解性のポリマーである。疎水性基は、鎖の残部に比べて少ない数であることができ、鎖に対して側方に付着していることができ、または鎖において挿入されていることができ、ランダムに分布していることができ(ランダムコポリマー)、または連続もしくはグラフトの形態で分布していることができる(ブロックコポリマーまたはシーケンスコポリマー)。
【0101】
本発明の好ましい一実施形態では、疎水性基GHは、鎖に対して側方に付着している。
【0102】
限定を意味するものではないが、疎水性に修飾されているポリマーPOは、ポリアミノ酸、(ポリ)ペプチド、ゼラチン、タンパク質、好ましくはプルランまたはキトサンまたはムコ多糖またはデキストランまたはガラクトマンナンまたはポリヒアルロネートを含む亜群から選択される多糖ならびにそれらの混合を含む群から選択することができる。
【0103】
本発明の好ましい一実施形態では、POは、両親媒性の(コ)ポリアミノ酸から選択される。
【0104】
本発明の目的で、および本開示を通して、「ポリアミノ酸」の語は、10から20個の「アミノ酸残基」を含むオリゴアミノ酸、および20個を超える「アミノ酸残基」を含むポリアミノ酸と一緒に、天然の、および合成のポリアミノ酸をカバーする。
【0105】
好ましくは、本発明で有用なポリアミノ酸は、グルタミン酸またはアスパラギン酸の繰返し残基を含むオリゴマーもしくはホモポリマー、またはこれら2タイプの「アミノ酸」残基の混合を含むコポリマーである。これらのポリマーで問題の残基は、D、L、またはD/L立体配置を有するアミノ酸であり、グルタミン酸またはグルタミン酸残基の場合はそのαまたはγ位置を介して、アスパラギン酸またはアスパラギン酸残基の場合はそのαまたはβ位置を介して結合している。
【0106】
主なポリアミノ酸鎖の好ましい「アミノ酸」残基は、α型のL立体配置および連結を有するものである。
【0107】
本発明の特に好ましい一実施形態では、POはアスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基から形成されているポリアミノ酸であり、これらの残基の少なくともいくつかは、少なくとも1つの疎水性基GHを含むグラフトを保有している。これらのポリアミノ酸は、特にPCT出願WO-A-00/30618に記載されているタイプのものである。
【0108】
第一の可能性によると、製剤のPOは、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
R1は、H、直鎖C2からC10、もしくは分枝C3からC10アルキル、ベンジル基、アミノ酸の末端基、または-R4-[GH]であり、
R2は、H、直鎖C2からC10、もしくは分枝C3からC10アシル基、ピログルタミン酸、または-R4-[GH]であり、
R3は、Hまたは
ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む亜群から有利に選択される金属カチオン、
アミンをベースとするカチオン、
オリゴアミンをベースとするカチオン、
ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)をベースとするカチオン、および
リジンまたはアルギニンをベースとするカチオンを含むクラスから有利に選択される(複数の)アミノ酸をベースにするカチオン
を含む亜群から有利に選択される有機カチオン、
ならびに、ポリリジンおよびオリゴリジンを含む亜群から有利に選択されるカチオン性のポリアミノ酸
を含む群から好ましくは選択されるカチオン実体であり、
R4は、直接結合、または1から4個のアミノ酸残基をベースにする「スペーサー」であり、
Aは、独立に、基-CH2-(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり、
n/(n+m)は、モルグラフト化率と定義され、その値はPOに対して十分に低く、pH=7および25℃の水に溶解してPOのサブミクロン粒子のコロイド懸濁液を形成し、n/(n+m)は、好ましくは1と25mol%の間であり、特に好ましくは1と15mol%の間であり、
(n+m)は重合度と定義され、10から1000、好ましくは50と300の間で変動し、
GHは、疎水性基である]
によって定義される。
【0109】
本発明の好ましい一実施形態では、製剤は、疎水性基GHが、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、およびコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆物質に由来し、R4が直接結合であることを特徴とする。
【0110】
第2の可能性によると、製剤のPOは、以下の一般式(II)、(III)、および(IV):
【化2】

[式中、
GHは、疎水性基であり、
R30は、直鎖C2からC6アルキル基であり、
R3’は、Hまたは
ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む亜群から有利に選択される金属カチオン、
アミンをベースとするカチオン、
オリゴアミンをベースとするカチオン、
ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)をベースとするカチオン、および
リジンまたはアルギニンをベースとするカチオンを含むクラスから有利に選択される(複数の)アミノ酸をベースにするカチオン
を含む亜群から有利に選択される有機カチオン、
ならびにポリリジンおよびオリゴリジンを含む亜群から有利に選択されるカチオン性ポリアミノ酸、
を含む群から好ましくは選択されるカチオン実体であり、
R50は、C2からC6アルキル、ジアルコキシ、またはジアミン基であり、
R4は、直接結合、または1から4個のアミノ酸残基をベースにする「スペーサー」であり。
Aは、独立に、基-CH2-(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり、
(n’+m’)またはn’’は、重合度と定義され、10から1000、好ましくは50と300の間で変動する]
の1つを有する。
【0111】
有利には、POのn個の基GHは、各々互いに独立して、以下の式:
【化3】

[式中、
R5は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec-ブチル(イソロイシン)、またはベンジル(フェニルアラニン)基であり、
R6は6から30個の炭素原子を含む疎水性基であり、
lは、0から6まで変動する]
の1価の基である。
【0112】
本発明の注目すべき一特徴によると、POの疎水性基R6の全部または一部は、独立に、
6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、N、またはS)または少なくとも1単位の不飽和を含むことができる直鎖または分枝アルコキシ、
6から30個の炭素原子を含み、1個または複数個の環状炭素を有し、任意選択で少なくとも1単位の不飽和または少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、N、またはS)を含むアルコキシ、ならびに
7から30個の炭素原子を有し、少なくとも1単位の不飽和または少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、N、またはS)を含むことができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル
からなる基の群から選択される。
【0113】
実践上、および限定を意味するものではないが、POのグラフトの疎水性基R6は、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、およびコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆物質に由来する。
【0114】
有利には、ポリアミノ酸の主鎖は:
α-L-グルタミン酸、またはα-L-グルタミン酸ホモポリマー
α-L-アスパラギン酸、またはα-L-アスパラギン酸ホモポリマー
または、α-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸、またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマー
である。
【0115】
注目すべきことに、POの主なポリアミノ酸鎖のアスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基の分布は、得られるポリマーがランダム、ブロック型、またはマルチブロック型のいずれかであるようなものである。
【0116】
別の定義によると、本発明による製剤で用いられるPOは、2000と100000g/molの間の、好ましくは5000と40000g/molの間の分子量を有する。
【0117】
一変形形態では、本発明による製剤のPOは、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸残基に結合しているポリアルキレングリコールタイプのグラフトを少なくとも1個保有する。
【0118】
有利には、このグラフトは、以下の式(V):
【化4】

[式中、
R4’は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基をベースにする「スペーサー」であり、
Xは、酸素、窒素、および硫黄を含む群から選択されるヘテロ原子であり、
R7およびR8は、独立に、H、または直鎖C1からC4アルキルであり、
n’’’は、10から1000まで、好ましくは50から300で変動する]
を有するポリアルキレングリコールタイプである。
【0119】
実践上、ポリアルキレングリコールは、例えばポリエチレングリコールである。
【0120】
本発明によると、ポリアルキレングリコールのグラフト化のモルパーセント値が1から30%まで変動するのが望ましい。
【0121】
ポリアミノ酸POは、調節可能なグラフト化率で、pH7.4の水に(例えば、リン酸バッファー入りの)に分散してコロイド懸濁液をもたらす点で、極めて有益でもある。
【0122】
さらに、タンパク質、ペプチド、または小分子などのAPのいくつかは、これらのポリアミノ酸POを含むナノ粒子と自発的に会合することができる。
【0123】
POは、pHおよび組成に応じて、中性(例えば、COOH)、またはイオン化されている(例えば、COO-)、いずれかのイオン化基を含むことを理解すべきである。この理由から、水相における溶解度は、イオン化基の、したがってpHの比率の一次関数である。水溶液中では、カルボキシル基の場合は、対イオンは、ナトリウム、カルシウム、もしくはマグネシウムなどの金属カチオン、またはトリエタノールアミン、tris-(ヒドロキシメチル)アミノメタン、もしくはポリエチレンイミンなどのポリアミンなどの有機カチオンであることができる。
【0124】
本発明の製剤で用いることができるポリアミノ酸タイプのPOは、例えば、当業者には知られている方法によって得られる。ランダムポリアミノ酸は、従来のカップリング反応によってポリマー上に直接「スペーサー」で予め官能基化されている疎水性のグラフトをグラフト化することによって得ることができる。ブロックまたはマルチブロックのポリアミノ酸POは、対応するアミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)のシーケンシャル重合によって得ることができる。
【0125】
例えば、ホモポリグルタミン酸もしくはホモポリアスパラギン酸のポリアミノ酸、またはブロック、マルチブロック、もしくはランダムのグルタミン酸/アスパラギン酸コポリマーを、従来の方法によって調製する。
【0126】
αタイプのポリアミノ酸を得るために、最も一般的な技術は、アミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)の重合に基づくものであり、これは、例えば、「Biopolymers」、1976年、15巻、1869頁と言うタイトルの文献、および「Alpha-amino acid N-carboxy anhydride and related heterocycles」Springer Verlag (1987年)というタイトルのH.R.Kricheldorfによる書籍に記載されている。NCA誘導体は、好ましくはNCA-O-Me、NCA-O-Et、またはNCA-O-Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチル、およびBz=ベンジル)である。次いで、ポリマーを好適な条件下で加水分解して、その酸形態におけるポリマーを得る。これらの方法は、出願者への特許FR-A-2 801 226に提供される記載に基づくものである。本発明にしたがって用いることができる数々のポリマー、例えば、可変的な分子量のポリ(α-L-アスパラギン酸)、ポリ(α-L-グルタミン酸)、ポリ(α-D-グルタミン酸)、およびポリ(γ-L-グルタミン酸)タイプは、市販されている。α-βタイプのポリアスパラギン酸ポリマーは、(ポリスクシンイミドを得るための)アスパラギン酸の縮合、引き続き塩基の加水分解によって得られる(Tomidaら、Polymer、1997年、38巻、4733〜36頁を参照されたい)。
【0127】
ポリマーの酸性基とのグラフトのカップリングは、カップリング剤としてのカルボジイミド、および任意選択で4-ジメチルアミノピリジンなどの触媒の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリジン(NMP)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの好適な溶媒においてポリアミノ酸を反応させることによって容易にもたらされる。カルボジイミドは、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、またはジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト化率は、構成成分および反応物の化学量論によって、または反応時間によって化学的に制御されている。「スペーサー」で官能基化されている疎水性のグラフトは、従来のペプチドのカップリングによって、または酸触媒の下の直接縮合によって得られる。これらの技術は、当業者にはよく知られている。
【0128】
ブロックまたはマルチブロックのコポリマーは、疎水性のグラフトと予め合成されたNCA誘導体を用いて合成される。例えば、疎水性のNCA誘導体を、NCA-O-Bzでコポリマー化し、次いでベンジル基を加水分解によって選択的に除去する。
【0129】
少なくとも1つのAPを含む好ましい実施形態では、本発明による製剤は、POをベースにするナノ粒子および少なくとも1つのAPの、水性の液体媒体における非共有的会合に起因する。
【0130】
調製物に対して、POまたはAPは固体の形態(好ましくは粉末)、または液体の形態(好ましくはコロイド水性懸濁液)であることができる。
【0131】
本開示の用語における、AP/PO会合は、APがポリマーPO[例えば、1つまたは複数のポリアミノ酸]と、共有の化学結合以外の1つまたは複数の結合によって会合していることを意味する。
【0132】
1つまたは複数のAPを本発明によるPOと会合させるための技術は、特に、特許出願WO-A-00/30618に記載されている。これらは、少なくとも1つのAPを、POのナノ粒子を含む液体媒体中に組み入れて、1つまたは複数のAPを添加した、または会合したナノ粒子のコロイド懸濁液を得ることからなる。
【0133】
本発明の目的では、「多価イオン」の語は、2価イオン、3価イオン、4価イオン、およびこれらのイオンの混合を意味する。
【0134】
POがアニオン基GIを有する場合、多価イオンは、多価カチオン、好ましくは2価のカチオン、特に好ましくはMg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+、およびこれらの混合物を含む群から選択されるもの、および/またはより特に好ましくはAl3+、Fe3+およびこれらの混合物を含む群から選択される3価のカチオンである。
【0135】
多価イオンとは別に、本発明による製剤は、ナノ粒子のマイクロ粒子への凝集において活性であってよい1価のイオン(例えば、カチオン)を含むことができる。
【0136】
これらの多価イオンを、多価カチオンの、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、グルコン酸塩、またはグルタミン酸(または他のアニオン性のアミノ酸)の溶液などの、水性の(有機または無機の)塩溶液の形態の本発明の製剤中に導入するのが好ましい。
【0137】
製剤の安定性を改善するために、製剤は:
→POが疎水性基(GH)および少なくとも部分的にイオン化されているイオン化疎水性基(GI)を保有する水溶性、生分解性、両親媒性のコポリマーであり、等張性の条件下、pH=7.0の水中で、ナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成する、少なくとも1つのポリマーPOのナノ粒子、
→ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、
→コポリアルキレングリコール、好ましくは(ポロキサマー、Pluronic、またはLutrolタイプの)エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、
→セルロースポリマーおよびその誘導体、好ましくはカルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、またはアルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、
→ソルビタンと1つまたは複数の脂肪酸とのエステル、好ましくは、Tweenまたはポリソルベートタイプの、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)グリコールと少なくとも1つの酸(例えば、オレイン酸)とのエステル、
→リン脂質およびポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールをベースとする界面活性剤、
→水素添加した、または水素無添加の糖類、例えば、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、もしくはスクロース、
→ポリオール、例えば、プロピレングリコール、またはグリセロール、
→ゼラチン、好ましくは加水分解したゼラチン、
→好ましくはポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリ-N-ビニルラクタムを含む群からの含窒素コポリマー、
→ポリビニルアルコール(PVA)、
→ならびにこれらの混合物
を含む群から選択される少なくとも1つの安定化剤を含むことが好ましい。
【0138】
本発明による好ましい安定化剤の1つは、マイクロ粒子を構成するポリマーと(好ましくは)同一、または異なる少なくとも1つのポリマーPOのナノ粒子からできている。
【0139】
製剤で用いられる安定化剤の量は、好ましくは0.01と10重量%の間であり、特に好ましくは0.1と5重量%の間である。
【0140】
ナノ粒子を含む安定化剤に関しては、これらは、1.5から3.5重量%、例えば2.0から3.0(≒2.5%)重量%の量で、製剤において有利に用いられる。
【0141】
APに関する限りは、APは、タンパク質、糖タンパク質、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖に結合しているタンパク質[好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖体、リポ多糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびこれらの混合物を含む群から、特に好ましくは、エリスロポエチン、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、造血刺激因子およびこれらの混合物、第VIIIおよびIX因子、ヘモグロビン、チトクローム、プロラクチン、アルブミン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH拮抗物質、LHRH競合物質;ヒト、ブタ、またはウシ成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、またはこれらの混合物(IL-2、IL-11、IL-12)、α-、β-またはγ-インターフェロン、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、VEG-F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリンおよび合成類似体、ならびに酵素、サイトカイン、抗体、抗原、およびワクチンの薬剤上活性な修飾およびフラグメントを含む亜群から選択されることが好ましい。
【0142】
一変形形態では、APは、ロイプロリド、またはシクロスポリン、およびこれらの混合など、アントラサイクリン、タキソイド、もしくはカンプトテシンのファミリーに属するタイプの、またはペプチドのファミリーに属するタイプの「小型の」疎水性、親水性、または両親媒性の有機分子である。
【0143】
本開示の用語において、「小型」分子は、特に小型の非タンパク質の分子、例えば、アミノ酸を欠く小分子である。
【0144】
別の一変形形態では、APは、以下の活性物質のファミリー:アルコール乱用を治療するための薬剤、アルツハイマー病を治療するための薬剤、麻酔薬、末端肥大症を治療するための薬剤、鎮痛薬、抗喘息薬、アレルギーを治療するための薬剤、抗癌薬、抗炎症薬、抗凝血および抗血栓薬、抗痙攣薬、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、鎮吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心臓血管作動薬、脂質低下薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、抗高血圧薬、血管保護薬、コリンエステラーゼ阻害薬、中枢神経系の障害を治療するための薬剤、中枢神経系刺激薬、避妊薬、受胎促進薬、分娩誘発薬および阻害薬、膵線維症を治療するための薬剤、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症を治療するための薬剤、勃起不全を治療するための薬剤、受胎能を治療するための薬剤、消化器障害を治療するための薬剤、免疫調節薬および免疫抑制薬、記憶障害を治療するための薬剤、抗偏頭痛薬、筋肉弛緩薬、ヌクレオシド類似物質、骨粗しょう症を治療するための薬剤、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、精神治療薬、鎮静薬、催眠薬およびトランキライザー、神経遮断薬、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ薬、皮膚科の障害を治療するための薬剤、ステロイドおよびホルモン、アンフェタミン、抗食欲不振薬、非鎮痛薬性痛み止め、抗てんかん薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、催眠薬、緩下剤、向精神薬、ならびにこれらの製品のいずれかの組合せの少なくとも1つから有利に選択される。
【0145】
定量的な観点から、マイクロメトリック粒子と会合していないAP[非会合AP]の重量分率が、%で:
[非会合AP]≦1
好ましくは、[非会合AP]≦0.5
である場合に、特に有益である。
【0146】
一変形形態では、APは、例えば、0.2と2mg/kgの間、好ましくは0.5と1mg/kgの間を含む投与量を有する組換えヒト成長ホルモンhGHであってよい。
【0147】
別の一変形形態では、APは、例えば、0.2と2UI/kgの間、好ましくは0.5と1UI/kgの間を含む投与量を有するインスリンであってよい。
【0148】
別の一変形形態では、APは、例えば、20と100μg/kgの間、好ましくは40と80μg/kgの間を含む投与量を有するインターフェロンα-2bであってよい。
【0149】
有利には、本発明による製剤は、特に非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは脳内経路または腫瘍内経路により、あるいは口の、鼻の、肺の、膣の、または眼の経路により投与する薬物の調製を意図するものである。
【0150】
別のその特徴によると、本発明は、上記の製剤を調製するための方法に関する。
【0151】
製剤を調製するためのこの方法は、
a.少なくとも1つのPOのナノ粒子のコロイド懸濁液をとり、または調製する工程と、
b.好ましくは水溶液中で、POのナノ粒子のこのコロイド懸濁液を少なくとも1つのAPと任意選択で混合する工程と、
c.得られた懸濁液を任意選択でろ過する工程と、
d.ポリマーPOの基GIの極性と反対の極性の(好ましくは(複数の)塩の形態の)多価イオンを、式、
【数8】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、特に好ましくは0.80と3.0の間となるような量で加える工程と、
e.必要なら(例えば、ダイアフィルトレーションにより)pHまたはモル浸透圧濃度を調節する工程と
から本質的になることを特徴とする。
【0152】
本発明による液体製剤は、有利には室温(例えば、25℃)で調製する。
【0153】
異なる様式のAPのマイクロ粒子との会合が想定できる(上記参照)。有利には、APを、凝集によってマイクロ粒子を形成することが意図されるナノ粒子と会合させる。APをマイクロ粒子と直接会合させることも可能である。2つの会合方法を組み合わせることができる。
【0154】
ナノ粒子またはマイクロ粒子との会合では、APは、POのナノ粒子またはマイクロ粒子のコロイド懸濁液と混合するための水性懸濁液または水溶液の形態であると有利である。他の変形形態では、APを固体の形態で組み入れ、次いでナノ粒子またはマイクロ粒子の懸濁液と混合する。
【0155】
本発明は、本発明による製剤に含まれているPOのナノ粒子およびマイクロ粒子に由来する固体製品にさらに関する。
【0156】
実践上、これらの派生製品は、特に、とりわけ、粉末、ゲル、埋め込み、またはフィルムからなることができる。
【0157】
したがって、本発明は、それを調製するための方法とは無関係なものと理解して、本発明による製剤に由来する製品に関する。問題の派生製品は、したがって、非液体の形態であり、ポリマー(PO)のマイクロメトリック粒子を含み、
i)ポリマーPOは、
疎水性基(GH)およびイオン化親水性基(GI)を保有する、水溶性、生分解性、両親媒性のコポリマーであり、
等張性の条件下、pH=7.0の水中で、ナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成し、
ii)前記粒子は、等張性の条件下、pH=7.0で、少なくとも1つのAPと自発的かつ非共有的に会合することができ、
これらのPOのマイクロメトリック粒子は、試験Tで測定して、0.5と100μmの間の、好ましくは1と70μmの間の、特に好ましくは2と40μmの間のサイズを有し、
前記製品は、ポリマーのイオン化基GIの極性の反対の極性の多価イオン、好ましくは2価イオンの誘導体を含み、式
【数9】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、特に好ましくは0.8と3.0の間であることを特徴とする。
【0158】
この派生製品は、例えば、粉末またはゲルからなり得る。
【0159】
本発明は、本発明による製剤の調製に起因する中間物質として、本発明による製剤に由来するこれらの製品にさらに関する。したがって、本発明は、これら派生製品の少なくとも1つを調製するための方法にさらに関する。この方法は、マイクロメトリック粒子の懸濁液を乾燥して固体の形態、好ましくは、貯蔵または投与することができるマイクロメトリック粒子の粉末を得ることから本質的になることを特徴とする。
【0160】
このような派生製品は、本発明による製剤を調製する別の方法へのアクセスをもたらす。この方法は:
上記で定義した方法によって得られる少なくとも1つの派生の製品をとる工程と、
この派生製品を、水または再調製水溶液Sと混合する工程と
から本質的になることを特徴とする。
【0161】
後者の場合には、液体の医薬製剤を、注射前に固体の派生製品(例えば、粉末)を水またはSと混合することによって、使用直前に再調製する。
【0162】
例えば、Sは、水溶液を含んでもよく、単に注射可能な調製物用の水でもよい。
【0163】
さらに、Sは、任意選択で、
このバッファーまたはこの注射可能な塩により溶液のpHを調節するのが可能になる、例えば、0.001Mと0.1Mの間、好ましくは0.005Mと0.02Mの間の濃度の、少なくとも1つのバッファーまたは少なくとも1つの注射可能な塩(リン酸バッファー、クエン酸バッファー、塩化ナトリウム)、および
例えば、0.01%と2%の間の、好ましくは0.05と0.5%の間の濃度の、好ましくは、Tween(登録商標)20、もしくはTween(登録商標)80などのポリソルベートタイプの、またはLutrol(登録商標)F38、Lutrol(登録商標)F68、もしくはLutrol(登録商標)F127などのポロキサマータイプの、少なくとも1つの注射可能な界面活性剤を含むことができる。
【0164】
Sは、0.1%と10%の間、好ましくは0.5と5%の間の濃度の、糖類、すなわちスクロース、D-マンニトール、またはトレハロースなどの高密度化剤を含むこともできる。再調製溶液は、多糖類、合成ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、およびこれらの混合を含む群から選択される注入可能な増粘ポリマーを含むこともできる。
【0165】
より一般的には、本発明による製剤に加えることができる賦形剤の例として、当業者には知られている、抗微生物剤、バッファー、抗酸化剤、および等張性調整剤がある。例えば、Injectable Drug Development、P.K.Guptaら、Interpharm Press、Denver、Colorado、1999年というタイトルの書籍を参照するとよい。
【0166】
本発明によると、本発明による製剤のマイクロメトリック粒子を生じるナノ粒子の液体懸濁液の、例えば0.2μmの多孔度を有するフィルター上で、滅菌ろ過を提供することを想定することができる。このように、上記に記載した調製の様式による滅菌条件下での凝集により、製剤が直接患者中に注射できるようになる。
【0167】
本発明による製剤の主な性質には、同じpHで、同じタンパク質濃度およびポリマー濃度で投与して、同じポリマーのナノ粒子のコロイド懸濁液で得るものよりも長期間にわたってAPを放出することができる能力が含まれる。
【0168】
本発明は、特に非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは脳内経路または腫瘍内経路により、あるいは口の、鼻の、肺の、膣の、または眼の経路により投与する薬物の調製のための方法であって、上記に定義した製剤それ自体、やはり上記に定義した方法によって得られる製剤、または前記製剤に由来するいずれかの製品、または前記製剤のいずれかの前駆物質を用いることから本質的になることを特徴とする方法にさらに関する。
【0169】
本発明による製剤は薬剤であるのが好ましいが、これは上記に定義する少なくとも1つのPOおよび少なくとも1つのAPを含む、化粧用の、食事の、または植物衛生の製剤を除外するものではない。
【0170】
本発明は、本発表に記載する製剤を、非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、または脳内経路により、または腫瘍内へ、または口、鼻、肺、膣、もしくは眼の経路によって投与することから本質的になる治療的処置の方法にさらに関する。
【0171】
本発明の特定の一変形形態では、この治療的処置の方法は、上記に記載した製剤を、非経口、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは脳内経路、または腫瘍内経路によって、好ましくは注射部位にデポー(depot)を形成するようにして投与することからなる。
【0172】
以下の実施例から、本発明はより明確に理解され、本発明の利点および変形形態は明確に明らかになるであろう。以下の実施例は、疎水性基とグラフトされているポリアミノ酸から形成されているPOの合成、およびAPを持続放出するための系への変換、すなわち本発明による製剤(安定な水性コロイド懸濁液)を記載しており、治療用タンパク質と会合するためだけではなく、特に、in vivoで非常に長期の様式で治療用タンパク質を放出するゲル/架橋のための系の能力を実証するものである。
【0173】
(実施例)
(実施例1)
両親媒性のポリマーPO
合成起源のα-トコフェロールとグラフトしたポリグルタミン酸の合成
α-L-ポリグルタミン酸(ポリオキシエチレンの標準に対して約16900Daに等しい分子量を有し、特許出願FR-A-2 801 226に記載されているようにNCAGluOMeの重合化とその後の加水分解によって得たもの)15gを、ジメチルホルムアミド(DMF)288mlに、ポリマーが可溶化するまで80℃に加熱することによって可溶化する。溶液を15℃に冷却し、DMF8mlに予め可溶化したD,L-α-トコフェロール(>98%、Fluka(登録商標)より入手)2.5g、DMF1mlに予め可溶化した4-ジメチルアミノピリジン280mg、DMF6mlに予め可溶化したジイソプロピルカルボジイミド1.6gを、連続的に加える。3時間撹拌後、反応媒体を、15%の塩化ナトリウムおよび塩酸を含む水1200ml(pH=2)中に注ぐ。次いで、沈殿したポリマーをろ過により回収し、0.1N塩酸で、水で、およびジイソプロピルエーテルで洗浄する。次いで、ポリマーを、40℃の真空オーブンで乾燥して、90%台の収率を得る。サイズ排除クロマトグラフィーによって測定した分子量は、ポリオキシエチレンの標準に対して15500である。プロトンNMR分光法によって推定すると、グラフトされたトコフェロールの割合は、5.1mol%である。水におけるポリマーのナノ粒子の懸濁液を、水に可溶化し、pHを7±1に調節する(カルボン酸塩の中性化)ことによって得る。
【0174】
(実施例2)
hGHを添加したポリマーPOのナノ粒子のコロイド懸濁液100gの調製
(実施例2.1)
両親媒性ポリマーPOのコロイド溶液の調製
ポリマーを溶液中に一夜静置して、30℃の一定温度に到達させる。
実施例1のポリマーPO35.3gを量る。
これを注射用滅菌水26.65gで希釈する(ポリマーPOに対して28.4mg/gの濃度)。
ポリマー溶液を、マグネチックで撹拌する。
5.13MNaCl水溶液(30%w/w)1.89gを導入することによって、溶液のモル浸透圧濃度を300±20mOsmに調節する。
1NNaOH溶液0.38gを加えることによって、pHを7.4±0.2に調節する。
これにより、15.61mg/gを含むポリマー溶液64.22gが得られる。
【0175】
(実施例2.2)
タンパク質の、ポリマーとの会合
hGHと呼ばれる組換えヒト成長ホルモンの溶液を、25℃で90分間解凍する。
次いでhGH溶液(濃度3.9mg/g)35.92gを、予め調製したポリマーのコロイド溶液64.15gに撹拌しながら加える。
タンパク質を添加した溶液を、室温で2時間寝かす。
次いで、これを0.8〜0.2μmのフィルターを通し、一夜寝かす。
これにより、hGH1.4mg/gおよびPOタイプのポリマー10mg/gを含む、すぐに注射できる製剤100gが得られる。
【0176】
(実施例3)
MgCl2を用いたマイクロメトリック粒子の懸濁液の調製
実施例2にしたがって調製した溶液から、pHおよびモル浸透圧濃度を調節し、PO10.0mg/gを含む懸濁液を調製する。
a)撹拌しながら、約20ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて1MMgCl2溶液を加えることによる溶液の凝結(設定番号9)。カチオンの添加を特徴付ける割合:
【数10】

は、この場合3.36に等しい。PO8.51mg/gを含む溶液が得られる。
b)2500rpmで25分間遠心分離。澄明な上清は、646mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
c)滅菌水(最初の溶液の体積の1/8)での残渣の洗浄、および2500rpmで10分間の遠心分離。澄明な上清は350mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
d)2500rpmで10分間遠心分離。
この製剤は、以下のように特徴付けられる。
【0177】
【表7】

【0178】
(実施例4)
CaCl2およびpHの低下で生成されるマイクロ粒子の懸濁液の調製
hGH1.2mg/gおよびPO25.9mg/gの最終の特徴を有する、実施例2にしたがって調製した溶液から懸濁液を調製する。
a)撹拌しながら、約70ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて0.1NHClで最初の製剤をpH=5.52に調節。
b)撹拌(600rpm)しながら、約39ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて1MCaCl2溶液を加えることによるポリマーの凝結。カチオンの添加を特徴付ける割合:
【数11】

は、この場合1.68に等しい。
c)2500rpmで8分間遠心分離。澄明な上清は、pH4.73および653mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
d)MilliQ水(最初の溶液の1/8の体積)での残渣の洗浄および2500rpmで4分間の遠心分離。澄明な上清はpH4.72および378mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
e)2500rpmで4分間遠心分離することによって残渣を濃縮することで、濃縮した懸濁液が得られる。
得られた懸濁液は、以下のように特徴付けられる。
【0179】
【表8】

【0180】
(実施例5)
CaCl2で生成されるマイクロ粒子の懸濁液の調製
hGH1.2mg/gおよびPO26.01mg/gの最終の特徴を有する、実施例2にしたがって調製した溶液から懸濁液を調製する。
a)割合rが3.36になるまで、撹拌(600rpm)しながら、約40.3ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて1MCaCl2溶液を加えることによる最初の製剤の凝集。これにより、PO20.28mg/gに対してhGH0.93mg/gを含む製剤が得られる。
b)2500rpmで4分間遠心分離。澄明な上清は、pH6.34および832mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
c)MilliQ水(最初の溶液の体積の1/3)での残渣の洗浄、および2500rpmで8分間の遠心分離。澄明な上清は、pH6.56および334mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
d)2500rpmで8分間遠心分離することによって残渣を濃縮することで、濃縮した懸濁液が得られる。
この製剤は、以下のように特徴付けられる。
【0181】
【表9】

【0182】
(実施例6)
ZnCl2で生成されるマイクロ粒子の懸濁液の調製
hGH1.4mg/gおよびPO10.00mg/gの最終の特徴を有する、実施例2にしたがって調製した溶液から懸濁液を調製する。
a)割合rが1.54になるまで、撹拌(no.9に設定)しながら、約20ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて1MZnCl2溶液を加えることによる溶液の凝結。PO9.64mg/gを含む溶液が得られる。
b)2500rpmで4分間遠心分離。澄明な上清は389mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
c)滅菌水(最初の溶液の体積の1/13)での残渣の洗浄、および2500rpmで8分間の遠心分離。澄明な上清は237mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
d)0.9%NaCl(最初の溶液の体積の1/8)での残渣の洗浄。2500rpmで8分間遠心分離。澄明な上清は253mOsmのモル浸透圧濃度を有する。その時計算される理論上の濃度は、64.97mg/mlである。
この製剤は、以下のように特徴付けられる。
【0183】
【表10】

【0184】
(実施例7)
条件1の下でMgCl2で生成されるマイクロ粒子の懸濁液の調製
pHおよびモル浸透圧濃度を調節した、hGH0.48mg/gおよびPO23.05mg/gの最終の特徴を有する、実施例2にしたがって調製した溶液から懸濁液を調製する。
a)0.9%NaClで10.0mg/gに希釈する。
b)割合rが6.93になるまで、撹拌(no.10に設定)しながら、約20ml/時間を送達する動作制御されているシリンジを用いて1MMgCl2,6H2O溶液を加えることによる溶液の凝結。これによりPO8.59mg/gを含む溶液が得られる。
c)2500rpmで10分間遠心分離。澄明な上清は654mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
d)滅菌水(最初の溶液の体積の1/7)での残渣の洗浄、および2500rpmで10分間の遠心分離。澄明な上清は291mOsmのモル浸透圧濃度を有する。
この製剤は、以下のように特徴付けられる。
【0185】
【表11】

【0186】
(実施例8)
条件2の下でMgCl2で生成されるマイクロ粒子の懸濁液の調製
pHおよびモル浸透圧濃度を調節した、hGH1.33mg/gおよびPO10.10mg/gの最終の特徴を有する、実施例2にしたがって調製した溶液から懸濁液を調製する。
a)割合rが10.01になるまで、撹拌(500rpm)しながら、約8ml/分を送達するポンプを用いて、窒素をバブリングした2MMgCl2,6H2O溶液を加えることによる窒素スイープの存在下の溶液の凝結。これによりPO8.98mg/gを含み、914mOsmのモル浸透圧濃度を有する溶液が得られる。
b)撹拌しながら3時間寝かせる。
c)0.02m2の特定の表面積を有するMicrozaモジュール(UJP-0047R-Pall)の使用。このモジュールを、最初に調整し(水に浸すことによるグリセロールおよびエタノールの除去)、発熱性物質を除去し(7%NaOHの後、水ですすぐ)、オートクレーブにかける。
d)モル浸透圧濃度900mOsmを有するMgCl2溶液でモジュールを調整する。
e)滅菌水(凝結した製剤の体積の1.04倍)で洗浄し、これを8ml/分の速度で加えて全体の体積を一定に保つ。循環はポンプの25%の能力で保証され、0.3バールの圧力を維持する。このステップを3時間続ける。澄明なろ過物の最終のモル浸透圧濃度は459mOsmである。
f)その循環がポンプの25%の能力で保証されるMicrozaモジュール(0.02m2)の使用。透過水量4.4ml/分での濃縮。このステップを160分間続ける。ろ過物の最終のモル浸透圧濃度は324mOsmである。
この製剤は、白色の液体懸濁液であり、以下の特徴を有する。
【0187】
【表12】

【0188】
(実施例9)
条件3の下でMgCl2で生成されるマイクロ粒子の安定な懸濁液の調製
a)hGH1.4mg/g/PO10mg/gの、以降最初の製剤と呼ぶ、実施例2にしたがって調製したPOの溶液の調製
組換えヒト成長ホルモンの溶液を、25℃で2時間解凍する([hGH]=3.9mg/ml、pH=7.2、330mOsm)。
ポリマーPOを希釈し調節する(300mOsm、pH=7.4、15.6mg/g)。
hGHの溶液をポリマー上に注ぎ、次いでhGH/PO混合物(1.4/10mg/g)を脱ガスする。
室温で一夜、会合させる。
【0189】
【表13】

【0190】
b)マイクロ粒子hGH5mg/g/Mgマイクロ粒子40mg/gの調製
2MMgCl2を9.01の割合rで制御して加えることにより最初の製剤を凝結し、その後全体を1時間寝かす(熟成)。
接線方向の微量ろ過(0.32m2の特定の表面積を有する、PallからのMicrozaモジュール)によって、モル浸透圧濃度が約300mOsmになるまで懸濁液を水で洗浄する。次いで、これを38と41mg/gのPO濃度まで濃縮する。
【0191】
【表14】

【0192】
c)hGH5mg/g/Mgマイクロ粒子40mg/g/PO23mg/gの混合製剤の調製
凍結乾燥型のPOタイプのポリマーを加えることによりマイクロ粒子を安定化する。
凍結乾燥物を、撹拌しながら懸濁液に加える。
全体を、撹拌しながら翌日まで真空下(30mバール)に配置する。
【0193】
【表15】

【0194】
(実施例10)
本発明による方法の第1の実施形態による、マイクロ粒子の懸濁液からのhGHを添加した乾燥マイクロメトリック粒子の調製
最初に、hGHを添加したマイクロ粒子の懸濁液を、実施例8のステップa)からe)(凝結、寝かせ、洗浄)に記載した条件下で生成する。懸濁液を、モル浸透圧濃度が約280mOsmになるまで洗浄する。次いで、ポリマー約10mg/gを含む懸濁液を、76時間液体窒素中で凍結させた後、Bioblock ALPHA 1-4 LSC装置上で凍結乾燥する。
【0195】
懸濁液の再調製および特徴付け
注射可能製剤用の水1mlを、粉末40mgに加える。溶液を、数秒間手で撹拌して粉末を均一に湿潤させる。溶液を、約10分間静置する。これを、手操作の撹拌によって数秒間均一にし、21G針を用いて引いて、すぐに注射可能な溶液1mlを得る。
懸濁液の特徴を以下に記載する。
【0196】
【表16】

【0197】
(実施例11)
本発明による方法の第2の実施形態によるマイクロ粒子の懸濁液からのhGHを添加したポリマーの乾燥マイクロメトリック粒子の調製
最初に、hGHを添加したマイクロ粒子の懸濁液を、実施例8のステップa)からe)(凝結、寝かせ、洗浄)に記載した条件下で生成する。懸濁液を、モル浸透圧濃度が約280mOsmになるまで洗浄する。次いで、ポリマー約10mg/gを含む懸濁液を、Buchi B290微粒化装置上で乾燥させる。液体溶液を5ml/分の速度で引き、窒素を送り込んだスプレーノズルによって噴霧する(7バール-500l/時間)。吸引速度(乾燥空気)は、40m3/時間である。入り口温度を90℃に保ち、これらの条件下で45℃の出口温度が導かれる。
これらの条件下、(試験T2によって)得られた粒子のサイズD(0.5)は5μmである(体積の50%は、<5μmの直径を有する粒子によって占められている)。
【0198】
懸濁液の再調製および特徴付け
注射可能製剤用の水1mlを、粉末30mgに加える。溶液を、数秒間手で撹拌して粉末を均一に湿潤させる。溶液を約10分間静置する。これを、手操作の撹拌によって数秒間均一にし、21G針を用いて引いてすぐに注射可能な溶液1mlを得る。
懸濁液の特徴を以下に記載する。
【0199】
【表17】

【0200】
(実施例12)
ナノ粒子およびマイクロ粒子の形態の両親媒性のポリアミノ酸をベースとする様々な製剤を皮下注射した後のイヌにおけるhGHの薬物動態
12頭の無処置のビーグル犬(体重7から10kg)を、以下の製剤で処置した。
【0201】
【表18】

【0202】
hGH IRは、組換えヒト成長ホルモンの溶液に相当する。([hGH]=4mg/ml、pH=7.2、330mOsm)。
【0203】
製剤1を実施例2にしたがって調製し、製剤2を実施例7にしたがって調製する。hGHをELISAによりアッセイする(DSL 10-1900キット)。
【0204】
薬物動態のデータを、以下の表に照合する。
【0205】
【表19】

【0206】
表中、
Cmaxは、hGHの最大血清濃度であり、
T>5ng/mlは、血清hGH濃度が5ng/mlを超える時間であり、
AUCは、時間の関数としての、血清hGH濃度の曲線下面積を表し、
RBAは、即時放出製剤に対するバイオアベイラビリティーを表し、
T50%aucは、放出された全hGHの50%を放出するのに必要とされる時間を表す。
【0207】
hGH IRは迅速な放出プロファイルを有し、最大血清濃度は2時間の中央時間後に到達する582±155ng/mgである。次いで、hGHは、単一指数関数の減少にしたがって、かなり迅速に(見かけのT1/2約2時間)排除される。次いで、循環するhGHは24時間を超えて最早定量可能ではなくなる。
【0208】
製剤1は、長期のhGH放出プロファイルを有し、緩慢な吸収期の後、24時間の中央時間後に、比較可能な最大血清濃度(それぞれ44±6および37±4ng/mg)に到達する。排除勾配は、48時間を超えて定量可能なhGHが存在しないことを示している(血清濃度は4.8±3.1ng/ml)である。
【0209】
この製剤は、24時間を中心とするCmaxにおけるシフトが説明するように、この場合、血液コンパートメント中へhGHがゆっくりと放出されることを実証している。しかし、48時間における循環濃度はゼロであると思われるので、この現象は、血清におけるhGHの存在を著しく延長しないと考えられる。製剤1のAUCは、対照のIRに対して僅かに減少すると思われ、バイオアベイラビリティーは80%である。
【0210】
一方、製剤2は、薬物動態のプロファイルの主要な修飾を提供し、非常にゆっくりとした放出の後、4時間の遅延時間が続き、次いで、108時間の中央時間(範囲:72〜168時間)の後25±5ng/mlの最大血清濃度に到達する。製剤2の薬物動態の一般的傾向は、注入様タイプの偽似プラトーの形態の非常に平坦なプロファイルである。循環hGHのレベルは、168時間と240時間(7と10日)の間に、定量不可能な濃度に戻る。この製剤のAUCは非常に小さく、相対的なバイオアベイラビリティーの喪失は45%である(RBA=55%)。
【0211】
(実施例13)
マイクロ粒子の形態の両親媒性のポリアミノ酸をベースとする製剤の皮下注射後のイヌにおけるhGHの薬物動態
12頭の無処置のビーグル犬(体重7から10kg)を、以下の製剤で処置した。
【0212】
【表20】

【0213】
hGH IRは、組換えヒト成長ホルモンの溶液に相当する。([hGH]=4.1mg/ml、pH=7.2、330mOsm)。製剤13を実施例9にしたがって調製する。
【0214】
薬物動態のデータを、以下の表に照合する。
【0215】
【表21】

【0216】
表中、
Cmaxは、hGHの最大血清濃度であり、
T>1ng/mlは、血清hGH濃度が1ng/mlを超える時間であり、
AUCは、時間の関数としての、血清hGH濃度の曲線下面積を表し、
RBAは、即時放出製剤に対するバイオアベイラビリティーを表し、
T50%aucは、放出された全hGHの50%を放出するのに必要とされる時間を表す。
【0217】
マイクロ粒子は、5日を超える日数にわたってhGHを放出し、バイオアベイラビリティーの喪失は23%である。
【0218】
(比較例14)
本発明によるマイクロ粒子およびPOのナノ粒子からのhGHのin vitroの放出(試験L)
POのナノ粒子(実施例2)およびPOのマイクロ粒子(実施例8)からのhGHの放出の比較を、試験Lで行う。連続相は、30mg/gを含むアルブミンのバッファー溶液である。
付属の単一図は、製剤が注入可能な:
23mg/gを含むナノ粒子:tr=40分、すなわち0.67時間
73mg/gを含むマイクロ粒子:Tr=973分、すなわち16.22時間
である濃度条件下、タンパク質(hGH)の50%を放出するのに必要とされる時間を示している。
マイクロ粒子に含まれるhGHは、ナノ粒子に含まれるものよりも24倍ゆっくり放出される。
【0219】
(実施例15)
ポリマーPOおよびインスリンのマイクロ粒子の凍結乾燥粉末を含む個々のフラスコの調製(100UI/フラスコ)
500UI/g(17.5mg/g)に濃縮したインスリン溶液350gの調製
組換えヒトインスリン6.4g(粉末)(28.6UI/g、含水量4.5%)6.4gを、ガラスフラスコに導入する。水157gを加え、低速のマグネチックの撹拌でインスリンを分散させる。酸性インスリンの澄明な溶液を得るまで、0.1NHCl 46.6gを加える。次いで、7と8の間からなるpHを有する最終の澄明な溶液を得るために、0.1N炭酸ナトリウム69.8gを加える。水70.2gを加えることにより、溶液を所望の濃度に希釈する。
【0220】
ポリマーPOの溶液との混合
得られた濃度のインスリン溶液326gを、ポリマーPOの溶液(11mg/gに濃縮したもの)3426g上に、(マグネチックで撹拌しながら)ゆっくりと注ぐ。混合液を、0.2μmのフィルターを通し、一夜、低速で撹拌して放置する。以下のステップは全て、無菌条件下で行う。
【0221】
凝集-洗浄-濃縮
先の製剤を、2MMgCl2 377gを制御しながら加えることによって凝結させる(割合rは7.2)。1時間寝かせた後、懸濁液を、モル浸透圧濃度が約340mOsm でありPO濃度が約27mg/gに濃縮されるまで、接線方向の微量ろ過によって(0.32m2の特定の表面積を有するPallからのMicrozaモジュール)水で洗浄する。懸濁液に1NNaOH溶液(約6g)を加えることによって、pHを6.5に調節する。これにより、インスリン約100UI/gを含む懸濁液を得る(正確な値は、C18グラフトしたシリカカラム上のHPLCによって得ることができる)。
【0222】
ポリビニルピロリドンの添加
約40mg/gに濃縮したポリビニルピロリドンの貯蔵溶液200gを、注入可能のポリビニルピロリドン粉末(例えばK17)から得、0.2μmの滅菌フィルターを通過させる。次いで、フィルターを通した溶液120gを、先の懸濁液1200gに滅菌条件下で加え、混合物を約15分間撹拌する。
得られた懸濁液は、インスリン約91UI/gを含む。
【0223】
凍結乾燥
先の懸濁液を、フラスコ1本あたり100UIで個々のフラスコに分配し(フラスコ1本あたり先の懸濁液約1.1g)、フラスコを、1サイクルの72時間の間、滅菌条件下凍結乾燥する。次いでこれらを、使用するまで密封する。
【0224】
(実施例16)
実施例15で得たマイクロ粒子/インスリンのフラスコの再調製
懸濁液を、以下のように(使用前に)即時再調製する:
シリンジおよび針を用いて先の実施例で得たインスリン100UIを含むフラスコに水1mlを導入する。
【0225】
均一な(乳状の)懸濁液を得るために、フラスコを、手操作で数秒間撹拌する:懸濁液をシリンジで引き、例えば、30Gのニードルで注入するように準備をする。
【0226】
再調製した懸濁液が含むのは:
ポリマーPO 23mg/ml
インスリン100UI/ml(3.5mg/ml)
ポリビニルピロリドン4mg/ml
Mg2+ 0.18mmol/ml(r=2.8)である。
【0227】
再調製した懸濁液の特徴を以下に記載する:
【0228】
【表22】

【0229】
20℃で測定した動的粘度は5mPa.Sに等しい。
【0230】
(実施例17)
マイクロ粒子の形態の両親媒性ポリアミノ酸をベースとする製剤を皮下注射後のイヌにおけるインスリンの薬物動態
無処置のビーグル犬(体重10.4±0.6kg)6頭の2群を、2ピリオドの交差試験の間、以下の製剤の1つで連続的に処置した。
【0231】
【表23】

【0232】
この試験の対照であるLantus(登録商標)は、Sanofi-Aventisによって供給される修飾されたインスリン類似体(インスリングラルギン)である。ヒトインスリンの1次構造上の2個のアミノ酸残基を修飾すると、in situの沈殿のおかげで24時間の期間にわたって持続放出するいくつかの性質がLantus(登録商標)に与えられる。
【0233】
製剤4は、実施例16にしたがって調製される。
【0234】
自動生化学分析器(Advia 1650、Bayer Diagnostics)で酵素法(ヘキソキナーゼ)によって、糖血症が確認された。
薬物動態の結果の分析は、時間の関数として基底の糖血症のパーセント値に基づくものである。
【0235】
薬物動態のデータを、以下の表に照合する。
【0236】
【表24】

【0237】
表中、
Cminは、観察された基底の糖血症の最小パーセント値であり、
APGC0〜36hは、投与後0時間と36時間の間の時間の関数としての、基底の糖血症と基底の糖血症のパーセント値の間の面積を表し、
T50%APGCは、APGC0〜36hの50%を得るのに必要とされる時間を表す。
【0238】
参照のLantus(登録商標)の投与により、第1時間から糖血症が急速に減少する。次いで、インスリングラルギンの低血糖性の作用が、18と36時間の間からなる期間にわたって維持される(糖血症は、平均30時間後にその基底レベルに戻る)。
比較すると、製剤4の投与により、第1時間から糖血症がやはり急速に減少する。次いで、基底の糖血症のパーセント値は、平均36時間までプラトーを維持する。製剤4で得たCminは、参照のLantus(登録商標)で得た値よりも有意に高く(p<0.005、対応のある片側のStudentのt検定)、糖尿病患者における重度の低血糖の段階を有意に低減し得る。
【0239】
製剤4の作用時間は、長時間作用型の参照のLantus(登録商標)の作用時間よりも明らかに長い。これは、製剤4に対して有意に高いT50%APGC値によって説明される(p<0.005、対応のある片側のStudentのt検定)。APGC0-36hの喪失は、参照のLantus(登録商標)と比べて製剤4では観察されなかった。
【0240】
(実施例18)
ポリマーPOおよびインターフェロンα-2bのマイクロ粒子の凍結乾燥粉末の調製
ポリマーPO15mg/gおよびd’IFN0.19mg/gを含む溶液の調製
ポリマーPO16.5mg/gの溶液166gを、500mlフラスコに導入する。0.3M メチオニン溶液2.3gを加える。凍結したIFNα-2b溶液(濃度2.4mg/g)を25℃で1時間解凍し、この凍結溶液13gを、ポリマー溶液を含むフラスコに導入する。混合物を室温に14時間放置する。
溶液を、0.2μm滅菌フィルターを通過させる。以下のステップは全て、滅菌条件下で行う。
【0241】
凝結-洗浄-濃縮
2MMgCl2 148.5gを制御しながら加えることにより(7.0の割合r)、先の製剤129.5gを凝結させる。懸濁液を4個のフラスコに分配し(フラスコ1本あたり約37g)、3000rpm/分で15分間遠心分離する。遠心分離の残渣に触れないよう注意しながら、上清30.5gをフラスコから除去する。次いで、残渣を、各フラスコで、滅菌水17gで洗浄する。このステップでは、モル浸透圧濃度は約300mOsmである。
【0242】
凍結乾燥
先の懸濁液を、Lyoguard(登録商標)タイプ(Gore(登録商標))のトレイに分配し、凍結乾燥の間、懸濁液を滅菌に保つ。次いで、トレイを、実験室用凍結乾燥機(Christ)で、72時間のサイクルの間、滅菌条件下で凍結乾燥する。
【0243】
(実施例19)
実施例18で得た凍結乾燥粉末からのインターフェロンα-2bを含むマイクロ粒子の懸濁液の再調製
製剤において正確に0.5mg/gのインターフェロンを得るのに用いるための粉末の量を知るために、予備的な再調製試験を行い、インターフェロンα-2bを、C18-グラフトしたシリカカラムでHPLCによりアッセイする。
【0244】
懸濁液を、以下のように即時的に再調製する(使用前):
凍結乾燥粉末1.22g上に水13.58gを加え、懸濁液をマグネチック棒で1時間均一化する。
【0245】
得られた懸濁液を均一化する(乳状):懸濁液をシリンジで引き、例えば、30Gの針で注入する準備をする。
【0246】
再調製した懸濁液は:
ポリマーPO 46mg/ml
インターフェロンα-2b 0.5mg/ml
Mg2+ 0.34mmol/ml(r=2.6)
を含む。
【0247】
再調製した懸濁液の特徴を以下に記載する:
【0248】
【表25】

【0249】
(実施例20)
マイクロ粒子の形態の両親媒性ポリアミノ酸をベースとする製剤の皮下注射後のイヌにおけるIFNの薬物動態
無処置のビーグル犬(体重9±0.6kg)8頭を以下の製剤で処置した。
【0250】
【表26】

【0251】
IFN IRは、組換えヒトインターフェロンの溶液(濃度、pH、およびモル浸透圧濃度を調節したバッチIB05.0516([IFN]=0.5mg/ml、pH=6.45、354mOsm))に相当する。
【0252】
製剤5は、同じバッチのインターフェロン(PCGen)から、実施例19にしたがって調製される。
【0253】
薬物動態のデータを、以下の表に照合する。
【0254】
【表27】

【0255】
表中、
Cmaxは、IFNの最大血清濃度であり、
T>50pg/mlは、血清IFN濃度が50pg/mlを超える時間であり、
AUCは、時間の関数としての血清IFN濃度の曲線下面積を表し、
RBAは、即時放出製剤に対するバイオアベイラビリティーを表し、
T50%aucは、放出される全IFNの50%を放出するのに必要とされる時間を表す。
【0256】
IFN IRは急速な放出プロファイルを有し、最大の血清濃度は中央時間である5時間(範囲3〜5時間)後に到達する25.2±0.4ng/mlである。循環するIFNは24時間を超えると最早定量可能ではない。
製剤1は、IFNの薬物動態プロファイルの主な修飾を提供し、放出は非常に遅く、最大血清濃度は中央時間の108時間(範囲66〜144時間)後に到達する0.9±0.6ng/mlである(IRの濃度より28倍低い)。薬物動態の一般的傾向は、偽似プラトー型の平坦なプロファイルである。循環するIFNは、168時間と240時間を超える(7日と10日を超える)間の定量不可能な濃度に戻る。
この製剤のAUCはより小さく、相対的なバイオアベイラビリティーの41%の喪失(RBA=59%)である。T50%aucは、IFN IRのT50%aucよりも約19倍大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(PO)のマイクロメトリック粒子をベースとする低粘度の水性コロイド懸濁液を含む、APを持続放出するための液体医薬製剤であって、
i.ポリマーPOは
疎水性基(GH)および少なくとも部分的にイオン化されているイオン化親水性基(GI)を保有する、水溶性、生分解性、両親媒性の(コ)ポリマーであり、
等張性の条件下、pH=7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成し、
ii.前記粒子は、等張性の条件下、pH=7.0で、少なくとも1つの活性成分(AP)と自発的かつ非共有的に会合することができ;
POのマイクロメトリック粒子は、試験Tで測定して、0.5μmと100μmの間の、好ましくは1μmと70μmの間の、好ましくは2μmと40μmの間のサイズを有し、ポリマーのイオン化基GIの極性と反対の極性の、4以下のイオン価を有する多価イオン、好ましくは2価イオン、3価イオン、またはそれらの混合を含み、前記多価イオンは、試験Mで測定され、式:
【数1】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、より好ましくは0.80と3.0の間に含まれるような量のマイクロメトリック粒子へと、ポリマーのナノ粒子を凝集させるために加えてあることを特徴とする液体医薬製剤。
【請求項2】
マイクロメトリック粒子が、試験Dで測定される、0.05と1.0の間、好ましくは0.07と0.7の間、特に好ましくは0.1と0.5の間の見かけのポリマー密度dappを有することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
試験Lで測定される、所与のAPの放出時間Trが、同一の試験Lで測定される、多価イオンを含まない同一の注射可能な製剤の放出時間trに比べて増大し、この増大は、Trが1.1×tr以上であり、好ましくはTrが1.5×tr以上であるような増大であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
POのマイクロ粒子と会合している少なくとも1つのAPを含むことを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
製剤の20℃における動的粘度が、1000s-1のせん断勾配に対して、500mPa.s以下であり、好ましくは2と200mPa.sの間であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
疎水性基(GH)が鎖に対して側方に付着していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
ポリマーPOが、ポリアミノ酸、(ポリ)ペプチド、ゼラチン、タンパク質、好ましくはプルランおよび/またはキトサンおよび/またはムコ多糖を含む亜群から選択される多糖、ならびにそれらの混合を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
疎水性に修飾されているポリマーPOが、(コ)ポリアミノ酸から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
ポリマー(PO)が、その主鎖がアスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基でできているポリアミノ酸であることを特徴とし、これらの残基の少なくともいくつかが、鎖中または鎖の終端において少なくとも1つの疎水性基(GH)のグラフト化によって修飾されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
疎水性に修飾されているポリマーPOが、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
R1は、H、直鎖C2からC10、もしくは分枝C3からC10アルキル、ベンジル基、アミノ酸の末端残基、または-R4-[GH]であり、
R2は、H、直鎖C2からC10、もしくは分枝C3からC10アシル基、ピログルタミン酸、または-R4-[GH]であり、
R3は、Hまたは
ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む亜群から有利に選択される金属カチオン、
アミンをベースとするカチオン、
オリゴアミンをベースとするカチオン、
ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)をベースとするカチオン、および
リジンまたはアルギニンをベースとするカチオンを含むクラスから有利に選択される(複数の)アミノ酸をベースにするカチオン
を含む亜群から有利に選択される有機カチオン、
ならびにポリリジンおよびオリゴリジンを含む亜群から有利に選択されるカチオン性のポリアミノ酸
を含む群から好ましくは選択されるカチオン実体であり、
R4は、直接結合、または1から4個のアミノ酸残基をベースにする「スペーサー」であり、
Aは、独立に、基-CH2-(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり、
n/(n+m)は、モルグラフト化率と定義され、その値はPOに対して十分に低く、pH=7および25℃の水に溶解してPOのサブミクロン粒子のコロイド懸濁液を形成し、n/(n+m)は、好ましくは1 mol%と25 mol%の間であり、特に好ましくは1 mol%と15 mol%の間であり、n+mは、10から1000、好ましくは50と300の間で変動し、
GHは、疎水性基である]
によって定義されることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
疎水性基GHが、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、およびコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆物質に由来し、R4が直接結合であることを特徴とする、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
POが、以下の一般式(II)、(III)、および(IV):
【化2】

[式中、
GHは、疎水性基であり、
R30は、直鎖C2からC6アルキル基であり、
R3’は、Hまたは
ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む亜群から有利に選択される金属カチオン、
アミンをベースとするカチオン、
オリゴアミンをベースとするカチオン、
ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)をベースとするカチオン、および
リジンまたはアルギニンをベースとするカチオンを含むクラスから有利に選択される(複数の)アミノ酸をベースにするカチオン
を含む亜群から有利に選択される有機カチオン、
ならびにポリリジンおよびオリゴリジンを含む亜群から有利に選択されるカチオン性ポリアミノ酸、
を含む群から好ましくは選択されるカチオン実体であり、
R50は、C2からC6アルキル、ジアルコキシ、またはジアミン基であり、
R4は、直接結合、または1から4個のアミノ酸残基をベースにする「スペーサー」であり。
Aは、独立に、基-CH2-(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり、ならびに
(n’+m’)またはn’’は、重合度と定義され、10から1000、好ましくは50と300の間で変動する]
の1つを有することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
POのn個の基GHが、各々互いに独立して、以下の式:
【化3】

[式中、
R5は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec-ブチル(イソロイシン)、またはベンジル(フェニルアラニン)基であり、
R6は6から30個の炭素原子を含む疎水性基であり、
lは、0から6まで変動する]
の1価の基であることを特徴とする、請求項10に記載の製剤。
【請求項14】
POの疎水性基R6の全部または一部が、
6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、N、またはS)または少なくとも1単位の不飽和を含むことができる直鎖または分枝アルコキシ、
6から30個の炭素原子を含み、1個または複数個の縮合環状炭素を有し、任意選択で少なくとも1単位の不飽和および/または少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、および/またはN、および/またはS)を含むアルコキシ、ならびに
7から30個の炭素原子を有し、少なくとも1単位の不飽和または少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、O、N、またはS)を含むことができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル
を含む基の群から独立に選択されることを特徴とする、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
POのグラフトの疎水性基R6が、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、およびコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆物質に由来することを特徴とする、請求項13または14に記載の製剤。
【請求項16】
ポリアミノ酸の主鎖が、α-L-グルタミン酸、またはα-L-グルタミン酸ホモポリマーであることを特徴とする、請求項9に記載の製剤。
【請求項17】
ポリアミノ酸の主鎖がα-L-アスパラギン酸、またはα-L-アスパラギン酸ホモポリマーであることを特徴とする、請求項9に記載の製剤。
【請求項18】
ポリアミノ酸の主鎖が、α-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸、またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーであることを特徴とする、請求項9に記載の製剤。
【請求項19】
POの分子量が2000と100000g/molの間であり、好ましくは5000と40000g/molの間であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
POがアニオン性基GIを有し、多価イオンが多価カチオン、好ましくは2価のカチオン、特に好ましくはMg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+、およびこれらの混合物を含む群から選択されるものであり、またはより特に好ましくはAl3+、Fe3+、およびこれらの混合物を含む群から選択される3価のカチオンであることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
→POが疎水性基(GH)および少なくとも部分的にイオン化されているイオン化疎水性基(GI)を保有する水溶性、生分解性、両親媒性のコポリマーであり、等張性の条件下、pH=7.0の水中で、ナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成する、少なくとも1つのポリマーPOのナノ粒子、
→ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、
→コポリアルキレングリコール、好ましくは(ポロキサマー、Pluronic、またはLutrolタイプの)エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、
→セルロースポリマーおよびその誘導体、好ましくはカルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、またはアルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、
→ソルビタンと1つまたは複数の脂肪酸とのエステル、好ましくは、Tweenまたはポリソルベートタイプの、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)グリコールと少なくとも1つの酸(例えば、オレイン酸)とのエステル、
→リン脂質およびポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールをベースとする界面活性剤、
→水素添加した、または水素無添加の糖類、例えば、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、もしくはスクロース、
→ポリオール、例えば、プロピレングリコール、またはグリセロール、
→ゼラチン、好ましくは加水分解したゼラチン、
→好ましくはポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリ-N-ビニルラクタムを含む群からの含窒素コポリマー、
→ポリビニルアルコール(PVA)、
→ならびにこれらの混合物
を含む群から選択される少なくとも1つの安定化剤を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
APが、タンパク質、糖タンパク質、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖に結合しているタンパク質[好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖体、リポ多糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびこれらの混合物を含む群から、特に好ましくは、エリスロポエチン、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、造血刺激因子およびこれらの混合物、第VIIIおよびIX因子、ヘモグロビン、チトクローム、プロラクチン、アルブミン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH拮抗物質、LHRH競合物質;ヒト、ブタ、またはウシ成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキンまたはこれらの混合物(IL-2、IL-11、IL-12)、α-、β-またはγ-インターフェロン、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、VEG-F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリンおよび合成類似体、ならびに酵素、サイトカイン、抗体、抗原、およびワクチンの薬剤上活性な修飾物およびフラグメントを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項23】
APが「小型の」疎水性、親水性、または両親媒性の有機分子であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
活性成分が、以下の活性物質のファミリー:アルコール乱用を治療するための薬剤、アルツハイマー病を治療するための薬剤、麻酔薬、末端肥大症を治療するための薬剤、鎮痛薬、抗喘息薬、アレルギーを治療するための薬剤、抗癌薬、抗炎症薬、抗凝血および抗血栓薬、抗痙攣薬、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、鎮吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心臓血管作動薬、脂質低下薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、抗高血圧薬、血管保護薬、コリンエステラーゼ阻害薬、中枢神経系の障害を治療するための薬剤、中枢神経系刺激薬、避妊薬、受胎促進薬、分娩誘発薬および阻害薬、膵線維症を治療するための薬剤、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症を治療するための薬剤、勃起不全を治療するための薬剤、受胎能を治療するための薬剤、消化器障害を治療するための薬剤、免疫調節薬および免疫抑制薬、記憶障害を治療するための薬剤、抗偏頭痛薬、筋肉弛緩薬、ヌクレオシド類似物質、骨粗しょう症を治療するための薬剤、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、精神治療薬、鎮静薬、催眠薬およびトランキライザー、神経遮断薬、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ薬、皮膚科の障害を治療するための薬剤、ステロイドおよびホルモン、アンフェタミン、抗食欲不振薬、非鎮痛薬性痛み止め、抗てんかん薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、催眠薬、緩下剤、向精神薬、ならびにこれらの製品のいずれかの組合せの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
マイクロメトリック粒子と会合していないAP[非会合AP]の重量分率が、%で:
[非会合AP]≦1
好ましくは、[非会合AP]≦0.5
であることを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
APが、組換えヒト成長ホルモンhGHであることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
APがインスリンであることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
APがインターフェロンα-2bであることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
特に非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは脳内経路または腫瘍内経路により、あるいは口の、鼻の、肺の、膣のまたは眼の経路により投与する薬物の調製を意図するものであることを特徴とする、請求項1から28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載の製剤を調製するための方法であって、
a.少なくとも1つのPOのナノ粒子のコロイド懸濁液をとる、または調製する工程と、
b.好ましくは水溶液中で、POのナノ粒子のこのコロイド懸濁液を少なくとも1つのAPと任意選択で混合する工程と、
c.得られた懸濁液を任意選択でろ過する工程と、
d.ポリマーPOの基GIの極性と反対の極性の(好ましくは(複数の)塩の形態の)多価イオンを、式、
【数2】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、特に好ましくは0.80と3.0となるような量で加える工程と、
e.必要ならpHまたはモル浸透圧濃度を調節する工程と
から本質的になることを特徴とする方法。
【請求項31】
APが、POのナノ粒子またはマイクロ粒子のコロイド懸濁液と混合するための水性懸濁液または水溶液の形態であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
マイクロメトリック粒子の懸濁液を乾燥して固体の形態、好ましくは、貯蔵または投与することができるマイクロメトリック粒子の粉末を得ることから本質的になることを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の製剤に由来する、または請求項30に記載の方法によって得られる製剤に由来する製品を調製するための方法。
【請求項33】
請求項1から29のいずれか一項に記載の製剤を調製するための方法であって、
請求項32に記載の方法によって得られる(APを添加したまたは添加していない)少なくとも1つの派生製品をとる工程と、
この派生製品を、水または再調製水溶液Sと混合する工程と
から本質的になることを特徴とする方法。
【請求項34】
非液体の形態であり、ポリマー(PO)のマイクロメトリック粒子を含み、
i.ポリマーPOは、
疎水性基(GH)およびイオン化親水性基(GI)を保有する、水溶性、生分解性、両親媒性の(コ)ポリマーであり、
等張性の条件下、pH=7.0の水中で、ナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成し、
ii.前記粒子は、等張性の条件下、pH=7.0で、少なくとも1つの活性成分(AP)と自発的かつ非共有的に会合することができ、
これらのPOのマイクロメトリック粒子は、試験Tで測定して、0.5μmと100μmの間の、好ましくは1μmと70μmの間の、好ましくは2μmと40μmの間のサイズを有し、
前記製品は、ポリマーの基GIの極性と反対の極性の多価イオン、好ましくは2価イオンの誘導体を含み、式
【数3】

[式中、
nは、前記多価イオンのイオン価であり、
[IM]は多価イオンのモル濃度であり、
[GI]はイオン化基GIのモル濃度である]
によって定義される割合rが0.3と10の間、好ましくは0.6と5.0の間、より好ましくは0.80と3.0の間に含まれることを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の製剤に由来する製品。
【請求項35】
粉末またはゲルからなることを特徴とする、請求項34に記載の派生製品。
【請求項36】
特に非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは脳内経路、または腫瘍内経路により、あるいは口の、鼻の、肺の、膣のまたは眼の経路により投与する薬物の調製のための方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の製剤、および/または請求項30から32のいずれか一項に記載の方法によって得られる製剤、および/または前記製剤に由来するいずれかの製品、および/または前記製剤のいずれかの前駆物質を少なくとも1つ用いることから本質的になることを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−539810(P2009−539810A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513711(P2009−513711)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055720
【国際公開番号】WO2007/141344
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508361829)フラメル・テクノロジーズ (2)
【Fターム(参考)】