説明

(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、その使用方法及び組成物

【課題】ベーチェット病を治療するための医薬組成物の提供。
【解決手段】(−)異性体を含まない、立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、並びにそのプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物及び包接物を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の技術分野
本発明は、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーの使用方法及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、免疫賦活剤に応答して単核食細胞によって主に放出されるサイトカインである。TNF−αは、ほとんどの細胞プロセス、例えば、分化、リクルートメント(recruitment)、増殖及びタンパク分解性分解を増強することができる。TNF−αは、低レベルでは、感染性病原体、腫瘍及び組織損傷からの保護を付与する。しかし、TNF−αは、多数の疾病における役割もある。TNF−αは、哺乳動物又はヒトに投与されると、炎症、発熱、心血管への作用、出血、凝固、並びに急性感染症及びショック状態の際に見られるものと類似の急性期反応を引き起こすか又は悪化させる。増強されたか、調節されていないTNF−α産生は、いくつかの疾病及び病状、例えば、充実腫瘍及び血液由来の腫瘍などの癌、うっ血性心不全などの心疾患、並びにウイルス性疾患、遺伝性疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患及び自己免疫疾患とかかわっている。
【0003】
アデノシン3’,5’−サイクリックモノホスフェート(cAMP)もまた、限定されるものではないが、喘息及び炎症、並びに他の症状など多数の疾病及び障害において役割を担っている(Lowe及びCheng、Drugs of the Future、17(9)、799〜807頁、1992)。炎症性白血球におけるcAMPの上昇は、その活性化及びそれに続く、TNF−α及びNF−κBをはじめとする炎症性媒介因子の放出を阻害することがわかっている。cAMPレベルの上昇はまた、気道平滑筋の弛緩をもたらす。
【0004】
cAMPの不活性化のための一次細胞機構は、サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)と呼ばれるアイソザイムのファミリーによるcAMPの分解であると考えられている(Beavo及びReitsnyder、Trends in Pharm.、11、150〜155頁、1990)。11種の既知のPDEファミリーがある。例えば、PDE IV型の阻害は、炎症媒介因子放出の阻害と気道平滑筋の弛緩の双方において特に有効であると認められている(Vergheseら、Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、272(3)、1313〜1320頁、1995)。したがって、PDE4(PDE IV)を特異的に阻害する化合物は、望ましくない副作用、例えば、心血管又は抗血小板作用を最小限しか伴わず、炎症を抑え、気道平滑筋の弛緩を補助する可能性がある。現在用いられているPDE4阻害剤は、許容範囲の治療量では選択的作用を欠いている。
【0005】
癌は特に破壊的威力のある疾病であり、血中TNF−αレベルの上昇が、癌の危険及び蔓延に関与している。通常、健常な被験者では、癌細胞は循環系では生存することができないが、この理由の1つは、血管の内膜が腫瘍細胞血管外遊走の障壁として作用するためである。しかし、in vitroで、サイトカインレベルの上昇は、癌細胞の内皮との接着を実質的に増大させることがわかった。1つの解釈として、サイトカイン、例えば、TNF−αが、ELAM−1(内皮白血球接着分子)と呼ばれる細胞表面受容体の生合成及び発現を刺激するということがある。ELAM−1は、LEC−CAMとして知られるカルシウム依存性細胞接着受容体のファミリーのメンバーであり、これとしては、LECAM−1及びGMP−140が含まれる。炎症応答の際、内皮細胞上のELAM−1は、白血球の「ホーミング受容体」として機能する。最近、内皮細胞上のELAM−1は、結腸癌細胞の、サイトカインで処理された内皮との接着の増大を媒介することがわかった(Riceら、1989、Science 246:1303〜1306頁)。
【0006】
炎症性疾患、例えば関節炎、関連関節炎症状(例えば、骨関節炎及び関節リウマチ)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、敗血症、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎及び慢性閉塞性肺疾患、慢性炎症性肺疾患などはまた、一般的な、解決の難しい病気である。TNF−αは、炎症応答において中心的な役割を果たしており、炎症性疾患の動物モデルでは、そのアンタゴニストの投与により、慢性及び急性応答がブロックされる。
【0007】
増強されたか、又は調節されていないTNF−α産生は、ウイルス性疾患、遺伝性疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患及び自己免疫疾患とかかわっている。このような疾病の例としては、限定されるものではないが、HIV、肝炎、成人呼吸窮迫症候群、骨吸収疾患、慢性閉塞性肺疾患、慢性肺炎症性疾患、喘息、皮膚炎、嚢胞性線維症、敗血性ショック、敗血症、内毒素ショック、血行力学的ショック、敗血症症候群、虚血後再灌流障害、髄膜炎、乾癬、線維性疾患、悪液質、移植片拒絶、自己免疫疾患、リウマチ性脊椎炎、関節炎症状(例えば、関節リウマチ及び骨関節炎)、骨粗鬆症、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ライ病のENL、放射線障害、喘息及び高酸素症による肺胞損傷が挙げられる。Traceyら、1987、Nature 330:662〜664頁及びHinshawら、1990、Circ. Shock 30:279〜292頁(内毒素ショック);Dezubeら、1990、Lancet, 335:662頁(悪液質);Millarら、1989、Lancet 2:712〜714頁及びFerrai-Balivieraら、1989、Arch. Sung. 124:1400〜1405頁(成人呼吸窮迫症候群);Bertoliniら、1986、Nature 319:516〜518頁、Johnsonら、1989、Endocrinology 124:1424〜1427頁、Hollerら、1990、Blood 75:1011〜1016頁及びGrauら、1989、N. Engl. J. Med. 320:1586〜1591頁(骨吸収疾患);Pignetら、1990、Nature、344:245〜247頁、Bissonnetteら、1989、Inflammation 13:329〜339頁及びBaughmanら、1990、J. Lab. Clin. Med. 115:36〜42頁(慢性肺炎症性疾患);Elliotら、 1995、Int. J. Pharmac. 17:141〜145頁(関節リウマチ);von Dullemenら、1995、Gastroenterology、109:129〜135頁(クローン病);Duhら、1989、Proc. Nat. Acad. Sci. 86:5974〜5978頁、Pollら、1990、Proc. Nat. Acad. Sci. 87:782〜785頁、Montoら、1990、Blood 79:2670頁、Clouseら、1989、J. Immunol. 142、431〜438頁、Pollら、1992、AIDS Res. Hum. Retrovirus、191〜197頁、Poliら、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. 87:782〜784頁、Folksら、1989、PNAS 86:2365〜2368頁(HIV及びHIVに起因する日和見感染症)。
【0008】
TNF−αをはじめとする、特定のサイトカインの活性をブロックできるか、又は産生を阻害できる医薬化合物は有益な治療薬であり得る。多数の小分子阻害剤が、TNF−αが関与している炎症性疾患を治療又は予防する能力を実証されている(総説については、Lowe、1998 Exp. Opin. Ther. Patents 8:1309〜1332頁参照)。このようなクラスの分子の1つに、米国特許第6,020,358号に記載された置換フェネチルスルホン類がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,020,358号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lowe及びCheng、Drugs of the Future、17(9)、799〜807頁、1992
【非特許文献2】Beavo及びReitsnyder、Trends in Pharm.、11、150〜155頁、1990
【非特許文献3】Vergheseら、Journal of Pharmacology and. Experimental Therapeutics、272(3)、1313〜1320頁、1995
【非特許文献4】Riceら、1989、Science 246:1303〜1306頁
【非特許文献5】Traceyら、1987、Nature 330:662〜664頁
【非特許文献6】Hinshawら、「endotoxic shock」、1990、Circ. Shock 30:279〜292頁
【非特許文献7】Dezubeら、「cachexia」、1990、Lancet, 335:662
【非特許文献8】Millarら、1989、Lancet 2:712〜714頁
【非特許文献9】Ferrai-Balivieraら、「adult respiratory distress syndrome」、1989、Arch. Sung. 124:1400〜1405頁
【非特許文献10】Bertoliniら、1986、Nature 319:516〜518頁
【非特許文献11】Johnsonら、1989、Endocrinology 124:1424〜1427頁
【非特許文献12】Hollerら、1990、Blood 75:1011〜1016頁
【非特許文献13】Grauら、「bone resorption diseases」、1989、N. Engl. J. Med. 320:1586〜1591頁
【非特許文献14】Pignetら、1990、Nature、344:245〜247頁
【非特許文献15】Bissonnetteら、1989、inflammation 13:329〜339頁
【非特許文献16】Baughmanら、「chronic pulmonary inflammatory diseases」、1990、J. Lab. Clin. Med. 115:36〜42頁
【非特許文献17】Elliotら、「rheumatoid arthritis」、1995, Int. J. Pharmac. 17:141〜145頁
【非特許文献18】von Dullemenら、「Crohn's disease」、1995、Gastroenterology、109:129〜135頁
【非特許文献19】Duhら、1989、Proc. Nat. Acad. Sci. 86:5974〜5978頁
【非特許文献20】Pollら、1990、Proc. Nat. Acad. Sci. 87:782〜785頁
【非特許文献21】Montoら、1990、Blood 79:2670頁
【非特許文献22】Clouseら、1989、J. Immunol. 142、431〜438頁
【非特許文献23】Pollら、1992、AIDS Res. Hum. Retrovirus、191〜197頁
【非特許文献24】Poliら、1990、Proc. Nat. Acad. Sci. 87:782〜784頁
【非特許文献25】Folksら、「HIV and opportunistic infections resulting from HIV」、1989、PNAS 86:2365〜2368頁
【非特許文献26】Lowe、1998 Exp. Opin. Ther. Patents 8:1309〜1332頁
【発明の概要】
【0011】
3.発明の概要
本発明は、置換フェネチルスルホン化合物のエナンチオマー及びその製薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、包接物、プロドラッグ及び多形体を利用する、疾病及び障害の治療方法、並びに哺乳動物におけるサイトカイン及びその前駆体レベルの低減方法に関する。本発明はまた、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのエナンチオマーと、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、実質的にその他のエナンチオマーを含まない、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのエナンチオマーに関する。
【0012】
本発明は、特に、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーに関する。この化合物は、そのラセミ化合物である2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンと比較して、効力の増大及び他の利点を有すると考えられる。
【0013】
本発明は、哺乳動物における、TNF−α産生の阻害により改善される疾病又は障害の治療又は予防のための、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーの使用を包含する。特定の実施形態では、この治療は、副作用の低減又は回避を含む。このような疾患としては、限定されるものではないが、癌、限定されるものではないが、頭部、胸腺、頸部、眼、皮膚、口、咽頭、食道、胸部、骨、血液、骨髄、肺、結腸、S字結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、腎臓、肝臓、膵臓、脳、小腸、心臓、副腎、皮下組織、リンパ節、心臓の癌及びそれらの組合せを含む癌が挙げられる。本方法によって治療しうる具体的な癌としては、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、悪性神経膠腫、白血病及び充実腫瘍がある。
【0014】
本発明はまた、限定されるものではないが、うっ血性心不全、心筋症、肺水腫、内毒素媒介性敗血性ショック、急性ウイルス性心筋炎、心臓同種移植片拒絶及び心筋梗塞をはじめとする心臓病の治療又は予防における、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーの使用を包含する。
【0015】
本発明はまた、PDE4の阻害により改善される疾病又は障害を治療するための、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーの使用を包含する。例えば、本発明の化合物及び組成物は、ウイルス性疾患、遺伝性疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患及び自己免疫疾患を治療又は予防するために有用であり得る。このような疾病の例としては、限定されるものではないが、HIV、肝炎、成人呼吸窮迫症候群、骨吸収疾患、慢性閉塞性肺疾患、慢性肺炎症性疾患、皮膚炎、炎症性皮膚疾患、アトピー性皮膚炎、嚢胞性線維症、敗血性ショック、敗血症、内毒素ショック、血行力学的ショック、敗血症症候群、虚血後再灌流障害、髄膜炎、乾癬、線維性疾患、悪液質、移植片対宿主病を含む移植片拒絶、自己免疫疾患、リウマチ性脊椎炎、関節炎症状、例えば、関節リウマチ及び骨関節炎、骨粗鬆症、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ライ病のらい性結節性紅斑(ENL)、放射線障害、喘息及び高酸素症による肺胞損傷が挙げられる。
【0016】
さらにもう1つの実施形態では、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの立体異性体として純粋な(+)エナンチオマーはまた、限定されるものではないが、細菌感染症、真菌感染症、マラリア、放線菌感染症及びHIVに起因する日和見感染症をはじめとする、微生物感染症又は微生物感染症の症候の治療又は予防において有用である。
【0017】
本発明はさらに、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのエナンチオマー及びその製薬上許容される多形体、プロドラッグ、塩、水和物、包接物及び溶媒和物を含む、医薬組成物及び単回単位投与剤形を包含する。
【0018】
個別の実施形体では、本発明は、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーを包含する。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メタンスルホニルエチルアミンを、キラルアミノ酸と接触させるステップ、及び第1のステップの生成物を、N−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソベンゾフラン−4−イル)アセトアミドと接触させるステップを含む、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの立体異性体として純粋なエナンチオマーの製造方法を包含する。関連実施形態では、本発明は、1−(3−エトキシ−4−メトキシ−フェニル)−2−メタンスルホニルエチルアミンのキラル塩を包含する。
【0020】
3.1.図面の簡単な説明
図面の簡単な説明については下記参照。
【0021】
3.2.定義
本明細書において、用語「化合物A」とは、カラムが150mm×4.6mm Ultron Chiral ES−OVSキラルHPLCカラム(Agilent Technology)であり、溶出剤がpH3.5の15:85エタノール:20mM KHPOであり、観察波長が240nmである場合には、約25.4分でHPLCカラムから得られる、エナンチオマーとして純粋な形の2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンを指す。化合物AのH NMRスペクトルは実質的に以下の通りである:


化合物Aの13C NMRスペクトルは実質的に以下の通りである:


メタノールに溶解した化合物Aはまた、(+)方向で偏光面を回転する。
【0022】
理論に制限されるものではないが、化合物Aは、S−{2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン}であると考えられ、これは以下の構造を有する:
【化1】

【0023】
本明細書において、用語「患者」とは、哺乳動物、特にヒトを指す。
【0024】
本明細書において、用語「製薬上許容される塩」とは、製薬上許容される非毒性の、酸又は塩基(無機酸及び塩基並びに有機酸及び塩基を含む)から調製された塩を指す。本発明の化合物に適した製薬上許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛からなる金属塩又はリジン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインからなる有機塩が挙げられる。適した非毒性の酸としては、限定されるものではないが、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸などの無機及び有機酸が挙げられる。具体的な非毒性の酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。したがって、具体的な塩の例としては、塩酸塩及びメシレート塩が挙げられる。
【0025】
本明細書において、特に断りのない限り、用語「プロドラッグ」とは、生物学的条件下(in vitro又はin vivo)で加水分解、酸化、又は、反応して、本化合物を生じることができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、限定されるものではないが、生体加水分解可能アミド、生体加水分解可能エステル、生体加水分解可能カルバメート、生体加水分解可能カーボネート、生体加水分解可能ウレイド及び生体加水分解可能ホスフェート類似体などの生体加水分解可能な部分を含む、化合物Aの誘導体及び代謝物が挙げられる。プロドラッグは、通常、周知の方法、例えば、1 Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery、172〜178頁、949〜982頁(Manfred E. Wolff編、第5版 1995)によって記載されたものなどを用いて調製することができる。
【0026】
本明細書において、特に断りのない限り、用語「生体加水分解可能アミド」、「生体加水分解可能エステル」、「生体加水分解可能カルバメート」、「生体加水分解可能カーボネート」、「生体加水分解可能ウレイド」、「生体加水分解可能ホスフェート」とは、1)化合物の生物学的活性を妨害しないが、in vivoでその化合物に有利な特性、例えば、取込み、作用期間又は作用の開始を付与し得るか、又は2)生物学的に不活性であるが、in vivoで生物学的に活性な化合物に変換されるのいずれかである、化合物のアミド、エステル、カルバメート、カルボネート、ウレイド又はホスフェートをそれぞれ意味する。生体加水分解可能エステルの例としては、限定されるものではないが、低級アルキルエステル、アルコキシアシルオキシエステル、アルキルアシルアミノアルキルエステル及びコリンエステルが挙げられる。生体加水分解可能アミドの例としては、限定されるものではないが、低級アルキルアミド、α−アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド及びアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられる。生体加水分解可能カルバメートの例としては、限定されるものではないが、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環及び複素芳香族アミン及びポリエーテルアミンが挙げられる。
【0027】
本明細書において、特に断りのない限り、用語「立体異性体として純粋な」とは、化合物の1種の立体異性体を含み、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体として純粋な組成物は、化合物の逆のエナンチオマーを実質的に含まない。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性体として純粋な組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。典型的な立体異性体として純粋な化合物は、化合物の1種の立体異性体を約80重量%よりも多く及びその化合物の他の立体異性体を約20重量%未満で、より好ましくは化合物の1種の立体異性体を約90重量%よりも多く及びその化合物の他の立体異性体を約10重量%未満で、さらにより好ましくは化合物の1種の立体異性体を約95重量%よりも多く及びその化合物の他の立体異性体を約5重量%で、最も好ましくは化合物の1種の立体異性体を約97重量%よりも多く及びその化合物の他の立体異性体を約3重量%未満でを含む。
【0028】
本明細書において、特に断りのない限り、用語「エナンチオマーとして純粋な」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体として純粋な組成物を意味する。
【0029】
本明細書において、用語「副作用」としては、限定されるものではないが、胃腸毒性、腎毒性及び肝毒性、白血球減少、例えば、血小板減少による出血時間の増加、妊娠期間の延長、悪心、嘔吐、傾眠、無力症、めまい、催奇性、錐体外路症状、静坐不能など、心血管障害をはじめとする心毒性、炎症、男性の性的機能不全及び血清肝臓酵素レベルの上昇が挙げられる。用語「胃腸毒性」は、限定されるものではないが、胃及び腸の潰瘍形成及びびらんを含む。用語「腎毒性」は、限定されるものではないが、乳頭壊死及び慢性間質性腎炎のような症状を含む。
【0030】
本明細書において、特に断りのない限り、語句「副作用を低減又は回避する」及び「副作用の低減又は回避」とは、本明細書に定義された1種又は複数の副作用の重症度を低減することを意味する。
【0031】
留意すべきは、示した構造とその構造に与えられた名前の間に矛盾がある場合には、示した構造により重きがおかれるということである。さらに、構造又は構造の一部の立体化学が、例えば、太字又は点線で示されない場合には、構造又は構造の一部はそのすべての立体異性体を包含していると解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの(+)エナンチオマーの調製を示す図である。
【図2】本発明のエナンチオマーの、知覚フェレットの肺におけるLPS誘導性好中球増加に対する作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
4.発明の詳細な説明
本発明は、実質的にその他のエナンチオマーを含まない、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのエナンチオマーである、立体異性体として純粋な化合物A、並びに立体異性体として純粋な化合物Aの使用方法、及びそれを含む組成物に関する。例えば、本発明は、化合物Aのin vitro及びin vivoにおける使用、並びに医薬組成物への化合物Aの組込み、並びに種々の疾病及び障害の治療及び予防において有用な単回単位投与剤形を包含する。TNF−αレベルの低減又はPDE4の阻害により改善される疾病及び障害は、当技術分野では周知であり、本明細書に記載されている。本発明の特定の方法は、TNF−α阻害剤として用いられる化合物に伴われる副作用を低減又は回避する。本発明のその他の特定の方法は、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのラセミ体の使用に伴う副作用を低減又は回避する。
【0034】
本発明の特定の方法は、限定されるものではないが、充実腫瘍癌、血液由来癌及び炎症性疾患をはじめとする疾病及び障害の治療又は予防方法を含む。
【0035】
化合物A又はその製薬上許容される多形体、プロドラッグ、塩、包接物、溶媒和物若しくは水和物を含む、本発明の医薬及び投与剤形は、本発明の方法において使用できる。
【0036】
理論に制限されるものではないが、化合物AはTNF−α産生を阻害できると考えられている。したがって、本発明の第1の実施形態は、異常なTNF−α産生を示す細胞を、有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物と接触させることを含む、TNF−α産生の阻害方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、異常なTNF−α産生を示す哺乳動物細胞を、有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物と接触させることを含む、TNF−α産生の阻害方法に関する。
【0037】
本発明はまた、患者におけるTNF−αレベルの低減により改善される障害の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法に関する。
【0038】
本発明のさらなる実施形態は、患者における、限定されるものではないが、充実腫瘍、血液由来腫瘍、白血病及び特に多発性骨髄腫をはじめとする癌の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする、特に、哺乳動物である患者に、治療上有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法に関する。
【0039】
もう1つの実施形態では、本発明は、PDE4を、有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物と接触させることを含む、PDE4の阻害方法に関する。
【0040】
もう1つの実施形態では、本発明は、細胞を、有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物と接触させることを含む、細胞におけるcAMPレベルの制御方法に関する。本明細書において、用語「cAMPレベルの制御」とは、細胞においてアデノシン3’,5’−サイクリックモノホスフェート(cAMP)の分解速度を防止若しくは低減すること、又は細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞中に存在するアデノシン3’,5’−サイクリックモノホスフェート量を増加させることを含む。特定の方法では、cAMP分解速度が、本発明の化合物と接触していない対応の細胞における速度と比べて、約10、25、50、100、200又は500パーセントまで低減される。
【0041】
本発明のさらなる実施形態は、患者におけるPDE4の阻害により改善される疾病又は障害の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法に関する。PDE4の阻害により改善される疾患としては、限定されるものではないが、喘息、炎症(例えば、再灌流による炎症)、慢性又は急性閉塞性肺疾患、慢性又は急性肺炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、ベーチェット病又は大腸炎が挙げられる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態は、患者における鬱病、喘息、炎症(例えば、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性皮膚疾患、再灌流による炎症)、慢性又は急性閉塞性肺疾患、慢性又は肺炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、ベーチェット病又は大腸炎の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする、特に、哺乳動物である患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法に関する。
【0043】
本発明の個別の実施形態は、骨髄異形性症候群(MDS)の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接物若しくはプロドラッグを投与することを含む方法を包含する。MDSとは、造血幹細胞疾患の多様な群を指す。MDSは、形態及び成熟に障害のある細胞骨髄(骨髄造血不全)、効果のない血液細胞産生に起因する、末梢血球減少、及び急性白血病に進行する可変性のリスクを特徴とする。The Merck Manual 953 (第17版、1999)及びListら、1990、J. Clin. Oncol. 8:1424頁、MDS参照。
【0044】
本発明の個別の実施形態は、骨髄増殖性疾患(MPD)の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接物若しくはプロドラッグを投与することを含む方法を包含する。骨髄増殖性疾患(MPD)は、造血幹細胞のクローン異常を特徴とする疾患の群を指す。例えば、Current Medical Diagnosis & Treatment、499頁(第37版、Tierneyら編、Appleton & Lange、1998)参照。
【0045】
本発明はまた、複合性局所性疼痛症候群の治療、予防又は管理方法であって、このような治療、予防又は管理を必要とする患者に、治療上又は予防上有効な量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接物若しくはプロドラッグを投与することを含む方法を包含する。特定の実施形態では、投与は、患者における複合性局所性疼痛症候群の症候の軽減又は回避に向けて行われる手術又は理学療法の前、その間又はその後である。
【0046】
本発明の特定の方法では、立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容される多形体、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物は、少なくとも1種の追加の治療剤と併用投与される。追加の治療剤の例としては、限定されるものではないが、抗癌剤、抗炎症薬、抗ヒスタミン剤及び充血除去剤が挙げられる。
【0047】
4.1.合成及び調製
2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのラセミ体は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,020,358号の方法を用いて容易に調製される。
【0048】
化合物Aは、当技術分野で公知の技術によってラセミ化合物から単離できる。例としては、限定されるものではないが、キラル塩の形成とキラル又は高速液体クロマトグラフィー「HPLC」の使用、及びキラル塩の形成と結晶化が挙げられる。例えば、Jacques, J.ら、Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience、New York、1981);Wilen, S. H.ら、Tetrahedron 33:2725頁(1977);Eliel, E.L.、Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill、NY、1962);及びWilen, S.H.、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972)参照。
【0049】
特定の方法では、化合物Aを、3−アセトアミドフタル酸無水物と(S)−2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2-イルアミンのキラルアミノ酸塩から合成する。(S)−2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2-イルアミンのキラルアミノ酸塩としては、限定されるものではないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、オルニチン、4−アミノ酪酸、2−アミノイソ酪酸、3アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン及びN−アセチル−ロイシンのL異性体を用いて形成された塩が挙げられる。特定のキラルアミノ酸塩として、メタノールに溶かした、2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2-イルアミン及びN−アセチル−L−ロイシンから分割される、(S)−2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2-イルアミンN−アセチル−L−ロイシン塩がある。
【0050】
4.2.治療方法
本発明は、患者におけるTNF−αレベルの低減により改善される疾病又は障害の治療及び予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法を包含する。
【0051】
TNF−αの阻害により改善される疾患としては、限定されるものではないが、心疾患、例えば、うっ血性心不全、心筋症、肺水腫、内毒素媒介性敗血性ショック、急性ウイルス性心筋炎、心臓同種移植片拒絶及び心筋梗塞;充実腫瘍、例えば限定されるものではないが、肉腫、癌腫、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、カポジ肉腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫など;血液由来腫瘍、例えば限定されるものではないが、急性リンパ芽球性白血病「ALL」、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病「AML」、急性前骨髄球性白血病「APL」、急性単芽球性白血病、急性赤血球白血球性白血病、急性巨核芽球白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ急性白血病、急性未分化型白血病、慢性骨髄球性白血病「CML」、慢性リンパ性白血病「CLL」、毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫ならびに急性及び慢性白血病、例えば、リンパ芽球性、骨髄性、リンパ性及び骨髄球性白血病などが挙げられる。
【0052】
本発明の特定の方法は、追加の治療剤(すなわち化合物A以外の治療薬)の投与をさらに含む。追加の治療剤の例としては、限定されるものではないが、抗癌剤、例えば、限定されるものではないが、アルキル化剤、ニトロゲン・マスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、ギ酸類似体(analofs)、ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤及び抗癌ワクチンが挙げられる。
【0053】
具体的な追加の治療剤としては、限定されるものではないが、アシビシン(acivicin)、アクラルビシン、アコダゾールヒドロクロリド(acodazole hydrochloride)、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン(ambomycin)、アメタントロンアセテート(ametantrone acetate)、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン(anthramycin)、アスパラギナーゼ、アスペルリン(asperlin)、アザシチジン、アゼテパ(azetepa)、アゾトマイシン、バチマスタット(batmastat)、ベンゾデパ(benzodepa)、ビカルタミド、ビサントレンヒドロクロリド(bisantrene hydrochloride)、ビスナフィドジメシレート(bisnafide dymesylate)、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム(brequinar sodium)、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルステロン(calusterone)、カラセミド(caracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシンヒドロクロリド(carubicin hydrochloride)、カルゼレシン(carzelesin)、セデフィンゴール(cedefingol)、クロラムブシル、シロレマイシン(cirolemycin)、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート(crisnatol mesylate)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン(decitabine)、デキソルマプラチン(dexormaplatin)、デザグアニン(dezaguanine)、デザグアニンメシレート(dezaguanine mesylate)、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン(duazomycin)、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エンロプラチン(enloplatin)、エンプロメート(enpromate)、エピプロピジン(epipropidine)、塩酸エピルビシン、エルブロゾール(erbulozole)、エソルビシンヒドロクロリド(esorubicin hydrochloride)、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン(etoprine)、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド(fenretinide)、フロクリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン、フルロウラシル、フルロシタビン(flrocitabine)、フォスキドン(fosquidone)、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシンヒドロクロリド(idarubicin hydrochloride)、イフォスファミド、イルモフォシン(ilmofosine)、インターロイキンII(組換えインターロイキンII又はrIL2を含む)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium)、ロムスチン、ロソキサントロンヒドロクロリド(losoxantrone hydrochloride)、マソプロコール(masoprocol)、マイタンシン、メクロレタミンヒドロクロリド(mechlorethamine hydrochloride)、メゲストロールアセテート(megesterol acetate)、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ(meturedepa)、ミチンドミド(mitindomide)、マイトカルシン(mitocarcin)、マイトクロミン(mitocromin)、マイトギリン(mitogillin)、マイトマルシン(mitomalcin)、マイトマイシン、マイトスペル(mitosper)、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン(ormaplatin)、オキシスラン(oxisuran)、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、ペリオマイシン(peliomycin)、ペンタムスチン(pentamustine)、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン(piposulfan)、ピロキサントロンヒドロクロリド(piroxantrone hydrochloride)、プリカマイシン、プロメスタン(plomestane)、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、プレドニムスチン(prednimustine)、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシンヒドロクロリド、ピラゾフリン(pyrazofurin)、リボプリン(riboprine)、ログレチミド(roglerimide)、サフィンゴル(safingol)、サフィンゴルヒドロクロリド(safingol hydrochloride)、セムスチン、シムトラゼン(simtrazene)、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン(spiromustine)、スピロプラチン(spiroplatin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル(sulofenur)、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフル、テロキサントロンヒドロクロリド(teloxantrone hydrochloride)、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン(teroxirone)、テストラクトン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、トレストロンアセテート(trestolone acetate)、トリシリビンホスフェート(triciribine phosphate)、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、ツブロゾールヒドロクロリド(tubulozole hydrochloride)、ウラシルマスタード、ウレデパ(uredepa)、バプレオチド(vapreotide)、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、ビネピジンスルフェート(vinepidine sulfate)、ビングリシネートスルフェート(vinglycinate sulfate)、ビンロイロシンスルフェート(vinleurosine sulfate)、酒石酸ビノレルビン、ビンロシジンスルフェート(vinrosidine sulfate)、ビンゾリジンスルフェート(vinzolidine sulfate)、ボロゾール、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジノスタチン、ゾルビシンヒドロクロリド(zorubicin hydrochloride)が挙げられる。その他の抗癌剤としては、限定されるものではないが、20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3、5−エチニルウラシル、アビラテロン(abiraterone)、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL−TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アムバムスチン(ambamustine)、アミドックス(amidox)、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス(antarelix)、抗背側化形態形成タンパク質−1、抗アンドロゲン、前立腺癌、抗エストロゲン、抗ネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィジコリングリシネート、アポトーシス遺伝子調節因子、アポトーシス制御因子、アプリン酸、アラ−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン(axinastatin)1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン(azatoxin)、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット(batimastat)、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン(benzochlorins)、ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)、βラクタム誘導体、β−アレチン(alethine)、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン(bisantrene)、ビサジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine)、ビスナフィド(bisnafide)、ビストラテン(bistratene)A、ビゼレシン、ブレフレート(breflate)、ブロピリミン、ブドチタン(budotitane)、ブチオニンスルフォキサミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN 700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン(carzelesin)、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリックス、クロールン(chlorlns)、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシン(collismycin)A、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クラムベシディン(crambescidin)816、クリスナトール(crisnatol)、クリプトフィシン(cryptophycin)8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム(cycloplatam)、シペマイシン(cypemycin)、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、サイトスタチン(cytostatin)、ダクリキシマブ(dacliximab)、デシタビン(decitabine)、デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B、デスロレリン(deslorelin)、デキサメタゾン、デキシフォスファミド(desifosfamide)、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、ジアジコン、ダイデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジヒドロタキソール、9−、ジオキサマイシン(dioxamycin)、ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine)、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン(ecomustine)、エデルフォシン(edelfosine)、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル(emitefur)、エピルビシン、エプリステリド(epristeride)、エストラムスチン類似体、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム、フィナステリド、
フラボピリドール、フレゼラスチン(flezelastine)、フルアステロン、フルダラビン、フルオロダウノルニシンヒドロクロリド(fluorodaunorunicin hydrochloride)、フォルフェニメックス(forfenimex)、フォルメスタン、フォストリエシン、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘレギュリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン(idarubicin)、イドキシフェン、イドラマントン(idramantone)、イルモフォシン(ilmofosine)、イロマスタット(ilomastat)、イミダゾアクリドン(imidazoacridones)、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン(iobenguane)、ヨードドキソルビシン、イポメアノール(ipomeanol)、4−、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール(isobengazole)、イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B、イタセトロン、ジャスプラキノリド(jasplakinolide)、カハラリド(kahalalide)F、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトールスタチン(leptolstatin)、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド(lissoclinamide)7、ロバプラチン(lobaplatn)、ロムブリシン(lombricine)、ロメトレキソール(lometrexol)、ロニダミン、ロソキサントロン(losoxanrone)、ロバスタチン、ロキソリビン(loxoribine)、ルルトテカン(lurtotecan)、ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin)、リソフィリン、溶解ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン(merbarone)、メテレリン(meterelin)、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトラクトール(mitolactol)、マイトマイシン類似体、ミトナフィド(mitonafide)、ミトトキシン(mitotoxin)線維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk、モピダモール(mopidamol)、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1−をベースとする治療、マスタード抗癌剤、マイカペルオキシド(mycaperoxide)B、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン(myriaporone)、N−アセチルジナリン、N−置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチップ(nagrestip)、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン(napavin)、ナフテルピン(naphterpin)、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン(nemorubicin)、ネリドロン酸(neridronic acid)、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン(nisamycin)、一酸化窒素モジュレーター、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン(nitrullyn)、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン(okicenone)、オリゴヌクレオチド、オナプリストン(onapristone)、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン(oracin)、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン(ormaplatin)、オサテロン、オキサリプラチン、オキザウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン(palauamine)、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン(parabactin)、パゼリプチン(pazelliprine)、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、ペルデシン(peldesine)、ペントサン多硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール(pentrozole)、ペルフルブロン(perflubron)、ペルホスファミド(perfosfamide)、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム(piritrexim)、プラセチン(placetin)A、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、白金複合体、白金化合物、白金−トリアミド複合体、ポルフィマー間トリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピル ビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aをベースとする免疫モジュレーター、プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類のプロテインキナーゼC阻害剤、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、ras−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン(retelliprine)、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド(rogletimide)、ロヒツキン(rohitukine)、ロムルチド、ロキニメックス(roquinimex)、ルビギノン(rubiginone)B1、ルボキシル、サフィンゴル(safingol)、サイントピン(saintopin)、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1ミメティックス、セムスチン、セネセンス(senescence)由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテイト、ナトリウムフェニルアセテート、ソルベロール(solverol)、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォン酸(sparfosic aicd)、スピカマイシンD、スピロムスイン(spiromustine)、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド(stipiamide)、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン(sulfinosine)、過剰活動性血管活性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン(tallimustine)、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン(tauromustine)、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム(tellurapyrylium)、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン(tetrazomine)、タリブラスチン(thaliblastine)、チオコラリン(thiocoraline)、トロンボポエチン、トロンボポエチンミメティック、チマルファシン(thymalfasin)、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン(thymotrinan)、甲状腺刺激ホルモン、チンエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンビクロリド、トプセンチン(topsentin)、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド(turosteride)、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン(tyrphostins)、UBC阻害剤、ウベニメックス、泌尿生殖器洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド(vapreotide)、バリオリン(variolin)B、ベクター系、赤血球遺伝子治療、ベラレソール(velaresol)、ベラミン、ベルジン(verdins)、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン(vitaxin)、ボロゾール、ザノテロン(zanoterone)、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジラスコルブ(zilascorb)及びジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0054】
本発明はさらに、患者におけるPDE4の阻害により改善される疾病又は障害の治療又は予防方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療上有効量の立体異性体として純粋な化合物A、又はその製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を投与することを含む方法を包含する。PDE4の阻害により改善される障害としては、限定されるものではないが、喘息、炎症、慢性又は急性閉塞性肺疾患、慢性又は急性肺炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、ベーチェット病、大腸炎、潰瘍性大腸炎及び関節炎又は再灌流による炎症が挙げられる。好ましい実施形態では、治療又は予防対象の疾病又は障害は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0055】
本発明の特定の方法は、限定されるものではないが、抗炎症薬、抗ヒスタミン剤及び充血除去剤などの追加の治療剤の投与を含み得る。このような追加の治療剤の例としては、限定されるものではないが、抗ヒスタミン薬、限定されるものではないがエタノールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン及びフェノチアジンなど、抗炎症薬、限定されるものではないが、アスピリン、サリシレート、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラック、フェナメート(femanates)、トルメチン、ケトロラック、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、ピラゾロン誘導体を含むNSAIDS、並びにステロイド、例えば限定されるものではないが、皮質ステロイド及び副腎皮質ステロイドなどが挙げられる。
【0056】
本発明の特定の方法は、薬剤−薬剤相互作用及びラセミ置換フェニルエチルスルホンをはじめとする、このような疾患の治療に用いられる薬剤に伴われるその他の副作用を回避又は低減する。理論に制限されるものではないが、立体異性体として純粋な化合物Aはさらに、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのラセミ体よりも、全体的に改善された治療有効性、又は治療指数を提供できる。例えば、ある状況では、同レベルの有効性を得るために、より少量の薬剤を投与すればよい。
【0057】
先に記載した様に、本発明の活性な化合物(すなわち、化合物A)を、広範な疾病及び障害の治療又は予防に使用できる。しかし、疾病又は症状の急性又は慢性管理における本発明の特定の有効成分の予防又は治療用量の程度は、疾病又は症状の性質及び重症度、並びに有効成分が投与される経路に応じて変わる。用量及びおそらくは投与頻度はまた、年齢、体重及び個々の患者の応答にしたがって変わる。当業者ならば、このような要因を十分に考慮して、適した投薬計画を容易に選択することができる。一般に、本明細書に記載された症状に対する、推奨日用量範囲は、単回の1日1回投与、好ましくは1日の間の分割投与と考えて、1日当たり約1mg〜約1000mgの範囲内にある。より具体的には、日用量を1日2回、等しく分割された用量で投与する。具体的には、日用量範囲は、1日当たり約5mg〜約500mg、より具体的には1日当たり約10mgと200mgの間である。具体的には、日用量を、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg又は100mgの投与剤形で投与することができる。患者の管理では、治療は、患者の全身の応答に応じて、単回用量又は分割用量のいずれかとして、低用量、おそらくは1日当たり約1mg〜約25mgで開始しなくてはならず、必要に応じて最大約200mg〜約1000mgまで増加する。あるいは、日用量は0.01mg/kg〜100mg/kgである。
【0058】
当業者には明らかであるが、本明細書に開示した範囲外の有効成分の投与量を用いる必要がある場合もある。さらに、臨床医学者又は治療医師は、個々の患者の応答に関連して、治療をどのように及び何時、中断、調節又は終結するかということはわかっていということを注記する。
【0059】
本明細書において、語句「治療上有効な量」、「予防上有効な量」及び「治療上又は予防上有効な量」とは、前記の投与量及び投与頻度スケジュールを包含する。当業者には容易にわかるように、種々の治療上有効な量を、種々の疾病及び障害に適用できる。同様に、このような疾患を治療又は予防するのに十分であるが、2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンのラセミ体に伴う副作用を引き起こすのには不十分である量、又は副作用を軽減するのに十分な量も、前記の投与量及び投与頻度スケジュールに包含される。
【0060】
4.3.医薬組成物
化合物A、又はその製薬上許容される多形体、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を含む医薬組成物及び単一の単位投与剤形は本発明に包含される。本発明の個々の投与剤形は、経口、粘膜(直腸、経鼻又は経膣など)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注射、動脈内又は静脈内など)、舌下、経皮、口腔内又は局所投与に好適でありうる。
【0061】
本発明の医薬組成物及び投与剤形は、立体異性体として純粋な化合物A、又は製薬上許容されるプロドラッグ、代謝物、多形体、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物を含む。本発明の医薬組成物及び投与剤形は、典型的には、1以上の製薬上許容される賦形剤を含む。
【0062】
本実施形態により包含される特定の医薬組成物は、立体異性体として純粋な化合物A、又は製薬上許容される多形体、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物若しくは包接物、及び、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。かかる追加の治療剤の例には、限定されるものではないが、第4.2節において例示したものなどの抗癌剤及び抗炎症治療剤(これに限定されるものではない)が含まれる。
【0063】
本発明の単一の単位投与剤形は、患者への経口、粘膜(経鼻、舌下、経膣、口腔内又は直腸など)、非経口(皮下、静脈内、ボーラス注射、筋肉内又は動脈内など)、あるいは経皮投与に好適でありうる。投与剤形の例としては、限定されるものではないが、錠剤、キャプレット、カプセル剤(ゼラチン製軟カプセル剤)、カシェ剤、トローチ剤、ロゼンジ、分散剤、坐剤、軟膏剤、パップ剤(湿布)、糊剤、粉剤、包帯剤、クリーム、硬膏剤、溶剤、パッチ、エアゾール(例:経鼻スプレー又は吸入剤)、ゲル剤;経口又は粘膜投与に好適な液体投与剤形、例えば懸濁剤(例:水性若しくは非水性液体懸濁剤、水中油乳剤、又は油中水液状乳剤)、溶剤及びエリキシル剤;患者への非経口投与に好適な液体投与剤形;及び、患者への非経口投与に好適な液体投与剤形を得るために再構成することができる滅菌固体(例:結晶質又は非結晶質)が挙げられる。
【0064】
本発明の投与剤形の組成、形状及び種類は、典型的にその用途に応じて異なる。例えば、炎症又はその関連疾患の急速な処置に使用する投与剤形は、同疾患の慢性処置に使用される投与剤形よりも多量の1以上の有効成分を含みうる。同様に、非経口投与剤形は、同疾患又は障害の治療に使用される経口投与剤形よりも少量の1以上の有効成分を含みうる。本発明により包含される特定の投与剤形が他のものと異なりうるこれらの及び他の方法は、当業者には容易に理解することができるだろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)参照。
【0065】
典型的な医薬組成物及び投与剤形は1以上の賦形剤を含む。好適な賦形剤は医薬分野の当業者に周知であり、本明細書に好適な賦形剤の例を記載するが、これに限定されるものではない。特定の賦形剤を医薬組成物又は投与剤形に組み込むことが好適かどうかは、当業者に周知の種々の要因により異なり、そのような要因としては、限定するものではないが、投与剤形を患者に投与する方法がある。例えば、錠剤などの経口投与剤形は、非経口投与剤形の使用には適していない賦形剤を含むこともある。特定の賦形剤が適しているか否かもまた投与剤形に含まれる特定の有効成分に応じて異なる。
【0066】
本発明のラクトース非含有組成物は、当業者に周知であり、U.S.Pharmocopia(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に挙げられている賦形剤を含みうる。一般的には、ラクトース非含有組成物は、薬学的に混合可能でありかつ製薬上許容される量の有効成分、結合剤/増量剤及び滑沢剤を含む。好ましいラクトース非含有投与剤形には、有効成分、微晶質セルロース、糊化デンプン及びステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0067】
本発明はさらに、有効成分を含む無水医薬組成物及び投与剤形を包含する。なぜなら、水によって分解が促進される化合物もありうるためである。例えば、水の添加(例えば5%)は、貯蔵寿命や経時的な製剤の安定性などの性質を確認するために、長期間にわたる保管をシュミレートする手段として医薬分野では広く許容されている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照のこと。要するに、水及び熱によって分解が加速される化合物もある。従って、水が製剤に及ぼす影響は非常に重要である。なぜなら、一般的には製剤の製造、取り扱い、包装、保管、出荷及び使用の際に水分及び/又は湿気が存在するためである。
【0068】
本発明の無水医薬組成物及び投与剤形は、無水又は低水分の成分を用いて、低水分又は低湿気条件下にて調製しうる。ラクトース、及び一級又は二級アミンを含む少なくとも1種の有効成分を含有する医薬組成物及び投与剤形は、製造、包装及び/又は保存の際に水分及び/又は湿気と実質的に接触することが予測される場合には無水であることが好ましい。
【0069】
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び保存する必要がある。従って無水組成物は、水への露出を防ぐことが知られている物質を用いて包装することが好ましい。そのため、該組成物を適切な形式のキットに入れることができる。適切な包装の例としては、限定するものではないが、密封したホイル、プラスチックなど、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック及びストリップパックが挙げられる。
【0070】
本発明はさらに、有効成分が分解する速度を低減する1以上の化合物を含む医薬組成物及び投与剤形を包含する。そのような化合物は、本明細書中「安定剤」といい、これには限定されるものではないが、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸)、pH緩衝剤又は塩緩衝剤が含まれる。
【0071】
賦形剤の両及び種類と同様に、投与剤形に含まれる有効成分の量及び特定の種類もまた、限定するものではないが、患者への投与経路などの要因により異なりうる。しかしながら、本発明の典型的な投与剤形は、化合物A、又は製薬上許容される塩、溶媒和物、包接物、水和物、多形体若しくはプロドラッグを、1日当たり約1mg〜約1000mgの範囲内で、朝の単回投与の日用量として、しかし好ましくは食事の摂取において1日を通じて分割用量として提供する。より具体的には、日用量は等分した量で1日2回投与する。具体的には、日用量範囲は、1日当たり約5mg〜約500mg、より具体的には1日当たり約10mg〜約200mgである。患者の管理において、治療は低用量(おそらく約1mg〜約25mg)で開始する必要があり、必要であれば、患者の全身的な応答に応じて、単回用量又は分割用量として1日当たり約200mg〜約1000mgまで増大させる。
【0072】
4.3.1.経口投与剤形
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、錠剤(例えばチュアブル錠)、キャプレット、カプセル剤又は液剤(例えば着味シロップ)などの個々の投与剤形として製剤化することができる。かかる投与剤形は、予め計量した量の有効成分を含み、当業者に周知の製薬方法により調製しうる。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing、Easton PA (1990)参照。
【0073】
本発明の典型的な経口投与剤形は、慣用の医薬調剤方法に従って、有効成分を少なくとも1つの賦形剤と緊密に混合することによって調製する。賦形剤は、投与に所望する製剤の形態に応じて種々の形態をとることができる。例えば、経口液体投与剤形又はエアゾール投与剤形での使用に適した賦形剤には、限定されるものではないが、水、グリコール、油、アルコール、矯味剤、保存剤、着色剤などが含まれる。固形経口投与剤形(例えば粉剤、錠剤、カプセル剤及びキャプレット)での使用に適した賦形剤には、限定されるものではないが、デンプン、糖、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤などが含まれる。
【0074】
投与の容易性の点から、錠剤及びカプセル剤が最も有利な経口投与単位剤形であり、この場合、固形賦形剤を使用する。所望であれば、錠剤は、標準的な水性又は非水性手法によりコーティングしてもよい。このような投与剤形は任意の薬学の方法により調製することができる。一般的には、医薬組成物及び投与剤形は、有効成分を、液状担体、微粉末化固形担体又はそれら両方と、均一にかつ緊密に混合し、その後、必要であれば生成物を所望の外観に形成することにより調製する。
【0075】
例えば、錠剤は、圧縮又は成型により調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械において、粉末又は顆粒など自由に流動する形態の有効成分を、場合により賦形剤と混合してから圧縮することにより調製しうる。成型した錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を成型することにより調製しうる。
【0076】
本発明の経口投与剤形に使用しうる賦形剤の例は、結合剤、増量剤、崩壊剤及び滑沢剤が含まれる。本発明の医薬組成物及び投与剤形に使用するのに適切な結合剤には、限定するものではないが、コーンスターチ、ジャガイモデンプン若しくは他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成ガム、例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガカントガム、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、糊化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No.2208、2906、2910)、微晶質セルロース、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0077】
本明細書に開示する医薬組成物及び投与剤形に使用するのに適切な増量剤の例としては、限定するものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微晶質セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、糊化デンプン、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の医薬組成物に含まれる結合剤/増量剤は、典型的には医薬組成物及び投与剤形の約50〜約99重量%の量で存在する。
【0078】
適切な微晶質セルロースの形態としては、例えば、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581及びAVICEL−PH−105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAより入手可能)として販売されている物質が挙げられる。適切な結合剤の例は、微晶質セルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースとの混合物(AVICEL RC−581として市販されている)である。適切な無水若しくは低水分の賦形剤若しくは添加剤としてはAVICEL−PH−103(商標)及びデンプン1500LMが含まれる。
【0079】
水性環境に晒された際に錠剤が崩壊するように、崩壊剤を本発明の組成物に使用する。崩壊剤を多く添加しすぎると、錠剤は瓶中で崩壊してしまう。崩壊剤が少なすぎると、崩壊が所望の時間又は所望の条件で起こらない可能性がある。従って、有効成分の放出を不利に変更しない程度の、多すぎず少なすぎない、十分な量の崩壊剤を用いて本明細書に開示する固形経口投与剤形を成形する必要がある。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類に基づいて変更するが、当業者であれば容易に決定できる。典型的には、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、具体的には約1〜約5重量%の崩壊剤を医薬組成物に使用しうる。
【0080】
本発明の医薬組成物及び投与剤形に使用しうる崩壊剤には、限定するものではないが、アガー−アガー、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、糊化デンプン、他のデンプン、クレー、他のアルギン、他のセルロース、ガム、及びこれらの混合物が含まれる。
【0081】
本発明の医薬組成物及び投与剤形に使用しうる滑沢剤には、限定するものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、アガー、及びそれらの混合物が含まれる。他の滑沢剤としては、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル(AEROSIL 200、W. R. Grace Co.(Baltimore, MD)製)、合成シリカの凝固エアゾール(Degussa Co.(Plano, Texas)より販売)、CAB−O−SIL(発熱性二酸化ケイ素製品;Cabot Co.(Boston, Mass)より販売)、及びこれらの混合物が挙げられる。滑沢剤は場合により添加してもよく、典型的に医薬組成物又は投与剤形の約1重量%未満の量で添加される。
【0082】
4.3.2.遅延放出投与剤形
当業者に周知の徐放性手段又はデリバリーデバイスにより本発明の有効成分を投与することができる。例えば限定されるものではないが、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;及び第5,733,566号に記載されているようなものがあり、上記特許の開示内容を参照により本明細書に組み入れる。これらの投与剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、又はこれらの組み合わせを用いて、1種以上の有効成分の遅延又は制御放出を提供するために使用し、種々の比率の所望の放出プロファイルを提供しうる。当業者に公知の適切な徐放性製剤としては本明細書に開示するものが挙げられるが、本発明の有効成分と共に使用するものを容易に選択することができる。従って本発明は、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、ゲルカップ及びキャプレットなどの経口投与に適切でありかつ制御放出に適合する単一の単位投与剤形を包含するものである。
【0083】
全ての徐放性医薬品は、非制御医薬品により達成される薬物療法を改善するという共通の目的をもつ。理想的には、最適に設計された徐放性製剤を医療に使用することは、最短の時間で症状を治癒又は管理するために用いられる薬物の量が最小となるという特徴をもつ。徐放性製剤の利点としては、薬物活性時間の延長、投与頻度の減少、及び患者のコンプライアンスの向上が挙げられる。さらに、徐放性製剤を用いることにより、作用開始時間又は薬物血中レベルなどの他の性質に影響を及ぼし、それにより副作用(有害作用)の発生にも影響を及ぼしうる。
【0084】
最も徐放性を示す製剤は、所望の治療効果を速やかに示す量の薬物(有効成分)を最初に放出し、そして長期間にわたってこの治療又は予防効果のレベルを維持するような量の薬物を段階的かつ連続的に放出するように設計する。体内の薬物レベルを一定に維持するには、代謝されて体外に排出される薬物の量と置き換わるような速度で薬物が投与剤形から放出されなければならない。有効成分の徐放性は、種々の要因、例えば限定するものではないが、pH、温度、酵素、水、又は他の生理的状態若しくは化合物により誘発されうる。
【0085】
4.3.3.非経口投与剤形
非経口投与剤形を、患者に、限定されるものではないが、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋内及び動脈内をはじめとする種々の経路で投与することができる。通常、その投与は患者の混入物質に対する生来の防御を回避するので、非経口投与剤形は無菌であるか、又は患者への投与の前に滅菌できることが好ましい。非経口投与剤形の例としては、限定されるものではないが、注射用溶液、注射用に製薬上許容されるビヒクルに溶解又は懸濁させ得る乾燥製剤、注射用懸濁液及び乳液が挙げられる。
【0086】
本発明の非経口投与剤形を提供するために使用できる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、限定されるものではないが、注射用水USP、水性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、生理食塩水、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース生理食塩水及び乳酸リンゲル液など、水混和性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなど、非水性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、トウモロコシオイル、綿実油、ピーナッツオイル、ゴマオイル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが挙げられる。
【0087】
また、本明細書に開示された1種又は複数の有効成分の溶解性を高める化合物を、本発明の非経口投与剤形に組込むこともできる。
【0088】
4.3.4.経皮、局所及び粘膜投与剤形
本発明の経皮、局所及び粘膜投与剤形としては、限定されるものではないが、眼用溶液、スプレー剤、エアゾール剤、クリーム、ローション、軟膏、ジェル剤、溶剤、乳剤、懸濁剤又は当業者に公知の他の剤形が挙げられる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版及び第18版、Mack Publishing、Easton PA (1980及び1990)、並びにIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、Lea & Febiger、Philadelphia (1985)参照。口腔内の粘膜組織の治療に適した投与剤形は、マウスウォッシュ又は経口ジェルとして製剤することができる。さらに、経皮投与剤形としては、皮膚に適用し、特定の期間つけて所望の量の有効成分を浸透させることができる、「リザーバー型」又は「マトリックス型」パッチが挙げられる。
【0089】
本発明によって包含される、経皮、局所及び粘膜投与剤形を提供するために使用できる、好適な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及びその他の材料は、製薬の技術分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は投与剤形が適用される特定の組織によって異なる。その事実を考慮して、典型的な賦形剤としては、限定されるものではないが、非毒性であり、製薬上許容される、ローション、チンキ、クリーム、乳剤、ジェル剤又は軟膏を形成するための、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油及びその混合物が挙げられる。また、必要に応じて、医薬組成物及び投与剤形に保湿剤又は湿潤剤を加えることもできる。このようなさらなる成分の例は、当技術分野では周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版及び第18版、Mack Publishing、Easton PA (1980及び1990)参照。
【0090】
治療対象の特定の組織に応じて、さらなる成分を、本発明の有効成分での治療の前に、それと同時に、又はその後に用いることができる。例えば、有効成分の組織への送達を補助するために浸透促進薬を使用できる。好適な浸透促進薬としては、限定されるものではないが、アセトン、エタノール、オレイル及びテトラヒドロフリルなどの種々のアルコール、ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどのピロリドン、コリドングレード(ポビドン、ポリビドン)、尿素及びTween80(ポリソルベート80)及びSpan60(ソルビタンモノステアレート)などの種々の水溶性又は不溶性糖エステルが挙げられる。
【0091】
また、医薬組成物若しくは投与剤形の、又は医薬組成物若しくは投与剤形が適用される組織のpHを調節して、1種又は複数の有効成分の送達を改良することができる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は緊張度を調節して送達を改良することができる。また、医薬組成物又は投与剤形にステアレートなどの化合物を加えて、送達を改良するために1種又は複数の有効成分の親水性又は親油性を有利に変更することができる。この関連で、ステアレートは、製剤の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進又は浸透促進剤として用いることができる。得られた組成物の特性をさらに調節するために、有効成分の種々の塩、水和物又は溶媒和物を用いることができる。
【0092】
4.3.5.キット
通常、本発明の有効成分は、患者に同時に又は同一の投与経路で投与されないことが好ましい。したがって、本発明は、開業医によって用いられれば、患者への適当量の有効成分の投与を簡単にすることができるキットを包含する。
【0093】
本発明の通常のキットは、化合物A、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、包接物、多形体若しくはプロドラッグの単位投与剤形と、第2の有効成分の単位投与剤形とを含む。第2の有効成分の例としては、限定されるものではないが、前記4.2節に列挙したものが挙げられる。
【0094】
本発明のキットはさらに、有効成分を投与するために用いられる装置を含み得る。このような装置の例としては、限定されるものではないが、シリンジ、ドリップバッグ、パッチ及び吸入器が挙げられる。
【0095】
本発明のキットはさらに、1種又は複数の有効成分を投与するために用いることができる製薬上許容されるビヒクルを含み得る。例えば、有効成分が、非経口投与のために再構成されなくてはならない固体形態で提供される場合には、キットは、そこで有効成分を溶解して、非経口投与に適した、微粒子を含まない滅菌溶液を形成することができる、適したビヒクルの密閉容器を含み得る。製薬上許容されるビヒクルの例としては、限定されるものではないが、注射用水USP、水性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、生理食塩水、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース生理食塩水及び乳酸リンゲル注射液など、水混和性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなど、並びに非水性ビヒクル、例えば限定されるものではないが、トウモロコシオイル、綿実油、ピーナッツオイル、ゴマオイル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどが挙げられる。
【実施例】
【0096】
5.実施例
5.1.実施例1:2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの合成
酢酸(20mL)に溶かした1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチルアミン(1.0g、3.7mmol)及び3−アセトアミドフタル酸無水物(751mg、3.66mmol)の撹拌溶液を還流で15時間加熱した。溶媒を真空除去すると、オイルが得られた。得られたオイルのクロマトグラフィーにより、生成物が黄色固体として得られた(1.0g、収率59%):融点144℃;


2224NOSの分析計算値:C,57.38;H,5.25;N,6.08。実測値:C,57.31;H,5.34;N,5.83。
【0097】
5.2.実施例2:(+)2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの合成
3−アミノフタル酸の調製
窒素雰囲気下、2.5LのParr水素添加装置に、10%Pd/C(2.5g)、3−ニトロフタル酸(75.0g、355mmol)及びエタノール(1.5L)を入れた。反応容器に、最大55psiまで水素を装入した。水素圧を50と55psiの間に保ちながら、混合物を13時間振盪した。水素を放出させ、混合物を窒素で3回パージした。懸濁液をセライトベッドを通して濾過し、メタノールですすいだ。濾液を真空濃縮した。得られた固体をエーテルで再度スラリーにし、真空濾過によって単離した。固体を恒量まで真空乾燥させると、54g(収率84%)の3−アミノフタル酸が黄色の生成物として得られた。
【0098】

【0099】
3−アセトアミドフタル酸無水物の調製
1Lの三口丸底フラスコに、機械撹拌器、温度計及び冷却器を取り付け、3−アミノフタル酸(108g、596mmol)及び無水酢酸(550mL)を入れた。この反応混合物を還流で3時間加熱し、周囲温度まで冷却し、さらにもう1時間かけて0〜5℃に冷却した。真空濾過によって結晶固体を回収し、エーテルで洗浄した。固体生成物を周囲温度で恒量まで真空乾燥させると、75g(収率61%)の3−アセトアミドフタル酸無水物が白色の生成物として得られた。
【0100】

【0101】
2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2−イルアミンの分割
3Lの三口丸底フラスコに、機械撹拌器、温度計及び冷却器を取り付け、2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2−イルアミン(137.0g、500mmol)、N−アセチル−L−ロイシン(52g、300mmol)及びメタノール(1.0L)を入れた。撹拌したスラリーを還流で1時間加熱した。撹拌した混合物を周囲温度まで放冷し、周囲温度でさらに3時間撹拌を続けた。このスラリーを濾過し、メタノール(250mL)で洗浄した。固体を風乾し、次いで、周囲温度で恒量まで真空乾燥させると、109.5g(収率98%)の粗成生物(85.8%ee)が得られた。この粗固体(55.0g)とメタノール(440mL)を1時間還流に導き、室温に冷却し、さらに3時間周囲温度で撹拌した。このスラリーを濾過し、フィルターケーキをメタノール(200mL)で洗浄した。固体を風乾し、次いで、30℃で恒量まで真空乾燥させると、49.6g(90%回収)の(S)−2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2−イルアミン−N−アセチル−L−ロイシン塩(98.4%ee)が得られた。キラルHPLC(Agilent Technologies製の1/99 EtOH/20mM KHPO、pH7.0、Ultron Chiral ES−OVS、150mm×4.6mm、0.5mL/分、240nm):18.4分(S異性体、99.2%)、25.5分(R異性体、0.8%)。
【0102】
化合物Aの調製
500mLの三口丸底フラスコに、機械撹拌器、温度計及び冷却器を取り付けた。反応容器に(S)−2−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−1−(メチルスルホニル)−エタ−2−イルアミンN−アセチル−L−ロイシン塩(25g、56mmol、98%ee)、3−アセトアミドフタル酸無水物(12.1g、58.8mmol)及び氷酢酸(250mL)を入れた。この混合物を一晩還流し、次いで、<50℃に冷却した。溶媒を真空除去し、残渣を酢酸エチルに溶解した。得られた溶液を水(250mL×2)、NaHCO飽和水溶液(250mL×2)、ブライン(250mL×2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空蒸発させ、残渣を、エタノール(150mL)とアセトン(75mL)を含む二成分溶媒から再結晶化させた。この固体を真空濾過によって単離し、エタノール(100mL×2)で洗浄した。生成物を60℃で恒量まで真空乾燥させると、19.4g(収率75%)の(S)−{2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アミノイソインドリン−1,3−ジオンが98%eeで得られた。キラルHPLC(Agilent Technology製の15/85 EtOH/20mM KHPO pH3.5、Ultron Chiral ES−OVS、150mm×4.6mm、0.4mL/分、240nm):25.4分(S異性体、98.7%)、29.5分(R異性体、1.2%)。

【0103】
5.3.実施例3:TNF−α阻害
ヒト全血LPS誘導性TNF−αアッセイ
ヒト全血によるLPS誘導性TNF−α産生を阻害する化合物の能力を、PBMCの代わりに新しく採取した全血を用いたという点以外は、基本的に、以下のヒトPBMCにおけるLPS誘導性TNF−αアッセイについて記載されたように測定した(George Mullerら、1999、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 9;1625〜1630頁)。ヒト全血LPS誘導性TNF−αIC50−294nM
マウスLPS誘導性血清TNF−α阻害
この動物モデルで、先に記載された方法に従って化合物を調べた(Corralら、1996、Mol. Med 2:506〜515頁)。マウスLPS誘導性血清TNF-α阻害(ED50、mg/kg、p.o.)=0.05。
【0104】
LPS誘導性TNF−α産生
リポ多糖(LPS)は、大腸菌(E.coli)などのグラム陰性菌によって産生される内毒素であり、これは、TNF−αをはじめとする多数の炎症誘発性サイトカインの産生を誘導する。末梢血単核細胞(PBMC)では、LPSに応じて産生されるTNF−αは、全PBMCの約5〜20%を含む単球から誘導される。化合物を、ヒトPBMCからのLPS誘導性TNF−α産生を阻害する能力について、先に記載されたように調べた(Mullerら、1996、J. Med Chem. 39:3238頁)。正常ドナー由来のPBMCを、Ficoll Hypaque(Pharmacia、Piscataway、NJ、USA)密度遠心分離によって得た。細胞を、10%AB±ヒト血清(Gemini Bio-products、Woodland、CA、USA)、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Life Technologies)を添加したRPMI(Life Technologies、Grand Island、NY、USA)で培養した。
【0105】
PBMC(2×10個細胞)を、96ウェル平底Costar組織培養プレート(Corning、NY、USA)に三連でプレーティングした。細胞を、化合物の不在下又は存在下で、100ng/mlのLPS(Sigma、St.Louis、MO、USA)で刺激した。化合物(Celgene、Corp.、Warren、NJ、USA)をDMSO(Sigma)に溶解し、さらに使用直前に培養培地で希釈を行った。すべてのサンプルの最終DMSO濃度は0.25%とした。化合物は、LPS刺激の1時間前に細胞に加えた。細胞を5%CO中、37℃で18〜20時間インキュベートし、次いで、上清を回収し、培養培地で希釈し、TNF−αレベルについてELISA(Endogen、Boston、MA、USA)でアッセイした。LPS誘導性TNF−α IC50=77nM。
【0106】
IL−1β誘導性TNF−α産生
炎症性疾患の経過の際には、TNF-α産生は、細菌由来のLPSによってよりもサイトカインIL−1βによって刺激されることが多い。化合物を、ヒトPBMCからのIL−1β誘導性TNF−α産生を阻害する能力について、PBMCをFicoll−Paque Plus(Amersham Pharmacia、Piscataway、NJ、USA)での遠心分離によって原料白血球単位(Sera-Tec Biologicals、North Brunswick、NJ、USA)から単離し、10%熱不活化ウシ胎児血清(Hyclone)、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地(Bio Whittaker、Walkersville、Maryland、USA)(完全培地)を入れた96ウェル組織培養プレートに3×10個細胞/ウェルでプレーティングし、5%COにて加湿したインキュベーター中、37℃で、最終DMSO濃度0.1%中10、2、0.4、0.08、0.016、0.0032、0.00064及び0μMの化合物(二連)で1時間前処理し、次いで、50ng/mlの組換えヒトIL−1β(Endogen)で18時間刺激したという点以外は、LPS誘導性TNF−α産生について先に記載したようにして調べた。IL−β誘導性TNF−α IC50=83nM。
【0107】
5.4.実施例4:PDE選択性
PDE1、2、3、5及び6酵素アッセイ
PDE4に対する化合物の特異性を、ウシPDE1、ヒト血小板由来ヒトPDE2、PDE3及びPDE5(Hidaka及びAsano 1976、Biochem. Biophys. Acta 429:485頁、並びにNicholsenら、1991、Trend Pharmaco. Sci. 12:19頁)及びウシ網膜桿体外節由来PDE6(Baehrら、1979、J. Biol. Chem.254:11669、及びGillespieら、1989、Mol. Pharm. 36:773頁)に対して単一濃度(10μM)で調べることによって評価した。結果を表1に列挙する。
【0108】
PDE7酵素アッセイ
PDE7は、主にT細胞及び骨格筋で発現されるcAMP選択的PDEである。IL−2及びIFN−γなどのT細胞由来のサイトカインは、PDE7阻害によって調節可能である可能性がある。PDE7は、先に記載されたように、Hut78ヒトT細胞から陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した(Bloom及びBeavo 1996、Proc. Natl. Acad Sci. USA 93:14188〜14192頁)。化合物は、以下の表1にPDE4について記載したように10nM cAMPの存在下でPDE7調製物に対して調べた。
【表1】


【0109】
5.5.実施例5:PDE4阻害
PDE4(U937細胞由来)酵素アッセイ
PDE4酵素は、先に記載されたようにU937ヒト単球細胞からゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した(Mullerら、1998、Bioorg. & Med Chem Lett 8:2669〜2674頁)。記載されたように、30℃で、50mM Tris HCl pH7.5、5mM MgCl、1μM cAMP、10nM[H]−cAMP中でホスホジエステラーゼ反応を30分間実施し、煮沸することによって終結させ、1mg/mlのヘビ毒で処理し、AG−IXSイオン交換樹脂(BioRad)を用いて分離した(Mullerら、1998、Bioorg. & Med Chem Lett 8:2669〜2674頁)。反応により利用可能な基質の15%未満しか消費されなかった。結果を表1に列挙する。
【0110】
5.6.実施例6:ヒトT細胞アッセイ
SEB誘導性IL−2及びIFN−γ産生
ブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)は、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のスーパー抗原である。SEBは、特定のT細胞受容体Vβ鎖を発現するT細胞に特異的な好都合な生理学的刺激を提供する。ヒトPBMC(約50%のT細胞からなる)を、前記のように原料白血球単位から単離し、完全培地を入れた96ウェル組織培養プレートに3×10個細胞/ウェルでプレーティングし、5%CO、加湿インキュベーター中、37℃で、最終DMSO濃度0.1%中10、2、0.4、0.08、0.016、0.0032、0.00064及び0μMの化合物(二連)で1時間前処理し、次いで、100ng/ml SEB(Sigma Chemical Co.、St. Louis、MO、USA)で18時間刺激した。IL−2及びIFN−γレベルは、ELISA(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)によって測定した。IL−2 IC50=291nM。IFN−γ IC50=46nM。
【0111】
5.7.実施例6:cAMP上昇アッセイ
PGE2誘導性cAMP上昇
プロスタグランジンE2(PGE)は、単球、T細胞及びその他の白血球上のプロスタノイド受容体と結合し、その結果、細胞内cAMPレベルを上昇させ、細胞応答の阻害をもたらす。PGEとPDE4阻害剤の組合せは、これらの細胞種において相乗作用してcAMPレベルを上昇させ、PGEの存在下でPDE4阻害剤によって引き起こされたPBMCにおけるcAMPの上昇は、そのPDE4阻害剤の阻害活性と比例する。細胞内cAMPは、以下のようにヒトPBMCにおいて測定した。PBMCを前記のように単離し、ウェル当たり1×10個細胞でRPMI−1640を入れた96ウェルプレートにプレーティングした。この細胞を、37℃、5%CO、加湿インキュベーター中で、最終濃度2%のDMSO中100、10、1、0.1、0.01及び0μMの化合物(二連)で1時間前処理した。次いで、この細胞をPGE(10μM)(Sigma)で1時間刺激した。この細胞をHCl、0.1N最終濃度を用いて溶解してホスホジエステラーゼ活性を阻害し、このプレートを−20℃で凍結した。産生されたcAMPは、cAMP(低pH)イムノアッセイキット(R&D Systems)を用いて測定した。ラセミ化合物のPBMC cAMP EC50は3.09μMである。化合物Aに対するPBMC cAMP EC50は1.58μMである。
【0112】
ヒト好中球におけるcAMPの上昇は、以下の通りに測定した。PBMCを、原料白血球(Sera-Tec Biologicals)からFicoll−Paque Plus(Amersham Pharmacia)での遠心分離によって回収した。得られた赤血球/多形核細胞(PMN)ペレットをハンクス平衡塩溶液(Bio Whittaker)に再懸濁し、等容量の0.9%生理食塩水に溶かした3%デキストランT−500(Amersham Pharmacia)と混合した。赤血球を20分間沈降させ、PMNを回収し、4℃、120rpmで8分間遠心分離した。残存する赤血球を冷0.2%生理食塩水に30秒間溶解し、等容量の1.6%生理食塩水を加えることによって細胞を等張性に回復させた。PMNは、4℃、1200rpmで8分間遠心分離し、次いで、RPMI−1640に再懸濁し、先にPBMCについて記載したようにcAMP上昇についてアッセイした。FACSCalibur(Becton Dickinson、San Jose、CA、USA)でのフローサイトメトリーによって、PMNは約74%のCD18/CD11b、71%のCD16CD9好中球であることがわかった。結果を表2に示す。
【0113】
fMLF誘導性LTB4産生
N−ホルミル−メチオニン−ロイシン−フェニルアラニン(fMLF)は、好中球を、迅速に脱顆粒し、遊走し、内皮細胞と接着し、アラキドン酸代謝の産物であり、それ自体が好中球化学誘引物質であるロイコトリエンLTB4を放出するよう活性化する細菌由来ペプチドである。化合物を、fMLF誘導性好中球LTB4産生を阻止する能力について、先に記載されたように(Hatzelmann及びSchudt 2001、J. Pharm. Exp. Ther. 297:267〜279頁)ではあるが、以下の変更を加えて調べた。好中球を前記のように単離し、10mM HEPES PH7.2を含有する、カルシウム又はマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩水(Bio Whittaker)に再懸濁し、1.7×10個細胞/ウェルの濃度で96ウェル組織培養プレートにプレーティングした。細胞を、37℃、5%COで、50μM チメロサール(Sigma)/1mM CaCl/1mM MgClで15分間処理し、次いで、最終DMSO濃度0.01%中1000、200、40、8、1.6、0.32、0.064及び0nMの化合物(二連)で10分間処理した。好中球を、1μM fMLFで30分間刺激し、次いで、メタノールを加えることによって(最終濃度20%)溶解し、ドライアイス/イソプロパノール浴で10分間かけて凍結した。溶解物は、競合LTB4 ELISA(R&D Systems)によってLTB4含量を測定するまで、−70℃で保存した。結果を表2に示す。
【0114】
ザイモサン誘導性IL−8産生
ザイモサンA又は熱死滅させた酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、好中球表面で接着分子Mac−1と結合し、食作用、細胞活性化及びIL−8産生を誘導する。ザイモサン誘導性IL−8産生を、先に記載されたようではあるが(Auら、1998、Brit. J. Pharm. 123:1260〜1266頁)、以下の変更を加えて測定した。ヒト好中球を前記のように精製し、3×10個細胞/ウェルで、完全培地を入れた96ウェル組織培養プレートにプレーティングし、37℃、5%COで、最終DMSO濃度0.1%中10、2、0.4、0.08、0.016、0.0032、0.00064及び0μMの化合物(二連)で1時間処理した。次いで、好中球を、2.5×10個粒子/ウェルのオプソニン化していない、煮沸したザイモサンA(Sigma)で18時間刺激した。上清を回収し、ELISA(R&D Systems)によってIL−8について調べた。結果を表2に示す。
【0115】
fMLF誘導性CD18/CD11b発現
好中球でのCD18/CD11b(Mac−1)発現を、先に記載されたようにではあるが(Derianら、1995、J. Immunol:154:308〜317頁)、以下の変更を加えて測定した。好中球を前記のように単離し、次いで、1×10個細胞/ウェルで完全培地に再懸濁し、37℃、5%COで、最終DMSO濃度0.1%中、10、1、0.1、0.01及び0μMの化合物(二連)で10分間前処離した。次いで、細胞を30nM fMLFで30分間刺激し、次いで、4℃に冷却した。細胞をウサギIgG(Jackson ImmunoResearch Labs、West Grove、PA、USA)(10μg/1×10個細胞)で処理してFc受容体をブロックし、CD18−FITC及びCD11b−PE(Becton Dickinson)で染色し、FACSCaliburでのフローサイトメトリーによって解析した。すべてのサンプルから、刺激の不在下でのCD18/CD11b発現(平均蛍光)を差し引いて、阻害曲線を得、IC50を算出した。結果を表2に示す。
【0116】
HUVECとのfMLF誘導性接着
先に記載されたようにではあるが(Derianら、1995、J. Immunol.:154:308〜317頁)、以下の変更を加えて、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を好中球接着の基質として用いた。HUVEC細胞は、Anthrogenesis(Cedar Knolls、NJ、USA)から入手し、好中球はサイトカラシンBで処理しなかった。細胞は、最終DMSO濃度0.1%中、10、1、0.1、0.01、0.001及び0μMの化合物(二連)で10分間処理し、500nM fMLFで30分間刺激し、PBSで2回洗浄し、その後、FLX800プレートリーダー(Bio-Tek Instruments、Winooski、VT、USA)で蛍光を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0117】
5.8.実施例8:水溶解度
平衡溶解度を、pH7.4水性バッファー中で測定した。pH7.4バッファーを、0.07M NaHPO溶液のpHを、10N NaOHを用いて7.4に調整することによって調製した。溶液のイオン強度は0.15とした。少なくとも1mgの粉末を1mlのバッファーと混合して、>1mg/ml混合物を作製した。これらのサンプルを、2時間以上振盪し、室温で一晩静置した。次いで、サンプルを、まずサンプルで飽和させた0.45μm Nylonシリンジフィルターを通して濾過した。濾液を連続して2回サンプリングした。濾液を、HPLCによって50%メタノール中に調製した標準物質に対してアッセイした。化合物Aは、ラセミ混合物よりも3.5倍大きい水溶解度を有する。測定された溶解度 化合物A=0.012mg/mL;ラセミ混合物=0.0034mg/mL。
【0118】
5.9.実施例8:LPS誘導性肺好中球増加フェレットモデル
知覚フェレットモデルを用いて、経口(p.o.)経路で投与した場合のPDE4阻害剤の抗炎症作用、催吐作用及び行動作用を調べた。これらの実験から、各PDE4阻害剤の治療指数(TI)を求めることができる。TIは、催吐事象及び行動変化を引き起こす閾用量を、抗炎症用量(LPS誘導性好中球増加の50%抑制を引き起こす用量)で除することによって算出した。
【0119】
動物の管理
雄のフェレット(ムステラ・プロリウス・ユーロ(Mustela Pulorius Euro))、体重1〜2kg)。フェレットはBury Green FarmかMisay Consultancyのいずれかから供給を受けた。輸送後、動物を少なくとも7日間かけてホールディング・ルームに順応させた。食餌には、随意与えたSDS食餌Cペレット化フードと週3回与えたWhiskersキャットフードよりなるものとした。水は低温殺菌された動物用飲料水とし、毎日取り換えた。
【0120】
PDE4阻害剤の投与
PDE4阻害剤を、TIが10以上であるかどうかを確立するために、最初は1〜10mg/kgあるが、続いて最大30mg/kgまでの用量で、及び/又は好中球増加の50%抑制を引き起こす最少用量を確立するために低用量で経口投与(p.o.)した。フェレットを一晩、絶食ではあるが水は自由に利用できるようにした。この動物に、咽頭の裏から食道に通した15cmの投与ニードルを用いてビヒクル又はPDE4阻害剤を経口投与した。投与後、動物を、観察を可能にするためにパースペクスドアを取り付けたホールディング・ケージに戻し、水を自由に利用できるようにした。投与後、動物を絶えず観察し、催吐又は行動の変化を記録した。動物を、p.o.投与の60〜90分後に食物を利用できるようにした。
【0121】
LPSに対する曝露
化合物又はビヒクル対照のp.o.投与の30分後、フェレットを密閉したパースペクス容器に入れ、LPSのエアゾール(100μg/ml)に10分間曝露させた。LPSのエアゾールは、噴霧器(DeVilbiss、USA)で作製し、これをパースペクス曝露チャンバーに向けた。10分の曝露時間の後、動物をホールディング・ケージに戻し、水、後期には食物を自由に利用できるようにした。観察は、p.o.投与後、少なくとも2.5時間にわたり継続し、催吐事象及び行動の変化を記録した。
【0122】
気管支肺胞洗浄
LPS曝露の6時間後、動物を腹腔内投与するペントバルビタール・ナトリウムの過剰投与によって屠殺した。次いで、気管をポリプロピレンチューブを用いてカニューレ処置し、肺を20mlのヘパリン添加(10ユニット/ml)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。
【0123】
血液サンプリング/組織採取
経胸部心穿刺によって末端血サンプル(10ml)を採取した。血液を2500rpmで15分間遠心し、血漿を回収し、−20℃で保存した。脳も採取し、化合物含量の解析用に−20℃で凍結した。
【0124】
細胞計数
気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルを1500rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、得られた細胞ペレットを1mlのPBSに再懸濁した。再懸濁した液の細胞スメアを調製し、リーシュマン(leishmans)染色で染色して示差的細胞計数が可能となった。総細胞計数は、残存する再懸濁サンプルを用いて行った。これから、BAL中の好中球の総数を求めた。
【0125】
測定したパラメータ:
1.LPS誘導性肺好中球増加の抑制%
2.催吐事象嘔吐及び吐き気の数を計数した
3.行動の変化−以下の行動作用に注目した:
唾液分泌、浅速呼吸、口を引っかくこと、扁平な姿勢、運動失調、背中の盛り上がった姿勢での後方への歩行。いずれの行動変化も重症度評点付け(軽度、中度又は重度)を適用することによって半定量化した
4.TIは、肺好中球増加を50%以上抑制すると判明した最低用量で除した、催吐事象を引き起こさないと判明した最高用量として算出した。
【0126】
化合物Aの、知覚フェレットの肺におけるLPS誘導性好中球増加に対する作用を図1で実証する。
【0127】
催吐及び行動変化
PDE4のp.o.投与後、フェレットを、少なくとも2時間観察し、催吐事象(嘔吐及び吐き気)及び行動変化を記録した。
【0128】
関連するビヒクル(アセトン/クレモフォール/蒸留水)を用いてp.o.前処理したフェレットでは、催吐事象(吐き気又は嘔吐)は観察されなかった。対照処理した動物のうち少ない割合には(7/22)、軽度の行動変化(唇を舐めること及び後方への歩行)が見られた。
【0129】
化合物A(0.1〜3mg/kg、p.o.)は、催吐事象(吐き気及び嘔吐)を引き起こさなかった。いくつかの行動変化(扁平な姿勢、唇を舐めること及び後方への歩行)が観察され軽度と分類された。10mg/kgでは、2/6のフェレットで、唾液分泌と行動変化とともに(軽度又は中度と記録された)、何らかの吐き気が観察されたが、明らかな催吐は観察されなかった。調べた最高用量(30mg/kg)では、3/4の動物で、顕著な行動変化とともに、中度〜著しい催吐が観察された。これらのデータは表IIIにまとめられている。
【表3】

【0130】
動物は、投与後最大3時間観察した。括弧内の数は、応答した動物数を指す。各群の動物数は4〜22である。
【0131】
治療指数算出
これらの実験から、催吐事象を誘導する閾用量を、肺好中球増加を阻害するED50値で除することによって各化合物の治療指数(TI)を求めた。TI算出は表IVにまとめられている。化合物Aは、1mg/kgの抗炎症用量では催吐事象を引き起こさない、12というTIを有していた。
【表4】

【0132】
5.10.実施例9:200MG投与量カプセル剤
表Vは、200mg化合物Aの単一用量単位、すなわち、0サイズカプセル剤で約40重量パーセントのバッチ製剤及び単一投与製剤を示す。
【表5】

【0133】
予め糊化したコーンスターチ(SPRESS B−820)及び化合物A成分を、710μmの篩に通し、次いで、バッフルインサートを備えたDiffusion Mixerに入れ、15分間ブレンドする。ステアリン酸マグネシウムを210μmの篩に通し、Diffusion Mixerに加える。次いで、Dosator型カプセル充填機を用いて、配合物を、サイズ0カプセルに、カプセル当たり500mg(8400カプセルバッチサイズ)封入した。
【0134】
5.11.実施例10:100MG経口投与剤形
表VIは、100mgの化合物Aを含む、バッチ製剤及び単一用量単位製剤を示す。
【表6】

【0135】
微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム及び化合物A成分を#30メッシュ篩(約430μ〜約655μ)に通す。Pluronic F−68(登録商標)(Lenexa、KSのJRH Biosciences, Inc.製)サーファクタントを#20メッシュ篩(約457μ〜約1041μ)に通す。Pluronic F−68(登録商標)サーファクタント及び0.5kgのクロスカルメロースナトリウムを16qt.ツイン・シェル・タンブル・ブレンダーに入れ、約5分間混合する。次いで、混合物を、3立方フィートのツイン・シェル・タンブル・ブレンダーに移し、そこに微晶質セルロースを加え、約5分間ブレンドする。サリドマイドを加え、さらに25分間ブレンドする。この予備配合物を、ローラー・コンパクターの排出にハンマーミルを取り付けたローラー・コンパクターに通し、タンブル・ブレンダーに戻す。残りのクロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを、タンブル・ブレンダーに加え、約3分間ブレンドする。最終混合物を、錠剤当たり250mgを用いてロータリー・タブレット・プレスで打錠する(200,000錠剤バッチサイズ)。
【0136】
5.12.実施例11:エアゾール投与剤形
高剪断ミキサーを備えた密閉ステンレス鋼容器で、化合物Aを、トリクロロモノフルオロメタンの12.6kgポーションと混合することによって、濃縮物を調製する。混合を約20分間実施する。次いで、密閉容器で、この濃縮物を、21〜27℃に温度制御され、2.8〜4.0バールに圧力制御されている、バルク生成物タンク中の高圧ガスのバランスと混合することによってバルク懸濁液を調製する。本発明の組成物の100回の吸入を提供するよう設計されている、定量バルブを有する17mlのエアゾール容器。各容器は以下を含めて提供する:
化合物A 0.0120g
トリクロロモノフルオロメタン 1.6939g
ジクロロジフルオロメタン 3.7175g
ジクロロテトラフルオロエタン 1.5766g
合計 7.0000g
本発明を特定の実施形態に関して記載したが、特許請求の範囲に定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変法及び改変をなすことができることは当業者には明らかであろう。このような改変も添付の特許請求の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を含む、ベーチェット病を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬又はステロイドと併用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
哺乳動物に投与するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
非経口、経皮、粘膜、鼻腔、口腔内、舌下又は経口投与用である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
経口投与用である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
錠剤又はカプセル剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
エアゾール剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
単回単位投与剤形である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を1日当たり1mg〜1000mg投与するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を1日当たり5mg〜500mg投与するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオン、又はその製薬上許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を1日当たり10mg〜200mg投与するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの製薬上許容される塩を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
塩が包接物である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンの製薬上許容される溶媒和物を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
溶媒和物が水和物である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが含む(−)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが20重量%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが含む(−)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが10重量%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが含む(−)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが5重量%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
立体異性体として純粋な(+)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが含む(−)−2−[1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−2−メチルスルホニルエチル]−4−アセチルアミノイソインドリン−1,3−ジオンが3重量%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−47262(P2013−47262A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242868(P2012−242868)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2009−297650(P2009−297650)の分割
【原出願日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【出願人】(500026935)セルジーン コーポレイション (41)
【Fターム(参考)】