説明

(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類の製造方法

【課題】α−パーフルオロアルキルスチレン類を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類と、アリールグリニヤル試薬とを、ニッケル化合物またはパラジウム化合物を触媒として反応させることにより、一般式(3)


[式中、Arは、フェニル基、ナフチル基又はアントリル基を示し、Rfはパーフルオロアルキルを示す。]で表される(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類は、機能性材料や医農薬中間体として工業的に有用な化合物である。特にα−トリフルオロメチルスチレン類は、非ステロイド系抗炎症薬のナプロキセン類縁体や抗HIVウィルス治療薬のエファビレンツの原料として用いられる(非特許文献1、2)。
【0003】
α−トリフルオロメチルスチレン類の製造方法としては、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンをホウ素試薬や亜鉛試薬に変換させた後に、ヨウ化ベンゼンまたは臭化ベンゼン類とパラジウム触媒存在下にカップリングさせる方法が知られている(非特許文献3、4)。しかしながら、カップリング用のホウ素試薬や亜鉛試薬の調製や取り扱いが比較的困難な場合が多く、工業的には使用し難い。
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society,120巻,2028ページ,1998年.
【非特許文献2】Angewandte Chemie International Edition,38巻,711ページ,1999年.
【非特許文献3】Tetrahedron Letters,42巻,4083ページ,2001年.
【非特許文献4】Journal of Organic Chemistry,56巻,7336ページ,1991年.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類の簡便で効率の良い製造方法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類と、アリールグリニヤル試薬を、金属化合物を触媒として反応させることにより、(1−パーフルオロアルキル)ビニル類アリールを簡便かつ高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、一般式(1)
【0006】
【化4】

【0007】
[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。]で表される1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類と、一般式(2)
【0008】
【化5】

【0009】
[式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。Arは、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基を示し、更には置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基、置換されていても良い炭素数2から4のアルケニル基、置換されていても良い炭素数2から4のアルキニル基、置換されていても良い炭素数1から4のアルコキシ基、置換されていても良い炭素数1から4のアルキルチオ基、置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基をもつジアルキルアミノ基、置換されていても良いアリール基または塩素原子またはフッ素原子で置換されていても良い。]で表されるアリールグリニヤル試薬とを、ニッケル化合物またはパラジウム化合物を触媒として反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0010】
【化6】

【0011】
[式中、Arは、前記と同じ内容を示す。]で表される(1−パーフルオロアルキル)ビニル類の製造方法に関するものである。以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
Rfで示される炭素数1から6のパーフルオロアルキル基として具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基またはパーフルオロシクロヘキシル基等が例示できる。医農薬・電子材料およびそれらの合成中間体として有用な点で、トリフルオロメチル基が望ましい。
【0013】
は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれでも良いが、収率が良い点で臭素原子またはヨウ素原子が望ましく、入手が容易な点で臭素原子がさらに望ましい。
【0014】
Arは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基または9−アントリル基のいずれでも良く、また、これらの基は、置換されていても良い。
【0015】
炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基等が例示できる。また、これらのアルキル基は、フッ素原子またはジアルキルアミノ基で置換されていても良く、具体的には、ジフルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ジメチルアミノメチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基等が例示できる。
【0016】
炭素数2から4のアルケニル基としては具体的には、ビニル基、1−メチルビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルビニル基、2−ブテニル基または1,3−ブタンジエニル基等が例示できる。また、これらのアルケニル基はフッ素原子で1個以上置換されていても良く、具体的には、1−(ジフルオロメチル)ビニル基、1−(トリフルオロメチル)ビニル基、2−ジフルオロメチル−プロペニル基、2−トリフルオロメチル−2−プロペニル基、1−(2−フルオロエチル)ビニル基、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)ビニル基等が例示できる。
【0017】
炭素数2から4のアルキニル基としては具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基または3−ブチニル基等が例示できる。また、これらのアルキニル基はフッ素原子で1個以上置換されていても良く、具体的には、3,3−ジフルオロ−1−プロペニル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基、4−フルオロ−1−ブチニル基、4,4−ジフルオロ−1−ブチニル基、4,4,4−トリフルオロ−1−ブチニル基、4,4−ジフルオロ−2−ブチニル基または4,4,4−トリフルオロ−2−ブチニル基等が例示できる。
【0018】
炭素数1から4のアルコキシ基としては具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基またはシクロプロピルメチルオキシ基等が例示できる。また、これらのアルコキシ基はフッ素原子で1つ以上置換されていてもよく、具体的には、ジフルオロメトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−フルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基等が例示できる。
【0019】
炭素数1から4のアルキルチオ基としては具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、シクロブチルチオ基またはシクロプロピルチオ基等が例示できる。また、これらのアルキルチオ基はフッ素原子で1つ以上置換されていてもよく、具体的には、ジフルオロメチルチオ基、3−フルオロプロピルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、2−フルオロエチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基等が例示できる。
【0020】
炭素数1から4のアルキル基をもつジアルキルアミノ基としては具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基等が例示できる。また、これらのアルキル基はフッ素原子で1つ以上置換されていても良く、具体的には、ビス(ジフルオロメチル)アミノ基、ジ(3−フルオロプロピル)アミノ基、ビス(トリフルオロメチル)アミノ基、ジ(2−フルオロエチル)アミノ基、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ基等が例示できる。
【0021】
アリール基は、炭素数1から4のアルキル基、ジアルキルアミノ基、フッ素原子等で置換されていても良く、具体的には、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、m−トリル基、メシチル基、4−ジエチルアミノフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基等が例示できる。
【0022】
は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれでも良いが、収率が良い点で臭素原子が望ましい。
【0023】
次に、本発明の製造方法について、詳細に述べる。
【0024】
1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類(1)とアリールグリニヤル試薬(2)とのモル比は、両論比で良いが、収率が良い点で1:1から1:2がさらに望ましい。
【0025】
触媒として用いるニッケル化合物は、例えば、ニッケル黒などの金属ニッケル、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、酸化ニッケル、硫酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ニッケルヘキサフルオロアセチルアセトナートなどのニッケル塩、アリル(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(N,N’−ジエチルエチレンジアミン)ニッケル二チオシアネート、(シクロペンタジエニル)(カルボニル)ニッケルダイマー、ヘキサアンミンニッケル二塩化物、カリウムヘキサフルオロニッケレート、テトラエチルアンモニウムテトラクロロニッケレート、トリス(エチレンジアミン)ニッケル二塩化物、ビス(N,N’−ジイソプロピルアセトアミジナト)ニッケル等のニッケル錯塩または錯化合物等を挙げることができる。三級ホスフィンを配位子とするジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリメチルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリブチルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル、ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、クロロ(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル等のニッケル錯体を例示することができる。
【0026】
また、これらの金属ニッケル、ニッケル錯塩、錯化合物またはニッケル錯体を、適当な担体に担持して用いることもできる。担体としては、例えばアルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、Y型ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、モルデナイト、ZSM−5、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、4フッ化ケイ雲母、炭素、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ポリスチレン樹脂等を例示することができる。
【0027】
これらの担体への担持は、含浸法、イオン交換法等、汎用の方法を用いることができる。
【0028】
収率が良い点で、ニッケル錯体を用いることが望ましく、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを用いることがさらに望ましい。
【0029】
これらのニッケル化合物は、配位子と共に用いると収率が良いことがある。配位子としては、三級ホスフィンまたはジアミン類が例示でき、これらを組み合わせて用いても良い。
【0030】
三級ホスフィンとしては具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリネオペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアリルホスフィン、トリアミルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、イソブチルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、(R)−(+)−2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−メトキシ−1,1’−ビナフチル、1,1’−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン、(±)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス[4−(ペルフルオロへキシル)フェニル]ホスフィン、トリス(2−チエニル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(2,5−キシリル)ホスフィン、トリ(3,5−キシリル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、ビス(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、ビス(p−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二カリウム塩、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィン等が例示できる。
【0031】
また、ジアミン類としては具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,4−ジメチルピペラジン、N,N’−ジエチル−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチルエチレンジアミン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、2,2−ビピリジル、6−メチル−2,2−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2−ビピリジル、6,6’ジメチル−2,2−ビピリジル、4,4’−ジメトキシ−2,2−ビピリジル、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、4−メチル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、ネオクプロイン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、バソフェナントロリン等が例示できる。
【0032】
ニッケル化合物と配位子のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.5から1:5がさらに望ましい。
【0033】
また、パラジウム化合物は、具体的には、パラジウム黒、パラジウムスポンジ等のパラジウム金属、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、シアン化パラジウム、ナトリウムヘキサクロロパラデート、カリウムヘキサクロロパラデート、ナトリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラブロモパラデート、アンモニウムテトラクロロパラデート、アンモニウムヘキサクロロパラデート、π―アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、ホウフッ化テトラ(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロジアンミンパラジウム、硝酸テトラアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラデート、ジクロロジピリジンパラジウム、ジクロロ(2,2’−ビピリジル)パラジウム、ジクロロ(フェナントロリン)パラジウム、硝酸(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム、硝酸ジフェナントロリンパラジウム、硝酸ビス(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム等のパラジウム錯塩または錯化合物を例示できる。また、三級ホスフィンを配位子とするジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウムおよびジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム錯体を例示することができる。
【0034】
また、これらの金属パラジウム、パラジウム錯塩、錯化合物またはパラジウム錯体を、適当な担体に担持して用いることもできる。担体としては、例えばアルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、Y型ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、モルデナイト、ZSM−5、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、4フッ化ケイ雲母、炭素、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ポリスチレン樹脂等を例示することができる。
【0035】
これらの担体への担持は、含浸法、イオン交換法等、汎用の方法を用いることができる。
【0036】
これらのパラジウム化合物は、配位子と共に用いると収率が良いことがある。配位子としては、三級ホスフィンが例示できる。
【0037】
三級ホスフィンとしては具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリネオペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアリルホスフィン、トリアミルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、イソブチルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、(R)−(+)−2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−メトキシ−1,1’−ビナフチル、1,1’−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン、(±)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス[4−(ペルフルオロへキシル)フェニル]ホスフィン、トリス(2−チエニル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(2,5−キシリル)ホスフィン、トリ(3,5−キシリル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、ビス(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、ビス(p−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二カリウム塩、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィン等が例示できる。
【0038】
パラジウム化合物と配位子のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.5から1:5がさらに望ましい。
【0039】
パラジウム化合物を用いる場合、収率が良い点で、添加剤として三級アミン類を加えることが望ましい。アミン類としては具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,4−ジメチルピペラジン、N,N’−ジエチル−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチルエチレンジアミン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が例示できる。アリールグリニヤル試薬(2)と三級アミン類のモル比は、1:0.1から1:5が望ましく、1:0.5から1:1.5がさらに望ましい。
【0040】
収率が良い点で、パラジウム化合物として酢酸パラジウム、配位子として1,3−ビス(ジフェニルホスフィノメタン)、添加剤としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを用いることが望ましい。
【0041】
ニッケル化合物またはパラジウム化合物の量は、触媒量で良いが、1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類(1)に対して0.0001等量から0.9等量が望ましく、収率が良い点で0.005等量から0.1等量がさらに望ましい。
【0042】
本発明で用いることのできる溶媒は、反応に害を及ぼさない溶媒であれば良く、具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。
【0043】
ニッケル化合物を用いる場合は、収率が良い点で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとテトラヒドロフランの混合溶媒を用いることが望ましい。その際の混合比は、1:0.1から1:10の間で良い。パラジウム化合物を用いる場合は、収率が良い点で、1,4−ジオキサンとテトラヒドロフランの混合溶媒を用いることが望ましい。その際の混合比は、1:0.1から1:10の間で良い。
【0044】
反応温度は20℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から70℃が望ましい。
【0045】
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガス下で行うことが望ましい。
【0046】
反応後、(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0047】
1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類(1)のXが臭素原子の場合、塩基を用いて、一般式(1a)で表される1,2−ジブロモ−1−パーフルオロアルキルエタン類から1−ブロモ−1−パーフルオロアルキルエチレン類(1b)を調製しても良い。
【0048】
【化7】

【0049】
[式中、Rfは、前記と同じ内容を示す。]
その際使用する塩基としては、有機塩基が望ましく、収率が良い点で三級アミンが望ましい。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリぺプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジエチルプロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、キヌクリジン等を挙げることができる。収率が良い点で、トリエチルアミンが望ましい。
【0050】
三級アミンの使用量は、原料である1,2−ジブロモ−1−パーフルオロアルキルエタン類(1a)に対し、1.2当量から大過剰でも良いが、収率が良い点で、2当量から5当量大過剰が望ましい。
【0051】
得られた1−ブロモ−1−パーフルオロアルキルエチレン類(1b)は、蒸留等により単離して用いても良いが、そのまま原料として供給することもできる。
【0052】
アリールグリニヤル試薬(2)は、汎用の方法で調製することができる。すなわち、一般式(4)
【0053】
【化8】

【0054】
[式中、ArおよびXは、前記と同じ内容を示す。]で表されるハロゲン化アリール類を、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の溶媒中、室温から溶媒還流温度にて、マグネシウム片にゆっくり加えることで得ることができる。
【0055】
調製したアリールグリニヤル試薬(2)は、単離しても良いが、このまま次の操作に用いることもできる。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、機能性材料や医農薬中間体として有用な(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類を高収率で得る製造方法として工業的に有効である。
【実施例】
【0057】
次に本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
【0058】
【化9】

【0059】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル65mg(0.1mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.05mL(10.0mmol)および臭化フェニルマグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液14.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(1.2g、収率70%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ5.76(q,JHF=1.4Hz,1H)、5.95(q,JHF=1.4Hz,1H),7.35−7.40(m,3H),7.43−7.47(m,2H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ120.4(q,JCF=5.8Hz)、123.4(q,JCF=274.0Hz),127.41,127.42,129.0,133.7,139.1(q,JCF=30.1Hz).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.1.
MS(m/z):172[M]
(実施例2)
【0060】
【化10】

【0061】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル327mg(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.05mL(10.0mmol)および臭化(p−メトキシフェニル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液14.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−メトキシ−4−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(1.7g、収率85%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ3.83(s,3H)、5.69(q,JHF=1.7Hz,1H)、5.86(q,JHF=1.3Hz,1H),6.90(d,JHH=8.7Hz,2H),7.39(d,JHH=8.7Hz,2H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ55.3、114.0、118.8(q,JCF=5.8Hz)、123.5(q,JCF=274.0Hz)、126.1、128.6、128.7、138.4(q,JCF=29.9Hz)、160.2.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.1.
MS(m/z):202[M]
(実施例3)
【0062】
【化11】

【0063】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル131mg(0.2mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン20.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン2.10mL(20.0mmol)および臭化(m−メトキシフェニル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液28.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−メトキシ−3−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(3.0g、収率75%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ3.82(s,3H)、5.77(q,JHF=1.6Hz,1H)、5.95(q,JHF=1.3Hz,1H)、6.91―6.94(m,1H)、6.98(brs,1H)、7.02―7.05(m,1H)、7.27―7.32(m,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ55.3、113.4(d,JCF=1.0Hz)、114.4、119.9(d,JCF=1.0Hz)、120.6(q,JCF=5.8Hz),123.3(q,JCF=273.9Hz)、129.6、135.0、138.9(q,JCF=30.1Hz)、159.6.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.1.
MS(m/z):202[M]
(実施例4)
【0064】
【化12】

【0065】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル131mg(0.2mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン20.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン2.10mL(20.0mmol)および臭化(o−メトキシフェニル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液28.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−メトキシ−2−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(2.2g、収率55%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ3.82(s,3H)、5.64(d,JHF=1.0Hz,1H)、6.07(d,JHF=1.4Hz,1H)、6.92―6.98(m,2H)、7.20―7.23(m,1H)、7.32―7.36(m,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ55.7、111.2、120.4、123.1(q,J=274.1Hz)、123.3(q,JCF=5.2Hz)、123.4、130.2、130.7、136.1(q,JCF=31.6Hz)、157.4.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.9.
MS(m/z):202[M]
(実施例5)
【0066】
【化13】

【0067】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル65mg(0.1mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.05mL(10.0mmol)および臭化(p−tert−ブチルフェニル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液14.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−tert−ブチル−4−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(1.6g、収率70%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ1.33(s,9H)、5.75(q,JHF=1.7Hz,1H)、5.91(q,JHF=1.3Hz,1H)、7.40(s,4H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ55.3、114.0、118.8(q,J=5.8Hz)、123.5(q,JCF=274.0Hz)、126.1、128.6、128.7、138.6(q,JCF=29.9Hz)、152.1.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.1.
MS(m/z):228[M]
(実施例6)
【0068】
【化14】

【0069】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル131mg(0.2mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン20.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン2.10mL(20.0mmol)および臭化(p−フルオロフェニルマグネシウム)の1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液28.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−フルオロ−4−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(2.9g、収率75%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ5.71(d,JHF=1.7Hz,1H)、5.94(d,JHF=1.3Hz,1H)、7.06(dd,JHH=8.7,JHF=8.7Hz,2H)、7.42(dd,JHH=8.7,JHF=5.3Hz,2H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ115.7(d,JCF=21.7Hz)、120.5(qd,JCF=5.7,1.1Hz)、123.3(q,JCF=273.8Hz)、129.39(d,JCF=8.3Hz)、129.40(d,JCF=8.3Hz)、129.8(d,JCF=3.5Hz)、138.3(q,JCF=30.3Hz)、163.2(d,JCF=248.9Hz).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.4,−112.8.
MS(m/z):190[M]
(実施例7)
【0070】
【化15】

【0071】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル92mg(0.14mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン14.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.50mL(14.3mmol)および臭化(p−クロロフェニル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液20.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより1−クロロ−4−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)を無色液体として得た(2.1g、収率70%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ5.76(q,JHF=1.6Hz,1H)、5.97(q,JHF=1.3Hz,1H)、7.34−7.41(m,4H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ120.9(q,JCF=5.7Hz)、123.1(q,JCF=274.0Hz)、128.75、128.76、128.84、132.1、135.2、138.1(q,JCF=30.4Hz).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.2.
MS(m/z):206[M]
(実施例8)
【0072】
【化16】

【0073】
シュレンク管にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル327mg(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10.0mL、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.05mL(10.0mmol)および臭化(6−メトキシ−2−ナフチル)マグネシウムの1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液14.0mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより6−メトキシ−2−(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ナフタレンを白色固体として得た(1.6g、収率64%)。
【0074】
6−メトキシ−2−(3,3,3−トリフルオロプロペニル)ナフタレン
H−NMR(重クロロホルム):δ3.92(s,3H)、5.86(d,JHF=1.6Hz,1H)、5.99(d,JHF=1.2Hz,1H)、7.11―7.14(m,1H)、7.15―7.19(m,1H)、7.50―7.54(m,1H)、7.71―7.76(m,2H)、7.86(s,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ55.3、105.6、119.5、119.9(q,JCF=5.8Hz)、123.5(q,JCF=274.2Hz)、125.2(d,JCF=0.8Hz)、126.7(d,JCF=1.0Hz)、127.1、128.5、128.6、129.9、134.6、138.9(q,JCF=29.8Hz)、158.4.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.6.
MS(m/z):252[M]
(実施例9)
シュレンク管に酢酸パラジウム54mg(0.024mmol)と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノメタン9.2mg(0.024mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,4−ジオキサン0.5mL、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン66.6mg(0.573mmol)および2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.05mL(0.477mmol)を加えた。この溶液に、臭化フェニルマグネシウムの1.1mol/Lテトラヒドロフラン溶液0.555mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(1.1g、収率68%)。
(実施例10)
シュレンク管に酢酸パラジウム54mg(0.024mmol)と1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン9.2mg(0.024mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。1,4−ジオキサン0.5mLおよび2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン(0.477mmol)を加えた。この混合溶液に、臭化フェニルマグネシウムの1.07mol/Lテトラヒドロフラン溶液0.55mLをアルゴン気流中で加えた。50℃で30分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーにより(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(1.0g、収率62%)。
(参考例1)
【0075】
【化17】

【0076】
フラスコに10%Pd/Cを65.6mgを量り取り、容器内を水素で置換した。メタノール2.0mL、(3,3,3−トリフルオロプロペン−2−イル)ベンゼン58.5mg(0.34mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。カラムクロマトグラフィーにより(1,1,1−トリフルオロプロパン−2−イル)ベンゼンを無色液体として得た(0.059g、収率>99%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ1.51(d,JHH=7.3Hz,3H)、3.36−3.48(m,1H)、7.29−7.38(m,5H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ14.6(q,JCF=2.8Hz)、44.2(q,JCF=27.5Hz)、127.2(q,JCF=279.6Hz)、128.1、128.50、128.5、128.6、136.5(q,JCF=2.1Hz).
19F−NMR(重クロロホルム):δ−71.8.
MS(m/z):174[M]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】



[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。]で表される1−ハロ−1−パーフルオロアルキルエチレン類と、一般式(2)
【化2】


[式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。Arは、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基を示し、更に置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基、置換されていても良い炭素数2から4のアルケニル基、置換されていても良い炭素数2から4のアルキニル基、置換されていても良い炭素数1から4のアルコキシ基、置換されていても良い炭素数1から4のアルキルチオ基、置換されていても良い炭素数1から4のアルキル基をもつジアルキルアミノ基、置換されていても良いアリール基または塩素原子またはフッ素原子で置換されていても良い。]で表されるアリールグリニヤル試薬とを、ニッケル化合物またはパラジウム化合物を触媒として反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】


[式中、Arは、前記と同じ内容を示す。]で表される(1−パーフルオロアルキル)ビニルアリール類の製造方法。
【請求項2】
が臭素原子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
が臭素原子である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
Rfがトリフルオロメチル基である請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−67726(P2009−67726A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238189(P2007−238189)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】