説明

(2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸、それらのエステルおよび中間体を調製する方法

本発明は、同種および異種のパラジウム触媒を使用して式(I)の置換および非置換(2,4ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸ならびにそれらのエステルを調製するための新規な方法に関し、さらに中間体の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸および4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸、ならびにそれらの調製のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同種および異種のパラジウム触媒を使用して置換および非置換(2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸およびそれらのエステルを調製する方法に関し、さらに中間体4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸および4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸、ならびにそれらの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビアリール化合物、特にビフェニル化合物は、例えば医薬化合物または農業化学品の調製において重要な中間体である(例えば、EP−A−835243、WO2004/065366を参照のこと。)。
【0003】
ビアリールを合成するために頻繁に使用される方法は、ヨード芳香族またはブロモ芳香族および例外的にはクロロ芳香族が、同種および異種のパラジウム触媒の存在下においてアリールボロン酸誘導体と反応する鈴木反応である。この方法を記載している概説は、例えば、N.Miyaura、A.Suzuki、Chem.Rev.1995、95、2457およびBellina、F.ら、Synthesis 2004、2419で見出すことができる。EP−A−1 186 583は、担持Pd触媒の使用を教示している。
【0004】
全ての同種の方法は、調製するのが高価もしくは困難であるパラジウム錯体を使用し、または良好な収率を達成するために過剰なアリールボロン酸の存在下で処理することが必要とされる。これは、貴重なアリールボロン酸の損失によるだけでなく、過剰ボロン酸ならびに脱ホウ素化芳香族およびホモカップリング生成物などこれから形成された副生成物を除去するのに必要とされる、より複雑な精製および単離の方法によっても方法のコストを増加させる。
【0005】
鈴木反応の過程は、使用されるボロン酸またはボリン酸の反応性によっても決定的に影響され、ここで特に、電子吸引性の置換基によって非活性化された芳香族はもっとゆっくり反応し、ホモカップリング生成物が得られることがある。しかし、大抵の場合、反応が大過剰のボロン酸中で実施され、収率がハロゲン化芳香族の変換だけに基づいているので、この問題が論理的指向の文献において取り組まれるのは稀である。従来技術において記載されている方法のさらなる不利な点は、したがって、ハロゲン化芳香族のホモカップリング反応と「対称」ビフェニルの形成との競合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第835243号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/065366号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1186583号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.Miyaura、A.Suzuki、Chem.Rev.1995、95、2457
【非特許文献2】Bellina、F.ら、Synthesis 2004、2419
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記されている不利な点および問題の観点から、工業規模で、ならびに工業規模での置換および非置換フェニル酢酸の選択的鈴木カップリングのための経済的様式において、ならびに容易に入手可能および安価な出発原料を使用して実施され得る、単純化された方法が緊急に必要とされている。
【0009】
既知方法の不利な点を有することなく、工業規模での実現に適当であり、最適な触媒生産性で高い収率および純度のビアリール化合物をもたらす、ビアリールを調製するための新規方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
式(I)の置換および非置換(2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸およびそれらのエステルは、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンと式(VI)のグリオキシル酸またはグリオキシル酸エステルとを最初に反応させることで式(V)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸およびそれらのエステルを得、次いで、原則として知られている方法によりこれらを式(IV)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびそれらのエステルに還元することによって、驚くほど高い収率および異性体純度で得られることが今般見出された。これらは、tert−ブチル基の除去によって式(III)の化合物に変換され、臭素化で式(II)の化合物を得、これらは同種および異種のパラジウム触媒を使用して式(I)のビフェニル化合物に変換される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による方法は、下記スキームによって例示することができる。
【0012】
【化1】

ハロゲン化フェニル酢酸およびそれらのエステルは、例えばビフェニル化合物を調製するための重要な前駆体である。
【0013】
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸を合成するための実現可能な方法は、例えば5−tert−ブチル−メタ−キシレン(1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン)から出発することができる。1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンにクロロメチル化を行うことは既に知られている(Buu−HoiおよびP.Cagniant、Bull.soc.chim.1942、889−92;M.CrawfordおよびJ.H.Magill、J.Chem.Soc.1957、3275−8;M.J.Schlatter、US 2,860,169(California Research Comp.、1958))。アルカリ金属シアン化物とのシアノ化の後、このようにして得られたニトリルを加水分解することで、対応するフェニル酢酸(Buu−HoiおよびP.Cagniant、Bull.soc.chim.1942、889−92)を得ることができる。
【0014】
この方法は、クロロメチル化の条件下で高毒性のビス(クロロメチル)エーテルも形成されることが知られている(Organic Reactions 19(1972)422;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、2009、Topic「Ethers」)という重大な不利な点を有する。結果として、ビス(クロロメチル)エーテルとの可能な接触を回避するために、技術的に複雑および高価な予防措置を取なければならない。
【0015】
クロロメチル化の代わりに、この合成方法の第1ステップとしてブロモメチル化を実施するのも可能である。しかし、ビス(ブロモメチルエーテル)との接触をやはり回避しなければならない。
【0016】
特定の置換フェニル酢酸を調製する別の代替形態は、ジクロロアセチルクロリドとのフリーデル・クラフツ反応において対応置換芳香族をアシル化すること、生じた2,2−ジクロロ−1−アリールエタノンをアルカリ金属水酸化物を用いて置換マンデル酸に変換すること、および次いでこれをフェニル酢酸に最終的に還元することにある。
【0017】
しかし、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンとジクロロアセチルクロリドとのフリーデル・クラフツ反応において、質量異性体生成物の混合物が形成されることが判明した。これらの異性体生成物は、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンとジクロロアセチルクロリドとの非選択反応によって、またはフリーデル・クラフツ触媒の存在下における1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンもしくはフリーデル・クラフツ生成物のいずれかの異性化によってのいずれかで形成する恐れがある。
【0018】
したがって、この合成経路は、単純な様式において良好な収率および純度で4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸およびこれから4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸を調製するのに適当でない。
【0019】
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルを含めた置換フェニル酢酸およびそれらのエステルは、一部が作物保護における活性化合物の前駆体として重要であるビフェニル化合物のための重要な前駆体なので、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルを調製するための技術的に単純な方法が必要とされている。
【0020】
式(IV)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルは、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンと式(VI)のグリオキシル酸またはグリオキシル酸エステルとを最初に反応させることで式(V)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸およびこのエステルを得、次いで、原則として知られている方法によりこれらを還元することで式(IV)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルを得ることによって、驚くほど高い収率および異性体純度で得られることが今般見出された。
【0021】
フリーデル・クラフツ反応の結果に基づいて、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンとグリオキシル酸との縮合がこうした高い選択性および収率で行われることは予測されなかった。
【0022】
本発明による方法は、下記スキームによって例示することができる。
【0023】
【化2】

式(VI)、(V)および(IV)において、
Rは、水素、C−C−アルキルまたはフェニルを表し、
R’は、水素またはC−C−アルキルを表し、
R”は、水素またはR’CO基を表す。
好ましくは、
Rは、水素またはC−C−アルキルを表し、
R’は、C−C−アルキルを表し、
R”は、水素またはR’CO基を表す。
特に好ましくは、
Rは、水素またはメチル(特に水素)を表し、
R’は、C−C−アルキル(特にメチル)を表し、
R”は、水素またはR’CO基を表す。
【0024】
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸およびこのエステルは、これまでに開示されていない。したがって、式(V)の化合物は新規であり、本発明の主題の一部を形成する。式(IV)の化合物は文献から知られている。
【0025】
上記の式に示されている記号の定義において、以下の置換基に関して一般に代表的である総称が使用された。
【0026】
ハロゲン:フッ素、塩素、臭素またはヨウ素。
【0027】
アルキル:1個から6個の炭素原子を有する飽和直鎖または分枝の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピルおよび1−エチル−2−メチルプロピルなどのC−C−アルキル。
【0028】
本発明による方法の第1ステップのための適当な溶媒は、例えば塩化メチレン、トルエン、クロロベンゼン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸または水などの不活性有機溶媒である。
【0029】
式(VI)の適当な化合物は、グリオキシル酸、メチルグリオキシレート、エチルグリオキシレート、プロピルグリオキシレート、ブチルグリオキシレートおよびフェニルグリオキシレートである。
【0030】
優先されるのは、グリオキシル酸、メチルグリオキシレートまたはエチルグリオキシレートを使用することである。
【0031】
非常に特に優先されるのはグリオキシル酸である。
【0032】
グリオキシル酸が使用される場合、反応は好ましくは、水と例えばギ酸、酢酸またはプロピオン酸などの有機酸との溶媒混合物中で実施される。グリオキシル酸は、例えば市販の50%濃度の水溶液として、またはグリオキシル酸水和物として用いることができる。
【0033】
優先されるのは、水と酢酸またはプロピオン酸との混合物である。
【0034】
特に優先されるのは、水と酢酸との混合物である。
【0035】
使用されるべきグリオキシル酸またはグリオキシル酸水和物の量は1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンに基づいており、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンの1モル当たり0.9から2molのグリオキシル酸またはグリオキシル酸水和物である。優先されるのは、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンの1モル当たり1から1.5molのグリオキシル酸またはグリオキシル酸水和物である。
【0036】
適当な触媒は、例えばパラ−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、塩酸または硫酸などの強有機酸および強無機酸である。
【0037】
優先されるのは、硫酸を使用することである。
【0038】
該酸は、使用されるグリオキシル酸またはグリオキシル酸水和物の量に対して0.1から200molパーセントの量で用いることができる。優先されるのは1から180molパーセントの量であり、特に優先されるのは5から150molパーセントの量である。
【0039】
本発明による方法の第1ステップは、0から100℃の間の温度で実施することができる。優先されるのは、20から80℃の間の温度である。
【0040】
本発明による方法の第1ステップのための反応時間は、1から24時間の間である。
【0041】
反応は大気圧下で通常実施されるが、原則として、加圧下または減圧下でも実施することができる。
【0042】
本発明による方法の第1ステップが、例えば酢酸またはプロピオン酸などの有機酸の存在下で実施されると、マンデル酸とマンデル酸カルボキシレート、例えばマンデル酸アセテートまたはマンデル酸プロピオネートとの混合物が当然得られる。
【0043】
こうした混合物は次いで、アルカリ性または酸性加水分解によって単純化することでマンデル酸を生成することができ、この生成物は次いで、本発明による方法の第2ステップに使用することができる。しかし、マンデル酸とマンデル酸カルボキシレートとの混合物を本発明による方法の第2ステップで使用することも可能である。
【0044】
本発明による方法の第2ステップは、原則として知られている方法によって実施することができる。したがって、例えば、マンデル酸を触媒上にて水素で還元することで、対応するフェニル酢酸を得ることが可能である(例えば、EP−A−554 636を参照のこと。)。
【0045】
代替形態はヨウ化物でのマンデル酸の還元である。ヨウ化物は、例えばヨウ化水素酸の形態で用いることができる(Org.Process Res.& Dev.1(1997)137−48)。さらに、ヨウ化物の準化学量論量にて強酸の存在下で作業し、例えば赤リンを使用して形成されたヨウ素をその場で再還元することも可能である(例えば、Hely.Chim.Acta 22(1939)601−10を参照のこと。)。
【0046】
赤リンは、本発明による方法の第2ステップにおいて、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸の1モル当たり0.67から3molの量で用いられる。優先されるのは、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸1モル当たり1から2molである。過剰の赤リンは回収および再使用することができる。
【0047】
本発明による方法の第2ステップにおいて使用されるヨウ化物供給源は、ヨウ化水素、KIまたはNaIである。原則として、ヨウ素を使用することも可能である。優先されるのは、NaIまたはKIを使用することである。
【0048】
ヨウ化物の量は、(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸に対して)1から30molパーセントであり、優先されるのは、5から20molパーセントを使用することである。
【0049】
本発明による方法の第2ステップのための適当な溶媒は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸など、これらの溶媒の混合物、または70から85%濃度の水性リン酸である。優先されるのは70から85%濃度の水性リン酸および酢酸であり、特に優先されるのは酢酸である。
【0050】
本発明による方法の第2ステップにおいて使用される強酸は、濃硫酸、濃塩酸、または80から85%濃度の水性リン酸である。優先されるのは濃硫酸および濃塩酸である。特に優先されるのは濃塩酸である。
【0051】
使用される溶媒が80から85%濃度の水性リン酸であると、さらなる酸の添加が当然省かれ得る。
【0052】
本発明による方法の第2ステップは、+20から+120℃の間の温度で実施することができる。優先されるのは、+60から+110℃の間の温度である。
【0053】
反応は大気圧下で通常実施されるが、原則として、加圧または減圧で実施することもできる。本発明による方法の第2ステップのための反応時間は、1から24時間の間である。
【0054】
本発明による方法の第2ステップがヨウ化物を使用して実施されると、第1ステップの生成物の単離も省くことができ、両ステップは、ワンストップ反応で組み合わせることができる。
【0055】
本発明による方法による4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルの調製は、調製実施例によって例示される。
【0056】
さらに、本発明は、式(IV)の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルが、tert−ブチル基が除去される条件下で原則として知られている様式において反応されることを特徴とする、式(III)の2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルを調製する方法に関する。
【0057】
【化3】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
一般に、これは、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルのtert−ブチル基を触媒の存在下でアクセプターに転移させることによって行われる。
【0058】
使用されるアクセプターは、例えばトルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼンまたは1,2,4−トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素であってよい。優先されるのはトルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレンおよびパラ−キシレンである。特に優先されるのはトルエンおよびメタ−キシレンである。
【0059】
アクセプターは通常、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステルに対して過剰に用いられる。ここで、アクセプターの量は、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステル1モル当たり3から50molである。優先されるのは、1モル当たり3から25molである。
【0060】
tert−ブチル基を4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステルからアクセプターに転移するための適当な触媒は、原則として、AlCl、AlBr、FeCl、HFまたは強酸イオン交換体などの典型的なフリーデル・クラフツ触媒である。該反応は好ましくは、無水HF中で実施される。
【0061】
無水HFは通常、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステルに対して過剰に用いられる。ここで、無水HFの量は、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステル1モル当たり5から50molであり、優先されるのは、1モル当たり7から25molである。
【0062】
tert−ブチル基の4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステルからアクセプターへの転移は、−20から150℃の間の温度で実施することができる。優先されるのは、0から120℃の間の温度、特に好ましくは30から80℃の間の温度である。
【0063】
反応は、1から100バールの圧力、好ましくは3から20バールの圧力で実施される。
【0064】
反応時間は1から24時間の間である。
【0065】
さらに、本発明は、式(III)の2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルの臭素化によって式(II)の3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル酢酸およびこのエステルを調製する方法に関する。
【0066】
【化4】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
好ましくは、臭素化は、式(III)の2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステル上で実施され、式中、R=メチルまたは水素であり、特に好ましくはR=水素である。
【0067】
臭素化用溶媒としての使用に適当なのは、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸またはプロピオン酸など、通例用いられる不活性有機溶媒である。優先されるのは塩化メチレン、酢酸およびプロピオン酸であり、特に優先されるのは酢酸である。
【0068】
臭素は通常、式(III)の2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステル1モル当たり1から2molの量で用いられる。優先されるのは、1モル当たり1.1から1.5molの量である。
【0069】
臭素化のための反応温度は0から100℃の間である。優先されるのは、20から80℃の間の温度である。
【0070】
反応は通常大気圧下で実施されるが、原則として、加圧または減圧で実施することもできる。
【0071】
臭素化のための反応時間は1から24時間の間である。
【0072】
この臭素化がこうした高い選択性および収率で3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル酢酸またはこのエステルを生成することは、特に類似の塩素化の結果を考慮しても、非常に驚くべきことであると考えることができる(調製実施例を参照のこと。)。
【0073】
さらに、本発明は、式(I)
【0074】
【化5】

(式中、
Rは、上記に示されている意味を有し、
は、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、(好ましくは水素、ハロゲンまたはC−C−アルキル、特に好ましくは水素またはフッ素、特に4−フルオロ)を表し、
nは、0、1、2または3(特に1)を表す。)
のビフェニル化合物を調製する方法であって、
式(II)
【0075】
【化6】

(式中、
Rは、上記に示されている意味を有し、
Xは、ハロゲン(好ましくは塩素または臭素;特に好ましくは臭素)を表す。)
の化合物が、塩基およびパラジウム触媒の存在下、適切な場合溶媒中で、以下の基から選択することができる式(A)
【0076】
【化7】

の化合物と反応されることを特徴とする方法に関する。
(a)式(A−a)のボロン酸(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシル基、またはこれから形成された無水物、二量体および三量体を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(b)式(A−b)の環式ボロン酸エステル(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、C−C−アルコキシ基を表し、ここで、2個のQ置換基は、これらが酸素原子を介して結合しているホウ素原子と一緒になって、C−C−アルキルによって置換されていてよい5員環または6員環を形成する。優先されるのは下記の群分けである。
【0077】
【化8】

(Rおよびnは、上記に示されている意味を有する。))
(c)式(A−c)のボロネート(式中、
mは、3を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシ、フッ素、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(d)式(A−d)のジフェニルホウ酸(式中、
mは、1を表し、
pは、2を表し、
Qは、ヒドロキシ、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(e)式(A−e)のトリアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、3を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(f)式(A−f)のボリン酸のジフルオロボレート塩(式中、
mは、2を表し、
pは、2を表し、
Qは、フッ素を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(g)式(A−g)のテトラアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、4を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)。
【0078】
ホウ素化合物の反応は、好ましくは、例えば水、脂肪族エーテル、場合によってハロゲン化芳香族または脂肪族炭化水素、アルコール、エステル、芳香族または脂肪族ニトリルおよびジアルキルスルホキシドなどの双極性非プロトン性溶媒、脂肪族カルボン酸のN,N−ジアルキルアミド、またはアルキル化ラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒の存在下で実施される。
【0079】
特に優先されるのは、THF、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグリム、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、tert−アミルメチルエーテル(TAME)、ジメチルエーテル(DME)、2−メチル−THF、アセトニトリル、ブチロニトリル、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、水、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒である。
【0080】
非常に特に優先されるのは、環境に優しい溶媒水との混合物である。
【0081】
さらに、少量の水を有機溶媒に添加することは、競合するホモカップリング反応の実質的な抑制に寄与することが観察された。
【0082】
しかし、出発原料および形成された生成物の溶解性により、溶媒の存在を完全に省くことは一般に可能ではない。したがって、有機溶媒は、好ましくは共溶媒として使用される。
【0083】
本発明による溶媒混合物は、水と有機溶媒との混合物に対して0.1から95容量%、好ましくは1から60容量%の水を含むことができる。
【0084】
該反応において酸が形成されるので、塩基の添加によって形成された酸を掃去するのが有利である。塩基は最初から存在する、または反応中に連続して計量供給するかのいずれかでよい(セミバッチ法)。
【0085】
本発明に従った適当な塩基は、例えば、環状または開鎖であってよい例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンなどの第1級、第2級および第3級アミン;酢酸塩、プロピオン酸塩または安息香酸塩など、脂肪族および/または芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素および/または水酸化物;ならびにさらに金属アルコキシド、特に、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドまたはアルカリ金属イソアミル酸塩などのアルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ土類金属アルコキシドである。好ましくは、塩基は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはセシウムの炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩である。特に優先されるのは、NaOH、KOH、カリおよびソーダである。
【0086】
形成された酸の中和に加えて、用いられる塩基は、アリールボロン酸をアニオン性ボロン酸種に活性化することによって、反応の過程に対してプラス効果も有する場合がある。上述されている塩基に加えて、こうした活性化は、例えばCaF、NaF、KF、LiF、CsFまたはTBAFなどのフッ化物塩の添加によっても達成することができる。
【0087】
触媒活性のパラジウム触媒またはプレ触媒として使用するのに適当なのは、任意のパラジウム(II)化合物、パラジウム(0)化合物、および例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、二酸化チタンまたは炭素など任意の通例の無機担体材料上のパラジウム、特に好ましくは活性炭素上のパラジウムである。本方法には、触媒活性金属化合物(金属として算出)が出発原料に対して0.0001から5mol%、好ましくは0.001から3mol%の量で十分であることがわかった。
【0088】
用いられるパラジウム触媒は一般に、少なくとも1種のパラジウム(II)塩またはパラジウム(0)化合物および適切なホスフィンリガンドからその場で生成される。しかし、それらは、最初の触媒活性を全く低減することなく、パラジウム(0)化合物として直接用いることもできる。
【0089】
異種のパラジウム触媒は、水湿性もしくは乾燥粉末として、または造形品に圧縮された水湿性もしくは乾燥粉末として使用することができる。
【0090】
適当なパラジウム供給源は、例えば、トリフルオロ酢酸パラジウム、フルオロアセチルアセトン酸パラジウム、Pd(OAc)、Pd(OCOCHCH、Pd(OH)、PdCl、PdBr、Pd(acac)(acac=アセチルアセトネート)、Pd(NO、Pd(dba)、Pddba(dba=ジベンジリデンアセトン)、Pd(CHCN)Cl、Pd(PhCN)Cl、Li[PdCl]、Pd/Cまたはパラジウムナノ粒子からなる群から選択される。
【0091】
好ましい実施形態は、アルキル部分において分枝しているメチル−ジ(C3−8−アルキル)ホスフィンもしくはトリ(C3−8−アルキル)ホスフィンリガンドまたはこれらの塩、特に好ましくはリガンドとしてのメチル−ジ(tert−ブチル)ホスフィンおよびトリ(tert−ブチル)ホスフィンの使用を提供する。
【0092】
トリアルキルホスフィンは、例えば、テトラフルオロホウ酸塩(Org.Lett.2001、3、4295)、過塩素酸塩または硫酸水素塩などのトリアルキルホスホニウム塩として用いることもでき、塩基を使用してその場でこれらから放出することもできる。
【0093】
パラジウム対ホスフィンリガンドのモル比は、4:1から1:100の間、好ましくは1:1から1:5の間、特に好ましくは1:1から1:2の間であるべきである。
【0094】
しかし、本発明によると、Pd[P(t−But)を直接用いることも可能であったが、この調製は、(JACS 1976、98、5850;JACS 1977、99、2134;JACS 2001、123、2719)に記載されている。
【0095】
該反応を実施する場合、触媒系(Pd+リガンド)は、一緒にまたは別々に室温または高温のいずれかで添加することができる。該系は、Pd塩およびリガンドを組み合わせることによって反応の直前に別々に調製することができ(その場方法)、または結晶質形態で添加することができる。最初にリガンドおよび次いでパラジウム塩を直接反応物に添加することも可能である。
【0096】
本発明によると、式(II)のハロゲン化芳香族および式(A−a)から(A−c)のホウ素化合物は等モル比で用いられる。しかし、別法として、2種の成分(IIまたはA)のうちの1種、好ましくはホウ素化合物(A−a)から(A−c)は過剰に用いることができる。2種の反応成分のうちの1種が反応中にゆっくり計量供給される計量制御様式で反応を実施することもできる。この目的で、例えばボロン酸またはボロネートの溶液を使用するのが好ましく、一方ハロゲン成分、触媒および適切な場合塩基は最初に充填される。
【0097】
式(A−d)および(A−f)のホウ素化合物から、式(II)の化合物に対して0.5から0.7当量(好ましくは0.55当量)が用いられる。
【0098】
式(A−e)のホウ素化合物から、式(II)の化合物に対して0.3から0.5当量(好ましくは0.35当量)が用いられる。
【0099】
式(A−g)のホウ素化合物から、式(II)の化合物に対して0.25から0.4当量(好ましくは0.3当量)が用いられる。
【0100】
該反応は一般に、10から200℃の間、好ましくは20から140℃の間の温度で、および最大100バールの圧力、好ましくは大気圧から40バールの間の圧力で実施される。
【0101】
該反応は好ましくは、大気酸素を排除し、保護ガスの雰囲気下、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で実施される。
【0102】
触媒活性および安定性により、本発明による方法においては微量の触媒を使用することが可能なので、既知の鈴木反応と比較して、当該の方法では触媒コストが制限されない。
【0103】
本発明による方法において、ハロゲン成分に対して0.0001から5mol%、特に好ましくは<0.1mol%の触媒含有量が使用される。
【0104】
少量の触媒により、大抵の場合、触媒は最終生成物中に残存し得る。しかし、別法として、例えばセライトに通す濾過によって得られるビアリールの精製もあり得る。
【0105】
式(A−a)(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qはヒドロキシル基を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
のボロン酸は、ハロゲン化アリールマグネシウム(グリニャール試薬)とホウ酸トリアルキルとを、好ましくは例えばTHFなどの溶媒中で反応させることによって得ることができる。アリールボリン酸の競合する形成を抑制するため、R.M.Washburnら、Organic Syntheses Collective 4巻、68またはBoronic Acids、Dennis G.Hall編集、Wiley−VCH 2005、28頁以下に記載されている通り、反応は低温(−60℃)で実施しなければならず、過剰の試薬は回避しなければならない。
【0106】
式(A−b)(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは各場合においてC−C−アルコキシ基を表し、ここで、2個のQ原子は、これらが酸素原子を介して結合しているホウ素原子と一緒になって、C−C−アルキルによって置換されていてよい5員環または6員環を形成する。)
の環式ボロン酸エステルは、Boronic Acids、Dennis G.Hall編集、Wiley−VCH 2005、28頁以下に記載されている通りに調製することができる。
【0107】
式(A−c)(式中、
mは、3を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシル、フッ素、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し(好ましくは、Qはフッ素を表す。)、
およびnは、上記に示されている意味を有し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷は、下記の式
【0108】
【化9】

によって例示されるカチオンによって補われる。)
のボロネートは、J.P.Genetら、Chem.Rev.2008、108、288−325に記載されている通りに得ることができる。
【0109】
本発明の文脈において、一般式(A−c)のボロネートは、例えばLi、Na、K、Cs、Mg、CaおよびBaなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属から、または例えばNMe、NEt、NBuなどのテトラアルキルアンモニウムカチオンから、またはHNEtまたはMgXなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはNa、K、Mgから選択されるカチオン(M)を含有する。
【0110】
式(A−d)(式中、
mは、1を表し、
pは、2を表し、
Qは、ヒドロキシル、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
のジフェニルボリン酸は、場合によって置換されているハロゲン化フェニルマグネシウムとホウ酸トリアルキルとを、スキーム1に記載されている通りに反応させることによって得ることができる。
【0111】
【化10】

(Rは、上記に示されている意味を有し、
Halは、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
特に好ましい出発原料はビス(4−フルオロフェニル)ボリン酸である。
【0112】
該方法のこのステップは、10から70℃の間の温度で実施することができ、優先されるのは、15から55℃の間の温度である。
【0113】
式(A−e)(式中、
mは、0を表し、
pは、3を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
のトリアリールボレート塩は、H.C.Brownら、J.Organomet.Chem.1988、73およびH.C.Brownら「Borane reagents」、Harcourt Brace Jovanovich、Publishers、(1988)に記載されている通りに得ることができる。
【0114】
式(A−f)(式中、
mは、2を表し、
pは、2を表し、
Qは、フッ素を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷は、例えばLi、Na、K、Cs、Mg、CaおよびBaなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属から、または例えばNMe、NEt、NBuなどのテトラアルキルアンモニウムカチオンから、またはHNEtもしくはMgXなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはNa、K、Mgから選択されるカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
のボリン酸のジフルオロボレート塩は、T.Itoら、Synlett 2003、10号、1435−1438に記載されている通りに得ることができる。
【0115】
式(A−g)(式中、
mは、0を表し、
pは、4を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷は、例えばLi、Na、K、Cs、Mg、CaおよびBaなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属から、または例えばNMe、NEt、NBuなどのテトラアルキルアンモニウムカチオンから、またはHNEtもしくはMgXなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはNa、K、Mgから選択されるカチオンによって補われる。)
のテトラアリールボレート塩は、J.Serwatowskiら、Tetrahedron Lett.2003、44、7329に記載されている通りに得ることができる。
【0116】
上記に示されている一般または好ましい基の定義または例示は、所望の通りに、即ちそれぞれの範囲および好ましい範囲の間の組合せを含めて互いに組み合わせることができる。
【0117】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物は、従来技術(例えばWO 97/36868、WO 2005/016873、WO 2008/067911、Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas et de la Belgique、79、1960、1211−1222、Acta Chemica Scandinavica、17、5、1963、1252−1261、Bulletin de la Societe Chimique de France、9、1942、889−892)から知られている。
【実施例】
【0118】
本発明による方法によるビフェニル化合物の調製は、調製実施例によって例示される。
【0119】
調製実施例
【0120】
[実施例1]
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸アセテート
【0121】
【化11】

50%グリオキシル酸水溶液89g[0.6mol]、氷酢酸400mlおよび1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン81.1g[0.5mol]の混合物を最初に充填する。室温で出発し、96%濃度の硫酸85.8g[0.84mol]を、15分の時間をかけて滴下により添加し、この時間の間、反応混合物の温度は約35℃に上昇する。混合物を60℃に加熱し、この温度で9時間撹拌する。冷却した反応混合物を次いで氷水750mlに入れて撹拌する。混合物を各場合において塩化メチレン150mlで3回抽出し、合わせた有機相を飽和NaCl水溶液100mlで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。これにより黄色がかった濃厚なオイル136.7gが得られ、これは、GC/MS(sil.)によると、以下の組成を有する。
【0122】
1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン2.6面積%(用いられる出発原料4.4%)
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸23.7面積%(理論27.4%)
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸アセテート67.2面積%(理論66%)
【0123】
比較例1
1−(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−2,2−ジクロロエタノン
【0124】
【化12】

5−tert−ブチル−2,6−ジメチルベンゼン4.06g[25mmol]およびジクロロアセチルクロリド4g[27mmol]を、二硫化炭素25ml中に最初に充填する。大気水分を排除し、AlCl10g[75mmol]を次いで10−15℃で約25分の時間をかけて少しずつ添加する。混合物を次いで10−15℃で2時間撹拌し、室温まで温め、さらに2時間撹拌する。反応混合物を塩化メチレン約50mlで希釈し、氷水に入れて撹拌する。該相を分離し、水相を塩化メチレン30mlで抽出し、合わせた有機相を飽和NaCl水溶液25mlで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。これにより茶色オイル6.4gが得られ、これは、GC/MSによると、1−(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−2,2−ジクロロエタノン7.9面積%(理論7.4%)を含む。
【0125】
[実施例2]
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸
【0126】
【化13】

4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸アセテート64.2面積%および4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸24.8面積%を含む混合物127.4gを、水335ml中に最初に充填する。混合物を65℃に加熱し、75−80℃で、45%濃度の水酸化ナトリウム水溶液163.7gを次いで滴下により添加する。80℃で4時間後、混合物を室温に冷却し、48%濃度の硫酸196gを滴下により添加し、懸濁液を水500mlで撹拌し、固体を吸引濾別し、各場合において水100mlで4回洗浄する。乾燥した後、固体約100gが残存する。
H−NMR(d−DMSO):δ=1.24(s,9H)、2.30(s,6H)、5.35(s,1H)、6.98(s,2H)ppm.
m.p.:120.5−122℃
【0127】
[実施例3]
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0128】
【化14】

4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸47.2g[0.2mol]、37%濃度の塩酸21.7g、赤リン9.3gおよびKI3.3gの氷酢酸150ml中混合物を100℃で16時間加熱する。過剰のリンを吸引濾別し、各場合において氷酢酸70mlで3回洗浄する。濾液をロータリーエバポレーター上にて50℃/60mbarの浴温で実質的に濃縮する。生じた残渣を水180ml中で撹拌し、10%濃度の水酸化ナトリウム水溶液約215gの添加によって溶解する。この溶液を各場合においてメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)150mlで2回抽出し、次いで48%濃度の硫酸を使用してpH1に調節する。沈殿した固体を吸引濾別し、各場合において水50mlで4回洗浄し、乾燥させる。これにより4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸37.2gが99.1GC面積%の純度で得られる(理論収率約83.6%)。
H−NMR(d−DMSO):δ=1.29(s,9H)、2.33(s,6H)、3.68(s,2H)、7.05(s,2H)ppm.
m.p.:163.5−164.5℃
【0129】
[実施例4]
4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0130】
【化15】

4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸2.89gおよび4−tert−ブチル−2,6−ジメチルマンデル酸アセテート7.75g、37%濃度の塩酸4.5g、赤リン1.86gならびにKI0.66gの氷酢酸30ml中混合物を、100℃で16時間加熱する。過剰のリンを吸引濾別し、各場合において氷酢酸10mlで3回洗浄する。濾液をロータリーエバポレーター上にて50℃/60mbarの浴温で実質的に濃縮する。生じた残渣を水25mlで希釈し、10%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の添加によって溶解する。この溶液を各場合においてMTBE20mlで2回抽出し、次いで48%濃度の硫酸を使用してpH1に調節する。生じた脂様固体を塩化メチレン中に溶かす。この溶液を水25mlで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。これにより4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸7.66gが99.0GC面積%の純度で得られる(理論収率約86%)。
【0131】
[実施例5]
2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0132】
【化16】

4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル酢酸16.52g[75mmol]およびトルエン100mlを、250mlの高圧滅菌器に最初に充填する。0℃に冷却した後、HF40mlを添加し、高圧滅菌器を閉じる。反応混合物を次いで、38−40℃で4時間撹拌する。トルエンおよびHFを次いで、20℃/100mbarで留出させる。残渣を水65mlで希釈し、氷冷却しながら、10%濃度の水酸化ナトリウム水溶液100mlを使用してアルカリ性にする。溶液をMTBE65mlで1回およびMTBE35mlで1回抽出し、水相を次いで、氷冷却しながら、32%濃度の塩酸を使用してpH1に調節し、次いで、形成した沈殿物を塩化メチレン130ml中に溶解し、有機相を乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。これにより白色固体11.91gが得られ、これは、GC(sil.)によると、2,6−ジメチルフェニル酢酸95.8%を含む(理論92.6%)。
【0133】
[実施例6]
3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0134】
【化17】

45℃で、臭素62.5g[391mmol]の氷酢酸120ml中溶液を、1時間の時間をかけて、2,6−ジメチルフェニル酢酸47.6g[290mmol]の氷酢酸300ml中溶液に、滴下により添加する。反応混合物を次いで、45℃でさらに16時間撹拌し、ロータリーエバポレーター上にて濃縮する。得られた固体をメチルシクロヘキサン180ml中にて室温で4時間撹拌する。濾過後、残渣を各場合においてメチルシクロヘキサン60mlで2回洗浄し、次いで乾燥させる。これにより固体64.9gが得られる。GC(sil.)分析:97.7%の純度(理論89.9%)。
【0135】
[実施例7]
3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0136】
【化18】

45℃で、臭素8.5kg[53.2mol]の氷酢酸10l中溶液を、2,6−ジメチルフェニル酢酸6.86kg[40.45mol]の氷酢酸40l中溶液に、滴下により添加する。反応混合物を次いで、45℃でさらに16時間撹拌し、ロータリーエバポレーター上にて濃縮する。得られた固体をシクロヘキサン10l中にて室温で撹拌する。濾過後、残渣をシクロヘキサン10lで少しずつ洗浄し、次いで乾燥させる。これにより固体8.43kgが得られる。
GC分析:99.3%の純度(理論85.3%)。
【0137】
[実施例8]
メチル3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニルアセテート
【0138】
【化19】

約15℃で、臭素3.67kg[23mol]の氷酢酸9l中溶液を、メチル2,6−ジメチルフェニルアセテート3.175kg[17.82mol]の氷酢酸18l中溶液に、滴下により添加する。混合物を次いで、15℃でさらに2.5時間撹拌することで室温に温め、室温で48時間撹拌する。反応混合物を氷水170l中に注ぎ、各場合において塩化メチレン60lで2回抽出する。溶媒の除去後、残渣4kgが残存し、これは、GC/MSによると、メチル3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニルアセテート81.2%を含む(理論70.9%)。
【0139】
比較例2
3−クロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸
【0140】
【化20】

10−15℃で、塩素ガス9.22g[130mmol]を、2,6−ジメチルフェニル酢酸16.4g[100mmol]の氷酢酸100ml中溶液にゆっくり導入する。反応混合物を次いで、室温で16時間撹拌し、次いで水500mlに注ぐ。沈殿した固体を吸引濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。これにより白色固体18.8gが得られ、これは、GC(sil.)によると、以下の組成を有する。3−クロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸86.4%(理論81.8%の収率に対応)、ジクロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸8.8%(異性体1)、ジクロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸3.8%(異性体2)。
【0141】
4−フルオロフェニルボロン酸からの(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸の調製
【0142】
【化21】

酸素を排除し、(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸101.6g[415mmol]、4−フルオロフェニルボロン酸59.26g[415mmol]およびn−テトラブチルアンモニウムブロミド2.67g[8.29mmol]を、水酸化ナトリウム溶液74.1g[833mmol、45%濃度]と水210gとの混合物中に、アルゴン下で懸濁する。炭素[10%]担持パラジウム218mg[0.205mmol]を添加し、反応混合物を90℃で12時間撹拌する。反応が終了した後(GCによってモニタリング)、反応混合物を約40℃に冷却し、水酸化ナトリウム溶液[45%濃度]22.8gおよびシクロヘキサン50gを添加する。有機相を40℃で分離し、減圧下で濃縮する。これにより4,4’−ジフルオロビフェニル312mgが得られる。
【0143】
水相をトルエン200gと添加混合し、次いで32%濃度の塩酸を使用してpH1.25に調節する。懸濁液を65℃に加熱し、有機相をこの温度で分離する。水相を65℃にてトルエン200gで抽出し、合わせた有機相を次いでセライトに通して濾過し、セライトをトルエン100gで洗浄し、濾液を約5℃に冷却する。沈殿した固体を吸引濾別し、予冷されたトルエンで洗浄し、乾燥させる。これにより4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸101.2g[98.6%の純度、理論93%]が得られる。
H−NMR(d−DMSO):δ=2.11(s,3H)、2.29(s,3H)、3.68(s,2H)、6.97−7.30(m,6H)、12.36(s,1H)ppm.
4−フルオロフェニルトリフルオロボレートカリウム塩からの(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸の調製
【0144】
酸素を排除し、(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸4.50g[18.34mmol]、4−フルオロフェニルトリフルオロボレートカリウム塩3.94g[19.48mmol]およびn−テトラブチルアンモニウムブロミド59.2mg[0.18mmol]を、水酸化ナトリウム溶液3.43g[38.61mmol、45%濃度]、n−ブタノール4gおよび水20gの混合物中に、アルゴン下で懸濁する。炭素[10%]担持パラジウム9.78mgを添加し、反応混合物を84℃で12時間撹拌する。反応が終了した後(GCによってモニタリング)、反応混合物を室温に冷却し、水5gおよび酢酸エチル40gを添加する。32%濃度の塩酸を有し、混合物のpHを2に調節し、混合物を次いでセライトを通して濾過する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を乾燥させ、濃縮する。これにより白色固体3.8gが得られ、これは、GC−MSによると、以下の組成を有する。(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸94.1%および(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸3.4%。
【0145】
ビス(4−フルオロフェニル)ボリン酸からの(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸の調製
酸素を排除し、(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸6g[24.5mmol]、ビス(4−フルオロフェニル)ボリン酸3g[13.5mmol]およびn−テトラブチルアンモニウムブロミド79mg[0.24mmol]を、水酸化ナトリウム溶液4.58g[51mmol、45%濃度]、n−ブタノール3.24gおよび水20gの混合物中に、アルゴン下で懸濁する。炭素[10%]担持パラジウム13mg[0.012mmol]を添加し、反応混合物を85℃で12時間撹拌する。反応が終了した後(GCによってモニタリング)、反応混合物をRTに冷却し、水10gおよび酢酸エチル50gを添加する。混合物のpHを、32%濃度の塩酸を使用して1.5に調節する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を乾燥させ、濃縮する。これにより(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸6.81g[89.8%の純度、理論96.4%]が得られる。
【0146】
ジフルオロ[ビス(4−フルオロフェニル)]ボレートカリウム塩からの(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸の調製
酸素を排除し、(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸2.9g[11.85mmol]、ジフルオロ[ビス(4−フルオロフェニル)]ボレートカリウム塩1.98g[7.1mmol]およびn−テトラブチルアンモニウムブロミド38.2mg[0.12mmol]を、水酸化ナトリウム溶液2.21g[24.88mmol、45%濃度]、n−ブタノール2.3gおよび水12gの混合物中に懸濁する。炭素[10%]担持パラジウム6.3mg[0.006mmol]を添加し、反応混合物を85℃で12時間撹拌する。反応が終了した後(GCによってモニタリング)、反応混合物をRTに冷却し、水7gおよび酢酸エチル40gを添加する。混合物のpHを32%濃度の塩酸を使用して1.5に調節する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を乾燥させ、濃縮する。これにより(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸3gが得られる[理論98%]。
【0147】
ナトリウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート二水和物からの(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸の調製
酸素を排除し、(3−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)酢酸350mg[1.44mmol]、ナトリウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート二水和物198mg[0.43mmol]およびn−テトラブチルアンモニウムブロミド4.6mg[0.014mmol]を、水酸化ナトリウム溶液268mg[3.02mmol、45%濃度]、n−ブタノール405mgおよび水2gの混合物中に、アルゴン下で懸濁する。炭素[10%]担持パラジウム1.53mgを添加し、反応混合物を90℃で12時間撹拌する。反応が終了した後(GCによってモニタリング)、反応混合物をRTに冷却し、水1gおよび酢酸エチル20gを添加する。混合物のpHを32%濃度の塩酸を使用して1.5に調節し、混合物を次いでセライトに通して濾過する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を乾燥させ、濃縮する。これにより白色固体が得られ、これは、GC−MSによると、以下の組成を有する。4,4’−ジフルオロビフェニル1.6%、(2,6−ジメチルフェニル)酢酸0.78%および(4’−フルオロ−2,4−ジメチルビフェニル−3−イル)酢酸96.44%[理論98%]。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンを式(VI)の化合物と反応させて式(V)の化合物を得、続いてこれを式(IV)の化合物に還元し、これらをtert−ブチル基の除去によって式(III)の化合物に変換し、臭素化により式(II)の化合物を得、これらを、式(A)の化合物を使用して塩基およびパラジウム触媒の存在下、適切な場合溶媒中で式(I)のビフェニル化合物に変換することを特徴とする、式(I)の化合物を調製する方法:
【化1】

[式中、
Rは、水素、C−C−アルキルまたはフェニルを表し、
R’は、水素またはC−C−アルキルを表し、
R”は、水素またはR’CO基を表し、
は、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルコキシ、シアノ、ニトロを表し、
nは、0、1、2または3を表し、
Aは、下記の基から選択することができる:
(a)式(A−a)のボロン酸(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシル基、またはこれから形成された無水物、二量体および三量体を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(b)式(A−b)の環式ボロン酸エステル(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、C−C−アルコキシ基を表し、ここで、2個のQ置換基は、これらが酸素原子を介して結合しているホウ素原子と一緒になって、C−C−アルキルによって置換されていてよい5員環または6員環を形成し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(c)式(A−c)のボロネート(式中、
mは、3を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシ、フッ素、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
ここで、ホウ素イオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(d)式(A−d)のジフェニルホウ酸(式中、
mは、1を表し、
pは、2を表し、
Qは、ヒドロキシ、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(e)式(A−e)のトリアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、3を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(f)式(A−f)のボリン酸のジフルオロボレート塩(式中、
mは、2を表し、
pは、2を表し、
Qは、フッ素を表し、
ここで、ホウ素イオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(g)式(A−g)のテトラアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、4を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)]。
【請求項2】
Rが、水素またはC−C−アルキルを表し、
R’が、C−C−アルキルを表し、
R”が、水素またはR’CO基を表し、
が、水素、ハロゲンまたはC−C−アルキルを表し、
nが、0、1、2または3を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、水素またはメチルを表し、
R’が、C−C−アルキルを表し、
R”が、水素またはR’CO基を表し、
が、水素またはフッ素を表し、
nが、0、1、2または3を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rが、水素を表し、
R’が、メチルを表し、
R”が、水素またはR’CO基を表し、
が、フッ素を表し、
nが、1を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(IV)
【化2】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物を調製する方法であって、
4−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼンを式(VI)
OHC−COOR
(VI)
(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物と、
適切な場合R’−COOH(ここで、R’は、上記に示されている意味を有する。)の存在下で反応させることで、式(V)
【化3】

(式中、RおよびR”は、上記に示されている意味を有する。)
の化合物を得、この化合物を次いで還元することを特徴とする方法。
【請求項6】
式(V)
【化4】

(式中、RおよびR”は、上記に示されている意味を有する。)
の化合物。
【請求項7】
式(III)
【化5】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物を調製する方法であって、式(IV)
【化6】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物において、tert−ブチル基を除去することを特徴とする方法。
【請求項8】
式(II)
【化7】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物を調製する方法であって、式(III)
【化8】

(式中、Rは、上記に示されている意味を有する。)
の化合物を臭素化することを特徴とする方法。
【請求項9】
式(I)
【化9】

(式中、
Rは、上記に示されている意味を有し、
は、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、C−C−アルコキシ、C−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルコキシ、シアノ、ニトロを表し、
nは、0、1、2または3を表す。)
の化合物を調製する方法であって、
式(II)
【化10】

(式中、
Rは、上記に示されている意味を有し、
Xは、ハロゲンを表す。)
の化合物を、塩基およびパラジウム触媒の存在下、適切な場合溶媒中で、式(A)の化合物と反応させることを特徴とする方法
【化11】

[式中、Aは、下記の基から選択することができる:
(a)式(A−a)のボロン酸(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシル基、またはこれから形成された無水物、二量体および三量体を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(b)式(A−b)の環式ボロン酸エステル(式中、
mは、2を表し、
pは、1を表し、
Qは、C−C−アルコキシ基を表し、ここで、2個のQ置換基は、これらが酸素原子を介して結合しているホウ素原子と一緒になって、C−C−アルキルによって置換されていてよい5員環または6員環を形成し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(c)式(A−c)のボロネート(式中、
mは、3を表し、
pは、1を表し、
Qは、ヒドロキシ、フッ素、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(d)式(A−d)のジフェニルホウ酸(式中、
mは、1を表し、
pは、2を表し、
Qは、ヒドロキシ、C−C−アルコキシまたはC−C10−アリールオキシを表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(e)式(A−e)のトリアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、3を表し、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(f)式(A−f)のボリン酸のジフルオロボレート塩(式中、
mは、2を表し、
pは、2を表し、
Qは、フッ素を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)
(g)式(A−g)のテトラアリールボレート塩(式中、
mは、0を表し、
pは、4を表し、
ここで、ホウ素アニオンの負電荷はカチオンによって補われ、
およびnは、上記に示されている意味を有する。)]。

【公表番号】特表2012−532158(P2012−532158A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518790(P2012−518790)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003911
【国際公開番号】WO2011/003530
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】