説明

(2R)−2−プロピルオクタン酸を有効成分とする薬剤

本発明は、神経変性疾患の治療に有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、弱酸の金属塩や金属水酸化物によって供給される塩基性金属イオンを約1〜約5当量含有し、その他の添加剤を含んでいてもよい薬剤に関する。本発明の薬剤は、静脈内投与に適したpHを有し、かつpHの変動に耐性があり、さらに輸液に希釈しても白濁しない高濃度の薬剤であり、任意の溶解液および/または希釈液を用いることにより注射剤等を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、脳梗塞をはじめとする神経変性疾患の治療剤として有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する薬剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
一般に脳卒中患者は、脳梗塞や脳出血等の原因により昏倒し、病院に搬入されるケースが多く、このような脳卒中患者は、意識不明のままに治療を受けることを余儀なくされる。従って、これらの疾患の治療のために投与される薬剤は注射剤等の非経口的に投与可能な製剤であることが望ましい。特に、効果の速やかな発現を期待して、静脈内投与用の注射剤であることが望ましい。現に、脳梗塞の治療薬として用いられているラジカット(エダラボン)やt−PAはいずれも静脈内投与用の注射剤である。
一方、医薬品は、開発段階において数ヶ月間にわたる長期の安定性試験が課せられており、安定性が最も重視されることは周知の事実である。一般に化学物質は、液体よりは固体が、また、低濃度の溶液よりは高濃度の溶液が安定であることから、希薄な溶液の状態で患者に投与すべき医薬品であっても、より安定な状態で供給され、医師や看護士等の医療従事者の手によって用時溶解や用時希釈の操作を受けることで初めて患者に投与可能な形態となる医薬品は多い。特に注射剤は、濃厚注射剤や濃縮注射剤等の高濃度の液体の状態で、または凍結乾燥製剤等の固体の状態で供給することにより、より長期間にわたる保存が可能となり、またその品質をより安定したものとすることが可能である。
一方、脳卒中を含む種々の脳神経疾患の治療または予防薬として有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有する注射剤としては、例えば、以下の注射剤が報告されている。
脳機能改善剤として有用なペンタン酸誘導体は、注射剤として、少なくとも1種の不活性な水性の希釈剤(注射用蒸留水、生理食塩水等)や不活性な非水性の希釈剤(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)と混合して用いられることが開示されている(例えば、欧州特許第0632008号明細書、欧州特許公開第1174131号明細書参照)。これらの公報にはさらに、注射剤は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤のような補助剤を含有していてもよいと記載されている。
しかしながら現在まで、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有する注射剤を具体的に開示するものは無く、また、注射剤を調製するための(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する薬剤に関する報告も一切無い。
【発明の開示】
本発明者らは、脳梗塞をはじめとする神経変性疾患の治療に有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有し、必要に応じて溶解や希釈の操作を行うことにより、簡便に患者に投与可能な注射剤を調製し得る薬剤を製造しようと試みたところ、これらの物質の注射剤を製造する場合には重大な問題点、すなわち、(1)(2R)−2−プロピルオクタン酸はオイルであり、水に不溶でかつ混和できないこと、(2)(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩、例えば、ナトリウム塩はワックス状であるため医薬品の原薬として用いるにはその取扱の面で問題があり、さらに水に溶解したとしてもpHが高く、かつpHの僅かな変動により白濁する恐れがあるため、静脈内投与には不適であること等の問題点を有していることが判明した。本発明者らは、これらの問題点を解決すべく検討を行った結果、(2R)−2−プロピルオクタン酸は、水酸化ナトリウム等の強アルカリを混合することにより、高濃度でも水に溶解することが可能であることを見出した。しかし、このような方法で溶解した(2R)−2−プロピルオクタン酸の高濃度溶液は、pHが高く、患者に投与可能な注射剤とすべく、水性希釈液、例えば、生理食塩水等を用いて希釈すると、その希釈濃度によっては白濁し、また溶解状態にあったとしても、前記ナトリウム塩の場合と同様に、pHの僅かな変動により、特に酸性側への変動により白濁することが判明した。加えて、この高濃度溶液は、通常のガラス製容器中で長期間保存すると不溶性異物が生じ、長期間保存することは困難であった。このように、薬物濃度、または溶液のpHの変化に鋭敏に反応し、白濁等の変化をきたす薬物は、使用するにあたって幾つかの問題が懸念される。すなわち、実際に医療従事者の手によって、患者に投与可能な注射剤を調製し、他剤と併用し、または患者の血管内に投与する行為中に白濁する恐れがある。さらに保存により不溶性異物を生じる薬剤は、医薬品として実用に供することはできない。
従って、本発明の目的は、用時に溶解液および/または希釈液等を用いることにより、pHの変動に耐性があり、かつ患者に投与可能なpHの注射剤を白濁することなく調製可能な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する薬剤およびその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明のもう一つの目的は、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する、長期保存下にあっても不溶性異物の生成の問題が無い薬剤を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、脳梗塞を含めて種々の神経変性疾患の治療または予防薬として有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩は、塩基性金属イオンを一定量以上添加することにより、上記の課題を解決した高濃度の薬剤として提供可能であることを初めて見出し、この知見に基づいてさらに詳細に研究を行い、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と塩基性金属イオンを含有する薬剤、
(2)液体である前記(1)記載の薬剤、
(3)半固体である前記(1)記載の薬剤、
(4)(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンを含有する前記(1)記載の薬剤、
(5)ミセル水分散液である前記(2)記載の薬剤、
(6)塩基性金属イオンの供給源として、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、および亜硫酸の金属塩から選択される少なくとも一種を含有し、さらに金属水酸化物を含有していてもよい前記(1)記載の薬剤、
(7)塩基性金属イオンの供給源として、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、および亜硫酸水素カリウムから選択される少なくとも一種を含有し、さらに水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを含有していてもよい前記(1)記載の薬剤、
(8)塩基性金属イオンの供給源が、(1)リン酸三ナトリウム、(2)リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、または(3)リン酸二水素一ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである前記(7)記載の薬剤、
(9)pHが約7.0〜約12.0である前記(2)記載の薬剤、
(10)pHが約8.4〜約9.0である前記(9)記載の薬剤、
(11)(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性ナトリウムイオンを含有する薬剤であって、該塩基性ナトリウムイオンの供給源として、リン酸のナトリウム塩および炭酸のナトリウム塩から選択される少なくとも一種を含有し、さらに水酸化ナトリウムを含有していてもよく、かつpHが約8.4〜約9.0である前記(1)記載の薬剤、
(12)(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩が、ナトリウム塩または塩基性天然アミノ酸塩である前記(1)記載の薬剤、
(13)1mLあたり、約2.5〜約100mgの(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有する前記(2)記載の薬剤、
(14)プラスチック容器、内表面をシリコンコーティングしたガラス容器、または内表面を二酸化ケイ素を用いて表面処理したガラス容器に充填してなる前記(1)記載の薬剤、
(15)(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンを含有する水溶液に、(2R)−2−プロピルオクタン酸を溶解することによって得られる前記(1)記載の薬剤、
(16)(2R)−2−プロピルオクタン酸と、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンとを用いて製造された、輸液に対する溶解性の改善された薬剤、
(17)神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療剤である前記(1)記載の薬剤、
(18)(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、および亜硫酸の金属塩から選択される一種または二種以上と、所望によって金属水酸化物とを水に溶解し、約2.5〜約100mg/mLの(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有するpHが約8.4〜約9.0の溶液を調製する工程;ついで該溶液をプラスチック容器または内表面を二酸化ケイ素を用いて表面処理したガラス容器に充填する工程;ついで高圧蒸気滅菌に付す工程を含むことを特徴とする(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と塩基性金属イオンを含有する薬剤の製造方法、
(19)(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンの供給源と溶媒である水とを用意して、塩基性金属イオンの存在下、(2R)−2−プロピルオクタン酸と水とを混合し、(2R)−2−プロピルオクタン酸を水に溶解するための塩基性金属イオンの使用方法、
(20)(2R)−2−プロピルオクタン酸の金属塩または塩基性天然アミノ酸塩、
(21)一価のアルカリ金属塩である前記(20)記載の塩、
(22)(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩である前記(21)記載の塩、
(23)(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有してなるpHが約7.0〜約12.0の液体の薬剤、
(24)pHが約8.4〜約9.0である前記(23)記載の薬剤、
(25)水性の薬剤である前記(23)記載の薬剤、
(26)さらに塩基性金属イオンを含有してなる前記(23)記載の液剤、
(27)塩基性金属イオンの供給源がリン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである前記(26)記載の化合物、
(28)1mLあたり、約50mgの(2R)−2−プロピルオクタン酸と約80mgのリン酸一水素二ナトリウム・12水和物および水酸化ナトリウムを含有し、pHが約8.4〜約9.0である前記(27)記載の薬剤、
(29)前記(28)記載の薬剤を、4mL、8mLまたは20mL充填したプラスチック材質の容器、
(30)ポリエチレン製またはポリプロピレン製のアンプルもしくは環状ポリオレフィン製のシリンジである前記(29)記載の容器、
(31)前記(1)記載の薬剤の有効量を、哺乳動物に投与することを特徴とする、神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療方法、
(32)神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療剤を製造するための前記(1)記載の薬剤の使用、
(33)(2R)−2−プロピルオクタン酸と、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性ナトリウムイオンを含有する薬剤であって、該塩基性ナトリウムイオンの供給源として、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有し、かつpHが約8.4〜約9.0である薬剤、および
(34)ポリエチレン製またはポリプロピレン製のアンプルもしくは環状ポリオレフィン製のシリンジに充填してなる前記(33)記載の薬剤等に関する。
本発明に用いる(2R)−2−プロピルオクタン酸は、式(I)

(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩は、薬学的に許容される塩が好ましい。薬学的に許容される塩は、毒性の無い、水溶性のものが好ましい。
(2R)−2−プロピルオクタン酸の適当な塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、塩基性天然アミノ酸との塩等が挙げられる。
無機塩基との塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)等が好ましい。
有機塩基との塩としては、例えば、アルキルアミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、複素環式アミン(例えば、ピリジン、ピコリン、ピペリジン等)、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−メチル−D−グルカミン等との塩が好ましい。
塩基性天然アミノ酸との塩は、天然に存在し、精製することが可能な塩基性アミノ酸との塩であれば特に限定されないが、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン等との塩が好ましい。これらの塩のうち好ましいのは、例えば、アルカリ金属塩または塩基性天然アミノ酸塩等であり、とりわけナトリウム塩が好ましい。
本発明において、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩は、実質的に純粋で単一な物質であるものに限定されず、医薬品原薬として許容される範囲であれば不純物(例えば、製造工程に由来する副生成物、溶媒、原料等、または分解物等)を含有していてもよい。医薬品原薬として許容される不純物の含有量は、その含有される不純物によって異なるが、例えば、重金属は約20ppm以下、光学異性体であるS体は約1.49質量%以下、残留溶媒である2−プロパノールやヘプタンは合計約5000ppm以下、水分は約0.2質量%以下であることが好ましい。
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩は、それ自体公知の方法、例えば、欧州特許第0632008号明細書、国際公開第99/58513号パンフレット、国際公開第00/48982号パンフレット、特許第3032447号明細書、特許第3084345号明細書等に記載された方法に従って、またはそれらの方法を適宜組み合わせることにより製造することができる。
例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸のアルカリ金属塩または塩基性天然アミノ酸塩は、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)またはエーテル系溶媒(例えば、ジオキサン等)中、水の存在下または非存在下、(2R)−2−プロピルオクタン酸と当量のアルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または当量の塩基性天然アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン等)を混合し、0〜40℃で反応させることにより製造することができる。
反応の生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。また所望によって、凍結乾燥等の処理に付してもよい。
(2R)−2−プロピルオクタン酸をこれらの塩に変換することにより、水に対する溶解性を向上させることができる。
本発明の薬剤は、用時に溶解液および/または希釈液等を用いることで、患者に投与可能な注射剤を調製することが可能な注射剤前駆体を意味する。
本発明の薬剤は、その形状は限定されない。すなわち、本発明の薬剤は、一般に濃厚注射剤や濃縮注射剤と呼ばれるような液体の薬剤であってもよく、凍結乾燥製剤のような固体の薬剤であってもよい。また、ゲル状の態様を示す半固体の薬剤であってもよい。
液体の薬剤である場合は、直接希釈液を用いて注射剤を調製することができ、固体または半固体の薬剤である場合には、溶解液を用いて、一旦高濃度の液体とした後に、希釈液を用いて注射剤を調製することができる。固体または半固体の薬剤を直接注射剤にすることもできるが、均一に溶解、分散させることが困難である場合もある。
従って、本発明の薬剤は、液体であることが好ましく、特に水性の薬剤、すなわち、媒体が実質的に水である薬剤が好ましい。とりわけ、pHが約7.0以上(例えば、約7.0〜約12.0が好ましく、特に約8.4〜約9.0が好ましい。)を示す水性の薬剤が好適である。また、固体の薬剤や半固体の薬剤の場合、溶解液を用いて高濃度の液体を調製した際に、pHが約7.0以上(例えば、約7.0〜約12.0が好ましく、特に約8.4〜約9.0が好ましい。)を示す薬剤が好適である。
本明細書中、注射剤は、患者に直接、非経口的に投与することが可能な液体の注射用組成物であればよく、従って、本発明の薬剤を用いて調製した注射剤は、例えば、水性注射剤、非水性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、輸液製剤等の形態であってもよい。また、調製された注射剤は、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、脊髄腔内等の組織に適用可能である。
本発明の薬剤は、有効成分である(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と共に塩基性金属イオンを含有することを特徴とする。
本明細書中、塩基性金属イオンとは、水溶液中において金属化合物によって供給される金属イオン、好ましくは、水溶液中において塩基性を示す金属化合物によって供給される金属イオンを意味する。塩基性金属イオンは、本発明の薬剤が液体である場合には金属イオンとして存在し、本発明の薬剤が固体や半固体である場合には潜在的な金属イオンとして存在する。
ここで、潜在的な金属イオンとは、例えば、水を添加する等の操作により、イオンを形成しうる状態(例えば、水溶液等)にすることにより金属イオンとなる金属化合物中の金属を意味する。
塩基性金属イオンの供給源となる金属化合物は特に限定されないが、例えば、弱酸の金属塩、金属水酸化物等が挙げられる。
弱酸の金属塩を構成する弱酸は、有機酸、無機酸を問わず用いることができ、また、多価の酸であってもよい。このような弱酸としては、例えば、リン酸、炭酸、ホウ酸、亜硫酸、有機スルホン酸、C2〜6有機カルボン酸(例えば、1〜3価のC2〜6有機カルボン酸、すなわち、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸等)、またはその他の有機酸等が挙げられる。本発明における弱酸の金属塩としては、例えば、これらの弱酸が、一価のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等)と塩を形成したもの等が挙げられる。
一価のアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が好ましく、ナトリウムまたはカリウムがより好ましい。特に好ましいのは、ナトリウムである。
本発明における弱酸の金属塩としては、例えば、リン酸の金属塩:好ましくは、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三カリウム等;炭酸の金属塩:好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等;ホウ酸の金属塩:好ましくは、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等;亜硫酸の金属塩:好ましくは、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム等;有機スルホン酸の金属塩:好ましくは、カンファースルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、エタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸ナトリウム、カンファースルホン酸カリウム、メタンスルホン酸カリウム、エタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸カリウム、2−ヒドロキシエタンスルホン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸カリウム等;C2〜6有機カルボン酸の金属塩:好ましくは、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、アミノ酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、吉草酸カリウム、シュウ酸カリウム、アスコルビン酸カリウム、乳酸カリウム、コハク酸カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸二カリウム、リンゴ酸カリウム、酒石酸カリウム、マレイン酸カリウム、フマル酸カリウム、アミノ酢酸カリウム等が挙げられる。
また、これら以外にも、例えば、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アセチルトリプトファンナトリウム、カプリル酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、メタンスルホ安息香酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、アセチルトリプトファンカリウム、カプリル酸カリウム、グルコン酸カリウム、サリチル酸カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カリウム、チオグリコール酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、デオキシコール酸カリウム、メタンスルホ安息香酸カリウム、安息香酸カリウム、ピロリン酸カリウム等も用いることができる。
本発明における弱酸の金属塩として、好ましくは、例えば、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、または亜硫酸の金属塩等である。特に、リン酸の金属塩(例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム等)が好ましく、とりわけリン酸三ナトリウムまたはリン酸一水素二ナトリウムが好ましい。
これらの弱酸の金属塩は、無水物としてだけではなく、水和物等の溶媒和物の形(例えば、リン酸の金属塩、特にリン酸のナトリウム塩であれば、リン酸三ナトリウム・12水和物、リン酸二水素一ナトリウム・2水和物、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物等)で本発明の薬剤に添加することもできる。
これらの弱酸の金属塩は、溶液の状態、または固体の状態で配合される。
また、これらの弱酸の金属塩は、所望によって、2以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
これらの弱酸の金属塩のうち、好ましくは、pKaが塩基性にある金属塩である。多価の弱酸の金属塩の場合は、複数のpKaのうち、一以上のpKaが塩基性にある金属塩が好ましい。
本明細書中、金属水酸化物としては、例えば、前記一価のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム等が挙げられるが、中でも、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好ましく、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムがより好ましい。特に好ましいのは、水酸化ナトリウムである。
これらの金属水酸化物は、溶液の状態、または固体の状態で配合される。
また、これらの金属水酸化物は、所望によって、2以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
本発明の薬剤において、塩基性金属イオンの供給源として添加する弱酸の金属塩は、緩衝剤として、また溶解剤としても機能する。これらの弱酸の金属塩が、薬剤中で、さらには注射剤中で解離し、また、金属水酸化物や(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と相互作用することによって、pHの変動に耐性がある本発明の薬剤を調製することが可能となる。
具体的には、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸とリン酸三ナトリウムを含有する水性の薬剤の場合、(2R)−2−プロピルオクタン酸は、リン酸三ナトリウムによって供与されるナトリウムイオンによって、(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩となり、水に溶解する。また、リン酸三ナトリウムは、水溶液中でナトリウムイオンを放出することにより、リン酸一水素二ナトリウムに、さらにはリン酸二水素一ナトリウムになる。これらの物質が、水性の薬剤中、すなわち、水溶液中で共存し、平衡化することによって、本発明の薬剤は緩衝能を有するに至る。
また、もう一つの具体的な例としては、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸とリン酸一水素二ナトリウム、および水酸化ナトリウムを含有する水性の薬剤の場合、(2R)−2−プロピルオクタン酸は、水酸化ナトリウムおよび/またはリン酸一水素二ナトリウムによって供与されるナトリウムイオンによって、(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩となり、水に溶解する。水酸化ナトリウムおよび/またはリン酸一水素二ナトリウムは、水溶液中、ナトリウムイオンの授受を行うことにより、前記のリン酸三ナトリウムを添加した状態、すなわち、リン酸一水素二ナトリウムとリン酸二水素一ナトリウムが水溶液中で共存する状態、またはこれに近い状態となって平衡化し、緩衝能を発現するに至る。
このように、本発明の薬剤においては、弱酸の金属塩は、金属水酸化物や、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と相互作用し、リン酸第一塩−リン酸第二塩系緩衝剤、または炭酸−炭酸水素塩系緩衝剤を添加した場合と同様の効果を発現し、本発明の薬剤は緩衝能を有することができる。
本発明の薬剤において、塩基性金属イオンの供給源として添加する金属水酸化物は、溶解剤として、またはpH調節剤としても機能する。すなわち、pHを調節するために、または、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を溶解させるために、これらの金属水酸化物を用いてもよい。
前記したように、本発明の薬剤は、液体でもよく、また固体や、さらには半固体でもよいが、例えば、液体、特に水性の薬剤である場合には、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度で溶解させるためにこれらの金属水酸化物を用いることができる。
また、固体や半固体の薬剤である場合にも、任意の溶解液(好ましくは、水(例えば、注射用水等)等)を用いて高濃度の液体を調製したときに、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩が溶解するように、これらの金属水酸化物を添加しておくことができる。
これらの金属水酸化物の添加が必要な場合としては、例えば、本発明の薬剤において、前記の弱酸の金属塩が不足するか、または前記の弱酸の金属塩のみでは好ましいpH(pH7.0以上、より好ましくはpH7.0〜12.0、特に好ましくは、pH8.4〜H9.0)に達しない場合において、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩が溶解しない場合等が挙げられる。このような場合、前記の弱酸の金属塩を好ましい範囲内で任意に増量するか、または、金属水酸化物を添加することにより(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を溶解させることができる。
本発明の薬剤における前記金属化合物(弱酸の金属塩、金属水酸化物等)の含有量は、特に限定されないが、前記金属化合物によって供給される塩基性金属イオンが、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量、より好ましくは、約1.2〜約3.5当量であることが好ましい。
本発明の薬剤において、塩基性金属イオンの供給源としては、前記金属化合物、すなわち弱酸の金属塩や金属水酸化物が単独で、または組み合わせて用いられるが、少なくとも一種の弱酸の金属塩を用いることが好ましい。
金属水酸化物のみを塩基性金属イオンの供給源として用いた場合、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1当量(例えば、0.95当量等)の水酸化ナトリウムを用いた場合、(2R)−2−プロピルオクタン酸を水(例えば、注射用水等)に溶解することは可能であるが、得られる溶液はpHが高く、また、本発明の効果の一つである、pHの変動に対する耐性を得ることができない場合がある。
また、(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩等を用いた場合、金属水酸化物を添加せずとも水に溶解することができる。
しかしながら、前記の例と同様、得られる溶液はpHが高く、また、本発明の効果の一つである、pHの変動に対する耐性を得ることができない場合がある。従って、本発明の薬剤として好ましくは、弱酸の金属塩を少なくとも一種含有し、さらに金属水酸化物を含有していてもよい薬剤である。
本発明の薬剤の好適な例として、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンを含有する薬剤であって、該塩基性金属イオンの供給源として、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、および亜硫酸の金属塩から選択される少なくとも一種を含有し、さらに金属水酸化物を含有していてもよい、pHが約8.4〜約9.0の薬剤等が例示できる。
ここで、リン酸の金属塩としては、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、またはこれらの水和物等が、炭酸の金属塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはこれらの水和物等が、亜硫酸の金属塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、またはこれらの水和物等が好ましい。また、ナトリウムの代わりにカリウムを含むこれらの金属塩も好ましい。
さらに金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。前記したように、これらの金属水酸化物は混合して使用してもよい。以下にこれらの好ましい各金属塩の含有量の範囲および金属水酸化物の含有量の範囲を、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩のモル数に対する質量で例示する。ただし、これらは、ナトリウムを含む化合物を用いた場合の例示であり、ナトリウムの代わりにカリウムを含む化合物を用いた場合は、その分子量に応じて適宜変更するものとする。(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1モルに対する、リン酸、炭酸、または亜硫酸のナトリウム塩の含有量、すなわち、1〜5当量に相当するこれらの塩の含有量としては、例えば、(1)約54.7〜約273.2gのリン酸三ナトリウム;(2)約71.0〜約354.9gのリン酸一水素二ナトリウム;(3)約120.0〜約600.0gのリン酸二水素一ナトリウム;(4)約53.0〜約265.0gの炭酸ナトリウム;(5)約84.0〜約420.0gの炭酸水素ナトリウム;(6)約53.0〜約265.0gの亜硫酸ナトリウム;(7)約104.0〜約520.0gの亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの含有量は、全て無溶媒和物(例えば、無水物等)としての質量である。
これらの成分を含む任意の溶媒和物(例えば、水和物等)を用いる場合には、その添加質量から溶媒(例えば、水等)に相当する質量を減じて、無溶媒和物の量として前記に示した範囲内となるものが好ましい。
水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの添加の必要性については、前記のように判断することができる。前記の例では、例えば、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、炭酸水素カリウム、亜硫酸水素カリウム等を用いる場合に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを添加することが好ましい。ただし、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを添加する場合は、塩基性金属イオンの総量が、好ましくは、1〜5当量となるように、また、緩衝能が損なわれないように、さらにpHが好ましい範囲から逸脱しないように注意しつつ、弱酸の金属塩の添加量を適宜調節することが好ましい。
水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを添加する薬剤の好ましい例としては、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸を含有する薬剤の場合、(2R)−2−プロピルオクタン酸約1当量に対し、約1当量に相当する水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムと、約1〜約4当量に相当する弱酸の金属塩、例えば、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、炭酸水素カリウム、亜硫酸水素カリウム等を添加する薬剤等が挙げられる。
また、塩基性金属イオンを用いない方法として、前記の金属塩の代わりに、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の一定量以上を添加することによっても同様の効果、すなわち、用時に溶解液および/または希釈液等を用いることにより、pHの変動に耐性があり、かつ患者に投与可能なpHの注射剤を白濁することなく調製可能な、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する薬剤を提供することが可能である。ただし、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いた場合は、本発明の薬剤の滅菌操作として、後述する滅菌操作のうち、ろ過滅菌等の加熱を伴わない滅菌法を用いることが好ましい。
本発明の薬剤にはさらに、一般に注射剤に使用される添加剤を適宜配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、70v/v%N−ヒドロキシエチルラクタマイド水溶液、D−ソルビトール、D−マンニトール、DL−メチオニン、L−アスパラギン酸、L−アラニン、L−アルギニン、L−グルタミン酸、L−リジン、L−グルタミン酸カリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、L−シスチン、L−システイン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、N,N−ジメチルアセタミド、アスコルビン酸、アセチルトリプトファンナトリウム、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルファチオグリセリン、アルブミン、イノシトール、エタノール、エチル尿素、エチレンジアミン、エデト酸カルシウムナトリウム、エデト酸ナトリウム、オレイン酸、カプリル酸ナトリウム、カルメロースナトリウム、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリセリン、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、クレアチニン、クロロブタノール、ゲンチジン酸エタノールアミド、コハク酸、ゴマ油、コンドロイチン硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、セスキオレイン酸ソルビタン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、ソルビタン脂肪酸エステル、ダイズ油、チオグリコール酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ツバキ油、デキストラン40、デキストラン70、デスオキシコール酸ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒド、スルホキシレート、ニコチン酸アミド、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒマシ油、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヘパリンナトリウム、ベンジルアルコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリソルベート80、マクロゴール400、マクロゴール4000、マルトース、メグルミン、メタンスルホ安息香酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、ラッカセイ油、リン酸、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化亜鉛溶液、塩化第一すず、塩化第二鉄、塩酸、塩酸アルギニン、塩酸システイン、塩酸リジン、果糖、乾燥アルミニウムゲル、乾燥亜硫酸ナトリウム、希塩酸、高度精製卵黄レシチン、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酒石酸、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、水酸化アルミニウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、精製大豆油、精製白糖、精製卵黄レシチン、炭酸水素ナトリウム、注射用水、糖酸カルシウム、乳酸、乳酸エチル、乳酸ナトリウム液、乳糖、尿素、濃グリセリン、氷酢酸、無水エタノール、無水クエン酸、無水ピロリン酸ナトリウム、無水マレイン酸、無水塩化第一すず、無水酢酸ナトリウム、硫酸、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの添加剤は、一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。
当業者にとっては容易なことであり、また、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等にも記載されている様に、これらの添加剤は使用目的に応じて、例えば、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、抗酸化剤、消泡剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、溶解剤、溶解補助剤等として使い分けることが可能である。
また、これらの添加剤は、所望によって、2以上の成分を組み合わせ、添加することができる。
ここに例示した種々の添加剤には、塩基性金属イオンの供給源として機能するものも挙げられている。このような塩基性金属イオンの供給源として機能する添加剤を用いる場合においても、好ましくは、薬剤中の塩基性金属イオンの総量が、約1〜約5当量の範囲内にあることが好ましい。
本発明の薬剤は、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と、塩基性金属イオン(好ましくは、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオン)を含有する薬剤であればこれを全て包含する。
有効成分としての(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩の含有量は限定されないが、液体の薬剤であれば1mLあたり、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を、(2R)−2−プロピルオクタン酸量として、約2.5〜約100mg等を含有することが好適である。特に、輸液等に希釈して注射剤を調製する使用法を考慮し、例えば、1mLあたり、約25〜約100mg等を含有することが好ましく、1mLあたり、約50〜約100mg等を含有することがより好ましく、1mLあたり、約50mgを含有することが特に好ましい。また、固体の薬剤や半固体の薬剤であれば、バイアルやアンプル等の容器中、任意の溶解液(好ましくは、水(例えば、注射用水等)等)を用いて溶解し、溶液1mLあたり、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を前記の量含有することが好適である。
本発明の薬剤が、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度(特に約20mg/mL以上)に含有する水性の薬剤である場合、該薬剤は、ミセル水分散液の態様を示す。
ミセル水分散液とは、ミセル、すなわち、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩によって形成された会合体、または(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と塩基性金属イオンが相互作用することによって形成された会合体が、媒体である水に均一に分散していることを表わし、その性状(例えば、流動性等)は通常の水溶液と格段に異なるものではない。本発明の薬剤は、ミセル水分散液の態様を示すことによって、水溶液と同等の操作性を保持しつつ、かつ(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度含有することが可能となる。ミセル水分散液であるか否かの判断は、ミセルの特性を利用した公知の方法、例えば、脂溶性色素法等によって行うことが可能である。
脂溶性色素法は、例えば、脂溶性色素(例えば、SudanIII、ピアシアノールクロライド、ローダミン6G等)溶液を被験溶液と混合し、一定時間経過後、遠心分離し、その上清の、用いた脂溶性色素に特有の吸光度を測定する方法である。この試験法により、上清に吸光度が得られれば、脂溶性色素がミセル中に存在することとなり、すなわち、ミセルが形成され、ミセル水分散液となっていることを判断することができる。また、このような試験によって、ミセル形成を起こす臨界濃度、すなわち、臨界ミセル濃度(CMC)を特定することができる。
臨界ミセル濃度は、ミセルを形成する物質によっても異なり、共存するイオンやその濃度、イオン強度、さらには温度によっても異なるため、厳密に解されるべきではないが、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性ナトリウムを含有する水性薬剤の場合、その臨界ミセル濃度は、室温で約20〜約25mg/mLの範囲にある。
本発明の薬剤は、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を、前記の塩基性金属イオンの供給源と、さらに所望によって前記の添加剤と共に水(例えば、注射用水等)に溶解し、バイアルまたはアンプルに充填後、必要に応じて凍結乾燥することによって得ることができる。
これらの溶解はどのような順序で行ってもよい。例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を塩基性金属イオンの供給源である弱酸の金属塩の水溶液(例えば、リン酸三ナトリウム水溶液、リン酸一水素二ナトリウム水溶液、リン酸二水素一ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液、亜硫酸水素ナトリウム水溶液、リン酸三カリウム水溶液、リン酸一水素二カリウム水溶液、リン酸二水素一カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、亜硫酸カリウム水溶液、亜硫酸水素カリウム水溶液等)、またはさらに金属水酸化物の水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)等を混合した溶液等で溶解してもよいし、または各成分の固体を秤量、混合した後に、水に溶解してもよい。
また、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩に水を添加し、白濁した後でも必要量の弱酸の金属塩、所望によって金属水酸化物を添加することにより澄明な溶液を調製することできる。また、前述したように、本発明の薬剤において、前記の弱酸の金属塩は、溶液中において解離し、平衡化し、緩衝作用を発現する。
また、弱酸の金属塩または金属水酸化物に由来する一価のアルカリ金属イオンは、(2R)−2−プロピルオクタン酸と反応し、塩を形成してその溶解に寄与してもよい。従って、本発明の薬剤は、調製に用いた成分、すなわち、原料と、溶液中で検出される成分が異なる場合がある。例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸とリン酸三ナトリウムのみを水に溶解し、調製した薬剤は、水溶液中では、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、および/またはこれらのイオン等を形成し、溶解し、平衡状態に達する。従って、本発明の薬剤は、これら平衡状態の溶液組成、または平衡状態の溶液組成を構成しうる成分を混合することによっても製造することができる。
凍結乾燥は、公知の方法によって行うことができる。一般的には、−25℃以下の温度で凍結後、乾燥庫内真空度を約13.3Pa以下に保ちながら、棚温を25〜40℃に到達するまで昇温させつつ乾燥する方法が好ましい。
また、本発明の薬剤、特に半固体の薬剤は、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を、前記の塩基性金属イオンの供給源と、さらに所望によって前記の添加剤と共に、必要に応じて練合し、バイアルまたはアンプルに充填することによって得ることができる。このようにして得られる半固形状薬剤は、練合の有無、温度、塩基性金属イオンの供給源の添加量等の条件によって状態が異なるが、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸約1当量に対し、約3当量の塩基性ナトリウムイオンの供給源を混合し、練合した場合、無色のゲル状薬剤の態様を示す。
これらの薬剤は通常、一般的な注射剤と同様の滅菌操作を行うことで、無菌性を保持した薬剤とすることができる。具体的には、例えば、各成分を前記の方法によって混合した後、例えば、アンプル、バイアル等の適当な容器に充填する前に、例えば、滅菌フィルターでろ過滅菌等の操作を行うか、または充填した後に、例えば、照射滅菌や高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)等の滅菌処理を行うことにより無菌的な薬剤として供することができる。
また、所望によってこれらの容器への充填の前に、防塵フィルター(例えば、0.45μmメチルセルロースメンブレン、0.45μmナイロン66メンブレン、0.45μmポリフッ化ビニリデン等)でろ過等の操作を行ってもよい。
本発明の薬剤の滅菌処理としては高圧蒸気滅菌が好ましい。高圧蒸気滅菌は、例えば、100〜125℃の条件で、5〜30分間行うことが好ましい。
「バイアル」としては、薬剤に使用可能なガラス材質、または環状ポリオレフィン、ポリプロピレン等のプラスチック材質であることが好ましい。好ましいバイアルとしては、ガラス材質のものでは、例えば、USP TYPE I、II、III等、プラスチック材質のものでは、例えば、CZバイアル(大協精工(株))等が挙げられる。バイアルの形状および大きさに特に制限はない。
バイアルの容量は、好ましくは、100mL以下、より好ましくは、40mL以下、特に好ましくは20mL以下である。バイアルの具体例としては、例えば、直径30mmバイアル、直径24.5mmバイアル、直径18mmバイアル等が挙げられる。
「アンプル」としては、薬剤に使用可能なガラス材質、またはポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材質であることが好ましく、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材質であることが好ましい。ガラス材質は、例えば、前記USP TYPE I、II、III等が好ましい。アンプルの形状および大きさに特に制限はない。また、ガラス材質とプラスチック材質を組み合わせた、いわゆる、内表面がガラスコーティングされたプラスチックアンプルや、内表面がプラスチックコーティングされたガラスアンプル等を用いることもできる。
アンプルの容量は、好ましくは、30mL以下、より好ましくは、20mL以下、特に好ましいのは、10mL以下である。アンプルの具体例としては、例えば、20mLアンプル、10mLアンプル、5mLアンプル、3mLアンプル、2mLアンプル、1mLアンプル等が挙げられ、例えば、20mLアンプル、10mLアンプル、5mLアンプル等が好適である。
また、前記の薬剤は同様に、各成分を混合後、例えば、シリンジ等の適当な容器に充填し、例えば、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)等の滅菌処理を行うことによりプレフィルドシリンジとして供することもできる。
「プレフィルドシリンジ」のための「シリンジ」としては、薬剤に使用可能なガラス材質、または環状ポリオレフィン、ポリプロピレン等のプラスチック材質であることが好ましい。ガラス材質は、例えば、前記USP TYPE I、II、III等が好ましい。シリンジの形状および大きさに特に制限はない。
シリンジの容量は、好ましくは、30mL以下、より好ましくは、20mL以下、特に好ましくは、10mL以下である。シリンジの具体例としては、例えば、10mLシリンジ、5mLシリンジ、3mLシリンジ、2mLシリンジ、1mLシリンジ等が挙げられる。
本発明の薬剤の製造工程等において、内容物による発泡が激しく澄明となるのに時間を要する場合には、シリコンコーティングしたバイアル、アンプル、またはシリンジを使用し、時間の短縮をはかることができる。
コーティングに使用されるシリコンとしては、シリコンオイル(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン等)、ワニスシリコン(例えば、メチルワニスシリコン、メチルフェニルワニスシリコン等)等が挙げられ、好ましいシリコンの一例としては、KM−740(信越化学工業(株))が挙げられる。
本発明の薬剤、特にpH7.0以上の水性薬剤は、ガラス材質の容器に保存することにより、不溶性異物が発生する。従って、本発明の薬剤を前記のガラス材質のバイアル、アンプル、またはシリンジ等に充填する場合には、これらの容器の内表面(ガラス表面)をシリコンでコーティングするか、または二酸化ケイ素で処理(例えば、シリコート処理、波状プラズマ化学的気相法処理等)しておくことにより、または予め二酸化ケイ素で内表面を処理した容器(例えば、シリコートアンプル、シリコートバイアル等(塩谷硝子製、不二硝子製)、タイプIプラスアンプル、タイプIプラスバイアル等(SCHOTT製)等)を用いることにより、不溶性異物の発生を抑えることができ、長期保存下にあっても不溶性異物の生成の問題が無い薬剤を提供することが可能である。シリコンのコーティングは、前記のシリコンや、シリコン系コーティング剤(例えば、ジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、メチルハイドロゲンシリコンオイル等)等を用いて、かかる容器の内表面を、被膜の厚さが約100μm以下、好ましくは、約15〜約50μmとなるように、公知の方法、例えば、加熱蒸着法、プラズマ強化化学蒸着法、プラズマパルス化学蒸着法等によって行われる。二酸化ケイ素での処理は、公知の方法、例えば、シリコート処理、波状プラズマ化学的気相法処理等によって行われる。また、プラスチック容器を用いる場合には不溶性異物の発生の問題はなく、処理を施さずとも、長期保存下にあっても不溶性異物の生成の問題が無い薬剤を提供することが可能である。
前記バイアルまたはアンプル等に充填されて供される本発明の薬剤は、液体の薬剤であればそのまま、固体の薬剤や半固体の薬剤であれば任意の溶解液を用いて用時溶解後、該バイアルまたはアンプルから目的とする一定量または全量を注射用シリンジ等で抜き取り、任意の希釈液(例えば、注射用水、生理食塩水、糖液、各種輸液)等を用いて希釈後、生体内に投与される。また、プレフィルドシリンジ等に充填されて供される本発明の薬剤も、そのプレフィルドシリンジから目的とする一定量または全量を、任意の希釈液(例えば、注射用水、生理食塩水、糖液、各種輸液)等を用いて希釈後、生体内に投与される。
前記したように、本発明の薬剤の使用の態様としては、本発明の薬剤を、輸液等の静脈内への点滴投与が可能な媒体に希釈して用いることが好ましい。希釈後のpHは特に限定されないが、例えば、本発明の薬剤を、有効成分である(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩の濃度が、(2R)−2−プロピルオクタン酸量として、約0.01〜約20mg/mL、好ましくは、約0.1〜約20mg/mLとなるように輸液を用いて希釈したとき、pHが約3.0〜約10.0、より好ましくは、pHが約4.0〜約9.0、特に好ましいのは、pHが約5.0〜約9.0である。特に、輸液として生理食塩水を用いた場合には、前記の濃度に希釈後、pHが約5.0〜約9.0、特に好ましいのは、pHが約6.0〜約9.0である。
本発明の薬剤の希釈に用いる輸液として好ましくは、例えば、電解質液、糖液、ビタミン注射液、蛋白アミノ酸注射液等が用いられる。
ここで、電解質液は、電解質を注射用水に溶解した液であり、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の一種または二種以上を含む溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液等が挙げられる。
電解質液として好ましくは、例えば、輸液中で、二価の金属イオン(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等)を含まないものが好ましい。電解質液として、より好ましくは、例えば、塩化ナトリウムを含む溶液等であり、特に好ましいのは、例えば、生理食塩水、すなわち0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液である。
糖液は、糖類を注射用水に溶解した液であり、例えば、グルコース、果糖、ソルビトール、マンニトール、デキストラン等の一種または二種以上を含む溶液等が挙げられる。糖液として好ましくは、例えば、5〜70%(w/v)のグルコース溶液等であり、特に好ましいのは、例えば、5%(w/v)グルコース溶液および10%(w/v)グルコース溶液等である。
蛋白アミノ酸注射液は、アミノ酸を注射用水に溶解した液であり、例えば、グリシン、アスパラギン酸、リジン等の一種または二種以上を含む溶液等が挙げられる。ビタミン注射液は、ビタミン類を注射用水に溶解した液であり、例えば、ビタミンB1、ビタミンC等の一種または二種以上を含む溶液等が挙げられる。
本発明の薬剤を希釈する輸液として好ましくは、例えば、0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液等である。より具体的には、例えば、一般に市販されている輸液、例えば、総合アミノ酸輸液(例えば、アミノレバン(大塚)、アミゼットB(田辺)、アミゼットXB(田辺)、アミパレン(大塚)、ネオアミュー(味の素ファルマ)、プレアミン−P(扶桑)、プロテアミン12X(田辺)、モリプロン−F(味の素ファルマ)等)、高カロリー輸液用糖・電解質・アミノ酸液(例えば、ピーエヌツイン(味の素ファルマ)、ユニカリック(テルモー田辺)等)、電解質輸液(例えば、生理食塩水、乳酸リンゲル液(例えば、ソリタ(清水)、ソルラクト(テルモ)、ハルトマン(小林製薬工業)、ラクテック(大塚)等)、ブドウ糖加乳酸リンゲル液(例えば、ソルラクトD(テルモ)、ハルトマンD(小林製薬工業)、ラクテックD(大塚)等)、ブドウ糖加酢酸リンゲル液(例えば、ヴィーンD(日研)等)、ソルビトール加乳酸リンゲル液(例えば、ソリタS(清水)、ラクテックG(大塚)等)、マルトース加乳酸リンゲル液(例えば、ソルラクトTMR(テルモ)、ポタコールR(大塚)等)、マルトース加アセテート液(例えば、アクチット(日研)等)、EL3号(成人用維持液;味の素ファルマ)、10%EL3号(維持液;味の素ファルマ)、EN補液(1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、4B;大塚)、ソリタT(1号、2号、3号、3号G、4号;清水)、フィジオゾール(大塚)、ソルデム(1、2、3、4、5、6;テルモ)等)、高カロリー輸液用糖・電解質液(例えば、トリパレン(1号、2号;大塚)、ハイカリック(1号、NC−L、2号、NC−N、3号、NC−H;テルモ)、ハイカリックRF(テルモ)等)、高カロリー輸液用糖・電解質・アミノ酸液(例えば、ピーエヌツイン(−1号、−2号、−3号;味の素ファルマ)、ユニカリック(L、N;テルモ−田辺)等)等が挙げられる。
また、本発明の薬剤は、無菌性を保ちつつ、かかる薬剤を調製し得る状態で提供されるものであってもよい。このような薬剤としては、例えば、(1)薬剤に含有される成分が、別々の容器で提供される、いわゆるキット製剤のようなもの、(2)薬剤に含有される成分が、同一容器中で別室に分かれて提供されるもの等が挙げられる。具体的な例を挙げると、(1)のような薬剤としては、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩とこれを希釈するための塩基性金属イオンを含む水溶液とが別々の容器(例えば、バイアル、アンプル等)で提供されるもの等が、(2)のような薬剤としては、例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩とこれを希釈するための塩基性金属イオンを含む水溶液とが同一容器中で別室に分かれた状態(例えば、二室以上に分かれたシリンダアンプル等)で提供されるもの等が挙げられる。また、本発明の薬剤は、輸液等の希釈剤と、同一容器中で、多室(好ましくは、二室)に分けて提供されるものであってもよい。このような製剤としては、例えば、二室型輸液バッグにおいて、一室に希釈用輸液を、もう一室に本発明の薬剤を充填した製剤等が挙げられる。
[医薬品への適用]
本発明の薬剤は、有効成分として(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有していることから、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト動物、例えば、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等)において、例えば、神経変性疾患等の治療および/または予防に有用である。
神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、オリーブ橋小脳萎縮症、脳卒中(例えば、脳梗塞、脳出血等)や脳脊髄外傷後の神経機能障害(例えば、脱髄疾患(多発性硬化症等)、脳腫瘍(星状膠細胞腫等)、感染症に伴う脳脊髄疾患(髄膜炎、脳膿瘍、クロッツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆等))等が挙げられる。また、該薬剤は、神経再生促進剤、S100β増加抑制剤、または神経障害改善剤としても有用である。本発明の薬剤は、前記の疾患の治療および/または予防等を目的として、溶解液および/または希釈液を用いて患者に投与可能な形態とした後に、生体内に投与される。
本発明の薬剤を用いて調製した注射剤の一日の投与量は、症状の程度;投与対象の年齢、性別、体重;投与の時期、間隔;有効成分の種類などによって異なり、特に限定されないが、例えば、脳梗塞をはじめとする神経変性疾患治療剤として静脈内に点滴投与する場合、(2R)−2−プロピルオクタン酸を有効成分とするものでは、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2〜約12mgが好ましい。より好ましい投与量としては、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、または約12mg等が挙げられる。特に好ましくは、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、約6mg、約8mg、または約10mgであり、特に、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、または約8mgが好適である。また、(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩を有効成分とするものでは、(2R)−2−プロピルオクタン酸の量として前記に示した1日用量が好適である。
本発明の薬剤を用いて調製した注射剤は、他の薬剤、例えば、抗てんかん薬(例えば、フェノバルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、プリミドン、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、エトスクシミド、アセチルフェネトライド、カルバマゼピン、アセタゾラミド、ジアゼパム、バルプロ酸ナトリウム等)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、塩酸ドネベジル、TAK−147、リバスチグミン、ガランタミン等)、神経栄養因子(例えば、ABS−205等)、アルドース還元酵素阻害薬、抗血栓薬(例えば、t−PA、ヘパリン、経口抗凝固薬(例えば、ワーファリン等)、合成抗トロンビン薬(例えば、メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット、アルガトロバン等)、抗血小板薬(例えば、アスピリン、ジピリダモール、塩酸チクロピジン、ベラプロストナトリウム、シロスタゾール、オザグレルナトリウム等)、血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、アルテプラーゼ等)、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、脳循環代謝改善薬(例えば、イデベノン、ホパンテン酸カルシウム、塩酸アマンタジン、塩酸メクロフェノキサート、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸ピリチオキシン、γ−アミノ酪酸、塩酸ビフェメラン、マレイン酸リスリド、塩酸インデロキサジン、ニセルゴリン、プロペントフィリン等)、抗酸化薬(例えば、エダラボン等)、グリセリン製剤(例えば、グリセオール等)、βセクレターゼ阻害薬(例えば、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジメチルアミノ)メチルテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)メチルテトラリン、2−(N,N−ジメチルアミノ)メチル−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]テトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メチルビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(3’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、その光学活性体、その塩およびその水和物、OM99−2(WO01/00663号)等)、βアミロイド蛋白凝集阻害作用薬(例えば、PTI−00703、ALZHEMED(NC−531)、PPI−368(特表平11−514333号)、PPI−558(特表2001−500852号)、SKF−74652(Biochem.J.,340(1)巻,283〜289頁,1999年)等)、脳機能賦活薬(例えば、アニラセタム、ニセルゴリン等)、ドーパミン受容体作動薬(例えば、L−ドーパ、ブロモクリプチン、パーゴライド、タリペキソール、プラミペキソール、カベルゴリン、アマンタジン等)、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(例えば、サフラジン、デプレニル、セルジリン(セレギリン)、レマセミド(remacemide)、リルゾール(riluzole)等)、抗コリン薬(例えば、トリヘキシフェニジル、ビペリデン等)、COMT阻害薬(例えば、エンタカポン等)、筋萎縮性側索硬化症治療薬(例えば、リルゾール等、神経栄養因子等)、スタチン系高脂血症治療薬(例えば、プラバスタチンナトリウム、アトロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン等)、フィブラート系高脂血症治療薬(例えば、クロフィブラート等)、アポトーシス阻害薬(例えば、CPI−1189、IDN−6556、CEP−1347等)、神経分化・再生促進薬(例えば、レテプリニム(Leteprinim)、キサリプローデン(Xaliproden;SR−57746−A)、SB−216763等)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、メロキシカム、テノキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、インドメタシン等)、ステロイド薬(例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾン等)、性ホルモンまたはその誘導体(例えば、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール等)等を併用してもよい。また、ニコチン受容体調節薬、γセクレターゼ阻害作用薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素、スクワレン合成酵阻害薬、痴呆の進行に伴う異常行動や徘徊等の治療薬、降圧薬、糖尿病治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬(例えば、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬等)、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム受容体拮抗薬等を併用してもよい。
以上の併用薬剤は例示であって、これらに限定されるものではない。
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。また、併用する薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
[毒性]
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩の毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全であると判断できる。例えば、イヌを用いた単回静脈内投与では、(2R)−2−プロピルオクタン酸は、100mg/kgで死亡例が見られなかった。
【発明の効果】
本発明によって、用時に溶解液および/または希釈液等を用いることで、pHの変動に耐性があり、かつ患者に投与可能なpHの注射剤を白濁することなく調製可能な、(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を高濃度に含有する、不溶性異物の発生することのない薬剤およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、(2R)−2−プロピルオクタン酸と塩基性金属イオンを含有する薬剤におけるミセル形成の確認試験結果を示すグラフである。
図2は、(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩の赤外線吸収スペクトルチャートである。
図3は、(2R)−2−プロピルオクタン酸の赤外線吸収スペクトルチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
実施例1:(2R)−2−プロピルオクタン酸およびリン酸三ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、リン酸三ナトリウム・12水和物(35.4g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をプラスチックバイアル(CZバイアル)に充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表1の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例2:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸三ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−1
注射用水に、リン酸三ナトリウム・12水和物(18.0g)、水酸化ナトリウム(2.1g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて200mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、3mL、4mL、6mL、12mLおよび24mL)をプラスチックバイアル(ポリプロピレン製)に充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表2の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例3:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸三ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−2
注射用水に、リン酸三ナトリウム・12水和物(4.725kg)、水酸化ナトリウム(0.5kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をプラスチックアンプル(ポリプロピレン製)に成型充填(ブローフィルシール)した。このアンプルを高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表3の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例4:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸二水素一ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−1
注射用水に、リン酸二水素一ナトリウム・2水和物(3.625kg)、水酸化ナトリウム(1.95kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をプラスチックアンプル(ポリプロピレン製)に成型充填(ブローフィルシール)した。このアンプルを高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表4の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例5:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸二水素一ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−2
注射用水に、リン酸二水素一ナトリウム・2水和物(7.3g)、水酸化ナトリウム(6.0g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をポリプロピレン製シリンジに充填した。このシリンジに栓を施し、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表5の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例6:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−1
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(32.0g)、水酸化ナトリウム(4.12g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をシリコートアンプルに充填した。このアンプルを熔封し、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表6の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例7:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−2
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(16.0g)、水酸化ナトリウム(4.12g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をシリコートバイアルに充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表7の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例8:(2R)−2−プロピルオクタン酸および炭酸ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、炭酸ナトリウム(11.4g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をタイプIプラスバイアルに充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表8の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例9:(2R)−2−プロピルオクタン酸、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、炭酸水素ナトリウム(9.0g)、水酸化ナトリウム(3.9g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)を環状ポリオレフィン製シリンジに充填した。このシリンジに栓を施し、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表9の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例10:(2R)−2−プロピルオクタン酸および亜硫酸ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、亜硫酸ナトリウム(24.0g)、水酸化ナトリウム(3.9g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をプラスチックバイアル(CZバイアル)に充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表10の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例11:(2R)−2−プロピルオクタン酸、亜硫酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、亜硫酸水素ナトリウム(20.0g)、水酸化ナトリウム(4.12g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をタイプIプラスアンプルに充填した。このアンプルを熔封し、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表11の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

参考例1:(2R)−2−プロピルオクタン酸およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含有する薬剤の製造
注射用水に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(26.0g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(20.0g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をシリコートアンプルに充填した。このアンプルを熔封し、以下の表12の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例12:(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩およびリン酸一水素二ナトリウムを含有する薬剤の製造
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(33.4g)および(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩(22.4g)を加え、注射用水を用いて400mLとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、2mL、6mL、8mL、12mL、および24mL)をプラスチックバイアル(ポリプロピレン製)に充填した。このバイアルにゴム栓を打栓し、アルミキャップで巻き締め後、高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表13の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例13:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−3
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)、水酸化ナトリウム(1.03kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリプロピレン製)に成型充填(ブローフィルシール)した。このアンプルを高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表14の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例14:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−4
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)、水酸化ナトリウム(1.03kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリエチレン製)に成型充填(ブローフィルシール)することにより、以下の表15の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例15:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−5
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、水酸化ナトリウムを適量加えてpHを8.4〜9.0に調整し、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリプロピレン製)に成型充填(ブローフィルシール)した。このアンプルを高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表16の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であった。

実施例16:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−6
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、水酸化ナトリウムを適量加えてpHを8.4〜9.0に調整し、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリエチレン製)に成型充填(ブローフィルシール)することにより、以下の表17の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であった。

実施例17:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−7
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、水酸化ナトリウムを適量加えてpHを8.4〜9.0に調整し、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックプレフィルドシリンジ(環状ポリオレフィン製)に充填した。このプラスチックプレフィルドシリンジを高圧蒸気滅菌(123℃、20分間)することにより、以下の表18の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であった。

実施例18:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−8
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)、水酸化ナトリウム(1.06kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリエチレン製)に成型充填(ブローフィルシール)することにより、以下の表19の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例19:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−9
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)、水酸化ナトリウム(1.06kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックアンプル(ポリプロピレン製)に成型充填(ブローフィルシール)した。このアンプルを高圧蒸気滅菌(123℃、15分間)することにより、以下の表20の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例20:(2R)−2−プロピルオクタン酸、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する薬剤の製造−10
注射用水に、リン酸一水素二ナトリウム・12水和物(8.0kg)、水酸化ナトリウム(1.06kg)および(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0kg)を加え、注射用水を用いて100Lとした。均一な溶液とした後、無菌フィルター(デュラポア製0.22μmメンブレン)でろ過し、得られた液(1mL、4mL、8mL、および20mL)をプラスチックプレフィルドシリンジ(環状ポリオレフィン製)に充填した。このプラスチックプレフィルドシリンジを高圧蒸気滅菌(123℃、20分間)することにより、以下の表21の薬剤を製造した。各製剤の溶状は、無色透明であり、pHは8.4〜9.0の値を示した。

実施例21:ミセル形成確認試験
(1)(2R)−2−プロピルオクタン酸溶液の調製
注射用水に、(2R)−2−プロピルオクタン酸(5.0g)およびリン酸三ナトリウム・12水和物(9.18g)を加え、注射用水を用いて100mLとした。均一な溶液とした後、注射用水を用いて希釈し、(2R)−2−プロピルオクタン酸濃度が、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mLの水溶液を調製した。
(2)SudanIII溶液の調製
脂溶性色素SudanIII(約100mg)をエタノール(50mL)に加え、超音波処理を行い、さらに0.45μmメンブレンでろ過することにより、SudanIII溶液を調製した。
(3)ミセル形成の確認
ガラス製スピッツに、上記(2)で調製したSudanIII溶液(400μL)を加え、エタノールを留去した。上記(1)で調製した各種濃度の(2R)−2−プロピルオクタン酸溶液を加え、超音波処理に付し、撹拌した。その後、室温で1日放置した後、遠心分離(3000r.p.m.、15分間)を行い、上清の波長502nmでの吸光度を測定した。
その結果、20mg/mL以上の濃度では濃度依存的に吸光度が上昇し、約20mg/mL付近からミセルの形成が起こることが明らかとなった。図1に一例を示す。
実施例22:(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩の製造
(2R)−2−プロピルオクタン酸(4.647g)のエタノール(24.3mL)溶液に、0℃で、1規定水酸化ナトリウム水溶液(24.3mL)を加えた。反応混合物を、室温で2時間撹拌し、濃縮することにより、以下の物性値を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩(4.93g)を得た。
TLC:Rf 0.34(n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1);
NMR(CDOD):δ 2.26−2.08(1H,m),1.63−1.12(14H,m),0.95−0.82(6H,m);
IR(KBr):3431,2959,2930,2858,1553,1459,1415,1378,1114,725cm−1
本品を測定して得られた赤外線吸収スペクトルチャートを図2に示す。
なお、原料として用いた(2R)−2−プロピルオクタン酸の赤外線吸収スペクトルデータは以下のものであった。そのチャートを図3に示す。
IR(neat):2959,2932,2860,1708,1466,1419,1380,1290,1255,1217,1112,944cm−1
【産業上の利用可能性】
本発明の薬剤は、用時に溶解液および/または希釈液等を用いることで(2R)−2−プロピルオクタン酸注射剤を調製することが可能な、(2R)−2−プロピルオクタン酸を高濃度に含む薬剤である。本発明の薬剤は、(1)pHの変動に耐性があり、(2)注射剤の調製時に白濁することも無く、また(3)不溶性異物を生成することも無い優れた注射剤前駆体であり、医薬品としての利用が可能である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と塩基性金属イオンを含有する薬剤。
【請求項2】
液体である請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項3】
半固体である請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項4】
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンを含有する請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項5】
ミセル水分散液である請求の範囲2記載の薬剤。
【請求項6】
塩基性金属イオンの供給源として、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、および亜硫酸の金属塩から選択される少なくとも一種を含有し、さらに金属水酸化物を含有していてもよい請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項7】
塩基性金属イオンの供給源として、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、および亜硫酸水素カリウムから選択される少なくとも一種を含有し、さらに水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを含有していてもよい請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項8】
塩基性金属イオンの供給源が、(1)リン酸三ナトリウム、(2)リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、または(3)リン酸二水素一ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである請求の範囲7記載の薬剤。
【請求項9】
pHが約7.0〜約12.0である請求の範囲2記載の薬剤。
【請求項10】
pHが約8.4〜約9.0である請求の範囲9記載の薬剤。
【請求項11】
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性ナトリウムイオンを含有する薬剤であって、該塩基性ナトリウムイオンの供給源として、リン酸のナトリウム塩および炭酸のナトリウム塩から選択される少なくとも一種を含有し、さらに水酸化ナトリウムを含有していてもよく、かつpHが約8.4〜約9.0である請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項12】
(2R)−2−プロピルオクタン酸の塩がナトリウム塩または塩基性天然アミノ酸塩である請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項13】
1mLあたり、約2.5〜約100mgの(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有する請求の範囲2記載の薬剤。
【請求項14】
プラスチック容器、内表面をシリコンコーティングしたガラス容器、または内表面を二酸化ケイ素を用いて表面処理したガラス容器に充填してなる請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項15】
(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンを含有する水溶液に、(2R)−2−プロピルオクタン酸を溶解することによって得られる請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項16】
(2R)−2−プロピルオクタン酸と、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンとを用いて製造された、輸液に対する溶解性の改善された薬剤。
【請求項17】
神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療剤である請求の範囲1記載の薬剤。
【請求項18】
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と、リン酸の金属塩、炭酸の金属塩、および亜硫酸の金属塩から選択される一種または二種以上と、所望によって金属水酸化物とを水に溶解し、約2.5〜約100mg/mLの(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有するpHが約8.4〜約9.0の溶液を調製する工程;ついで該溶液をプラスチック容器または内表面を二酸化ケイ素を用いて表面処理したガラス容器に充填する工程;ついで高圧蒸気滅菌に付す工程を含むことを特徴とする(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩と塩基性金属イオンを含有する薬剤の製造方法。
【請求項19】
(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性金属イオンの供給源と溶媒である水とを用意して、塩基性金属イオンの存在下、(2R)−2−プロピルオクタン酸と水とを混合し、(2R)−2−プロピルオクタン酸を水に溶解するための塩基性金属イオンの使用方法。
【請求項20】
(2R)−2−プロピルオクタン酸の金属塩または塩基性天然アミノ酸塩。
【請求項21】
一価のアルカリ金属塩である請求の範囲20記載の塩。
【請求項22】
(2R)−2−プロピルオクタン酸・ナトリウム塩である請求の範囲21記載の塩。
【請求項23】
(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩を含有してなるpHが約7.0〜約12.0の液体の薬剤。
【請求項24】
pHが約8.4〜約9.0である請求の範囲23記載の薬剤。
【請求項25】
水性の薬剤である請求の範囲23記載の薬剤。
【請求項26】
さらに塩基性金属イオンを含有してなる請求の範囲23記載の薬剤。
【請求項27】
塩基性金属イオンの供給源がリン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムである請求の範囲26記載の薬剤。
【請求項28】
1mLあたり、約50mgの(2R)−2−プロピルオクタン酸と約80mgのリン酸一水素二ナトリウム・12水和物および水酸化ナトリウムを含有し、pHが約8.4〜約9.0である請求の範囲27記載の薬剤。
【請求項29】
請求の範囲28記載の薬剤を、4mL、8mLまたは20mL充填したプラスチック材質の容器。
【請求項30】
ポリエチレン製またはポリプロピレン製のアンプルもしくは環状ポリオレフィン製のシリンジである請求の範囲29記載の容器。
【請求項31】
請求の範囲1記載の薬剤の有効量を、哺乳動物に投与することを特徴とする、神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療方法。
【請求項32】
神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防および/または治療剤を製造するための請求の範囲1記載の薬剤の使用。
【請求項33】
(2R)−2−プロピルオクタン酸と、(2R)−2−プロピルオクタン酸1当量に対し、約1〜約5当量の塩基性ナトリウムイオンを含有する薬剤であって、該塩基性ナトリウムイオンの供給源として、リン酸一水素二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有し、かつpHが約8.4〜約9.0である薬剤。
【請求項34】
ポリエチレン製またはポリプロピレン製のアンプルもしくは環状ポリオレフィン製のシリンジに充填してなる請求の範囲33記載の薬剤。

【国際公開番号】WO2005/032536
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514507(P2005−514507)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014892
【国際出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】