(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶
【課題】 (2R)−2−プロピルオクタン酸の合成中間体である化合物とアミンとからなる結晶を提供すること。
【解決手段】
(2R)−2−プロピルオクタン酸の薬理効果を保持し、経口固形製剤の医薬品の合成中間体として使用することができる、(2S)−2−プロピニルオクタン酸または(2S)−2−プロペニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供する。かかる結晶は、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与える。
【解決手段】
(2R)−2−プロピルオクタン酸の薬理効果を保持し、経口固形製剤の医薬品の合成中間体として使用することができる、(2S)−2−プロピニルオクタン酸または(2S)−2−プロペニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供する。かかる結晶は、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の合成中間体として有用な、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の有効成分である化合物の製造において、高収率で目的化合物が得られることが望まれる。製造にかかる工程自身の収率だけでなく、途中で得られる中間体の物性も目的化合物の収率に大きく影響を及ぼす。
【0003】
例えば、化合物は油状のものよりも、結晶などの粉末状の方が秤量などにおいて取扱いが容易である。また粉末状であっても、非晶質よりも結晶の方が化学的に安定であり、精製など取扱いの面で有利である。
【0004】
一方、(2R)−2−プロピルオクタン酸は中枢神経に対して強い薬理作用を発揮する化合物であるが、この化合物には不斉炭素原子が存在することからその製造には困難があり、これまで種々の製造方法が報告されている。
【0005】
例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸の製造については、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸を接触還元反応に付すことによって得る方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
ところが、(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸はともに油状物質であり、取扱いなどの面で困難がある。(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度で得るため、その原料である(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸も高い光学純度であることが望まれる。これらの化合物が結晶であれば再結晶による精製が可能であり、再結晶を繰り返すことによってその光学純度をより高めることができる。
【0007】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、中枢神経に対して強い薬理活性を有する(2R)−プロピルオクタン酸の原料として知られている(特許文献1、3、5乃至6および非特許文献1乃至2参照)。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、同様に(2R)−2−プロピルオクタン酸の原料として知られている(特許文献1乃至4および非特許文献1乃至2参照)。
【0008】
これらの文献には(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸のフリー体が具体的に開示されているが、これらのアミン塩については(2S)−2−プロペニルオクタン酸のシクロヘキシルアミン塩が結晶として得られること(特許文献1参照)、また(2R)−2−プロピニルオクタン酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩が結晶として得られることが知られている(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、これらの化合物が他のアミンと結晶を形成するか否かについては不明であった。
【0010】
また、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は二重結合を有するため、塩基性条件や酸性条件下において二重結合の転移を生じることがある。(2S)−2−プロペニルオクタン酸の二重結合が転移した場合、還元により得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸が光学純度の低下を生ずる懸念がある。従って、高い光学純度を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を得るため、(2S)−2−プロペニルオクタン酸の二重結合の転移を起こさないように安定な結晶とすることが望まれる。
【0011】
【特許文献1】国際公開第2000/48982号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/05366号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/58513号パンフレット
【特許文献4】特開平8−291106号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/92113号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2003/51852号パンフレット
【非特許文献1】ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン 2000年、第73巻、第2号、423−428頁
【非特許文献2】シンレット 1998年、第8号、882−884頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、医薬品として用いられる(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度および化学収率で得るための合成中間体として(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することにある。
【0013】
一般に、酸と塩基から形成される塩が結晶化するか否かは、酸と塩基、さらにはその結晶化に用いる溶媒の組み合わせに左右される。すなわち、結晶化の可否は、酸そのもの、あるいは塩基そのものの性質に依存するものではないため、ある酸とある塩基の組み合わせで結晶が得られたからといって、その酸はどのような塩基と組み合わせても結晶化するというものではない。
【0014】
そこで、より取り扱いの容易な結晶とするために検討を行った結果、意外なことに、ある種のアミンを用いた場合に(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によって、中枢神経に対して強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸の合成中間体である(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することができる。
【0016】
すなわち、本発明は
[1] (2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と、アミンとからなる結晶(ただし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶および(2S)−2−プロピニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶は除く。)、
[2] (2S)−2−プロペニルオクタン酸である前項[1]記載の結晶、
[3] (2S)−2−プロピニルオクタン酸である前項[1]記載の結晶、
[4] アミンが(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミンまたはベンズヒドリルアミンである前項[2]記載の結晶、
[5] アミンが(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンまたはシクロヘキシルアミンである前項[3]記載の結晶、
[6] 粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、11.99、14.63、17.48、19.02、22.89、23.48、24.13、25.49、26.66、33.22(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶および
[7] 粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、15.87、16.77、17.87、19.78、20.36、21.19、23.41、24.19、25.05、25.69、32.01、36.11(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶に関する。
【0017】
本発明において、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とは、式(I−A)
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、
【0020】
【化2】
【0021】
はβ配置(紙面の上向き)を表わす。)で示される化合物を表わし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とは、式(I−B)
【0022】
【化3】
【0023】
で示される化合物を表わす。
【0024】
本発明において、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、実質的に純粋で単一な物質に限られず、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と式(II−A)
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、
【0027】
【化5】
【0028】
はα配置(紙面の下向き)を表わす。)で示される(2R)−2−プロピニルオクタン酸の混合物であっても、(2S)−2−プロピニルオクタン酸を優位に含むものであれば、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と称する。
【0029】
同様に、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、実質的に純粋で単一な物質に限られず、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と式(II−B)
【0030】
【化6】
【0031】
で示される(2R)−2−プロペニルオクタン酸の混合物であっても、(2S)−2−プロペニルオクタン酸を優位に含むものであれば、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と称する。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸および(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、例えば、製造工程に由来する副生成物、溶媒、原料等または分解物等の不純物を含んでいてもよい。
【0032】
本発明における「アミン」としては、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンであれば、どのようなアミンでもよく、例えば、以下のアミンが好適に用いられる。
【0033】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸と結晶を形成するアミンは以下の通りである。
【0034】
光学的に活性なアミン、すなわちキラルアミンとして好ましくは、例えば、(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン等である。
【0035】
光学的に不活性なアミン、すなわちアキラルアミンとして好ましくは、例えば、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミン等である。
【0036】
(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンとして好ましくは、例えば、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンおよびシクロヘキシルアミンである。
【0037】
これらのアミンのうち、特に好ましいものとしては、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R)−1−フェニルエチルアミンとの結晶および(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶である。
【0038】
また、本発明におけるアミンとしては、例えば、米国食品医薬品局(FDA)等で認可された医薬品において有効成分と塩を形成しているような、低毒性のアミン等も挙げられる。
【0039】
本発明における好ましいアミンとしては、例えば、上記以外にも(2S)−プロペニルオクタン酸または(2S)−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンはすべて本発明に含まれる。
[本発明の結晶の製造方法]
本発明の、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶(以下、本発明の結晶と略記する。)は、以下に記載した方法、これらに準ずる方法または実施例に記載した方法によって製造することができる。本発明の結晶は、CAS# 213914-70-6として知られる(2S)−2−プロペニルオクタン酸またはCAS# 185463-37-0として知られる(2S)−2−プロピニルオクタン酸を、水および/または有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、メチル t−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、2−ブタノン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、炭酸ジエチル等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等、またはこれらの任意の割合の混合物等)に溶解し、さらに約0.5〜約1.1当量の前記アミンを加えたこの混合物を、約40〜約100℃で約5〜約60分間撹拌し、約−20〜約20℃に冷却後、そのまま約5〜約60分間撹拌または静置することによって析出させることができる。析出した結晶は、ろ取し、前記有機溶媒で洗浄後、乾燥することによって、目的とする本発明の結晶を単離することができる。
【0040】
また、(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸は油状であるため、それに前記のアミンを無溶媒下で混合し、前記と同様の処理に付すことによっても目的とする本発明の結晶を得ることができる。
【0041】
なお、本発明の結晶の製造に用いる原料としての(2S)−2−プロピニルオクタン酸および(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、公知の物質であるため、公知の方法、例えば、WO2000/48982号、WO2005/05366号、WO99/58513号、特開平8-291106号、WO2004/92113号、WO2003/51852号、ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン 2000年、第73巻、第2号、423-428頁、シンレット 1998年、第8号、882-884頁等に記載の方法等に従って製造することができる。
【0042】
また、本発明の結晶をさらに必要に応じて再結晶に付すことによって、その光学純度を高めることができる。
【0043】
不斉炭素原子を有する医薬品の開発において、光学純度の高い化合物(原薬)を得ることは非常に重要であり、安全な医薬品を提供するためには光学純度が限りなく100%に近いことが求められている。従って、光学純度を高める方法、およびその方法に用いる中間体を見出すことは、医薬品開発において重要な課題である。
【0044】
本発明において、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、N−(2S)−(2−プロペニル)オクタノイル)−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムを用いてWO2000/48982号明細書の参考例1→参考例2記載の方法によって製造することができる。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、2−(2−プロピニル)オクタン酸メチルを用いて特開平8-291106号明細書の参考例4に記載の方法によって製造することができる。
[医薬品への適用]
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は、中枢神経において強い活性を有し、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト動物、例えば、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等)において、例えば、神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防、治療および/または症状進展抑制に有用である。
【0045】
ここで、神経変性疾患とは、神経細胞の変性を伴う疾患をすべて包含し、その病因によって限定されるものではない。本発明における神経変性疾患には、神経障害や、神経再生を要する疾患も含まれる。神経細胞は、生体内の如何なる神経細胞であってもよく、例えば、中枢神経(例えば、脳神経、脊髄神経等)、末梢神経(例えば、自律神経系(例えば、交感神経、副交感神経等)等)等の細胞であってもよい。神経変性疾患として好ましくは、例えば、中枢神経の疾患であり、例えば、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、皮質基底核変性症、家族性痴呆症、前頭側頭型痴呆症、老年性痴呆、びまん性レビー小体病、線条体−黒質変性症、舞踏病−無定位運動症、ジストニア、メージ症候群、晩発性小脳皮質萎縮症、家族性痙性対麻痺、運動神経病、マッカードジョセフ病、ピック病、脳卒中(例えば、脳出血(例えば、高血圧性脳内出血等)、脳梗塞(例えば、脳血栓、脳塞栓等)、一過性虚血発作、クモ膜下出血等)後の神経機能障害、脳脊髄外傷後の神経機能障害、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、急性小脳炎、横断性脊髄炎等)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫等)、感染症に伴う脳脊髄疾患(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、クロイツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆等)、精神疾患(統合失調症、躁うつ病、神経症、心身症、てんかん等)等が挙げられる。神経変性疾患としてより好ましくは、例えば、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症等である。
【0046】
神経障害は、神経機能の障害をすべて包含する。すなわち、神経障害には、一般に疾患時の症状として認識されるものも包含される。例えば、パーキンソン病やパーキンソン症候群においては、例えば、振戦、筋強剛(固縮)、動作緩慢、姿勢反射障害、自律神経障害、突進現象、歩行障害、精神症状等が含まれ、例えば、アルツハイマー病においては、例えば、痴呆症状等が含まれ、例えば、筋萎縮性側索硬化症や家族性筋萎縮性側索硬化症においては、筋萎縮、筋力低下、上肢機能障害、歩行障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害等も含まれる。
【0047】
神経再生を要する疾患とは、神経細胞の欠落により神経細胞の絶対数が減少し、正常な神経機能が損なわれる疾患を意味し、例えば、上記の神経変性疾患でそのような状態に至ったものが挙げられる。このような疾患には、正常な神経を形成しうる細胞(例えば、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞、その他の幹細胞、グリア細胞等)を外科的に移植するか、または内在性のこれらの細胞を活性化し、神経を再生させる治療が行われる。本発明の結晶は、上記の細胞を移植する際に、または内在性細胞を活性化させる際に、一時的または継続的に投与することにより神経再生を促進させることができる。
【0048】
また、本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸は、神経再生促進剤やS100β産生抑制剤としても有用である。本発明の結晶は、前記の疾患の予防、治療および/または症状進展抑制等を目的として、製剤化を行った後で、生体内に投与される。なお、本発明において、「予防」とは疾患の成立そのものを予防することを、「治療」とは病態を治癒の方向へ導くことを、「症状進展抑制」とは病態の悪化を抑制し進行をとどめることを意味する。
【0049】
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンからなる結晶、およびこれらの化合物を原料として製造される(2R)−2−プロピルオクタン酸、またはそれらと他の薬剤との併用剤を含有してなる医薬組成物を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0050】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンからなる結晶、およびこれらの化合物を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸、またはそれらと他の薬剤との併用剤を含有してなる医薬組成物を投与する際には、例えば経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0051】
経口投与のための内服用固形剤には、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。カプセル剤には、例えばハードカプセルおよびソフトカプセル等が挙げられる。
【0052】
このような内服用固形剤においては、例えばひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0053】
経口投与のための内服用液剤には、例えば薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含まれる。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0054】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により調製される。
【0055】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に混和、または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0056】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0057】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(例えば、2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0058】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(例えば、尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0059】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0060】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(例えば、エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0061】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第 2,868,691号および同第3,095,355 号に詳しく記載されている。
【0062】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0063】
非経口投与のための点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。
【0064】
これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。点眼剤の溶剤としては、例えば滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油等)等およびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性化剤(例えば、ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(例えば、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)等などを必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0065】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤または吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0066】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。
【0067】
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(例えば、カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0068】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(例えば、デンプン、デキストリン等)、賦形剤(例えば、乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0069】
吸入用液剤を投与する際には、通常噴霧器(例えば、アトマイザー、ネブライザー等)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には、通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0070】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および膣内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0071】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1mgから5000mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、1mgから1200mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0072】
勿論前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【0073】
また、本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶、およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸は、前記の疾患に対して予防、治療および/または症状進展抑制効果を有する。前記のいかなる製剤も好ましいが、(2R)−2−プロピルオクタン酸は油状であるため、注射剤とするか、ソフトカプセル剤に充填する等の、液体であるという特性を活用した製剤化をすることがより好ましい。例えば、ソフトカプセル剤とした場合の投与量は、前記と同様の範囲で構わない。特に約50〜約5000mg、とりわけ約100〜約1200mgの1日投与量が好ましい。また、注射剤とした場合の投与量も、症状の程度;投与対象の年齢、性別、体重;投与の時期、間隔等によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば、前記と同様の範囲であってもよいし、また、例えば、脳梗塞をはじめとする神経変性疾患治療剤として静脈内に点滴投与する場合、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2〜約12mgが好ましい。より好ましい投与量としては、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg等が挙げられる。特に好ましくは、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、約6mg、約8mg、または約10mgであり、特に、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、または約8mgが好適である。
【0074】
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶、およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸を有効成分として含有する薬剤は、他の薬剤、例えば、抗てんかん薬(例えば、フェノバルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、プリミドン、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、エトスクシミド、アセチルフェネトライド、カルバマゼピン、アセタゾラミド、ジアゼパム、バルプロ酸ナトリウム等)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、塩酸ドネペジル、TAK−147、リバスチグミン、ガランタミン等)、神経栄養因子(例えば、ABS−205等)、アルドース還元酵素阻害薬、抗血栓薬(例えば、t−PA、ヘパリン等)、経口抗凝固薬(例えば、ワーファリン等)、合成抗トロンビン薬(例えば、メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット、アルガトロバン等)、抗血小板薬(例えば、アスピリン、ジピリダモール、塩酸チクロピン、ベラプロストナトリウム、シロスタゾール、オザグレルナトリウム等)、血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、アルテプラーゼ等)、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、脳循環代謝改善薬(例えば、イデベノン、ホパンテン酸カルシウム、塩酸アマンタジン、塩酸メクロフェノキサート、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸ピリチオキシン、γ−アミノ酪酸、塩酸ビフェメラン、マレイン酸リスリド、塩酸インデロキサジン、ニセルゴリン、プロペントフィリン等)、抗酸化薬(例えば、エダラボン等)、グリセリン製剤(例えば、グリセオール等)、βセクレターゼ阻害薬(例えば、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジメチルアミノ)メチルテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)メチルテトラリン、2−(N,N−ジメチルアミノ)メチル−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]テトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メチルビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(3’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、その光学活性体、その塩およびその水和物、OM99-2(WO01/00663)等)、βアミロイド蛋白凝集阻害作用薬(例えば、PTI-00703、ALZHEMED(NC-531)、PPI-368(特表平11-514333)、PPI-558(特表2001-500852)、SKF-74652(Biochem. J., 340(1)巻, 283〜289頁, 1999年)等)、脳機能賦活薬(例えば、アニラセタム、ニセルゴリン等)、ドーパミン受容体作動薬(例えば、L−ドーパ、ブロモクリプテン、パーゴライド、タリペキソール、プラシペキソール、カベルゴリン、アマンタジン等)、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(例えば、サフラジン、デプレニル、セルジリン(セレギリン)、レマセミド(remacemide)、リルゾール(riluzole)等)、抗コリン薬(例えば、トリヘキシフェニジル、ビペリデン等)、COMT阻害薬(例えば、エンタカポン等)、筋萎縮性側索硬化症治療薬(例えば、リルゾール等、神経栄養因子等)、高脂血症治療薬(例えば、スタチン系高脂血症治療薬(例えば、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチン等)、フィブラート系高脂血症治療薬(例えば、クロフィブラート等)等)、アポトーシス阻害薬(例えば、CPI-1189、IDN-6556、CEP-1347等)、神経分化・再生促進薬(例えば、レテプリニム(leteprinim)、キサリプローデン(xaliproden;SR-57746-A)、SB-216763等)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、メロキシカム、テオキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン等)、ステロイド薬(例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾン等)、性ホルモンまたはその誘導体(例えば、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール等)等を併用してもよい。また、ニコチン受容体調節薬、γセクレターゼ阻害作用薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素、スクワレン合成酵素阻害薬、痴呆の進行に伴う異常行動や徘徊等の治療薬、降圧薬、糖尿病治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬(例えば、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬等)、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム受容体拮抗薬等を併用してもよい。
【0075】
以上の併用薬剤は例示であって、これらに限定されるものではない。
【0076】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。また、併用する薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
[薬理活性]
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は(2R)−2−プロピルオクタン酸を製造するための合成中間体として有用であるが、これらの化合物自身も同様に薬理活性を有することは、公知の方法、例えば、欧州特許第0632008号明細書、欧州特許公開第1174131号明細書等に記載の方法によって確認することができる。
[毒性]
本発明の結晶の毒性は非常に低く、医薬または医薬の中間体として使用するために十分安全であると判断できる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によって、(2R)−2−プロピルオクタン酸の合成中間体である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することができる。
【0078】
また本発明によって、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与えることができる。なお、本発明により、(2S)−2−プロペニルオクタン酸における二重結合の転移を防ぐことができる。
【0079】
本発明のさらなる効果として例えば、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を用いて、公知の方法(例えばWO2000/48982号明細書の参考例1に記載の方法)に従って(2S)−2−プロペニルオクタン酸とすることができ、得られた(2S)−2−プロペニルオクタン酸を用いて、例えば、WO99/58513号明細書の実施例4、WO2000/48982号明細書の実施例1に記載の方法に従って(2R)−プロピルオクタン酸を製造することができる。
【0080】
また例えば、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を用いて、公知の方法(例えばWO2000/48982号明細書の参考例1に記載の方法)に従って(2S)−2−プロピニルオクタン酸とすることができ、得られた(2S)−2−プロピニルオクタン酸を用いて、例えば、WO99/58513号明細書の実施例8(a)および8(b)、WO2000/48982号明細書の実施例2に記載の方法に従って(2R)−プロピルオクタン酸を製造することができる。
【0081】
本発明により、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は安定であることから光学純度を高めることができ、その結果、より光学純度の高い(2R)−プロピルオクタン酸を得ることができる。
【0082】
また、本発明が提供する(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶は毒性が低く、経口固形製剤の医薬品原薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
実施例1 (2S)−2−プロペニルオクタン酸と各種アミンとの結晶の生成検討
(2S)−2−プロペニルオクタン酸の種々のアミン塩を調製し、結晶化の可否について検討した。結果を以下に示す。
【0084】
実験方法:(2S)−2−プロペニルオクタン酸と各種アミンの混合物を溶媒に加熱溶解後、室温まで冷却して静置した。固体が析出した場合は得られた固体をろ取し、乾燥後粉末X線回折スペクトル、1H-NMRスペクトルおよび赤外吸収(IR)スペクトルを測定し、その性状を評価した。
[結晶の物性データ]
(2S)−2−プロペニルオクタン酸と有機アミンとの塩のモル比((2S)−2−プロペニルオクタン酸:アミンの比率)、性状、融点、1H-NMRスペクトルデータ、粉末X線回折スペクトルデータ、赤外吸収(IR)スペクトルデータを以下に示し、また粉末X線回折スペクトルチャートおよび赤外吸収(IR)スペクトルチャートを後記の図面に示す。なお、測定条件は以下の通りである。
[1]粉末X線回折スペクトル
<測定条件>
装置:BRUKER axs製BRUKER D8 DISCOVER with GADD (C2)、
ターゲット:Cu、フィルター:なし、電圧:40kV、電流:40mA、露光時間:5分。
[2]赤外吸収(IR)スペクトル
<測定条件>
装置:日本分光製FTIR-660Plus/SensIR TECHNOLOGIES製DuraScope、
測定方法:ATR法で測定、分解能:4cm-1、スキャン回数:16回。
実施例1(1):ジベンジルアミン
モル比=2:1;性状:結晶;融点:73.2-74.8℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.26 (m, 10H), 7.15-6.70 (brs, 3H), 5.81-5.71 (m, 2H), 5.09-5.00 (m, 4H), 3.86(s, 4H), 2.44-2.32(m, 4H), 2.29-2.18 (m, 2H), 1.70-1.55 (m, 2H), 1.52-1.41 (m, 2H), 1.35-1.20 (m, 16H), 0.88 (t, J=6.2 Hz, 6H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0085】
【表1】
【0086】
IR (TR):2959, 2921, 2851, 1640, 1497, 1456, 1416, 1378, 1315, 1209, 1043, 990, 912, 760, 743, 725, 694, 587, 547, 498, 486, 445, 423, 412, 402cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)/水、イソプロパノール、アセトン、ジメトキシエタン。
実施例1(2):(1R)−(+)−1−フェニルエチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:56.7〜58.8℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.37-7.22 (m, 5H), 5.83-5.73 (m, 1H), 5.09-5.00 (m, 2H), 4.76-4.20(brs, 3H), 4.16 (q, J=6.8Hz, 1H), 2.47-2.31(m, 2H), 2.28-2.17 (m, 1H), 1.67-1.54(m, 1H), 1.50-1.40 (m, 4H), 1.35-1.18 (m, 8H), 0.87 (t, J=6.6Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0087】
【表2】
【0088】
IR (TR):2925, 2855, 2204, 1698, 1636, 1523, 1456, 1397, 1315, 1291, 1233, 1117, 1091, 992, 907, 851, 762, 726, 697, 641, 591, 540, 488, 443 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、n−ヘキサン、イソプロパノール/水、アセトン、ジメトキシエタン、ジグリム/水。
実施例1(3):(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:70.9-72.9℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.23 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.14 (q, J=8.0Hz, 2H), 5.82-5.72 (m, 1H), 5.38-4.90 (brs, 3H), 5.07-4.98 (m, 2H), 4.16-4.12 (m, 1H), 2.40-2.30 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 2.24-2.10 (m, 1H), 1.65-1.50 (m, 1H), 1.47-1.19 (m, 13H), 0.87 (t, J=7.0Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0089】
【表3】
【0090】
IR (TR):2925, 2856, 2696, 2216, 1623, 1520, 1456, 1439, 1402, 1383, 1316, 1262, 1232, 1090, 1021, 993, 911, 814, 763, 722, 697, 625, 560, 536, 473, 444 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(4):(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール
モル比=1:1;性状:結晶;融点:66.0-67.5℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.40-7.25 (m, 5H), 7.00-6.65 (brs, 3H), 5.80-5.72 (m, 1H), 5.17-4.93 (m, 2H), 4.04-3.90 (m, 3H), 3.67 (dd, J = 2.8, 11.2 Hz, 1H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.38-2.27 (m, 2H), 2.23-2.10 (m, 2H), 1.92-1.81 (m, 1H), 1.75-1.19 (m, 17H), 0.87 (t, J = 7.0 Hz, 3H);
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0091】
【表4】
【0092】
IR(TR):2924, 2853, 1624, 1525, 1496, 1456, 1389, 1340, 1059, 1037, 910, 748, 695, 630, 508, 492, 436 cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(5):(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール
モル比=1:1;性状:結晶;融点:71.0-72.2℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.36-7.26 (m, 5H), 5.82-5.76 (m, 1H), 5.07-4.97 (m, 2H), 4.03-3.89 (m, 4H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.40-2.28 (m, 2H), 2.25-2.15 (m, 1H), 2.15-2.08 (br.s, 1H), 1.92-1.80 (m, 1H), 1.66-1.32 (m, 4H), 1.29-1.20 (m, 15H), 0.87 (t, J=6.8 Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0093】
【表5】
【0094】
IR(TR):2925, 2853, 1622, 1524, 1449, 1397, 1315, 1217, 1059, 1039, 912, 813, 751, 697, 620, 560, 509, 493, 436 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(6):(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール
モル比=1:1;性状:アモルファス;融点:117.8-118.5℃;
IR (TR):2924, 2854, 1749, 1558, 1508, 1455, 1396, 1318, 1201, 1050, 1033, 993, 906, 783, 767, 742, 696, 568, 503, 421, 411 cm-1;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.30-7.18 (m, 10H), 5.82-5.72 (m, 1H), 5.08 (d, J=17.2 Hz, 1H), 5.03 (d, J=10.0 Hz, 1H), 4.83 (d, J=5.2 Hz, 1H), 4.19 (d, J=6.0 Hz, 1H), 2.45-2.20 (m, 3H), 1.64-1.42 (m, 2H), 1.35-1.21 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.4 Hz, 3H)。
溶媒:アセトニトリル、イソプロパノール、ジグリム、アセトン。
実施例1(7):(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール
モル比=1:1;性状:アモルファス;融点:119.8-120.6℃
IR (TR):2924, 1749, 1716, 1542, 1456, 1395, 1315, 1202, 1119, 1049, 1032, 995, 906, 783, 768, 695, 570, 502, 457, 445, 421, 411 cm-1;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.29-7.20 (m, 10H), 5.83-5.73 (m, 1H), 5.11-5.02 (m, 2H), 4.82 (d, J=5.6 Hz, 1H), 4.19 (d, J=6.0 Hz, 1H), 2.46-2.20 (m, 3H), 1.66 -1.45 (m, 2H), 1.35-1.21 (m, 8H), 0.88 (t, J=7.0 Hz, 3H)。
溶媒:アセトニトリル、イソプロパノール、アセトン。
実施例1(8):(+)−デヒドロアビエチルアミン
モル比=3:2;性状:結晶;融点:115.8-118.0℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.20-7.13 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.05-6.95 (d, J=8.0Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 5.83-5.70 (m, 1.5H), 5.10-4.93 (m, 3H), 3.00-2.78 (m, 3H), 2.67-2.18 (m, 7.5H), 2.00-1.15 (m, 28H), 1.08-0.75 (m, 11.5H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0095】
【表6】
【0096】
IR (TR):2925, 2850, 2194, 1749, 1636, 1542, 1457, 1436, 1393, 1318, 1208, 1144, 1057, 995, 906, 883, 850, 822, 726, 681, 630, 596, 520, 434, 421, 411 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(9):(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
モル比:1:1;性状:結晶;融点:63.0-64.2℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 8.13 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.90-7.86 (m, 1H), 7.76 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.63 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.56-7.46 (m, 3H), 5.84-5.72 (m, 1H), 5.12-5.08 (m, 3H), 3.90-3.50 (brs, 3H), 2.45-2.32 (m, 2H), 2.30-2.20 (m, 1H), 1.70-1.42 (m, 2H), 1.58 (d, J=6.4 Hz, 3H), 1.40-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J = 6.8Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0097】
【表7】
【0098】
IR (TR):2923, 2853, 2203, 1636, 1570, 1509, 1469, 1431, 1389, 1332, 1272, 1110, 995, 905, 860, 800, 774, 737, 684, 636, 613, 566, 532, 499, 464, 438, 409 cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(10):ベンズヒドリルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:81.5-83.0℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.20 (m, 10H), 5.83-5.71 (m, 1H), 5.23 (s, 1H), 5.11-5.01 (m, 2H), 3.80-3.20 (brs, 3H), 2.44-2.30 (m, 2H), 2.28-2.20 (m, 1H), 1.68-1.40 (m, 2H), 1.18-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.8 Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0099】
【表8】
【0100】
IR(TR):2921, 2851, 2617, 2181, 1618, 1573, 1508, 1497, 1457, 1445, 1396, 1319, 1031, 996, 906, 809, 756, 735, 693, 640, 542, 458, 431, 409cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(11):1,2−ジフェニルエチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:62.2-63.2℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.14 (m, 10H), 5.83-5.73(m, 1H), 5.10-5.02 (m, 2H), 4.21(dd, J=5.2, 8.8Hz, 1H), 3.35-3.09 (brs, 3H), 3.02 (dd, J=5.2, 13.6 Hz, 1H), 2.87 (dd, J=8.8, 13.6Hz, 1H), 2.48-2.34 (m, 2H), 2.28-2.21 (m, 1H), 1.70-1.58 (m, 1H), 1.56-1.43 (m, 1H), 1.38-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.8Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0101】
【表9】
【0102】
IR (TR):2926, 2851, 2173, 1626, 1560, 1496, 1456, 1396, 1309, 1234, 1074, 1022, 993, 908, 851, 774, 758, 741, 725, 695, 615, 583, 548, 499, 435cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
【0103】
一方、(2S)−2−プロペニルオクタン酸との組合せにより結晶を形成しなかったアミンは以下の通りである。
【0104】
(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(S)−(−)−2−アミノ−3−フェニル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−アミノ−3−フェニル−1−プロパノール、L−(+)−アルギニン、L−チロシンアミド、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、t−ブチルアミン、4−アミノピリジン、イミダゾール、N−ベンジルエタノールアミン、4−メトキシベンジルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、フルフリルアミン、トランス−4−アミノシクロヘキサノール。
実施例2 (2S)−2−プロピニルオクタン酸と各種アミンとの結晶の生成検討
実施例1に示す方法と同様にして、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と各種アミンが結晶を生成するかについて検討を行った。
【0105】
その結果、(2S)−2−プロピニルオクタン酸が結晶を形成するアミンは、以下の通りである。カッコ内は再結晶化溶媒を表わす。
【0106】
(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール(酢酸エチル、トルエン)、 (R)−1−フェニルエチルアミン(ヘキサン)、L−アルギニン(イソプロパノール、n−ヘキサン)、(S)−1−フェニルエチルアミン(ヘキサン、イソプロパノール)、(1R,2S)−(−)−ノルエフェドリン(ヘキサン)。
【0107】
一方、(2S)−2−プロピニルオクタン酸との組合せにより結晶を形成しなかったアミンは以下の通りである。
【0108】
(S)−(−)−1−メチル−2−ピロリジンメタノール、(−)−スレオ−2−アミノ−(p−ニトロフェニル)−1,3−プロパンジオール、(1S,2S)−(+)−2−アミノフェニル−1,3−プロパンジオール、デヒドロアビエチルアミン、(S)−(−)−ニコチン、(−)−スパルテイン、D−グルカミン、(1S,2S)−メチルシュードエフェドリン。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明により、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与える。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図2】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図3】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−フェニルエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図4】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−フェニルエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図5】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図6】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図7】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図8】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図9】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図10】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図11】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(−)−フェニルグリシノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図12】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(−)−フェニルグリシノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図13】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図14】(2R)−2−プロペニルオクタン酸と(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図15】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図16】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図17】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−デヒドロアビエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図18】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−デヒドロアビエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図19】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(+)−2−フェニルグリシノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図20】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(+)−2−フェニルグリシノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図21】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図22】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図23】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とベンズヒドリルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図24】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とベンズヒドリルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図25】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と1,2−ジフェニルエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図26】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と1,2−ジフェニルエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の合成中間体として有用な、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の有効成分である化合物の製造において、高収率で目的化合物が得られることが望まれる。製造にかかる工程自身の収率だけでなく、途中で得られる中間体の物性も目的化合物の収率に大きく影響を及ぼす。
【0003】
例えば、化合物は油状のものよりも、結晶などの粉末状の方が秤量などにおいて取扱いが容易である。また粉末状であっても、非晶質よりも結晶の方が化学的に安定であり、精製など取扱いの面で有利である。
【0004】
一方、(2R)−2−プロピルオクタン酸は中枢神経に対して強い薬理作用を発揮する化合物であるが、この化合物には不斉炭素原子が存在することからその製造には困難があり、これまで種々の製造方法が報告されている。
【0005】
例えば、(2R)−2−プロピルオクタン酸の製造については、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸を接触還元反応に付すことによって得る方法が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
ところが、(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸はともに油状物質であり、取扱いなどの面で困難がある。(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度で得るため、その原料である(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸も高い光学純度であることが望まれる。これらの化合物が結晶であれば再結晶による精製が可能であり、再結晶を繰り返すことによってその光学純度をより高めることができる。
【0007】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、中枢神経に対して強い薬理活性を有する(2R)−プロピルオクタン酸の原料として知られている(特許文献1、3、5乃至6および非特許文献1乃至2参照)。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、同様に(2R)−2−プロピルオクタン酸の原料として知られている(特許文献1乃至4および非特許文献1乃至2参照)。
【0008】
これらの文献には(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸のフリー体が具体的に開示されているが、これらのアミン塩については(2S)−2−プロペニルオクタン酸のシクロヘキシルアミン塩が結晶として得られること(特許文献1参照)、また(2R)−2−プロピニルオクタン酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩が結晶として得られることが知られている(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、これらの化合物が他のアミンと結晶を形成するか否かについては不明であった。
【0010】
また、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は二重結合を有するため、塩基性条件や酸性条件下において二重結合の転移を生じることがある。(2S)−2−プロペニルオクタン酸の二重結合が転移した場合、還元により得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸が光学純度の低下を生ずる懸念がある。従って、高い光学純度を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を得るため、(2S)−2−プロペニルオクタン酸の二重結合の転移を起こさないように安定な結晶とすることが望まれる。
【0011】
【特許文献1】国際公開第2000/48982号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/05366号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/58513号パンフレット
【特許文献4】特開平8−291106号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/92113号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2003/51852号パンフレット
【非特許文献1】ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン 2000年、第73巻、第2号、423−428頁
【非特許文献2】シンレット 1998年、第8号、882−884頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、医薬品として用いられる(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度および化学収率で得るための合成中間体として(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することにある。
【0013】
一般に、酸と塩基から形成される塩が結晶化するか否かは、酸と塩基、さらにはその結晶化に用いる溶媒の組み合わせに左右される。すなわち、結晶化の可否は、酸そのもの、あるいは塩基そのものの性質に依存するものではないため、ある酸とある塩基の組み合わせで結晶が得られたからといって、その酸はどのような塩基と組み合わせても結晶化するというものではない。
【0014】
そこで、より取り扱いの容易な結晶とするために検討を行った結果、意外なことに、ある種のアミンを用いた場合に(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によって、中枢神経に対して強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸の合成中間体である(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することができる。
【0016】
すなわち、本発明は
[1] (2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と、アミンとからなる結晶(ただし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶および(2S)−2−プロピニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶は除く。)、
[2] (2S)−2−プロペニルオクタン酸である前項[1]記載の結晶、
[3] (2S)−2−プロピニルオクタン酸である前項[1]記載の結晶、
[4] アミンが(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミンまたはベンズヒドリルアミンである前項[2]記載の結晶、
[5] アミンが(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンまたはシクロヘキシルアミンである前項[3]記載の結晶、
[6] 粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、11.99、14.63、17.48、19.02、22.89、23.48、24.13、25.49、26.66、33.22(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶および
[7] 粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、15.87、16.77、17.87、19.78、20.36、21.19、23.41、24.19、25.05、25.69、32.01、36.11(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶に関する。
【0017】
本発明において、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とは、式(I−A)
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、
【0020】
【化2】
【0021】
はβ配置(紙面の上向き)を表わす。)で示される化合物を表わし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とは、式(I−B)
【0022】
【化3】
【0023】
で示される化合物を表わす。
【0024】
本発明において、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、実質的に純粋で単一な物質に限られず、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と式(II−A)
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、
【0027】
【化5】
【0028】
はα配置(紙面の下向き)を表わす。)で示される(2R)−2−プロピニルオクタン酸の混合物であっても、(2S)−2−プロピニルオクタン酸を優位に含むものであれば、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と称する。
【0029】
同様に、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、実質的に純粋で単一な物質に限られず、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と式(II−B)
【0030】
【化6】
【0031】
で示される(2R)−2−プロペニルオクタン酸の混合物であっても、(2S)−2−プロペニルオクタン酸を優位に含むものであれば、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と称する。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸および(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、例えば、製造工程に由来する副生成物、溶媒、原料等または分解物等の不純物を含んでいてもよい。
【0032】
本発明における「アミン」としては、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンであれば、どのようなアミンでもよく、例えば、以下のアミンが好適に用いられる。
【0033】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸と結晶を形成するアミンは以下の通りである。
【0034】
光学的に活性なアミン、すなわちキラルアミンとして好ましくは、例えば、(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン等である。
【0035】
光学的に不活性なアミン、すなわちアキラルアミンとして好ましくは、例えば、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミン等である。
【0036】
(2S)−2−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンとして好ましくは、例えば、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンおよびシクロヘキシルアミンである。
【0037】
これらのアミンのうち、特に好ましいものとしては、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R)−1−フェニルエチルアミンとの結晶および(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶である。
【0038】
また、本発明におけるアミンとしては、例えば、米国食品医薬品局(FDA)等で認可された医薬品において有効成分と塩を形成しているような、低毒性のアミン等も挙げられる。
【0039】
本発明における好ましいアミンとしては、例えば、上記以外にも(2S)−プロペニルオクタン酸または(2S)−プロピニルオクタン酸と結晶を形成するアミンはすべて本発明に含まれる。
[本発明の結晶の製造方法]
本発明の、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶(以下、本発明の結晶と略記する。)は、以下に記載した方法、これらに準ずる方法または実施例に記載した方法によって製造することができる。本発明の結晶は、CAS# 213914-70-6として知られる(2S)−2−プロペニルオクタン酸またはCAS# 185463-37-0として知られる(2S)−2−プロピニルオクタン酸を、水および/または有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、メチル t−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、2−ブタノン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、炭酸ジエチル等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等、またはこれらの任意の割合の混合物等)に溶解し、さらに約0.5〜約1.1当量の前記アミンを加えたこの混合物を、約40〜約100℃で約5〜約60分間撹拌し、約−20〜約20℃に冷却後、そのまま約5〜約60分間撹拌または静置することによって析出させることができる。析出した結晶は、ろ取し、前記有機溶媒で洗浄後、乾燥することによって、目的とする本発明の結晶を単離することができる。
【0040】
また、(2S)−2−プロペニルオクタン酸および(2S)−2−プロピニルオクタン酸は油状であるため、それに前記のアミンを無溶媒下で混合し、前記と同様の処理に付すことによっても目的とする本発明の結晶を得ることができる。
【0041】
なお、本発明の結晶の製造に用いる原料としての(2S)−2−プロピニルオクタン酸および(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、公知の物質であるため、公知の方法、例えば、WO2000/48982号、WO2005/05366号、WO99/58513号、特開平8-291106号、WO2004/92113号、WO2003/51852号、ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン 2000年、第73巻、第2号、423-428頁、シンレット 1998年、第8号、882-884頁等に記載の方法等に従って製造することができる。
【0042】
また、本発明の結晶をさらに必要に応じて再結晶に付すことによって、その光学純度を高めることができる。
【0043】
不斉炭素原子を有する医薬品の開発において、光学純度の高い化合物(原薬)を得ることは非常に重要であり、安全な医薬品を提供するためには光学純度が限りなく100%に近いことが求められている。従って、光学純度を高める方法、およびその方法に用いる中間体を見出すことは、医薬品開発において重要な課題である。
【0044】
本発明において、(2S)−2−プロペニルオクタン酸は、N−(2S)−(2−プロペニル)オクタノイル)−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムを用いてWO2000/48982号明細書の参考例1→参考例2記載の方法によって製造することができる。また、(2S)−2−プロピニルオクタン酸は、2−(2−プロピニル)オクタン酸メチルを用いて特開平8-291106号明細書の参考例4に記載の方法によって製造することができる。
[医薬品への適用]
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は、中枢神経において強い活性を有し、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト動物、例えば、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等)において、例えば、神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患の予防、治療および/または症状進展抑制に有用である。
【0045】
ここで、神経変性疾患とは、神経細胞の変性を伴う疾患をすべて包含し、その病因によって限定されるものではない。本発明における神経変性疾患には、神経障害や、神経再生を要する疾患も含まれる。神経細胞は、生体内の如何なる神経細胞であってもよく、例えば、中枢神経(例えば、脳神経、脊髄神経等)、末梢神経(例えば、自律神経系(例えば、交感神経、副交感神経等)等)等の細胞であってもよい。神経変性疾患として好ましくは、例えば、中枢神経の疾患であり、例えば、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、皮質基底核変性症、家族性痴呆症、前頭側頭型痴呆症、老年性痴呆、びまん性レビー小体病、線条体−黒質変性症、舞踏病−無定位運動症、ジストニア、メージ症候群、晩発性小脳皮質萎縮症、家族性痙性対麻痺、運動神経病、マッカードジョセフ病、ピック病、脳卒中(例えば、脳出血(例えば、高血圧性脳内出血等)、脳梗塞(例えば、脳血栓、脳塞栓等)、一過性虚血発作、クモ膜下出血等)後の神経機能障害、脳脊髄外傷後の神経機能障害、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、急性小脳炎、横断性脊髄炎等)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫等)、感染症に伴う脳脊髄疾患(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、クロイツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆等)、精神疾患(統合失調症、躁うつ病、神経症、心身症、てんかん等)等が挙げられる。神経変性疾患としてより好ましくは、例えば、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症等である。
【0046】
神経障害は、神経機能の障害をすべて包含する。すなわち、神経障害には、一般に疾患時の症状として認識されるものも包含される。例えば、パーキンソン病やパーキンソン症候群においては、例えば、振戦、筋強剛(固縮)、動作緩慢、姿勢反射障害、自律神経障害、突進現象、歩行障害、精神症状等が含まれ、例えば、アルツハイマー病においては、例えば、痴呆症状等が含まれ、例えば、筋萎縮性側索硬化症や家族性筋萎縮性側索硬化症においては、筋萎縮、筋力低下、上肢機能障害、歩行障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害等も含まれる。
【0047】
神経再生を要する疾患とは、神経細胞の欠落により神経細胞の絶対数が減少し、正常な神経機能が損なわれる疾患を意味し、例えば、上記の神経変性疾患でそのような状態に至ったものが挙げられる。このような疾患には、正常な神経を形成しうる細胞(例えば、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞、その他の幹細胞、グリア細胞等)を外科的に移植するか、または内在性のこれらの細胞を活性化し、神経を再生させる治療が行われる。本発明の結晶は、上記の細胞を移植する際に、または内在性細胞を活性化させる際に、一時的または継続的に投与することにより神経再生を促進させることができる。
【0048】
また、本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸は、神経再生促進剤やS100β産生抑制剤としても有用である。本発明の結晶は、前記の疾患の予防、治療および/または症状進展抑制等を目的として、製剤化を行った後で、生体内に投与される。なお、本発明において、「予防」とは疾患の成立そのものを予防することを、「治療」とは病態を治癒の方向へ導くことを、「症状進展抑制」とは病態の悪化を抑制し進行をとどめることを意味する。
【0049】
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンからなる結晶、およびこれらの化合物を原料として製造される(2R)−2−プロピルオクタン酸、またはそれらと他の薬剤との併用剤を含有してなる医薬組成物を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0050】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンからなる結晶、およびこれらの化合物を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸、またはそれらと他の薬剤との併用剤を含有してなる医薬組成物を投与する際には、例えば経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0051】
経口投与のための内服用固形剤には、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。カプセル剤には、例えばハードカプセルおよびソフトカプセル等が挙げられる。
【0052】
このような内服用固形剤においては、例えばひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0053】
経口投与のための内服用液剤には、例えば薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含まれる。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0054】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により調製される。
【0055】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に混和、または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0056】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0057】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(例えば、2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0058】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(例えば、尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0059】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0060】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(例えば、エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0061】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第 2,868,691号および同第3,095,355 号に詳しく記載されている。
【0062】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0063】
非経口投与のための点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。
【0064】
これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。点眼剤の溶剤としては、例えば滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油等)等およびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性化剤(例えば、ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(例えば、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)等などを必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0065】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤または吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0066】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。
【0067】
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(例えば、カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0068】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(例えば、デンプン、デキストリン等)、賦形剤(例えば、乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0069】
吸入用液剤を投与する際には、通常噴霧器(例えば、アトマイザー、ネブライザー等)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には、通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0070】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および膣内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0071】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1mgから5000mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、1mgから1200mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0072】
勿論前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【0073】
また、本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶、およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸は、前記の疾患に対して予防、治療および/または症状進展抑制効果を有する。前記のいかなる製剤も好ましいが、(2R)−2−プロピルオクタン酸は油状であるため、注射剤とするか、ソフトカプセル剤に充填する等の、液体であるという特性を活用した製剤化をすることがより好ましい。例えば、ソフトカプセル剤とした場合の投与量は、前記と同様の範囲で構わない。特に約50〜約5000mg、とりわけ約100〜約1200mgの1日投与量が好ましい。また、注射剤とした場合の投与量も、症状の程度;投与対象の年齢、性別、体重;投与の時期、間隔等によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば、前記と同様の範囲であってもよいし、また、例えば、脳梗塞をはじめとする神経変性疾患治療剤として静脈内に点滴投与する場合、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2〜約12mgが好ましい。より好ましい投与量としては、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg等が挙げられる。特に好ましくは、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、約6mg、約8mg、または約10mgであり、特に、1日用量として、患者の体重1kgあたり、約4mg、または約8mgが好適である。
【0074】
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶、およびかかる結晶を用いて得られる(2R)−2−プロピルオクタン酸を有効成分として含有する薬剤は、他の薬剤、例えば、抗てんかん薬(例えば、フェノバルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、プリミドン、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、エトスクシミド、アセチルフェネトライド、カルバマゼピン、アセタゾラミド、ジアゼパム、バルプロ酸ナトリウム等)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、塩酸ドネペジル、TAK−147、リバスチグミン、ガランタミン等)、神経栄養因子(例えば、ABS−205等)、アルドース還元酵素阻害薬、抗血栓薬(例えば、t−PA、ヘパリン等)、経口抗凝固薬(例えば、ワーファリン等)、合成抗トロンビン薬(例えば、メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット、アルガトロバン等)、抗血小板薬(例えば、アスピリン、ジピリダモール、塩酸チクロピン、ベラプロストナトリウム、シロスタゾール、オザグレルナトリウム等)、血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、アルテプラーゼ等)、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、脳循環代謝改善薬(例えば、イデベノン、ホパンテン酸カルシウム、塩酸アマンタジン、塩酸メクロフェノキサート、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸ピリチオキシン、γ−アミノ酪酸、塩酸ビフェメラン、マレイン酸リスリド、塩酸インデロキサジン、ニセルゴリン、プロペントフィリン等)、抗酸化薬(例えば、エダラボン等)、グリセリン製剤(例えば、グリセオール等)、βセクレターゼ阻害薬(例えば、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジメチルアミノ)メチルテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)メチルテトラリン、2−(N,N−ジメチルアミノ)メチル−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]テトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メチルビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(3’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、その光学活性体、その塩およびその水和物、OM99-2(WO01/00663)等)、βアミロイド蛋白凝集阻害作用薬(例えば、PTI-00703、ALZHEMED(NC-531)、PPI-368(特表平11-514333)、PPI-558(特表2001-500852)、SKF-74652(Biochem. J., 340(1)巻, 283〜289頁, 1999年)等)、脳機能賦活薬(例えば、アニラセタム、ニセルゴリン等)、ドーパミン受容体作動薬(例えば、L−ドーパ、ブロモクリプテン、パーゴライド、タリペキソール、プラシペキソール、カベルゴリン、アマンタジン等)、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(例えば、サフラジン、デプレニル、セルジリン(セレギリン)、レマセミド(remacemide)、リルゾール(riluzole)等)、抗コリン薬(例えば、トリヘキシフェニジル、ビペリデン等)、COMT阻害薬(例えば、エンタカポン等)、筋萎縮性側索硬化症治療薬(例えば、リルゾール等、神経栄養因子等)、高脂血症治療薬(例えば、スタチン系高脂血症治療薬(例えば、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチン等)、フィブラート系高脂血症治療薬(例えば、クロフィブラート等)等)、アポトーシス阻害薬(例えば、CPI-1189、IDN-6556、CEP-1347等)、神経分化・再生促進薬(例えば、レテプリニム(leteprinim)、キサリプローデン(xaliproden;SR-57746-A)、SB-216763等)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、メロキシカム、テオキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン等)、ステロイド薬(例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾン等)、性ホルモンまたはその誘導体(例えば、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール等)等を併用してもよい。また、ニコチン受容体調節薬、γセクレターゼ阻害作用薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素、スクワレン合成酵素阻害薬、痴呆の進行に伴う異常行動や徘徊等の治療薬、降圧薬、糖尿病治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬(例えば、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬等)、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム受容体拮抗薬等を併用してもよい。
【0075】
以上の併用薬剤は例示であって、これらに限定されるものではない。
【0076】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。また、併用する薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
[薬理活性]
本発明の(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は(2R)−2−プロピルオクタン酸を製造するための合成中間体として有用であるが、これらの化合物自身も同様に薬理活性を有することは、公知の方法、例えば、欧州特許第0632008号明細書、欧州特許公開第1174131号明細書等に記載の方法によって確認することができる。
[毒性]
本発明の結晶の毒性は非常に低く、医薬または医薬の中間体として使用するために十分安全であると判断できる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によって、(2R)−2−プロピルオクタン酸の合成中間体である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を提供することができる。
【0078】
また本発明によって、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−2−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与えることができる。なお、本発明により、(2S)−2−プロペニルオクタン酸における二重結合の転移を防ぐことができる。
【0079】
本発明のさらなる効果として例えば、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を用いて、公知の方法(例えばWO2000/48982号明細書の参考例1に記載の方法)に従って(2S)−2−プロペニルオクタン酸とすることができ、得られた(2S)−2−プロペニルオクタン酸を用いて、例えば、WO99/58513号明細書の実施例4、WO2000/48982号明細書の実施例1に記載の方法に従って(2R)−プロピルオクタン酸を製造することができる。
【0080】
また例えば、(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶を用いて、公知の方法(例えばWO2000/48982号明細書の参考例1に記載の方法)に従って(2S)−2−プロピニルオクタン酸とすることができ、得られた(2S)−2−プロピニルオクタン酸を用いて、例えば、WO99/58513号明細書の実施例8(a)および8(b)、WO2000/48982号明細書の実施例2に記載の方法に従って(2R)−プロピルオクタン酸を製造することができる。
【0081】
本発明により、(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとの結晶は安定であることから光学純度を高めることができ、その結果、より光学純度の高い(2R)−プロピルオクタン酸を得ることができる。
【0082】
また、本発明が提供する(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸とアミンとからなる結晶は毒性が低く、経口固形製剤の医薬品原薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
実施例1 (2S)−2−プロペニルオクタン酸と各種アミンとの結晶の生成検討
(2S)−2−プロペニルオクタン酸の種々のアミン塩を調製し、結晶化の可否について検討した。結果を以下に示す。
【0084】
実験方法:(2S)−2−プロペニルオクタン酸と各種アミンの混合物を溶媒に加熱溶解後、室温まで冷却して静置した。固体が析出した場合は得られた固体をろ取し、乾燥後粉末X線回折スペクトル、1H-NMRスペクトルおよび赤外吸収(IR)スペクトルを測定し、その性状を評価した。
[結晶の物性データ]
(2S)−2−プロペニルオクタン酸と有機アミンとの塩のモル比((2S)−2−プロペニルオクタン酸:アミンの比率)、性状、融点、1H-NMRスペクトルデータ、粉末X線回折スペクトルデータ、赤外吸収(IR)スペクトルデータを以下に示し、また粉末X線回折スペクトルチャートおよび赤外吸収(IR)スペクトルチャートを後記の図面に示す。なお、測定条件は以下の通りである。
[1]粉末X線回折スペクトル
<測定条件>
装置:BRUKER axs製BRUKER D8 DISCOVER with GADD (C2)、
ターゲット:Cu、フィルター:なし、電圧:40kV、電流:40mA、露光時間:5分。
[2]赤外吸収(IR)スペクトル
<測定条件>
装置:日本分光製FTIR-660Plus/SensIR TECHNOLOGIES製DuraScope、
測定方法:ATR法で測定、分解能:4cm-1、スキャン回数:16回。
実施例1(1):ジベンジルアミン
モル比=2:1;性状:結晶;融点:73.2-74.8℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.26 (m, 10H), 7.15-6.70 (brs, 3H), 5.81-5.71 (m, 2H), 5.09-5.00 (m, 4H), 3.86(s, 4H), 2.44-2.32(m, 4H), 2.29-2.18 (m, 2H), 1.70-1.55 (m, 2H), 1.52-1.41 (m, 2H), 1.35-1.20 (m, 16H), 0.88 (t, J=6.2 Hz, 6H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0085】
【表1】
【0086】
IR (TR):2959, 2921, 2851, 1640, 1497, 1456, 1416, 1378, 1315, 1209, 1043, 990, 912, 760, 743, 725, 694, 587, 547, 498, 486, 445, 423, 412, 402cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)/水、イソプロパノール、アセトン、ジメトキシエタン。
実施例1(2):(1R)−(+)−1−フェニルエチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:56.7〜58.8℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.37-7.22 (m, 5H), 5.83-5.73 (m, 1H), 5.09-5.00 (m, 2H), 4.76-4.20(brs, 3H), 4.16 (q, J=6.8Hz, 1H), 2.47-2.31(m, 2H), 2.28-2.17 (m, 1H), 1.67-1.54(m, 1H), 1.50-1.40 (m, 4H), 1.35-1.18 (m, 8H), 0.87 (t, J=6.6Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0087】
【表2】
【0088】
IR (TR):2925, 2855, 2204, 1698, 1636, 1523, 1456, 1397, 1315, 1291, 1233, 1117, 1091, 992, 907, 851, 762, 726, 697, 641, 591, 540, 488, 443 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、n−ヘキサン、イソプロパノール/水、アセトン、ジメトキシエタン、ジグリム/水。
実施例1(3):(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:70.9-72.9℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.23 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.14 (q, J=8.0Hz, 2H), 5.82-5.72 (m, 1H), 5.38-4.90 (brs, 3H), 5.07-4.98 (m, 2H), 4.16-4.12 (m, 1H), 2.40-2.30 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 2.24-2.10 (m, 1H), 1.65-1.50 (m, 1H), 1.47-1.19 (m, 13H), 0.87 (t, J=7.0Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0089】
【表3】
【0090】
IR (TR):2925, 2856, 2696, 2216, 1623, 1520, 1456, 1439, 1402, 1383, 1316, 1262, 1232, 1090, 1021, 993, 911, 814, 763, 722, 697, 625, 560, 536, 473, 444 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(4):(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール
モル比=1:1;性状:結晶;融点:66.0-67.5℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.40-7.25 (m, 5H), 7.00-6.65 (brs, 3H), 5.80-5.72 (m, 1H), 5.17-4.93 (m, 2H), 4.04-3.90 (m, 3H), 3.67 (dd, J = 2.8, 11.2 Hz, 1H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.38-2.27 (m, 2H), 2.23-2.10 (m, 2H), 1.92-1.81 (m, 1H), 1.75-1.19 (m, 17H), 0.87 (t, J = 7.0 Hz, 3H);
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0091】
【表4】
【0092】
IR(TR):2924, 2853, 1624, 1525, 1496, 1456, 1389, 1340, 1059, 1037, 910, 748, 695, 630, 508, 492, 436 cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(5):(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール
モル比=1:1;性状:結晶;融点:71.0-72.2℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.36-7.26 (m, 5H), 5.82-5.76 (m, 1H), 5.07-4.97 (m, 2H), 4.03-3.89 (m, 4H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.40-2.28 (m, 2H), 2.25-2.15 (m, 1H), 2.15-2.08 (br.s, 1H), 1.92-1.80 (m, 1H), 1.66-1.32 (m, 4H), 1.29-1.20 (m, 15H), 0.87 (t, J=6.8 Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0093】
【表5】
【0094】
IR(TR):2925, 2853, 1622, 1524, 1449, 1397, 1315, 1217, 1059, 1039, 912, 813, 751, 697, 620, 560, 509, 493, 436 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(6):(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール
モル比=1:1;性状:アモルファス;融点:117.8-118.5℃;
IR (TR):2924, 2854, 1749, 1558, 1508, 1455, 1396, 1318, 1201, 1050, 1033, 993, 906, 783, 767, 742, 696, 568, 503, 421, 411 cm-1;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.30-7.18 (m, 10H), 5.82-5.72 (m, 1H), 5.08 (d, J=17.2 Hz, 1H), 5.03 (d, J=10.0 Hz, 1H), 4.83 (d, J=5.2 Hz, 1H), 4.19 (d, J=6.0 Hz, 1H), 2.45-2.20 (m, 3H), 1.64-1.42 (m, 2H), 1.35-1.21 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.4 Hz, 3H)。
溶媒:アセトニトリル、イソプロパノール、ジグリム、アセトン。
実施例1(7):(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール
モル比=1:1;性状:アモルファス;融点:119.8-120.6℃
IR (TR):2924, 1749, 1716, 1542, 1456, 1395, 1315, 1202, 1119, 1049, 1032, 995, 906, 783, 768, 695, 570, 502, 457, 445, 421, 411 cm-1;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.29-7.20 (m, 10H), 5.83-5.73 (m, 1H), 5.11-5.02 (m, 2H), 4.82 (d, J=5.6 Hz, 1H), 4.19 (d, J=6.0 Hz, 1H), 2.46-2.20 (m, 3H), 1.66 -1.45 (m, 2H), 1.35-1.21 (m, 8H), 0.88 (t, J=7.0 Hz, 3H)。
溶媒:アセトニトリル、イソプロパノール、アセトン。
実施例1(8):(+)−デヒドロアビエチルアミン
モル比=3:2;性状:結晶;融点:115.8-118.0℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 7.20-7.13 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.05-6.95 (d, J=8.0Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 5.83-5.70 (m, 1.5H), 5.10-4.93 (m, 3H), 3.00-2.78 (m, 3H), 2.67-2.18 (m, 7.5H), 2.00-1.15 (m, 28H), 1.08-0.75 (m, 11.5H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0095】
【表6】
【0096】
IR (TR):2925, 2850, 2194, 1749, 1636, 1542, 1457, 1436, 1393, 1318, 1208, 1144, 1057, 995, 906, 883, 850, 822, 726, 681, 630, 596, 520, 434, 421, 411 cm-1;
溶媒:アセトニトリル、ジグリム。
実施例1(9):(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
モル比:1:1;性状:結晶;融点:63.0-64.2℃;
1H-NMR (CDCl3):δ 8.13 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.90-7.86 (m, 1H), 7.76 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.63 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.56-7.46 (m, 3H), 5.84-5.72 (m, 1H), 5.12-5.08 (m, 3H), 3.90-3.50 (brs, 3H), 2.45-2.32 (m, 2H), 2.30-2.20 (m, 1H), 1.70-1.42 (m, 2H), 1.58 (d, J=6.4 Hz, 3H), 1.40-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J = 6.8Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0097】
【表7】
【0098】
IR (TR):2923, 2853, 2203, 1636, 1570, 1509, 1469, 1431, 1389, 1332, 1272, 1110, 995, 905, 860, 800, 774, 737, 684, 636, 613, 566, 532, 499, 464, 438, 409 cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(10):ベンズヒドリルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:81.5-83.0℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.20 (m, 10H), 5.83-5.71 (m, 1H), 5.23 (s, 1H), 5.11-5.01 (m, 2H), 3.80-3.20 (brs, 3H), 2.44-2.30 (m, 2H), 2.28-2.20 (m, 1H), 1.68-1.40 (m, 2H), 1.18-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.8 Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0099】
【表8】
【0100】
IR(TR):2921, 2851, 2617, 2181, 1618, 1573, 1508, 1497, 1457, 1445, 1396, 1319, 1031, 996, 906, 809, 756, 735, 693, 640, 542, 458, 431, 409cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
実施例1(11):1,2−ジフェニルエチルアミン
モル比=1:1;性状:結晶;融点:62.2-63.2℃
1H-NMR (CDCl3):δ 7.36-7.14 (m, 10H), 5.83-5.73(m, 1H), 5.10-5.02 (m, 2H), 4.21(dd, J=5.2, 8.8Hz, 1H), 3.35-3.09 (brs, 3H), 3.02 (dd, J=5.2, 13.6 Hz, 1H), 2.87 (dd, J=8.8, 13.6Hz, 1H), 2.48-2.34 (m, 2H), 2.28-2.21 (m, 1H), 1.70-1.58 (m, 1H), 1.56-1.43 (m, 1H), 1.38-1.20 (m, 8H), 0.88 (t, J=6.8Hz, 3H)。
粉末X線回折スペクトルデータ:
【0101】
【表9】
【0102】
IR (TR):2926, 2851, 2173, 1626, 1560, 1496, 1456, 1396, 1309, 1234, 1074, 1022, 993, 908, 851, 774, 758, 741, 725, 695, 615, 583, 548, 499, 435cm-1;
溶媒:アセトニトリル。
【0103】
一方、(2S)−2−プロペニルオクタン酸との組合せにより結晶を形成しなかったアミンは以下の通りである。
【0104】
(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(S)−(−)−2−アミノ−3−フェニル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−アミノ−3−フェニル−1−プロパノール、L−(+)−アルギニン、L−チロシンアミド、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、t−ブチルアミン、4−アミノピリジン、イミダゾール、N−ベンジルエタノールアミン、4−メトキシベンジルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、フルフリルアミン、トランス−4−アミノシクロヘキサノール。
実施例2 (2S)−2−プロピニルオクタン酸と各種アミンとの結晶の生成検討
実施例1に示す方法と同様にして、(2S)−2−プロピニルオクタン酸と各種アミンが結晶を生成するかについて検討を行った。
【0105】
その結果、(2S)−2−プロピニルオクタン酸が結晶を形成するアミンは、以下の通りである。カッコ内は再結晶化溶媒を表わす。
【0106】
(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール(酢酸エチル、トルエン)、 (R)−1−フェニルエチルアミン(ヘキサン)、L−アルギニン(イソプロパノール、n−ヘキサン)、(S)−1−フェニルエチルアミン(ヘキサン、イソプロパノール)、(1R,2S)−(−)−ノルエフェドリン(ヘキサン)。
【0107】
一方、(2S)−2−プロピニルオクタン酸との組合せにより結晶を形成しなかったアミンは以下の通りである。
【0108】
(S)−(−)−1−メチル−2−ピロリジンメタノール、(−)−スレオ−2−アミノ−(p−ニトロフェニル)−1,3−プロパンジオール、(1S,2S)−(+)−2−アミノフェニル−1,3−プロパンジオール、デヒドロアビエチルアミン、(S)−(−)−ニコチン、(−)−スパルテイン、D−グルカミン、(1S,2S)−メチルシュードエフェドリン。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明により、取り扱いに優れ、強い薬理活性を有する(2R)−プロピルオクタン酸を高い光学純度かつ化学収率で与える。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図2】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図3】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−フェニルエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図4】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−フェニルエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図5】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図6】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図7】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図8】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図9】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図10】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図11】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(−)−フェニルグリシノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図12】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(−)−フェニルグリシノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図13】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図14】(2R)−2−プロペニルオクタン酸と(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図15】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図16】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(1R,2S)−(−)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールとからなるアモルファスの赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図17】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−デヒドロアビエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図18】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(+)−デヒドロアビエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図19】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(+)−2−フェニルグリシノールとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図20】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(+)−2−フェニルグリシノールとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図21】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図22】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図23】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とベンズヒドリルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図24】(2S)−2−プロペニルオクタン酸とベンズヒドリルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【図25】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と1,2−ジフェニルエチルアミンとからなる結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを示す。
【図26】(2S)−2−プロペニルオクタン酸と1,2−ジフェニルエチルアミンとからなる結晶の赤外吸収(IR)スペクトルチャートを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と、アミンとからなる結晶(ただし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶および(2S)−2−プロピニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶は除く。)。
【請求項2】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸である請求項1記載の結晶。
【請求項3】
(2S)−2−プロピニルオクタン酸である請求項1記載の結晶。
【請求項4】
アミンが(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミンまたはベンズヒドリルアミンである請求項2記載の結晶。
【請求項5】
アミンが(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンまたはシクロヘキシルアミンである請求項3記載の結晶。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、11.99、14.63、17.48、19.02、22.89、23.48、24.13、25.49、26.66、33.22(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶。
【請求項7】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、15.87、16.77、17.87、19.78、20.36、21.19、23.41、24.19、25.05、25.69、32.01、36.11(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶。
【請求項1】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸または(2S)−2−プロピニルオクタン酸と、アミンとからなる結晶(ただし、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とシクロヘキシルアミンとの結晶および(2S)−2−プロピニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶は除く。)。
【請求項2】
(2S)−2−プロペニルオクタン酸である請求項1記載の結晶。
【請求項3】
(2S)−2−プロピニルオクタン酸である請求項1記載の結晶。
【請求項4】
アミンが(+)−デヒドロアビエチルアミン、(R)−(+)−1−(p−トリル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(1−ナフチル)エチルアミン、(+)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(−)−シス−2−ベンジルアミノシクロヘキサンメタノール、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミンまたはベンズヒドリルアミンである請求項2記載の結晶。
【請求項5】
アミンが(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(1S,2R)−(+)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、L−アルギニン、ジベンジルアミン、1,2−ジフェニルエチルアミン、ベンズヒドリルアミンまたはシクロヘキシルアミンである請求項3記載の結晶。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、11.99、14.63、17.48、19.02、22.89、23.48、24.13、25.49、26.66、33.22(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとの結晶。
【請求項7】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θが、15.87、16.77、17.87、19.78、20.36、21.19、23.41、24.19、25.05、25.69、32.01、36.11(度)である、(2S)−2−プロペニルオクタン酸とジベンジルアミンとの結晶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−39413(P2007−39413A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227847(P2005−227847)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】
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