説明

(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態

本発明は、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(式I参照)の結晶形態に関する。本発明は、更に、このような結晶形態を含有する医薬組成物、及び該医薬組成物や結晶形態を様々な疾患(特に肝線維症)の治療に用いる方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態に関する。本発明は、更に、このような結晶形態を含有する医薬組成物、及び該医薬組成物や結晶形態を様々な疾患(特に肝線維症)の治療に用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸は、(3S)−3[(2S)−2−({N−[2−(tert−ブチル)フェニル]カルバモイル}カルボニルアミノ)プロパノイルアミノ]−4−オキソ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)ペンタン酸としても知られ、式(I)で表される構造を有する。該化合物及びその調製法については、共に特許文献1に開示されている(実施例75参照)。開示された多段階プロセスでは、トリフルオロ酢酸を用いて対応するtert−ブチルエステルを脱保護することにより、上記化合物を遊離させる。シリカクロマトグラフィーによって化合物を無色ガラスとして単離する。
【0003】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開WO−A−00/01666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある化合物を用いて薬品を開発する際には、高い信頼性で大規模に調製・精製でき、且つ保管中に劣化しないような、化合物の形態(通常、薬品成分として知られる)を見出すことが重要である。従って、結晶形態(好ましくは高融点の形態)の化合物が望ましい。高融点結晶性固体は再結晶で容易に精製でき、保管中に安定な傾向があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態を初めて提供する。幾つかの具体的な多形体を、その調製方法と共に述べる。
【0007】
本発明は、更に、式(I)の化合物の結晶形態と薬学的に許容される賦形剤とを含有する医薬組成物;薬剤として用いられる式(I)の化合物の結晶形態;肝線維症の治療に用いられる式(I)の化合物の結晶形態;肝線維症の治療薬の製造に式(I)の化合物の結晶形態を用いる方法;哺乳動物の肝線維症を治療する方法であって、治療を要する哺乳動物に、式(I)の化合物の結晶形態を有効量投与する方法;並びに式(I)の化合物の結晶形態と他の薬理活性化合物との組み合わせを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい態様において、本発明は式(I)の化合物の多様な具体的多形体形態を提供する。これら形態はそれぞれ特有の三次元結晶構造を有し、とりわけ結晶格子の電磁放射回折(粉末X線回折、赤外分光法、ラマン分光法等)、溶解特性(示差走査熱量測定等)、及び固体NMR分析によって特徴付けられる。便宜上、これら形態にはそれぞれローマ数字を割り当てるが、それら記号は技術的に特に重要なものではない。
【0010】
形態Iを示差走査熱量測定(DSC)により分析すると、溶解によって156℃(±2℃)に鋭い吸熱ピークを示す。観測したDSCサーモグラムを図1に再現する。形態Iを粉末X線回折(PXRD)により分析すると、2θ角7.7、14.1、21.4、26.6、及び29.4度(±0.1度)に固有のピークを示す。観測したPXRDパターンを図2に再現する。また、全ピークの一覧を下記表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
形態Iを、固相アダマンチン外部試料を29.5ppmの基準として用いた固相13C−NMRにより分析すると、135.6、127.5、及び18.8ppmに固有の化学シフトを示す。観測した13C−NMRスペクトルを図3に再現する(アスタリスクを付したピークはスピニングサイドバンドを示す)。また、全ピークの一覧を下記表2に示す。強度値はピーク高さの指標であり、データ収集中の実験パラメータや試料の熱履歴に応じて変化し得る。従って、これらは定量的に有意な値ではない。
【0013】
【表2】

【0014】
形態Iを、トリフルオロ酢酸外部試料(50%体積/体積、水中)を−76.54ppmの基準として用いた固相19F−NMRにより分析すると、−141.9ppmに固有の化学シフトを示す。観測した19F−NMRスペクトルを図4に再現する(スペクトルのセンターバンド部分のみを示す)。全ピークの一覧は、−138.4、−139.1、−139.4(肩)、−140.9、−141.9、−151.8、−152.9、−154.2、−154.7(肩)、−156.1、及び−156.5(肩)ppmである。
【0015】
形態IをFT赤外分光法により分析すると、波数3354(弱)、3243(中)、3089(弱)、2962(弱)、1741(中)、1718(中)、1668(中)、1646(強)、1517(強)、1497(強)、1419(弱)、1394(中)、1335(弱)、1320(弱)、1280(中)、1260(弱)、1212(中)、1179(中)、1174(弱)、1127(中)、1111(強)、1089(弱)、1032(弱)、1011(中)、973(中)、941(強)、926(弱)、897(弱)、885(中)、829(中)、759(強)、735(中)、715(中)、687(弱)、及び653(中)cm−1に特徴的なピークを示す(誤差限界が非常に大きくなり得る3243のピークを除き、±2cm−1)。強度の分類(弱、中、強)は、スペクトル中の主要ピークとの比較によるものである。スペクトルを図5に再現する。
【0016】
形態IをFTラマン分光法により分析すると、波数3356(弱)、3262(中)、3086(中)、2959(強)、2939(強)、1742(中)、1695(やや強)、1647(弱)、1601(弱)、1541(中)、1451(弱)、1399(弱)、1336(中)、1271(やや強)、1135(弱)、1054(中)、1031(弱)、977(中)、930(弱)、888(中)、859(弱)、817(弱)、716(中)、688(中)、568(中)、479(中)、439(弱)、398(中)、340(弱)、223(弱)cm−1に特徴的なピークを示す(2959、1541、1451、1271、1135、1054、1031、977、930、888、859、716、688、568、479、439、398、及び223のピークは誤差限界±5cm−1、その他は±2cm−1)。強度の分類(弱、中、やや強、強)は、スペクトル中の主要ピークとの比較によるものである。スペクトルを図6に再現する。
【0017】
形態IIをDSCにより分析すると、157℃(±2℃)に鋭い吸熱ピークを示す(図7参照)。形態IIをPXRDにより分析すると、2θ角14.5、17.3、22.5、25.0、及び26.8度(±0.1度)に固有の回折ピークを示す(図8参照)。ピークの一覧を下記表3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
形態IIを、固相アダマンチン外部試料を29.5ppmの基準として用いた固相13C−NMRにより分析すると、136.2、131.6、126.1、30.4、及び17.7ppmに固有の化学シフトを示す。観測した13C−NMRスペクトルを図9に再現する(アスタリスクを付したピークはスピニングサイドバンドを示す)。また、全ピークの一覧を下記表4に示す。強度値はピーク高さの指標であり、データ収集中の実験パラメータや試料の熱履歴に応じて変化し得る。従って、これらは定量的に有意な値ではない。
【0020】
【表4】

【0021】
形態IIを、トリフルオロ酢酸外部試料(50%体積/体積、水中)を−76.54ppmの基準として用いた固相19F−NMRにより分析すると、−142.2及び−153.4ppmに固有の化学シフトを示す。観測した19F−NMRスペクトルを図10に再現する(スペクトルのセンターバンド部分のみを示す)。全ピークの一覧は、−138.4、−139.2、−140.9、−142.2、−151.8、−153.0、−153.4、−154.4、−154.9(肩)、−156.2、及び−156.7(肩)ppmである。
【0022】
形態IIをFT赤外分光法により分析すると、波数3355(弱)、3244(中)、3089(弱)、2962(弱)、1741(中)、1719(中)、1669(中)、1646(強)、1517(強)、1498(強)、1394(中)、1334(弱)、1320(弱)、1279(中)、1260(弱)、1211(中)、1180(中)、1174(弱)、1127(中)、1112(強)、1089(弱)、1031(弱)、1011(中)、973(中)、941(強)、926(弱)、896(弱)、885(中)、829(中)、759(強)、734(中)、715(中)、687(弱)、及び653(中)cm−1に特徴的なピークを示す(誤差限界が非常に大きくなり得る3244のピークを除き、±2cm−1)。強度の分類(弱、中、強)は、スペクトル中の主要ピークとの比較によるものである。スペクトルを図11に再現する。
【0023】
形態IIをFTラマン分光法により分析すると、波数3356(弱)、3262(中)、3087(中)、2960(強)、2938(強)、1743(中)、1696(やや強)、1647(弱)、1602(弱)、1541(中)、1451(弱)、1400(弱)、1336(中)、1272(やや強)、1136(弱)、1056(中)、1032(弱)、979(中)、930(弱)、888(中)、861(弱)、818(中)、718(中)、689(中)、570(中)、480(中)、441(弱)、400(中)、340(弱)、223(弱)cm−1に特徴的なピークを示す(2960、1541、1451、1272、1136、1056、1032、979、930、888、861、718、689、570、480、441、400、及び223のピークは誤差限界±5cm−1、その他は±2cm−1)。強度の分類(弱、中、やや強、強)は、スペクトル中の主要ピークとの比較によるものである。スペクトルを図12に再現する。
【0024】
形態IIIをDSCにより分析すると、82℃(±2℃)にブロードの吸熱ピークを示し、該吸熱ピークは66℃(±2℃)にピーク肩を有する(図13参照)。形態IIIをPXRDにより分析すると、2θ角7.2度(±0.1度)に固有の回折ピークを示す(図14参照)。ピークの一覧を下記表5に示す。
【0025】
【表5】

【0026】
上述したDSCデータを収集する実験では、パーキンエルマー社のパイリス・ダイヤモンドDSC(Pyris Diamond DSC)を用いて、1分あたり20℃の速度で、形態I及びIIIの試料は25℃から240℃に加熱し、形態IIの試料は25℃から200℃に加熱した。加熱は穴と蓋を備えた50マイクロリットルのアルミニウム皿内で、窒素パージガス下で行った。
【0027】
上述したPXRDデータを収集する実験では、キャピラリー台、θ−θゴニオメーター、CuKα主モノクロメーター、及びブラウン(Braun)社の位置感応検出器を取り付けたブルカー・エイエックスエス社製粉末X線回折装置D8アドバンス(D8 Advance powder X-ray diffractometer)を用いて、形態Iの粉末X線回折パターンを決定した。試料を1.0mm石英キャピラリーに設置し、X線管を40kV/40mAで作動し、CuKαのX線(波長=1.5406Å)を照射しながら回転させた。ゴニオメーターを、2°〜40°の2θ範囲で、0.007°あたり6秒カウントに設定した連続モードで駆動し、分析を行った。
【0028】
形態IIの粉末X線回折パターンは、自動試料交換器、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、及びPSDバンテック−1検出器(PSD Vantec-1 detector)を取り付けたブルカー・エイエックスエス社製D4粉末X線回折装置(D4 powder X-ray diffractometer)を用いて決定した。中空シリコンウエハ試料台に充填して分析用試料を準備した。X線管を40kV/30mAで作動し、CuKαのX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、試料を回転させた。ゴニオメーターを、2°〜40°の2θ範囲で、0.018°あたり0.6秒カウントに設定した連続モードで駆動し、分析を行った。
【0029】
形態IIIの粉末X線回折パターンは、自動試料交換器、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、及びPSDバンテック−1検出器(PSD Vantec-1 detector)を取り付けたブルカー・エイエックスエス社製D4粉末X線回折装置(D4 powder X-ray diffractometer)を用いて決定した。低バックグラウンドシリコンウエハ試料台に載置して分析用試料を準備した。X線管を40kV/40mAで作動し、CuKαのX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、試料を回転させた。ゴニオメーターを、2°〜40°の2θ範囲で、0.018°あたり0.2秒カウントに設定した連続モードで駆動し、分析を行った。シリコン標準を用いて得られたピークを揃えた。
【0030】
当業者には明らかなように、表1、3、及び5中の様々なピークの相対強度は、例えばX線中での結晶の配向効果、分析する材料の純度、又は試料の結晶化度のような多くの要因に応じて変化し得る。ピーク位置も試料の高さの違いにより変化し得るが、実質的には表1、3、及び5で規定された位置に保持される。また、異なる波長で測定するとブラッグ式(nλ=2d・sinθ)に応じて異なるシフトが得られることも、当業者には明らかであると考えられる。このように異なる波長を用いて得られた代替PXRDパターンも、本発明の結晶性材料のPXRDパターンとして使用できる。
【0031】
上述した固体NMRデータを収集するために、約80mgの各試料を4mmのZrOスピナーにきつく詰めた。ブルカー・バイオスピン社製500MHz広口径NMR分光計アバンスDSX(wide-bore Bruker-Biospin Avance DSX 500 MHz NMR spectrometer)を用い、ブルカー・バイオスピン社製4mm BL HFX CPMASプローブ(Bruker-Biospin 4 mm BL HFX CPMAS probe)上で、周囲条件でスペクトルを得た。試料をマジック角で配置し、15.0kHzで回転させた。回転速度を高くし、スピニングサイドバンドの強度を最小化した。走査数は適当な信号対ノイズ比が得られるように調整した。
【0032】
固体19Fスペクトルは、プロトンデカップルマジック角回転(MAS)実験によって収集した。200ppmの分光幅でスペクトルを得た。各19F−MASスペクトルは、約80kHzのプロトンデカップリング場を印加し、64スキャンを収集した。定量的なスペクトルを得るために、リサイクル遅延を400秒とした。トリフルオロ酢酸外部試料(50%体積/体積、水中)の共鳴を−76.54ppmとし、これを基準にスペクトルを得た。
【0033】
固体13Cスペクトルは、プロトンデカップル交差分極マジック角回転(CPMAS)実験によって収集した。ハートマン・ハーン接触時間は2msに設定した。約85kHzのプロトンデカップリング場を印加し、8192スキャンを収集した。リサイクル遅延は3秒に調整した。結晶性アダマンタン外部標準の高磁場共鳴を29.5ppmとし、これを基準にスペクトルを得た。
【0034】
上述したFT赤外スペクトルは、単反射ATRアクセサリー「ゴールデンゲート(商標)」(Golden
Gate single reflection ATR accessory、ダイヤモンド上板及びセレン化亜鉛レンズ)並びにDTGS・KBr検出器を備えた、サーモ・ニコレー社製FTIR分光計アバタール(ThermoNicolet Avatar FTIR spectrometer)を用いて得た。256共添加スキャンして2cm−1の分解能でスペクトルを得た。ハップ・ゲンゼル(Happ-Genzel)アポダイゼーション法を用いた。単反射ATRを用いてFT−IRスペクトルを記録したため、試料を調製する必要は無かった。ATR−FT−IRを用いると、KBrディスク又はヌジョール・マル(nujol mull)試料を用いるFT−IR透過スペクトルの場合とは異なる赤外帯相対強度が得られる。ATR−FT−IRの特性によって、高波数のバンドと比較して、低波数のバンドがより強くなる。特に断らない限り、実験誤差は±2cm−1であった。
【0035】
上述したFTラマンスペクトルは、1064nmのNdYAGレーザー及びゲルマニウム検出器を備えた、サーモ・ニコレー社製ラマン分光計960FTを用いて収集した。形態Iのスペクトルは、試料をレーザー出力460mWで4112共添加スキャンして、分解能2cm−1で収集した。形態IIのスペクトルは、レーザー出力510mWで試料を8000共添加スキャンして、分解能2cm−1で収集した。ハップ・ゲンゼル(Happ-Genzel)アポダイゼーション法を用いた。各試料をガラスバイアルに入れ、これにレーザーを放射した。データをラマンシフトの関数であるラマン強度として示す。特に断らない限り、実験誤差は±2cm−1であった。
【0036】
本発明の結晶形態は、以下に述べる工程によって調製できる。化合物を特殊な多形体として調製することは困難な場合があり、また反応条件を僅かに変えると時には予想外の生成物が得られることは、当業者には明らかであろう。特に、実験を行う雰囲気中に種が存在すると、これにより結果が左右されることがある。しかしながら、下記工程は通常は信頼性が高い。多形体の形態IIは周囲温度で熱力学的に最も安定であり、ゆっくりと結晶化することで形成される。多形体の形態Iは周囲温度で動力学的により優れた生成物であり、急冷等の迅速な結晶化技術によって形成される。所望の生成物の種を加えると、その調製の成功率が明らかに向上する。特に、ジアステレオマー混合物を含む形態Iの種を用いると、修飾アスパルテート残基がエピマー化することによって、形態Iの材料の調製が促進される。
【0037】
形態Iと形態IIの混合物の調製
アモルファス(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(又は該化合物の他の形態)を、酢酸と水の混合物から結晶化することによって、結晶形態I及びIIの混合物を調製できる。この工程によって純粋な形態Iの生成物が得られることもある。
【0038】
例えば、磁気攪拌子を入れたフラスコに、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(15.033g)を加えた。攪拌しながら酢酸(200ml)を加えて溶液とし、これに活性炭(1.512g)を加えた。得られた黒色懸濁液を周囲温度で10分間攪拌し、真空下でろ過し、固体残渣を酢酸で2度洗浄した(2×40ml)。ろ液を併せて脱イオン水(155ml)で希釈して、濁った溶液を得た。この溶液を約42℃に温めると透明になった。更に脱イオン水(225ml)を加えて濁らせ、得られた溶液を攪拌しながら周囲温度までゆっくり冷却し、白色結晶性材料(形態Iと形態IIの混合物)を得た。
【0039】
形態Iと形態IIの混合物からの純粋な形態IIの調製(種不使用)
形態Iと形態IIの混合物を、アセトニトリル中、室温で完全に変換されるまで(通常数日間、例えば3日間)スラリー化することによって、純粋な形態IIを調製できる。その後、生成物をろ過し、例えば真空炉中で乾燥する。実例として以下の手順を挙げる。
【0040】
形態Iと形態IIの40:60混合物(重量比)をアセトニトリル中でスラリー化し、3日間放置した。その後、固体生成物をろ過し、真空炉内で乾燥して、純粋な結晶形態IIを得た。この材料は、後述する更なる実験で必要に応じて種として使用できる。
【0041】
アセトニトリル(13ml)中の(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(1.5g、形態I:形態IIの重量比約40:60)のスラリーを、室温(22℃)で3日間攪拌した。ろ過により固相を分離し、真空下で16時間乾燥して(22℃、25mbar)、生成物として純粋な形態IIを収率86%で得た。
【0042】
また、形態Iと形態IIの混合物を、酢酸エチル、トルエン、酢酸エチル/水、酢酸エチル/アセトニトリル、及びイソプロピルアルコール(IPA)から選ばれる溶媒中で、4℃で数日間(例えば約5日間)スラリー化することによっても、純粋な形態IIを調製できる。更に、形態Iと形態IIの混合物を、ジクロロメタン又はメチルエチルケトン中、約50℃でスラリー化することによっても、純粋な形態IIが得られる。
【0043】
形態Iと形態IIの混合物からの純粋な形態IIの調製(種使用)
イソプロピルアルコールと水との混合物(400ml、体積比93:7)中の(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(40g、形態I:形態IIの重量比約90:10)のスラリーを調製した。このスラリーを30分間かけて22℃から60℃に加熱し、得られた溶液を平衡に達するように60℃で30分間保持した。このとき完全に溶解した。この溶液を30分間かけて25℃に冷却し、25℃の時点で形態IIの結晶を種として過飽和溶液に加えた。この種は、0.4g又は初期原料濃度の1%w/wの濃度で用いた。得られたスラリーを25℃で4時間保持し、4時間かけて25℃から0℃まで冷却し、0℃で12時間保持した。このスラリーを真空ろ過し、真空炉内で固体生成物を50℃で60時間乾燥した。生成物を80%(32g)の収率で単離した。乾燥前の試料と乾燥後の試料のPXRD分析を行ったところ、共に形態IIのものと一致した。
【0044】
形態Iからの純粋な形態IIの調製(種使用)
250rpmで作動する3後退翼インペラ(3-blade
retreat curve impeller)を備えたフラスコ中で、イソプロピルアルコールと水との混合物(300ml、体積比93:7)中の(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(22.5g、形態I比率100%)のスラリーを調製した。このスラリーを30分間かけて25℃から50℃に加熱した。得られた溶液を平衡に達するように50℃で30分間保持した。このとき確実に完全溶解させた。この溶液を30分間かけて35℃に冷却した。35℃の時点でPF−3,491,390形態IIを種として過飽和溶液に加えた。この種は、0.225g又は初期原料濃度の1%w/wの濃度で用いた。本実験では微粉化した種を用いた。得られたスラリーを種添加温度、即ち35℃で3時間保持し、24時間かけて35℃から−5℃まで冷却し、−5℃で18時間保持した。このスラリーを真空ろ過し、真空炉内50℃で乾燥して、21.6gのPF−3,491,390を得た(95%)。乾燥前の試料と乾燥後の試料のPXRD分析を行ったところ、共に形態IIのものと一致した。
【0045】
形態Iと形態IIの混合物からの純粋な形態Iの調製
形態Iと形態IIの混合物を、最小限の量の極性有機溶媒(通常、イソプロピルアルコール(IPA)、テトラヒドロフラン(THF)、又は酢酸)に高温(通常約50℃)で溶解し、低温に冷却(通常約4℃、一晩)して結晶化することによって、純粋な形態Iを調製できる。結晶化を補助するためにn−ヘプタンやトリフルオロトルエン等の非極性有機溶媒(通常、逆溶剤と称される)を加えてもよい。実例として以下の実験を挙げる。
【0046】
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(300mg、形態I:形態IIの比約40:60)を、最小限の量のイソプロピルアルコール(4ml)に50℃で溶解した。続いてこの溶液を0.5℃/分で4℃に冷却し、4℃で一晩攪拌して、生成物として純粋な形態Iを得た。
【0047】
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(200mg、形態I:形態IIの比約40:60)を、0.3mlのテトラヒドロフランに50℃で溶解した。沈殿させるために逆溶剤としてn−ヘプタン(0.9ml)を加えた。得られたスラリーを0.5℃/分で4℃に冷却し、4℃で一晩攪拌して、生成物として純粋な形態Iを得た。
【0048】
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(200mg、形態I:形態IIの比約40:60)を、0.3mlのテトラヒドロフランに50℃で溶解した。沈殿させるために逆溶剤としてトリフルオロトルエン(1.5ml)を加えた。続いて得られたスラリーを0.5℃/分で4℃に冷却し、4℃で一晩攪拌して、生成物として純粋な形態Iを得た。
【0049】
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(200mg、形態I:形態IIの比約40:60)を、0.8mlの酢酸に50℃で溶解した。沈殿させるために逆溶剤としてn−ヘプタン(3.5ml)を加えた。続いて得られたスラリーを0.5℃/分で4℃に冷却し、4℃で一晩攪拌して、生成物として純粋な形態Iを得た。
【0050】
形態Iと形態IIの混合物からの純粋な形態IIIの調製
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(41mg、形態I:形態IIの比約75:25)を、メチルエチルケトン(1ml)に溶解した。この溶液をろ過し、19日間かけてゆっくり濃縮し、ゲルを得た。この段階でトルエン(10μl)を加えた。3日後、更にトルエン(100μl)を加えた。更に4日後、形態IIIに相当する結晶性材料を単離した。
【0051】
形態Iからの純粋な形態IIIの調製
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(50mg、形態I)を、メチルエチルケトン(1ml)に溶解した。得られた透明溶液をろ過し、トルエン(3ml)で希釈し、不透明材料が形成されるまで周囲温度で2日間かけて濃縮した。真空ろ過により不透明固体を回収し、減圧下で約10分間空気乾燥して、生成物として47.5mgの形態IIIを得た。
【0052】
他の実験では、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸(700mg、形態I)を、14mlの2−ブタノン(メチルエチルケトン)に超音波を用いて溶解した。得られた透明溶液をビーカー内にろ過し、トルエン(42ml)で希釈した。この溶液をよく混合し、ゲル様不透明材料が形成されるまで周囲温度で6日間かけて濃縮した。ゲル様材料を室温で約30分間真空ろ過して、633mgの形態IIIを得た。他の類似実験では、2−ブタノン/トルエン溶液を室温で6日間かけて濃縮した。生成した固体を真空ろ過せずに更に空気中で乾燥した。生成物は形態III(700mg)であった。
【0053】
ベンジルエステル前駆体の脱水素化による純粋な形態IIの調製(種使用)
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸ベンジルエステル(500g、0.758mol)を、攪拌しながら20℃でテトラヒドロフラン(2.5リットル)に加えた。続いて、パラジウム炭素(10%、50g)を加え、液体上部の空間に20ポンド毎平方インチ(psi)で水素を加えた。4時間後、セライト(登録商標)床でろ過して触媒を除去し、ろ過ケーキをテトラヒドロフラン(2×1リットル)で洗浄した。ろ液を30℃で真空下エバポレートして体積が2リットルとなるまで濃縮し、攪拌しながら1時間かけてn−ヘプタンを加えた。形態IIの種(4.32g)を加え、20℃で3時間攪拌を続けた。次に、更にn−ヘプタン(2.35リットル)を加え、得られた懸濁液を20℃で12時間攪拌した。続いて懸濁液を6時間かけて−5℃まで冷却し、この温度で約1時間攪拌し、ろ過した。生成物をn−ヘプタン(2×1リットル)で洗浄し、真空下、40℃で16時間炉乾燥して、純粋な形態II(389g)を得た。
【0054】
上述の通り、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸のアモルファス形態は、特許文献1に記載の一般プロセス及び具体的プロセスによって調製できる。また、下記スキーム1に示す経路で化合物を調製してもよい。当然ながら、生成物を単離するための下記具体的手順によって、アモルファス形態又は本発明の結晶形態の1つを得てよい。
【0055】
【化2】

【0056】
スキーム1中、Pはベンジル等の適当なカルボキシル保護基を表す。適当な保護基の他の例については、例えばグリーン(Theorora Greene)及びワッツ(Peter Wuts)著「Protective Groups in Organic Synthesis」(第3版、1999年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ)に記載されている。従って、式(I)の化合物を得るために、保護基Pに応じて適宜選択した条件下、式(II)の化合物を脱保護する。例えばPがベンジルである場合、適当な溶媒(テトラヒドロフラン等)中の式(II)の化合物の溶液を、水素化触媒(パラジウム炭素等)で処理し水素ガス雰囲気に晒せばよい。式(II)の化合物は、式(III)の酸と式(IV)のアミンのカップリングによって調製できる。アミン(IV)は、任意に塩酸塩等の塩の形態で使用してよい。適当なペプチドカップリング剤を使用してよい。好ましい工程においては、適当な溶媒(テトラヒドロフラン等)中のアミン(IV)及び酸(III)の溶液を、クロロギ酸エステル(クロロギ酸イソブチル等)及び塩基(N−メチルモルホリン等)で処理する。
【0057】
式(III)の化合物は、下記スキーム2に示す経路で調製できる。ここでRはC〜Cアルキル基、好ましくはメチル又はエチルである。
【0058】
【化3】

【0059】
式(III)の化合物は、式(V)の化合物のエステル官能基を適当な塩基で加水分解することによって調製できる。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)中の式(V)の化合物の溶液を、アルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化リチウム)で処理する。
【0060】
式(V)の化合物は、式(VI)の酸と式(IX)のアミンのカップリングによって調製できる。式(IX)のアミンは任意に塩(特に塩酸塩)の形態で使用してもよい。適当なペプチドカップリング剤を使用してよい。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはジメチルホルムアミド)中の酸(VI)及びアミン(IX)の溶液を、塩基(N−メチルモルホリン等)の存在下、カルボジイミドカップリング剤で処理する。
【0061】
式(VI)の化合物は、式(VII)の化合物のエステル官能基を塩基で加水分解することによって調製できる。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはトルエン)中の式(VI)の化合物の溶液を、アルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化ナトリウム)で処理する。
【0062】
式(VII)の化合物は、アミン塩基の存在下、式(VIII)のアミンを式(X)の化合物で処理することによって調製できる。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはトルエン)中の化合物(VIII)及び化合物(X)の溶液を、トリエチルアミンで処理する。
【0063】
式(IV)の化合物(スキーム1参照)は、下記スキーム3に示す経路で調製できる。ここでPは上記定義のとおりであり、Pは適当なアミン保護基(好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル基、BOC)である。適当なアミン保護基の例については、例えばグリーン(Theorora Greene)及びワッツ(Peter Wuts)著「Protective Groups in Organic Synthesis」(第3版、1999年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ)に記載されている。
【0064】
【化4】

【0065】
式(IV)の化合物は、保護基Pに応じて適宜選択した条件下、式(XI)の化合物を脱保護することによって調製できる。例えば、Pがtert−ブチルオキシカルボニルである場合、適当な溶媒(好ましくは酢酸エチル)中の式(XI)の化合物の溶液を、酸(好ましくは塩酸)で処理する。保護基P及びPは、Pの除去に必要な条件下でPも除去されてしまわないよう注意して選択する必要がある。
【0066】
式(XI)の化合物は、式(XII)の化合物中の臭素基を、2,3,5,6−テトラフルオロフェノールを脱プロトン化して得られるフェノラートアニオンで置換することによって調製できる。好ましくはフェノールのアルカリ金属塩、最も好ましくはカリウム塩を用いる。即ち、適当な脱プロトン化剤は水素化ナトリウム又は水素化カリウムである。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはアセトン)中の式(XII)の化合物の溶液を、求核触媒(好ましくはヨウ化ナトリウム)の存在下、フェノール脱プロトン化物で処理する。
【0067】
式(XII)の化合物は、ジアゾメタンを用いて式(XIII)の酸を同族体化することによって調製できる。典型的な手順においては、適当な溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)中の式(XIII)の化合物の溶液を、(a)クロロギ酸エステル(好ましくはクロロギ酸イソブチル)及び塩基(好ましくはN−メチルモルホリン)、(b)ジアゾメタン、並びに(c)臭化水素で連続的に処理する。
【0068】
式(VIII)、(IX)、(X)、及び(XIII)の化合物等、上記手順で用いた化合物のうち調製法を記載していないものは、市販されており、且つ/或いは当業者の通常の知識の範囲に含まれる一般的な手順によって調製できる。
【0069】
式(XII)の化合物は、下記式:
【0070】
【化5】

【0071】
(式中、P及びPは上記定義のとおり)で表される化合物を、塩基の存在下、トリメチルスルホニウムオキシド((CHS=O)で処理し、続いて臭素源(臭化水素又は臭化リチウム等)を添加することによっても調製できる。
【0072】
式(V)の化合物は、下記式:
【0073】
【化6】

【0074】
で表される化合物又はその酸性塩(特に塩酸塩)を、まず塩化オキサリル(ClCOCOCl)で処理し、続いて2−tert−ブチルアニリンで処理して、1ポットで簡便に調製することもできる。
【0075】
式(XI)の化合物は、下記スキーム4に示す経路で調製することもできる。P及びPは上記定義の保護基である。好ましい実施形態においては、Pはベンジルであり、Pはtert−ブチルオキシカルボニルである。
【0076】
【化7】

【0077】
即ち、式(XI)の化合物は、式(XVI)の化合物の選択的加水分解及び脱炭酸によって調製できる。化合物(XVI)のメチルエステル部位が、保護カルボニル基−COよりも高反応性であり、そのためより容易に加水分解されるよう気を付ける必要がある。保護カルボニル基−COもエステル基である場合は特に注意が必要である。典型的な加水分解剤としては水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0078】
式(XVI)の化合物は、式(XIII)の化合物を活性化し、この活性種を式(XVII)の化合物の二重脱プロトン化物で処理することによって調製できる。求核付加が起こり、続いて脱炭酸が進行する。式(XIII)の化合物をカルボジイミド等のアミドカップリング剤で処理することで活性化できる。
【0079】
式(XVII)の化合物は、α−クロロ−ジメチルマロネートを、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンの脱プロトン化物で処理し、生成物中のメチルエステル基の1つを選択的に加水分解することによって調製できる。
【0080】
式(XI)の化合物は、下記スキーム5に示す経路で調製することもできる。P及びPは上記定義の保護基である。好ましい実施形態においては、Pはベンジルであり、Pはtert−ブチルオキシカルボニルである。
【0081】
【化8】

【0082】
即ち、式(XI)の化合物は、式(XVIII)の化合物の選択的加水分解及び脱炭酸を二度行うことによって調製できる。化合物(XVIII)のメチルエステル部位が、保護カルボニル基−COよりも高反応性であり、そのためより容易に加水分解されるよう気を付ける必要がある。保護カルボニル基−COもエステル基である場合は特に注意が必要である。典型的な加水分解剤としては水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0083】
式(XVIII)の化合物は、式(XIII)の化合物を活性化し、この活性種を、式(XIX)の化合物の脱プロトン化物で処理することによって調製できる。式(XIII)の化合物をカルボジイミド等のアミドカップリング剤で処理することで活性化できる。
【0084】
式(XIX)の化合物は、α−クロロ−ジメチルマロネートを、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンの脱プロトン化物で処理することによって調製できる。
【0085】
式(XI)の化合物は、式(XIII)の化合物を活性化し(ここでP及びPは上記定義の保護基であり、好ましくはそれぞれベンジル及びtert−ブチルオキシカルボニルである)、この活性種を、下記式:
【0086】
【化9】

【0087】
で表される化合物の二重脱プロトン化物で処理して調製することもできる。式(XIII)の化合物をカルボジイミド等のアミドカップリング剤で処理することで活性化できる。
【0088】
式(XX)の化合物は、2位に脱離基を有する酢酸誘導体(2−クロロ酢酸等)を2,3,5,6−テトラフルオロフェノールの脱プロトン化物で処理することによって調製できる。
【0089】
式(XI)の化合物は、スキーム6に示すように調製することもできる。P及びPは上記定義の保護基である。好ましい実施形態においては、Pはベンジルであり、Pはtert−ブチルオキシカルボニルである。
【0090】
【化10】

【0091】
式(XI)の化合物は、式(XXI)の化合物の塩素基を、2,3,5,6−テトラフルオロフェノールを脱プロトン化して得られるフェノラートアニオンで置換することによって調製できる。好ましくはフェノールのアルカリ金属塩、最も好ましくはカリウム塩を用いる。即ち、適当な脱プロトン化剤は水素化ナトリウム又は水素化カリウムである。好ましい手順においては、適当な溶媒(好ましくはアセトン)中の式(XXI)の化合物の溶液を、求核触媒(好ましくはヨウ化ナトリウム)の存在下、フェノール脱プロトン化物で処理する。
【0092】
式(XXI)の化合物は、式(XIII)の化合物を活性化し、この活性種を、2−クロロ酢酸の二重脱プロトン化物で処理することによって調製できる。エステルに変換することによって、或いはカルボジイミド等のアミドカップリング剤で処理することによって、活性化できる。好ましい手順においては、適当な溶媒(テトラヒドロフラン等)中のクロロ酢酸ナトリウムの溶液を、塩化亜鉛及びジイソプロピルアミノマグネシウムクロライドで処理し、これを式(XIII)の化合物のメチルエステルの溶液に加える。
【0093】
薬物成分は、所望の投与経路に応じて選択した剤形に適したものでなければならない。錠剤又はカプセルのような剤形は容易且つ簡便に経口投与でき、医薬製剤で最も一般的である。錠剤又はカプセルの製剤に用いる薬物成分は非吸湿性且つ圧縮性でなくてはならない。吸湿性である場合は、加工に問題が生じ、保管期限が短くなる。即ち、加工段階で水を吸収して材料の効力が変化し、また吸水することにより流動特性が低下(粘着性が増加)する。また、好適な薬物成分は、胃の環境で迅速に生物学的利用能を示すような溶解性及び溶解率を有する。上記(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態は、この類の特性に優れており、錠剤やカプセルの製剤に適している。形態IIは特に好適である。
【0094】
動的蒸気収着(DVS)によって形態Iと形態IIの吸湿性を評価した。サーフェス・メジャメント・システムズ社(Surface Measurement Systems Ltd)の動的蒸気収着装置DVS−1を用いて試料の特性を調べた。200cc/分で窒素ガスを流し、30℃で分析した。0〜90%の相対湿度(RH)の範囲で、15%RH間隔で水の吸収及び脱離を測定した。最低2時間、或いは(10分間超の平均で)重量変化速度が0.0005%/分未満になるまで、各湿度の環境に晒した。試料の重量は23〜36mgの範囲内であった。試料の重量は上記装置に一体化された7桁デジタル記録秤CAHN D−200で測定した。結果を下記表6及び7に一覧として示し、また図15及び16にプロットする。
【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
本発明の結晶形態を同位体標識してもよく、本発明は薬学的に許容されるこのような同位体標識物を全て包含する。このような同位体標識では、1個以上の原子を、原子番号は同じで、原子質量又は質量数が天然物で優位を占めるそれらとは異なる1個以上の原子で置き換える。
【0098】
適当な同位体としては、H、H等の水素同位体、11C、13C、14C等の炭素同位体、13N、15N等の窒素同位体、15O、17O、18O等の酸素同位体、35S等の硫黄同位体等が挙げられる。
【0099】
ある種の同位体標識化合物(放射性同位体標識化合物等)は、薬物及び/又は基質組織分布の研究に有用である。放射性同位体である三重水素(H)及び炭素−14(14C)は、標識が容易で検出手段が確立されているため、この目的に特に有用である。
【0100】
重水素(H)等のより重い同位体は代謝安定性が高いため、このような同位体で置換すると治療上有利な場合がある。例えば、生体内での半減期の延長や必要用量の低減が可能となることがあり、そのため状況によっては好ましい。
【0101】
11C、18F、15O、13N等の陽電子放射同位体で置換すると、基質受容体占有を調べるための陽電子放射断層撮影(PET)研究に有用な場合がある。
【0102】
同位体標識化合物は、元々使用していた非標識試薬に替えて適切な同位体標識試薬を用いる、当業者に公知の従来技術によって調製できる。
【0103】
特許文献1に記載されているように、(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸は、細胞アポトーシスを阻害する不可逆汎カスパーゼ阻害剤である。そのため、本発明が提供するこの化合物の結晶形態は、例えば感染症(髄膜炎、卵管炎等)、敗血性ショック、呼吸器疾患、炎症性疾患(関節炎、胆管炎、大腸炎、脳炎、肝炎、胆道閉鎖症、水晶体損傷、膵炎、再かん流損傷等)、虚血性疾患(心筋梗塞、脳卒中、虚血性腎疾患等)、免疫性疾患(過敏症等)、自己免疫疾患(多発性硬化症等)、骨疾患、II型糖尿病(インスリン耐性の低下による)、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病等)といった、様々な疾患の治療に有用である可能性がある。また、化学療法又は放射線療法の後の造血細胞の再生や、移植に用いる器官(特に肝臓)の生存能の向上にも有用である可能性がある。更に、カスパーゼ阻害剤は細胞集団の体外での生存を延長又は増加させ、それによりバイオ生産効率を改善するために利用できる。
【0104】
本発明の結晶形態は、肝線維症の治療及び予防に特に有用である。肝線維症は体が様々な肝炎(hepatitis、liver inflammation)に対応しようとする結果として発症し、肝機能障害や肝硬変を引き起こし、最終的に死を導く。この線維症(瘢痕化)はコラーゲン沈着によって発症し、肝機能低下や、更には肝硬変につながる。硬変した肝臓を移植しないと死に至る場合がある。線維症の結果としての肝炎は、様々な異なる原因によって発症する。例えば、ウイルス感染症(特にB型肝炎及びC型肝炎)、過度の脂肪沈着(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、アルコール沈着等が挙げられる。
【0105】
本発明が提供する(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態(以下、本発明の化合物と称する)は、単独で投与してもよいが、通常は1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤として投与する。ここで「賦形剤」は、本発明の化合物以外のどのような成分であってもよい。賦形剤は、主に投与形態、溶解性及び安定性に対する影響、並びに剤形の特性等の要素に応じて選択される。
【0106】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物、及びその調製方法については、当業者には明らかであろう。このような組成物及びその調製方法は、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(マック出版社(Mack Publishing Company)、1995年)に記載されている。
【0107】
本発明の化合物を経口投与してよい。経口投与では、嚥下により該化合物を胃腸管に挿入してよく、或いは口腔又は舌下投与により化合物を口から直接血流内に挿入してもよい。
【0108】
経口投与に適した製剤としては、錠剤、カプセル(微粒子、液体、又は粉末を含有)、ロゼンジ(液体入りのものも含む)、チュアブル剤(chew)、マルチ−又はナノ−微粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム、腔坐剤(ovule)、噴射剤(spray)といった固体製剤や、液体製剤が挙げられる。
【0109】
液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤等が挙げられる。これらは、例えばソフトカプセルやハードカプセルの充填剤として使用でき、通常は担体(水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、油等)並びに1種以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含有する。液体製剤は包みに入った固体等から再調製するものであってもよい。
【0110】
本発明の化合物は、リャン(Liang)及びチェン(Chen)著「Expert Opinion in Therapeutic Patents」、11(6)、981−986(2001)に記載されているような、速溶性又は速崩壊性の剤形で使用してもよい。
【0111】
錠剤の場合、服用形態に応じて、本発明の化合物の含量を剤形の1〜80重量%、より典型的には5〜60重量%としてよい。
【0112】
通常、錠剤は更に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微晶質セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。剤形中の崩壊剤の含量は、通常1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%である。
【0113】
通常、錠剤に結合力を付与するために結合剤を使用する。適当な結合剤としては、微晶質セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然ゴム、合成ゴム、ポリビニルピロリドン、糊化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微晶質セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物等の希釈剤も含有してよい。
【0114】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80等の界面活性剤、及び二酸化ケイ素やタルク等の流動促進剤も、任意に含有してもよい。これらを用いる場合、界面活性剤の量は錠剤の0.2〜5重量%であってよく、流動促進剤の量は錠剤の0.2〜1重量%であってよい。
【0115】
また、通常、錠剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物等の滑剤を含有する。滑剤の量は、通常錠剤の0.25〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0116】
他の使用可能な錠剤成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤、防腐剤、味マスキング剤(taste-masking agent)等が挙げられる。
【0117】
典型的には、錠剤は、約80%以下の薬物、約10〜約90重量%の結合剤、約0〜約85重量%の希釈剤、約2〜約10重量%の崩壊剤、及び約0.25〜約10重量%の滑剤を含有する。
【0118】
錠剤用の混合物を直接又はローラーを用いて圧縮することにより、錠剤を形成してよい。或いは、錠剤形成前に、錠剤用の混合物又はその一部を湿式粒状化、乾式粒状化、溶融粒状化、溶融凝固、又は押出し成形してもよい。最終製品としての製剤は1以上の層を有してよく、またコーティングされていてもされていなくてもよく、更にカプセル化されていてもよい。
【0119】
錠剤の製剤については、リーバーマン(H. Lieberman)及びラクマン(L. Lachman)著「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」、第1巻(マーセルデッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、1980年)で論じられている。
【0120】
本発明の化合物を、人間への使用又は獣医学的使用が可能な経口フィルムの形態で経口投与してもよい。このようなフィルムは、一般に、柔軟で水溶性又は水膨潤性の薄膜であり、速溶解性又は粘膜付着性であってよい。通常、該フィルムは本発明の化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、保湿剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度調整剤、及び溶媒を含有する。この製剤中、ある成分が複数の機能を有していてもよい。
【0121】
フィルム形成ポリマーは天然多糖類、タンパク質、又は合成親水コロイドであってよく、その量は通常0.01〜99重量%、より典型的には30〜80重量%である。
【0122】
他の利用可能なフィルム成分としては、酸化防止剤、着色剤、香味剤、香味向上剤、防腐剤、唾液腺刺激剤、清涼剤、共溶媒(油等)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤、味マスキング剤等が挙げられる。
【0123】
通常、本発明によるフィルムは、剥離可能な裏支持体又は紙に形成した水性薄膜を蒸発乾燥することによって得られる。乾燥は、乾燥炉又は乾燥トンネル、通常は複合塗装乾燥機を用いて行ってよく、或いは凍結乾燥又は真空乾燥により行ってよい。
【0124】
経口投与用の固体製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0125】
本発明の目的に適した放出調節製剤については、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散や浸透性被覆粒子等、他の好適な放出技術の詳細は、フェルマ(Verma)ら著「Pharmaceutical Technology On-line」、25(2)、1−14(2001年)に見られる。放出を制御するためのチューインガムの利用については、WO−A−00/35298に記載されている。
【0126】
本発明の化合物を血流、筋肉、又は内部器官中に直接投与してもよい。このような非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋内、又は皮下の経路から行ってよい。非経口投与に適する道具としては、針注射器(極微針注射器等)、無針注射器、及び注入技術が挙げられる。
【0127】
通常、非経口製剤は水溶液であり、塩、炭水化物、緩衝剤(pH3〜9が好ましい)等の賦形剤を含有してよい。しかしながら、用途によっては、滅菌非水溶液や、適当な媒体(ピロゲンを含まない滅菌水等)と組み合わせて使用する乾燥体の剤形がより好適である。
【0128】
非経口製剤は、滅菌条件下、当業者に公知の通常の薬学的技術を用いて、凍結乾燥等により容易に調製できる。
【0129】
非経口投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。従って、本発明の化合物を固体、半固体、又はチキソトロピー液体として製剤化し、該化合物の放出を調節できる埋め込み型持続性薬剤として投与してもよい。このような製剤の例としては、薬剤被覆ステント、dl−乳酸/グリコール酸共重合体(PGLA)ミクロスフェア等が挙げられる。
【0130】
本発明の化合物を、皮膚又は粘膜に局所投与、即ち皮内投与又は経皮投与してもよい。このような目的に適する製剤の典型例としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、粉剤、包帯剤、泡剤、フィルム、皮膚パッチ、ウエハ(wafer)、インプラント、スポンジ、繊維、帯具、マイクロエマルジョン等が挙げられる。リポソームを用いてもよい。担体の典型例としては、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。浸透促進剤を添加してもよく、これについては例えばフィニン(Finnin)及びモーガン(Morgan)著、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(J. Pharm. Sci.)、88(10)、955−958(1999年10月)に記載されている。他の局所投与手段としては、電気穿孔、イオン導入(iontophoresis)、音声導入(phonophoresis)、音波導入(sonophoresis)、極微針注射、無針注射(例えばパウダージェクト(Powderject、商標)、バイオジェクト(Bioject、商標))等による送達が挙げられる。
【0131】
局所投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0132】
本発明の化合物を鼻腔内投与又は吸入投与してもよい。この場合、通常は、吸入器から乾燥粉末の形態で投与したり、エアロゾルスプレーとして投与する。乾燥粉末は単独で投与してよく、ラクトースとの乾燥混合物等の混合物として、又はリン脂質(ホスファチジルコリン等)等との混合粒子として投与してもよい。エアロゾルスプレーの場合は、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気流体力学的に微細な霧を生成するアトマイザー)、又はネブライザーから、必要に応じて適当な噴射剤(1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等)を用いて投与してよい。鼻腔内に用いる粉末は生体接着剤(キトサン、シクロデキストリン等)を含有していてもよい。
【0133】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、及びネブライザーには、本発明の化合物の溶液又は懸濁液が収容され、該溶液又は懸濁液は、溶媒としてエタノール、水性エタノールや、活性物質の分散、可溶化、又は放出延長に適する代替薬剤、又は噴射剤を含有し、更に任意に界面活性剤(ソルビタントリオレエート、オレイン酸、オリゴ乳酸等)を含有する。
【0134】
乾燥粉末や懸濁液の製剤に使用する前に、薬物を吸入による送達に適する大きさ(通常5ミクロン未満)まで微粉化する。微粉化は、スパイラルジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子形成超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、噴霧乾燥等の適当な粉砕手段を用いて行うことができる。
【0135】
吸入器(inhaler又はinsufflator)に用いるカプセル(ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等からなる)、ブリスター、及びカートリッジの製剤は、本発明の化合物、適当な粉末基剤(ラクトース、デンプン等)、及び機能調整剤(l−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム等)の混合粉末を含有してよい。ラクトースは無水物又は一水和物であってよく、好ましくは後者である。他の適当な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、トレハロース等が挙げられる。
【0136】
電気流体力学的に微細な霧を生成するアトマイザーに適する溶液製剤は、1回の使用あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、その1回の使用量は1〜100μlであってよい。典型的には、該製剤は本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、及び塩化ナトリウムを含有してよい。プロピレングリコールの代わりにグリセロール、ポリエチレングリコール等の代替溶媒を使用してもよい。
【0137】
吸入/鼻腔内投与用の本発明の製剤に、適当な香味料(メントール、レボメントール等)や甘味料(サッカリン、サッカリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0138】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、例えばPGLAを用いた、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0139】
乾燥粉末吸入剤及びエアロゾルの場合、用量単位は測定量を送るバルブにより定まる。1日の総用量を単回投与してよく、またより一般的に1日を通して分割投与してもよい。
【0140】
本発明の化合物を、坐剤、ペッサリー、かん腸剤等の形態で直腸内投与又は膣内投与してもよい。従来から坐剤の基剤としてココアバターが用いられているが、必要に応じて様々な代替物を用いてよい。
【0141】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0142】
また、本発明の化合物を眼や耳に直接投与してもよく、この場合、通常はpH調節した等張滅菌生理食塩水を用いた微粉懸濁液又は溶液の滴剤の剤形を用いてよい。眼内又は耳内投与に適した他の製剤としては、軟膏、生分解性インプラント(吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン等)、非生分解性インプラント(シリコーン等)、ウエハ、レンズ、微粒子状又は小胞状の系(ニオソーム、リポソーム等)等が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等)、ヘテロ多糖ポリマー(ゲランゴム等)等のポリマーを、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤と共に添加してもよい。このような製剤は、イオン導入法により送達してよい。
【0143】
眼内/耳内投与用の製剤は、即時放出型及び/又は放出調節型の製剤であってよい。放出調節製剤としては、遅延放出型、持続放出型、間歇放出型、制御放出型、標的放出型、及びプログラム放出型の製剤が挙げられる。
【0144】
上記投与形態のいずれかにおいて溶解性、溶解速度、味マスキング、生物学的利用能、及び/又は安定性を改善するために、本発明の化合物を可溶性巨大分子(シクロデキストリン、その適当な誘導体等)やポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせて使用してもよい。
【0145】
例えば、薬剤−シクロデキストリン複合体は多くの剤形及び投与経路に一般的に有用であると認められる。該複合体は包接複合体であっても非包接複合体であってもよい。薬物と直接複合体化する代わりに、シクロデキストリンを補助添加剤、即ち担体、希釈剤、又は可溶化剤として使用してもよい。アルファ−、ベータ−、及びガンマ−シクロデキストリンがこのような目的に最も広く用いられており、その例はWO−A−91/11172、WO−A−94/02518、及びWO−A−98/55148に見られる。
【0146】
人間の患者に投与する場合、本発明の化合物の1日総投与量は、通常0.01〜100mg/kgであると考えられる。当然ながら1日総投与量は投与形態に応じて決定する。経口経路の場合、1日総投与量は通常1〜100mgである。1日総投与量を単回投与してもよく、また分割投与してもよい。医師の判断に応じて、ここで挙げた通常の投与量の範囲から外れてもよい。
【0147】
誤解を避けるために説明すると、本発明で用いる「治療」という語は、治癒的治療、待機的(緩和的)治療、及び予防的治療も包含する。
【0148】
特に肝線維症の治療において、汎カスパーゼ阻害剤(特に(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸、とりわけ本発明の結晶形態の1つ)を、1種又は2種以上の他の薬理活性化合物と有効に組み合わせて用いてよい。例えば、このような阻害剤を、抗ウイルス剤(リバビロン(ribaviron)、インターフェロン等);CCR−5拮抗剤;インスリン増感剤(メトホルミン等);肝臓保護剤(ビタミンE、ペントキシフィリン、ベタイン、ウルソデオキシコール酸等);脂質低下薬(アコンプリア、オーリスタット、フィブラート、コレスチラミン等);HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(アトルバスタチン等);グリタゾン;生物学的薬剤(抗TNF−α抗体、抗MAdCAM抗体等);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス等);並びにこれらの適当な薬学的に許容される塩及び溶媒和物から選ばれる1種以上の薬剤と組み合わせて、同時、連続的、又は別々に投与してよい。
【0149】
複数の活性化合物を組み合わせて投与するのが望ましい場合があるため、本発明では、2種以上の医薬組成物(少なくとも1つの組成物が本発明の化合物を含む)を組み合わせて簡便に共投与に適したキットの形態としてもよい。
【0150】
このようなキットは、2種以上の別個の医薬組成物(少なくとも1つは本発明の化合物を含有する)、及び組成物を分離して保持する手段(容器、分割ボトル、分割金属箔パケット等)を含む。キットの一例として、錠剤やカプセル等を包む一般的なブリスターパックが挙げられる。
【0151】
このようなキットは、異なる複数の剤形の製剤(経口製剤と非経口製剤等)を投与する際、各組成物を異なる間隔で投与する際、又は各組成物の用量を別々に漸増する際に、特に好適に使用できる。コンプライアンスの助けとなるよう、キットには通常投与指針が付され、また所謂記憶補助を添付してもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11A】

【図11B】

【図12A】

【図12B】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3S)−3−[N−(N’−(2−tert−ブチルフェニル)オキサミル)アラニニル]アミノ−5−(2’,3’,5’,6’−テトラフルオロフェノキシ)−4−オキソペンタン酸の結晶形態。
【請求項2】
形態Iと称され、CuKα線(波長=1.5406Å)を用いた粉末X線回折により分析すると、2θ角7.7、14.1、21.4、26.6、及び29.4度(±0.1度)にピークを示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
形態IIと称され、CuKα線(波長=1.5406Å)を用いた粉末X線回折により分析すると、2θ角14.5、17.3、22.5、25.0、及び26.8度(±0.1度)にピークを示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
形態IIIと称され、CuKα線(波長=1.5406Å)を用いた粉末X線回折により分析すると、2θ角7.2度(±0.1度)にピークを示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
形態Iと称され、トリフルオロ酢酸(50%体積/体積、水中)を−76.54ppmの外部基準試料として用いた固相19F−NMRにより分析すると、−141.9ppmにピークを示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項6】
形態IIと称され、トリフルオロ酢酸(50%体積/体積、水中)を−76.54ppmの外部基準試料として用いた固相19F−NMRにより分析すると、−142.2及び−153.4ppmにピークを示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
請求項1に記載の結晶形態及び薬学的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項3に記載の結晶形態及び薬学的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の結晶形態及び薬学的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の結晶形態及び薬学的に許容される賦形剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
更に第2の薬理活性物質を含有することを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物の肝線維症を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の結晶形態を前記哺乳動物に投与することを特徴とする治療方法。
【請求項13】
哺乳動物の肝線維症を治療する方法であって、有効量の請求項3に記載の結晶形態を前記哺乳動物に投与することを特徴とする治療方法。
【請求項14】
哺乳動物の肝線維症を治療する方法であって、有効量の請求項5に記載の結晶形態を前記哺乳動物に投与することを特徴とする治療方法。
【請求項15】
哺乳動物の肝線維症を治療する方法であって、有効量の請求項6に記載の結晶形態を前記哺乳動物に投与することを特徴とする治療方法。

【公表番号】特表2010−511689(P2010−511689A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539823(P2009−539823)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003900
【国際公開番号】WO2008/068615
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】