説明

(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンの製造方法及びそれに用いられる中間体

本発明は(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを製造する方法、及び前記方法に中間体として用いられる(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを製造する方法、及び前記方法に中間体として用いられる(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンは式(Ia)の構造である互変異性体の形態で存在することができ、これは精密化学品または医薬品原薬(API)の製造に用いられる重要な中間体である。
【化1】

【0003】
例えば、(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンは、テトラヒドロリプスタチン(Orlistat(登録商標))などのオキセタノンの合成に用いられる中間体であって、その製造方法は米国特許第4,983,746号、第5,245,056号、第5,399,720号、第5,274,143号、及び第5,420,305号に開示されている。
【0004】
米国特許第4,983,746号は、ジアルキル−3,4,5,6−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンをジョーンズ(Jone’s)試薬を用いて酸化させて3,6−ジアルキル−5,6−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンを製造することを開示している。しかし、産業上の有用性を持たないn−ブチルリチウムやLDA(lithium diisopropylamide)などのような強い塩基を用いてジアルキル−3,4,5,6−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンを製造し、所望の光学的異性体を得るためには3,6−ジアルキル−5,6−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンを更に還元させなければならないという問題がある。
【0005】
米国特許第5,245,056号及び第5,399,720号では3−ヒドロキシテトラデカン酸をカルボジイミドで活性化させて(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを製造する段階を含む方法を開示しているが、この反応の収率がわずか34%と低い。
【0006】
(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンの収率を改善するために、米国特許第5,274,143号及び第5,420,305号は、(R)−3−[2−ブロモ−1−オキソオクチルオキシ]−テトラデカン酸を亜鉛存在下で分子内環化反応させて、(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを61〜67%の収率で製造する方法を開示しており、また米国特許第6,545,165号は、(R)−3−[2−ブロモ−1−オキソオクチルオキシ]−テトラデカン酸を塩化t−ブチルマグネシウムの存在下で分子内環化反応させて、(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを78%の収率で製造する方法を開示している。
【0007】
なお、米国特許第6,552,204号は、(i)保護されたβ−ヒドロキシハロゲン化アシルをケテンアセタールと反応させてδ−ヒドロキシ−β−エノールエーテルまたは保護されたδ−ヒドロキシ−β−エノールエーテルを得るか、(ii)β−ヒドロキシハロゲン化アシルをマロン酸ハーフエステルと反応させてδ−ヒドロキシ−β−ケトエステルを得た後、前記δ−ヒドロキシ−β−ケトエステルを酸で処理することで、3,6−ジアルキル−5,6−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−ピラン−2−オンを製造する工程を開示している。しかし、所望の光学異性体を生成するためには出発物質を高圧条件下で製造しなければならないが、これは工程の非効率性をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを高純度かつ高収率で製造する改善された方法を提供することである。
【0009】
本発明のまた他の目的は、式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンの製造に用いられる中間体を提供することである。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、
1)式(II)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル誘導体と式(III)の2−ブロモオクタン酸アルキルとを亜鉛存在下で反応させて、式(IV)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を得る段階;
2)式(IV)の化合物を酸水溶液で処理して、式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体を得る段階;及び
3)式(V)の化合物を酸性または塩基性条件下で環化させる段階を含む、式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを製造する方法が得られる。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0011】
前記式中、
P’は、水素、または酸性条件下で除去(脱保護基化)可能なトリアルキルシリル及びアルコキシアルキルから選ばれる保護基であり、
Rは、メチル、エチル、またはプロピルである。
【0012】
本発明の他の実施態様によれば、式(I)の化合物の製造に用いられる式(IV)の化合物が得られる。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明の方法において、出発物質として用いられた式(II)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル誘導体は文献[Tetrahedron
Asymmetry 1999,2945]に開示された方法によって製造されることができる。
【0014】
本発明によれば、(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルまたは保護基で保護されたヒドロキシ基を有する(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルを亜鉛存在下で式(III)の化合物とブレーズ(Blaise)反応させて式(IVa)の化合物または式(IVb)の化合物を得る段階;式(IVa)または(IVb)の化合物を酸水溶液で処理して式(V)の化合物を得る段階;及び式(V)の化合物を環化させる段階によって式(I)の化合物を製造することができる。
【0015】
特に、式(I)の化合物を製造する本発明の方法は反応式1で示すように行われることができる。
【化7】

【0016】
前記式中、
P’は、酸性条件下で除去可能なトリアルキルシリル及びアルコキシアルキルから選ばれるヒドロキシル保護基であり、
Rは、メチル、エチル、またはプロピルである。
【0017】
反応式1の段階Aにおいては、式(IIa)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルと式(III)の2−ブロモオクタン酸アルキルを亜鉛存在下で適切な溶媒中で反応させて式(IVa)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を得る。式(III)の2−ブロモオクタン酸アルキルとしては、例えば2−ブロモオクタン酸メチル、2−ブロモオクタン酸エチル、及び2−ブロモオクタン酸プロピルなどが挙げられる。2−ブロモオクタン酸アルキルは式(IIa)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル1モルに対し1〜10モル当量、好ましくは1.5〜3モル当量の範囲の量で使われる。
【0018】
亜鉛は、前記段階Aの反応を効率良く進めるために、粉末や埃の形態であることが良く、特に活性化した亜鉛粉末の形態が最も好ましい。前記亜鉛は式(IIa)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル1モルに対し1〜10モル当量、好ましくは3〜5モル当量の範囲の量で使われる。また、亜鉛の活性化のための触媒添加剤が、式(IIa)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル1モルに対し0.01〜0.2モル当量の量で更に使われる。前記添加剤としては、例えばI、1,2−ジブロモエタン、メタンスルホン酸、及び塩化トリメチルシリルなどが挙げられる。前記塩化トリメチルシリル添加剤の場合、反応溶媒として用いても良い。
【0019】
また、段階Aの再現性を向上させるために、少量の鉛を亜鉛と共に用いることができる。例えば、鉛粉末は亜鉛の総重量に対し2〜10%、好ましくは3〜5%の範囲の量で用いられることができる。このような亜鉛関連反応において、鉛が用いられる例は文献[Organic Process Research &
Development 2001,28]に開示されている。
【0020】
また、段階Aに使用可能な溶媒としては、エチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエンなどのような非プロトン性溶媒、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらのうち好ましくはエチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、及びトルエンである。
【0021】
段階Aは0℃から溶媒の沸点の温度範囲、好ましくは30℃〜100℃の温度範囲で行うことができる。
【0022】
段階Bでは、式(IVa)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を適切な溶媒中で、酸水溶液で処理して式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体を得る。前記酸としては、例えば塩酸、硫酸、及び臭酸などのような無機酸だけではなく、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びカンファースルホン酸などのような有機酸が挙げられ、前記酸は酸水溶液の形態で式(IVa)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体1モルに対し0.01〜5モル当量、好ましくは1〜3モル当量の範囲の量で使われる。
【0023】
段階Bに使用可能な溶媒としては、水、メタノール、及びエタノールなどのようなプロトン性溶媒;エチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、及びトルエンなどのような非プロトン性溶媒;またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0024】
これにより得られた式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体は更なる精製過程を経ることなく段階Fに直ちに用いることができる。
【0025】
段階Bの過程中に、式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体の少量を環化反応させて目的化合物である式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンが得られる。
【0026】
段階Bは0℃から溶媒の沸点の温度範囲、好ましくは10℃〜60℃の温度範囲で行われることができる。
【0027】
段階Cは、式(IIa)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルのヒドロキシ基に、容易に除去可能なヒドロキシ保護基を導入する過程である。保護基としては、例えばトリメチルシリル(TMS)及びトリエチルシリルのようなトリアルキルシリル基、テトラヒドロピラニル(THP)、4−メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、2−メトキシ−2−プロピル(MOP)、及び1−エトキシ−1−エチル(EE)のようなアルコキシアルキル基などが挙げられ、これらは酸性条件下で容易に除去され得る。
【0028】
(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルのヒドロキシ基のトリメチルシリル化は公知の方法(文献[Protective groups in
organic synthesis 4th Ed., pp171−178]参照)によって行われることができ、テトラヒドロピランの保護基は、ジヒドロフランとp−トルエンスルホン酸ピリジニウムを用いる公知の方法(文献[
Protective groups in organic
synthesis 4th Ed.,pp59−68, Protecting groups]参照)によって導入され得る。
【0029】
このように保護された式(IIb)の(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルは分離または精製過程を経ることなく、段階Dに用いられることができる。段階Dでは、保護された式(IVb)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を段階Aと類似した方法によって得られる。
【0030】
段階Eでは、保護された式(IVb)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を酸性条件下で段階Bと類似した方法によって脱保護基化して式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体を得る。このように得られた式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体は更なる精製過程を経ることなく段階Fに直ちに用いることができる。
【0031】
段階Eの過程中に、式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体の少量を環化反応させて目的化合物である式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンが得られる。
【0032】
段階Fでは、段階BまたはEで得た式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体を環化反応させて目的化合物である式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンが製造される。前記環化反応は米国特許第6,552,204号に開示されているように、適切な溶媒中に酸または塩基の存在下で行われることができる。
【0033】
前記酸または塩基は式(V)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサデカン酸誘導体1モルに対し0.01〜10モル当量、好ましくは0.1〜3モル当量範囲の量で用いられ得る。
【0034】
前記酸としては、例えば硫酸及び塩酸などのような無機酸;トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びカンファースルホン酸などのような有機酸;またはこれらの混合物が挙げられ、これらのうち好ましくはメタンスルホン酸である。前記塩基としては、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0035】
段階Fで使用可能な溶媒としては、水、メタノール、及びエタノールなどのようなプロトン性溶媒;エチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、及びトルエンなどの非プロトン性溶媒;またはこれらの混合溶媒が挙げられ、これらのうち好ましくはアセトニトリルである。
【0036】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンの製造
実施例1
【化8】

【0038】
活性化した亜鉛粉末4.35g、(R)−3−ヒドロキシ−テトラデカンニトリル5g、及びテトラヒドロフラン30mlを反応器に仕込んで攪拌した後、それにメタンスルホン酸0.14mlを添加し、前記反応混合物を1時間還流させてから、それに2−ブロモオクタン酸エチル9.53mlをトルエン10mlで希釈させた溶液を約1時間かけて滴下し、1時間還流させた。得られた反応混合物を室温に冷却し、それに3N HCl 20mlを30分間かけて滴下した後、約1時間攪拌した。次いで、前記反応混合物を約50℃に加熱させて約2時間攪拌した。
【0039】
セライトパッド付きブフナー漏斗を用いて、生成された固体をろ過し、酢酸エチル25mlで洗浄した。結合された有機層を水50mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリル20mlに溶解させ、それにメタンスルホン酸4.22gを添加した後、約12時間攪拌し、5℃に冷却してから、更に約2時間攪拌した。生成された固体をろ過によって分離し、冷却されたアセトニトリル5mlで洗浄して乾燥させることで、微白色固体状の標題化合物4.85g(収率:62%)を得た。
【0040】
融点:110〜112℃
H−NMR(CDCl,ケト形とエンド形との混合物,ppm):δ0.80−0.99(m,6H),1.16−2.03(m,30H),2.16−2.80(m,2H),3.22(t,0.1H,J=5.5Hz),3.41(t,0.9H,J=5.5Hz),4.25−4.40(m,0.1H),4.48−4.62(m,0.1H),4.62−4.75(m,0.8H,6.75−6.96(brs,0.1H)
【0041】
実施例2
【化9】

【0042】
活性化した亜鉛粉末2.9g及びテトラヒドロフラン10mlを反応器に仕込んで攪拌した後、これにクロロトリメチルシラン6mlを添加し、前記反応混合物を1時間還流させた後、これに(R)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリル2gをテトラヒドロフラン4mlに希釈させた溶液を約5分間かけて徐々に添加した後、約5分間攪拌した。次いで、2−ブロモオクタン酸エチル5.6mlをテトラヒドロフラン4mlに希釈させた溶液を30分間かけて滴下した後、1時間還流させた。得られた反応混合物を約5℃に冷却し、これに3N HCl 6mlを30分間かけて滴下した。その後、前記反応混合物を約50℃に加熱して1時間攪拌した。
【0043】
セライトパッド付きブフナー漏斗を用いて生成された固体をろ過し、酢酸エチル20mlで洗浄した。結合された有機層を水20ml及び塩水20mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた油性残留物をアセトニトリル10mlに溶解させ、これにメタンスルホン酸1.5gを添加した後、室温で12時間攪拌した。生成された固体をろ過によって分離し、冷却されたアセトニトリル2mlで洗浄した後、乾燥させることで、微白色固体状の標題化合物1.0g(収率:32%)を得た。
【0044】
H−NMR(CDCl,ケト形とエンド形との混合物,ppm):δ0.80−0.99(m,6H),1.16−2.03(m,30H),2.16−2.80(m,2H),3.22(t,0.1H,J=5.5Hz),3.41(t,0.9H,J=5.5Hz),4.25−4.40(m,0.1H),4.48−4.62(m,0.1H),4.62−4.75(m,0.8H,6.75−6.96(brs,0.1H)
【0045】
実施例3
段階1:(R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル−オキシ)−テトラデカンニトリルの製造
【化10】

【0046】
(R)−3−ヒドロキシ−テトラデカンニトリル2.16g、ジヒドロピラン1.93ml、及びテトラヒドロフラン20mlを反応器に仕込んで攪拌した後、これにp−トルエンスルホン酸ピリジニウム266mgを添加し、50℃に加熱した後、約2時間攪拌した。前記反応混合物を室温に冷却させた後、これに水30mlとヘキサン30mlを添加し、5分間激しく攪拌した。得られた反応混合物を相分離が起こるように放置しておいた後、水層を除去した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮することで、オイル状の標題化合物2.97g(収率:100%)を得た。
【0047】
H−NMR(CDCl,ケト形とエンド形との混合物,ppm):δ0.80−0.99(m,6H),1.16−2.03(m,30H),2.16−2.80(m,2H),3.22(t,0.1H,J=5.5Hz),3.41(t,0.9H,J=5.5Hz),4.25−4.40(m,0.1H),4.48−4.62(m,0.1H),4.62−4.75(m,0.8H,6.75−6.96(brs,0.1H)
【0048】
段階2:5,6−ジヒドロ−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−2H−ピラン−2−オンの製造
【化11】

【0049】
活性化した亜鉛粉末1.27g、段階1で得た(R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル−オキシ)−テトラデカンニトリル2.0g、及びテトラヒドロフラン8mlを反応器に仕込んで攪拌した後、これにメタンスルホン酸0.07mlを添加した。しかるのち、前記反応混合物を1時間還流させてから、2−ブロモオクタン酸エチル2.77mlをテトラヒドロフラン4mlに希釈させた溶液を約1時間かけて滴下した後、更に1時間還流させた。
【0050】
前記反応混合物を約5℃に冷却させ、3N HCl 8mlを30分間かけて滴下した後、40℃で約2時間攪拌した。セライトパッド付きブフナー漏斗を用いて生成された固体をろ過し、酢酸エチル5mlで洗浄した。結合された有機層を水50mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。得られた油性残留物をアセトニトリル8mlに溶解させ、これにメタンスルホン酸0.12gを添加した後、室温で5時間攪拌し、5℃に冷却させてから更に約1時間攪拌した。生成された固体をろ過によって分離することで、微白色固体状の標題化合物1.46g(収率:64%)を得た。
【0051】
H−NMR(CDCl,ケト形とエンド形との混合物,ppm):δ0.80−0.99(m,6H),1.16−2.03(m,30H),2.16−2.80(m,2H),3.22(t,0.1H,J=5.5Hz),3.41(t,0.9H,J=5.5Hz),4.25−4.40(m,0.1H),4.48−4.62(m,0.1H),4.62−4.75(m,0.8H,6.75−6.96(brs,0.1H)
【0052】
実施例4
段階1:(R)−3−[トリメチルシリルオキシ]−テトラデカンニトリルの製造
【化12】

【0053】
(R)−3−ヒドロキシ−テトラデカンニトリル5g及び塩化メチレン35mlを反応器に仕込んで攪拌した。前記反応混合物を0℃に冷却させ、これにトリエチルアミン3.87mlを添加した後、これに塩化トリメチルシリル3.38mlを約30分間かけて添加し、約1時間攪拌した。次いで、前記反応反応混合物を室温まで徐々に加熱して約1時間攪拌した後、これに水50mlを添加し、5分間激しく攪拌した。それから水層を除去した。有機層を水50mlと混合して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、オイル状の標題化合物6.66g(収率:100%)を得た。
【0054】
H−NMR(CDCl,ppm):δ0.15(s,9H),0.88(t,3H,J=6.7Hz),1.18−1.43(m,18H),1.18−1.65(m,2H),2.44(dd,2H,J=5.7Hz),3.82−4.00(m,1H)
【0055】
段階2:5,6−ジヒドロ−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−2H−ピラン−2−オンの製造
【化13】

【0056】
活性化した亜鉛粉末2.2g、テトラヒドロフラン10ml、及びメタンスルホン酸0.02mlを反応器に仕込み、前記反応混合物を1時間還流させた後、これに段階1で得た(R)−3−トリメチルシリルオキシテトラデカンニトリル2gをテトラヒドロフラン4mlに希釈させた溶液を約5分間かけて徐々に添加し、更に約5分間攪拌した。これに2−ブロモオクタン酸エチル3.6mlをテトラヒドロフラン4mlに希釈させた溶液を30分間かけて滴下し、更に1時間還流させた。
【0057】
前記反応混合物を約5℃に冷却させ、3N HCl 6mlを30分間かけて滴下した後、40℃で2時間攪拌した。セライトパッド付きブフナー漏斗を用いて生成された固体をろ過し、酢酸エチル20mlで洗浄した。結合された有機層を水20ml及び塩水20mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。得られた油性残留物をアセトニトリル10mlに溶解させ、これにメタンスルホン酸1.1gを添加した後、室温で12時間攪拌した。生成された固体をろ過によって分離することで、微白色固体状の標題化合物1.54g(収率:65%)を得た。
【0058】
H−NMR(CDCl,ケト形とエンド形との混合物,ppm):δ0.80−0.99(m,6H),1.16−2.03(m,30H),2.16−2.80(m,2H),3.22(t,0.1H,J=5.5Hz),3.41(t,0.9H,J=5.5Hz),4.25−4.40(m,0.1H),4.48−4.62(m,0.1H),4.62−4.75(m,0.8H,6.75−6.96(brs,0.1H)
【0059】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて説明したが、本発明の技術分野における熟練者であれば、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形及び変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)式(II)の化合物と式(III)の化合物とを亜鉛存在下で反応させて、式(IV)の化合物を得る段階;
2)式(IV)の化合物を酸水溶液で処理して、式(V)の化合物を得る段階;及び
3)式(V)の化合物を酸性または塩基性条件下で環化させる段階を含む、式(I)の(6R)−3−ヘキシル−4−ヒドロキシ−6−ウンデシル−5,6−ジヒドロピラン−2−オンを製造する方法:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

前記式中、
P’は、水素、または酸性条件下で除去可能なトリアルキルシリル及びアルコキシアルキルから選ばれる保護基であり、
Rは、メチル、エチル、またはプロピルである。
【請求項2】
P’が水素であり、Rがメチル、エチル、またはイソプロピルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシアルキル基が、テトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、2−メトキシ−2−プロピル、または1−エトキシ−1−エチルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記式(III)の化合物が、2−ブロモオクタン酸メチル、2−ブロモオクタン酸エチル、または2−ブロモオクタン酸プロピルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階1)において、前記亜鉛が式(II)の化合物1モルに対し1〜10モル当量範囲の量で用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
段階1)において、I、1,2−ジブロモエタン、メタンスルホン酸、及び塩化トリメチルシリルからなる群から選ばれる添加剤をさらに添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
段階1)において、鉛をさらに添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
段階1)が、エチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる溶媒中で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
段階2)で用いられる酸が、塩酸、硫酸、及び臭化水素酸からなる群から選ばれる無機酸;トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びカンファースルホン酸からなる群から選ばれる有機酸;またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
段階2)で用いられる前記酸が、前記式(IV)の化合物1モルに対し、0.01〜5モル当量範囲の量で用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
段階2)が、水、メタノール、及びエタノールからなる群から選ばれるプロトン性溶媒;エチルエテール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、及びトルエンからなる群から選ばれる非プロトン性溶媒;またはこれらの混合溶媒中で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
式(IV)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体:
【化6】

前記式中、
P’は、水素、または酸性条件下で除去可能なトリアルキルシリル及びアルコキシアルキルから選ばれる保護基であり、
Rは、メチル、エチル、またはプロピルである。
【請求項13】
式(II)の化合物を活性化した亜鉛の存在下で式(III)の化合物と反応させる段階を含む、式(IV)の(5R)−2−ヘキシル−5−ヒドロキシ−3−イミノヘキサデカン酸誘導体を製造する方法:
【化7】

【化8】

【化9】

前記式中、
P’は、水素、または酸性条件下で除去可能なトリアルキルシリル及びアルコキシアルキルから選ばれる保護基であり、
Rは、メチル、エチル、またはプロピルである。

【公表番号】特表2011−503052(P2011−503052A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532998(P2010−532998)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006371
【国際公開番号】WO2009/057938
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】