説明

(E)−2,6−ジアルコキシスチリル4−置換ベンジルスルホン類の非経口投与用製剤

異常細胞増殖によって仲介される状態の予防及び/または治療のための、アミノ置換(e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン類並びにそのナトリウム及びカリウム塩の非経口投与のための製剤が提供される。非経口投与のための組成物が提供され、これは有効量の式(I)の化合物または式(IIa)の化合物、並びに、本質的にポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピリジンN-オキサイド、ビニルピリジンN-オキサイドとビニルピリジンとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも一つの水溶性ポリマーの少なくとも約50質量%を含んで提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のキナーゼ阻害剤の非経口デリバリーのための組成物並びに癌及びこれに関連した増殖性疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質チロシンキナーゼは、明確な化学反応を触媒する酵素である:チロシン残基のリン酸化反応(Hunter et al, Annu Rev Biochem 54:897 (1985))。特にレセプターチロシナーゼキナーゼは、これらのキナーゼの基質ドメインのためのブロッカーが有効且つ選択的な抗増殖剤を生成させがちであることから、薬物設計のための魅力的なターゲットである。タンパク質チロシンキナーゼブロッカーの抗増殖剤としての潜在的使用は、早くも1981年に認識されており、この時にケルセチンがPTKブロッカーとして示された(Graziani et al., Eur. J. Biochem. 135:583-589 (1983))。
【0003】
最も良く理解されているMAPK経路には、Ras/Raf/MEK/ERKキナーゼカスケードを構成する細胞外シグナル調節キナーゼが含まれる(Boudewijn et al, Trends Biochem. Sci. 20, 18 (1995))。この経路が様々な刺激によって活性化されると、MAPKは、細胞核へ移動する幾つかの転写因子を含む様々なタンパク質をリン酸化し、遺伝子転写を活性化する。この経路の負の調節は、これらの事象のカスケードを停止させうる。
【0004】
レセプターチロシンキナーゼをターゲットにし、且つRas/Raf/MEK/ERKキナーゼカスケードを停止させる、新たな抗癌化学療法剤を安定化するための製剤が求められている。一般的な癌タンパク、特にシグナル伝達タンパク質は、その活性が細胞増殖のために必須であるタンパク質のサブクラスを表すため、またその活性が増殖性疾患においては大幅に増幅されるために化学療法のためのより選択的なターゲットとなりがちである。しかしながら、新たな抗癌化学療法剤は、一般的に疎水性且つ不安定であり、このため、通常は、貯蔵性及び非経口投与の際の有効性に関して、製剤が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】米国特許第6486210号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献2】Hunter et al, Annu Rev Biochem 54:897 (1985)
【非特許文献3】Boudewijn et al, Trends Biochem. Sci. 20, 18 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
所定のキナーゼ抗癌性剤の有効なデリバリー及びその結果起こる増殖性細胞、例えば腫瘍細胞の死滅を可能にするために、抗癌製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、異常細胞増殖によって仲介される状態の予防及び/または治療のための、アミノ置換(e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン類並びにそのナトリウム及びカリウム塩の非経口投与のための製剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
非経口投与のための組成物は、下式I:
【化1】

の化合物、または下式IIa:
【化2】

の化合物の有効量、並びに、本質的にポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピリジンN-オキサイド、ビニルピリジンN-オキサイドとビニルピリジンとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも一つの水溶性ポリマーの少なくとも約25質量%を含んで提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)の合成方法を概説するフローチャートを示す。
【図2】図2は、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)の別の合成方法を概説するフローチャートを示す。
【0011】
特記のない限り、本明細書中に使用される全ての技術的及び化学的な用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書中に言及される、増殖性疾患の治療のための置換スチリルベンジルスルホン類と題した米国特許第6486210号を含む全ての文献及び特許文献は、参照することにより本願発明に援用される。
【0012】
本発明の組成物及び製剤が企図する化合物、すなわち(アミノ置換(e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン類(本明細書中では「化合物」と呼称する))は、出願人が先に上記の同時係属出願に開示したものであるが、ほ乳類の細胞成長に関連する病態生理学的疾患の予防及び/治療のために有益な、治療用化合物である。しかしながら、この化合物は、一般的に疎水性である。然るにこれらの化合物は、通常は貯蔵性及び非経口投与の際の有効性に関して、製剤が困難である。非経口投与には、例えば、静脈内、筋内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、直腸、膣内、嚢内(例えば膀胱内)、皮内、局所、舌下、または皮下投与が含まれる。更にまた、本明細書中に記載される製剤中に化合物が安定化された際には、特性の改善が得られる。
【0013】
I. 構造種
本発明の組成物中における使用のための化合物には、式Iのアミノ置換(e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン類またはこうした化合物の塩が含まれる。
【化3】

式中、
Xは下記(i)及び(ii)からなる群より選択される。
【化4】

X1は下記(i)、(ii)、及び(iii)からなる群より選択される。
【化5】

式中、
X1は1つ以上の化学保護基で任意に保護され、
gは0又は1であり、
各Mは、-(C1-C6)アルキレン、-(CH2)a-V-(CH2)b-、-(CH2)d-W-(CH2)e-、及び-Z-からなる群より個別に選択される二価の結合基であり、
各yは、0及び1からなる群より個別に選択され、
各Vは、アリーレン、ヘテロアリーレン、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-、-C(=O)(C1-C6)ペルフルオロアルキレン-、-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4からなる群より個別に選択され、
各Wは、-NR4-、-O-、及び-S-からなる群より個別に選択され、
各aは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各bは、0、1、2 、及び3からなる群より個別に選択され、
各dは、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各eは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
Zは次式であり、
【化6】

式中、-Z-の絶対立体化学はDまたはL、あるいはDとLとの混合物であり、
各Raは、-H、-(C1-C6)アルキル、-(CH2)3-NH-C(NH2)(=NH)、-CH2C(=O)NH2、-CH2COOH、-CH2SH、-(CH2)2C(=O)-NH2、-(CH2)2COOH、-CH2-(2-イミダゾリル)、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)2-S-CH3、フェニル、CH2-フェニル、-CH2-OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-(3-インドリル)、-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)、-CH(CH3)2、及び-CH2-CH3からなる群より個別に選択され、且つRa及びR1が共に5-、6-、または7員の複素環を形成する化合物を含み、
各R1は、-H、無置換アリール、置換アリール、置換複素環、無置換複素環、-CO2R5、-C(=O)NR42、-CR4R6R7、-C(=NH)-NR42、-(C1-C6)ペルフルオロアルキル、-CF2Cl、-P(=O)(OR4)2、-OP(=O)(OR4)2、及び分子量1000未満の一価のペプチジル部分からなる群より個別に選択されるが、yが0である場合には、R1は-CO2R5であり、R5は-Hでないことを条件とし、
各R2は、-H、-(C1-C6)アルキル、及びアリール(C1-C3)アルキルからなる群より個別に選択され、ここで-R2及び-(M)y-R1は任意に共有結合して置換もしくは無置換の5、6、または7員の複素環を形成してよく、
各R3は、-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は、-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
ここでR4とR1とが同一の窒素原子に結合している場合には、R1とR4とは共に複素環を形成していてよく、また二つのR4基がジェミナルに同一の窒素原子に結合している場合には、二つのR4基は共に複素環を形成していて良く、
各R5は、-H、-(C1-C6)アルキル、及び-(C1-C6)アシルからなる群より個別に選択され、
各R6は、-H、-(C1-C6)アルキル、-CO2R5、-C(=O)R7、-OR5、-OC(=O)(CH2)2CO2R5、-SR4、グアニジノ、-NR42、-NR43+、-N+(CH2CH2OR5)3、フェニル、置換フェニル、複素環、置換複素環、及びハロゲンからなる群より個別に選択され、
各R7は-Ra、ハロゲン、-NR42、及び二つの窒素原子を含む複素環からなる群より個別に選択され、且つ
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
ここでR1、Ra、R2、R6、及びR7を含むかまたはこれらに含まれる、置換アリール及び置換複素環基の置換基は、ハロゲン、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、-NO2、-C≡N、-CO2R5、C(=O)O(C1-C3)アルキル、-OR5、-(C2-C6)-OH、ホスホナト、-NR42、-NHC(=O)(C1-C6)アルキル、スルファミル、-OC(=O)(C1-C3)アルキル、-O(C2-C6)-N((C1-C6)アルキル)2、及び-CF3からなる群より個別に選択されるが、
(1) R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、または-SO2-であり、bが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のアミノ末端を介して、または側鎖アミノ基を介してMにカップリングし、それぞれアミド、チオアミド、スルフィンアミド、またはスルホンアミドを形成し、
(2) R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)NR3-、-SO2NR3-、または-NR4-であり、bは0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれイミド、スルホンイミド、またはカルボキサミドを形成し、且つ
(3) R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Wが-S-または-O-であり、dが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれカルボチオ酸エステルまたはカルボン酸エステルを形成する
ことを条件とする。
【0014】
次なる一つの実施態様によれば、式Iの化合物は、以下のように与えられる。
各Vは、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-;-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4からなる群より個別に選択され、
Zは次式であり、
【化7】

式中、-Z-の絶対立体化学はDまたはL、あるいはDとLとの混合物であり、
各Raは、-H、-CH3、-(CH2)3-NH-C(NH2)(=NH)、-CH2C(=O)NH2、-CH2COOH、-CH2SH、-(CH2)2C(=O)-NH2、-(CH2)2COOH、-CH2-(2-イミダゾリル)、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)2-S-CH3、フェニル、CH2-フェニル、-CH2-OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-(3-インドリル)、-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)、-CH(CH3)2、及び-CH2-CH3からなる群より個別に選択され、且つRa及びR1が共に5-、6-、または7員の複素環を形成する化合物を含み、
各R1は、-H、無置換アリール、置換アリール、置換複素環、無置換複素環、-CO2R5、-C(=O)NR42、-CR4R6R7、-C(=NH)-NR42、及び分子量1000未満の一価のペプチジル部分からなる群より個別に選択されるが、yが0である場合には、R1は-CO2R5であり、R5は-Hでないことを条件とし、
各R6は、-H、-(C1-C6)アルキル、-CO2R5、-C(=O)R7、-OH、-SR4、-(C1-C3)アルコキシ、-(C1-C3)アルキルチオ、グアニジノ、-NR42、フェニル、置換フェニル、複素環、置換複素環、及びハロゲンからなる群より個別に選択され、
各R7は-H、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、-NR42、及び二つの窒素原子を含む複素環からなる群より個別に選択され、
ここでR1、Ra、R2、R6、及びR7を含むかまたはこれらに含まれる、置換アリール及び置換複素環基の置換基は、ハロゲン、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、-NO2、-C≡N、-CO2R5、C(=O)O(C1-C3)アルキル、-OH、-(C2-C6)-OH、ホスホナト、-NR42、-NHC(=O)(C1-C6)アルキル、スルファミル、-OC(=O)(C1-C3)アルキル、-O(C2-C6)-N((C1-C6)アルキル)2、及び-CF3からなる群より個別に選択される。
【0015】
次なる好ましい実施態様によれば、式Iの化合物が提供され、式中の各Vは、下式:
【化8】

、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-;-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4-からなる群より個別に選択される。
【0016】
更に次なる好ましい実施態様によれば、式Iの化合物が提供され、式中の各Vは、下式:
【化9】

、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-;-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4-からなる群より個別に選択される。その次なる別の実施態様によれば、式Iの化合物が提供され、式中のZはL型の絶対配置を有する。
【0017】
式Iの好ましい化合物は、例えば下記の化合物及びその塩を含む。
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[4-(4-メチルピペラジン-l-イル)ベンズアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリエチルアンモニウムアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[トリ-(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロメタンスルホンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[3-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン二ナトリウム塩;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルカルバモイル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2-ジフルオロ-マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ペンタフルオロプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(メチル-(2,2-ジフルオロ)マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2-ジフルオロ-マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノ-α,α-ジフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2,3,3-テトラフルオロエチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン。
【0018】
式Iの第一の実施態様によれば、Xは下式:
【化10】

であり、yは0であり、且つR2は-Hである。
次なる実施態様によれば、下記の式IIIの化合物が提供される。
【化11】

式中、
gは0又は1であり、
各R2は、-H、-(C1-C6)アルキル、及びアリール(C1-C3)アルキルからなる群より個別に選択され、ここで-R2及び-(M)y-R1は任意に共有結合して置換もしくは無置換の5、6、または7員の複素環を形成してよく、
各R3は、-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は、-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
X1は下記(i)、(ii)、及び(iii)からなる群より選択される。
【化12】

式中、
X1は1つ以上の化学保護基で任意に保護され、
適切な保護基は、式IIIの3-アミノ基を誘導化するために設計された反応に対して安定である。次いで、前記保護基は、任意に除去されてX1を再生成させる。
【0019】
次なる別の実施態様においては、下記の式IIIaの化合物が提供される。
【化13】

式中、X2は、-NO2及び-NH2からなる群より選択され、ここで前記-NH2は化学保護基で任意に保護されている。
【0020】
式Iの化合物を合成するための戦略には、式IIIaの3-位での、第一級もしくは第二級アミノ基の誘導化が含まれる。こうした3-アミノ基の誘導化には、例えばカルボキサミド類、スルホンアミド類、アルキルアミン類、窒素含有複素環類、イミン類、グアニジン類、尿素類、アミジン類、及びアミノケトン類を形成する反応が含まれる。
【0021】
式IIIaの中間体はまた、ニトロ基または保護されたアミノ基を5-位に導入する。合成戦略においては、この5-置換基は第2の潜在的なアミノ基として役立つ。この保護基戦略の利用により、これら二つのアミノ基、すなわち式IIIaの3-アミノ基と、3-アミノ基の誘導化の条件に不活性な5-位にある部分の差別的誘導化が可能になる。それ故、合成経路に含まれるのは、まず3-アミノ基の誘導化、次いで(a) X2が保護されたアミンであるならば脱保護、及び(b) X2がニトロ基であるならば化学的還元、のいずれかを経る5-置換基のアミノ基への変換である。然るに、逆合成の観点からは、この合成経路により、その一つが5-位にあって(化学保護基により、またはニトロ酸化状態(nitro oxidation state)であることにより)保護されており、このため3-アミノ基の誘導化の条件に対して不活性である、二つのアミノ基の差別的誘導化が可能になる。5-位の保護されたアミンのために適切な化学保護基には、例えば、ベンジル、2,4-ジメトキシ-ベンジル、およびベンジルオキシカルボニル(CBZ)が含まれる。同様に、X2が−NO2である場合には、3-アミノ基は前述の方式で誘導化されて良い。次いでNO2基は、任意に、当業者に既知である様々な操作を経て、対応する5-アミノ基に化学的に還元されてよい。
【0022】
その後、5-ニトロ基の還元かまたは保護された5-アミノ化合物からの保護基の除去によって生成した5-アミノ基は、任意に誘導化される。5-アミノ基の誘導化は、3-アミノ基の誘導化と同様でも相違しても良い。
【0023】
式IIIaの前記化合物の次なる実施態様によれば、Qが-(C1-C6)アルコキシである化合物が提供される。
式IIIaの次なる別の実施態様によれば、Qは-CH3である。
式IIIaの更に次なる別の実施態様によれば、R3は-CH3である。こうした化合物の一つは、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-アミノベンジルスルホンである。
【0024】
式Iの第2の実施態様によれば、Xは下式:
【化14】

であり、R2は-Hであり、yは0であり、且つ
R1は、無置換アリール、置換アリール、置換複素環、無置換複素環、-CO2R3、-C(=O)NR42、-CHR6R7、-C(=NH)-NR42、及び分子量1000未満の一価のペプチジル部分からなる群より選択される。
【0025】
式Iの第3の実施態様によれば、Xは下式:
【化15】

であり、yは1であり、Mは-(CH2)a-V-(CH2)b-であり、Vは-C(=O)-である。
【0026】
その次なる実施態様によれば、下記の式IVの化合物及びその塩が提供される。
【化16】

【0027】
式IVの好ましい化合物には、例えば、下記の化合物及びその塩が含まれる。
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジアミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(クロロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(4-メチルピペラジニル)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-アミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ヒドロキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ピリジニウム-l-イル)アセトアミド-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(エチルマロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(グルタルアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(スクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-クロロスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
またはこうした化合物の塩。
【0028】
式Iの第4の実施態様によれば、Xは下式:
【化17】

であり、yは1であり、M-Z-である。
【0029】
その次なる実施態様によれば、式Vの化合物及びその塩が提供され、下式:
【化18】

において、
各Raは、-H、-CH3、-(CH2)3-NH-C(NH2)(=NH)、-CH2C(=O)NH2、-CH2COOH、-CH2SH、-(CH2)2C(=O)-NH2、-(CH2)2COOH、-CH2-(2-イミダゾリル)、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)2-S-CH3、フェニル、CH2-フェニル、-CH2-OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-(3-インドリル)、-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)、-CH(CH3)2、及び-CH2-CH3からなる群より個別に選択され、且つRa及びR1が共に5-、6-、または7員の複素環を形成する化合物を含む。
【0030】
Ra及びR1の組み合わせによって形成される複素環には、例えばピロリジン、ヒドロキシピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、及びチアゾリジンが含まれる。
【0031】
式Vの好ましい化合物には、例えば下記の化合物及びその塩が含まれる。
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-リシンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-セリンアミド; 及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-D-セリンアミド。
式Iの第5の実施態様によれば、Xは下式:
【化19】

であり、yは1であり、Mは-(CH2)a-V-(CH2)b-であり、Vは-SO2-である。
【0032】
その次なる実施態様によれば、式VIの化合物及びその塩が提供される。
【化20】

式Viの化合物には、例えば下記の化合物及びその塩が含まれる。
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルスルファミル)-4-メトキシベンジル-スルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-メトキシベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジニトロベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン; 及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジアミノベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン。
【0033】
式Iの第6の実施態様によれば、Xは下式:
【化21】

であり、yは0であり、R1は-C(=NH)-NR42である。
【0034】
その次なる実施態様によれば、式VIIの化合物及びその塩が提供される。
【化22】

こうした化合物の一つは、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-グアニジノ-4-メトキシベンジルスルホンまたはその塩である。
【0035】
式Iの第7の実施態様によれば、Xは下式:
【化23】

であり、yは1であり、Mは-(C1-C6)アルキレン-である。
【0036】
その次なる実施態様によれば、式VIIIの化合物及びその塩が提供される。
【化24】

式VIIIの化合物の例には、例えば、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(N-メチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン
並びにその塩が含まれる。
【0037】
式Iの化合物の第8の実施態様によれば、下記の式IXの化合物及びその塩が提供される。
【化25】

こうした化合物の一つは、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロフェニルイミノ)-4-メトキシベンジルスルホンまたはその塩である。
【0038】
式Iの第9の実施態様によれば、Xは下式:
【化26】

であり、yは1であり、Mは-(CH2)a-V-(CH2)b-であり、Vは-C(=O)NR4-である。
【0039】
その次なる実施態様によれば、式Xの化合物及びその塩が提供される。
【化27】

式Xの化合物の例は、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-ウレイド-4-メトキシベンジルスルホンまたはその塩である。
【0040】
式Iの化合物の第10の実施態様によって、下記の式IIの化合物及びその塩が提供される。
【化28】

式中、
gは0又は1であり、
各R3は、-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は、-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、且つ、
X1は下記(i)、(ii)、及び(iii)からなる群より選択される。
【化29】

式中、
X1は1つ以上の化学保護基で任意に保護され、
適切な保護基は、式IIIの3-アミノ基を誘導化するために設計された反応に対して安定である。次いで、前記保護基は、任意に除去されてX1を再生成させる。
【0041】
次なる別の実施態様では、下記の式IIaの化合物が提供される。
【化30】

式中、
式中、X2は、-NO2及び-NH2からなる群より選択され、化学保護基で任意に保護されている。
式IIaのこうした化合物の一つは、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-ニトロベンジルスルホンまたはその塩である。
【0042】
式Iの第11の実施態様によれば、Xは下式:
【化31】

であり、yは0であり、R1は-CHR6R7であり、R6はCO2R5であり、R7はRaである。
【0043】
その次なる実施態様によれば、式XXの化合物及びその塩が提供される。
【化32】

【0044】
式XXの化合物の例は、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;及び(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン;またはその塩である。
好ましい化合物は、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム及びカリウム塩であり、特にナトリウム塩である。
【0045】
式Iの第12の実施態様によれば、Xは下式:
【化33】

であり、yは1であり、Mは-(C1-C6)アルキレン-である。
【0046】
その次なる実施態様によれば、式XXIの化合物及びその塩が提供される。
【化34】

式XXIの化合物の例は、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-カルボキシプロピルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-カルボキシエチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
またはこうした化合物の塩である。
【0047】
本発明の組成物中における使用のための化合物の例には、以下が含まれる。
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【表1F】

【表1G】

【表1H】

【表1I】

【表1J】

【表1K】

【表1L】

【表1M】

【表1N】

【表1O】

【表1P】

【表1Q】

【0048】
これらの化合物の薬理学的に活性な塩、特にナトリウム(Na)塩が好ましい。開発化合物ON01910.Na(NOVONEX(登録商標))は、癌及び別の疾病分野において応用を有する、最も好ましく極めて強力なキナーゼ阻害剤である((E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン)。図示され、ON01910.Naとも表示されるこの化合物の塩は、本発明の製剤中における使用のために最も好ましい塩である。
【化35】

実験式=C21H24NO8SNa。分子量=473.47。この化合物は疎水性であるが、ここに示すNa塩は非常に可溶性である。ナトリウム塩は乳白色から黄色の無定形固体であり、完全に乾燥した後に容易に水を吸収する。薬剤物質は、上限3モル、または上限4モルの水で水和させて良い。この分子はまた、別の溶媒と溶媒和物を形成することができる。図1、実施例1の反応スキーム例(ON 01910.Na合成の臨床材料法)を参照のこと。合成は、2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒド(Hunan Xinyu(Changsha,China)製)及び3-ニトロ-4-メトキシベンジルスルホニル酢酸(ChemPacific(Hangzhou,China)製から出発する。
【0049】
II. 製剤
本発明の組成物は、アミノ-置換 (e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン類置換化合物の安定性、可溶性、及び有効性を改善する。これらの化合物は、多様な癌細胞において広範囲の活性を示す。本明細書中に示されるのは、これらの化合物の可溶化及び安定化、並びに癌及び関連する増殖性疾患の予防及び/または治療のための非経口投与によるその有効なデリバリーを提供する組成物である。
【0050】
本明細書中で使用される「有効量」なる語は、本発明の組成物中での、ほ乳類への非経口投与に際して治療を必要とするほ乳類に治療効果をもたらすことのできる、本明細書の詳細な説明中の化合物の量を意味する。本明細書中で使用される「治療効果」は、病理生理学的または疾患状態、例えば異常細胞成長及び/または増殖に関する疾患を予防、制御、または治療する性能を意味する。
【0051】
本明細書中に記載された組成物は、一般的に少なくとも一つの化合物を約10mg/ml乃至約400mg/mlの範囲で含んで製剤される。本発明の好ましい組成物は、本明細書の範囲内の少なくとも一つの化合物を、約25mg/ml乃至約250mg/mlの範囲内の濃度で含む。本明細書中に記載された組成物は、本明細書の範囲内の少なくとも一つの化合物を、約40mg/ml乃至約200mg/mlの範囲内の濃度で含んで製剤される。本明細書中に記載される組成物はまた、本明細書の範囲内の少なくとも一つの化合物を、約50mg/ml乃至約150mg/mlの範囲内の濃度で含んで製剤される。本明細書中に記載される組成物はまた、本明細書の範囲内の少なくとも一つの化合物を、約60mg/ml乃至約100mg/mlの範囲内の濃度で含んで製剤される。本明細書中に記載される組成物はまた、本明細書の範囲内の少なくとも一つの化合物を、約75mg/mlの濃度で含んで製剤される。
【0052】
本発明の組成物は、一般的に活性成分、すなわち、前記化合物の、注入前の適当な非経口希釈剤での希釈の前の、貯蔵及び取扱のための濃縮形態を用いて製剤される。1回の調剤は、本明細書中に記載されるあらゆる組成物の、一般的に約1ml乃至5mlの範囲内である。本明細書中に記載される組成物の、3mlの別個の調剤が好ましい。この調剤は、例えば5mlのバイアル中に実装されてよい。
【0053】
本発明の組成物を、投与の前に例えば約7部の希釈剤で(7:1)希釈してよい(例えば、50%のPEG中75/mg/mlの製剤(実施例II))。しかしながら、採用される希釈倍数及び希釈剤は製剤中の薬剤の濃度、媒体の組成、すなわちその製剤が例えば約25%、25%より多量 (25%を含まない、例えば約28%)、約30%、約35%、約40%、約42.5%、約45%、約47.5%、約50%、約52.5%、約55%、約57.5%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%または約100%(並びにこれらの間の値)のPEGを含むか否かに依存する。本発明の組成物は、しかしながら、注入前の適当な非経口希釈剤の約2体積から注入前の適当な非経口希釈剤の約12体積までのいずれで希釈されてもよい。本発明の組成物の非経口投与のための最終希釈生成物は、約5.0乃至約9.0の範囲内のpHを有するべきである。好ましくは、非経口投与のための最終希釈生成物は、約7.0乃至約7.5の範囲内のpHを有するべきである。約7.4の最終希釈生成物pHが好ましい。投与のための希釈製剤のオスモル濃度は、約200乃至約400mOsm/kgの範囲内であるべきである。投与のための希釈製剤の好ましいオスモル濃度は、約270乃至約330mOsm/kgの範囲内であるべきである。投与のための希釈製剤の好ましいオスモル濃度は、約300mOsm/kgであるべきである。
【0054】
誘電率
本発明の組成物が、従来の製剤と比較して、特に開示される化合物の溶解性及び安定性を格別予想外に増大させ、これによって非経口投与の際の有効性及び治療的価値を著しく増大させることが、本明細書中に示される。しかしながら、劇的な安定化効果は、製剤媒体の誘電率を低下させることによって観察される。本明細書中に記載される化合物に対する溶媒の双極子モーメントの影響が、化合物の有効な非経口デリバリーのため、特に有効性のために、組成物の製剤において非常に重要な因子であることが判明している。これらの化合物の遷移状態における活性錯体の安定化に対する、イオン強度及び誘電率の影響は、非経口投与のための有効な組成物の製剤において最重要である。
【0055】
有効量の式Iの化合物または式IIaの化合物と少なくとも約25質量%(所定の例示的実施態様では約50質量%、例えば約40質量%乃至約60質量%)の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、非経口投与のための組成物が提供され、ここでは、式Iが下記:
【化36】

[Xは下記(i)及び(ii)からなる群より選択され、
【化37】

X1は下記(i)、(ii)、及び(iii)からなる群より選択され、
【化38】

式中、X1は1つ以上の化学保護基で任意に保護され、
gは0又は1であり、
各Mは、-(C1-C6)アルキレン、-(CH2)a-V-(CH2)b-、-(CH2)d-W-(CH2)e-、及び-Z-からなる群より個別に選択される二価の結合基であり、
各yは、0及び1からなる群より個別に選択され、
各Vは、アリーレン、ヘテロアリーレン、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-、-C(=O)(C1-C6)ペルフルオロアルキレン-、-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4からなる群より個別に選択され、
各Wは、-NR4-、-O-、及び-S-からなる群より個別に選択され、
各aは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各bは、0、1、2 、及び3からなる群より個別に選択され、
各dは、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各eは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
Zは次式であり、
【化39】

式中、-Z-の絶対立体化学はDまたはL、あるいはDとLとの混合物であり、
各Raは、-H、-(C1-C6)アルキル、-(CH2)3-NH-C(NH2)(=NH)、-CH2C(=O)NH2、-CH2COOH、-CH2SH、-(CH2)2C(=O)-NH2、-(CH2)2COOH、-CH2-(2-イミダゾリル)、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)2-S-CH3、フェニル、CH2-フェニル、-CH2-OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-(3-インドリル)、-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)、-CH(CH3)2、及び-CH2-CH3からなる群より個別に選択され、且つRa及びR1が共に5-、6-、または7員の複素環を形成する化合物を含み、
各R1は、-H、無置換アリール、置換アリール、置換複素環、無置換複素環、-CO2R5、-C(=O)NR42、-CR4R6R7、-C(=NH)-NR42、-(C1-C6)ペルフルオロアルキル、-CF2Cl、-P(=O)(OR4)2、-OP(=O)(OR4)2、及び分子量1000未満の一価のペプチジル部分からなる群より個別に選択されるが、yが0である場合には、R1は-CO2R5であり、R5は-Hでないことを条件とし、
各R2は、-H、-(C1-C6)アルキル、及びアリール(C1-C3)アルキルからなる群より個別に選択され、ここで-R2及び-(M)y-R1は任意に共有結合して置換もしくは無置換の5、6、または7員の複素環を形成してよく、
各R3は、-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は、-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
各R5は、-H、-(C1-C6)アルキル、及び-(C1-C6)アシルからなる群より個別に選択され、
各R6は、-H、-(C1-C6)アルキル、-CO2R5、-C(=O)R7、-OR5、-OC(=O)(CH2)2CO2R5、-SR4、グアニジノ、-NR42、-NR43+、-N+(CH2CH2OR5)3、フェニル、置換フェニル、複素環、置換複素環、及びハロゲンからなる群より個別に選択され、
各R7は-Ra、ハロゲン、-NR42、及び二つの窒素原子を含む複素環からなる群より個別に選択され、且つ
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
ここでR1、R2、Ra、R6、及びR7を含むかまたはこれらに含まれる、置換アリール及び置換複素環基の置換基は、ハロゲン、(C1-C6)アルキル、-NO2、-C≡N、-CO2R5、C(=O)O(C1-C3)アルキル、-OR5、-(C2-C6)-OH、ホスホナト、-NR42、-NHC(=O)(C1-C6)アルキル、スルファミル、-OC(=O)(C1-C3)アルキル、-O(C2-C6)-N((C1-C6)アルキル)2、及び-CF3からなる群より個別に選択されるが、
(1)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、または-SO2-であり、bが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のアミノ末端を介して、または側鎖アミノ基を介してMにカップリングし、それぞれアミド、チオアミド、スルフィンアミド、またはスルホンアミドを形成し、
(2)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)NR3-、-SO2NR3-、または-NR4-であり、bは0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれイミド、スルホンイミド、またはカルボキサミドを形成し、且つ
(3)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Wが-S-または-O-であり、dが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれカルボチオ酸エステルまたはカルボン酸エステルを形成する
ことを条件とする]
であり、式IIaが下記:
【化40】

[gは0または1であり、
各R3は-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
X2は任意に化学保護基で保護されたNO2及び-NH2からなる群より選択される]
、あるいはこれらの製薬品として有効な塩、プロドラッグ、または代謝物である。
【0056】
本発明の組成物としての製剤のために好ましい化合物には、以下に限定されるものではないが、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[4-(4-メチルピペラジン-l-イル)ベンズアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリエチルアンモニウムアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[トリ-(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロメタンスルホンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[3-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジエチルホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン二ナトリウム塩;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルカルバモイル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ペンタフルオロプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(メチル-(2,2-ジフルオロ)マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2-ジフルオロ-マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノ-α,α-ジフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2,3,3-テトラフルオロエチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-アミノベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-ニトロベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジアミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(クロロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(4-メチルピペラジニル)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-アミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ヒドロキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ピリジニウム-l-イル)アセトアミド-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(エチルマロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(グルタルアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(スクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-クロロスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-リシンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-D-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルスルファミル)-4-メトキシベンジル-スルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-メトキシベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジニトロベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジアミノベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-グアニジノ-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(N-メチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロフェニルイミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ウレイド)-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-カルボキシプロピルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-カルボキシエチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;またはこれらの製薬品として許容される塩
が含まれる。
【0057】
本明細書中で使用される「水溶性ポリマー」なる語には、以下に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピリジンN-オキシド、ビニルピリジンN-オキシドとビニルピリジンとのコポリマー等、並びにこれらの誘導体及び組み合わせが含まれる。
【0058】
ポリオキシエチレン及び/またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、本発明の製剤中における使用のための水溶性ポリマーの例である。例えば、Poloxamer 407(例えば、Pluronic F 127、Lμtrol(登録商標)micro 127)及び/またはPoloxamer 188(例えば、Pluronic F 68、Lμtrol(登録商標)micro 68)は、本発明の製剤中に個別にまたは組み合わせとして使用可能なポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーである。BASF Corporation, Mount Olive, NJ.
例えば、より低い誘電率は、更に予想外にON1910.Naの安定性を増大させる。
【0059】
ポリエチレングリコール類(PEG)が好ましい水溶性ポリマーである。低分子量液体ポリエチレングリコール類、例えば、PEG 300、PEG 400、PEG 600、及びPEG 800が、本発明の製剤中に、例えば個別にまたは互いに組み合わせて使用することのできる好ましい水溶性ポリマーである。特に好ましいのは、PEG 300、PEG 400、及びPEG 600である。Lutrol(登録商標)E 300、Lutrol(登録商標)E 400、及びLutrol(登録商標)E 600は、例えば、BASF社(Mount Olive, NJ)から市販されている。PEG 400(ポリエチレングリコール 400、Macrogol 400、PEG 400、ポリ(オキシ-l,2-エタンジイル)、アルファ-ヒドロ-オメガ-ヒドロキシ-(CAS No: 25322-68-3))、例えばLutrol(登録商標)E 400が最も好ましい。
【0060】
本発明の組成物については、水溶性ポリマーが、本質的にPEG 300、PEG 400、PEG 600、及びPEG 800からなる群から選択されることが好ましい。本明細書中に特に挙げてはいないが、実質的に同一であるか、そうでなくともこのPEG実体の特性範囲内であるPEG製品、本発明の組成物中に使用して良い。
【0061】
本明細書中に記載の化合物の非経口投与のための水性組成物、またはその製薬品として有効な塩、プロドラッグ、または代謝物は、(非経口投与のための希釈前に)少なくとも約25質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含んで提供される。本発明の水性組成物は、少なくとも約25質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む。本明細書中に記載の本発明の実施態様組成物は、例えば約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約42.5質量%、約45質量%、約47.5質量%、約50質量%、約52.5質量%、約55質量%、約57.5質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約80質量%、または約100質量%(並びにこれらの間の値)の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む。非経口投与のための希釈前の本発明の水性組成物は、好ましくは約pH8乃至約pH14の範囲内のpHを有する。本明細書中に記載の製剤組成物の実施態様は、特に約8、約8.5、約9、約9.25、約9.5、約9.75、約10、約10.25、約10.5、約10.75、約11、約11.25、約11.5、約11.75、約12、約12.25、約12.5、約12.75、約13、約13.25、約13.5、約13.75、及び約14(並びにこれらの間の値)のpH値を示す。一般的な表示として、pH値が高いほど、製剤はより安定になる。本発明の水性組成物は、一般的に、有効量で少なくとも一つの本明細書中に記載の化合物、少なくとも一つの水溶性ポリマー、水、及びバッファーを含む。バッファーの強度は重要である。バッファー強度がより高ければ、pHの変化に耐える。然るに、バッファー強度が高いほど、製剤はより安定になる。バッファー強度を増大させる手段、例えばバッファーモル濃度を漸増させる手段は、製剤の分野において周知である。好ましいバッファーは、一般的に、生物学的に許容されるバッファーからなる群より選択され、以下に限定されるものではないが、ピリジン(pKa-5.23)、ピペラジン(5.55)、MES(6.21)、BIS-TRIS(6.46)、ADA(6.62)、ACES(6.91)、PIPES(7.1)、リン酸塩(7.2)、BES(7.26)、MOPS(7.31)、TES(7.61)、TRIS(8.06)、エタノールアミン(9.5)、並びに非経口製剤の分野において既知であり、使用されている別のバッファーを含む。本発明の組成物における使用に好ましいバッファーは、リン酸塩である。しかしながら、バッファーは、その製剤を等浸透圧にするために、更なる等張化剤を含んで良い。等張化剤の例には、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、デキストロース、及び当該分野において既知の類似の製剤が含まれる。例えば、より高いpH、例えば約11のpHを有する本発明の水性組成物は、一般的に本明細書中に記載の化合物により高い安定性を与える。本明細書中に記載のこれら製剤の所定の実施態様は、約11乃至約14のpHを示す。本明細書中に記載の所定の製剤は、例えば、約10.6乃至約13.6のpH値を示す。本発明の水性組成物はまた、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び少なくとも約25質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含むのが好ましい。本発明の水性組成物は、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び少なくとも約40質量%、例えば、約42.5質量%、約45質量%、約47.5質量%、約50質量%、約52.5質量%、約55質量%、約57.5質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含むのが好ましい。本発明の水性組成物は、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び少なくとも約32.5質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含むのが好ましい。本発明の水性組成物は、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び少なくとも約55質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含むのが更に好ましい。本発明の水性組成物は、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び少なくとも約 93質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含んで良い。本発明の水性組成物は、PEG 400を含むのが好ましい。本発明の水性組成物は、高いpH(約8乃至約14)を有し、且つ有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び/またはその製薬品として有効な塩、プロドラッグ、または代謝物、及び少なくとも約40質量%のPEG 400を含むのが特に好ましい。
【0062】
製剤研究の結果により、例えば(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)の安定性は、PEG 400の存在下で改善されることが示される。この安定性は、水性相のpHを約10乃至約13に増大させることにより更に増大され、水性相が中和されているといっそう増大される。製剤開発研究の結果に基づき、pH10の50% PEG-400製剤が、冷却下で適当な安定性を提供することが究明された。より高いpHが、長期の貯蔵には好ましい。製剤を、最終製剤中に約75mg/mlとなる薬剤物質を用いて調製した。0.016Mのリン酸バッファー(リン酸二ナトリウム)中に50%のPEG-400を含み、pHが10.0である(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)の実質的に安定な製剤例を実施例IIに示す。この製剤例は、75mg/mlの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)、0.016Mのリン酸バッファー中に50%のPEG-400を含み、pHが10である。例えば、この生成物を0.00025Mのリン酸で1:7に希釈することにより、7.4のpH及びおよそ300mOsm/kgのオスモル濃度を有する製品が得られる。
【0063】
水は、しかしながら、本発明の組成物の製剤に必要な要素ではない。製剤媒体の誘電率を低下させることにより、劇的な安定化効果が予想外に観察される。実施例IIIを参照のこと。貯蔵安定性の製剤が、例えば、100%のPEG-400に基づいて開発されていたが、本明細書中では従来の製剤よりも著しく高い安定性を有することが示されている。実施例IVを参照のこと。よって、本発明の好ましい組成物は、本質的に、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び/またはその製薬品として有効な塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、少なくとも一つの水溶性ポリマーとからなる。本発明の組成物は、本質的に、例えば有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物、及び/またはその製薬品として有効な量の塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピリジンN-オキサイド、ビニルピリジンN-オキサイドとビニルピリジンとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも一つの水溶性ポリマーとからなる。上述のポリエチレングリコール類(PEGs)は、好ましい水溶性ポリマー類、特にPEG 400である。このように、本発明の好ましい組成物は、本質的に、有効量の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物、及び/または製薬品として有効なその塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、PEG 400とからなる。本明細書中に記載の化合物、例えばON 01910.Naは、例えば約25%乃至100%のPEG 400の範囲内で製剤してよい。本発明の好ましい組成物は、少なくとも一つのアミノ-置換(e)-2,6-ジアルコキシスチリル4-置換ベンジルスルホン、例えばON 01910.Na及び約35%乃至約65%のPEG 400を含む。
【0064】
本発明の組成物例は、100%のPEG-400(NF等級)中に1ml当たり75mgの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON 01910.Na)である。この組成物の1回の用量は、一般的に約1ml乃至約3mlの範囲内の製剤である。1.5mlの滅菌製剤を、例えば5mlの滅菌バイアル中に実装する。この製剤は、100%のPEG 400中に、約6.5質量%の(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON 01910.Na)を含む。(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)注入組成物は、例えば、黄色透明の粘性溶液である。これは、注入前の適当な非経口希釈剤での希釈を企図した非水性溶液として提供される。無菌の非発熱性溶液は、その1ml毎に、Polyethylene Glycol, 400, NF中に75mgの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)を含み、40℃以下にて少なくとも4週間に亘って安定である。
しかしながら、この製剤は、一年以上に亘って貯蔵安定性であることが判明している。
【0065】
ON 01910.Naの好ましい製剤の安全性及び有効性(第I相臨床試験)
この製剤の安全性及び有効性を、例えば、The Johns Hopkins Sidney Kimmel Cancer Center, Baltimore, MDにおいて第I相臨床試験、すなわち、"Phase I Dose Escalation Study Of ON 01910.Na By 2-Hour Intravenous Infusion In Patients With Advanced Solid Tumors". U.S. FDA DSfD #66、780によって試験する。この試験の目的には、最大耐量(MTD)及び更なる臨床試験のための推奨用量の確定が含まれる。この試験の更なる目的は、安全性プロフィールを確立すること、すなわちあらゆる毒性を観察することである。この試験における患者は、従来の治療が失敗したかまたは承認された治療の存在しない進行性充実性腫瘍を有する。この研究の目的は特に、有効性(抗癌作用)を観察することである。
【0066】
患者に、ON 01910.Na薬剤(静脈注射用の溶液中に適切に希釈)の本明細書中に記載の好ましい製剤を、3週間に亘って、一週間に二回、2時間かけて投与する。その後、患者は4週間の治療サイクルを継続し、10日間に亘って観察される。患者が薬剤関連毒性を示さず、その疾患が進行しなければ、患者はさらなる治療サイクルを継続することができる。
【0067】
この試験は、患者一人のみで、患者一人につき80mgの最初の開始投薬レベルで開始された。最初の4週間のサイクル中にグレード2もしくはそれより悪い薬剤関連毒性(副作用)が観察されなければ、次に高い用量レベルで別の患者に投薬して良い。最初の患者には、2004年の8月3日に、患者1人につき80mgの投薬を行った。その後、7名の患者が参加し、徐々に高くなる投薬レベル、すなわち患者一人につき160、320、480、800、1280、及び最近では2080 mgのレベルでの治療を受けた。どの場合にも、グレード2もしくはそれより悪い毒性は見られず、近日中に第8の患者が参加して例えば3120mgでの治療を受ける。
【0068】
最近の研究は、例えばON 01910.Naは、少なくとも2080mgまでの用量で、2時間に亘る静脈投与による、週に2回、3週間に亘る投薬とこれに次ぐ10日間の間隔を、4週間に亘って継続する治療サイクルで、この製剤中にて安全に投与することが可能であることを示す。この製剤の有効性は、例えば、多数のマウス異種移植片による前臨床実験室実験において観察されている。
【0069】
このように、本発明の実施例組成物は、約6質量%乃至約7質量%の(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン(ON 01910.Na)及び約35%乃至約65%のPEG-400(NF等級)を含む。本発明の好ましい組成物は、約4質量%乃至約10質量%の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び/または製薬品として有効な量のその塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、約35%乃至約65%のPEG-400(NF等級)とを含む。本発明の特に好ましい組成物は、約5質量%乃至約8質量%の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び/または製薬品として有効な量のその塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、約40%乃至約60%のPEG-400(NF等級)とを含む。本発明の好ましい組成物は、約6質量%乃至約7質量%の本明細書中に記載の少なくとも一つの化合物及び/または製薬品として有効な量のその塩、プロドラッグ、もしくは代謝物と、約45%乃至約55%のPEG-400(NF等級)とを含む。
【0070】
III.使用方法
病態生理学的状態の予防及び/または治療のための方法が提供され、この方法には、本発明の組成物の有効量をほ乳類に非経口投与する工程が含まれる。異常細胞成長によって仲介される病態生理学的状態の予防及び/または治療のための方法が提供され、この方法には、本発明の組成物の有効量をほ乳類に非経口投与する工程が含まれる。異常細胞成長によって仲介される病態生理学的状態の予防及び/または治療のための方法が提供され、この方法には、前記病態生理学的状態を制御するために、本発明の組成物の有効量を治療介入の必要なほ乳類に非経口投与する工程が含まれ、ここで異常細胞成長が制御される。
【0071】
本明細書中に記載のON 01910.Na及び別の化合物は、例えば、しばしば腫瘍の完全な退縮を含む化学療法薬との強度の相乗作用を示す。
【0072】
癌に罹患した個人における腫瘍細胞の成長を阻害する方法が提供され、この方法は、本発明の組成物の有効量を前記個人に投与する工程を含む。本発明の組成物は、細胞死を誘発することによって腫瘍細胞の増殖を阻害する。本明細書中に記載の組成物は、少なくとも下記の組織学的サブタイプ:非上皮性悪性腫瘍(中胚葉由来の結合組織または別の組織の癌);黒色腫(色素沈着したメラニン細胞に由来する癌);上皮性悪性腫瘍(上皮由来の癌);腺癌(腺上皮由来の癌);神経由来の癌(神経膠腫/膠芽細胞腫及び星状細胞腫);及び 血液新生物、例えば、白血病及びリンパ腫(例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、及び慢性骨髄性白血病)の癌における原発性もしくは転移性の腫瘍または新生細胞を殺すために特に有用である。本発明の組成物は、その組織学的サブタイプとは無関係に、少なくとも下記の臓器または組織:乳;男性及び女性の泌尿生殖器(例えば、尿管、膀胱、前立腺、睾丸、卵巣、頸部、子宮、膣)の組織;肺;消化器系(例えば、胃、大腸及び小腸、結腸、直腸)の組織;外分泌腺、例えば膵臓及び副腎;口及び食道の組織;脳及び脊髄;腎臓;膵臓;肝胆道系(例えば、肝臓、胆嚢);リンパ系;平滑筋及び横紋筋;骨及び骨髄;皮膚;及び目の組織にその起源をもつ癌において原発性もしくは転移性の腫瘍または新生細胞を排除する。この組成物は、更に非癌性増殖性疾患の治療においても有用である。非癌性増殖性疾患は、良性表現型を有する細胞の無制御な成長によって特徴づけられ、その意味するところは、細胞が成長に対する通常の制御だけは回避するが、転移は不可能なことである。本発明の化合物で治療してよい非癌性増殖性疾患には、以下に限定されるものではないが、新生児における血管腫症;二次進行型多発性硬化症;慢性進行性骨髄変性性疾患;神経線維腫症;神経節神経腫症;ケロイド形成;骨ページェット病;線維嚢胞性疾患(例えば乳または子宮の線維嚢胞病);肉腫性疾患;ペイロニー及びデュピュイトランの線維症;肝硬変、アテローム性動脈硬化症、及び血管再狭窄が含まれる。
【0073】
本発明の組成物で治療した腫瘍細胞は、細胞周期のG2/M期に蓄積する。細胞がG2/M期を終えると、細胞死を迎えるようである。本発明の組成物で正常細胞を治療しても、細胞死には至らない。
【実施例1】
【0074】
(実施例I:第I相臨床試験のための約500グラムのON01910.Naを産生する合成の概要)
1.(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3’-ニトロ-4’-メトキシベンジルスルホン(2)(TNMBS)
まず、2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒド(TMBA)を3-ニトロ-4-メトキシベンジルスルホニル酢酸(NBSA)と縮合させる。メカニカルスターラーアッセンブリ、コンデンサー、及び窒素のためのガス注入口アダプターを取り付けた適当なサイズのガラス反応フラスコに、1.2等量の2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒドを仕込む。フラスコの攪拌を開始し、次いで、加えようとする3-ニトロ-4-メトキシベンジルスルホニル酢酸の質量(グラム)の7倍に等しい量のトルエンをフラスコに加える。NBSAのモル数に102.09g/moleを乗じたものの4倍等量の酢酸(グラム)を仕込む。1.2等量のNBSAを加えることにより、原料物質の添加を完了する。フラスコの内容物を加熱還流させ、薄層クロマトグラフィーにより反応混合物からTMBAがなくなったことが示されるまで、最低でも5時間に亘ってこの還流を継続させることによって原料物質の縮合を開始させる。
【0075】
次いで、反応の精密検査及び生成物単離を完了する。反応混合物を約65℃に冷却し、減圧下で回転エバポレーターを利用して、反応体積を当初の体積のおよそ35%に減少させる。空の反応フラスコに、前記反応に使用したNBSAのグラム数の7倍に等しい量のエタノールを仕込む。再度攪拌を開始し、体積を減じた反応混合物をゆっくりとエタノールに加える。中間体(2)が沈降し、これを少なくとも1時間に亘り攪拌する。生成する固体を濾過し、濾過ケーキを適当量のエタノールで洗う。湿ったケーキはまず真空下で最低でも8時間に亘って25℃で乾燥され、次いで少なくとも8時間に亘る50℃での乾燥期間を経る。
【0076】
精製を、以下の方式で完了する。攪拌機、コンデンサー、及びガス注入口アダプターを取り付けた適当なサイズのフラスコに、粗製の生成物(2)を仕込む。次いで、縮合反応に使用されたNBSAのグラム数の2倍に等しい量の酢酸エチルを加え、引き続き、縮合反応に使用されたNBSAのグラム数に等しい量のアセトニトリルを加える。この混合物を攪拌し、最低でも0.5時間に亘って加熱還流させ、次いで少なくとも8時間に亘って周囲温度に冷却する。精製された生成物を濾過し、酢酸エチルで洗い、真空下、50℃にて、最低でも12時間に亘って乾燥させる。中間体TNMBS(2)の収率は約33%である。
【0077】
2.(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3’-アミノ-4’-メトキシベンジルスルホン(3)(ON01500)
反応物を、反応容器に仕込んで還元を行う。メカニカルスターラー、ガス注入口アダプター、及びバブラーチャージを取り付けた適当なサイズの反応フラスコを還元反応に使用する。この反応フラスコに、1等量のTNMBSを仕込み、次いでこの反応に使用されるTNMBSの質量の10倍に等しい量(ml)の酢酸を仕込む。その後攪拌を開始する。一定量の亜鉛粉末(4.5等量)を、温度が40℃±5℃に維持されるように少量ずつ反応期にゆっくりと加える。薄層クロマトグラフィーによりTNMBS反応物が消費されたことが示されるまで、反応をこの温度で継続する。その後反応を終了させる。
【0078】
反応の完了について生成物の単離を行う。反応混合物を、セライトケーキで濾過して未反応の亜鉛粉末を除去する。生成物をケーキから濯ぎ落とすために、この濾過ケーキを大量の酢酸及び酢酸エチルで洗う。別の操作として、濾過ケーキを水でクエンチして有害廃棄物に廃棄する。濾液を、真空下で40℃にて回転エバポレーターで当初の体積の30%にまで濃縮する。この操作の完了後、TNMBSの質量の18倍に等しい量の水を、濃縮された濾液の入った反応器にゆっくりと加える。中間体(3)の酢酸塩の中和の準備のために、反応器を約10℃に冷却する。反応混合物を、10Mの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.5乃至8.5に塩基性化する一方で、温度は20℃以下に維持する。この操作の間に遊離のアミンが沈降するので、生成する混合物を少なくとも3時間に亘って攪拌して沈降を完了させる。生成する固体を濾過し、粗製の生成物を水で濯ぎ、次いでヘプタンで濯ぐ。この固体は真空オーブン中、25℃にて少なくとも8時間に亘って乾燥させる。これに次いで、50℃にて更に8時間の乾燥期間を経る。
【0079】
粗製のON01400(3)の最初の精製は、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーを用いて行われる。大型漏斗に、ジクロロメタン中でスラリー状態にした約4000グラムのシリカゲルを充填する。最高で850gの粗製ON01500を検量し、これを最少量のジクロロメタンに溶解させる。この溶液を、シリカゲルベッドを乱さないように注意しつつ、シリカゲルカラムの上から注意深く加える。更なる乱れを防ぐために濾紙片で覆う。中間体と不純物との混合物をジクロロメタンで溶離し、粗製ON01500の純度と矛盾のないフラクションを回収する。ON01500含量について、各フラクションを薄層クロマトグラフィーによって観察する。次いで、カラム上の物質をジクロロメタン中1%のメタノールで溶離し、次いで全ての物質がカラムから除去されるまで、2%メタノール、3%メタノール、及び5%メタノールで溶離する。使用したシリカゲルを廃棄する。ON01500のみを含むフラクションを混合し、回転エバポレーターをバス温度もしくは35℃で使用して濃縮する。
【0080】
粗製のON01500(3)を下記の通り更に精製する。攪拌を促進するために回転エバポレータフラスコを使用して、粗製物(3)を、TNMBS(2)の当初の質量の3倍に等しい量の酢酸エチルでスラリー状にする。常圧及び回転条件下で、フラスコの溶液を加熱還流させ、この操作を最低でも0.5時間に亘って維持する。この溶液を、少なくとも8時間に亘って攪拌する一方で室温にまで冷却する。固体を濾過し、濾過ケーキを更なる酢酸エチルで濯ぎ、このケーキから母液を除去する。精製された生成物を、真空オーブン中、完全真空下にて50℃で、最低でも8時間に亘って乾燥させる。ON01500の収率は、本方法のこの工程についておよそ45%である。ON01500は、次の工程に進む前に95%以上の純度を有していなければならない。
【0081】
3.メチル-{N-[2-メトキシ-5-メチレン(2',4',6’-トリメトキシスチリルスルホニル)-フェニル]アミノ}アセテート(4)(これは、ON01910の中間体エステルである(名称は異なる))
スターラー及び滴下漏斗を取り付けた適当なサイズの反応フラスコに、滴下漏斗からON01500(3)を加える。ここに酢酸ナトリウム(中間体の1等量当たり3等量)を加え、次いでON01500の重量の6倍に等しい量(ml)のエタノールを加える。反応器を、UHP窒素を用いて空気でパージする。メチルブロモアセテート(ON01500の1等量につき1.5等量)を反応器に加え、次いでヨウ化ナトリウム(ON01500の1等量につき1.1等量)を加える。攪拌した反応混合物を、最低でも4時間に亘って加熱還流させる。反応完了を、薄層クロマトグラフィーによって観察する。反応完了に際しては混合物を60℃に冷却し、この混合物を、40℃のバス温度で回転エバポレーターを用いて、その当初の体積のおよそ30%にまで濃縮する。
【0082】
その後、メチルエステル(4)の単離を完了させる。粗製の混合物を反応フラスコに戻し、この反応に使用されるON01500(3)の質量の12倍に等しい水(WFI等級)をゆっくりと加える。生成するスラリーを最低でも8時間に亘って攪拌する。生成する固体を、卓上フィルター及びテフロン(登録商標)フィルタークロスで濾過する。フィルターケーキをさらなるWFIとヘプタンで洗う。単離されたメチルエステル(4)を乾燥パンに載せ、アルミホイルで覆い、真空オーブン中、50℃にて少なくとも8時間に亘り乾燥させる。この工程の収率は70%である。
【0083】
4.(N-[2-メトキシ-5-メチレン(2',4',6'-トリメトキシスチリルスルホニル)フェニル]-アミノ)酢酸ナトリウム塩(5)(ON 01910.Na)
攪拌機、コンデンサー、及び窒素バブラーを取り付けた適当なサイズの反応フラスコに、上記工程で製造したメチルエステル(4)の適当量を仕込む。(4)の質量の6.6倍に等しい量(ml)のエタノールをフラスコに加える。このフラスコを窒素でパージし、(4)の質量の3.3倍に等しい水(WFI)を加える。1.05等量の水酸化ナトリウム遅延ペレットを、反応フラスコが攪拌されている間にこのフラスコに加える。攪拌は、常温にて最低でも12時間に亘って継続される。鹸化の完了は、薄層クロマトグラフィーを使用して(4)の消滅により決定される。反応が完了したところで、この混合物を濾過して様々な固体を除去し、濾液はON01910.Na(5)の単離のために確保する。
【0084】
生成物精製は、以下の方式で行われる。上記の濾液を回転エバポレーターに仕込み、その体積を、40℃にセットした水浴を用いて当初の体積のおよそ20%にまで低減させる。残りの内容物を、粗製物の(5)を溶解させて転移を促進するためにメチルエステル(4)の質量の3倍に等しい水(WFI)を使用して、攪拌器アッセンブリを取り付けた適当なサイズの反応フラスコに仕込む。(4)の質量の4倍に等しいメチルt-ブチルエーテル(ml)を加え、反応混合物を10分間に亘って激しく攪拌する。攪拌を停止し、少なくとも20分間に亘って相分離するに任せる。有機相を除去し、水性相を既述の方式で更に2回抽出する。生成物を含む水性部分を濾過して様々な固体を除き、この固体を更なるWFIで洗う。
【0085】
生成物分離に次いで精製操作を行う。濾過された水性溶液を、浴温40℃の回転エバポレーターに移し、まず常圧で、次いで高度真空下にて、固体が乾燥して移動可能になるまで(最低でも24時間)溶媒を除去する。
【0086】
ON01910.Na(5)の精製/結晶化を、以下の方法で行う。上記の粗製固体(5)を、窒素パージの下で攪拌器アッセンブリ及び窒素供給の付いた反応フラスコに移す。粗製物(5)をフラスコに移し、(5)の粗製物重量の2.5倍に等しい量のWFI(ml)を加える。生成する溶液を約43℃に加熱し、この溶液が混濁して混濁が持続するようになるまでイソプロパノールゆっくりと加える。(およそ12-15ml/gの粗製生成物が必要である。)攪拌を継続する。油性の残渣が存在するならば、溶液を熱時濾過し、その後即座にフラスコに戻してよい。この溶液は、最低でも24時間に亘って攪拌を継続しつつ冷却して常温にする。その後この固体を濾過し、イソプロパノールで洗い、乾燥させるために乾燥パンに移す。湿った生成物(5)を常温の真空オーブンで最低でも8時間に亘って乾燥させる。乾燥を、70℃にて更に8時間継続する。最終薬剤物質(5)を25℃に冷却し、溶媒含量を測定するために分析サンプルを採る。溶媒含量が0.5%より多ければ、更なる乾燥を行う。(5)が完全に乾燥した時点で、再度分析サンプルを採り、生成物を実装する。収率は、およそ69%である(母液から二回目の回収を行った場合)。
【0087】
【表2】

【0088】
(実施例II:0.016Mのリン酸バッファー中に50%のPEG-400を含み、pH10.0である、ON 01910.Naの製剤)
物質
・ON 01910.Na、Onconova Therapeutics, Inc.
・アセトニトリル、ChromAR HPLC等級(ロット番号. 2856 X01B34) Mallinckrodt (Milwaukee, WI)
・トリフルオロ酢酸、99%、分光化学等級、Aldrich Chemicals (St. Louis, MO)
・リン酸二ナトリウム、 12-水和結晶、 USP等級、Mallinckrodt (Milwaukee, WI)
・ポリエチレングリコール 400、N.F.等級、BASF Fine Chemicals (Mt. Olive, NJ)
・85% O-リン酸、 A.R.等級、Mallinckrodt (Milwaukee, WI)
【0089】
1. 0.016Mのリン酸塩、pH10の調製
およそ2.6グラムのリン酸三ナトリウムを計量する。この物質を1000mlの容量フラスコに移す。およそ750mLの水を加える。この溶液を全てのリン酸三ナトリウムが溶解するまで混合する。pHを確認する。pHを、0.1Mのリン酸または0.1MのNaOHで10.0±0.05に調整する。溶液を、水を加えて1000mLとする。最終pHを確認する。
2. 0.001Mのリン酸溶液の調製
115μLの85% O-リン酸を1000mLの容量フラスコに加える。溶液を、水を加えて1000mLとする。
3. 0.00025Mのリン酸溶液の調製
およそ25mLの0.001M リン酸溶液を移す。溶液を、水を加えて100mLとする。
4. 0.016Mのリン酸バッファー中、50%のPEG-400、pH10.0の調製
以下は、バッチサイズ1mLの例である。0.5mLの0.016M リン酸塩バッファー、pH10.0を移す。質量を記録する。0.5mLのPEG-400を移す。質量を記録する。溶液を混合する。
【0090】
0.016Mのリン酸バッファー中に75mg/mLの薬剤及び50%のPEG-400を含み、pHが10である、ON 01910.Na(NOVONEX(登録商標))の製剤は、安定な製剤をもたらす。この生成物の、例えば0.00025Mのリン酸での1:7の希釈により、約7.4のpH及びおよそ300mOsm/kgのオスモル濃度を有する生成物が得られる。
【0091】
(実施例III:非経口投与に適した水性媒体中でのON 01910.Naの安定化)
製剤媒体の誘電率を低下させることによって、劇的な安定化効果が確認された。貯蔵安定性製剤が、PEG-400に基づいて製造された。
【0092】
ON01910.Naの安定化に対する誘電率の影響を、例えば、プロピレングリコール及びPEG 400を含む製剤を調製することによって調査した。促進安定化試験を、75℃及び90℃にて行った。ON 01910.Naの安定性は、例えば、プロピレングリコールまたはPEG 400の、例えば水性製剤への添加によって劇的に改善可能であることが観察された。下記の表に結果をまとめる。
【0093】
【表3】

ON 01910.Naの安定性は、水性媒質のpHを8より高く調節することによって更に改善された。pH 10.0で中和することの影響の結果を、表4に示す。
【0094】
【表4】

サンプルを、逆相カラム(Phenomenex Luna C-18、5ミクロン(4.6mm×250mm))を周囲条件で使用してHPLCアッセイによって評価した。移動相は水中60%乃至0.1%のトリフルオロ酢酸:40%のアセトニトリルからなるものであった。流速は、2.0ml/分に設定し、溶離液を230nmで観察した。
【0095】
(実施例IV:安定性試験―100% PEG-400中の製剤としたON 01910.Na)
安定性試験を、5mLのガラスバイアル中に密閉された、100%のPEG-400中のON 01910.Na製剤の1.5ml容量に対して、12週間の期間に亘って行った。
【0096】
【表5】

【0097】
(実施例V:100% PEG-400中に製剤されたON 01910.Naの臨床使用についての長期安定性試験は、ON 01910.Naがこの製剤中で非常に安定であり、2年間の期間に亘って重大な劣化は全く予期されないことを示す)
ON 01910.NaのIV溶液を、100% PEG-400中に75mg/mLの濃度で製造した。最終生成物は、予め滅菌された5mLのバイアル中に無菌充填された3mLの薬剤生成物からなるものとした。製造は、医薬品適正製造基準の規定に準拠していた。
【0098】
【表6】

【0099】
目視検査
(a)ゼロ時点でのデータは、製造された臨床ロットから得られる公開データと同一である。
(分析方法)
(a)HPLC:クロマトグラフィーは、Phenomenex Luna C-18 (2)、5ミクロン(4.6mm x 250mm、PN 00G-4252-E0)カラムを周囲条件で使用して行う。使用される移動相は、水中60%-0.1%のトリフルオロ酢酸;40%のアセトニトリルである。流速は2.0ml/分に設定する。注入体積は50μLである。検出は、UV/VIS検出器を230、254、及び320nmで用いて達成される。機器制御及びデータ制御は、Waters Millennium(V 2.15)ソフトウェアパッケージを利用して行われる。外部較正は、50:50のアセトニトリル:水中に調製されたON 01910.Na標準溶液を使用して得る。この分析方法は認証された。
【0100】
【表7】

【0101】
(実施例VI)
この実施例では、0.45%のNaCl溶液及び0.9%のNaCl溶液を入れたIV輸液バッグ及びセットにおける、ON 01910.Na薬剤生成物(PEG-400中、75mg/ml)の適合性研究の結果をまとめる。この試験は、250mlの0.9% NaCl中に80mgのON01910.Naを含む溶液及び250mlの0.45% NaCl中に800mgのON 01910.Naを含む溶液を調製して、これらをIV輸液バッグ中に24時間に亘って貯蔵し、生成物の喪失または不安定化が起こるか否かを測定することからなる。また、これらの溶液をおよそ2ml/分の速度で120分間に亘って輸液セットに通し、生成物の喪失または不安定化について観察した。サンプルを、アッセイ、回収(%)の、不純物についてHPLCによって分析した。
【0102】
この試験の間中、溶液の外観、オスモル濃度、及びpHもまた観察した。
【表8】

【0103】
(100% PEG-400中に75mg/mlのON 01910.Na(湿分に対して補正)の調製)
54.6955gのPEG-400
3.892gのON 01910.Na(6.0%湿分―補正係数0.94)
安定性試験のためのサンプルを、ON 01910.NaをPEG-400に攪拌しつつゆっくりと加え、この溶液が黄色透明な溶液になるまで混合することによって調製した。
【0104】
(0.9%の塩化ナトリウム中、80mgのON01910.Na)
各輸液バッグを、3mlの注射器を使用して、1.1mlのON01910.Na薬剤生成物溶液(PEG-400中に75mg/ml)を、250mlの0.9% NaClを入れた輸液バッグにポートから移すことによって準備した。その後この輸液バッグを振盪した。注射器をIV輸液で洗い、この輸液をバッグに戻した。
【0105】
(0.45%の塩化ナトリウム中、800mgのON 01910.Na)
各輸液バッグを、まず0.9%の塩化ナトリウムの入った250mlの輸液バッグから125mlの溶液を除去し、この輸液バッグに125mlの滅菌水を加えることによって準備した。20mlの注射器を使用して、10.7mlのON 01910.Na薬剤生成物(PEG-400中に75mg/ml)を、250mlの0.45% NaClを入れた輸液バッグにポートから移した。このバッグを振盪した。注射器をIV輸液で洗い、この輸液をバッグに戻した。
【0106】
(輸液バッグ適合性試験)
250mlの0.9% NaCl中、80mgのON01910.Naを入れた二つの輸液バッグ、及び250mlの0.45% NaCl中、800mgのON01910.Naを入れた二つの輸液バッグを、上述の通り準備した。
5mlの溶液を、分析のため、次の時点:T=0、1時間、2時間、4時間、8時間、及び24.5時間にバッグから取り出した。外観、アッセイ、不純物(%)、回収(%)、オスモル濃度、及びpHを各時点で分析した。
【0107】
(輸液セット適合性試験)
250mlの0.9% NaCl中、80mgのON01910.Naを入れた二つの輸液バッグ、及び250mlの0.45% NaCl中、800mgのON01910.Naを入れた二つの輸液バッグを、上述の通り準備した。輸液セット及びインラインフィルターを各バッグに接続し、流速をおよそ2ml/分に設定した。
輸液セット一つにつき6つのサンプルを、分析のため、次の間隔で採取した:第1、第2、第3の5ml部分、その後30、60、及び120分時点での5ml部分。外観、アッセイ、不純物(%)、回収(%)、オスモル濃度、及びpHを各部分について分析した。
【0108】
HPLC条件
カラム:Phenomenex LUNA C 18、5μm、250×4.6mm
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/分
実施時間:45分間
注入サイズ:10マクロL
検出:215nmでのUV
移動相A:リン酸バッファー、pH8(0.01M KH2PO4)
移動相B:アセトニトリル
【0109】
【表9】

【0110】
(移動相及び希釈剤の調製)
移動相:移動相Aは、4.083gのKH2PO4と3リットルの脱塩水とを混合し、10N KOHでpH8に調節することによって調製した。
希釈剤:移動相A及びアセトニトリルを、5:25 v/vに混合した。
【0111】
(標準調製)
3194μg/mlのON 01910.Naを含む原液を希釈剤中に準備した。原液を、表9に列挙した希釈スキームに従って作業標準溶液に希釈した。最初の三つの標準を標準曲線について使用して低用量実験を定量化し(251.1mlにつき80mgのON 01910.Naは、329μg/mlの濃度をもたらす)、最後の三つ及び原液標準を標準曲線に用いて高用量を定量化した(260.7mlにつき800mgのON 01910.Naは、3078μg/mlの濃度をもたらす)。
【表10】

【0112】
(結果)
結果を表10乃至13に示す。回収(%)は、理論値と比較した薬剤物質のパーセンテージである一方、T0%は開始時点での薬剤物質と比較した薬剤物質のパーセンテージと定義される。不純物は、ON 01910.Naの主なピーク以外のピークである。
【0113】
【表11】

【0114】
【表12】

【0115】
【表13】

【0116】
【表14】

PEG-400中、75mg/mlのON 01910.Naの製剤は、0.45%のNaCl溶液及び0.9%のNaCl溶液を入れた輸液バッグ中で24時間に亘って安定である。
【0117】
(実施例VII:反応スキーム例(ON 01910.Na臨床物質))
ON 01910.Naの臨床試験量の合成が、ChemPacific Co.(USA)によって開示されている。この合成を、市販の2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒド(Hunan Xinyu (Changsha, China)及び3-ニトロ-4-メトキシベンジルスルホニル酢酸(ChemPacific Co.(Hangzhou, China)から出発した。この後者の出発物質は、ChemPacific Co.(USA)によって所定の品質であることが認められた。合成は、cGMP条件で行われた。図2を参照のこと。
【0118】
1.(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3'-ニトロ-4'-メトキシベンジルスルホン (化合物 C)
窒素の穏やかな気流を、メカニカルスターラーアセンブリ、コンデンサー、温度計、及びガス注入口アダプターを取り付けた22リットルのガラス反応器に通した。所定量の3-ニトロ-4-メトキシベンジルスルホニル酢酸(化合物 A、1775g、6.14原子分子(atom molecule))及び所定量の2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒド(化合物 B、1200 g、6.12原子分子)を反応器に仕込んだ。12Lの無水トルエンと2448gの無水酢酸とをいずれもゆっくりと反応器に加えつつ、攪拌を開始した。薄層クロマトグラフィー試験によって全化合物Bの消費が達成されたことが示されるまで、最低でも4時間に亘って懸濁液を攪拌し、且つ加熱還流した。
反応混合物を冷却し、ブフナー漏斗で濾過した。濾過ケーキを3リットルのヘキサンで洗い、次いで住宅用真空装置(20mmHg)で最低でも8時間に亘って25℃にて乾燥させ、生成物の初回回収を得る。濾液及び洗浄液を混合し、回転エバポレーター(水浴は70℃以下に維持、真空は20mmHgと測定)を用いて更に濃縮して得られた生成物を、次に3リットルの酢酸エチルに入れ0℃にて一晩静置した。固体が生成し、濾過によって生成物の二回目の回収が行われた。濾過ケーキを更にヘキサン(1L)で濯ぎ、真空下で少なくとも8時間に亘って周囲温度で乾燥させた。全て合わせた生成物、化合物Cは、1350gの量であり、収率は52%であった。
【0119】
2. (E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3'-アミノ-4'-メトキシベンジルスルホン (化合物 D) (ON 01500)
メカニカルスターラーアセンブリ、コンデンサー、温度計、及び保護窒素のためのガス注入口アダプターを取り付けた22リットルのガラス反応器に、化合物C(925g、2.18モル)及び酢酸(10L)を導入した。懸濁液を周囲温度以下に冷却した。亜鉛粉末(925g、14.23モル)を、温度が周囲温度以下に維持されるように少量ずつ、反応器に加えた。薄層クロマトグラフィーによって化合物Cが完全に消費されたことが示されるまで、この温度で反応を継続させた。
【0120】
粗製混合物を、セライトのパッドで濾過し、濾過ケーキを4リットルの酢酸で洗った。まとめた濾液及び洗浄液を冷水と混合した。温度を室温以下に維持しつつ、25%の水酸化ナトリウムでpHを3乃至8とした。生成する沈殿を、濾過する前に少なくとも3時間に亘って攪拌した。濾過ケーキをヘキサンで濯ぎ、この固体を住宅用真空装置の下で少なくとも8時間に亘って乾燥させた。粗製形態の化合物Dは725gの重量であり、収量は87%であった。
【0121】
まず粗製生成物(725g、ジクロロメタン中に溶解)を4000gのシリカゲル粉末を予め充填したシリカゲルカラムに載せた。溶離液の添加によって起こる乱れを防ぐために、濾紙を用いてシリカゲルベッドを覆った。こうしてジクロロメタンをゆっくりと加え、フラクションを回収した。TLC技術を使用して、フラクション中の化合物Dの含量を観察した。その後のジクロロメタン中1%、2%、3%、及び5%のメタノールでの溶離により、所望の化合物の十分な回収を確実にした。化合物Dを含むフラクションを集め、回転エバポレーターを用いて溶媒を蒸発させた。水浴は35℃を超えてはならない。
粗製のON 01500(化合物 D)を以下のように更に精製する。攪拌を促進するために回転エバポレータフラスコを使用して、粗製物(化合物D)を、化合物Cの当初の質量の3倍に等しい量の酢酸エチルでスラリー状にする。常圧及び回転条件下で、フラスコの溶液を加熱還流させ、この操作を最低でも0.5時間に亘って維持する。この溶液を、最低でも8時間に亘って攪拌しつつ、室温にまで冷却する。固体を濾過し、濾過ケーキを最低でも8時間に亘って更なる酢酸エチルで濯いで母液を除去する。ON01500の収率は、本方法のこの工程についておよそ45%である。ON01500は、次の工程に進む前に95%以上の純度を有していなければならない。
【0122】
生成物の純度は、以下の操作を利用して更に改善可能である。
725gの化合物Dを2Lのジクロロメタン中にとる。4Lの酢酸エチルを加える。溶媒を濃縮して黄色沈殿物を得る。生成する固体を、高温エタノールかまたはイソプロパノールで更に処理する。この混合物を室温に冷却し、濾過により、純度が98.5%より高い明色の生成物を得た(450g、52%)。
【0123】
3. (E)-2,4,6-トリメトキシスチリル3-(カルボメトキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン(化合物 E)
化合物D(ON-1500、733g、1.86mol)のメタノール(12 L)中の溶液に、酢酸ナトリウム(751g、8.24mol)及びエチル2-ブロモアセテート(70mL、7.3mol)を加えた。この混合物を一晩還流させ、反応を薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン:EtOAc、4:1)で観察した。反応完了に際して混合物を減圧下で濃縮し、残渣をヘキサン及び酢酸エチルで処理した。乳白色の生成物を濾過により回収して化合物E(823g、95%)を得た。
【0124】
4. (E)-2,4,6-トリメトキシスチリル 3-[(カルボキシメチル)アミノ]-4-メトキシベンジルスルホン、ナトリウム塩(化合物F)これは、薬剤物質ON 01910.Naである
化合物E(823g、1.77mol)を、メタノール(15mL)中20%の水酸化ナトリウム(1840mL))で周囲温度にて処理し、反応を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:酢酸=15:1:1)で観察した。反応が完了したところで、この混合物を濃縮して明色の結晶を得て、これを濾過した。濾過ケーキをエタノール、THF、及びジエチルエーテルで処理し、次いで生成物を住宅用真空装置で乾燥させて、乳白色固体として化合物Fを得た。質量550g;65%;及びHPLC純度は98%超。
【0125】
実施例VIII:ON.1910.Naの製剤例及び安定性
リン酸塩バッファー、pH10.0 50%
PEG 400 50%
リン酸塩バッファーとPEG 400とを1:1の比で混合する。十分なON.01910.Naを加えて75mg/mlの濃度で溶液を調製する。
【0126】
【表15】

【0127】
【表16】

【0128】
実施例IX:ON.01910.Naの製剤例及び安定性
【表17】

【0129】
【表18】

【0130】
以上の明細書中に言及される全ての文献及び特許文献は、参照することにより本願発明に援用される。本発明の記載組成物及び方法の様々な変形及び変化は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかになろう。本発明は特定の好ましい実施態様に関連して記載されているが、請求される本発明はこうした特定の実施態様にまで不要に制限されるべきでない。実際に、当業者もしくは関連分野の者には明らかである、記載の組成物及び本発明の実施のための方式の様々な変形は、特許請求の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物または式IIaの化合物の有効量及び、少なくとも25質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む非経口投与のための組成物であって、前記式Iが下記:
【化1】

[Xは下記(i)及び(ii)からなる群より選択され、
【化2】

X1は下記(i)、(ii)、及び(iii)からなる群より選択され、
【化3】

式中、X1は1つ以上の化学保護基で任意に保護され、
gは0又は1であり、
各Mは、-(C1-C6)アルキレン、-(CH2)a-V-(CH2)b-、-(CH2)d-W-(CH2)e-、及び-Z-からなる群より個別に選択される二価の結合基であり、
各yは、0及び1からなる群より個別に選択され、
各Vは、アリーレン、ヘテロアリーレン、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-、-C(=O)(C1-C6)ペルフルオロアルキレン-、-C(=O)NR4-、-C(=S)NR4-、及び-SO2NR4からなる群より個別に選択され、
各Wは、-NR4-、-O-、及び-S-からなる群より個別に選択され、
各aは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各bは、0、1、2 、及び3からなる群より個別に選択され、
各dは、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
各eは、0、1、2、及び3からなる群より個別に選択され、
Zは次式であり、
【化4】

式中、-Z-の絶対立体化学はDまたはL、あるいはDとLとの混合物であり、
各Raは、-H、-(C1-C6)アルキル、-(CH2)3-NH-C(NH2)(=NH)、-CH2C(=O)NH2、-CH2COOH、-CH2SH、-(CH2)2C(=O)-NH2、-(CH2)2COOH、-CH2-(2-イミダゾリル)、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)2-S-CH3、フェニル、CH2-フェニル、-CH2-OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-(3-インドリル)、-CH2-(4-ヒドロキシフェニル)、-CH(CH3)2、及び-CH2-CH3からなる群より個別に選択され、且つRa及びR1が共に5-、6-、または7員の複素環を形成する化合物を含み、
各R1は、-H、無置換アリール、置換アリール、置換複素環、無置換複素環、-CO2R5、-C(=O)NR42、-CR4R6R7、-C(=NH)-NR42、-(C1-C6)ペルフルオロアルキル、-CF2Cl、-P(=O)(OR4)2、-OP(=O)(OR4)2、及び分子量1000未満の一価のペプチジル部分からなる群より個別に選択されるが、yが0である場合には、R1は-CO2R5であり、R5は-Hでないことを条件とし、
各R2は、-H、-(C1-C6)アルキル、及びアリール(C1-C3)アルキルからなる群より個別に選択され、ここで-R2及び-(M)y-R1は任意に共有結合して置換もしくは無置換の5、6、または7員の複素環を形成してよく、
各R3は、-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は、-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
各R5は、-H、-(C1-C6)アルキル、及び-(C1-C6)アシルからなる群より個別に選択され、
各R6は、-H、-(C1-C6)アルキル、-CO2R5、-C(=O)R7、-OR5、-OC(=O)(CH2)2CO2R5、-SR4、グアニジノ、-NR42、-NR43+、-N+(CH2CH2OR5)3、フェニル、置換フェニル、複素環、置換複素環、及びハロゲンからなる群より個別に選択され、
各R7は-Ra、ハロゲン、-NR42、及び二つの窒素原子を含む複素環からなる群より個別に選択され、且つ
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
ここでR1、R2、Ra、R6、及びR7を含むかまたはこれらに含まれる、置換アリール及び置換複素環基の置換基は、ハロゲン、(C1-C6)アルキル、-NO2、-C≡N、-CO2R5、C(=O)O(C1-C3)アルキル、-OR5、-(C2-C6)-OH、ホスホナト、-NR42、-NHC(=O)(C1-C6)アルキル、スルファミル、-OC(=O)(C1-C3)アルキル、-O(C2-C6)-N((C1-C6)アルキル)2、及び-CF3からなる群より個別に選択されるが、
(1)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、または-SO2-であり、bが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のアミノ末端を介して、または側鎖アミノ基を介してMにカップリングし、それぞれアミド、チオアミド、スルフィンアミド、またはスルホンアミドを形成し、
(2)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Vが-C(=O)NR3-、-SO2NR3-、または-NR4-であり、bは0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれイミド、スルホンイミド、またはカルボキサミドを形成し、且つ
(3)R1が分子量1000未満の一価のペプチジル部分であり、Wが-S-または-O-であり、dが0である場合には、前記ペプチジル部分はペプチジル部分のカルボキシ末端を介して、または側鎖カルボキシル基を介してMにカップリングし、それぞれカルボチオ酸エステルまたはカルボン酸エステルを形成する
ことを条件とする]
であり、式IIaが下記:
【化5】

[gは0または1であり、
各R3は-(C1-C6)アルキルから個別に選択され、
各R4は-H及び-(C1-C6)アルキルからなる群より個別に選択され、
Qは-H、-(C1-C6)アルコキシ、ハロゲン、-(C1-C6)アルキル、及び-NR42からなる群より選択され、
X2は任意に化学保護基で保護されたNO2及び-NH2からなる群より選択される]
であり、あるいはこれらの製薬品として有効な塩、プロドラッグ、または代謝物である、組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーが、本質的にポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリグリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピリジンN-オキシド、ビニルピリジンN-オキシドとビニルピリジンとのコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、本質的にPEG300、PEG400、PEG600、及びPEG800からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物が、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[4-(4-メチルピペラジン-l-イル)ベンズアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリエチルアンモニウムアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[トリ-(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロメタンスルホンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[3-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジエチルホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン二ナトリウム塩;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルカルバモイル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ペンタフルオロプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(メチル-(2,2-ジフルオロ)マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2-ジフルオロ-マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノ-α,α-ジフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2,3,3-テトラフルオロエチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-アミノベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-ニトロベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジアミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(クロロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(4-メチルピペラジニル)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-アミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ヒドロキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ピリジニウム-l-イル)アセトアミド-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(エチルマロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(グルタルアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(スクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-クロロスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-リシンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-D-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルスルファミル)-4-メトキシベンジル-スルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-メトキシベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジニトロベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジアミノベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-グアニジノ-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(N-メチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロフェニルイミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ウレイド)-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-カルボキシプロピルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-カルボキシエチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;またはこれらの製薬品として許容される塩からなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
水性であり、且つ約8乃至約14のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも約30質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも約40質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも約50質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも約60質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
約9乃至約11.5の範囲内のpHを有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
PEG400を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも約45質量%のPEG400を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記化合物が、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも約30質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも約40質量%のPEG400を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも約48質量%のPEG400を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
約10mg/ml乃至約200mg/mlの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
約40mg/ml乃至約120mg/mlの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
約75mg/mlの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
本質的に、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)とPEG400とからなる、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
本質的に、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)とPEG400とからなる、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
本質的に、約4乃至約10質量%の、
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[4-(4-メチルピペラジン-l-イル)ベンズアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリエチルアンモニウムアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[トリ-(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-メチル-2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-アセトキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(トリフルオロメタンスルホンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[3-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジエチルホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ホスホナトアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン二ナトリウム塩;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルカルバモイル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ペンタフルオロプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(メチル-(2,2-ジフルオロ)マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2-ジフルオロ-マロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノ-α,α-ジフルオロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,2,3,3-テトラフルオロエチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-アミノベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシ-3-ニトロベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3,5-ジアミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(クロロアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-[(4-メチルピペラジニル)アセトアミド]-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-アミノベンズアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ジメチルアミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ヒドロキシアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-ヒドロキシプロピオンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ピリジニウム-l-イル)アセトアミド-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(エチルマロンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(グルタルアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(メチルスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(スクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-クロロスクシンアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(アミノアセトアミド)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-リシンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-L-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-アミノ-4-メトキシベンジルスルホン-D-セリンアミド;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルスルファミル)-4-メトキシベンジル-スルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-メトキシベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジニトロベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2,4-ジアミノベンゼンスルファミル)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-グアニジノ-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(カルボキシメチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(N-メチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(4-ニトロフェニルイミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(ウレイド)-4-メトキシベンジルスルホン;
ラセミ-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
D-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
L-(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(l-カルボキシエチル)アミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホン;
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(3-カルボキシプロピルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;及び
(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-(2-カルボキシエチルアミノ)-4-メトキシベンジルスルホン;
からなる群より選択される化合物、またはこれらの製薬品として有効な塩、プロドラッグ、あるいは代謝物と、少なくとも一つの約50質量%の少なくとも一つの水溶性ポリマーとからなる、ほ乳類における病態生理学的状態の予防または治療のための組成物。
【請求項23】
約40%乃至60%のPEG-400中、1ml毎に約25mg乃至約125mgの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)を含む組成物。
【請求項24】
約50%のPEG-400中、本質的に、1ml毎に約75mgの(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-3-カルボキシメチルアミノ-4-メトキシベンジルスルホンのナトリウム塩(ON01910.Na)からなる、請求項23に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−515772(P2010−515772A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546408(P2009−546408)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/000523
【国際公開番号】WO2008/088803
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(504105184)オンコノバ・セラピューティックス・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】