説明

(R)−γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸((R)−GABOB)のエナンチオ収束的化学酵素合成

本発明は、特に、(R)−GABOBの調製にとって鍵となる3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの両エナンチオマーの立体選択的な調製のための、そのラセミ体のリパーゼ媒介速度論的分割による化学酵素的方法、及び(R)−GABOBのエナンチオ収束的合成における有効な応用、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸((R)−GABOB)の立体選択的調製のための化学酵素エナンチオ収束的(enantioconvergent)方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、(R)−GABOBの調製にとって鍵となる中間体3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの両エナンチオマーの立体選択的な調製のための、そのラセミ体のリパーゼ媒介速度論的分割による化学酵素的方法、及び(R)−GABOBのエナンチオ収束的合成における有効な応用、に関する。
【背景技術】
【0003】
(R)−GABOBは、薬理学的に極めて重要な化合物であり、それは、哺乳類の中枢神経系における神経伝達物質としてのその生物学的機能のためである(Otsuka, M.; Obata, K.; Miyata, Y.; Yaneka, Y. J. Neurochem 1971, 18, 287; Otsuka, M.; Obata, K.; Miyata, Y. Advances in Biochemical Psychopharamacology Raven: New York, 1972, VoI 6, pp 61.)。これは、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)のアゴニストとして機能することが知られており、そして注目すべき抗癲癇薬及び降圧薬であることがわかっている(Brehm, L.; Jacobsen, P.; Johansen, J. S.; Krogsgaard-Larsen, P. J. Chem. Soc. Perkin Trans 1 1983, 1459)。これはまた、統合失調症や性格に基づくほかの病気、(Chapoy, P. R.; Angelini, C; Brown, W. J.; Stiff, J. E.; Shug, A. L.; Cederbaum, S. D.; N. Engl. J. Med 1980, 303, 1389; Takano, S.; Yanase, M.; Sekiguchi, Y.; Ogasawara, K. Tetrahedron Lett. 1987, 28, 1783)、癲癇及び深刻な痙攣をもたらす他の病気を含む様々な臨床症状を対処するのに有効であることが証明されている。子供において観察される幾つかの臨床症状の矯正のためのその使用も調査されている。更に、(R)−GABOBは、ビタミン様物質である(R)−カルニチンの前駆体であり、蓄積された体脂肪をエネルギーに変換する際に重要な役割を果たしている。その主な生理学的機能は、長鎖脂肪酸を、酸化のためにミトコンドリア膜から細胞内区画へと輸送することであり、ここで、これらの脂肪をエネルギーに変換することができ(Fritz, I. B.; Kaplan, E.; Yu, K. T. Nu. Am. J. Physiol. 1962, 202, 117; Bremer, J. Physiol. Rev. 1983, 63, 1420; Brown, W. J.; Stiff, J. E.; Shug, A. L.; Cederbaum S. D.; N. Engl. J. Med. 1980, 303, 1389; McGarry, J. D.; Foster, D. W. Ann. Rev. Biochem. 1980, 49, 395)、そしてそれは良好な抗肥満薬として考えられている。GABOBのR型は、そのS−エナンチオマーよりも高い生物学的活性を有することが示されている(Kurano; Masayasu; Miyaruoto; Shigetoshi; Shigeoka; Satoshi; Mori; Akitane. Japanese Patent 1976; Chem. 'Ahstr. 1977, 86, 89207u; Ostsuka, M.; Obata, K.; Miyata; Y.; Yaneka, Y. J. Neurochem. 1971, 18, 287; Otsuka, M.; Miyata, Y. Advances in Biochemical Pysopharmacology, Raven: New York, 1972, VoI 6, pp 61; Kurono, M.; Miyamoto, S.; Shigeoka, S.; Mori, A. Japan, Kokai 76,100,026; Chem. Abstr. 1977, 86, 89207u)。
【0004】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GABOBは単純な構造にも関わらず、多数のそれらのエナンチオ選択的調製方法が文献において説明されている (Wang, G.; Hollingsworth, R. I. Tetrahedron: Asymmetry 1999, JO, 1895及びその中で引用されている文献)。それらは光学分割、天然産物からの不斉合成、触媒を用いた不斉合成、及び鍵となるエナンチオ選択的段階における酵素の利用、により調製されてきた。文献で報告されている以前のアプローチは、長い反応順序のため全収率が低下しているか、あるいはキラルプールにはないキラル出発材料を用いていたり、あるいは標的化合物が低いエナンチオ選択性で得られたりしていた。これらの化合物に関連する高い生物学的重要性を考慮して、より容易で、効率的で且つ費用効果的なアプローチが研究されている。
【0006】
GABOBは、その基本的な構造骨格において4つの炭素鎖を有しており、逆合成ストラテジーによると、エナンチオマーとして純粋な3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル又は3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、標的分子の合成にとって優れたキラル構成単位でありうることが明らかとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的
本発明の主目的は、3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの両エナンチオマーの立体選択的調製のための化学酵素的方法及びエナンチオ収束的方法を通じた(R)−GABOBの調製におけるそれらの有効的な応用、を提供することである。
【0008】
本発明の要約
本発明は、(R)−GABOBの立体選択的調製のための化学酵素的なエナンチオ収束的方法であって、
i)3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルをエステル交換し、そして、リパーゼ及び酢酸ビニルの存在下リパーゼ媒介型の速度論的分割により得られるエナンチオマーを分離し;
ii)光学的に純粋な(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換し;そして
iii)(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換すること、
を含んで成る方法を提供することである。
【0009】
本発明の1つの態様において、アセチル化剤は、3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルのエステル交換に利用されている、酢酸ビニル及び酢酸イソプロペニルから成る群から選択される。
【0010】
本発明の別の態様において、リパーゼは、改質セラミック粒子上に固定されたシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ(PS−C)、珪藻岩上に固定されたシュードモナス・セパシアリパーゼ(PS−D)、シュードモナス・セパシア(PS)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluroescens)リパーゼ(AK)、ムコール・メイヘイ(Mucor meihei)由来の固定化リパーゼ(Lipozyme)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(CRL)、及び焼結ガラス上のSol−Gel−AK内に固定されたカンジダ・アンタルチカ(Candida antartica)リパーゼ(CAL B)、から成る群から選択される。
【0011】
本発明の別の態様において、段階(i)は、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンから成る群から選択される溶媒の存在下で達成される。
【0012】
本発明の別の態様において、段階(i)は、ピリジン、トリエチルアミン、DMAP、及び2,6−ルチジンから成る群から選択される1又は複数の塩基性添加物の存在下で達成される。
【0013】
本発明の別の態様において、分割されたエナンチオマーのリサイクルは、両エナンチオマーのエナンチオマー過剰率が99%超であるため回避される。
【0014】
本発明の別の態様において、(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、K2CO3及びp−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、続いて、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてBu2SnOの存在下ジクロロメタン中で処理することにより(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルに変換される。
【0015】
本発明の別の態様において、(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルは、段階(iii)において、アンモニア水、続いて希塩酸を用いて処理することにより、ワンポット(single-pot)で(R)−GABOBに変換される。
【0016】
本発明の別の態様において、(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、アンモニア及び過酸化水素、続いてPb(OAc)4を用いてピリジン中で処理することにより(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される。
【0017】
本発明の別の態様において、(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、p−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、その後、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてジクロロメタン中で処理することにより(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される。
【0018】
本発明の別の態様において、(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、NaCNを用いて処理することにより(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換され、続いて、これは塩酸を用いて処理することにより(R)−GABOBに変換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
本発明は、(R)−GABOBの立体選択的調製のための化学酵素的なエナンチオ収束的方法であって、
(i)3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルをエステル交換し、そして、リパーゼ及び酢酸ビニルの存在下リパーゼ媒介型の速度論的分割により得られるエナンチオマーを分離し;
(ii)光学的に純粋な(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換し;そして
(iii)(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換すること、
を含んで成る方法を提供する。
【0020】
アセチル化剤は、アセチル化剤は、3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルのエステル交換に利用されている、酢酸ビニル及び酢酸イソプロペニルから成る群から選択される。リパーゼは、改質セラミック粒子上に固定されたシュードモナス・セパシアリパーゼ(PS−C)、珪藻岩上に固定されたシュードモナス・セパシアリパーゼ(PS−D)、シュードモナス・セパシア(PS)、シュードモナス・フルオレセンスリパーゼ(AK)、ムコール・メイヘイ由来の固定化リパーゼ(Lipozyme)、カンジダ・ルゴサリパーゼ(CRL)、及び焼結ガラス上のSol−Gel−AK内に固定されたカンジダ・アンタルチカリパーゼ(CAL B)、から成る群から選択される。段階(i)は、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンから成る群から選択される溶媒の存在下、そして所望により種々の添加物の存在下で達成される。使用する添加物には、ピリジン、トリエチルアミン、DMAP、及び2,6−ルチジンから成る群から選択される1又は複数の塩基性添加物が含まれる。分割されたエナンチオマーのリサイクルは、両エナンチオマーのエナンチオマー過剰率が99%超であるため回避される。
【0021】
(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、K2CO3及びp−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、続いて、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてBu2SnOの存在下ジクロロメタン中で処理することにより(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルに変換される。(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルは、段階(iii)において、アンモニア水、続いて希塩酸を用いて処理することにより、ワンポットで(R)−GABOBに変換される。
【0022】
(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、アンモニア及び過酸化水素、続いてPb(OAc)4を用いてピリジン中で処理することにより(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される。(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、p−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、その後、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてジクロロメタン中で処理することにより(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される。(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、NaCNを用いて処理することにより(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換され、続いて、これは塩酸を用いて処理することにより(R)−GABOBに変換される。
【0023】
上文で説明した通り、本発明は、ラセミの3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルのリパーゼ媒介型速度論的分割を介した(R)−GABOBの調製のための化学酵素エナンチオ収束的方法を提供する。以下のスキームは、エナンチオマーとして純粋な(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル及び(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの調製並びに(R)−GABOBの調製におけるそれらの功を奏する応用を表す。
【0024】
スキーム1
【化2】

試薬及び条件:i.PS−C、酢酸ビニル、ジイソプロピルエーテル、46℃
【0025】
スキーム2
【化3】

試薬及び条件:i.K2CO3、メタノール;ii.PTSA、メタノール、rt.;iii.TsCl、Et3N、Bu2Sno、DCM;iv.アンモニア水、エタノール還流;v.水性トリメチルアミン、エタノール還流
【0026】
スキーム3
【化4】

試薬及び条件:i.H22、水性NH3、rt.;ii.Pb(OAc)4、ピリジン;iii.PTSA、メタノール、rt.;iv.TsCl、Et3N、DCM;v.NaCN、メタノール−H2O、還流;vi.濃塩酸、80℃
【0027】
本発明において、3−ヒドロキシ−4−トリオキシブタンニトリルは、3−トリチルオキシ−1,2−エポキシプロパンから調製した。3−ヒドロキシ−4−トリオキシブタンニトリルは、酢酸ビニル及びリパーゼ、そして所望により、種々の添加物、の存在下、立体選択的なアセチル化により効率的に分割した。
【0028】
速度論的分割法において形成したアルコール及び酢酸塩は、カラムクロマトグラフィーで分離する。これらの化合物のエナンチオマーとしての純度は、キラルカラム(Chiralcel OD)を用いるHPLCにより決定した。絶対配置は、リパーゼの立体選択性についての経験則により、酢酸塩についてはR、そしてアルコールについてはSと予め仮定し、そしてその後、それらのカイロオプティカル特性及びクロマトグラフィー特性を、既知の配置の化合物のものと比較することにより確認した。
【0029】
光学的に純粋な(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、
(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルに、そして後に(R)−GABOBに変換した。(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに、そして後に(R)GABOBに変換した。
【0030】
本発明の方法を以下詳細に説明する:
1.ラセミの3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを、NaCNを用いた水性エタノール中での3−トリチルオキシ−1,2−エポキシプロパンの開環により調製した。
【0031】
2.ラセミの3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを、種々のリパーゼの存在下、異なる溶媒中で、且つ種々のアセチル化剤の存在下で立体選択的にアセチル化した。
【0032】
3.ラセミの3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルのアセチル化はまた、添加物、リパーゼ及びアセチル化剤の存在下で研究した。
【0033】
4.アセチル化剤、例えば酢酸ビニル及び酢酸イソプロペニルは、リパーゼ触媒によるアセチル化反応に使用した。
【0034】
5.異なるリパーゼ、例えば改質セラミック粒子上に固定されたシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ(PS−C)、珪藻岩上に固定されたシュードモナス・セパシアリパーゼ(PS−D)、シュードモナス・セパシア(PS)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluroescens)リパーゼ(AK)、ムコール・メイヘイ(Mucor meihei)由来の固定化リパーゼ(Lipozyme)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(CRL)、焼結ガラス上のSol−Gel−AK内に固定されたカンジダ・アンタルチカ(Candida antartica)リパーゼ(CAL B)を速度論的分割法用にスクリーニングした。
【0035】
6.種々の溶媒、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンをこの分割法において利用した。
【0036】
7.種々の塩基、例えばピリジン、トリエチルアミン、DMAP、及び2,6−ルチジン等をこの分割法における添加物として利用した。
【0037】
8.リパーゼ媒介型分割法の後に得られる光学的に純粋なSアルコール及びR酢酸塩は、カラムクロマトグラフィーで分離した。
【0038】
9.分割したアルコール及びエステルのエナンチオマーとしての純度は、キラルODカラムを用いたHPLCにより決定した。
【0039】
10.光学的に純粋な(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、K2CO3及びp−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、続いて、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてBu2SnOの存在下ジクロロメタン中で処理することにより(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルに変換した。
【0040】
11.光学的に純粋な(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルは、アンモニア水、続いて希塩酸を用いて処理することにより、ワンポット(single-pot)で(R)−GABOBに変換した。
【0041】
12.このようにして得られた光学的に純粋な(R)−GABOBは、イオン交換クロマトグラフィー及び再結晶化により精製した。
【0042】
13.光学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルは、アンモニア水を用いて過酸化水素の存在下処理して(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンアミドに変換され、、続いてPb(OAc)4を用いてピリジン中で処理して(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換した。
【0043】
14.(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、p−トルエンスルホン酸/メタノールで処理し、その後、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてジクロロメタン中で処理することにより(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンが得られた。
【0044】
15.(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、NaCNを用いて処理することにより(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換した。
【0045】
16.(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、塩酸を用いて80℃で処理することにより光学的に純粋な(R)−GABOBをもたらした。
【0046】
17.このようにして得られた光学的に純粋な(R)−GABOBは、イオン交換クロマトグラフィー及び再結晶化により精製した。
【0047】
以下の実施例は例示目的で示すものであり、それらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0048】
実施例1:(±)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル:
50mlのエタノール中にある3−トリチルオキシ−1,2−エポキシプロパン(15.80g、50.00mmol)の攪拌溶液に対し、150mLの水及びNaCN(2.94g、60.00mmol)を添加した。生じた反応混合物を一晩室温で攪拌し、そして反応完了後(TLC)、反応混合物を減圧下全量の約50%にまで濃縮した。残渣を酢酸エチル(3x125mL)で抽出し、食塩水で洗浄し、そして無水硫酸ナトリウム上で脱水した。溶媒の蒸発、及び、溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(25:75)を用いたカラムクロマトグラフィーによる残渣の精製は、82%の収率の3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルをもたらした。IR(ニート)3506, 3043, 2996, 2918, 2855, 2275, 1106, 1051cm-11HNMR (200 MHz, CDCl3)δ2.45−2.56(m, 2H), 3.27 (d, 2H, J= 5.2 Hz), 3.92−4.02 (m,1H), 7.23−7.41 (m, 15H);Mass(EI) 259,243,165,105,77.
【0049】
実施例2:(±)−3−アセチルオキシ−4−トリフェニルメトキシブタンニトリル:
(±)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル(1.03g、3.00mmol)に対し、窒素雰囲気のもと、無水酢酸(1.53g、15.00mmol)及びピリジン(0.26g、3.30mmol)を添加し、そして生じた混合物を一晩室温で攪拌した。反応完了後(TLC)、反応混合物を酢酸エチル(25mL)で希釈し、そして1N塩酸(20mL)で処理した。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、そして無水硫酸ナトリウム上で脱水した。溶媒を蒸発させ、そして残渣を、溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(15:85)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、ほぼ定量的な収率で必要な3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを生成した。IR (KBr) 3466, 3066, 3019, 2925, 2863, 2235, 1741, 1223, 1004 cm-1;HNMR (300 MHz, CDCl3)δ2.09 (s, 3H), 2.76 (d, 2H,J = 5.69, 5.79 Hz), 3.92−4.02 (m,1H), 7.23−7.41 (m, 15H); Mass (EI)259, 243, 165, 105, 77.
【0050】
実施例3:3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの分割手順
3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル(1.50g)のジイソプロピルエーテル(160mL)溶液に対し、リパーゼ(1.50g)及び酢酸ビニル(6当量)を連続的に添加し、そして室温でオービタルシェーカー内で振とうした。HPLC解析により反応が約50%完了したことが示唆された後、反応混合物を濾過し、そして残渣をジイソプロピルエーテルで3回洗浄した。一まとめにした有機層を減圧下で蒸発させ、そして溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(20:80)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、相当の(R)−酢酸塩、続いて(S)−アルコールを生成した。
【0051】
(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル:融点144〜146℃;[α]29D=−7.64(C 1.5,CHCl3):IR,NMR及び質量スペクトルデータは、ラセミの3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルと同一である。
【0052】
(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル:融点155〜158℃;[α]29D=+24.44(C 1.35,CHCl3):IR,NMR及び質量スペクトルデータは、ラセミの3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルと同一である。
【0053】
実施例4:キラルHPLC解析:
HPLC解析は、島津社製LC−10ATシステム制御装置と、検出器として波長UVモニターを備えたSPD−10Aとから成る機器上で実施した。解析は、キラルカラム(Chiralcel OD, Daicel)と、移動相としてヘキサン:イソプロパノール(90:10)を用いて、0.5mL/分の流速で実施し、そしてUV−254nmでモニタリングした。ラセミの酢酸塩を、HPLC上での比較のための基準試料として、実施例2に記載のように調製した。
【0054】
実施例5:(R)−3−アセチルオキシ−4−トシルオキシブタンニトリル:
(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル(3.85g、10.00mmol)のメタノール(40mL)溶液に対し、K2CO3(6.90g、50.00mmol)を添加し、そして室温で2時間攪拌した。TLCにより反応の完了が示唆された後、K2CO3を濾過し、そして残渣を20mLのメタノールで洗浄した。一まとめにした濾液に対し、p−トルエンスルホン酸(7.61g、40.00mmol)を添加し、そして一晩室温で攪拌した。反応完了後、反応混合物中の溶媒を蒸発させ、そして残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して3,4−ジヒドロキシブタンニトリルを得た。上述のようにして得られた3,4−ジヒドロキシブタンニトリルに対し乾燥ジクロロメタン(100mL)、酸化ジブチルスズ(0.50g、2.00mmol)及びp−トルエンスルホニルクロリド(2.29g、12.00mmol)を添加し、そして約1時間攪拌した。反応混合物を100mLの水で処理し、そして有機層を分離し、そして水相をジクロロメタン(125mL)で抽出した。一まとめにした有機層を硫酸ナトリウム上で脱水し、そして残渣を残すように蒸発させて、これを、溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(30:70)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、60%の収率で表題の化合物を生成させた。[α]26D=+13.5 (c 1.45,エタノール);IR(ニート)3474, 3059, 2933, 2902, 2220, 1584, 1349, 1169, 1098, 996 cm-1;HNMR(300MHz,CDCl3)δ2.48 (s, 3H), 2.52−2.67 (m, 2H), 4.06 (d, 2H, J= 5.4 Hz), 4.15−4.22 (m, 1H), 7.38 (d, 2H, J= 8.3 Hz), 7.80 (d, 2H, J= 8.3 Hz); Mass(EI) 255(M+), 173, 155, 139, 122, 91.
【0055】
実施例6:(R)−GABOB:
(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリル(3.50g、13.70mmol)のエタノール(40mL)溶液に対し、過剰なアンモニア水を添加し、一晩還流氏、そして反応混合物中の溶媒を蒸発させた。生じた残渣に対し、濃塩酸を添加し、そして溶媒の蒸発から6時間80℃に加熱し、粗製(R)−GABOBを含有する残渣をイオン交換クロマトグラフィー上で精製した(アンバーライトIR−120H+)。カラムは最初に、画分が中性になるまで水で溶出し、そしてその後、10%NH4OHで溶出した。塩基性画分の蒸発は濃厚な油をもたらし、これを最小量の水の中で溶解し、無水エタノールを添加して白色固体としての(R)−GABOB(84%)をもたらした。水−エタノールからの(R)−GABOBの再結晶は、白色結晶としての純粋な(R)−GABOBを73%の収率でもたらした。融点211−213℃;[α]28D=−20.7 (c 1.0, H2O); 1HNMR (200 MHz, D2O)δ2.43 (d, 2H, J = 5.9 Hz), 2.95 (dd, 1H, J1, = 9.66 Hz, J2 = 13.38 Hz), 3.18 (dd, 1H, J1 = 3.72 Hz, J2 = 13.38 Hz), 4.10−4.30 (m, 1H); 13CNMR (50 MHz, D2O) δ42.3, 44.0, 65.5, 178.5; Mass(EI)118 (M+−H)74, 60, 43.
【0056】
実施例7:(S)−3−ヒドロキシ−4−トリフェニルメトキシブタンアミド:
15mLのエタノール中の(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリル(5.15g、15.01mmol)の攪拌溶液に対し、室温で、アンモニア水(50mL)を添加し、そして、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、H22(100倍量)(34mL、300.00mmol)を分けて添加した。添加終了後、生じた反応混合物を激しく25〜30℃で攪拌し、そして反応の進行をTLCでモニタリングした。反応完了がTLCで示唆された後(一晩)、反応体積を元の体積の約50%にまで減圧下濃縮し、そして生じた混合物をジクロロメタン(3x75mL)で抽出した。一まとめにした有機層を無水硫酸ナトリウム上で脱水し、そして溶媒は残渣が残るように蒸発し、これを、溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(80:20)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、ほぼ定量的な収率で(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンアミドを生成させた。融点96〜100℃;[α]27D=− 18.08 (c 1.0, メタノール);IR(KBr)3467, 3349, 3012, 2980, 2918, 2839, 1671, 1098, 1076 cm-11HNMR (300 MHz, CDCl3) δ2.36 (d, 2H, J = 6.5 Hz), 3.13−3.16 (m, 2H), 3.28 (6S, 1H), 4.11−4.15 (m,1H), 5.44 (br,s,1H), 7.18−7.38 (m, 9H), 7.39−7.42 (m, 6H); Mass(EI)361, 259, 243, 165, 77.
【0057】
実施例8:(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン:
(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンアミド(4.33g、12.00mmol)のピリジン(25mL)溶液に対し、Pb(OAc)4(7.45g、16.80mmol)を添加し、そして生じた反応混合物を窒素雰囲気の下室温で1時間攪拌した。反応の完了がTLCにより示唆された時に、反応混合物をジクロロメタン(100mL)に溶解させ、そして続いて1Nの塩酸(125mL)で処理した。生じた反応混合物をセライトパッドで濾過し、そして残渣を3回ジクロロメタン(50mL)で洗浄した。一まとめにした濾液と洗浄液に由来する有機層を分離し、そして水層をジクロロメタン(2x100mL)で抽出した。ピリジンを含まない有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で脱水し、そして粗製オキサゾリジノンの残渣が残るように濃縮し、これを溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(50:50)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを85%の収率でもたらした。[α]26D=+25.0 (c 1.0, メタノール)IR(KBr)3247, 2933, 2886, 2824, 1741, 1012, 949 cm-11HNMR (300 MHz, CDCl3) δ3.24 (dd,1H, J, = 4.5 Hz, J2 = 10.4 Hz), 3.36−3.48 (m, 3H), 3.57−3.64 (m,1H), 4.71−4.77 (m,1H), 5.27 (br,s,1H), 7.21−7.44 (m, 9H), 7.46−7.47 (m, 6H); Mass(EI)274, 258, 243, 183, 165, 105, 77.
【0058】
実施例9:(S)−5−ヒドロキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン:
60mLのメタノール中の(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン(7.18g、20.00mmol)の攪拌溶液に対し、室温で、p−トルエンスルホン酸(7.16g、40.00mmol)を添加し、そして攪拌を一晩続けた。反応完了後(TLC)、反応混合物中の溶媒を蒸発させ、そして残渣を溶出剤としてメタノール−酢酸エチル(5:95)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、純水な5−ヒドロキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを88%の収率で生成させた。融点70〜73℃;[α]27D=+32.83 (c 0.6, エタノール);1HNMR(200 MHz, DMSO (d6))δ3.35−3.75 (m, 4H), 4.50−4.64 (m,1H)4.85 (br s, 1H).
【0059】
実施例10:(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン:
p−トルエンスルホニルクロリド(2.74g、14.36mmol)及びEt3N(1.45g、14.36mmol)を、20mLのジクロロメタン中に分散させた5−ヒドロキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン(1.40g、11.97mmol)に添加し、そして一晩室温で窒素雰囲気の下攪拌した。反応完了後(TLC)、反応混合物中の溶媒を蒸発させ、そして残渣を溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(70:30)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを80%の収率で生成させた。融点96〜99℃;[α]27D=+45.40 (c 1.25, CHCl3);IR(KBr)3302, 2980, 2925, 2871, 1757, 1694, 1357, 1184, 1090, 996, 965 cm-1; 1HNMR(200 MHz, CDCl3) δ2.47 (s, 3H), 3.40−3.50 (m,1H), 3.64−3.74 (m,1H), 4.14 (d, 2H, J = 4.4 Hz), 4.71−4.82 (m,1H), 7.35 (d, 2H, J= 8.2 Hz), 7.78 (d, 2H, J= 8.2 Hz); Mass(EI)271, 207, 173, 155, 139, 91.
【0060】
実施例11:(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン:
(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン(0.54g、1.99mmol)のメタノール−水(15−3mL)の攪拌溶液に対し、NaCN(0.39g、8.00mmol)を室温で添加し、続いて還流するまで4時間加熱した。反応完了後、反応混合物中の溶媒を完全に蒸発させ、そして残渣を溶出剤として酢酸エチル−ヘキサン(70:30)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを70%の収率で生成させた。[α]26D=+4.5 (c 1.0, メタノール);IR(ニート) 3349, 2918, 2839, 2243, 1710, 1255, 1051cm-1; 1HNMR(200 MHz, CD3OD) δ2.57 (d, 2H, J= 6.6 Hz), 3.20−3.55 (m, 2H), 4.00−4.18 (m,1H).
【0061】
実施例12:(R)−4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸(GABOB):
(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン(0.15g、1.2mmol)と濃塩酸(15mL)の混合物を攪拌し、そして80〜90℃で6時間加熱した。TLCで反応完了が示唆された後、反応混合物中の溶媒を蒸発させ、そして残渣をイオン交換カラムクロマトグラフィー(アンバーライトIR−120H+)で精製した。最初に、回収した画分が中性になるまで水で溶出し、そしてその後、10%NH4OHで溶出した。塩基性画分中の溶媒を蒸発させ、そして最小量の水で再溶解し、そしてエタノールで粉砕して、溶媒の蒸発後、無色の固体としての(R)−GABOBを得た。融点209〜212℃;[α]28D=−20.1 (c 1.0, H2O);1HNMR,13CNMR及び質量データは、(R)−3−アセトキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルから調製した(R)−GABOBのデータと同一である。
【0062】
本発明の主な利点:
β−ヒドロキシニトリル又はビシナルシアノヒドリンは重要であり、且つ有機合成において多用途の化合物である。これは、光学的に純粋な形態にあるこれらのヒドロキシニトリルが合成操作に多数の機会を提供し、アミノアルコール、ヒドロキシアミド、ヒドロキシ酸、ヒドロキシエステル等のように広範なキラルシントンをもたらすためである。更に、3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルの高い官能性(トリチルオキシ基、ヒドロキシル基、ニトリル基)が、それを生物学的に重要な、光学的に純粋な種々の化合物の合成のための非常に有用な中間体にするためである。また、この方法において得られた中間体は、最大限の光学純度のものであり、これは、標的である生物学的に重要な化合物の調製にとって必須である。更に、このようなエナンチオ収束的方法であれば、分割方法の後の不所望なエナンチオマー(S−エナンチオマー)も、標的分子の調製に首尾よく利用され、それにより前記方法の全収率が増大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−GABOBの立体選択的調製のための化学酵素的なエナンチオ収束的方法であって、
(i)3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルをエステル交換し、そして、リパーゼ及び酢酸ビニルの存在下リパーゼ媒介型の速度論的分割により得られるエナンチオマーを分離し;
(ii)(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換し;そして
(iii)(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルを(R)−GABOBに変換すること、
を含んで成る方法。
【請求項2】
アセチル化剤が、3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルのエステル交換に利用されている、酢酸ビニル及び酢酸イソプロペニルから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リパーゼが、改質セラミック粒子上に固定されたシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ(PS−C)、珪藻岩上に固定されたシュードモナス・セパシアリパーゼ(PS−D)、シュードモナス・セパシア(PS)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluroescens)リパーゼ(AK)、ムコール・メイヘイ(Mucor meihei)由来の固定化リパーゼ(Lipozyme)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(CRL)、及び焼結ガラス上のSol−Gel−AK内に固定されたカンジダ・アンタルチカ(Candida antartica)リパーゼ(CAL B)、から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階(i)が、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン及びジオキサンから成る群から選択される溶媒の存在下で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階(i)が、ピリジン、トリエチルアミン、DMAP、及び2,6−ルチジンから成る群から選択される1又は複数の塩基性添加物の存在下で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分割されたエナンチオマーのリサイクルは、両エナンチオマーのエナンチオマー過剰率が99%超であるため回避される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(R)−3−アセチルオキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルが、K2CO3及びp−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、続いて、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてBu2SnOの存在下ジクロロメタン中で処理することにより(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(R)−3−ヒドロキシ−4−トシルオキシブタンニトリルが、段階(iii)において、アンモニア水、続いて希塩酸を用いて処理することにより、ワンポット(single-pot)で(R)−GABOBに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(S)−3−ヒドロキシ−4−トリチルオキシブタンニトリルが、アンモニア及び過酸化水素を用いて、続いてPb(OAc)4を用いてピリジン中で処理することにより(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(S)−5−トリチルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンが、p−トルエンスルホン酸を用いてメタノール中で処理し、その後、p−トルエンスルホニルクロリド及びEt3Nを用いてジクロロメタン中で処理することにより(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(S)−5−トシルオキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンが、NaCNを用いて処理することにより(R)−5−シアノメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンに変換され、続いて、塩酸を用いて処理することにより(R)−GABOBに変換される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−502319(P2008−502319A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507932(P2007−507932)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000398
【国際公開番号】WO2006/064513
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506341906)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (3)
【Fターム(参考)】