説明

(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシプロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンの合成に有用なプロセス



式(I)による薬学的に有用な化合物、そのような化合物の形態、およびそのようなプロセスにおいて有用な中間体を製造するのに有用なプロセスが記載される。一態様において、式Iによる化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式IIによる化合物を、式IIIによる化合物またはその塩と、式IIIによる化合物のアミノ基による式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含むプロセスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミンH3受容体関連の障害を治療するのに有用である有機化合物およびその塩の合成において有用な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
その全体が参照により本明細書に組み込まれているPCT出願PCT/US2007/022086に記載されている化合物、(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン(下の、式Iの化合物)は、ヒスタミンH3受容体関連の疾患および障害の治療において有用であるヒスタミンH3受容体モジュレーターのクラスに属する。
【0003】
【化1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
効率的合成手順は、そのような化合物に経済的な経路を提供すること、ならびに純粋でありかつ/または有害な汚染物質を含まない薬物製品の調製の両方のために、新たな薬物化合物の開発において極めて重要である。本明細書に記載されている合成手順および中間体は、これらおよび他の必要性のうちの1つまたは複数を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、式I:
【0006】
【化2】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式II:
【0007】
【化3】

(式中、Lは、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される適当な脱離基である)による化合物を、式III:
【0008】
【化4】

による化合物またはその塩と、式IIIによる化合物のアミノ基による式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含むプロセスが提供される。
【0009】
その一部の実施形態において、プロセスは、式IIによる化合物が、式IV:
【0010】
【化5】

による化合物を、ヒドロキシル基の変換を行うのに十分な条件下で反応させ、式IIによる化合物の脱離基Lを形成することを含むプロセスにより調製される、あるステップをさらに含む。
【0011】
その一部の実施形態において、プロセスは、式IVによる化合物が、式V:
【0012】
【化6】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)を還元することを含むプロセスにより調製される、あるステップをさらに含む。
【0013】
その一部の実施形態において、プロセスは、式Vによる化合物が、式VI:
【0014】
【化7】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を、式VII:
【0015】
【化8】

(式中、Lは、適当な脱離基である)と、式VIによる化合物のスルフィネート基による式VIIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させることを含むプロセスにより調製される、あるステップをさらに含む。
【0016】
その一部の実施形態において、プロセスは、式VIによる化合物が、式VIII:
【0017】
【化9】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を還元することを含むプロセスにより調製される、あるステップをさらに含む。
【0018】
その一部の実施形態において、プロセスは、式VIIIによる化合物が、式IX:
【0019】
【化10】

(式中、Rは、水素またはRまたはC〜Cアルキルである)をクロロスルホン化することを含むプロセスにより調製される、あるステップをさらに含む。
【0020】
別の態様において、式I:
【0021】
【化11】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式IX:
【0022】
【化12】

による出発材料またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を提供すること、および
(a)クロロスルホン化を行い、得られる塩化スルホニルを還元してスルフィン酸塩を形成し、式VII:
【0023】
【化13】

によるアルキル化剤でスルフィン酸塩をアルキル化すること、
(b)保護されていてもよいカルボキシル基−C(=O)ORを変換し、式X:
【0024】
【化14】

による基を形成し、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含む反応順序を行うことを含むプロセスが提供される。
【0025】
さらなる態様において、式Iによる化合物の合成、およびそのようなプロセスにおいて有用な中間体を調製することにおいて有用なプロセスが提供される。
【0026】
式II:
【0027】
【化15】

(式中、Lは、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される脱離基である)による化合物を調製するためのプロセスであって、式IV:
【0028】
【化16】

による化合物を、ヒドロキシルの変換を行い、式IIによる化合物の脱離基Lを形成するのに十分な条件下で反応させることを含むプロセスが提供される。
【0029】
式IV:
【0030】
【化17】

による化合物を調製するためのプロセスであって、式V:
【0031】
【化18】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)を還元することを含むプロセスが提供される。
【0032】
別の態様において、式V:
【0033】
【化19】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物を調製するためのプロセスであって、式VI:
【0034】
【化20】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を、式VII:
【0035】
【化21】

(式中、Lは、適当な脱離基である)による化合物と、式VIによる化合物のスルフィネート基による式VIIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させることを含むプロセスが提供される。
【0036】
式VI:
【0037】
【化22】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式VIII:
【0038】
【化23】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を還元することを含むプロセスが提供される。
【0039】
式VIII:
【0040】
【化24】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式IX:
【0041】
【化25】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)をクロロスルホン化することを含むプロセスが提供される。
【0042】
式I:
【0043】
【化26】

による化合物の塩を調製するためのプロセスであって、
式Iによる化合物を、例えば、アセトニトリル以外の溶媒中で、酸、例えば、クエン酸と反応させることを含むプロセスも提供される。
【0044】
他の態様において、式Iによる化合物の合成において有用な新規かつ有用な中間体が提供される。
【0045】
一態様として、式XI:
【0046】
【化27】

(式中、Rは、ヨウ化物、ヒドロキシル、またはスルホン酸エステルである)による化合物が提供される。
【0047】
式V:
【0048】
【化28】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物も提供される。
【0049】
式VI:
【0050】
【化29】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)も提供される。
【0051】
式VIII:
【0052】
【化30】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本出願は、ヒスタミンH3受容体の活性をモジュレートし、認知障害、てんかん、脳外傷、うつ病、肥満症、ナルコレプシー、交代勤務症候群、薬物療法からの副作用としての眠気、課題などの完了を助けるための覚醒状態の維持、脱力発作、過眠症、傾眠症候群、時差ボケ、睡眠時無呼吸などの睡眠および覚醒の障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症、アレルギー、上気道におけるアレルギー性反応、アレルギー性鼻炎、鼻充血、疼痛、認知症、アルツハイマー病などのヒスタミンH3受容関連の障害の治療において有用である(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン、および塩、ならびにそれらの組成物の合成方法を提供する。そのような化合物の合成において有用な中間体も提供される。
【0054】
I.定義
本明細書で使用されるように、「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈がそのこと以外を明確に指示していない限り、複数の対象を包含する。
【0055】
「脱離基」とは、水素に接続している場合に、約5以下のpKa、または好ましい脱離基の場合に、約2以下のpKaの酸(H−X)である一価の基(−X)を意味する。したがって、脱離基は、求核置換において置き換えられ、典型的には、安定な陰イオンを与えることができる、ある化合物の官能基である。脱離基の例は、ハロゲン、例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物、ならびに、スルホン酸エステル基、例えば、トリフルオロメタンスルホネート(−OTf)、アレーンスルホネート(フェニルスルホネート、p−トルエンスルホネート(−OTs)、およびナフタレンスルホネートなど)、またはアルカンスルホネート(メシレートなど)を包含する。
【0056】
「(C〜C)アルキル」(xおよびyは、整数である)という用語は、x〜y個の炭素原子を含有するアルキル基を指す。アルキル基は、正式には、1つのC−H結合が、化合物の残部へのアルキル基の接続点により置き換えられているアルカンに対応する。アルキル基は、直鎖または分岐であってよい。3個以上の炭素原子を有するアルキル基は、環式であってよい。7個以上の炭素原子を有する環式アルキル基は、2つ以上の環を含有し、多環式であってよい。直鎖アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、およびn−オクチルを包含する。分岐アルキル基の例は、i−プロピル、t−ブチル、および2,2−ジメチルエチルを包含する。環式アルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、および4−メチルシクロヘキシルを包含する。多環式アルキル基の例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ノルボルニル、およびアダマンチルを包含する。
【0057】
「(C〜C)アルコキシ」(xおよびyは、整数である)という用語は、酸素原子に直接接続している、本明細書で定義されているような(C〜C)アルキルラジカルを意味する。例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシなどを包含する。
【0058】
「(C〜C)アルカノニトリル」(xおよびyは、整数である)という用語は、式Alk−C≡N(Alkは、アルキル基を表す)の化合物を意味し、化合物は、x〜y個の炭素原子(ニトリル基の炭素原子を包含する)を有する。例は、アセトニトリル、プロピオニトリル、およびブチロニトリルを包含する。
【0059】
「(C〜C)アルカノン」(xおよびyは、整数である)という用語は、式Alk−(C=O)−Alk’(AlkおよびAlk’は、各々、独立して選択されるアルキル基を表す)の化合物を意味し、化合物は、x〜y個の炭素原子(カルボニル基の炭素原子を包含する)を有する。例は、アセトン、2−ブタノンならびに2−および3−ペンタノンを包含する。
【0060】
「(C〜C)アルカノール」(xおよびyは、整数である)という用語は、式Alk−OH(Alkは、アルキル基を表す)の化合物を意味し、化合物は、x〜y個の炭素原子を有する。例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、およびt−ブタノールを包含する。
【0061】
「脂肪族エーテル」という用語は、正式には、酸素原子が、1つまたは複数のC−C結合内に挿入され、C−C結合を1つまたは複数のエーテル基と置き換えたアルカンである化合物を意味する。例は、非環式エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、および1,2−ジメトキシエタン、ならびに環式エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンである。
【0062】
「カルボン酸溶媒」という用語は、そのアルキル基がフッ素で置換されていてもよいC〜Cアルカン酸(即ち、式Alk−(C=O)OH(Alkは、アルキル基である)の化合物)を意味する。例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、およびペンタフルオロプロピオン酸を包含する。
【0063】
「保護基」とは、一部の反応条件に対して安定であるが、他の条件下で除去されることがある化学官能基の誘導体であり、その下で基が安定であり、除去することができる一般的タイプの条件は、当業者に公知である。この特性は、その条件下では安定であるが、その後に除去して元の官能基を再生することができ、それによって、「保護されて」いたと見なすことができる保護基が使用される場合に、ある官能基が、さもなければ、特定の反応を行うのに必要とされる条件に適合しない反応を行うことを可能にする。保護基は、他の目的(例えば、「保護されている」誘導体が、「保護されていない」官能基を有する化合物よりも溶けやすいか、精製しやすい場合)にも使用することができる。当業者が、保護基が有用である場合、そのような基を選択する方法、およびそれらを選択的に導入して選択的に除去するために使用することができるプロセスを知っているのは、保護基を選択および使用する方法が化学文献中で広範囲にわたって提供されているためである。保護基を選択し、組み入れ、除去するための技法は、例えば、その全開示が参照により本明細書に組み込まれているTheodora W. Greene, Peter G. M. WutsによるProtective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons Ltd(第3版、1999年)(「Greene」)中に見いだすことができる。本発明との関連で特に興味深いのは、Greeneの第5章に記載されているカルボキシル基の保護基であり、そのエステルが特に興味深く、メチルエステル、置換メチルエステル(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、メトキシエトキシメチル、2−トリメチルシリルエトキシメチル、ベンジルオキシメチル)、エチル、置換エチルエステル(例えば、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−シアノエチル)、n−アルキル(例えば、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル)、分岐アルキル(例えば、イソプロピル、t−ブチル)、アリル、フェニル、ベンジル、置換ベンジル(例えば、トリフェニルメチル、p−ブロモベンジル)などを包含する。
【0064】
II.化学プロセス
発明者らは、(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンが、下のスキーム1に図示されている反応スキームにより、市販されている化合物4−ビフェニル酢酸(R=Hである式IXの化合物)(または、その誘導体)、またはその保護されている誘導体から出発して効率的に合成することができることを発見した。
【0065】
スキーム1
【0066】
【化31】

プロセスは、4−ビフェニル酢酸(R=Hである式IXの化合物)(または、その保護されている誘導体)を提供し、酢酸基を変化させて(R)−(2−メチルピロリジニル)エチル基を提供すること、および4’位においてクロロスルホン化反応を行い、得られる塩化スルホニルを還元し、アルキル化により式Iによる化合物の3−メトキシプロピル基を導入することを含む。
【0067】
したがって、大まかに言えば、式I:
【0068】
【化32】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式IX:
【0069】
【化33】

による出発材料またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を提供し、
(a)クロロスルホン化反応を行い、得られる塩化スルホニルを還元してスルフィン酸塩を形成し、式VII:
【0070】
【化34】

によるアルキル化剤でスルフィン酸塩をアルキル化すること、
(b)保護されていてもよいカルボキシル基−C(=O)ORを変換し、式X:
【0071】
【化35】

による基を形成し、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含む反応順序を行うことを含むプロセスが提供される。
【0072】
そのようなプロセスの一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0073】
本発明の一態様は、式I:
【0074】
【化36】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式IX:
【0075】
【化37】

による化合物またはその塩をクロロスルホン化し、式VIII:
【0076】
【化38】

による化合物またはその塩を形成すること、
(b)式VIIIによる化合物またはその塩を還元し、式VI:
【0077】
【化39】

による化合物またはその塩を形成すること、
(c)式VIによる化合物またはその塩を、式VII:
【0078】
【化40】

による化合物と、式VIによる化合物のスルフィネート基による式VIIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式V:
【0079】
【化41】

による化合物を形成すること、
(d)式Vによる化合物を還元し、式IV:
【0080】
【化42】

による化合物を形成すること、
(e)式II:
【0081】
【化43】

による化合物を形成するために、式IVによる化合物を、式IVによる化合物のヒドロキシル基の変換を行うのに十分な条件下で反応させ、式IIによる化合物の脱離基Lを形成すること、および
(f)式IIによる化合物を、式III:
【0082】
【化44】

による化合物またはその塩と、式IIIによる化合物のアミノ基による式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含み、
が、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される適当な脱離基であり、
が、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lが、C〜Cアルコキシであり、
が、適当な脱離基であり、
が、水素またはC〜Cアルキルであり、
が、水素またはC〜Cアルキルであり、
が、水素またはC〜Cアルキルであるプロセスに関する。
【0083】
式Iによる化合物は、場合により、例えば、本明細書に記載されている方法によるその合成に従って塩に変換することができる。したがって、そのようなプロセスの一部の実施形態において、方法は、式Iによる化合物を酸と反応させ、式Iによる化合物の塩を単離することを含む。一部の実施形態において、塩は、クエン酸塩である。その一部の下位実施形態において、塩は、一クエン酸塩である。他の実施形態において、塩は、二クエン酸塩である。一部の実施形態において、塩は、マレイン酸塩である。一部の実施形態において、塩は、塩酸塩である。塩形成のための方法は、下で詳細に議論される。
【0084】
1.アミンアルキル化ステップ(ステップ6)
一態様において、式I:
【0085】
【化45】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式II:
【0086】
【化46】

(式中、Lは、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される適当な脱離基である)による化合物を、式III:
【0087】
【化47】

による化合物またはその塩と、式IIIによる化合物のアミノ基による式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含むプロセスが提供される。
【0088】
上述のプロセスにおけるLとして任意の適当な脱離基を使用することができる。適当な脱離基は、ハロゲン、例えば、塩化物、臭化物、またはヨウ化物、およびスルホン酸エステル基、例えば、トリフルオロメタンスルホネート(−OTf)、アレーンスルホネート(フェニルスルホネート、p−トルエンスルホネート(−OTs)、およびナフタレンスルホネートなど)、またはアルカンスルホネート(メシレートなど)を包含する。
【0089】
一部の実施形態において、Lは、塩化物、臭化物、およびヨウ化物から選択されるハロゲン、またはスルホン酸エステル基である。
【0090】
一部の実施形態において、Lは、ヨウ化物、またはスルホン酸エステル基である。一部の実施形態において、Lは、スルホン酸エステル基である。一部の実施形態において、Lは、メタンスルホン酸エステル基である。式IIIによる化合物((R)−2−メチルピロリジン)も、市販されているか、例えば、適当なプロリン誘導体の還元により、当業者に公知である方法により製造することができる(例えば、D. Zhaoら、「Efficient and Practical Synthesis of (R)-2-Methylpyrrolidine」、J. Org. Chem.、2006年、71巻(11号)、4336〜38頁を参照)。式IIIによる化合物は、遊離塩基の形態または塩の形態で反応において使用することができる。一部の実施形態において、式IIIによる化合物は、塩、例えば、L−酒石酸塩などの酒石酸塩の形態である。
【0091】
式IIによる化合物を変換して式Iによる化合物を提供するために、式IIおよびIIIの化合物の任意の相対量を使用することができる(変換の程度は、使用される式IIIによる化合物の量に左右される)。プロセスにおいて使用される化合物IIおよびIIIの相対モル量は、最適には約1:1に近くなければならず、わずかに過剰の式IIIの化合物の使用は、式IIによる化合物の完全かつ妥当な変換を保証するのに有益であると考えられる。プロセスにおいて使用される式IIの化合物に対する式IIIによる化合物のモル比は、有利には、少なくとも約1:1、または少なくとも約1.1:1などの約0.8:1〜約3:1の範囲である。例えば、約1:1〜約3:1、約1.1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1、約1.1:1〜約2:1、約1:1〜約1.5:1、または約1.1:1〜約1.5:1の範囲のモル比が適当である。適当な比の一例は、約1.4:1である。
【0092】
一部の実施形態において、反応させることは、適当な塩基の存在下で行われる。一部の実施形態において、塩基は、アルカリ金属炭酸塩である。式IIIによる化合物が、塩の形態で用いられる場合、塩基は、式IIIの化合物の遊離塩基形態を放出する。使用することができる塩基の量は、式IIによる化合物に対して少なくとも約1当量である。適当な塩基は、第三級アミン塩基、特に、ヒンダード第三級アミン塩基、例えば、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基、およびアルカリ金属またはアルカリ土類の炭酸塩などの無機塩基である。使用することができる塩基は、アルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを包含する。一部の実施形態において、塩基は、アルカリ金属炭酸塩である。一部の実施形態において、塩基は、炭酸カリウムである。
【0093】
試薬の十分な溶解性を達成することができる大部分の溶媒は、本明細書に記載されているプロセスを行うのに適している。一部の実施形態において、反応させることは、非プロトン性溶媒の存在下で行われる。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、C〜Cアルカノニトリルを含む。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、アセトニトリルを含む。一部の実施形態において、溶媒は、C〜Cアルカノンを含む。一部の実施形態において、C〜Cアルカノンは、2−ブタノンである。一部の実施形態において、反応させることは、水を含む溶媒の存在下で行われる。一部の実施形態において、反応させることは、水の存在下で行われる。適当な溶媒混合物の一例は、体積で比8:3のアセトニトリルと水の混合物である。適当な溶媒混合物のさらなる例は、体積で約8:3〜体積で約8:2の比の2−ブタノンと水の混合物である。適当な溶媒混合物のさらなる例は、体積で約8:3の比の2−ブタノンと水の混合物である。適当な溶媒混合物のさらなる例は、体積で約8:2の比の2−ブタノンと水の混合物である。
【0094】
反応させることは、周囲温度または高温にて行うことができる。一部の実施形態において、反応させることは、約30℃〜約120℃の範囲の温度にて行われる。
【0095】
一部の実施形態において、反応させることは、約60℃〜約80℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、反応させることは、約70℃の温度にて行われる。
【0096】
反応の進行は、標準的な分析技法、例えば、薄層クロマトグラフィー、またはHPLCにより追跡することができる。反応は、限定試薬の変換が、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%完了となるまで続けさせることができる。
【0097】
式Iの化合物の合成に続いて、式Iによる化合物は、場合により、塩に変換することができる。したがって、そのようなプロセスの一部の実施形態において、方法は、式Iによる化合物を酸と反応させ、式Iによる化合物の塩を単離することを含む。一部の実施形態において、塩は、クエン酸塩である。その一部の下位実施形態において、塩は、一クエン酸塩である。他の実施形態において、塩は、二クエン酸塩である。塩形成のための方法は、下で詳細に議論される。
【0098】
本明細書に記載されているプロセスの一部の実施形態において、プロセスは、式Iによる化合物、またはその塩を単離することをさらに含み、単離された式Iによる化合物、またはその塩は、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の純度を有する。
【0099】
本明細書に記載されているプロセスの一部の実施形態において、プロセスは、式Iによる化合物、またはその塩を単離することをさらに含み、単離された式Iによる化合物、またはその塩は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の鏡像体過剰率を有する。
【0100】
2.式IVによる化合物のヒドロキシル基の脱離基への変換による式IIによる化合物の調製(ステップ5)
別の態様において、式II:
【0101】
【化48】

(式中、Lは、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される脱離基である)による化合物を調製するためのプロセスであって、式IV:
【0102】
【化49】

による化合物を、式IIによる化合物の脱離基Lを形成するためにヒドロキシル基の変換を行うのに十分な条件下で反応させることを含むプロセスが提供される。
【0103】
一部の実施形態において、Lは、ヨウ化物またはスルホン酸エステル基である。
【0104】
一部の実施形態において、Lは、塩化物基である。プロセスは、式IVによる化合物を適当な塩素化剤、例えば、N−クロロスクシンイミドまたは四塩化炭素およびトリフェニルホスフィンと反応させることにより行うことができる。
【0105】
一部の実施形態において、Lは、臭化物基である。プロセスは、式IVによる化合物を適当な臭素化剤、例えば、N−ブロモスクシンイミドまたは四臭化炭素およびトリフェニルホスフィンと反応させることにより行うことができる。
【0106】
一部の実施形態において、Lは、ヨウ化物基である。プロセスは、式IVによる化合物を適当なヨウ素化剤、例えば、ヨウ素およびトリフェニルホスフィンと反応させることにより行うことができる。
【0107】
一部の実施形態において、Lは、スルホン酸エステル基である。プロセスは、式IVによる化合物を適当なスルホニル化剤、例えば、式IVによる化合物のヒドロキシル基と求電子的に反応し、スルホン酸エステルとしてヒドロキシル基をエステル化することができるスルホン酸誘導体と反応させることにより行うことができる。適当なスルホン酸誘導体の例は、塩化スルホニルなどのハロゲン化スルホニル、およびスルホン酸無水物である。
【0108】
一部の実施形態において、Lは、メタンスルホン酸エステル基である。一部の実施形態において、式IIによる化合物は、式IVによる化合物をメタンスルホニル化剤と反応させることにより調製される。一部の実施形態において、式IIによる化合物は、式IVによる化合物を塩化メタンスルホニルと反応させることにより調製される。一部の実施形態において、Lは、メタンスルホン酸エステル基であり、式IIによる化合物は、式IVによる化合物を塩化メタンスルホニルと反応させることにより調製される。プロセスは、式IVによる化合物をメタンスルホニル化剤、例えば、ハロゲン化メタンスルホニル、例えば、塩化メタンスルホニル、またはメタンスルホン酸無水物と反応させることにより行うことができる。適当なメタンスルホニル化剤は、塩化メタンスルホニルである。
【0109】
式IVによる化合物のヒドロキシル基の脱離基Lへの変換を行うのに使用される試薬、例えば、塩化メタンスルホニルなどのスルホニル化剤は、式IVによる化合物の量に対して過剰に使用することができる。したがって、プロセスにおいて使用される式IIによる化合物に対する試薬(例えば、塩化メタンスルホニルなどのスルホニル化剤)のモル比は、有利には、少なくとも約1:1、少なくとも約1.1:1などの約0.8:1〜約3:1の範囲、例えば、約1:1〜約3:1、約1.1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1、約1.1:1〜約2:1、約1:1〜約1.5:1、または約1.1:1〜約1.5:1の範囲である。適当な比の一例は、約1.4:1である。
【0110】
一部の実施形態において、式IIによる化合物を形成するために反応させることは、塩基の存在下で行われる。一部の実施形態において、塩基は、トリアルキルアミンを含む。一部の実施形態において、塩基は、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを含む。
【0111】
一部の実施形態において、式IIによる化合物を形成するために反応させることは、非プロトン性溶媒中で行われる。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、C〜Cアルカノニトリルを含む。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、アセトニトリルを含む。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、脂肪族エーテル、C〜Cアルカノニトリル、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態において、非プロトン性溶媒は、脂肪族エーテルとC〜Cアルカノニトリルの混合物を含む。一部の実施形態において、脂肪族エーテルは、メチルt−ブチルエーテルである。一部の実施形態において、C〜Cアルカノニトリルは、アセトニトリルである。一部の実施形態において、例えば、メタンスルホニル化反応は、溶媒が、重量で約4:1の比のメチルt−ブチルエーテルとアセトニトリルの混合物である反応混合物中で行われる。一部の実施形態において、例えば、メタンスルホニル化反応は、溶媒が、アセトニトリルである反応混合物中で行われる。
【0112】
一部の実施形態において、式IIによる化合物を形成するために反応させることは、ほぼ周囲温度以下にて行われる。一部の実施形態において、式IIによる化合物を形成するために反応させることは、約−20℃〜約20℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式IIによる化合物を形成するために反応させることは、約0℃〜約10℃の範囲の温度にて行われる。
【0113】
式IIによる化合物を調製するための本明細書に記載されているプロセス、またはその実施形態のうちのいずれかは、場合により、式Iによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用されることになる式IIによる化合物を合成するために使用することができる。
【0114】
3.式Vによる酸またはその誘導体を還元することによる式IVによる化合物の調製(ステップ4)
別の態様において、式IV:
【0115】
【化50】

による化合物を調製するためのプロセスであって、式V:
【0116】
【化51】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)を還元することを含むプロセスが提供される。
【0117】
式Vによる化合物を還元することは、カルボン酸またはエステルをアルコールへ還元するための当技術分野において公知である多種多様な方法のうちのいずれかを直接使用して行うことができる。還元は、例えば、カルボン酸またはエステルを別のカルボン酸誘導体(無水物など)に変換し、その誘導体を還元するか、段階的な還元を行う、例えば、式Vによる化合物をまずアルデヒドへ還元し、アルデヒドをアルコールへ還元することにより、間接的に行うこともできる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、式Vによる化合物を適当な還元剤と反応させることにより達成される。酸およびエステルの還元に適している還元剤の例は、水素化アルミニウム、例えば、水素化リチウムアルミニウム、および水素化ホウ素、例えば、ボランを包含する。水素化ホウ素リチウムは、エステルを還元するための試薬として有効である。水素化ホウ素ナトリウムもそのような還元において使用されることがあるが、一般的に、カルボン酸の還元において単独で使用される場合に有効ではない。しかしながら、三フッ化ホウ素と併せて使用される水素化ホウ素ナトリウムは、カルボン酸の還元に有効であり、水素化ホウ素ナトリウムの三フッ化ホウ素との反応がインサイツでボランを生じると考えられている。三フッ化ホウ素は、一般的に、そのような反応についてはエーテル化合物錯体の形態で使用される。
【0118】
一部の実施形態において、Lは、ヒドロキシルまたはヒドロキシルの塩であり、式Vによる化合物を還元するための還元剤は、水素化ホウ素(ホウ素−水素結合を含む化合物)を含む。その一部の実施形態において、水素化ホウ素は、ジボラン(即ち、溶媒中に溶かされた場合に、溶媒−BH錯体の形態で存在することがあるB)である。一部の実施形態において、水素化ホウ素は、ジボランまたはBH錯体である。一部の実施形態において、使用される三フッ化ホウ素は、三フッ化ホウ素エーテル化合物錯体の形態である。Lが、ヒドロキシルまたはヒドロキシルの塩である一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、三フッ化ホウ素の存在下で化合物を水素化ホウ素アルカリ金属と反応させることにより行われる。一部の実施形態において、水素化ホウ素アルカリ金属は、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0119】
一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、脂肪族エーテル溶媒中で行われる。一部の実施形態において、式IVによる化合物を形成するための反応において使用される脂肪族エーテル溶媒は、テトラヒドロフランである。Lが、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるプロセスの一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、三フッ化ホウ素の存在下で、化合物を水素化ホウ素アルカリ金属、例えば、水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより行われる。
【0120】
一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、ほぼ周囲温度以下にて行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、約−20℃〜約30℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を還元することは、約0℃〜約15℃の範囲の温度にて行われる。
【0121】
式Vによる化合物の脱離基への還元を行うのに使用される試薬、例えば、ジボランは、式Vによる化合物の量に対して過剰に使用することができる。例えば、水素化ホウ素ナトリウムおよび三フッ化ホウ素が還元剤を生成させるために使用される場合、水素化ホウ素ナトリウムおよび三フッ化ホウ素の適当な量の一例は、式Vによる化合物に対して各々約1.5当量である。
【0122】
式IVによる化合物を調製するための本明細書に記載されているプロセス、またはその実施形態のうちのいずれかは、場合により、式IIによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用されることになる式IVによる化合物を合成するために使用することができ、式Iによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができる。
【0123】
4.式VIによるスルフィン酸をアルキル化することによる式Vによる化合物の調製(ステップ3)
別の態様において、式V:
【0124】
【化52】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物を調製するためのプロセスであって、式VI:
【0125】
【化53】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を、式VII:
【0126】
【化54】

(式中、Lは、適当な脱離基である)による化合物と、式VIによる化合物のスルフィネート基による式VIIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させることを含むプロセスが提供される。
【0127】
式VIIによる適当な化合物は、公知であり、市販されており、または当業者に公知である方法により容易に調製することができる。式VIIによる適当な化合物の例は、Lが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはスルホン酸エステル基、例えば、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネートである化合物である。一部の実施形態において、Lは、臭化物である。
【0128】
一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0129】
一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、式VIによる化合物のアルカリ金属塩を使用して行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、式VIによる化合物のナトリウム塩または二ナトリウム塩を使用して行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、4’−スルフィノビフェニル−4−カルボン酸の二ナトリウム塩(D)を使用して行われる。
【0130】
一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、触媒の存在下で行われる。一部の実施形態において、触媒は、テトラアルキルアンモニウム塩を含む。一部の実施形態において、触媒は、ヨウ化物塩を含む。一部の実施形態において、触媒は、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウムを含む。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、水を含む溶媒の存在下で、4’−スルフィノビフェニル−4−カルボン酸の二ナトリウム塩(D)を使用して行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、テトラアルキルアンモニウムイオン、ヨウ化物イオン、またはそれらの混合物の存在下で行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、テトラアルキルアンモニウムイオンおよびヨウ化物イオンの存在下で行われる。一部の実施形態において、テトラアルキルアンモニウムイオンは、テトラn−ブチルアンモニウムイオンである。
【0131】
一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、周囲温度にて行うか、高温にて行うことができる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、約30℃〜約120℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、約50℃〜約100℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式Vによる化合物を形成するために反応させることは、約60℃〜約80℃の範囲の温度にて行われる。
【0132】
プロセスが、Rが、水素である式VIによる化合物か、そのような化合物の塩を使用して行われる場合、カルボン酸基は、スルフィネート基に加えてアルキル化され、それによってエステルを形成することがある。あるいは、プロセスのための出発材料として使用される式VIによる化合物の部分−C(=O)ORは、エステルであってよい。どちらの場合にも、式VIによる化合物の式VIIによる化合物との反応の生成物は、カルボン酸エステルの形態である化合物を含むことができる。酸の形態で式Vによる化合物を得ることが望ましい場合、カルボン酸エステルを加水分解し、酸の形態である式Vによる化合物を形成することができる。
【0133】
したがって、式Vによる化合物を調製するためのプロセスの一部の実施形態は、副産物のエステル基を加水分解するのに十分な条件下での加水分解塩基による処理により、式VIによる化合物を式VIIによる化合物と反応させることからのカルボン酸エステル副産物を加水分解することをさらに含む。エステルを加水分解するのに使用することができる条件の例は、水を含有する溶媒中で強塩基を使用することか、塩基として金属水酸化物(例えば、水またはメタノールなどのヒドロキシ溶媒中で使用することができるアルカリ金属水酸化物)を使用することを包含する。適当な塩基の一例は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩基である。一部の実施形態において、加水分解塩基は、水酸化ナトリウムを含む。
【0134】
式VIIによる化合物は、式VIによる化合物の量に対して過剰に使用することができる。式VIによる化合物におけるRが水素であるカルボキシル基の競合アルキル化のため、式VIIによる化合物の少なくとも約2当量、例えば、約3当量以上、または約4当量以上を使用することが望ましいことがある。プロセスのある実施形態の一例において、約4当量を使用することができる。テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラn−ブチルアンモニウム塩、またはヨウ化物塩が使用される場合、使用される量は、触媒量、即ち、約0.1当量などの約1当量未満であってよい。プロセスのある実施形態の一例において、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム約0.1当量が触媒として使用される。
【0135】
式Vによる化合物を調製するための本明細書に記載されているプロセス、またはその実施形態のうちのいずれかは、場合により、式IVによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用されることになる式Vによる化合物を合成するために使用することができ、式IIによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができ、式Iによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができる。
【0136】
5.式VIIIによる塩化スルホニルを還元することによる式VIによる化合物の調製(ステップ2)
別の態様において、式VI:
【0137】
【化55】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式VIII:
【0138】
【化56】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を還元することを含むプロセスが提供される。
【0139】
一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0140】
一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、適当な還元剤の存在下で行われる。適当な還元剤は、金属亜硫酸塩、例えば、亜硫酸ナトリウムを包含する。他の適当な還元剤は、亜硫酸塩または重亜硫酸塩、特に、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、および重亜硫酸カリウムを包含する。典型的に使用される還元剤の量は、通常、塩化スルホニルの量に対して過剰であり、例えば、約1〜約4当量の範囲の量、例えば、約3当量である。一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元するための還元剤は、金属亜硫酸塩を含む。一部の実施形態において、金属亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムである。
【0141】
一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、水を含む溶液中で行われる。
【0142】
式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、典型的には、塩基の存在下で行われる。適当な塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩などを包含する。適当な塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどを包含する。通常、使用される塩基の量は、約1〜4当量の範囲内である。
【0143】
一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、ほぼ周囲温度以上にて行うことができる。一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、約40℃〜約100℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、約40℃〜約80℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、式VIIIによる化合物またはその塩を還元することは、約50℃〜約70℃の範囲の温度にて行われる。
【0144】
式VIによる化合物を調製するための本明細書に記載されているプロセス、またはその実施形態のうちのいずれかは、場合により、式Vによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用されることになる式VIによる化合物を合成するために使用することができ、式IVによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができ、式IIによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセスか、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができ、式Iによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができる。
【0145】
6.式IXによる4−ビフェニル酢酸誘導体のクロロスルホン化によるVIIIによる化合物の調製(ステップ1)
式VIII:
【0146】
【化57】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式IX:
【0147】
【化58】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)をクロロスルホン化することを含むプロセスも提供される。
【0148】
一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0149】
一部の実施形態において、クロロスルホン化することは、適当なクロロスルホン化剤の存在下で行われる。一部の実施形態において、クロロスルホン化剤は、クロロスルホン酸である。クロロスルホン酸などのクロロスルホン化剤の量は、過剰、例えば、約1〜約10当量の範囲の量であってよい。クロロスルホン酸が使用される場合、過剰な試薬の使用が、有害であると見なされないのは、その加水分解生成物が水溶性であり、生成物から容易に分離されるためである。例えば、適当な量は、約2〜約10当量の範囲、例えば、約7当量であってよい。
【0150】
一般に、クロロスルホン化することは、式IXによる化合物が少なくとも部分的に溶け、クロロスルホン酸と反応しない任意の溶媒、例えば、塩素化炭化水素またはカルボン酸溶媒中で行うことができる。一部の実施形態において、クロロスルホン化することは、カルボン酸溶媒中で行われる。一部の実施形態において、カルボン酸溶媒は、トリフルオロ酢酸である。
【0151】
クロロスルホン化することは、典型的には、冷却する温度にて行われる。一部の実施形態において、クロロスルホン化することは、約0℃〜約40℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、クロロスルホン化することは、約10℃〜約30℃の範囲の温度にて行われる。一部の実施形態において、クロロスルホン化することは、約20℃〜約30℃の範囲の温度にて行われる。
【0152】
式VIIIによる化合物を調製するための本明細書に記載されているプロセス、またはその実施形態のうちのいずれかは、場合により、式VIによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用されることになる式VIIIによる化合物を合成するために使用することができ、場合により、式Vによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいて使用することができ、式IVによる化合物を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができ、式IIによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができ、式Iによる化合物か、その塩を合成するための上述のプロセス、またはそのようなプロセスの実施形態のうちのいずれかにおいてさらに使用することができる。
【0153】
7.式Iによる化合物の塩を調製するためのプロセス。
【0154】
別の態様において、式Iによる化合物の塩を調製するためのプロセスであって、式Iによる化合物を酸と反応させ、式Iによる化合物の塩を単離することを含むプロセスが提供される。
【0155】
式Iの化合物への言及において使用される「塩」という用語は、任意の酸付加塩を包含する。「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的応用において有用性を与える範囲内で毒性プロファイルを有する塩を指す。薬学的に許容できない塩は、それにもかかわらず、それらを有用性にする高結晶化度などの特性を持っていることがある。当業者は、例えば、P. H. StahlおよびC. G. WermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(Wiley-VCH 2002)に記載されているように、適当な薬学的に許容される塩形態を調製および選択する方法を知っているであろう。
【0156】
式Iによる化合物の塩を製造するためのプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物と反応させる酸は、クエン酸であり、塩は、クエン酸塩である。一部の実施形態において、塩は、クエン酸である。その一部の実施形態において、塩は、一クエン酸塩(即ち、約1:1のモル比で式Iによる化合物およびクエン酸を含む塩)である。他の実施形態において、塩は、二クエン酸塩(即ち、約1:2のモル比で式Iによる化合物およびクエン酸を含む塩)である。式Iによる化合物の塩を製造するためのプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物と反応させる酸は、塩酸であり、塩は、塩酸塩である。式Iによる化合物の塩を製造するためのプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物と反応させる酸は、マレイン酸であり、塩は、マレイン酸塩である。
【0157】
塩の中に存在する式Iによる化合物および酸の相対モル比が異なる様々な塩を形成することが可能である酸の場合、調製される塩は、塩を形成するためのプロセスにおいて使用される式Iによる化合物および酸の相対モル量を制御することにより決定されることがある。例えば、式Iによる化合物の一クエン酸塩を形成するためには、約1:1の式Iによる化合物に対するクエン酸のモル比を使用することができる。一方、二クエン酸塩を形成するためには、約2:1の式Iによる化合物に対するクエン酸のモル比を使用することができる。異なる化学量論を有する塩が形成し得るそのような場合には、溶媒中に必要量の式Iによる化合物および酸を含む均一な混合物が、反応混合物からの塩の結晶化の開始に先立って形成されるように、式Iによる化合物を酸と反応させるための反応条件を選択することが望ましい。
【0158】
クエン酸塩、例えば、一クエン酸塩または二クエン酸塩を形成するためのプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物とクエン酸を反応させて塩を形成するのに使用される溶媒は、アセトニトリルなどのC〜Cアルカノニトリルである(か、それらを含む)。他の実施形態において、塩は、アセトニトリル以外の溶媒またはアセトニトリルを含む溶媒混合物中で形成される。
【0159】
式Iによる化合物のクエン酸塩を調製するためのプロセスであって、溶媒中で式Iによる化合物をクエン酸と反応させることを含むプロセスが提供される。一部の実施形態において、溶媒は、アセトニトリルであるか、アセトニトリルを含む。他の実施形態において、溶媒は、アセトニトリル以外である。他の実施形態において、溶媒は、アセトニトリルを含む溶媒混合物以外である。その一部の実施形態において、塩は、一クエン酸塩である。その他の実施形態において、塩は、二クエン酸塩である。一部の実施形態において、溶媒は、C〜Cアルカノンを含む。一部の実施形態において、C〜Cアルカノンは、2−ブタノンである。一部の実施形態において、溶媒は、C〜Cアルカノールをさらに含む。一部の実施形態において、C〜Cアルカノールは、メタノールである。そのようなプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物は、C〜Cアルカノン、例えば、2−ブタノンなどの有機溶媒に溶かされ、水またはC〜Cアルカノールなどの適当な極性溶媒、例えば、メタノールに溶かされたクエン酸と反応させる。混合物は、当初から形成されるか、式Iによる化合物およびクエン酸を含む均一な混合物を形成するのに十分な温度まで温められることがあり、そこから、塩は、冷却および/または極性の低い溶媒の添加により結晶化する。例えば、特定の実施形態において、2−ブタノン中の式Iによる化合物約およびメタノール中のクエン酸約2当量を混ぜ合わせ、約50℃〜約70℃の範囲の温度(例えば、約60℃)まで加熱し、次いで、約0℃〜約10℃の温度まで冷却し、得られる二クエン酸塩の沈殿した固体を濾過により集める。
【0160】
化合物(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているPCT出願PCT/US2008/07144に記載されている。
【0161】
式Iによる化合物の塩を形成するための上述のプロセスの一部の実施形態において、式Iによる化合物は、式Iによる化合物を合成するための上述の方法のうちの1つに従って調製される。したがって、式Iによる化合物を調製するための上述の方法のうちのいずれかを含む式Iによる化合物の塩を合成するための方法であって、式Iによる化合物を適当な酸と反応させることにより式Iによる化合物の塩を形成するための本明細書に記載されているプロセスのうちのいずれかをさらに含む方法が提供される。
【0162】
III.中間体
本発明のある態様として、式Iによる化合物、およびその塩の合成において有用である中間体も提供される。
【0163】
一態様として、式XI:
【0164】
【化59】

(式中、Rは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ヒドロキシル、またはスルホン酸エステルである)による化合物が提供される。
【0165】
一部の実施形態において、Rは、ヨウ化物、ヒドロキシル、またはスルホン酸エステルである。
【0166】
一部の実施形態において、Rは、ヒドロキシルである。
【0167】
一部の実施形態において、Rは、スルホン酸エステル、例えば、メタンスルホン酸エステルである。
【0168】
式V:
【0169】
【化60】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物も提供される。
【0170】
一部の実施形態において、Lは、ヒドロキシルである。
【0171】
式VI:
【0172】
【化61】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)も提供される。
【0173】
その一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0174】
式VIII:
【0175】
【化62】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)も提供される。
【0176】
一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0177】
IV.医薬製品の製造
本明細書に記載されている方法による合成に続いて、式Iによる化合物、または一クエン酸塩もしくは二クエン酸塩などのその塩は、医薬製品の製造のために使用することができる。同様に、医薬製品は、ヒスタミンH3受容体モジュレーターが適応とされる様々な疾患および状態の治療にとって有用であることがある。
【0178】
医薬組成物は、任意の適当な方法により、典型的には、必要な比率で、1つまたは複数の活性化合物を液体もしくは微粉化した固体担体、または両方と均一に混ぜ、次いで、必要な場合に、得られる混合物を望ましい形状に成形することにより調製することができる。
【0179】
したがって、医薬組成物を調製するためのプロセスであって、本明細書に記載されている方法のうちのいずれかにより調製される(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンまたは一クエン酸塩もしくは二クエン酸塩などのその任意の塩、および薬学的に許容される担体を混合することを含むプロセスが提供される。
【0180】
結合剤、充填剤、許容される湿潤剤、錠剤化滑沢剤、および崩壊剤などの従来の添加剤は、経口投与のための錠剤およびカプセル剤において使用することができる。経口投与のための液体調製物は、溶液剤、乳剤、水性または油性懸濁剤、およびシロップ剤の形態であってよい。あるいは、経口調製物は、使用前に水または別の適当な液体ビヒクルで再構成することができる乾燥粉末の形態であってよい。懸濁剤または乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を包含する)、保存剤、ならびに香味料および着色剤などの追加の添加物を、液体調製物に加えることができる。非経口剤形は、本発明の化合物を適当な液体ビヒクルに溶かし、溶液を濾過滅菌した後、適切なバイアルまたはアンプルに充填および密封することにより調製することができる。これらは、剤形を調製するための当技術分野において周知である多くの適切な方法のごくわずかな例である。
【0181】
式Iによる化合物は、当業者に周知である技法を使用して医薬組成物に製剤化することができる。本明細書で述べられているものの他に、適当な薬学的に許容される担体は、当技術分野において公知であり、例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年、Lippincott Williams & Wilkins、(編集者: Gennaro, A. R.ら)を参照されたい。
【0182】
本明細書に記載されているようなある化合物またはその塩は、代替使用において、加工していないか混ぜ物のない化学物質として投与することが可能であるが、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬製剤または医薬組成物としてその化合物即ち活性成分を提供することが好ましい。1つまたは複数の担体は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して過度に有害ではないという意味で「許容でき」なければならない。
【0183】
医薬製剤は、経口、直腸、鼻腔、局所(口腔および舌下を包含する)、膣もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を包含する)投与に適しているか、吸入、吹送によるまたは経皮パッチによる投与に適している形態の製剤を包含する。経皮パッチは、薬物の分解が最小限である効率的な方法で吸収のために薬物を提供することにより、制御された速度で薬物を分配する。典型的には、経皮パッチは、不透過性の裏打ち層、単一の感圧粘着剤、および剥離ライナー付きの取り外し可能な保護層を含む。当業者は、当業者の要求に基づいている望ましい有効な経皮パッチを製造するのにふさわしい技法を理解および認識しているであろう。
【0184】
したがって、本発明の化合物は、従来のアジュバント、担体、または賦形剤と一緒に、医薬製剤およびその単位用量の形態にすることができ、そのような形態において、すべて経口使用のための錠剤もしくは充填カプセル剤などの固形剤か、溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、ゲル剤もしくはそれらを充填したカプセル剤などの液剤として、または直腸投与のための坐剤の形態で、または非経口(皮下を包含する)使用のための無菌注射用溶液剤の形態で用いることができる。そのような医薬組成物およびその単位剤形は、追加の活性な化合物または成分の有無にかかわらず、従来の比率で従来の成分を含むことができ、そのような単位剤形は、用いられることになる意図された1日用量範囲に見合った任意の適当な有効量の活性成分を含有することができる。
【0185】
経口投与については、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤または液剤の形態であってよい。医薬組成物は、特定の量の活性成分を含有する用量単位の形態で製造されることが好ましい。そのような用量単位の例は、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはバレイショデンプンなどの従来の添加物、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤、およびタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を併せたカプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、または懸濁剤である。活性成分は、例えば、生理食塩水、デキストロースまたは水を、適当な薬学的に許容される担体として使用することができる組成物として注射により投与することもできる。
【0186】
本発明の化合物を使用する場合の投与量は、習慣的であり医師に公知であるように、幅広い制限内で変化することがあり、各個別の症例における個別の状態に沿って合わせるべきである。それは、例えば、治療されることになる病気の性質および重症度、患者の状態、用いられる化合物または急性もしくは慢性の疾患状態が治療されるのか、予防が行われるのかどうかまたは本発明の化合物の他にさらなる活性化合物が投与されるのかどうかによって異なる。本発明の代表的投与量は、約0.001mg〜約5000mg、約0.001mg〜約2500mg、約0.001mg〜約1000mg、0.001mg〜約500mg、0.001mg〜約250mg、約0.001mg〜100mg、約0.001mg〜約50mg、および約0.001mg〜約25mgを包含するが、これらに限定されるものではない。複数投与量を、特に、比較的大量、例えば、2、3または4個の投与量が必要であると見なされる場合には、その日の間に投与することができる。個体に応じて、および患者の医師または介護者から適切であると見なされるように、本明細書に記載されている投与量から上方または下方にそれることが必要であることがある。
【0187】
治療において使用するのに必要とされる活性成分の量は、選択される特定の塩ばかりでなく、投与の経路、治療されている状態の性質ならびに患者の年齢および状態によって変化し、最終的には、担当の医師または臨床家の裁量による。一般に、当業者は、モデル系、典型的には、動物モデルにおいて得られるインビボデータを、ヒトなどの別のデータに外挿する方法を理解している。一部の環境において、これらの外挿は、単に、哺乳動物、好ましくは、ヒトなどの別のモデルと比較した動物モデルの体重に基づくことがあるが、多くの場合、これらの外挿は、単に体重に基づかず、むしろ様々な要因を組み入れる。代表的な要因は、患者のタイプ、年齢、体重、性別、食事および医学的状態、疾患の重症度、投与の経路、用いられる特定の化合物の活性、有効性、薬物動態学プロファイルおよび毒性学プロファイルなどの薬理学的配慮、薬物送達システムが利用されるのかどうか、疾患状態が慢性もしくは急性であるのかどうか、治療もしくは予防が行われるのかどうか、または本発明の化合物の他におよび薬物組合せの一部としてさらなる活性化合物が投与されるのかどうかを包含する。本発明の化合物および/または組成物で疾患状態を治療するための用量レジメンは、上に列挙されている様々な要因に従って選択される。したがって、用いられる実際の用量レジメンは、幅広く変化することがあり、したがって、好ましい用量レジメンから外れることがあり、当業者は、これらの典型的な範囲外の用量および用量レジメンを試験することができ、適切である場合には、本発明の方法において使用することができることを認識しているであろう。
【0188】
望ましい投与量は、単一投与量か、例えば、1日あたり2、3、4個またはそれ以上の部分投与量として適切な間隔で投与される分割投与量で好都合に提供することができる。部分投与量自体を、例えば、多くの分離した大まかに間隔を空けた投与にさらに分割することができる。1日投与量は、特に、比較的大量が、適切であると見なされて投与される場合に、例えば、2、3または4部分の投与に分割することができる。適切な場合に、個別の行動に応じて、指示されている1日投与量から上方または下方にそれることが必要であることがある。
【0189】
本発明による化合物およびその結晶性形態は、多種多様な経口および非経口剤形で投与することができる。下記の剤形が、活性成分として、本発明の化合物か薬学的に許容される本発明の化合物の塩のどちらかを含むことができることは、当業者には明らかであろう。
【0190】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、適当な薬学的に許容される担体の選択は、固体、液体または両方の混合物のどれであってもよい。固体形態の調製物は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤を包含する。固体担体は、賦形剤、矯味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としての役割も果たすことがある1つまたは複数の物質であってよい。
【0191】
散剤において、担体は、微粉化した活性成分との混合物中にある微粉化した固体である。
【0192】
錠剤において、活性成分は、適切な比率で必要な結合能力を有する担体と混ぜられ、望ましい形状およびサイズに固められる。
【0193】
散剤および錠剤は、様々なパーセンテージ量の活性化合物を含有することができる。粉末または錠剤における代表的な量は、活性化合物0.5〜約90パーセントを含有することができるが、当業者は、この範囲を外れた量が必要である場合を知っているであろう。散剤および錠剤にとっての適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。「調製物」という用語は、活性成分が、担体の有無にかかわらず、担体により取り囲まれ、したがって、担体と結び付いているカプセルを提供する、カプセル化材料を担体とする活性化合物の製剤を包含することが意図されている。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤が包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジ剤は、経口投与に適している固体形態として使用することができる。
【0194】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ワックスをまず融解し、活性成分を、撹拌することなどにより、その中へ均一に分散させる。次いで、融解された均一な混合物を、好都合な大きさの鋳型に注ぎ入れ、冷却し、それによって固化させる。
【0195】
膣投与に適している製剤は、活性成分の他に、適切であることが当技術分野において公知であるような担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤として提供することができる。
【0196】
液体形態の調製物は、溶液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水−プロピレングリコール溶液剤を包含する。例えば、非経口注射液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として製剤化することができる。注射用調製物、例えば、無菌注射用の水性または油性懸濁剤は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、無毒性の非経口的に許容される賦形剤または溶媒中の無菌注射用の溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁化媒体として好都合に用いられる。この目的には、合成のモノグリセリドおよびジグリセリドを包含する任意の刺激の少ない不揮発性油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。
【0197】
したがって、本発明による化合物およびその結晶性形態は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入により)のために製剤化することができ、アンプル剤、プレフィルドシリンジ剤、少容積注入の単位投与量形態で、または保存剤が添加されたマルチドーズ容器で提供することができる。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液剤、または乳剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水で構成するための、無菌固体の無菌単離によるか、溶液からの凍結乾燥により得られる粉末形態であってよい。
【0198】
経口使用に適している水性製剤は、活性成分を水に溶かすか懸濁させ、望ましい場合に、適当な着色料、香味料、安定化剤および粘稠剤を加えることにより調製することができる。
【0199】
経口使用に適している水性懸濁剤は、微粉化した有効成分を、天然もしくは合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または他の周知の懸濁化剤などの粘稠な材料と一緒に、水に分散させることにより製造することができる。
【0200】
使用直前に、経口投与のための液体形態の調製物に転換されることが意図されている固体形態の調製物も包含される。そのような液体形態は、溶液剤、懸濁剤、および乳剤を包含する。これらの調製物は、活性成分の他に、着色料、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有することができる。
【0201】
表皮への局所投与のために、本発明による化合物は、軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤として、または経皮パッチとして製剤化することができる。
【0202】
軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、適当な粘稠剤および/またはゲル化剤を添加し、水性または油性の基剤と共に製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性の基剤と共に製剤化することができ、一般的に、1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、粘稠剤、または着色剤も含有するであろう。
【0203】
口内での局所投与に適している製剤は、味のある基剤、通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性剤を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠剤;ならびに、適当な液体担体中に活性成分を含む含漱剤を包含する。
【0204】
溶液剤または懸濁剤は、従来の手段、例えば、点滴器、ピペットまたはスプレーで鼻腔に直接適用される。製剤は、シングルドーズまたはマルチドーズ形態で提供することができる。点滴器またはピペットの後者の場合において、このことは、適切な所定体積の溶液または懸濁液を投与する患者により達成することができる。スプレーの場合において、このことは、例えば、計量噴霧式スプレーポンプによって達成することができる。
【0205】
気道への投与は、活性成分が、適当な噴射剤と共に加圧パックで提供されるエアゾール製剤によって達成することもできる。本発明の化合物またはそれらを含む医薬組成物が、エアゾール剤として、例えば、鼻腔エアゾール剤としてか吸入により投与される場合、このことは、例えば、スプレー、ネブライザー、ポンプネブライザー、吸入装置、定量吸入器または乾燥粉末吸入器を使用して行うことができる。エアゾールとして本発明の化合物を投与するための医薬形態は、当業者に周知であるプロセスにより調製することができる。それらを調製するために、例えば、水、水/アルコール混合物、または適当な食塩溶液中の本発明の化合物の溶液剤または分散剤は、従来の添加物、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適当な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、可溶化剤、分散剤など、ならびに、適切な場合には、従来の噴射剤、例えば、二酸化炭素、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、およびジクロロテトラフルオロメタンなどのCFC、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのHFAを使用して用いることができる。エアゾールは、レシチンなどの界面活性剤も好都合に含有することができる。薬物の投与量は、定量バルブの提供により制御することができる。
【0206】
鼻腔内製剤を包含する気道への投与が意図されている製剤において、化合物は、一般的に、例えば、10ミクロン以下程度の小さな粒子サイズを有するであろう。そのような粒子サイズは、当技術分野において公知である手段により、例えば、微粉化により得ることができる。望ましい場合に、活性成分の持続放出が得られるように適合された製剤を用いることができる。
【0207】
あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)などの適当な粉末基剤中の化合物の粉末ミックスの形態で提供することができる。好都合には、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、単位投与量形態で、例えば、ゼラチンのカプセル剤またはカートリッジ剤か、粉末を吸入器によって投与することができるブリスターパックで提供することができる。
【0208】
医薬調製物は、単位剤形であることが好ましい。そのような形態において、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位投与量に分割される。単位剤形は、パッケージされた調製物であってよく、パッケージは、バイアルまたはアンプル中に、パッケージされた錠剤、カプセル剤、および散剤などの分離量の調製物を含有する。また、単位剤形は、それ自体がカプセル、錠剤、カシェ、またはロゼンジであるか、パッケージされた形態中の適切な数のこれらのうちのいずれかであってよい。
【0209】
経口投与のための錠剤またはカプセル剤および静脈内投与のための液剤が、好ましい組成物である。
【0210】
本発明の一部の実施形態は、「組合せ療法」のための医薬組成物を製造する方法であって、本明細書に記載されているような少なくとも1つの公知の薬剤および薬学的に許容される担体と一緒に、本明細書に開示されているような少なくとも1つの化合物またはその結晶性形態を混合することを含む方法を包含する。
【0211】
H3受容体モジュレーターが医薬組成物における活性成分として利用される場合、これらは、ヒトのみにおける使用が意図されておらず、他の非ヒト哺乳動物における使用が同様に意図されていることが留意される。実際に、動物ヘルスケアの領域における最近の進歩は、交友動物(例えば、ネコ、イヌなど)および家畜動物(例えば、ウシ、ニワトリ、魚など)におけるH3受容体関連の疾患または障害を治療するためのH3受容体モジュレーターなどの活性剤の使用について検討されていることを示唆している。当業者は、そのような状況におけるそのような化合物の有用性を理解していると容易に考えられる。
【0212】
本明細書に記載されている方法により調製される製剤は、ヒスタミンH3受容体モジュレーターの投与が適応とされる任意の疾患または状態の合成にとって有用である。
【0213】
ヒスタミン[2−(イミダゾール−4−イル)エチルアミン]は、H1、H2、H3およびH4と呼ばれる4つの異なるGタンパク質共役受容体(GPCR)を通じてその生理学的効果を発揮する。ヒスタミンH3受容体は、1983年に初めて同定され、H3受容体は、ヒスタミンの合成と放出の両方を制御する自己受容体としての機能を果たすことが決定された(ArrangらNature 1983年、302巻、832〜7頁を参照)。少なくとも4つのヒトスプライスバリアントおよび3つのラットスプライスバリアントが、薬理学的アッセイにおいて機能活性を証明した(Passaniら、Trends in Pharmacol. Sci. 2004年、25巻、618〜625頁)。ラットおよびヒトのヒスタミンH3受容体は、リガンドの非存在下においてさえシグナルを変換することができることを意味する恒常的活動も示す。ヒスタミンH3受容体は、ヘテロセプター(heteroceptor)としても機能し、セロトニン、アセチルコリン、ドーパミンおよびノルアドレナリンを包含する多くの他の伝達物質の放出をモジュレートする(Brownら、Prog. Neurobiol. 2001年、63巻、637〜672頁を参照)。したがって、ヒスタミンH3受容体を標的とするリガンドについて多くの治療的応用があり、リガンドは、拮抗薬か逆作動薬のどちらかとして機能する(総説については、Leursら、Nat. Rev. Drug. Discov.、2005年、4巻、107〜120頁;Passaniら、Trends Pharmacol. Sci. 2004年、25巻、618〜625頁を参照)。
【0214】
したがって、前臨床試験は、本発明の化合物などのヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬による治療に適している多くの適応症を特定してきた。本明細書に開示されている化合物は、いくつかの疾患および障害の治療および/または予防、ならびにそれらの症状の改善において有用であると考えられる。これらの化合物は、単独か、疾患および障害を治療および/または予防するための他の化合物と組み合わせて使用することができる。これらの疾患および障害は、下記を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0215】
ヒスタミンH3受容体拮抗薬は、覚醒を高めることが明らかにされている(例えば、Lin J. S.ら、Brain Research 1990年、523巻、325〜330頁)。この効果は、H3受容体拮抗薬が、睡眠および覚醒の障害を治療するのに有用であり得ることを証明している(Parmentierら、J Neurosci. 2002年、22巻、7695〜7711頁;Ligneauら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 1998年、287巻、658〜666頁)。例えば、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、睡眠時無呼吸およびパーキンソン病などの異なる病的状態、または夜間の仕事の結果としての睡眠遮断からの日中の傾眠、働き過ぎ、もしくは時差ボケなどの生活様式に関係する環境に関係する傾眠症候群を治療することができる(Passaniら、Trends Pharmacol. Sci.、2004年、25巻、618〜625頁を参照)。傾眠は、その高い有病率(一般人口の19〜37%)ならびに労働災害および交通事故を引き起こす危険性のため、重大な公衆衛生問題である。
【0216】
睡眠時無呼吸(sleep apnea)(あるいは、睡眠時無呼吸(sleep apnoea))は、睡眠中の呼吸の短い中断を特徴とする一般的な睡眠障害である。無呼吸と呼ばれるこれらのエピソードは、10秒以上持続し、夜間を通して繰り返し起こる。睡眠時無呼吸のある人々は、必死で呼吸しようとするため部分的に目覚めるが、朝には、睡眠の乱れに気付かないことがある。最も多いタイプの睡眠時無呼吸は、空気の通過を妨げる喉の奥における軟組織の弛緩により引き起こされる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。中枢性睡眠時無呼吸(CSA)は、呼吸するための脳の正常なシグナルの不規則性により引き起こされる。障害の特徴的な症状は、過度な日中の眠気である。睡眠時無呼吸の追加の症状は、浅い眠り、大いびき(沈黙と、続く、喘ぎの期間を伴う)、日中に寝入ること、起床時の頭痛、集中できないこと、イライラ感、物忘れ、気分または行動の変化、体重増加、心拍数の増加、不安、および抑鬱を包含する。
【0217】
20年間を超える研究および試験にもかかわらず、閉塞性睡眠時無呼吸の薬物ベースの治療法はほとんど知られていない。メチルキサンチンテオフィリン(カフェインと化学的に類似している)の経口投与は、無呼吸のエピソード数を減らすことができるが、動悸および不眠などの副作用を生じることもある。テオフィリンは、一般的に、OSAのある成人には無効であるが、CSA、ならびに無呼吸のある幼児および小児を治療するために使用されることがある。2003および2004年に、一部の神経活性薬、特に、ミルタザピンを包含する現代世代の抗うつ剤が、閉塞性睡眠時無呼吸の発生率を軽減すると報告されている。他の治療法がOSAを完全に治療しない場合、薬物が、患者の日中の眠気または傾眠を治療するために処方されることがある。これらは、アンフェタミンなどの刺激薬から現代の抗ナルコレプシー薬まで様々である。薬物モダフィニルは、2004年時点でこの役割における使用の増加を見込んでいる。
【0218】
さらに、例えば、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、ナルコレプシーを治療することができる(Tedfordら、Soc. Neurosci. Abstr. 1999年、25巻、460.3頁)。ナルコレプシーは、過剰な日中の眠気(Excessive Daytime Sleepiness)(EDS)、睡眠のエピソードおよびREM即ち急速眼球運動睡眠の障害を特徴とすることが最も多い神経学的状態である。ナルコレプシーの主な特徴は、十分な夜間睡眠後であっても、圧倒的な過剰な日中の眠気(EDS)である。ナルコレプシーのある人は、しばしば不適切な時間および場所において眠くなるか寝入る可能性が高い。さらに、夜間睡眠は、頻繁な目覚めで寸断されることがある。ナルコレプシーの古典的症状は、例えば、わずかな脱力感(頸部または膝における柔弱感、たるんだ顔面筋、または明確に話すことができないことなど)から完全な身体崩壊までに及ぶ筋機能の喪失の突然のエピソードである脱力発作を包含する。エピソードは、笑い、怒り、驚き、または恐怖などの突然の感情的反応により引き起こされることがあり、数秒から数分まで持続することがある。ナルコレプシーの別の症状は、目を覚ました時に一時的に喋ることも動くこともできないことである睡眠麻痺である。他の症状は、例えば、居眠りしている間に、寝入っている間におよび/または目覚めている間に起きる鮮明で恐ろしいことが多い夢のような経験である入眠時幻覚、ならびに、人が、睡眠エピソード中に機能(話す、物を片付けるなど)し続けるが、そのような活動を行った記憶なしに目覚める時に起きる無意識の行動を包含する。日中の眠気、睡眠麻痺、および入眠時幻覚は、睡眠の極端な不足に苦しんでいる人々におけるなどの、ナルコレプシーを有していない人々においても起きる。睡眠発作は、一般的に、ナルコレプシーに独特であると見なされる。
【0219】
現在、ナルコレプシーに使用可能である治療法は、症状を治療するが、根底にある原因は治療しない。睡眠発作およびREM睡眠症状については、抗うつ医薬品およびREM睡眠を抑制する他の薬物が処方される。嗜眠は、通常、メチルフェニデート(Ritalin)、アンフェタミン(Adderall)、デキストロアンフェタミン(Dexedrine)、メタンフェタミン(Desoxyn)、モダフィニル(Provigil)などの刺激薬を使用して治療される。使用される他の医薬品は、コデインおよびセレギリンである。睡眠発作は、クロミプラミン、イミプラミン、またはプロトリプチリンを使用して治療されるが、これは、重度の症例において行われるに過ぎない。薬物γ−ヒドロキシブチレート(GHB)(Xyrem)は、睡眠発作とナルコレプシーに伴う過剰な日中の眠気の両方を治療するために食品医薬品局(Food and Drug Administration)により米国で認可されている。
【0220】
興味深いことに、モダフィニル(Provigil)は、最近になって、視床下部ヒスタミン放出を高めることが明らかにされている(Ishizukaら、Neurosci. Lett. 2003年、339巻、143〜146頁)。
【0221】
さらに、非イミダゾールヒスタミンH3受容体拮抗薬と共にナルコレプシーの古典的Dobermanモデルを使用する最近の研究は、ヒスタミンH3受容体拮抗薬が、脱力発作数および発作の持続時間を減らすことができることを示した(Carruthers Ann. Meet. Eur. Histamine Res. Soc. 2004年、Abs. 31頁)。
【0222】
要約すれば、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬は、過眠症、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸、時間帯域変化障害などの過剰な日中の眠気に伴う状態、および線維筋痛などの過剰な日中の眠気に関係している他の障害、ならびに多発性硬化症の治療および/または予防のために使用することができる(Parmentierら、J. Neurosci. 2002年、22巻、7695〜7711頁;Ligneauら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 1998年、287巻、658〜666頁)。他の状態は、交代勤務に起因する過剰な眠気、内科的障害、精神障害、ナルコレプシー、一次性過眠症などを包含する。ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬は、交代勤務従業員における覚醒または覚醒状態、睡眠遮断、麻酔後のフラフラ状態、薬物療法からの副作用としての嗜眠、軍事使用などを促進するためにしばしば使用されることもある。
【0223】
さらに、覚醒は、注意、学習、および記憶を包含するいくつかの脳機能の必要条件であり、環境的課題に対応する適切な行動に必要とされる。ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬は、様々な動物モデルにおいて認知能力を改善することが明らかにされている(Milestones in Drug Therapy, Buccafusco編、2003年中のHancockおよびFox)。これらの化合物は、認知促進剤(pro−cognitive agent)として使用することができ、覚醒状態を高めることができる。したがって、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬は、例えば、アルツハイマー病または他の認知症におけるように、覚醒状態、注意および記憶が損なわれている老齢障害または変性障害において使用することができる。
【0224】
神経変性障害であるアルツハイマー病(AD)は、認知症の最も多い原因である。アルツハイマー病は、神経精神症状および行動変化と一緒に、進行性の認知力低下を臨床的に特徴とする。最も著しい早期の症状は、記憶喪失であり、通常、病気進行と共に着実により顕著になるわずかな物忘れとして発症し、古い記憶は比較的保存される。障害が進行するにつれて、認知(知能)障害は、言語の領域、熟練した運動、認知ならびに意思決定および計画などの脳の前頭葉および側頭葉と密接に関係する機能まで及ぶ。現在、ADの治癒法はないが、特に、短期記憶障害に関して、対症的利益を提供する薬物がある。これらの薬物は、ドネペジル(Aricept)、ガランタミン(Razadyne)およびリバスチグミン(Exelon)などのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬ならびにメマンチンなどのNMDA拮抗薬を包含する。
【0225】
ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、認知障害(Passaniら、Trends Pharmacol. Sci. 2004年、25巻、618〜625頁)、てんかん(Vohoraら、Pharmacol. Biochem. Behav. 2001年、68巻、735〜741頁)、うつ病(Perez-Garciaら、Psychopharmacol. 1999年、142巻、215〜220頁)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、(Foxら、Behav. Brain Res. 2002年、131巻、151〜61頁)、および統合失調症(Foxら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 2005年、313巻、176〜190頁)を治療または予防することができる。これらの適応症は、下で手短に記載される。追加の情報については、Leursら、Nat. Rev. Drug. Discov. 2005年、4巻、107〜120頁、およびVohora Investigational Drugs 2004年、7巻、667〜673頁による総説を参照されたい。ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬は、昏睡状態の患者または脳に外傷を負った患者における皮質活性化を回復するための新規な治療的アプローチとしても使用することができる(Passaniら、Trends in Pharmacol. Sci. 2004年、25巻、618〜625頁)。
【0226】
上で述べられているように、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、てんかんを治療または予防することができる。てんかん(発作性障害と呼ばれることも多い)は、再発性の誘因のない発作を特徴とする慢性の神経学的状態である。それらの活動のパターンに関して、発作は、部分(焦点)か全身のどちらかとして記載されることがある。部分発作は、脳の限局部分が関わるに過ぎず、一方、全身発作は、全皮質が関わる。多くの異なるてんかん症候群があり、各々は、発作型、典型的な発症年齢、EEG所見、治療、および予後のそれ自身の独特の組合せを呈する。一部の一般的な発作症候群は、例えば、乳児痙攣(ウェスト症候群)、小児期欠神てんかん、および小児期の良性焦点てんかん(良性ローランドてんかん)、若年性ミオクローヌスてんかん、側頭葉てんかん、前頭葉てんかんおよびレノックス−ガストー症候群を包含する。
【0227】
本発明の化合物は、様々な公知の薬物と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の化合物は、発作を予防するか発作頻度を減らす1つまたは複数の薬物と共に使用することができ、これらは、カルバマゼピン(一般商品名Tegretol)、クロバザム(Frisium)、クロナゼパム(Klonopin)、エトサクシミド(Zarontin)、フェルバメート(Felbatol)、フォスフェニトイン(Cerebyx)、フルラゼパム(Dalmane)、ガバペンチン(Neurontin)、ラモトリジン(Lamictal)、レベチラセタム(Keppra)、オクスカルバゼピン(Trileptal)、メフェニトイン(Mesantoin)、フェノバルビタール(Luminal)、フェニトイン(Dilantin)、プレガバリン(Lyrica)、プリミドン(Mysoline)、バルプロ酸ナトリウム(Epilim)、チアガビン(Gabitril)、トピラメート(Topamax)、バルプロ酸セミナトリウム(Depakote)、バルプロ酸(Depakene、Convulex)、およびビガバトリン(Sabril)を包含する。他の薬物は、活発な発作を食い止めるか発作混乱を遮るためによく使用され、これらは、ジアゼパム(Valium)およびロラゼパム(Ativan)を包含する。難治性てんかん重積状態の治療にのみ使用される薬物は、パラアルデヒド(Paral)およびペントバルビタール(Nembutal)を包含する。
【0228】
上で述べられているように、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬は、治療の唯一の薬剤として使用するか他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、Vohoraらは、ヒスタミンH3受容体拮抗薬が、抗てんかん薬、抗発作薬として働くことができることを示し、有効投与量以下の公知の抗てんかん薬との組合せにおける有効投与量以下のH3受容体拮抗薬による効果も示した(Vohoraら、Pharmacol. Biochem. Behav. 2001年、68巻、735〜741頁)。
【0229】
Perez-Garciaら(Psychoparmacol. 1999年、142巻、215〜220頁)は、不安症(高架式十字迷路)およびうつ病(強制水泳試験)の実験的マウスモデルでヒスタミンH3受容体の作動薬および拮抗薬の能力を試験した。彼らは、化合物は、化合物が、不安症のモデルで有意な効果を有していないものの、H3受容体拮抗薬が、うつ病のモデルにおいて有意な用量依存的効果を有することを見いだした。したがって、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬は、抗うつ効果を有することがある。
【0230】
臨床的うつ病は、個人の社会的機能および/または日常生活の活動に破壊的な影響を与えるところまで進行した悲しみまたは憂鬱の状態である。臨床的うつ病は、人生の中で少なくとも一度は人口の約16%に影響を及ぼす。臨床的うつ病は、現在、米国、ならびに他の国々における能力障害の主要原因であり、世界保健機関(World Health Organization)によれば、2020年までに世界中の能力障害の2番目に多い(心疾患に次ぐ)原因になると予想されている。
【0231】
本発明の化合物は、様々な公知の薬物と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の化合物は、うつ病の症状を緩和することができる現在使用可能な薬物のうちの1つまたは複数と共に使用することができる。それらは、例えば、NardilまたはMoclobemide(Manerix)などのモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ薬、フルオキセチン(Prozac)、パロキセチン(Paxil)、エスシタロプラム(Lexapro)、およびセルトラリン(Zoloft)などの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SNRI)、レボキセチン(Edronax)などのノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ならびにベンラファキシン(Effexor)およびデュロキセチン(Cymbalta)などのセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を包含する。
【0232】
上で述べられているように、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療または予防することができる。精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)−IV−TRによれば、ADHDは、小児期、ほとんどの場合に7歳以前に発生し、不注意および/または多動衝動性行動の発達的に不適切なレベルを特徴とし、家族、仲間、教育、職業、社会、または適応の機能などの1つまたは複数の主要な生命活動の障害をもたらす発達障害である。ADHDは、成人期に診断されることもある。
【0233】
ADHDを治療するのに使用される第一選択薬は、大部分は、焦点、注意、および衝動制御を担う脳の領域を刺激することにより働く刺激薬である。多動を特徴とすることが多い症候群を治療するための刺激薬の使用は、逆説的効果と呼ばれることもあるが、刺激薬が、より大きな自己規制を個人が有することを可能にする脳の阻害性および自己組織機構を活性化するという点で本当の逆説はない。使用される刺激薬は、例えば、メチルフェニデート(Ritalin、Ritalin SRおよびRitalin LAとして販売されている)、Metadate、Metadate ER、Metadate CD、Concerta、Focalin、Focalin XRまたはMethylinを包含する。刺激薬は、例えば、Dexedrine、Dexedrine Spansulesとして販売されているデキストロアンフェタミン、デキストロアンフェタミンとレボアンフェタミンの塩の混合物の商品名であるAdderallおよびAdderall XRなどのアンフェタミン、Desoxynとして販売されているメタンフェタミン、商標名Wellbutrinとして市販されているドーパミンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤であるブプロピオンも包含する。ADHDを治療するための非刺激薬は、Atomoxetine(Stratteraとして販売されている)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤である。ADHDのために使用されることがある他の薬物は、例えば、ベンズフェタミン(Didrex)、Provigil/Alertec/モダフィニルおよびクロニジンを包含する。最近、ADHDのラット乳仔モデルにおいて、ヒスタミンH3受容体拮抗薬は、メチルフェニデート(Ritalin)と少なくとも同じ程度に有効であることが報告されている(Milestones in Drug Therapy, Buccafusco編、2003年中のHancockおよびFox)。本発明の化合物は、様々な公知の薬物と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の化合物は、ADHDおよび関連障害を治療するのに使用される薬物のうちの1つまたは複数と共に使用することができる。
【0234】
上で述べられているように、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬および逆作動薬を使用し、統合失調症を治療または予防することができる。統合失調症は、現実の認識または表現の障害および著しい社会的または職業的機能障害を特徴とする精神障害を説明する精神科診断である。未治療の統合失調症を経験している人は、典型的には、解体した思考を示すこと、および妄想または幻聴を経験することを特徴とする。障害は、主に、認知に影響を及ぼすと考えられるが、行動および感情に関連する慢性的問題の一因になることもある。統合失調症は、「陽性」および「陰性」症状の観点で説明されることが多い。陽性症状は、妄想、幻聴および思考障害を包含し、典型的には、精神病の兆候と見なされる。陰性症状がそのように名付けられるのは、陰性症状が、正常な形質または能力の喪失または欠如であると見なされ、起伏のない鈍麻するか収縮した情緒および感情、言語の乏しさならびに意欲の欠如などの特徴を包含する。統合失調症の一部のモデルは、形式的思考障害および第3のグループ、「解体(disorganization)症候群」における計画障害を包含する。
【0235】
統合失調症のための第一選択薬理療法は、通常、抗精神病薬の使用である。抗精神病薬は、精神病の陽性症状からの対症的軽減を提供するに過ぎないと考えられる。最新の非定型抗精神病薬(クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドンおよびアリピプラゾールなど)は、通常、それらの好ましい副作用プロファイルのため、旧来の定型抗精神病薬(クロルプロマジンおよびハロペリドールなど)より好ましい。非定型抗精神病薬は、従来の抗精神病薬よりも少ない錐体外路の副作用および遅発性ジスキネジアを伴うものの、このクラスにおける薬剤の一部(特に、オランザピンおよびクロザピン)は、適切な薬物療法を選択する場合に考慮しなければならない体重増加、高血糖および高トリグリセリド血症などの代謝系副作用を伴うようである。
【0236】
ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬を使用し、肥満症を治療することができる(Hancock、Curr. Opin. Investig. Drugs 2003年、4巻、1190〜1197頁)。食物摂取における神経ヒスタミンの役割は、何年にもわたって立証されており、神経ヒスタミン放出および/またはシグナル伝達は、レプチン、アミリンおよびボンベシンなどの摂食サイクルにおける公知のメディエーターの食欲抑制作用と結び付けられてきた。脳において、H3受容体は、視床下部におけるヒスタミン放出の調節に関与している。さらに、インサイツでのハイブリダイゼーション研究は、ラット褐色脂肪細胞におけるヒスタミンH3受容体mRNA発現を明らかにし、熱産生の調節における役割を示している(Karlstedtら、Mol. Cell. Neurosci. 2003年、24巻、614〜622頁)。さらに、ヒスタミンH3受容体拮抗薬は、肥満症の様々な前臨床モデルにおいて検討され、マウスにおいて食物摂取を減らし、体重を減らし、全身脂肪を減らすのに有効であることが明らかにされている(Hancockら、Eur. J. Pharmacol. 2004年、487巻、183〜197頁)。肥満症の治療に使用される最も一般的な薬物は、シブトラミン(Meridia)およびオルリスタット(Xenical)であり、両方とも、限定的な有効性および有意な副作用を有する。したがって、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬などの新規な抗肥満薬が必要とされる。
【0237】
ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬を使用し、アレルギー性鼻炎および鼻充血を包含する上気道アレルギー性反応を治療することもできる(米国特許第5,217,986号;第5,352,707号および第5,869,479号)。アレルギー性鼻炎は、多数の人々に影響を及ぼす頻繁に起きる慢性疾患である。定量的PCRによる末梢におけるヒスタミンH3受容体発現の最近の分析は、H3受容体mRNAが、ヒト鼻粘膜において大量に発現されることを明らかにしている(Vartyら、Eur. J. Pharmacol. 2004年、484巻、83〜89頁)。さらに、鼻充血除去のネコモデルにおいて、ヒスタミンH3受容体拮抗薬のH1受容体拮抗薬クロルフェニラミンとの組合せは、アドレナリン作動薬で見られる血圧上昇効果なしに有意な鼻充血除去をもたらした。(McLeodら、Am. J. Rhinol. 1999年、13巻、391〜399頁)。したがって、ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬は、単独か、アレルギー性鼻炎および鼻充血を治療するためのH1受容体妨害物と組み合わせて使用することができる。
【0238】
ヒスタミンH3受容体の拮抗薬または逆作動薬は、疼痛の治療するための治療可能性を有する(Medhurstら、Biochemical Pharmacology(2007年)、73巻(8号)、1182〜1194頁)。
【0239】
化合物(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンおよびその塩は、ヒスタミンH3受容体モジュレーターとしての活性を有する。したがって、本明細書に記載されている方法により調製されるそのような化合物は、受容体と接触させることによりヒスタミンH3受容体をモジュレートする方法、したがって、そのような生物学的活性が有用な効果を発揮する治療の方法(本明細書に記載されているような)において使用することができる。
【実施例】
【0240】
下記の非限定的な実施例は、本発明を例示するために提供される。
【0241】
(実施例1)
2−(ビフェニル−4−イル)酢酸のクロロスルホン化による2−(4’−(クロロスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸の合成。
【0242】
【化63】

4−ビフェニル酢酸(A、1.50kg、7.07mol)とトリフルオロ酢酸(10.5L、16.1kg、7体積)の混合物を21℃にて撹拌した。外部冷却しながら、クロロスルホン酸(3.28L、5.76kg、49.5mol、7当量)を、21〜25℃の内部温度を維持しながら2時間かけて加えた。添加が終了した後、反応混合物を20時間にわたって20〜21℃にて撹拌した。反応混合物を2つの等しい部分(2×11.2kg)に分け、下に記載されているようにバッチ式でクエンチした。
【0243】
水(4L)および酢酸(1.30kg)の溶液を6℃まで冷却した。外部冷却しながら、反応混合物(11.2kg)を、22℃未満の温度を維持しながら2.5時間かけて撹拌したクエンチ溶液にゆっくりと加えた。混合物をさらに30分にわたって撹拌し、固体を濾過により集めた。フィルターケーキを水(3×1.5L)で洗浄し、吸引下で乾燥すると、湿ったケーキとして塩化スルホニル(C)が得られた。この手順を第二の部分について繰り返すと、湿ったケーキとして2−(4’−(クロロスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸(C)が、合わせて6.34kg得られた。HPLC純度、94%(ピーク面積による)。質量C1411ClOSとしての計算値:310.0、実測値:LCMS m/z(%)=311.1[M+H](40)、265.0(100);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.80 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.61 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 3.75 (s, 2 H)。
【0244】
(実施例2)
2−(4’−(クロロスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸のアルキル化による2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸の合成。
【0245】
【化64】

水(12.0L)、亜硫酸ナトリウム(1.22kg、3.0当量)、およびリン酸ナトリウム、二塩基性(1.14kg、2.5当量)の溶液を、少なくとも30分にわたって窒素で脱気した。2−(4’−(クロロスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸(C、1.00kg、3.21mol)を含有する湿ったケーキを一度に装入した。少なくとも10分にわたって窒素で再びスパージした後、内容物を1時間にわたって60℃にて加熱した。
【0246】
反応が完了と判断された場合、臭化テトラブチルアンモニウム(0.10kg、0.10当量)およびKI(0.05kg、0.10当量)を反応溶液に装入した。混合物を70〜75℃にて加熱し、12時間かけて1−ブロモ−3−メトキシプロパン(2.02kg、4.10当量)。混合物を周囲温度まで冷却し、50wt%水性NaOH溶液(1.33kg)を加え、反応溶液のpHを13〜14に調整した。混合物を少なくとも1時間にわたって80℃にて加熱した。混合物を60℃まで冷却し、水性HSOの溶液(50v/v%、1.20kg)を装入し、pHを4.5〜5に調整した。次いで、内容物を、60〜65℃にて2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF;4.3kg)で分配し、二相混合物を25℃まで冷却した。相を分離し、有機相を水(2.00kg)で洗浄した。有機相を減圧下で40〜50℃にて濃縮し、溶媒の大部分を除去した。濃縮物をi−PrOH(1.2kg)で希釈し、再濃縮し、溶媒の大部分を除去した。濃縮物をi−PrOH(2.36kg)で希釈し、70〜80℃にて加熱し、固体を溶かした。溶液を20℃まで冷却し、少なくとも2時間にわたって20℃にて寝かせた。固体を濾過により集め、フィルターケーキを冷i−PrOH(1.37kg)で洗浄した。フィルターケーキを吸引により乾燥し、次いで、減圧下(30℃/20トル)でさらに乾燥すると、灰色がかった白色の粉末として2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸(0.896kg、80%収率)が得られた。HPLC純度、98.7%(ピーク面積による)。KF:0.4wt%HO。質量C1820Sとしての計算値:348.1、実測値:LCMS m/z(%)=349.4[M+H](32)、317.1[M+H−CHOH](100);1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.97 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.75 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.42 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 3.74 (s, 2 H), 3.46 (t, J = 6.0 Hz, 2 H), 3.29 (s, 3 H), 3.22-3.26 (m, 2 H), 2.00-2.07 (m, 2 H)。
【0247】
(実施例3)
2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸の還元による2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エタノールの合成。
【0248】
【化65】

2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)酢酸(1.00kg、2.87mol)とNaBH(163g、1.50当量)の混合物をTHF(5.42kg)で希釈した。混合物を5〜10℃にて冷却し、BF・OEt(0.62kg、1.50当量)を、15℃未満の温度を維持しながら加えた。添加が終了した後、反応混合物をさらに1.5時間にわたって0〜5℃にてかき混ぜた。反応が終了した後、アセトン(1.74kg)を装入し、反応混合物を2時間にわたって60〜65℃にて加熱した。水性NaOH溶液(50wt%、1.74kg)を反応混合物にゆっくりと加え、内容物を2時間にわたって80℃にて加熱した。混合物を20〜25℃まで冷却し、減圧下で元の体積の20%まで濃縮した。濃縮物を水(4.00kg)とi−PrOAc(8.72kg)の間で分配し、1時間にわたって50℃にて加熱し、相を分離した。有機相を水(2×3.00L)で洗浄した。有機相を減圧下で約3分の1の体積(3.6L)まで濃縮した。濃縮物を60℃にて加熱し、ヘプタン(4.00kg)で希釈し、0〜5℃まで冷却し、2時間にわたって0〜5℃にて撹拌した。固体を濾過により集め、吸引により乾燥し、減圧下(45℃/20トル)でさらに乾燥すると、灰色がかった白色の粉末として2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エタノール(0.905kg、94%収率)が得られた。純度は、HPLCにより99.0面積%であった。KF:0.19wt%水。質量C1822Sとしての計算値:334.1、実測値:LCMS m/z(%)=335.5[M+H](58)、303.4[M+H−CHOH](100);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.97 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.76 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.57 (d, J = 8.2 Hz, 2 H), 7.37 (d, J = 8.2 Hz, 2 H), 3.94 (t, J = 6.5 Hz, 2 H), 3.45 (t, J = 6.0 Hz, 2 H), 3.29 (s, 3 H), 3.22-3.26 (m, 2 H), 2.95 (t, J = 6.5 Hz, 2 H), 2.00-2.07 (m, 2 H), 1.49 (bs, 1 H)。
【0249】
(実施例4)
2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エタノールのメチルスルホニル化によるメタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチルの合成。
【0250】
【化66】

方法1
2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エタノール(12.1kg、36.2mol)、アセトニトリル(ACN、15.0kg)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE、57kg)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(6.68kg、1.40当量)の溶液を0〜5℃まで冷却した。冷溶液に、MsCl(5.74kg、1.40当量)を、0〜5℃に温度を維持する速度で50分かけて加えた。添加が終了した後、溶液をさらに2時間にわたって0〜5℃にて撹拌した。溶液を、0〜10℃の温度を維持しながら水(30kg、2.5体積)でクエンチした。クエンチした混合物の温度は25℃まで上昇し、相を分離した。有機相を、各洗浄後に相を分離しながら、25〜30℃にて水(30kg)で洗浄し、35℃にて水(30kg)で再び洗浄した。有機相をメチルt−ブチルエーテル(36kg)で希釈し、1時間にわたって55〜60℃にて加熱した。混合物を2時間かけて0〜5℃まで冷却し、1時間にわたって0〜5℃に保った。固体を濾過により集め、フィルターケーキをメチルt−ブチルエーテル(19kg)で洗浄し、吸引で乾燥し、減圧下(45℃/15トル)でさらに乾燥すると、白色の粉末として望ましいメタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチル(12.4kg、82.9%)が得られた。
【0251】
質量C1924としての計算値:412.1、実測値:LCMS m/z(%)=413.5[M+H](39)、381.2[M+H−CHOH](100);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.97 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.76 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.59 (d, J = 8.2 Hz, 2 H), 7.37 (d, J = 8.1 Hz, 2 H), 4.48 (t, J = 6.8 Hz, 2 H), 3.45 (t, J = 5.9 Hz, 2 H), 3.29 (s, 3 H), 3.26-3.22 (m, 2 H), 3.14 (t, J = 6.8 Hz, 2 H), 2.94 (s, 3 H), 2.06-1.99 (m, 2 H)。
【0252】
方法2
2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エタノール(200g、598mol)、アセトニトリル(670mL)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(146mL、837mmol)の溶液を0〜5℃まで冷却した。アセトニトリル(130mL)中のMsCl(65.2mL、837mmol)を、0〜5℃に温度を維持するのに十分な速度で30分かけて冷溶液に加えた。添加が終了した後、溶液をさらに1時間にわたって5℃にて撹拌した。反応物を、0〜5℃の温度を維持しながら氷水(2.4L)でゆっくりとクエンチした。固体を濾過により集め、フィルターケーキを水(3×800mL)およびMTBE(2×800mL)で洗浄すると、表題化合物(242g、97%)が得られた。純度:HPLCにより99.1%。
【0253】
(実施例5)
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンの調製および二クエン酸塩への変換
【0254】
【化67】

方法1
ステップA:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンの調製。
【0255】
メタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチル(1.019kg、2.47mmol)、無水KCO(1.024kg、3当量)、(R)−2−メチルピロリジンL−酒石酸塩(814g、1.4当量)、アセトニトリル(8.15L、8体積)、および水(2.86L、2.8体積)の二相混合物を24時間にわたって70℃にて加熱した。反応が終了した後、混合物を減圧下で蒸留により濃縮し、アセトニトリルの大部分(7.7L)を除去した。濃縮物を2−ブタノン(メチルエチルケトン、MEK、3.05L、3体積)で分配し、得られた相を分離し、有機相を水中の20wt%NaClの溶液(3.0kg)で洗浄した。有機相を蒸留し、共沸的に水を除去した。蒸留物2.5Lを除去した後、濃縮物を2−ブタノン(2.5L)で希釈した。
【0256】
ステップB:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の調製。
【0257】
無水クエン酸(1.043kg、2.2当量)およびメタノール(3.06L、3体積)を有機相に装入した。混合物を60℃にて温め、55〜60℃の温度を維持しながら2−ブタノン(10体積)で希釈した。混合物を5時間かけて0〜5℃まで冷却し、4時間にわたって0〜5℃に保った。固体を濾過により集め、フィルターケーキを2−ブタノン(2×1.5L)で洗浄した。フィルターケーキを吸引で乾燥し、減圧下(45℃/10トル)でさらに乾燥すると、白色の粉末として表題化合物(1.642kg、85%)が得られた。
【0258】
代表的バッチからの分析データ:HPLC純度は、99.7面積%であった。精密質量C2332NOとしての計算値402.2097、実測値:LCMS m/z=402.2021[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.91 (bs, 6H), 7.95 (s, 4H), 7.76 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 3.62-3.56 (m, 1H), 3.54-3.41 (m, 3H), 3.36-3.32 (m, 4H), 3.24-3.15, m, 2H), 3.17 (s, 3H), 3.10-2.96 (m, 2H), 2.61 (dd, J = 35.0, 15.2 Hz, 8H), 2.23-2.14 (m, 1H), 1.99-1.90 (m, 2H), 1.82-1.75 (m, 2H), 1.66-1.56 (m, 1H), 1.35 (d, J = 6.6 Hz, 3H)。
【0259】
方法2
ステップA:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンの調製。
【0260】
メタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチル(12.2kg、29.6mol)、無水KCO(12.3kg、3当量)、(R)−2−メチルピロリジンL−酒石酸塩(9.76kg、1.4当量)、アセトニトリル(97.5L、8体積)、および水(34.2L、2.8体積)の二相混合物を20時間にわたって70〜75℃にて加熱した。反応が終了した後、混合物を減圧下で蒸留により濃縮し、アセトニトリルの大部分を除去した。濃縮物を2−ブタノン(38.7L、3体積)と追加の水(7.7L、0.6体積)の間で分配した。得られた相を分離し、有機相を水中の20wt%NaClの溶液(36.8kg)で洗浄した。有機相を、インラインフィルターを通す再循環により清澄化し、2−ブタノン(7.8L、0.6体積)で希釈した。
【0261】
ステップB:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の調製。
【0262】
無水クエン酸(12.4kg、2.2当量)およびメタノール(36.7L、3体積)の前もって調製した溶液を有機相に装入した。混合物を60〜65℃にて温め、50〜55℃にて冷却し、55〜60℃の温度を維持しながら2−ブタノン(121L、10体積)で希釈した。反応器内容物を62℃まで温め、次いで、1時間かけて37℃まで冷却した。温度を10℃まで急速に冷却し、結晶化を誘導した。得られた混合物を0〜5℃までさらに冷却し、9時間にわたって寝かした。濾過により固体を集める試みは、不十分な濾過性のために失敗した。集められた湿ったケーキの部分を熱メタノール(90L、7体積)に再び溶かし、未濾過の混合物に加え直した。混合物を減圧下で蒸留し、望ましい2−ブタノン中20wt%メタノール(16.5体積)が達成されるまで2−ブタノンと共に再装入した。溶媒比および体積がそれらの望ましい値に調整し直された後、反応器内容物を30℃まで冷却し、接種し、30℃にて寝かせた。内容物を、0〜5℃までさらに冷却して寝かせた。固体を濾過により集め、フィルターケーキを2−ブタノン(4×2体積)で洗浄し、熱および窒素スイープと併せて減圧下で乾燥すると、低レベルのクエン酸モノメチルを含有する白色の粉末として表題化合物の第一クロップ(12.6kg、54.0%)が得られた。母液および洗浄液を併せ、2−ブタノン中12wt%メタノール(約6体積)まで減圧下で濃縮した。0〜5℃まで冷却して寝かした後、固体を濾過により集め、2−ブタノン(3×1体積)で洗浄し、50℃にて減圧下で乾燥すると、低レベルのクエン酸モノメチルを含有する白色の粉末として表題化合物の第二クロップ(4.12kg、17.7%)が得られた。
【0263】
ステップC:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の精製。
【0264】
粗(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の一部(200g、0.485mol)を、水(60mL、0.3体積)およびアセトニトリル(1.94L、9.7体積)中の無水クエン酸(4.89g、0.10当量)と共にスラリー化し、48時間にわたって60〜65℃にて加熱した。スラリーを2.5時間かけて0〜5℃まで冷却し、2時間にわたって0〜5℃にて寝かせ、固体を濾過により集めた。フィルターケーキをアセトニトリル(800mL、4体積)で洗浄し、吸引により乾燥させ、45〜50℃にて減圧下でさらに乾燥すると、白色の結晶性固体として表題化合物(188.4g、94.2%)が得られた。対イオンのHPLC分析は、クエン酸99.5面積%およびクエン酸モノメチル0.39面積%を示した。親のHPLC分析は、99.8面積%の純度を示した。
【0265】
方法3
ステップA:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンの調製。
【0266】
メタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチル、無水KCO(3当量)、(R)−2−メチルピロリジンL−酒石酸塩(1.4当量)、アセトニトリル(8体積)、および水(2.8体積)の二相混合物を24時間にわたって70℃にて加熱する。反応が終了した後、混合物を減圧下で蒸留により濃縮し、アセトニトリルの大部分を除去する。濃縮物を、水と混和しない有機溶媒(例えば、酢酸エチルまたはメチルt−ブチルエーテル;3体積)で希釈し、得られた相を分離し、有機相を水(3体積)で洗浄する。有機相を蒸留により濃縮し、溶媒の大部分を除去し、アセトニトリル(9.7体積)を加える。
【0267】
ステップB:(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の調製。
【0268】
無水クエン酸(2.2当量)および水(0.3体積)を有機相に装入する。得られる混合物を60℃にて温め、12〜48時間にわたって60〜65℃にて加熱する。スラリーを2〜4時間かけて0〜5℃まで冷却し、2時間にわたって0〜5℃にて寝かせ、固体を濾過により集める。フィルターケーキをアセトニトリル(3×4体積)で洗浄し、吸引により乾燥させ、40〜50℃にて減圧下でさらに乾燥すると、表題化合物が得られる。
【0269】
方法4
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩の調製。
【0270】
メタンスルホン酸2−(4’−(3−メトキシプロピルスルホニル)ビフェニル−4−イル)エチル(200g、485mmol)および(R)−2−メチルピロリジンL−酒石酸塩(160g、679mmol)を、熱電対、N導入口およびオーバーヘッド撹拌機を備えた4Lの縦型反応器に装入した。2−ブタノン(4体積)および水性NaOH(273mL、2182mmol)を加えた。二相系を撹拌し、還流状態(74℃、内部)まで加熱した。反応混合物を一晩にわたってこの温度にて撹拌させた。次いで、反応混合物を1時間かけて20℃まで冷却し、おおよそ64時間にわたってその温度にて撹拌させた。水(2体積)および2−ブタノン(2体積)を加え、混合物を、すべての固体が溶けるまで撹拌させた。相を分離させ、水相を除去した。有機相を水(2×1体積)で洗浄し、真空蒸留により濃縮した(蒸留物1Lを集めた)。2−ブタノン(6体積)を残渣に加え、再び、混合物を真空蒸留により濃縮した(蒸留物1.3Lを集めた)。2−ブタノン(530mL)を残渣に加え、清澄化のために濾過し、より多くの2−ブタノン(418mL)ですすぐと、オレンジ色の溶液が得られた。この溶液を70℃まで加熱し、水(82.3mL)中のクエン酸(205g、1067mmol)をやはり70℃にて加えた。混合物を60℃まで冷却し、一晩にわたってその温度にて撹拌させた。2−ブタノン(1.72L)を、58〜60℃の内部温度を維持するのに十分な速度で加え、次いで、混合物を1.5時間にわたって60℃にて撹拌させた。次いで、混合物を105分かけて0℃まで冷却し、1時間にわたってその温度にて撹拌した。混合物を濾過し、フィルターケーキを、まず2−ブタノン:水(98:2、3体積)で、次いで、2−ブタノン(2×2体積)でスラリーにしてすすいだ。固体を、一晩にわたって40℃にて真空オーブン中で乾燥すると、表題化合物(349g、92%)が得られた。
【0271】
(実施例6a)
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンマレイン酸塩の調製。
【0272】
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン遊離塩基(1.6g)をアセトン(20mL)に溶かした。(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン遊離塩基のアセトン溶液のアリコート(0.31mL)にマレイン酸(4.15M水溶液約0.015mL)を加えると、溶液が得られ、乾燥状態まで蒸発させた。得られた濃厚な油にIPA(約0.3mL)を加えた後、ReactiTherm中で約50℃まで短時間加熱すると、油は溶液になった。溶液を冷却させ、一晩にわたって室温にて撹拌させた。沈殿を遠心濾過により集め、空気乾燥した。NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.40 (d, J = 6.27 Hz, 3 H), 1.58-1.68 (m, 1 H), 1.79 - 1.86 (m, 2 H), 1.90-2.07 (m, 1 H), 2.99-3.15 (m, 2 H), 3.20 (s, 3 H), 3.23-3.42 (m, 7 H), 3.45-3.70 (m, 3 H), 6.05 (s, 4 H), 7.51 (d, J = 8.16 Hz, 2 H), 7.79 (d, J = 8.28 Hz, 2 H), 7.99 (s, 4 H)。
【0273】
(実施例6b)
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンマレイン酸塩の調製。
【0274】
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン遊離塩基(1.6g)をアセトン(20mL)に溶かした。(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン遊離塩基のアセトン溶液のアリコート(0.31mL)にマレイン酸(4.15M水溶液約0.015mL)を加えると、溶液が得られ、乾燥状態まで蒸発させた。得られた濃厚な油にIPA(約0.3mL)を加えた後、ReactiTherm中で約50℃まで短時間加熱すると、油は溶液になった。溶液を冷却させ、一晩にわたって室温にて撹拌させた。沈殿が冷却中に起きるか、場合により、マレイン酸塩種結晶を加えて、沈殿を助けることができる。沈殿を遠心濾過により集め、空気乾燥すると、(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジンマレイン酸塩が得られた。
【0275】
(実施例7)
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン塩酸塩の調製。
【0276】
(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン遊離塩基は、(R)−1−{2−[4’−(3−メトキシ−プロパン−1−スルホニル)−ビフェニル−4−イル]−エチル}−2−メチル−ピロリジン二クエン酸塩(2.0g)をNaOHの0.5N水溶液(25mL)で中和することにより得た。酢酸イソプロピルによる抽出後、有機物を分離し、水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、無色の粘稠な油が得られた。油(0.2g〜0.5g)をジエチルエーテル(20mL〜50mL)に溶かした後、1M HClのエーテル溶液を加えると(pH1まで)、粘着性で蝋状の半固体が得られた。閉鎖系で半固体を一晩にわたって撹拌した後、自由流動性の白色の固体が得られ、Nブランケット下で濾過し、ジエチルエーテルですすいだ。
【0277】
本明細書に引用されているすべての参考文献は、参照により組み込まれるものとする。本発明の多くの実施形態について記載してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な修正を行うことができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化68】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式IX:
【化69】

による化合物またはその塩をクロロスルホン化し、式VIII:
【化70】

による化合物またはその塩を形成すること、
(b)該式VIIIによる化合物またはその塩を還元し、式VI:
【化71】

による化合物またはその塩を形成すること、
(c)該式VIによる化合物またはその塩を、式VII:
【化72】

による化合物と、該式VIによる化合物のスルフィネート基による該式VIIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、式V:
【化73】

による化合物を形成すること、
(d)該式Vによる化合物を還元し、式IV:
【化74】

による化合物を形成すること、
(e)式II:
【化75】

による化合物を形成するために、該式IVによる化合物を、該式IVによる化合物のヒドロキシル基の変換を行うのに十分な条件下で反応させ、該式IIによる化合物の脱離基Lを形成すること、および
(f)該式IIによる化合物を、式III:
【化76】

による化合物またはその塩と、該式IIIによる化合物のアミノ基による該式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、前記式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含み、
が、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される適当な脱離基であり、
が、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lが、C〜Cアルコキシであり、
が、適当な脱離基であり、
が、水素またはC〜Cアルキルであり、
が、水素またはC〜Cアルキルであり、
が、水素またはC〜Cアルキルである、プロセス。
【請求項2】
式I:
【化77】

による化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、式II:
【化78】

(式中、Lは、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される適当な脱離基である)による化合物を、式III:
【化79】

による化合物またはその塩と、該式IIIによる化合物のアミノ基による該式IIによる化合物の脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させ、該式Iによる化合物、またはその塩を形成することを含む、プロセス。
【請求項3】
が、メタンスルホン酸エステル基である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応させることが、適当な塩基の存在下で行われる、請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記塩基が、炭酸カリウムである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応させることが、非プロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項2から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記非プロトン性溶媒が、2−ブタノンを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非プロトン性溶媒が、アセトニトリルを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応させることが、水の存在下で行われる、請求項7から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応させることが、約30℃〜約120℃の範囲の温度にて行われる、請求項2から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記式Iによる化合物を酸と反応させ、該式Iによる化合物の塩を単離することをさらに含む、請求項2から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記塩が、二クエン酸塩である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
式II:
【化80】

(式中、Lは、ヨウ化物およびスルホン酸エステル基から選択される脱離基である)による化合物を調製するためのプロセスであって、式IV:
【化81】

による化合物を、該式IIによる化合物の該脱離基Lを形成するためのヒドロキシル基の変換を行うのに十分な条件下で反応させることを含む、プロセス。
【請求項15】
が、メタンスルホン酸エステル基であり、前記式IIによる化合物が、前記式IVによる化合物を塩化メタンスルホニルと反応させることにより調製される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記式IIによる化合物を形成するための前記反応が、非プロトン性溶媒を含む反応混合物中で行われる、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記溶媒が、C〜Cアルカノニトリルを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記溶媒が、脂肪族エーテルとC〜Cアルカノニトリルの混合物を含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
前記式IIによる化合物を形成するための前記反応が、塩基を含む反応混合物中で行われる、請求項14から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記式IIによる化合物を形成するための前記反応が、約−20℃〜約20℃の範囲の温度にて行われる、請求項14から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
式IV:
【化82】

による化合物を調製するためのプロセスであって、式V:
【化83】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物を還元することを含む、プロセス。
【請求項22】
が、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であり、前記式Vによる化合物を還元することが、該化合物を、三フッ化ホウ素の存在下で水素化ホウ素アルカリ金属と反応させることにより行われる、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記式Vによる化合物を還元することが、脂肪族エーテル溶媒中で行われる、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記式Vによる化合物を還元することが、約−20℃〜約30℃の範囲の温度にて行われる、請求項21から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
式V:
【化84】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物を調製するためのプロセスであって、式VI:
【化85】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を、式VII:
【化86】

(式中、Lは、適当な脱離基である)による化合物と、該式VIによる化合物のスルフィネート基による該式VIIによる化合物の該脱離基Lの置換を行うのに十分な条件下で反応させることを含む、プロセス。
【請求項26】
が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはスルホン酸エステル基である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
が、水素である、請求項25または26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記式Vによる化合物を形成する前記反応が、前記式VIによる化合物のアルカリ金属塩を使用して行われる、請求項25から27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記式Vによる化合物を形成する前記反応が、触媒の存在下で行われる、請求項25から28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記式Vによる化合物を形成する前記反応が、約30℃〜約120℃の範囲の温度にて行われる、請求項25から29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
式VI:
【化87】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式VIII:
【化88】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を還元することを含む、プロセス。
【請求項32】
が、水素である、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記式VIIIによる化合物の前記還元が、水を含む溶液中で行われる、請求項31または32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記式VIIIによる化合物の前記還元が、約40℃〜約100℃の範囲の温度にて行われる、請求項31から33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
式VIII:
【化89】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)を調製するためのプロセスであって、式IX:
【化90】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)をクロロスルホン化することを含む、プロセス。
【請求項36】
が、水素である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記クロロスルホン化反応が、カルボン酸溶媒中で行われる、請求項35または36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記クロロスルホン化反応が、約0℃〜約40℃の範囲の温度にて行われる、請求項35から37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
式I:
【化91】

による化合物のクエン酸塩を調製するためのプロセスであって、
アセトニトリル以外の溶媒中で式Iによる化合物をクエン酸と反応させることを含む、プロセス。
【請求項40】
前記塩が、二クエン酸塩である、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記溶媒が、C〜Cアルカノンを含む、請求項39または40に記載のプロセス。
【請求項42】
式XI:
【化92】

(式中、Rは、ヨウ化物、ヒドロキシル、またはスルホン酸エステルである)による化合物。
【請求項43】
が、ヒドロキシルである、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
が、メタンスルホン酸エステル基である、請求項42に記載の化合物。
【請求項45】
式V:
【化93】

(式中、Lは、ヒドロキシル、またはヒドロキシルの塩であるか、Lは、C〜Cアルコキシである)による化合物。
【請求項46】
が、ヒドロキシルである請求項45に記載の化合物、またはそのような化合物の塩。
【請求項47】
式VI:
【化94】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)。
【請求項48】
が、水素である請求項47に記載の化合物、またはそのような化合物の塩。
【請求項49】
式VIII:
【化95】

による化合物またはその塩(式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルである)。
【請求項50】
が、水素である請求項49に記載の化合物、またはそのような化合物の塩。

【公表番号】特表2011−518154(P2011−518154A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505016(P2011−505016)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/002333
【国際公開番号】WO2009/128907
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(500478097)アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (97)
【Fターム(参考)】