説明

(R)−3−[2−{4−(5−トリフルオロメチルピリジン−2−イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類の製造方法

【課題】(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類の提供。
【解決手段】特定の極性溶媒中、化合物[I]に対して、2.0〜2.5倍モルの水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの存在下、30〜80℃において、


(式中、Rは、C1〜C4のアルキル基を示す。)で表される(R){2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル}チオカルバジン酸エステル類を、


で表される2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジンと反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類は、医薬、農薬特に殺ダニ剤(例えば、特許文献1〜4)、殺菌剤(例えば、特許文献5)を高純度、高光学純度、高収率で得るための中間体として有用な化合物である。
なお、上記殺ダニ剤は、2種類の光学活性体を有し、R体は、ラセミ体に比較し、著しく優れた殺ダニ活性を有する。そして、この光学活性は、中間体である(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類に由来しているので、高純度でかつ高光学純度の該化合物を工業的に製造することは有意義である。
即ち、下式[III]で表わされる(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類を硫酸等の脱水剤で閉環することにより上記特許に記載の化合物[IV]を高純度、高光学純度、高収率で得ることができる。

(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
【0003】
従来、{(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類の製造方法としては、
下式(I)、

(式中、R1は、ハロゲン原子または低級ハロアルキル基を示し、R3は低級アルキル基を示す。)で表される光学活性プロピオン酸誘導体と、下式(II)、

[式中、R2は、低級アルキル基を示す。]で表されるチオカルバジン酸誘導体とを、塩基の存在下反応させることにより行われていた(例えば、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-10776号公報
【特許文献2】特開昭63-246373号公報
【特許文献3】特開2003-26515号公報
【特許文献4】特開2003-26517号公報
【特許文献5】特開2003-26516号公報
【特許文献6】特開2003-55375号公報
【0005】
この方法では、反応のみでは、79.5%ee(ee:鏡体像過剰率)と、高光学純度で製造することができず、反応後に再結晶を行うことにより、光学純度を86.5%eeに向上させているが、光学純度が十分高いとはいえない問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類を高純度、高光学純度、高収率で得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類の工業的価値の高い製造方法を確立した。
即ち、本発明は、以下の発明に関するものである。
【0008】
下記式[III]、

(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表される(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類を製造する方法であって、
1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N-アセトアミドからなる群から選択される極性溶媒中において、
下記式[I]、

(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表される(R){2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル}チオカルバジン酸エステル類を、下記式[II]、

2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジンと反応させる方法において、塩基として、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを使用し、かつ前記化合物 [I]に対して、2.0〜2.5倍モルで使用し、前記反応を、30〜80℃で行うことを特徴とする方法。
【0009】
以下、本発明について、詳細に説明する。
式[I]及び式[III]において、R1は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基のC1〜C4の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示す。
【0010】
上記式[I]の化合物と、上記式[II]の化合物との反応は、塩基として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの存在下において、好ましくは、水酸化カリウムの存在下において、溶媒として、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)及びN,N-アセトアミド(DMAc)からなる群から選択される塩基を溶解する極性溶媒を使用して行われる。反応は、極性溶媒中、30〜80℃、好ましくは、40〜60℃で行うことにより、上記式[III]の化合物を得ることができる。30℃より低温では、著しく反応性が下がり、反応時間が非常に長くなり、工業的製造法とはいえない。80℃より高温ではラセミ化や分解が起こり易い。なお、極性溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)や、アセトニトリルを使用する場合には、分解を伴うので溶媒として不適当である。
式[II]の化合物の使用は、例えば、式[I]の化合物の1.0〜1.5倍モル、好ましくは、1.0〜1.3倍モルであることが好適である。
塩基は、式[I]の化合物の2.0〜2.5倍モルで使用される。2.0倍モルより少ないと、反応は完結し難く、2.5倍モルより多いと、ラセミ化し易く、生成物の光学純度が下がり、また分解が見られる傾向がある。
【0011】
反応後、式[III]の化合物を得るには、反応生成物を塩酸、硫酸のような鉱酸で中和後、結晶を析出させる。この際、例えば、エーテルや、酢酸メチル、酢酸エチル等を用いて抽出してもよい。結晶をろ過し又は抽出液をエバポレーターで減圧下濃縮することにより、極めて容易に目的化合物である式[III]の化合物を高純度、高光学純度、高収率で得ることができる。
上記式[I]で表される原料たる(R){2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル}チオカルバジン酸エステル類は、以下のようにして製造することができる。
即ち、下記一般式[IV]、
【0012】

式[IV]
【0013】
(式中、R3は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表される2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸エステルを、
下式[V]、
【0014】

式[V]
【0015】
(式中、R4は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表されるチオカルバジン酸エステルと反応させることにより得られる。
ここで、R3及びR4は、C1〜C4のアルキル基を表し、その内容は、上記R1の内容と同様である。
【0016】
上記式[IV]で示される化合物と、上記式[V]で示される化合物とは、例えば、ナトリウムメトキシドや、ナトリウムエトキシド等の塩基の存在下において、例えば、ベンゼンや、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒中、例えば、-10〜50℃、好ましくは、10〜15℃で反応させることにより、上記一般式[I]の化合物を得ることができる。
【0017】
式[V]の化合物は、例えば、式[IV]の化合物の1.0〜1.5倍モル、好ましくは、1.0〜1.3倍モルで使用することが好ましい。
ナトリウムメトキシドや、ナトリウムエトキシド等の塩基は、式[IV]の化合物の1.0〜1.7倍モル、好ましくは、1.3〜1.5倍モルが好ましい。
反応後、式[I]の化合物は、反応生成物を、例えば、塩酸や、硫酸などの鉱酸で中和後、結晶を析出させることにより、単離することができる。この際、エーテルや、酢酸メチル、酢酸エチル等を用いて抽出してもよい。結晶をろ過又は抽出液を減圧蒸留することにより、極めて容易に目的化合物である式[I]の化合物を、高純度かつ高収率で得ることができる。
【0018】
上記式[IV]の化合物は、工業的に入手できる。一方、この化合物は、例えば、特開平2-311444号公報等に記載の方法に従って容易に合成することもできる。また、上記式[V]のチオカルバジン酸エステルは、キサントゲン酸ナトリウム又はキサントゲン酸カリウムと、ヒドラジンヒドラートから容易に合成することができる。
【0019】
一方、上記式[II]で表される原料たる2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジンは、工業的に入手できるが、特開昭54-61183号公報等に記載の方法に従って容易に合成することができる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明について、参考例、実施例及び比較例によって更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの参考例、実施例及び比較例によって、何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エステルの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定した。また、光学純度は、光学分割カラムを使用した高速液体クロマトグラフィーにより決定した。また、参考例におけるeeは、鏡体像過剰率を意味し、次式に従って算出される値である。

ee=((R体−S体)/(R体+S体))×100(%)
【0021】
参考例1
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
チオカルバジン酸-O-エチルエステル 100g(0.83mol)をトルエン300mlに溶解し、メチル (R)-2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオネート150g(0.76mol)を加え、5〜10℃に氷冷した。28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液 221g(1.1mol)を10〜15℃の温度を保ちながら40分間で加え、10〜15℃で24時間撹拌した。氷冷下、15℃を越えないように、3.5%塩酸1000mlを加えると結晶が析出した。結晶をろ別し、水500mlで2回懸濁洗浄し、ヘキサン500mlで2回洗浄し目的物 187g(収率87%)、mp145〜147℃、 純度99%、光学純度99%ee(鏡体像過剰率)、比旋光度[α]23D=+53.7°(C=1.0, メタノール)を得た。
【0022】
1H-NMR (DMSO-d6) δppm; 1.14-1.28(m, 3H), 1.41-1.46(m, 3H), 4.31-4. 43 (m, 2H), 4.54-4.63(m, 1H), 6.62-6.82(m, 4H), 8.99(d, 1H), 10.27-10.84(m, 2H)
【0023】
参考例2
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-メチルエステルの製造
チオカルバジン酸-O-メチルエステル5.25 g(49.5 mmol)をトルエン18mlに溶解し、メチル (R)-2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオネート8.83g(45.0mmol)を加え、5〜10℃に氷冷した。28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液 13.0g(67.5mmol)を10〜15℃の温度を保ちながら20分間で加え、10〜15℃で24時間撹拌した。氷冷下、15℃を越えないように、3.5%塩酸60mlを加えると結晶が析出した。結晶をろ別し、水50mlで2回懸濁洗浄し、ヘキサン30mlで2回洗浄し目的物8.73g(収率72%)、mp149〜150℃、 純度98%、光学純度99%ee、比旋光度[α]23D =+49.7°(C=1.0, メタノール)を得た。
【0024】
1H-NMR (DMSO-d6) δppm; 1.38-1.45(m, 3H), 3.86(d, 2H), 4.52-4.64(m, 1H), 6.61-6.80(m, 4H), 8.97(d, 1H), 10.28-10.88(m, 2H)
【0025】
参考例3
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-プロピルエステルの製造
チオカルバジン酸-O-プロピルエステル 6.99g(52.1mmol)をトルエン15mlに溶解し、メチル (R)-2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオネート8.50g(43.4mmol)を加え、5〜10℃に氷冷した。28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液 12.5g(65.1mmol)を10〜15℃の温度を保ちながら20分間で加え、10〜15℃で24時間撹拌した。氷冷下、15℃を越えないように、3.5%塩酸60mlを加えると結晶が析出した。結晶をろ別し、水50mlで2回懸濁洗浄し、ヘキサン30mlで2回洗浄し目的物 10.0g(収率78%)、mp104〜105℃、純度99%、光学純度99%ee、比旋光度[α]23D=+49.9°(C=1.0, メタノール)を得た。
【0026】
1H-NMR (DMSO-d6) δppm; 0.81-0.93(m, 3H), 1.42(t, 3H), 1.51-1.70(m, 2H), 4.24-4.34(m, 2H), 4.52-4.65(m, 1H), 6.60-6.82(m, 4H), 8.98(d, 1H), 10.26-10.85(m, 2H)
【0027】
実施例1
ジメチルスルホキシド(DMSO)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 100g(0.351mol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン63.8g(0.351mol)をDMSO 300mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット45.9g(0.703mol)を加え、40℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水900mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄後乾燥し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル142g(収率94%)、mp117-120℃、純度95.4%、光学純度99.4%eeを得た。
【0028】
実施例2
1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 25.0g(87.9mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン16.0g(87.9mmol)をNMP 125mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット11.5g(176mmol)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水500mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄後乾燥し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル30.7g(収率81%)、mp113-116℃、純度92.3%、光学純度98.8%eeを得た。
【0029】
実施例3
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 25.0g(87.9mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン16.0g(87.9mmol)をDMI 125mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット11.5g(176mmol)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水500mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄後乾燥し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル31.6g(収率84%)、mp117-120℃、純度96.2%、光学純度98.9%eeを得た。
【0030】
実施例4
N,N-アセトアミド(DMAc)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 25.0g(87.9mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン16.0g(87.9mmol)をDMAc 125mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット11.5g(176mmol)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水500mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄後乾燥し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル30.5g(収率81%)、mp116-120℃、純度94.4%、光学純度98.2%eeを得た。
【0031】
実施例5
ジメチルスルホキシド(DMSO)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-メチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-メチルエステル 50.0g(0.185mol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン33.6g(0.185mol)をDMSO 100mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット24.1g(0.370mol)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水300mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-メチルエステル70.7g(収率92%)、mp116-119℃、純度94.4%、光学純度98.2%eeを得た。
【0032】
実施例6
ジメチルスルホキシド(DMSO)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-プロピルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-プロピルエステル 44.8g(0.150mol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン27.2g(0.150mol)をDMSO 90mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット19.6g(0.300mol)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。室温に冷却後、反応液を水300mlにあけ、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水100mlで2回洗浄し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-プロピルエステル56.8g(収率85%)、mp108-110℃、純度94.4%、光学純度98.2%eeを得た。
【0033】
比較例1
ジメチルスルホキシド(DMSO)、水酸化カリウム1当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル2.50g(8.79mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン1.60g(8.79mmol)をDMSO 12.5mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット0.573g(8.79mmol)を加え、40℃で8時間加熱撹拌した。反応液をHPLCにより測定したところ未反応であった。
【0034】
比較例2
ジメチルスルホキシド(DMSO)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 2.50g(8.79mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン1.60g(8.79mmol)をDMSO 12.5mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット0.986g(17.6mmol)を加えた。120℃で8時間加熱撹拌した。反応液中の(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの収率は、HPLCにより61%であった。
【0035】
比較例3
アセトニトリル、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 10.0g(35.1mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン6.38g(35.1mmol)をアセトニトリル 100mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット4.59g(70.3mmol)を加え、80℃で8時間加熱撹拌した。反応液をエバポレーターで減圧濃縮後、残渣に水100mlを加え、塩酸にて酸性にすると結晶が析出した。結晶をろ取し、水20mlで2回洗浄し、(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル12.3g(収率82%)、純度92.9%、光学純度29.8%eeを得た。アセトニトリル溶媒ではラセミ化し、光学純度が下がった。
【0036】
比較例4
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、水酸化カリウム2当量での(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの製造
(R)-3-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステル 2.50g(8.79mmol)と2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン1.60g(8.79mmol)をDMF 12.5mlに溶解し、86%水酸化カリウムのペレット0.986g(17.6mmol)を加えた。60℃で8時間加熱撹拌した。反応液中の(R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸-O-エチルエステルの収率は、HPLCにより40%であった。また本条件ではDMFが分解し、生成したジメチルアミンと2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジンと反応し、2-ジメチルアミノ-5-トリフルオロメチルピリジンが5%生成した。DMFは好ましくない溶媒である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式[III]、

(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表される (R)-3-[2-{4-(5-トリフルオロメチルピリジン-2-イルオキシ)フェノキシ}プロピオニル]チオカルバジン酸エステル類を製造する方法であって、
1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N-アセトアミドからなる群から選択される極性溶媒中において、
下式[I]、

(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基を示す。)
で表される (R){2-(4-ヒドロキシフェノキシ)プロピオニル}チオカルバジン酸エステル類を、
下式[II]、

で表される2-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジンと反応させる方法において、
塩基として、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを使用し、かつ前記化合物 [I]に対して、2.0〜2.5倍モルで使用し、前記反応を、30〜80℃で行うことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−184872(P2010−184872A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28539(P2009−28539)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000101123)アグロカネショウ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】