説明

(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[D]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール、5−HT4受容体の部分アゴニスト

(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール及び神経変性疾患の治療におけるその使用が、本明細書中に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール及び医薬的に受容可能なその塩に関する。本発明は、更に部分的に、哺乳動物における5−HT仲介の疾患を治療するための方法に関する。このような疾患は、急性の神経学的及び精神医学的障害、脳卒中、脳虚血、脊髄外傷、頭部外傷、出産時低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼球損傷、網膜症、認知障害、特発性及び薬物誘発性パーキンソン病、筋肉攣縮及び振戦を含む筋肉の痙縮を伴う疾患、鬱病、癲癇、痙攣、片頭痛、尿失禁、物質耐性、物質離脱、精神障害、統合失調症、不安症、気分障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴、眼の筋肉変性、胃食道逆流症、胃腸疾患、胃運動障害、非潰瘍性胃腸障害、機能性胃腸障害、過敏性腸症候群、便秘、胃腸障害、食道炎、胃食道疾患、吐気、嘔吐、脳浮腫、疼痛、遅発性ジスキネジア、睡眠障害、注意力障害/多動性障害、注意欠陥障害、注意及び/又は認知の欠損を症状として含んでなる疾患、並びに行動障害を含む。
【背景技術】
【0002】
セロトニン5−HT受容体は、認知過程に重要である二つの脳の領域;皮質及び海馬を含む脳中に広く分布されているGタンパク質受容体である。この受容体は、アデニル酸シクラーゼに積極的に結合し、そして環状アデノシン一リン酸(cAMP)セカンドメッセンジャー系を通して神経活動に対するその制御を発揮する。神経細胞の5−HT受容体のアゴニスト誘導の活性化は、神経細胞カルシウム活性化及び電位感受性カリウムチャンネルを阻害することによって、神経伝達物質の放出を増加することが報告されている。これらのチャンネルの阻害は、過分極後の減少及び神経細胞の興奮性の同時増加を生じる(Eglen et al.,Trends Pharmacol Sci 1995;16:391−398)。神経伝達物質のアセチルコリンは、認知及び記憶過程に関係し、そしてコリン作動性機能の減少は、アルツハイマー病に伴って見られる認知力減退の主要な原因であると信じられる(Francis et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999;66:137−47)。恐らく細胞体上に、又はコリン作動性神経細胞の神経終末に位置する5−HT受容体のアゴニスト活性化は、皮質及び海馬中のアセチルコリン(ACh)放出を向上することが報告されている(King et al.,Trends Pharmacol Sci 2008;29(9):482−492;Consolo et al.,Neuroreport 1994;5:1230−1232;Mohler et al.,Neuropharmacology 2007;53:563−573)。
【0003】
5−HTアゴニストは、更に、抗コリン作動性薬物(例えばアトロピン及びスコポラミン)による薬理学的治療によって誘導された、非臨床的行動モデルにおける認知欠損を逆転することが報告されている(Fontana et al.,Neuropharmacology 1997;36(4/5):689−696;Galeotti et al.,J Pharmcol Exp Ther 1998;286(3):1115−21)。海馬のシータリズムは、動物及びヒトの両方の幾つかの認知、記憶及び注意過程に強く関連している低周波数の振動電場電位である(McNaughton et al.,Behav Pharmacol 2007;18(5/6):329−46;McNaughton et al.,Hippocampus 2006;16(12):1102−10;Kahana,J Neurosci 2006;26(6):1669−72)。アセチルコリンは、海馬のシータリズムの制御において主要な役割を演じると考えられ(Vertes et al.,Neuroscience 1997;81(4):893−926)、そしてドネペジルのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与は、非臨床モデルにおける海馬のシータリズムを増加することを示している(Kinney et al.,J Pharmacol Exp Ther 1999;291(1):99−106)。5−HTアゴニストは、脳中のアセチルコリンのレベルを増加することが示されているため、増加したシータ振動は、前臨床の動物モデルにおいて観察される認知効果に寄与することができる。
【0004】
神経伝達物質の放出を制御することに加えて、5−HTアゴニストは、可溶性アミロイド前駆体タンパク質アルファ(sAPPα)のレベルを増加することができる。脳脊髄液(CSF)中のsAPPαの減少したレベルは、年とったラットの認知欠損に伴われる(Anderson et al.,Neuroscience 1999;93(4):1409−1420))。sAPPαの減少は、更にアルツハイマーの患者から得られたCSFでも報告されている(Lannfelt et al.,Nature Med 1995;1(8):829−832;Olsson et al.,Exp Neurology 2003;183:74−80)。これは、sAPPα産生に責任のある酵素であるα−セクレターゼ活性の減少の結果であることができる(Tyler et al.,Biochem Biophys Res Comm 2002;299:373−376)。更にin vitro及びin vivoの研究は、5−HT受容体の活性化が、sAPPαのレベルを増加し(Cachard−Chastel et al.,Behav Brain Res 2008;187:455−461;Cachard−Chastel et al.,Brit J Pharmacol 2007;883:883−892;Mohler et al.,Neuropharmacology 2007;53:563−573)、そして幾つかの場合、Aβペプチドの放出を減少することを報告している(Cho et al.,Exp Neurology 2007;203:274−278)。これらの結果は、5−HTアゴニストが、プラークを形成するAβペプチドの産生を、アミロイド形成的β−セクレターゼ経路からアミロイド非形成的α−セクレターゼ経路に迂回することによって、アミロイド前駆体タンパク質を減少することができることを示唆する。
【0005】
優れた脳浸透性を有する化合物は、CNS関連疾患の治療において好ましい。このような化合物は、血液/脳関門を自由に通過するものである。
5−HTの部分的アゴニズムを有する化合物は、CNS関連疾患を含む5−HT仲介の疾患の治療のために好ましいものであることができ、ここで、好ましくない腸運動及び5−HTの完全アゴニストによる治療から得ることができる他の副作用の増加を減少又は回避することが好ましい。
【0006】
共同所有されるPCT出願公開WO06/90224は、選択的5−HT受容体アゴニスト活性を有するベンゾイソオキサゾール誘導体を記載している。これらの化合物は、胃食道逆流症、胃腸疾患、胃運動障害、非潰瘍性胃腸障害、機能性胃腸障害、過敏性腸症候群(IBS)、便秘、胃腸障害、食道炎、胃食道疾患、吐気、中枢神経系疾患、アルツハイマー病、認知障害、嘔吐、片頭痛、神経学的疾患、疼痛、心血管障害、心不全、心不整脈、糖尿病、及び無呼吸症候群の治療のために有用であるとして記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT出願公開WO06/90224。
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Eglen et al.,Trends Pharmacol Sci 1995;16:391−398;
【非特許文献2】Francis et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999;66:137−47;
【非特許文献3】King et al.,Trends Pharmacol Sci 2008;29(9):482−492;
【非特許文献4】Consolo et al.,Neuroreport 1994;5:1230−1232;
【非特許文献5】Mohler et al.,Neuropharmacology 2007;53:563−573;
【非特許文献6】Fontana et al.,Neuropharmacology 1997;36(4/5):689−696;
【非特許文献7】Galeotti et al.,J Pharmcol Exp Ther 1998;286(3):1115−21;
【非特許文献8】McNaughton et al.,Behav Pharmacol 2007;18(5/6):329−46;
【非特許文献9】McNaughton et al.,Hippocampus 2006;16(12):1102−10;
【非特許文献10】Kahana,J Neurosci 2006;26(6):1669−72
【非特許文献11】Vertes et al.,Neuroscience 1997;81(4):893−926;
【非特許文献12】Kinney et al.,J Pharmacol Exp Ther 1999;291(1):99−106;
【非特許文献13】Anderson et al.,Neuroscience 1999;93(4):1409−1420);
【非特許文献14】Lannfelt et al.,Nature Med 1995;1(8):829−832;
【非特許文献15】Olsson et al.,Exp Neurology 2003;183:74−80;
【非特許文献16】Tyler et al.,Biochem Biophys Res Comm 2002;299:373−376
【非特許文献17】Cachard−Chastel et al.,Behav Brain Res 2008;187:455−461;
【非特許文献18】Cachard−Chastel et al.,Brit J Pharmacol 2007;883:883−892;
【非特許文献19】Mohler et al.,Neuropharmacology 2007;53:563−573;
【非特許文献20】Cho et al.,Exp Neurology 2007;203:274−278。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オールに関し、本明細書中で以下“化合物X”と呼び、そして以下の構造式:
【0010】
【化1】

【0011】
を有する。化合物Xは、5−HT受容体の部分アゴニストであり、これは血液脳関門を自由に通過する。
本発明は、更に、化合物Xの医薬的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物、異性体、結晶及び非結晶質の形態、同型、並びに多形を含む。本発明は、更に、これらの化合物の全ての互変異性体及び立体化学的異性体を含む。
【0012】
本発明は、更に、部分的に、哺乳動物の5−HT仲介の疾患を治療するための方法に関する。このような疾患は、心臓バイパス手術及び移植術後の脳欠陥のような急性神経学的及び精神医学的障害、脳卒中、脳虚血、脊髄外傷、頭部外傷、出産時低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、認知症、AIDS誘発性認知症、血管性認知症、混合型認知症、加齢関連記憶機能障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼球損傷、網膜症、統合失調症及び双極性障害に伴う認知障害を含む認知障害、特発性及び薬物誘発性パーキンソン病、筋肉攣縮及び振戦を含む筋肉の痙縮を伴う疾患、癲癇、痙攣、片頭痛、片頭痛性頭痛、尿失禁、物質耐性、物質離脱、アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、及び睡眠剤からの離脱、精神障害、軽度認知機能障害、健忘性認知機能障害、多領域認知機能障害、肥満症、統合失調症、不安症、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、気分障害、鬱病、躁病、双極性障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴、眼の筋肉変性、胃食道逆流症、胃腸疾患、胃運動障害、非潰瘍性胃腸障害、機能性胃腸障害、過敏性腸症候群、便秘、胃腸障害、食道炎、胃食道疾患、吐気、嘔吐、脳浮腫、疼痛、急性及び慢性疼痛状態、重度疼痛、難治性疼痛、神経因性疼痛、外傷後疼痛、遅発性ジスキネジア、睡眠障害、過眠症、注意力欠損/多動性障害、自閉症、アスペルガー病、注意及び/又は認知の欠損を症状として含んでなる疾患、レビー小体認知症並びに行動障害を含む。この方法は、化合物X又は医薬的に受容可能なその塩を、哺乳動物に、症状を治療するために治療的に有効な量で投与することを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一つの態様は、先に記載したとおりの化合物X、又は医薬的に受容可能なその塩である。
本発明のもう一つの態様は、化合物X、又は医薬的に受容可能なその塩、及び医薬的に受容可能な担体を含んでなる医薬組成物である。
【0014】
本発明のもう一つの態様は、神経変性疾患又は障害を治療する方法であり、この方法は、化合物X、又は医薬的に受容可能なその塩を投与することを含んでなる。
本発明のもう一つの態様は、神経変性疾患又は障害を治療する方法であり、この方法は、化合物X、又は医薬的に受容可能なその塩を投与することを含んでなり、ここにおいて、前記神経変性疾患又は障害は、認知症、アルツハイマー病、鬱病、精神障害、認知症、不安症、気分障害、注意力欠損/多動性障害、又は注意力欠損障害である。
【0015】
略語及び定義
本明細書中で使用する場合、用語“化合物X”は、本明細書中で以下“本発明の化合物(類)”として言及することができる。このような用語は、更に、水和物、溶媒和物、異性体、結晶及び非結晶質の形態、同型、多形、並びにこれらの代謝産物を含む化合物Xの全ての形態を含むと定義される。
【0016】
以下の略語が、本明細書中で使用される:
CDOD: 重水素化メタノール
CDCl: 重水素化クロロホルム
d: 二重腺
brs: 幅広単一線
g: グラム
EtOAc: 酢酸エチル
h: 時又は時間
HRMS: 高分解能質量分光計
J: カップリング定数
m: 多重線
LRMS: 低分解能質量分光計
M: モル
mg: ミリグラム
MHz: メガヘルツ
min: 分
mL: ミリリットル
N: 規定
NMR: 核磁気共鳴
ppm: パーツパーミリオン
q: 四重線
RT: 室温
s: 単一線
t: 三重線
THF: テトラヒドロフラン。
【0017】
互変異性の形態
本発明は、化合物Xの互変異性の形態を含んでなる。構造的異性体が、低エネルギーの障害を経由して相互転換可能である場合、互変異性的異性(‘互変異性’)が起こることができる。これは、例えばイミノ、ケト、又はオキシム基を含有する化合物Xのプロトン互変異性、或いは芳香族分子を含有する化合物における、いわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。従って、一つの化合物が、一つより多い異性の形態を示すことができることになる。固体及び液体の形態中の互変異性体の各種の比は、分子上の各種の置換基、並びに化合物を単離するために使用した特定の結晶化技術に依存する。
【0018】

本発明の化合物は、無機又は有機酸から誘導される塩の形態で使用することができる。特定の化合物によるが、化合物の塩は、異なった温度及び湿度中の向上した医薬的安定性、或いは水又は油中の好ましい溶解性のような一つ又はそれより多い塩の物理的特性のために好都合であることができる。幾つかの場合、化合物の塩は、更に化合物の単離、精製、及び/又は分割における援助として使用することもできる。
【0019】
塩を患者に投与することを意図する場合(例えばin vitroの状況で使用されることと対照的に)、塩は、好ましくは医薬的に受容可能である。用語“医薬的に受容可能な塩”は、化合物Xを、そのアニオンが一般的にヒトの消費に適していると考えられる酸、又はそのカチオンがそうである塩基と組合せることによって調製される塩を指す。医薬的に受容可能な塩は、親化合物より大きいその水溶性のために、本発明の方法の生成物として特に有用である。医薬における使用のために、本発明の化合物の塩は、非毒性の“医薬的に受容可能な塩”である。用語“医薬的に受容可能な塩”に包含される塩は、一般的に遊離塩基を適した有機又は無機酸と反応させることによって調製される本発明の化合物の非毒性の塩を指す。
【0020】
本発明の化合物の適した医薬的に受容可能な酸付加塩は、可能な場合、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ホウ酸、フルオロホウ酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、炭酸、スルホン酸、及び硫酸のような無機酸、並びに酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、イソチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コハク酸、トルエンスルホン酸、酒石酸、及びトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導されるものを含む。適した有機酸は、一般的に例えば、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、炭素環式、及び有機酸のスルホン酸群を含む。
【0021】
適した有機酸の具体的な例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、ジグルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン(algenic)酸、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、アジピン酸、アルギン酸、酪酸、樟脳酸、カンファースルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ドデシル硫酸、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、2−ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸、3−フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、チオシアン酸、及びウンデカン酸を含む。
【0022】
更に、本発明の化合物が、酸性分子を保有する場合、その医薬的に受容可能な塩は、アルカリ金属塩、即ち、ナトリウム又はカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム又はマグネシウム塩;並びに適した有機リガンドと形成された塩、例えば第四アンモニウム塩を含むことができる。もう一つの態様において、塩基塩は、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、グリシン、リシン、メグルミン、エタノールアミン、トロメタミン及び亜鉛塩を含む非毒性の塩を形成する塩基から形成される。
【0023】
有機塩は、トロメタミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、及びプロカインのような第二、第三又は第四アミン塩から製造することができる。塩基性窒素を含有する基は、低級アルキル(C−C)ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化、及びヨウ化メチル、エチル、プロピル、及びブチル)、硫酸ジアルキル(即ち、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル)、長鎖ハロゲン化物(即ち、塩化、臭化、及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリル)、アリールアルキルハロゲン化物(即ち、臭化ベンジル及びフェネチル)、等のような薬剤で第四化合物化することができる。
【0024】
一つの態様において、酸及び塩基のヘミ塩、例えばヘミ硫酸及びヘミカルシウム塩も更に形成することができる。
同位体
本発明は、更に同位体的に標識された化合物を含み、これは、一以上の原子が、通常天然に見出される原子質量又は質量数と異なった原子質量又は質量数を有する原子によって置換されているという事実を除いて、化合物Xと同一である。本発明の化合物に組込むことができる同位体の例は、それぞれH、H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clのような、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体を含む。前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物、そのプロドラッグ、及び前記化合物又は前記プロドラッグの医薬的に受容可能な塩は、本発明の範囲内である。本発明のある種の放射線標識された化合物、例えばH及び14Cのような放射性同位体が組込まれたものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、即ちH、及び炭素−14、即ち14C同位体は、調製及び検出の容易さのために特に好ましい。更に、ジューテリウム、即ちHのような重い同位体による置換は、大きい代謝安定性から得られるある種の治療の利益、例えば、増加したin vivoの半減期又は減少した必要投与量を得ることができ、そして従って、幾つかの状況では好ましいものであることができる。本発明の同位体的に標識された化合物は、一般的に以下の実施例中に開示される方法を、容易に入手可能な同位体的に標識された試薬で同位体的に標識されていない試薬を置換することによって行うことによって調製することができる。
【0025】
本発明は、更に、化合物Xのプロドラッグに関する。それ自体が僅かな薬理学的活性を有するか、又は有しないことができる化合物Xのある種の誘導体は、身体中に又はその上に投与された場合、例えば加水分解的開裂によって、所望の活性を有する化合物Xに転換することができる。このような誘導体は、“プロドラッグ”と呼ばれる。プロドラッグの使用に対する更なる情報は、Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,ACS Symposium Series,1975(T.Higuchi and W.Stella)及びBioreversible Carriers in Drug Design,Pergamon Press,1987(Ed.E.B.Roche,American Pharmaceutical Association)中に見出すことができる。
【0026】
本発明によるプロドラッグは、例えば、化合物X中に存在する適当な官能基を、例えば、Design of Prodrugs by H.Bundgaard(Elsevier,1985)中に記載されているような‘プロ-部分構造(プロ分子、pro-moieties)’として当業者にとって既知のある分子で置換することによって製造することができる。
【0027】
本発明によるプロドラッグの幾つかの非制約的例は:
(i)適した代謝的に不安定な基(エステル、炭酸塩、カルバミン酸塩、アセタール、ケタール、等)に官能化される、化合物X上のアルコール反応部;及び
(ii)化合物X上の第一又は第二アミノ反応部、或いは適した代謝的に不安定な基、例えば加水分解可能な基(アミド、カルバミン酸塩、尿素、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、等)に官能化されるアミド;
を含む。
【0028】
前述の実施例による置換基の更なる例及び他のプロドラッグの種類の例は、上述の参考文献中に見出すことができる。
投与及び投与量
典型的には、本発明の化合物は、本明細書中に記載されるような症状を治療するために有効な量で投与される。本発明の化合物は、いずれもの適した経路によって、そのような経路に適合した医薬組成物の形態で、そして意図する治療のために有効な投与量で投与される。医学的症状の進行を治療するために必要な化合物の治療的に有効な投与量は、医学技術に精通した当業者によって前臨床及び臨床的方法を使用して容易に確認される。
【0029】
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下することを含むことができるか、或いは化合物が口から血流に直接入る頬側又は舌下投与を使用することができる。
【0030】
もう一つの態様において、本発明の化合物は、更に血流に、筋肉中に、又は内部の器官に直接投与することもできる。非経口投与のために適した手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内及び皮下を含む。非経口投与のための適したデバイスは、針(マイクロニードルを含む)式注射器、無針式注射器及び注入技術を含む。
【0031】
もう一つの態様において、本発明の化合物は、更に皮膚又は粘膜に、即ち、皮膚に又は経皮で局所投与される。もう一つの態様において、本発明の化合物は、更に鼻腔内に又は吸入によって投与することもできる。もう一つの態様において、本発明の化合物は、直腸又は膣内投与することができる。もう一つの態様において、本発明の化合物は、更に眼又は耳に直接投与することもできる。
【0032】
化合物及び/又は化合物を含有する組成物の投与計画は、患者の種類、年齢、体重、性別及び医学的症状;症状の重篤度;投与の経路;及び使用される特定の化合物の活性を含む各種の因子に基づく。従って、投与計画は、幅広く変化することができる。一日当たり体重kg当たり約0.01mgないし約100mg程度の投与量レベルが、先に示した症状の治療において有用である。一つの態様において、本発明の化合物の合計の日量(一回で又は分割投与で投与される)は、典型的には約0.01ないし約100mg/kgである。もう一つの態様において、本発明の化合物の合計の日量は、約0.1ないし約50mg/kg、そしてもう一つの態様において、約0.5ないし約30mg/kg(即ち、体重kg当たりの本発明の化合物mg)である。一つの態様において、投与量は、0.01ないし10mg/kg/日である。もう一つの態様において、投与量は、0.1ないし1.0mg/kg/日である。投与量単位の組成物は、このような量又は日量を構成するその約数を含有することができる。多くの場合、化合物の投与は、一日内に複数回繰返されるものである(典型的には四回より多くない)。
【0033】
経口投与のために、組成物は、患者に対する投与量の症状的調節のための、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、75.0、100、125、150、175、200、250及び500ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供することができる。医薬は、典型的には約0.01mgないし約500mgの活性成分を、又はもう一つの態様において、約1mgないし約100mgの活性成分を含有する。静脈内の投与量は、一定速度の注入中、約0.01ないし約10mg/kg/分の範囲であることができる。
【0034】
本発明による適した患者は、哺乳動物の患者を含む。本発明による哺乳動物は、制約されるものではないが、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、齧歯類、ウサギ類、霊長類、等を含み、そして子宮内の哺乳動物を包含する。一つの態様において、ヒトは適した患者である。ヒトの患者は、どちらの性別でもあり、そして発育のいずれもの段階であることができる。
【0035】
医薬の調製における使用
もう一つの態様において、本発明は、本明細書中に列挙した症状の治療のための医薬の調製のための一つ又はそれより多い本発明の化合物の使用を含んでなる。
【0036】
医薬組成物
本明細書中で言及した症状の治療のために、本発明の化合物は、化合物それ自体で投与することができる。別の方法として、医薬的に受容可能な塩は、親化合物より大きなその水溶性のために、医薬的適用に適している。
【0037】
もう一つの態様において、本発明は、医薬組成物を含んでなる。このような医薬組成物は、医薬的に受容可能な担体と共に提供される本発明の化合物を含んでなる。担体は、固体、液体、又は両方であることができ、そして単位投与量組成物、例えば0.05%ないし95重量%の活性化合物を含有することができる錠剤として化合物と共に処方することができる。本発明の化合物は、標的設定可能な薬物担体として適したポリマーと結合させることができる。他の薬理学的に活性な物質も、更に存在することができる。
【0038】
本発明の化合物は、いずれもの適した経路によって、好ましくはそのような経路に適合された医薬組成物の形態で、そして意図する治療のために有効な投与量で投与することができる。活性化合物及び組成物は、例えば、経口、直腸、非経口、又は局所投与することができる。
【0039】
固体の剤形の経口投与は、例えば、それぞれが少なくとも一つの本発明の化合物の所定の量を含有する、硬質又は軟質カプセル、丸薬、カシェー、ロゼンジ、或いは錠剤のような個別の単位で提供することができる。もう一つの態様において、経口投与は、粉末又は顆粒の形態であることができる。もう一つの態様において、経口剤形は、例えばロゼンジのような舌下剤であることができる。このような固体の剤形において、化合物Xは、通常一つ又はそれより多いアジュバントと組合される。このようなカプセル又は錠剤は、制御放出製剤を含有することができる。カプセル、錠剤、及び丸薬の場合、剤形は、更に緩衝剤を含んでなることができるか、又は腸溶性被覆を伴って調製することができる。
【0040】
もう一つの態様において、経口投与は、液体剤形であることができる。経口投与のための液体剤形は、例えば、当技術において普通に使用される不活性希釈剤(即ち、水)を含有する医薬的に受容可能な乳液、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルを含む。このような組成物は、更に湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、風味(例えば甘味)剤、及び/又は芳香剤のようなアジュバントを含んでなることができる。
【0041】
もう一つの態様において、本発明は、非経口剤形を含んでなる。“非経口投与”は、例えば、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、及び注入を含む。注射用製剤(即ち、滅菌注射用水性又は油性懸濁液)は、既知の技術によって、適した分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁剤を使用して処方することができる。
【0042】
もう一つの態様において、本発明は、局所剤形を含んでなる。“局所投与”は、例えば、経皮貼布又はイオン泳動デバイスによるような経皮投与、眼内投与、或いは鼻腔内又は吸入投与を含む。局所投与のための組成物は、更に例えば、局所用ゲル、噴霧剤、軟膏、及びクリームを含む。局所製剤は、皮膚又は他の影響を受けた部分を通る活性成分の吸収又は透過を向上する化合物を含むことができる。本発明の化合物が、経皮デバイスによって投与される場合、投与は、貯蔵所及び多孔質膜型又は固体基質の変種のいずれかの貼布を使用して達成されるものである。この目的のための局所製剤は、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯材、泡状物、フィルム、皮膚貼布、ウエハー、植込み錠、スポンジ、繊維、絆創膏及びマイクロ乳液を含む。リポソームも更に使用することができる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含む。透過向上剤を組込むことができる;例えば、Finnin and Morgan,J.Pharm.Sci.,1999,88,955−958を参照されたい。
【0043】
眼への局所投与のために適した製剤は、例えば、本発明の化合物が適した担体中に溶解又は懸濁された点眼剤を含む。眼又は耳への投与のために適した典型的な製剤は、等張のpHを調節された滅菌生理食塩水中の微粒子化された懸濁液又は溶液の滴下剤の形態であることができる。眼及び耳への投与のために適した他の製剤は、軟膏、生分解性(即ち、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(即ち、シリコーン)植込み錠、ウエハー、レンズ及び微粒子、或いはニオソーム(niosomes)又はリポソームのような小胞系を含む。架橋ポリアクリル酸のようなポリマー、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はメチルセルロース、或いはヘテロポリサッカリドポリマー、例えばジェラン(gelan)ガムは、塩化ベンザルコニウムのような保存剤と共に組込むことができる。
【0044】
鼻腔内投与又は吸入による投与のために、本発明の活性化合物は、患者によって圧搾又はポンピングされるポンプ噴霧容器から、或いは適した噴射剤の使用を伴う加圧容器又は噴霧吸入器からのエアゾール噴霧提示としての溶液又は懸濁液の形態で好都合には供給される。鼻腔内投与のために適した製剤は、典型的には乾燥粉末の形態で(単独で、或いは混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥混合物中で、又は混合された成分、例えばホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合された粒子としてのいずれかで)、乾燥粉末吸入器から、又は加圧容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザー(好ましくは微細な霧を製造するために、電気流体力学を使用するアトマイザー)、或いは1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンのような適した噴射剤の使用を伴う又は伴わない噴霧吸入器からのエアゾール噴霧として投与される。鼻腔内使用のために、粉末は、生体接着剤、例えばキトサン又はシクロデキストリンを含んでなることができる。
【0045】
もう一つの態様において、本発明は、直腸剤形を含んでなる。このような直腸剤形は、例えば、座薬の形態であることができる。ココアバターが慣用的な座薬基剤であるが、しかし各種の代替物を適宜使用することができる。
【0046】
医薬技術において既知の他の担体物質及び投与の様式も、更に使用することができる。本発明の医薬組成物は、効率的な処方及び投与方法のようないずれもの薬学の公知の技術によって調製することができる。効率的な処方及び投与方法に関する上記の考慮は、当技術において公知であり、そして標準的な教科書に記載されている。薬物の処方は、例えば、Hoover,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania,1975;Liberman et al.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;及びKibbe et al.,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(3rd Ed.),American Pharmaceutical Association,Washington,1999中で考察されている。
【0047】
併用投与
本発明の化合物は、単独で、又は他の治療剤との組合せで、各種の症状又は疾病状態の治療において使用することができる。本発明の化合物(単数又は複数)及び他の治療剤(単数又は複数)は、同時に(同一剤形中で又は別個の剤形中でのいずれかで)又は連続して投与することができる。一つの態様において、他の治療剤は、ジメボン(2,3,4,5−テトラヒドロ−2,8−ジメチル−5−(2−(6−メチル−3−ピリジル)−エチル)−1H−ピリド(4,3b)インドール)である。もう一つの例示的な治療剤は、例えば、NMDAアンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤、PDE9阻害剤、又はヒスタミンH3受容体アンタゴニストであることができる。
【0048】
化合物Xと併用投与するために適したNMDAアンタゴニストの例は、制約されるものではないが、2−アミノ−4−[3’−ヒドロキシフェニル]−4−ヒドロキシブタン酸、アカンプロセート、AM−101(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00860808を参照されたい)、AZD−6765 (http://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00491686を参照されたい)、ブジピン、CNS−5161(3−(2−クロロ−5−(メチルチオ)フェニル)(メチル)(3−(メチルチオ)フェニル)グアニジン)、CR−2249(Garofalo et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1996,48:1290−1297を参照されたい)、CR−3394(Sarre et al.,Eur.J.Pharmacol.,2008,584:297−305を参照されたい)、CR−3991 (Garofalo et al.,Soc.Neurosci.Abstracts 2001,27:Abs 564.8を参照されたい)、ジミラセタム、EVT−101(5−(4−フルオロ−3−(ジフルオロメチル)フェニル)−3−((2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)メチル)ピリダジン)、EVT−103(http://www.evotec.com/display/articleCategorizedDetail/cms_article_id/11/website_part_id/4/selected_category_id/6を参照されたい)、フルピルチン、ヒマンタン(himantane)、ヒューペルジン(huperzine)A、インダンタドール(indantadol)、メマンチン、ミモペジル(mimopezil)、NA−1(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00728182を参照されたい)、ネボグラミン、ネラメキサン(neramexane)、ビス−(7)−タクリン、Neu−120(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00607451を参照されたい)、Neu−2000(5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−ヒドロキシ安息香酸)、NT−13317(ジヒドロ−1−p−トリル−1H−ピロロ[1,2−a]イミダゾール−2,5(3H,6H)−ジオン)、NVA−011(Gonzalez et al.,Colloque de la Societe des neurosciences(2007),23(Abs D.22)を参照されたい)、ペルジンホテル(perzinfotel)及びそのプロドラッグ、ラジプロジル(radiprodil)、ラルフィナミド(ralfinamide)、TIK−101(d−シクロセリン)、トピラメート、又はYT−1006(http://www.yaupontherapeutics.com/products.htmlを参照されたい)、或いは医薬的に受容可能なこれらの塩を含む。
【0049】
化合物Xとの併用投与のために適したNMDAアンタゴニストの他の例は、制約されるものではないが、米国特許出願公開US2007/197594又は2009/124600中に、或いはPCT出願公開WO02/72542、WO02/80928、WO03/10159、WO04/108705、WO06/10964、WO06/10965、WO06/10966、WO06/10967、WO06/10969、WO07/16357、WO08/137474、WO08/138200、WO08/91901、WO09/06437、WO09/129181、WO09/137843、WO09/92324、WO92/15565、WO97/12870、又はWO98/14427中に開示されるNMDAアンタゴニスト、或いは医薬的に受容可能なこれらの塩を含む。
【0050】
化合物Xとの併用投与のために適したAChE阻害剤の例は、制約されるものではないが、(−)−フェンセリン、アコチアミド、ビス−(7)−タクリン、BZYX(Zhang et al.,Eur.J.Pharmacol.,2009,613:1−9を参照されたい)、デソキシペガニン(desoxypeganine)、ドネペジル、EN−101(Argov et al.,Neurology,2007,69:699−700を参照されたい)、ガランタミン、ヒューペルジンA、フプリン(huprines)、INM−176(“Drugs under clinical trials in 2005,”Pharma Koreana,2005,15:82−89を参照されたい)、イトプリド、マラチオン、メモガイン(memogain)(Popa et al.,J.Mol.Neurosci.,2006,30:227−232を参照されたい)、メモキン(memoquin)、フッ化メタンスルホニル、メトルホネート、ミモペジル(mimopezil)、NP−61(http://www.noscira.com/investigacion.cfm?mS=228&mSS=252を参照されたい)、フィゾスチグミン、リバスチグミン、SP−004(ジメチルカルバミン酸2,3−ビス−ジメチルカルバモイルオキシ−6−(4−エチル−ピペラジン−1−カルボニル)−フェニルエステル)、TA2−PZ5(Manetsch et al.,J.Am.Chem.Soc.,2004,126:12809−12818を参照されたい)、TA2−PZ6(Manetsch et al.,supraを参照されたい)、タクリン、TZ2−PA5(Manetsch et al.,supraを参照されたい)、TZ2−PA6(Bourne et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.,2004,101:1449−1454を参照されたい)、又はUR−1827(Anpeiji et al.,Japan.J.Pharmacol.,1999,79:Suppl Iを参照されたい)、或いは医薬的に受容可能なこれらの塩を含む。
【0051】
化合物Xとの併用投与のために適したAChE阻害剤の他の例は、制約されるものではないが、中国特許出願公開CN101440061、欧州特許出願公開EP1891954米国特許出願公開US2009/149444、又はPCT出願公開WO05/05413、WO06/39767、WO07/107846、WO07/122274、WO08/74816、WO09/104990、WO09/36235、WO96/26196、WO97/37992、WO97/38993、WO98/00412、WO98/05292、又はWO98/06697中に開示されているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、或いは医薬的に受容可能なこれらの塩を含む。
【0052】
化合物Xとの併用投与のために適したPDE9阻害剤の例は、制約されるものではないが、PF−4447943(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00930059を参照されたい)、又は医薬的に受容可能なその塩を含む。
【0053】
化合物Xとの併用投与のために適したH3受容体アンタゴニストの例は、制約されるものではないが、APD−916(Covel et al.,J Med Chem,2009,52:5603−5611を参照されたい)、CEP−26401(Le et al.,Soc Neurosci Annual Meeting,2008,38:Abs 824.13を参照されたい)、シクロキシファン(ciproxifan)、11C−MK−8278(Sanabria−Bohorquez et al.,Abs Soc Nuclear Med Ann Meeting,2009,Abs 1212を参照されたい)、ABT−288(Esbenshade et al.,Soc Neurosci Ann Meeting 2009,Abs 715.23/C13を参照されたい)、HPP−404((7−クロロ−2−(4−シクロプロピルピペラジン−1−イル)キノリン−5−イル)(シクロプロピル)メタノン)、SAR−110894(Guillot et al.,Soc Neurosci Ann Meeting,2008,38th:(Abs 160.21を参照されたい)、GSK−835726(Ford et al.,Allergy,2009,64:Suppl 90(69)を参照されたい)、GSK−1004723(Clark et al.,Allergy,2009,64:Suppl 90(129)を参照されたい、GSK−239512(http://clinicaltrials.gov/ct2/results?term=NCT01009255を参照されたい)、JNJ−17216498(http://clinicaltrials.gov/ct2/results?term=NCT00424931を参照されたい)、PF−3654746(http://clinicaltrials.gov/ct2/results?term=NCT01006122を参照されたい)、又はピトリサント(pitolisant)、或いは医薬的に受容可能なこれらの塩を含む。
【0054】
“組合せにおける”二つ又はそれ以上の化合物の投与は、二つの化合物が、一つの存在が他の生物学的効果を変化するために十分に接近した時間で投与されることを意味する。二つ又はそれより多い化合物は、同時点に、同時的に又は連続的に投与することができる。更に、併用投与は、化合物を投与前に混合することによって、又は化合物を同じ時点でしかし異なった解剖学的部位に、或いは投与の異なった経路を使用して投与することによって行うことができる。
【0055】
語句“同時的投与(concurrent administration)”、“併用投与(co-administration)”、“同時点投与(simultaneous administration)”、及び“同時に投与される(administered simultaneously)”は、化合物が組合せで投与されることを意味する。
【0056】
キット
本発明は、更に先に記載した治療の方法を行うことにおいて使用するために適したキットを含んでなる。一つの態様において、キットは、本発明の方法を行うために十分な量の一つ又はそれより多い本発明の化合物を含んでなる第一の投与形態、及び投与のための容器を含有する。
【0057】
もう一つの態様において、本発明のキットは、本発明の一つ又はそれより多い化合物を含んでなる。
中間体
もう一つの態様において、本発明は、本発明の化合物を調製するために有用な新規な中間体に関する。
【0058】
実験方法及び作業例
化合物Xは、有機化学の技術において既知の合成方法、或いは当業者が精通している改変及び誘導体化と共に、以下に記載する方法によって調製することができる。本明細書中で使用される出発物質は、商業的に入手可能であるか、又は当技術において既知の日常的方法(Compendium of Organic Synthetic Methods,Vol.I−XII(published by Wiley−Interscience)のような標準的な参考書中に開示されている方法のような)によって調製することができる。好ましい方法は、制約されるものではないが、以下に記載されるものを含む。
【0059】
いずれもの以下の合成シーケンス中で、関係するいずれもの分子上の感受性の又は反応性の基を保護することが必要及び/又は好ましいものであることができる。これは、本明細書中に参考文献として援用される、Greene,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1981;Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1991;及びGreene and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley & Sons,1999中に記載されているもののような慣用的な保護基によって達成することができる。
【0060】
スキーム、方法及び実施例中で使用される各種の記号、上付き文字及び下付き文字が、提示の便宜さ及び/又はこれらがスキームに導入される順序を反映するのために使用され、そして付属する特許請求の範囲中の記号、上付き文字又は下付き文字と対応することを必ずしも意図していないことは当業者によって理解されるものである。スキームは、本発明の化合物の合成において有用である方法の提示である。これらは、本発明の範囲をいかなる方法ででも束縛するものではない。
【0061】
以下は、本発明の各種の化合物の合成を例示する。本発明の範囲内の更なる化合物は、これらの実施例中に例示される方法を、単独で、又は当技術において一般的に知られた技術と組合せてのいずれかで使用して調製することができる。
【0062】
実験は、一般的に、特に酸素又は水分に感受性な試薬或いは中間体が使用される場合、不活性雰囲気下(窒素又はアルゴン)で行われた。商業的な溶媒及び試薬は、適宜に無水の溶媒を含み、他に示さない限り、一般的に更なる精製無しに使用した(一般的にAldrich Chemical Company,Milwaukee,WisconsinからのSure−SealTM製品)。核磁気共鳴(NMR)データに対する化学シフトは、使用される重水素化溶媒からの残留ピークを参照するパーツパーミリオン(ppm、δ)で表示する。
【0063】
他の実施例中の合成参考方法のために、反応条件(反応の長さ及び温度)は変化することができる。一般的に、反応は、薄層クロマトグラフィー又は質量分光法によって追跡され、そして適用な場合、仕上げにかけられた。精製は、実験間で変わることができ:一般的に溶出剤/勾配のために使用される溶媒及び溶媒比は、適当なR又は保持時間を得るように選択された。
【実施例】
【0064】
実施例1:(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オールの合成
【0065】
【化2】

【0066】
2−フルオロ−6−ヒドロキシ安息香酸メチル(2):
20Lのジャケット加熱された反応器に、2−フルオロ−6−ヒドロキシ安息香酸(Oakwood製品;0.972kg、6.31mol)、メタノール(7.60L)及び硫酸(0.710kg、7.24mol、1.15当量)を入れた。ジャケット温度を60℃に加熱し、そして反応混合物を45時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、そして概略7.5Lのメタノール留出物を収集した。得られた薄い油状物を20℃に冷却した。水(7.60L)及び酢酸エチル(7.60L)を反応器に入れ、そして生成物を有機層に抽出した。EtOAc溶液を重炭酸ナトリウム(1.52Kg)の水(6.92L)中の溶液で、続いて塩化ナトリウム(1.74kg)の水(4.08L)中のブライン溶液で洗浄した。得られたEtOAc溶液を乾燥状態まで濃縮した。明るいオレンジ色の油状物を単離した;油状物は静置によりゆっくりと結晶化して、表題化合物(2)(0.952Kg、5.60mol、89%収率)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 3.97(s,3H),6.59(ddd,J=10.9,8.2,1.2,1H),6.76(dt,J=8.2,1.1,1H),7.35(td,J=8.6,6.3,1H),11.24(s,1H);13C NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 52.65,102.56(d,J=13),106.90(d,J=23),113.31(d,J=3.1),135.34(d,J=11.5),161.02,163.31(d,J=62.2),169.87(d,3.8);MS 171.045(m+1)。
【0067】
2−フルオロ−N,6−ジヒドロキシベンズアミド(3):
50Lの反応器に、水(4.47L)及び硫酸ヒドロキシルアミン(6.430kg、39.17mol)を入れ、混合物を25℃で撹拌した。炭酸カリウム(3.87Kg、27.98mol)の水(5.05L)中の溶液を反応混合物にゆっくり加えて、濃厚な白色の混合物を形成し、これを20℃で撹拌した。2−フルオロ−6−ヒドロキシ安息香酸メチル(2)(0.952Kg、5.60mol)のメタノール(9.52L)中の溶液を、反応器にゆっくりと加え、穏やかなガスの発生を得た。次いで反応混合物を35℃に加熱し、そして20時間撹拌した。反応混合物を15℃に冷却し、そして1時間撹拌した。混合物を濾過して、無機物質を除去した。反応器をメタノール(2.86L)で洗浄し、そしてタンク洗液を無機ケーキの洗浄に使用した。
【0068】
ケーキの分析は、これが生成物を含有することを示した。20Lの反応器にメタノール(10L)及び無機ケーキを入れ、そして混合物を25℃で30分間撹拌した。混合物を濾過し、そしてケーキをメタノール(3L)で洗浄した。
【0069】
混合した濾液を反応器に戻し、そして真空下でジャケット温度を40℃に設定し、概略10Lが残るまで濃縮した。混合物を25℃に保ち、そして濃HCl(5.51L)を加えた。反応物を15℃に冷却し、そして2時間撹拌した。白色のスラリーを濾過し、そして得られた生成物のケーキを水(4.76L)で洗浄し、窒素でブローして乾燥し、そして次いで40℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。所望の生成物(3)(747g、4.36mol)を78%の収率で単離した。H NMR(400MHz,CDOD)δ ppm 4.91(s,3H),6.63(ddd,J=10.9,8.5,0.8,1H),6.72(dt,J=8.2,0.8,1H),7.31(td,J=8.2,6.6,1H);MS 172.040(m+1)。
【0070】
4−フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール−3−オール(4):
20Lのジャケット加熱された反応器に、テトラヒドロフラン(2.23L)及び1,1’−カルボニルジイミダゾール(0.910Kg、5.64mol)を入れた。得られた混合物を20℃で撹拌した。次いで2−フルオロ−N,6−ジヒドロキシベンズアミド(3)(744g、4.34mol)のテトラヒドロフラン(4.45L)中の溶液を、温度を30℃より低く維持しながら反応器にゆっくりと入れ、そして25℃で30分間撹拌し、この間、ある程度のガスの発生が観察された。反応混合物を30分かけて60℃に加熱し、そして6時間撹拌した。反応器を20℃に冷却し、続いて1Nの塩酸水溶液(7.48L)を15分かけて加えて、pHを1に調節した。ジャケット温度を35℃に設定し、そして反応混合物を真空下で濃縮して、概略6.68LのTHFを除去した。反応器を15℃に冷却し、そして1時間撹拌した。得られた白色のスラリーを濾過し、ケーキを水(3.71L)で洗浄し、そして40℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。所望の生成物(4)(597g、3.90mol)を、90%の収率で単離した。H NMR(400MHz,CDOD)δ ppm 4.93(b,1H),6.95(dd,J=10.1,8.6,1H),(d,J=8.6,1H),7.52−7.57(m,1H);LRMS 154.029(m+1)。
【0071】
4−(トシルオキシメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5):
20Lのジャケット加熱された反応器に、ジクロロメタン(8L)、N−boc−4−ピペリジンメタノール(0.982Kg、4.56mol)及び塩化p−トルエンスルホニル(0.970Kg、5.09mol)を入れ、そして得られた混合物を20℃で5分間撹拌した。トリエチルアミン(0.94Kg、9.29mol)を滴下ロートにより反応器に加え、そして得られた深紅の溶液を25℃で16時間撹拌した。炭酸ナトリウム(0.96Kg、9.06mol)の水(7.04L)中の溶液を反応混合物に入れ、そして1時間20℃で撹拌した。相を分離し、そして有機層をブライン(6L)で洗浄し、そして40℃で低い撹拌体積まで濃縮した。ジメチルアセトアミド(2L)を反応器に入れ、そして濃縮を最大限の真空下で40℃で1時間続けた。4−(トシルオキシメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5)のジメチルアセトアミド中の溶液を、更なる加工のため保持した。収率は、概略90%の濃度を伴う100%と仮定した。純度分析のために試料を取り、そして乾燥状態まで濃縮した。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.02−1.12(m,2H),1.14(s,9H),1.59−1.64(m,2H),1.75−1.87(m,1H),2.43(s,3H),2.55−2.75(m,2H),3.83(d,J=6.7,2H),3.95−4.20(b,2H),7.33(d,8.6,2H),7.76(d,8.2,2H);13C NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 21.64,28.15,28.39,35.74,73.97,79.50,126.99,127.84,129.86,132.84,144.84,154.63;LRMS 739.329(2m+1)。
【0072】
4−((4−フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(6):
20Lのジャケット加熱された反応器に、ジメチルアセトアミド(4.28L)、4−(トシルオキシメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5)(1.68Kg、4.56mol)、4−フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール−3−オール(4)(540g、3.51mol)、及び炭酸カリウム(960g、6.98mol)を入れ、濃厚なベージュ色のスラリーを得た。反応混合物を50℃に加熱し、そして20時間撹拌し、そして次いで20℃に冷却し、続いて水(7.5L)及び酢酸エチル(5.37L)を加えた。15分間混合した後、相を静置し、そして分離した。有機層を水(5.37L)で洗浄し、水性洗液を廃棄物に送った。有機混合物を、概略5Lが反応器中に残るまで40℃の最高ジャケット温度で真空下で蒸留した。メタノール(2.68L)を加え、そして得られた溶液を真空下で約3Lの黄色の油状物まで濃縮した。メタノール(2.68L)を反応器に入れ、そして得られた溶液を25℃で15分間撹拌した。水(0.54L)を15分かけて加え、白色のスラリーを得た。混合物を15℃に冷却し、1時間撹拌し、そして次いで濾過した。濾過ケーキをメタノール(2.14L)中の水(0.54L)の溶液で洗浄し、次いで30分間空気乾燥し、真空オーブンに移し、そして40℃で12時間乾燥した。所望の生成物(6)(746g、2.13mol)を、61%の収率で単離した。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.23−1.37(m,2H),1.45(s,9H),1.78−1.88(m,2H),2.04−2.17(m,1H),2.67−2.83(m,2H),4.02−4.26(m,2H),4.28(d,6.6,2H),6.89(dd,J=8.6,7.5,1H),7.21(d,J=9,1H),(td,8.6,4.9);LRMS 351.171(m+1)。
【0073】
(R)−4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(8):
20℃に設定したジャケットを持つ20Lのガラス反応器に、(R)−テトラヒドロフラン−3−オール(7)(297g、3.37mol)及びジメチルアセトアミド(5.1L)を入れた。THF(1.37L、2.74mol)中の2.0Mのナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを、ポットの温度を30℃より低く維持しながら滴下漏斗によりゆっくりと加えた。得られたオレンジ/赤の溶液を25℃で30分間撹拌した。次いで4−((4−フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(6)(640.15g、1.83mmol)を入れ、そして反応混合物を25℃で16時間撹拌した。反応混合物を20℃に冷却し、そして水(6.4L)を、ポット温度を35℃より低く維持しながら45分かけてゆっくりと加えた。酢酸エチル(6L)を加え、そして二相性の混合物を15分間撹拌し、そして次いで分離した。水層を更なる酢酸エチル(4L)で逆抽出した。次いで混合した有機物を水(5L)及び20%ブライン溶液(5L)で洗浄した。有機混合物を、40℃に設定したジャケット温度で真空下で概略3Lまで濃縮し、そして更なる加工のために保持した。酢酸エチル中の所望の生成物(8)(0.76Kg、1.82mol)の定量的収率を仮定した。純度分析のために、試料を取り、そして乾燥状態まで濃縮した。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.25−1.38(m,2H),1.44(s,9H),1.76−1.84(m,2H),1.89−1.97(b,1H),1.99−2.12(m,1H),2.14−2.28(m,2H),2.63−2.84(m,2H),3.90−4.21(m,6H),4.24(d,J=6.3,2H),5.00−5.05(m,1H),6.48(d,J=8.2,1H),6.98(d,J=8.6,1H),7.37(t,J=8.2,1H);LRMS 419.216(m+1)。
【0074】
(R)−4−メチルベンゼンスルホン酸 3−(ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール(9):
20Lのジャケット加熱された反応器に、酢酸エチル(6.1L)、(R)−4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(8)(0.76kg、1.82mol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(0.413kg、2.17mol)を入れ、そして20℃で30分間撹拌した。反応器のジャケットを20から65℃に1時間かけて加熱し、そして次いで65℃で16時間保った。反応器を1時間かけて15℃に冷却し、そして2時間造粒した。得られたスラリーを濾過し、ケーキをEtOAc(3L)で洗浄し、そして次いでフィルター上で30分間空気乾燥した。ケーキを真空オーブンに移し、そして40℃で12時間乾燥した。所望の生成物(9)(854g、1.74mol)を、96%の収率(二工程)で単離した。H NMR(400MHz,CDOD)δ ppm 1.54−1.67(m,2H),2.04−2.18(m,3H),2.19−2.36(m,2H),2.33(s,3H),3.01−3.12(m,2H),3.41−3.50(m,2H),3.86−4.01(m,4H),4.26(d,J=6.3,2H),4.90(s,2H),5.14−5.19(m,1H),6.72(d,J=8.2,1H),7.02(d,J=8.6,1H),7.21(d,J=7.8,2H),7.48(t,J=8.6,1H),7.70(d,J=8.2,2H);LRMS 319.165(m+1)。
【0075】
(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(11):
20Lのジャケット加熱された反応器に、水(7.5L)及び炭酸ナトリウム(0.98kg)を入れた;混合物を全ての固体が溶解するまで20℃で撹拌した。次いで(R)−4−メチルベンゼンスルホン酸3−(ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール(9)(750g、1.53mol)及び酢酸エチル(6.0L)を反応器に加え、そして20℃で30分間撹拌した。相を分離し、そして下部の水層を酢酸エチルで(6.0Lで、そして次いで3.75Lで)二回抽出した。有機層を20Lの反応器中で混合し、そしてブライン(3.0L)で二回洗浄した。酢酸エチル溶液を45℃の真空下で低撹拌体積まで濃縮した。イソプロピルアルコール(3.75L)を加え、そして濃縮を反応器中に2Lが残るまで続けた。更なるイソプロピルアルコール(2.75L)を加え、そして混合物を25℃に冷却した。反応器に1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン(10)(260g、2.29mol)を入れ、そして得られた溶液を50℃に加熱し、そして16時間撹拌した。反応混合物を30℃に冷却し、そして水(15L)を60分かけて加えた。生成物は溶液から結晶化し、そして得られたスラリーを15℃に1時間かけて冷却し、そして次いで4時間造粒した。生成物を濾過し、そして水(3.75L)で洗浄した。ケーキを窒素で30分間ブロー乾燥し、そして次いで真空オーブンに移し、そして40℃で12時間乾燥した。所望の生成物(11)(588g、1.36mol)を、89%の収率で単離した。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.41−1.63(m,6H),1.71−1.81(m,2H),1.81−1.94(m,1H),2.17−2.26(m,2H),2.33(s,2H),2.4(td,J=11.7,2.3,2H),2.92(d,J=11.8,2H),3.46(s,1H),3.71−3.84(m,4H),3.91−4.10(m,4H),4.24(d,J=5.9,2H),5.03−5.08(m,1H),6.50(d,J=8.2,1H),7.00(d,J=8.2,1H),7.38(t,J=8.2,1H);13C NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 29.11,33.10,35.20,36.92,36.96,56.15,63.93,67.14,67.46,68.27,72.94,74.06,78.37,103.17,105.15,131.71,152.71,166.02,166.28;LRMS 433.232(m+1)。
【0076】
実施例2:(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オールの合成
【0077】
【化3】

【0078】
5−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン:
塩化チオニル(83.8g、0.71mol)を、2,6−ジヒドロキシ−安息香酸(77g、0.5mol)、アセトン(37.7g、0.65mol)及びDMAP(3.1g、0.025mol)のジメトキシエタン(375ml)中の溶液にゆっくりと加えた。混合物を室温で7時間撹拌した。減圧下の濃縮後に得た残渣を、酢酸エチル中に溶解し、そして水及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)し、そして濃縮して、79gの所望の生成物を、赤色の固体(81%収率)として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.68(s,6H),6.37(dd,J=8,0.8,1H) 6.56(dd,J=8,0.8,1H),7.34(t,J=8,1H),10.27(brs,1H)。
【0079】
2,2−ジメチル−5−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン:
アゾジカルボン酸ジエチル(130.5g、0.75mol)を、5−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(100g、0.51mol)、トリフェニルホスフィン(196.5g、0.75mol)、及び(S)−テトラヒドロ−フラン−3−オール(44g、0.5mol)の600mLの無水のTHF中の混合物に滴下様式で加えた。得られた混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、そして粗製物質をシリカゲルのフラッシュカラムで、石油エーテル/酢酸エチル(15:1→3:1)で溶出して精製した。86g(65%収率)の生成物を、無色の油状物として単離した。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.67(s,6H),2.30(m,2H),4.2(m,4H) 4.97(m,1H),6.49(d,J=8.4,1H) 6.51(d,J=8.4,1H),7.39(t,J=8.4,1H)。
【0080】
2−ヒドロキシ−6−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−安息香酸メチルエステル:
炭酸カリウム(134.8g、0.98mol)を、2,2−ジメチル−5−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(86g、0.33mol)の1Lのメタノール中の溶液に加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチル中に溶解し、そして塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)し、そして濃縮して、72gの生成物を、黄色の固体(92%収率)として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 2.20(m,2H),3.99(s,3H),4.80(m,4H).4.94(m,1H),6.31(dd,J=8.4,0.8,1H),6.59(dd,J=8.4,0.8,1H),7.30(t,J=8.4,1H)。
【0081】
2,N−ジヒドロキシ−6−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンズアミド:
炭酸カリウム(121g、0.867mmol)を、硫酸ヒドロキシルアミン(120g、0.732mol)の360mLの水中の0℃の溶液に滴下により加えた。30分間撹拌した後、亜硫酸ナトリウム(3.74g、0.029mol)及び2−ヒドロキシ−6−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−安息香酸メチルエステル(35g、0.146mol)の360mLのメタノール中の溶液を加え、そして混合物を50℃で30時間撹拌した。冷却した反応混合物からメタノールを減圧下で除去し、そして得られた水層を2NのHClで酸性化した。水層を酢酸エチルで抽出し、そして有機層を乾燥(NaSO)し、そして濃縮して、25g(76%収率)の生成物を、黄色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 2.00(m,1H),2.15(m,1H),3.80(m,4H),5.05(m,1H),6.48(d,J=8,1H),6.49(d,J=8,1H),7.19(t,J=8,1H),10.41(brs,1H),11.49(brs,1H);LRMS m/z 239(m+1)。
【0082】
4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−オール:
2,N−ジヒドロキシ−6−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンズアミド(25g、0.105mol)の250mLのTHF中の溶液を、50℃に加熱した。カルボニルジイミダゾールを分割して加え、そして得られた混合物を50℃で14時間撹拌した。室温に冷却した後、100mLの2NのHClを加え、そして水層を酢酸エチルで抽出した。次いで混合した有機層を10%の炭酸カリウム水溶液で三回抽出した。炭酸カリウムの水性抽出物を酢酸エチルで抽出し、そして次いで2NのHClでpH2−3に酸性化した。酸性化した水層を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物をブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)し、そして濃縮して、20gの生成物を、黄色の固体(43%収率)として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 2.20(m,2H),3.89(m,1H),4.01(m,3H),5.05(m,1H),6.48(d,J=7.6,1H).6.92(d,J=7.6,1H),7.37(t,J=7.6,1H);LRMS m/z 222(m+1)。
【0083】
4−{4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシメチル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
アゾジカルボン酸ジエチル(15.6g、0.09mol)を、4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−オール(10g、0.045mol)、4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(11.6g、0.054mol)及びトリフェニルホスフィン(23.5g、0.09mol)の300mLのTHF中の混合物に加えた。添加が完了した後、混合物を還流で18時間加熱した。真空中で濃縮後、粗製生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで、石油エーテル/酢酸エチル(15:1→5:1)で溶出して精製して、22gの生成物を、油状物(51%収率)として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.25(m,2H),1.39(s,9H),1.76(m,2H),1.99(m,1H).2.15(m,2H),2.70(bt,J=11.6,2H),3.95(m,4H).4.13(m,2H).4.34(d J=6.4,2H),4.98(m,1H),6.43(d,J=8,1H),6.93(d,J=8,1H),7.31(t,J=8,1H)。
【0084】
3−(ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール:
4−{4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシメチル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの500mLのエーテル中の0℃の溶液を、200mLのエーテル中のHCl(ガス)の飽和溶液で処理した。添加が完了した後、混合物を室温に温め、そして16時間撹拌した。反応混合物を濾過した。白色の固体を酢酸エチルで、続いてエーテルで洗浄し、そして乾燥して、15g(81%収率)の所望の生成物を、白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ ppm 1.51−1.69(m,2H)2.04−2.19(m,3H)2.22−2.37(m,2H)2.99−3.14(m,2H)3.40−3.51(m,2H)3.85−4.02(m,4H)4.25−4.31(m,2H)5.17(td,J=3.71,1.56Hz,1H)6.72(d,J=8.00Hz,1H)7.01(d,J=8.59Hz,1H)7.47(t,J=8.20Hz,1H);LRMS m/z 319(m+1)。
【0085】
4−(4−{4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシメチル}−ピペリジン−1−イルメチル)−テトラヒドロ−ピラン−4−オール:
1,6−ジオキサ−スピロ[2.5]オクタン(Focus Synthesis;9.7g、0.084mol)及びトリエチルアミン(8.6g、0.084mol)を、3−(ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−[(R)−(テトラヒドロ−フラン−3−イル)オキシ]−ベンゾ[d]イソオキサゾール(15g、0.042mol)の200mLのメタノール中の溶液に加えた。得られた溶液を還流で18時間加熱した。冷却した混合物を濃縮し、そして残渣に酢酸エチル及び水を加えた。層を分離し、そして有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)し、そして濃縮して、17gの粗製生物を黄色の油状物として得た。粗製物質を分離用HPLCによって精製して、10gの所望の生成物を、白色の固体として得た。(50%収率)。H NMR(400MHz,CDCl)δ ppm 1.41−1.63(m,6H),1.71−1.81(m,2H),1.81−1.94(m,1H),2.17−2.26(m,2H),2.33(s,2H),2.4(td,J=11.7,2.3,2H),2.92(d,J=11.8,2H),3.46(s,1H),3.71−3.84(m,4H),3.91−4.10(m,4H),4.24(d,J=5.9,2H),5.03−5.08(m,1H),6.50(d,J=8.2,1H),7.00(d,J=8.2,1H),7.38(t,J=8.2,1H);13C NMR(101MHz,CDCl)δ ppm 29.11,33.10,35.20,36.92,36.96,56.15,63.93,67.14,67.46,68.27,72.94,74.06,78.37,103.17,105.15,131.71,152.71,166.02,166.28。
【0086】
実施例3:分析
脳への浸透、クリアランス、一般的な細胞の健康状態への影響、及び5−HT受容体における固有のアゴニスト活性を、いくつかの化合物に対して以下に記載するように測定した。分析した化合物は、化合物X及び5−HTアゴニストとして最低の固有活性を示す国際特許出願公開WO06/90224に開示されている9個の化合物を含んでいた:
【0087】
【表1】

【0088】
化合物Xが有する一つ又はそれより多い特性は、化合物Xを、WO06/90224中に例示されている化合物より優れているものにする。低い固有活性を有する5−HT部分アゴニストは、5−TH完全アゴニストに固有であることができる、消化器系の影響を減少する潜在的利益を伴うCNS−関連疾患の治療に対する機会を提供することができる。更に、優れた脳への浸透は、CNS−関連疾患の治療のために重要である。このような徴候に対する最適の化学物質は、血液脳関門を自由に通過するものである。当業者は、カルボン酸分子を含有する薬剤が認識できる脳への浸透を示すことは予想しない;化合物A、B及びCに対して表1に示したデータは、この予想を確認する。良好なクリアランス及び受容可能な予想総合安全特性も、更にCNS薬物の重要な特質である。化合物Xは、WO06/90224に例示される化合物より低い固有活性を示し、そして更に脳への透過、クリアランス、又は予想総合安全特性のような少なくとも一つの特性に基づき差別化する。実施例の化合物の特性は、既知の方法を使用して、又は表1を参照して認識することができる。表1は、化合物XとWO06/90224中に開示され、そしてWO06/90224中に示されるように低い固有活性(Emax<40%)を有する化合物A−Jを比較している(33ページの“Agonist−Induced cAMP Elevation in Human 5−HT4”を参照されたい)。化合物X及び化合物A−Jは、以下の式:
【0089】
【化4】

【0090】
の同じコア構造を共有し、R及びR基は、以下の表1に示すとおりである。
脳浸透アッセイ:
オスのSprague−Dawleyラット(n=3/時点)に、5mg/kgの化合物X、A、B、C、D、E、F、G、H、及びJを、皮下投与により投与した。血液試料を、投与の0.5、1、2、及び4時間後COで安楽死させた後、心穿刺により収集した。試料をEDTA試験管に入れ、そして氷上で保った。全脳を断頭によって収集した。脳試料を直ちにドライアイス中で保存した。血液試料を遠心して、血漿を収集した。血漿及び脳試料を分析まで−20℃で保存した。LC/MS/MSを、血漿及び脳の薬物レベルを測定するために使用した。結果を表1に示す。
【0091】
96ウェル形式によるヒト5−HT4dで形質移入されたHEK293細胞におけるアゴニスト誘導のcAMPの上昇:
ヒト5−HT4(d)で形質移入されたHEK293細胞を、研究室で確立した。細胞を、10%のFCS、20mMのHEPES(pH7.4)、200μg/mLのハイグロマイシンB(Gibco)、100単位/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンで補充されたDMEM中で、37℃及び5%COで増殖した。細胞を60−80%密集まで増殖した。化合物による治療の前の前日に、透析されたFCS(Gibco)で正常なものを置換え、そして細胞を一晩インキュベートした。化合物を96ウェルプレート中に調製した(12.5μL/ウェル)。細胞をPBS/1mMのEDTAで回収し、遠心し、そしてPBSで洗浄した。分析の開始時に、細胞のペレットを、20mMのHEPES、10μMのパージリン(Sigma)及び1mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma)で補充されたDMEM中に、1.6×10細胞/mLの濃度で再懸濁し、そして15分間室温又は37℃で放置した。反応をプレートへの細胞の添加によって開始した(12.5μL/ウェル)。15分間の室温又は37℃におけるインキュベーション後、1%のトリトンX−100を加えて(25μL/ウェル)、反応を停止し、そしてプレートを30分間室温で放置した。均一な時間分解型蛍光ベースのcAMP(Schering)検出を、製造業者の説明書によって行った。ARVOsxマルチラベルカウンター(Wallac)を、HTRFを測定するために使用した(励起320nm、発光665nm/620nm、遅延時間50μ秒、猶予時間400μ秒)。データを620nm及び665nmにおけるそれぞれのウェルの蛍光強度の比に基づいて分析し、続いてcAMP標準曲線を使用するcAMP定量を行った。それぞれの化合物によって励起されたcAMP産生の向上は、1,000nMのセロトニン(Sigma)によって産生されるcAMPの量に対して正規化された。固有活性は、以下の表1にアゴニスト効果の%として報告されている。
【0092】
384ウェル形式によるヒト5−HT4dで形質移入されたHEK293細胞におけるアゴニスト誘導のcAMPの上昇:
ヒト5−HT4dで形質移入されたHEK293細胞を、10%のFBS、20mMのHEPES(pH7.4)及び200μg/mLのハイグロマイシンB(Gibco)で補充されたDMEM(ピルビン酸ナトリウムを含まず)中で37℃及び5%のCOで増殖した。細胞を60−80%密集まで増殖した。実験の24時間前、増殖培地をOptimem血清使用量低減培地(Gibco)と置換え、そして細胞を一晩インキュベートした。実験の一日目、DMSO中に溶解した化合物を、PBS、5uMのHepes、及び500uMのIBMX(最終濃度)を含有するアッセイ緩衝液で希釈した。細胞を、細胞溶解緩衝液(Gibco)で回収し、遠心し、そしてPBSで洗浄した。次いで細胞ペレットをPBS中に再懸濁し、そして細胞を数え、そして適当に希釈した。反応を、化合物を含有する384ウェルプレートへの細胞の添加によって開始した;アッセイに使用した細胞の最終数は、ウェル当たり5000細胞であった。37℃における30分間のインキュベーション後、CisbioのcAMP Dynamoc 2スクリーニングキット試薬(カタログ番号62AM4PEB)をプレートに加えて、反応を停止した。均一な時間分解型蛍光ベースのcAMP(Schering)検出を、製造業者の説明書によって決定した。HTRFを測定するために、Wallac Envisionを使用した(励起320nm、発光665nm/620nm、遅延時間50μ秒、猶予時間400μ秒)。データを、620nm及び665nmにおけるそれぞれのウェルの蛍光強度の比に基づいて分析し、続いてcAMP標準曲線を使用するcAMP定量を行った。それぞれの化合物によって励起されたcAMP産生の向上は、1uMのセロトニン(Sigma)によって産生されるcAMPの量に対して正規化された。固有活性は、以下の表1にアゴニスト効果の%として報告されている。
【0093】
ヒト肝臓ミクロソーム安定性アッセイ:
ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)を、代謝安定性アッセイに使用して、薬物のNADPH−依存性in vitro見掛け固有代謝クリアランス(CLint,app)を決定する(主としてP450代謝によって仲介される)。HLMアッセイにおいて、試験化合物を、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中のHLM及びNADPH再生系と共にインキュベートする。このアッセイに使用したHLMは、多くの個々の提供者からのプールとして調製される。HLM及び試験化合物の濃度は、それぞれ0.71mgタンパク質/ml及び1uMである。反応を、化合物へのミクロソーム及び緩衝液の添加によって開始する。0、5、10、20、30、及び60分に、試料をACN/IS(インキュベーション体積の3倍)と共に砕き、4℃及び3500rpmで10分間遠心する。基質及びNADPHを伴わない60分の試料も更に60分間インキュベートして、負及び正の対照としての役目を果たす。基質試料は、緩衝液、ミクロソーム及びNADPHを含有する(化合物無し);一方、NADPHを伴わない60分の試料は、緩衝液、ミクロソーム、及び化合物を含有する(NADPH無し)。遠心後、上清を試料から除去し、等量の水と混合し、そして分析まで冷蔵庫で保存する。薬物レベルを質量分光法によって定量する。クリアランスは、しばしば抽出比(Er)として表示され、これは、肝臓のクリアランス/肝臓の血流(0−1の範囲)として計算される。データを表1に示す。
【0094】
THLEアッセイ:
THLEアッセイは、一般的な細胞の健康性を予測し、そして肝臓由来のヒト細胞系中の細胞の枯渇を測定する。THLE−2(形質移入されたヒト肝臓上皮)細胞を、ATCC(CRL−2706又はCRL−10149)から得て、そしてATCCの推奨によって培養した。培地は、10%の胎児ウシ血清(Sigmaカタログ番号F4135)及び2.5ng/LのhEFG(BD Biosciencesカタログ番号356052)並びに700ng/Lのホスホエタノールアミン(Sigmaカタログ番号p−0503)で補充された基本培地(BEGM Bullet Kit,Lonzaカタログ番号CC−3170)からなっていた。細胞を、T175ヒトフィブロネクチン/コラーゲン/ウシ血清アルブミンで被覆されたフラスコ中で培養した。それぞれの実験に対して、細胞を384ウェルプレート(特注、BD Biosciencesカタログ番号359298)に、2.5×10/ウェルの細胞密度で25μL/ウェルの全培地体積中に入れた。プレートを37℃、5%COで24時間インキュベーとした。
【0095】
化合物試験プレートを、300−0.058μMの最終アッセイ濃度範囲を伴う10種の投与量で2.0倍希釈スキームを使用して調製した。最初に全ての化合物を100%のDMSO中に可溶化した。この投与スキームは、プレート当たり32種の化合物を含有していた。原液プレートを、1μLの100×化合物/ウェルにアリコート化することによって調製した(30−0.058mM)。プレートを、99μLの細胞培養培地を加え、そして混合することにより投与するために調製した。試験化合物を、一晩の培養培地を吸引し、そして試験化合物を含有する25μL/ウェルの培地で置換えることによって、以下に概略記載するようなレイアウトを使用して細胞培養プレートに加えた。それぞれのウェル中のDMSOの最終濃度は、1.0%であった。
【0096】
試験化合物への暴露の72時間後、それぞれのウェルの細胞生存率を、Lonza VialightTM Plus Cell Proliferation/Cytoxicityキット(Lonzaカタログ:LT07−121)を製造業者のプロトコルによって使用して細胞のATPの濃度を測定することによって決定した。ATP濃度を、Wallac Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer,Waltham,Massachusetts,USA)を使用して冷光を読み取ることによって決定した。薬物治療されない対照に対する生存細胞のパーセントをそれぞれのウェルに対して決定した。最後のデータアウトプットは、72時間の暴露後に細胞の50%を殺すために与えられた投与量を説明する、計算されたIC50値である。
【0097】
【表2】

【0098】
本発明の、又はその例示的態様(類)の要素を導入する場合、冠詞“一つの”、“一つ”、“その”及び“前記”は、一つ又はそれより多い要素が存在することを意味することを意図している。用語、“含んでなる”、“含む”及び“有する”は、包括的であることを意味し、そして記載された要素以外の更なる要素が存在することを意味する。本発明は、具体的な態様に関して記載されてきたが、これらの態様の詳細は、その範囲が付属する特許請求の範囲によって定義される本発明に対する制約と解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−4−((4−((4−(テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンゾ[d]イソオキサゾール−3−イルオキシ)メチル)ピペリジン−1−イル)メチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール、又は医薬的に受容可能なその塩。
【請求項2】
以下の式X:
【化1】

の化合物又は医薬的に受容可能なその塩。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物、又は医薬的に受容可能なその塩、及び医薬的に受容可能な担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項4】
神経変性疾患又は障害を治療する方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載の化合物、又は医薬的に受容可能なその塩を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項5】
前記神経変性疾患又は障害が、認知症、アルツハイマー病、鬱病、精神障害、統合失調症、不安症、気分障害、注意欠損/多動性障害、又は注意欠損障害である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記神経変性疾患又は障害が、アルツハイマー病である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記神経変性疾患が、認知症である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記治療的に有効な量が、約0.01mg/kgから約100mg/kgの範囲である、請求項4に記載の方法。

【公表番号】特表2013−519722(P2013−519722A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553423(P2012−553423)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050548
【国際公開番号】WO2011/101774
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】